説明

バイトホルダ

【課題】弾性変形させることなく工具の角度調整が可能なバイトホルダを提供する。
【解決手段】ベース部材11と、ベース部材11に回動可能に取り付けられ、第1の固定具33によってベース部材11に固定される第1の可動ブロック12と、第1の可動ブロック12に回動可能に取り付けられ、第2の固定具43によって第1の可動ブロック12に固定され、工具保持機構13を備えた第2の可動ブロック14とを有し、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸は非平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに加工を行う工具を固定するバイトホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
バイトホルダやバイトホルダに固定される工具を製造する際には、他の製品と同様に製造される品ごとに製造誤差が生じる。この製造誤差は近年の製造技術の向上によって低減化が図られ、多くの製品については製造誤差が許容範囲内に収まっている。
これに対し、バイトホルダや工具については、工具によってワーク(被加工物)を加工する際に求められる精度が高く、バイトホルダ及び工具を製造する際に生じる製造誤差が、許容範囲内に収まらない場合がある。そこで、バイトホルダに取り付けた工具の角度調整を行って、この製造誤差を矯正するバイトホルダが提案され、その具体例が特許文献1に記載されている。
特許文献1のバイトホルダ(刃具補正用ツールホルダー)は、工具が取り付けられた弾性膜を油圧によって変形させ工具の角度を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51−58789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のバイトホルダは、弾性変形を利用して工具の角度調整を行うので、バイトホルダを短命にする原因となっていた。
また、弾性膜は弾性変形することを前提に設計されるため、剛性の観点において問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、弾性変形させることなく工具の角度調整が可能なバイトホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係るバイトホルダは、ベース部材と、前記ベース部材に回動可能に取り付けられ、第1の固定具によって該ベース部材に固定される第1の可動ブロックと、前記第1の可動ブロックに回動可能に取り付けられ、第2の固定具によって該第1の可動ブロックに固定され、工具保持機構を備えた第2の可動ブロックとを有し、前記第1の可動ブロックの回動軸と前記第2の可動ブロックの回動軸は非平行である。
【0006】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記第1の固定具はねじ部材であって、前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材の一方及び他方に、貫通孔A及び雌ねじ部Bがそれぞれ形成され、前記第1の可動ブロックは、前記貫通孔Aに前記第1の固定具を挿通した状態で、前記ベース部材に対して回動可能であり、前記貫通孔Aに挿通した前記第1の固定具を前記雌ねじ部Bに螺合し該第1の固定具の頭部を該貫通孔Aが形成された前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材に押圧した状態で前記ベース部材に固定されるのが好ましい。
【0007】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記第2の固定具はねじ部材であって、前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックの一方及び他方に、貫通孔C及び雌ねじ部Dがそれぞれ形成され、前記第2の可動ブロックは、前記貫通孔Cに前記第2の固定具を挿通した状態で、前記第1の可動ブロックに対して回動可能であり、前記貫通孔Cに挿通した前記第2の固定具を前記雌ねじ部Dに螺合し該第2の固定具の頭部を該貫通孔Cが形成された前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックに押圧した状態で前記第1の可動ブロックに固定されるのが好ましい。
【0008】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材の一方及び他方には、位置調節ねじ部材Eが螺合された雌ねじ部F及び該雌ねじ部Fから突出した該位置調節ねじ部材Eの先端部が当接する接触部がそれぞれ設けられ、前記ベース部材に対する前記第1の可動ブロックの角度は、前記位置調節ねじ部材Eの先端部の前記雌ねじ部Fからの突出長を変えることによって調整されるのが好ましい。
【0009】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックの一方及び他方には、位置調節ねじ部材Gが螺合された雌ねじ部H及び該雌ねじ部Hから突出した該位置調節ねじ部材Gの先端部が当接する接触部がそれぞれ設けられ、前記第1の可動ブロックに対する前記第2の可動ブロックの角度は、前記位置調節ねじ部材Gの先端部の前記雌ねじ部Iからの突出長を変えることによって調整されるのが好ましい。
【0010】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記第1、第2の可動ブロックの各回動軸のなす角は、60度以上90度以下であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るバイトホルダにおいて、前記工具保持機構は、前記第2の可動ブロックに形成された収容穴と、前記収容穴に一部又は全体が収まった状態の工具スリーブを、該工具スリーブに取り付けられた工具と共に該収容穴に固定する第3の固定具とを備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバイトホルダは、ベース部材に回動可能に取り付けられ、第1の固定具によってベース部材に固定される第1の可動ブロックと、第1の可動ブロックに回動可能に取り付けられ、第2の固定具によって第1の可動ブロックに固定され、工具保持機構を備えた第2の可動ブロックとを有し、第1の可動ブロックの回動軸と第2の可動ブロックの回動軸が非平行であるので、弾性変形を利用することなく、工具保持機構に固定された工具を所定方向に向けて、バイトホルダ及び工具の製造誤差を矯正することができる。
【0013】
本発明に係るバイトホルダにおいて、第1の可動ブロック又はベース部材の一方及び他方に、貫通孔A及び雌ねじ部Bがそれぞれ形成され、第1の可動ブロックが、貫通孔Aに第1の固定具を挿通した状態で、ベース部材に対して回動可能であり、貫通孔Aに挿通した第1の固定具を雌ねじ部Bに螺合し第1の固定具の頭部を貫通孔Aが形成された第1の可動ブロック又はベース部材に押圧した状態でベース部材に固定される場合、第1の可動ブロックのベース部材に対する角度調整と第1の可動ブロックのベース部材への固定を確実に行うことが可能である。
【0014】
本発明に係るバイトホルダにおいて、第1の可動ブロック又は第2の可動ブロックの一方及び他方に、貫通孔C及び雌ねじ部Dがそれぞれ形成され、第2の可動ブロックが、貫通孔Cに第2の固定具を挿通した状態で、第1の可動ブロックに対して回動可能であり、貫通孔Cに挿通した第2の固定具を雌ねじ部Dに螺合し第2の固定具の頭部を貫通孔Cが形成された第1の可動ブロック又は第2の可動ブロックに押圧した状態で第1の可動ブロックに固定される場合、第2の可動ブロックの第1の可動ブロックに対する角度調整と第2の可動ブロックの第1の可動ブロックへの固定を安定的に行うことが可能である。
【0015】
本発明に係るバイトホルダにおいて、ベース部材に対する第1の可動ブロックの角度が、位置調節ねじ部材Eの先端部の雌ねじ部Fからの突出長を変えることによって調整される場合、ベース部材に対する第1の可動ブロックの角度の細やかな調整を確実に行うことができる。
【0016】
本発明に係るバイトホルダにおいて、第1の可動ブロックに対する第2の可動ブロックの角度が、位置調節ねじ部材Gの先端部の雌ねじ部Hからの突出長を変えることによって調整される場合、第1の可動ブロックに対する第2の可動ブロックの角度の細やかな調整を安定的に行うことが可能である。
【0017】
本発明に係るバイトホルダにおいて、第1、第2の可動ブロックの各回動軸のなす角が、60度以上90度以下である場合、工具の向き調整に要する作業時間の短縮化を図ることが可能である。
【0018】
本発明に係るバイトホルダにおいて、工具保持機構が、第2の可動ブロックに形成された収容穴と、収容穴に一部又は全体が収まった状態の工具スリーブを、工具スリーブに取り付けられた工具と共に収容穴に固定する第3の固定具とを備える場合、工具を第2の可動ブロックに確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイトホルダの説明図である。
【図2】同バイトホルダの側面図である。
【図3】同バイトホルダの平面図である。
【図4】同バイトホルダの背面図である。
【図5】同バイトホルダを備えた旋盤の説明図である。
【図6】同バイトホルダの第1の変形例の背面図である。
【図7】同バイトホルダの第2の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係るバイトホルダ10は、ベース部材11と、ベース部材11に回動可能に取り付けられた第1の可動ブロック12と、第1の可動ブロック12に回動可能に取り付けられ、工具保持機構13を備えた第2の可動ブロック14とを有し、ドリルやリーマといった長尺の工具15を工具保持機構13で保持する。以下、詳細に説明する。
【0021】
バイトホルダ10は、図5に示すように、旋盤16の台座17に固定され、旋盤16には、バイトホルダ10とは距離を有して、ワーク18を固定する保持部材19が設けられている。
保持部材19はワーク18を保持した状態で、バイトホルダ10に対して水平方向に進退可能であり、ワーク18を回転させた状態でバイトホルダ10に向かって移動し、ワーク18を工具15に当接させてワーク18の加工を行う。
【0022】
保持部材19の進退方向にZ軸、鉛直方向にY軸、Y軸及びZ軸に直交する方向にX軸をとると、保持部材19の回転軸は、Z方向、即ち保持部材19と共に進退するワーク18の進退方向に沿って配置されている。
従って、工具15の加工基準方向(本実施の形態では工具15の軸心の方向)とZ方向のなす角が小さいほど、工具15によるワーク18の加工精度が上がることになる。
【0023】
バイトホルダ10のベース部材11は、図1〜図4に示すように、台座17に固定された支持台20と支持台20に取り付けられた位置調整ブロック21を備えている。
支持台20及び位置調整ブロック21には、Y方向に沿った回転軸を中心に回転可能な長尺の位置決めボルト22が取り付けられ、位置調整ブロック21は、位置決めボルト22を回転することによって昇降される。従って、位置決めボルト22を回転することで位置調整ブロック21の高さ調整を行うことができる。
台座17には、図2に示すように、高さ基準部材22aが固定され、位置決めボルト22は、位置決めボルト22の下端部をこの高さ基準部材22aに当接した状態で回転される。因って、位置調整ブロック21は、位置決めボルト22のY方向位置が固定された状態で、高さ調整される。なお、図1、図4は、高さ基準部材22aを省略して記載している。
【0024】
支持台20には、図3に示すように、支持台20を台座17に固定するねじ部材23が螺合され、台座17には、図1〜図4に示すように、対となるガイドレール24が形成されている。各ガイドレール24はX方向に配置され、支持台20は、ねじ部材23を緩めることによって、ガイドレール24に沿って移動可能な状態となり、ねじ部材23を締め付けることで台座17に固定される。
【0025】
また、台座17は、図示しないサーボモータによってX方向位置の微調整を行える設計がなされている。従って、ワーク18に対するバイトホルダ10に保持された工具15のX方向位置は、支持台20をガイドレール24に沿って移動させることによって大まかな調整がなされ、サーボモータによる台座17の移動によって微調整がなされる。
なお、支持台20には、図2〜図4に示すように、位置調整ブロック21を支持台20に固定する補助ブロック25がねじ固定されている。
【0026】
また、位置調整ブロック21には、図1に示すように、止めねじ26、27が取り付けられ、第1の可動ブロック12は、止めねじ26、27を中心に回動可能である。
止めねじ26、27は、Y方向に沿って同軸上に配置され、止めねじ27は止めねじ26の直下に位置している。止めねじ27には、止めねじ27が緩むのを防止するロックナット28が装着されている。
止めねじ26、27は、第1の可動ブロック12に当接する先端部がテーパー状になっており、第1の可動ブロック12には、止めねじ26、27の先端部のテーバー状にそれぞれ対応した窪み29、30が形成されている。なお、第1の可動ブロック12には、窪み29と窪み30の間に貫通孔31が形成されているが、この貫通孔31は製造上の都合によって形成されたものである。本実施の形態では、止めねじ26、27に、それぞれ止めねじ26、27を回転するための六角穴が形成されている。
【0027】
第1の可動ブロック12は、窪み29、30が形成されている部位がX方向で支持台20のある方向に向かって突出しており、位置調整ブロック21は、保持部材19に固定されたワーク18から見てコの字状であり、この第1の可動ブロック12の突出した部分が嵌め込まれる凹部をY方向中央に備えている。
第1の可動ブロック12には、図3、図4に示すように、位置調整ブロック21の凹部に嵌めこまれている部位に、X方向に沿う貫通孔32(貫通孔A)が形成され、この貫通孔32に第1の固定具33が挿通されている。
【0028】
第1の固定具33はねじ部材であり、雄ねじ部34と雄ねじ部34より径が大きい頭部35を備え、座金36が装着されている。そして、位置調整ブロック21には、第1の固定具33の雄ねじ部34に対応した雌ねじ部(雌ねじ部B)37が形成されている。第1の可動ブロック12は、貫通孔32に挿通した第1の固定具33が、雄ねじ部34を雌ねじ部37に螺合し、頭部35を座金36を介して第1の可動ブロック12に押圧した状態になることによって、位置調整ブロック21に固定される。
そして、図3に示すように、X方向に沿って形成されている貫通孔32と貫通孔32に挿通されている第1の固定具33の雄ねじ部34の各Z方向幅を比べると、貫通孔32の方が幅広である。従って第1の可動ブロック12は、第1の固定具33の頭部35が座金36を介して第1の可動ブロック12を押圧していない状態で、位置調整ブロック21に対してヨーイング方向に回動可能となる。
本実施の形態では、貫通孔32は円筒状であり、図3、図4に示すように、貫通孔32の径は、第1の固定具33の雄ねじ部34の径より太い。
【0029】
第1の可動ブロック12には、図2、図4に示すように、雌ねじ部39(雌ねじ部F)が形成され、雌ねじ部39に位置調節ねじ部材38(位置調節ねじ部材E)が螺合されている。位置調節ねじ部材38は、先端部が雌ねじ部39から突出した状態で雌ねじ部39に螺合され、その突出した先端部は位置調整ブロック21に当接している。本実施の形態では、位置調整ブロック21において、位置調節ねじ部材38の先端部が当接する箇所を接触部とする。
【0030】
位置調整ブロック21に対する第1の可動ブロック12の角度は、第1の固定具33の頭部35を第1の可動ブロック12に軽く押し当てた状態で位置調節ねじ部材38の先端部の雌ねじ部39からの突出長を変えることによって調整される。そして、位置調整ブロック21に対する角度調整がなされた第1の可動ブロック12は、位置調節ねじ部材38を締め付けて頭部35を第1の可動ブロック12に押圧した状態にすることによって、位置調整ブロック21に固定される。
本実施の形態では、位置調節ねじ部材38に六角穴付きの止めねじが用いられている。
【0031】
また、第1の可動ブロック12には、図1、図3に示すように、ピン収納孔40が形成され、ピン収納孔40には、軸心がX方向に沿うピン41が嵌入されている。ピン41はピン収納孔40から突出し、この突出した部分が第2の可動ブロック14に取り付けられている。そして、第2の可動ブロック14はピン41を回動軸にして第1の可動ブロック12に対して回動することができる。
【0032】
第2の可動ブロック14には、図1、図3、図4に示すように、複数(本実施の形態では2個)の円筒形の貫通孔42(貫通孔C)が形成され、各貫通孔42には、軸心がX方向に沿った第2の固定具43が挿通されている。
第2の固定具43は雄ねじ部44と雄ねじ部44より径が大きい頭部45を備えたねじ部材であり、第1の可動ブロック12には、各第2の固定具43の雄ねじ部44に対応する雌ねじ部46(雌ねじ部D)が形成されている。
【0033】
第2の可動ブロック14は、貫通孔42に挿通された第2の固定具43が、雄ねじ部44を雌ねじ部46に螺合し頭部45が第2の可動ブロック14を押圧した状態になることによって、第1の可動ブロック12に固定される。
そして、貫通孔42の径は第2の固定具43の雄ねじ部44の径より太いので、第2の可動ブロック14は、第2の固定具43の頭部45が第2の可動ブロック14に押圧されていない状態で、第1の可動ブロック12に対してピッチング方向に回動可能となる。
なお、第2の固定具43には、雌ねじ部46に締結された状態が解かれるのを防止する座金47が装着されているので、第2の固定具43の頭部45は座金47を介して第2の可動ブロック14を押圧した状態になる。
【0034】
また、第1の可動ブロック12には、図1〜図4に示すように、複数(本実施の形態では2つ)の雌ねじ部47a(雌ねじ部H)が形成され、各雌ねじ部47aに位置調節ねじ部材48(位置調節ねじ部材G)が螺合されている。各位置調節ねじ部材48の先端部は、雌ねじ部47aから突出しており、この突出した先端部が第2の可動ブロック14に当接している。
各位置調節ねじ部材48は、軸心がY方向に配置された止めねじであって、雌ねじ部47aから突出した先端部が第2の可動ブロック14に当接している。各位置調節ねじ部材48は、X方向位置及びY方向位置が同じであり、Z方向に間隔を有して配置されている。
各位置調節ねじ部材48を回転することによって、位置調節ねじ部材48の先端部の雌ねじ部47aからの突出長を変えることができる、各位置調節ねじ部材48の第1の可動ブロック12からの突出長を増減することで、第1の可動ブロック12に対する第2の可動ブロック14の角度を調整することができる。
本実施の形態では、第2の可動ブロック14に、位置調節ねじ部材48の先端部が当接する複数の接触部が設けられている。なお、各接触部は各位置調節ねじ部材48にそれぞれ対応する。
【0035】
第2の可動ブロック14には、図2に示すように、長尺の工具15を取り付けた工具スリーブ49が嵌入された収容穴50が形成されている。
工具15は、工具スリーブ49の挿入孔51に基側が嵌入され、工具スリーブ49に螺合された複数のねじ部材52によって固定され、先側が工具スリーブ49から突出している。工具15が固定された工具スリーブ49は、第2の可動ブロック14に螺合された複数の第3の固定具(本実施の形態ではねじ部材)53によって、収容穴50に固定されている。
【0036】
工具15に対応する工具スリーブ49は一部が収容穴50に収まった状態で第2の可動ブロック14に固定されているが、工具スリーブは、取り付けられる工具によって形状が異なり、工具スリーブ全体が収容穴50に収まった状態となるものもある。なお、工具によっては、工具スリーブを用いず、工具を収納穴50に直接取り付けるものもある。
そして、工具保持機構13は、主として収容穴50及び第3の固定具53によって構成されている。
また、支持台20には、図4に示すように、左右(X方向一側及び他側)に、第1、第2の可動ブロック及び位置調整ブロックを1つずつ取り付けることも可能である。支持台20の左側又は右側の一方側にのみ第1、第2のブロック及び位置調整ブロックを取り付ける場合、他方側には、補助ブロック25を所定位置に安定的に固定するため、図3に示す補助ホルダ54が取り付けられる。なお、図1は補助ホルダ54を省略して記載している。
【0037】
ここで、旋盤16は、工具の軸心がZ方向に正確に配置されているときに、ワーク18の加工精度が最も高くなる設計となっている。
従って、第2の可動ブロック14に取り付けられた工具の、Z方向に対する角度のずれ幅が、ワークの加工に求められる加工精度の許容範囲を超えている場合には、位置調整ブロック21に対する第1の可動ブロック12の角度と第1の可動ブロック12に対する第2の可動ブロック14の角度の調整によって、工具の軸心の向きが、加工精度の許容範囲内に収まるようにする必要がある。
【0038】
本実施の形態では、第1の可動ブロック12の回動軸(即ち止めねじ26、27の軸心)と第2の可動ブロック14の回動軸(即ちピン41の軸心)のなす角が90度であり、第1の可動ブロック12の回動軸の向き及び第2の可動ブロック14の回動軸の向きがそれぞれY方向及びX方向である。このため、第1の可動ブロック12を回動することによって工具15のヨーイング方向の角度が調整され、第2の可動ブロック14を回動することによって工具15のピッチング方向の角度を調整することができる。
なお、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角とは、第1の可動ブロック12の回動軸を平行移動して第2の可動ブロック14と同一平面状に配置した際の、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角度のことである。
【0039】
ここで、第2の可動ブロック14に取り付けられた工具15(他の工具についても同じ)のZ方向に対する向きを調整するためには、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸が非平行であればよく、必ずしも、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角が90度である必要はない。
一方で、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角が小さいほど、工具15の向き調整のために、第1、第2の可動ブロック12、14の最大可動範囲を広くする設計が必要となってバイトホルダ全体が大きくなる。従って、バイトホルダを製造するために用いられる材料(金属)量を抑制するという観点では、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角が60度以上90度以下の範囲であるのが好ましい。なお、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角度が90度でない場合、第1の可動ブロック12の回動軸と第2の可動ブロック14の回動軸のなす角とは、鋭角の角度を意味する。
【0040】
また、第1の固定具が挿通される貫通孔Aは、第1の可動ブロックではなく、ベース部材に設けることもでき、貫通孔Aをベース部材に形成する場合、第1の固定具の雄ねじ部が螺合する雌ねじ部Bは、第1の可動ブロックに形成される。
バイトホルダ10の第1の変形例であるバイトホルダ60は、図6に示すように、ベース部材61の位置調整ブロック62に貫通孔Aが形成され、位置調整ブロック62に回動可能に取り付けられている第1の可動ブロック63に、雌ねじ部64(雌ねじ部B)が形成されている。以下、バイトホルダ60について詳説する。なお、バイトホルダ10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。また、図6は、高さ基準部材22a及び補助ホルダ54の記載を省略している。
【0041】
貫通孔Aに挿通されている第1の固定具65は、雄ねじ部66及び頭部67を有し座金68を装着されたねじ部材である。
貫通孔Aの径は第1の固定具65の雄ねじ部66より太く、第1の可動ブロック63は、第1の固定具65が雄ねじ部66を雌ねじ部64に螺合し頭部67を座金68を介して位置調整ブロック62に押圧した状態で、位置調整ブロック62に固定される。そして、第1の可動ブロック63は、第1の固定具65の頭部67を位置調整ブロック62に軽く押し当てた状態で、止めねじ26、27を軸に回動可能となる。
【0042】
位置調整ブロック62には、雌ねじ部68a(雌ねじ部F)が形成され、雌ねじ部68aには位置調節ねじ69(位置調節ねじE)が螺合されている。位置調節ねじ69は、先端部が雌ねじ部68aから突出しており、この先端部が第1の可動ブロック63に当接している。本実施の形態では、第1の可動ブロック63において、位置調節ねじ69の先端部が当接する箇所を接触部とする。
第1の固定具65の頭部67を位置調整ブロック62に軽く押し当てた状態で、位置調節ねじ69の先端部の雌ねじ部68aからの突出長を変えることによって、第1の可動ブロック63の位置調整ブロック62に対する角度調整を行うことができる。そして、第1の固定具65を締め付け方向に回転して頭部67が位置調整ブロック62を押圧した状態にすることによって、位置調整ブロック62に対する角度調整がなされた第1の可動ブロック63は、位置調整ブロック62に固定される。
【0043】
また、第2の固定具が挿通される貫通孔Cの形成位置は、第2の可動ブロックに限定されず第1の可動ブロックに貫通孔Cを形成してもよい。そして、貫通孔Cを第1、第2の可動ブロックのいずれに形成するかは、第1の可動ブロック又はベース部材のいずれに貫通孔Aを形成するかということから何ら制限を受けるものではない。
バイトホルダ10の第2の変形例であるバイトホルダ80は、図7に示すように、位置調整ブロック21に取り付けられた第1の可動ブロック81に貫通孔Cが形成され、第1の可動ブロック81に回動可能に取り付けられた第2の可動ブロック82に雌ねじ部83(雌ねじ部D)が形成されている。以下、バイトホルダ80について詳説する。なお、バイトホルダ10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。図7は、高さ基準部材22a及び補助ホルダ54の記載を省略している。
【0044】
貫通孔Cに挿通された第2の固定具84は、雄ねじ部85と雄ねじ部85より径が大きい頭部86を備えたねじ部材であり、座金87が装着されている。
第2の可動ブロック82は、貫通孔Cに挿通された第2の固定具84の頭部86を第1の可動ブロック81に軽く押し当てた状態で、第1の可動ブロック81に対して回動可能であり、第2の固定具84の頭部86が座金87を介して第1の可動ブロック81に押圧された状態で、第1の可動ブロック81に固定される。
【0045】
第2の可動ブロック82には、複数(本実施の形態では2つ)の各雌ねじ部88(雌ねじ部H)が形成され、雌ねじ部88に位置調節ねじ部材89(位置調節ねじ部材G)が螺合されている。各位置調節ねじ部材89は、先端部が雌ねじ部88から突出しており、その突出した先端部が第1の可動ブロック81に当接する。本実施の形態では、第1の可動ブロック81において、各位置調節ねじ部材89の先端部が当接する箇所を接触部としている。
第2の可動ブロック82は、第2の固定具84の頭部86を第1の可動ブロック81に軽く押し当てた状態で、位置調節ねじ部材89の先端部の突出長を変えることによって、第1の可動ブロック81に対する角度調整がなされる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、ワークを固定する保持部材にはワークを回転させる機構を設けず、第2の可動ブロックに工具を回転させる機構を設けてもよい。
また、工具はワークに穴を開けるものではなく、ワークの外形処理を行う片刃バイトや面取りバイトでもよい。
【符号の説明】
【0047】
10:バイトホルダ、11:ベース部材、12:第1の可動ブロック、13:工具保持機構、14:第2の可動ブロック、15:工具、16:旋盤、17:台座、18:ワーク、19:保持部材、20:支持台、21:位置調整ブロック、22:位置決めボルト、22a:高さ基準部材、23:ねじ部材、24:ガイドレール、25:補助ブロック、26、27:止めねじ、28:ロックナット、29、30:窪み、31:貫通孔、32:貫通孔、33:第1の固定具、34:雄ねじ部、35:頭部、36:座金、37:雌ねじ部、38:位置調節ねじ部材、39:雌ねじ部、40:ピン収納孔、41:ピン、42:貫通孔、43:第2の固定具、44:雄ねじ部、45:頭部、46:雌ねじ部、47:座金、47a:雌ねじ部、48:位置調節ねじ部材、49:工具スリーブ、50:収容穴、51:挿入孔、52:ねじ部材、53:第3の固定具、54:補助ホルダ、60:バイトホルダ、61:ベース部材、62:位置調整ブロック、63:第1の可動ブロック、64:雌ねじ部、65:第1の固定具、66:雄ねじ部、67:頭部、68:座金、68a:雌ねじ部、69:位置調節ねじ、80:バイトホルダ、81:第1の可動ブロック、82:第2の可動ブロック、83:雌ねじ部、84:第2の固定具、85:雄ねじ部、86:頭部、87:座金、88:雌ねじ部、89:位置調節ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に回動可能に取り付けられ、第1の固定具によって該ベース部材に固定される第1の可動ブロックと、前記第1の可動ブロックに回動可能に取り付けられ、第2の固定具によって該第1の可動ブロックに固定され、工具保持機構を備えた第2の可動ブロックとを有し、前記第1の可動ブロックの回動軸と前記第2の可動ブロックの回動軸は非平行であることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のバイトホルダにおいて、前記第1の固定具はねじ部材であって、前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材の一方及び他方に、貫通孔A及び雌ねじ部Bがそれぞれ形成され、
前記第1の可動ブロックは、前記貫通孔Aに前記第1の固定具を挿通した状態で、前記ベース部材に対して回動可能であり、前記貫通孔Aに挿通した前記第1の固定具を前記雌ねじ部Bに螺合し該第1の固定具の頭部を該貫通孔Aが形成された前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材に押圧した状態で前記ベース部材に固定されることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバイトホルダにおいて、前記第2の固定具はねじ部材であって、前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックの一方及び他方に、貫通孔C及び雌ねじ部Dがそれぞれ形成され、
前記第2の可動ブロックは、前記貫通孔Cに前記第2の固定具を挿通した状態で、前記第1の可動ブロックに対して回動可能であり、前記貫通孔Cに挿通した前記第2の固定具を前記雌ねじ部Dに螺合し該第2の固定具の頭部を該貫通孔Cが形成された前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックに押圧した状態で前記第1の可動ブロックに固定されることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイトホルダにおいて、前記第1の可動ブロック又は前記ベース部材の一方及び他方には、位置調節ねじ部材Eが螺合された雌ねじ部F及び該雌ねじ部Fから突出した該位置調節ねじ部材Eの先端部が当接する接触部がそれぞれ設けられ、前記ベース部材に対する前記第1の可動ブロックの角度は、前記位置調節ねじ部材Eの先端部の前記雌ねじ部Fからの突出長を変えることによって調整されることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイトホルダにおいて、前記第1の可動ブロック又は前記第2の可動ブロックの一方及び他方には、位置調節ねじ部材Gが螺合された雌ねじ部H及び該雌ねじ部Hから突出した該位置調節ねじ部材Gの先端部が当接する接触部がそれぞれ設けられ、前記第1の可動ブロックに対する前記第2の可動ブロックの角度は、前記位置調節ねじ部材Gの先端部の前記雌ねじ部Hからの突出長を変えることによって調整されることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイトホルダにおいて、前記第1、第2の可動ブロックの各回動軸のなす角は、60度以上90度以下であることを特徴とするバイトホルダ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイトホルダにおいて、前記工具保持機構は、前記第2の可動ブロックに形成された収容穴と、前記収容穴に一部又は全体が収まった状態の工具スリーブを、該工具スリーブに取り付けられた工具と共に該収容穴に固定する第3の固定具とを備えることを特徴とするバイトホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78819(P2013−78819A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219422(P2011−219422)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】