説明

バケットコンベア

【課題】 粘着性の高い高含水率汚泥であっても搬送可能なバケットコンベアの提供。
【解決手段】 上下1対のプーリーと、該上下1対のプーリーに巻回された無端ベルトと、該無端ベルトの長手方向に沿って所定の間隔をおいて取り付けられた複数のバケット5とを有してなるバケットコンベアにおいて、前記バケットの内側に、該バケットの上部開口に沿うように開口した内袋6が、上部開口が下向きになった際に裏返しになるよう装着されていることを特徴とするバケットコンベア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットコンベアに関し、特に、粘着性の高い高含水率汚泥等の運搬に好適なバケットコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豚の糞尿、牛の糞尿、余剰汚泥の脱水汚泥及びそれらの混合物などの含水率が80〜90%程度の粘着性の高い汚泥状物(以下、高含水率汚泥と記す。)を搬送するには、ベルトコンベア、スクリューコンベア、チェーンコンベア、各種ポンプ及びバケットコンベアなどが使用されている。豚や牛の糞尿等は、糞尿ばかりでなく、砂利、藁等が混入している。また、これらをメタン発酵するときには、数cm角程度の段ボール紙、破砕した剪定枝等を混入させることがある。この時、一般ゴミも混入させるとプラスチック片や金属片も混入する。
【0003】
こうした高含水率汚泥を搬送する際、ベルトコンベアでは、搬送はできるものの、ベルトに汚泥が付着し、スクレーパ等を設置したとしても、汚染が著しく、コンベアのメンテナンスに手間がかかる。また、搬送角度に制限があり、垂直方向へは搬送できない。
スクリューコンベアは、垂直搬送型もあるが、高含水率汚泥の中でも特に粘着性が高い汚泥は搬送が困難である。
チェーンコンベアは、配管を利用しているために、搬送角度は自由であるが、高含水率汚泥の中でも特に粘着性が高い汚泥は、そのブレードに汚泥が付着してしまい、搬送が困難である。
各種のポンプ、例えば、軸ねじポンプ、チューブポンプは、通常であれば汚泥等を搬送可能であるが、汚泥中に固形の夾雑物が混入している場合は、ポンプが破損するおそれがある。
バケットコンベアは、粘着性の高い汚泥を搬送する場合、汚泥がバケットに付着して落下しなくなるため、高含水率汚泥搬送用には適用が困難な方式である。しかし、垂直に搬送する方法としては、安価な方法である。
【0004】
従来、バケットコンベアにおいて、粘着性のある被搬送物等を搬送可能にするための提案がなされている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1には、複数個のバケットを取り付けてなるバケットコンベアにおいて、バケットが背板、側板、掻板、底板とからなる箱状体をなし、前記底板に対応してバケット内に粉粒体剥離部材を配設固定してなるバケットコンベアが開示されている。
特許文献2には、バケットの搬送ベルトとの対向面に、バケットの開口側を回動軸としてバケットの底面を浚って開口側に向けて回動自在かつ対向面側に弾力付勢された被搬送物排出板を設け、搬送ベルトのバケット取付面およびバケットの搬送ベルトとの対向面に互いに貫通する開口部を設け、かつ搬送ケースの上端に軸支した上部プーリに、その回転により各バケットの開口部に出没する突起を設けたバケットコンベアが開示されている。
【特許文献1】実開平6−65324号公報
【特許文献2】特開平11−116022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示されているような従来のバケットコンベアを用い、粘着性の高い高含水率汚泥を搬送しようとしても、バケットの内面に高含水率汚泥がこびりついて排出が困難になってしまい、搬送できない問題がある。
また、これらの従来のバケットコンベアは構造が複雑であり、メンテナンスに手間がかかる。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、粘着性の高い高含水率汚泥であっても搬送可能なバケットコンベアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、少なくとも上下1対のプーリーと、該上下1対のプーリーに巻回された無端ベルトと、該無端ベルトの長手方向に沿って所定の間隔をおいて取り付けられた複数のバケットとを有してなるバケットコンベアにおいて、前記バケットの内側に、該バケットの上部開口に沿うように開口した内袋が、上部開口が下向きになった際に裏返しになるよう装着されていることを特徴とするバケットコンベアを提供する。
本発明のバケットコンベアにおいて、前記内袋が網状であることが好ましい。
本発明のバケットコンベアにおいて、前記バケットの底部に空気流通孔を設けることが好ましい。
また前記空気流通孔は、前記バケットの上部開口が上向きの時に閉止し、下向きの時に開口する弁機構を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバケットコンベアは、バケットの内側に、該バケットの上部開口に沿うように開口した内袋を、上部開口が下向きになった際に裏返しになるように装着したものなので、プーリーの回転に従って空のバケットが被搬送物充填位置に移動し、その上部開口が上向きの状態となったバケットに高含水率汚泥などの被搬送物が充填される時、被搬送物が内袋に充填され、プーリーの回転に従って被搬送物が充填されたバケットが被搬送物排出位置に達し、バケットが転倒して上部開口が下向きになった時に、内袋が裏返しになりながら被搬送物が排出されることによって、従来のバケットコンベアでは適用が不可能であった粘着性の高い高含水率汚泥であっても、バケットから排出することができるので、安価で大容量の垂直搬送可能な、高含水率汚泥搬送用のバケットコンベアを提供することができる。
また、通気性のある網状の内袋を用いることによって、被搬送物排出時に内袋に被搬送物が残留し難くなり、搬送効率が高くなるとともに、メンテナンスの手間を省くことができる。
また、バケットの底部に空気流通孔を設けたことによって、被搬送物排出時に内袋とバケット内面との間に空気が流入するので、被搬送物の排出がスムーズになる。
また、この空気流通孔に、バケットの上部開口が上向きの時に閉止し、下向きの時に開口する弁機構を設けることによって、搬送時に被搬送物から液体が落下するのを防止できるので、液漏れによる周囲の汚染がなく、メンテナンスが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明のバケットコンベアの第1実施形態を示す図であり、図1はバケットコンベアの構成図、図2はバケットの断面図である。図2において、(a)はバケットの上部開口が上向きの状態、(b)は上部開口が下向きの状態を示している。
【0010】
本実施形態のバケットコンベア1は、図1に示すように、上下1対のプーリー2,3と、該上下1対のプーリー2,3に巻回された無端ベルト4と、該無端ベルト4の長手方向に沿って所定の間隔をおいて取り付けられた複数のバケット5とを主な構成要素として備えている。なお、プーリーの配置や個数、コンベア搬送方向などは、本例示に限定されることなく、実際の搬送状態に応じて適宜変更可能である。前記無端ベルト4は、ゴム、プラスチック、金属などでつくられたベルト、チェーンなどを使用することができる。
【0011】
前記バケット5は、図2に示すように、バケット5の内側に内袋6を装着して構成されている。この内袋6は、図2(a)に示すように、バケット5の上部開口が上向きになった際には、バケット5の上部開口に沿うように開口し、図2(b)に示すように、バケット5の上部開口が下向きになった際に裏返しになるように装着されている。内袋6の開口は、固定部7でバケット5内面に固定されている。
【0012】
前記バケット5は、プラスチック、鋼材等で作られている。バケット5の内面は、平滑な面とし、内袋6に充填される被搬送物が付着し難い構造とすることが望ましい。また、バケット5の内面に、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素樹脂、ナイロンなどをコーティングすることによって、被搬送物が付着し難い構造とすることもできる。
【0013】
前記内袋6は、可撓性のあるシート、布、網などで構成でき、通気性のある網状とすることが特に好ましい。またその材質は、プラスチック、木綿、合成繊維等とすることができる。内袋6の表面は、平滑でも、起毛していても良い。
【0014】
この内袋6の長さは、バケット5の内面全域を覆うようにしてもよいし、バケットの内面中央から下部のみを覆うようにしてもよい。また内袋6の装着位置は、内袋6の下端がバケット5の底部に近接又は接触するように装着される。内袋6は、その開口端部をバケット5の内壁に固定し、内袋側面及び底部は固定しない。内袋6の固定部7の構造は、内袋6の開口端部をバケット5内面の所定位置に確実に固定できればよく、従来公知の各種固定手段の中から選択することができ、例えば、内袋6の開口端を挟持するクリップやクランプ、締結用バンド等を用いたり、あるいは内袋6の開口端を接着剤を用いて固定することができる。
【0015】
前記バケット5を備えたバケットコンベア1は、プーリー2,3の回転に従って空のバケット5が下のプーリー3から上昇して被搬送物充填位置に移動し、その上部開口が上向きの状態となったバケット5に高含水率汚泥などの被搬送物が充填される。この時、前記バケットでは、内袋6に被搬送物が充填される。
そして、プーリー2,3の回転に従って被搬送物が充填されたバケット5が垂直に上昇し、上側のプーリー2外周を回り、被搬送物排出位置に達して転倒し、バケット5の上部開口が下向きになった時に、内袋6が裏返しになりながら被搬送物が排出される。
この被搬送物の充填、排出が各バケット5で繰り返され、被搬送物が連続的に垂直搬送される。
【0016】
従来のバケットコンベアにおいて、バケットが転倒して被搬送物が排出される場合、被搬送物が粒状や固形状の搬送物であれば、バケットを転倒するだけで被搬送物は容易に排出される。一方、粘着性の高い高含水率汚泥は、バケットの内面に付着し、さらに搬送中の振動で一塊りのものとなるため、バケットを転倒しても容易に落下しない。
また、バケットの底に穴をあけると高含水率汚泥の塊が落下する際に、底部から空気が入り、高含水率汚泥の塊が幾分排出され易くなる。しかし、粘着性の高い高含水率汚泥では、この汚泥がバケット底部、側面に付着して容易に落下しないことが多い。
【0017】
本実施形態のバケットコンベア1では、バケット5に内袋6を装着したことによって、バケット5に充填される被搬送物は、内袋6に充填され、バケット5の底部及び側面に被搬送物が付着し難くなるので、被搬送物が充填されたバケット5を転倒することで、被搬送物が充填された内袋6がバケット5から排出されるとともに、内袋6が裏返しになりながら被搬出物が排出されるので、従来のバケットコンベアでは適用が不可能であった粘着性の高い高含水率汚泥の搬送が可能となる。従って、本実施形態によれば、安価で大容量の垂直搬送が可能な高含水率汚泥搬送用のバケットコンベア1を提供することができる。
【0018】
本実施形態において、内袋6が通気性のないシート材で構成した場合は、シートに高含水率汚泥が残る場合が多い。一方、内袋6を網で構成すると、通気性が良く、また、内袋6と高含水率汚泥との接触面積が小さいため、高含水率汚泥がスムーズに落下するようになり、好ましい。
また、油脂、水、界面活性剤等を高含水率汚泥の積み込み前に、バケット5内面に塗布あるいは噴霧することにより、排出時にバケット5の内面に内袋6及び高含水率汚泥が付着することが防止でき、よりスムーズな排出が可能となる。
【0019】
図3は、本発明の第2実施形態を示す図である。本実施形態のバケットコンベアは、図1に示すバケットコンベア1と同様の構成要素を備えて構成され、本実施形態では、図3に示すように、内袋6を装着したバケット5の底部9に1つ又は2つ以上の空気流通孔10を穿設したことを特徴としている。
【0020】
バケット5の底部9に設けた空気流通孔10は、直径10mm〜30mmの範囲が好ましく、20mm程度がより好ましい。被搬送物が粘着性の高い高含水率汚泥である場合、空気流通孔10が閉塞し易いので、バケット5の底部9又は底部9と側壁部8の両方に複数個の空気流通孔10を設けることが望ましい。バケット5の底部9又は底部9と側壁部8の下部を網状とすることも本実施形態の範疇にある。
【0021】
本実施形態のバケットコンベアは、前述した第1実施形態のバケットコンベア1と同様の効果が得られ、さらに、バケット5の底部9に1つ又は2つ以上の空気流通孔10を穿設したので、被搬送物排出時に内袋6とバケット5内面との間に空気が流入し、被搬送物がバケットから排出され易くなり、被搬送物の排出をよりスムーズに行うことができる。
【0022】
図4は、本発明の第3実施形態を示す図である。本実施形態のバケットコンベアは、図1に示すバケットコンベア1と同様の構成要素を備えて構成され、本実施形態では、図4に示すように、内袋6を装着したバケット5の底部9に空気流通孔10を穿設するとともに、この空気流通孔10に、バケット5の上部開口が上向きの時に閉止し、下向きの時に開口するチェック弁11を設けたことを特徴としている。
【0023】
このチェック弁11は、空気流通孔10に連通した開口を有する凹面状の弁座と、該弁座に転動可能に設けられた弁体であるボール12と、チェック弁11の上部開口を開閉可能に塞ぐ弁蓋13とから構成されている。このチェック弁11は、バケット5の上部開口が上向きの時(図4に示す状態)には、ボール12が弁座の開口を塞ぎ、かつ弁蓋13が閉じており、バケット5内に充填された被搬送物から液体が浸み出しても、その液体が空気流通孔10を通って落下することがない。一方、バケット5の上部開口が下向きの時には、ボール12が弁座から離れて空気流通孔10が開かれるとともに、チェック弁11上部の弁蓋13が開き、空気流通孔10からチェック弁11内部を通して空気がバケット5の内側に供給される。なお、このチェック弁11は一例にすぎず、空気流通孔10に設けられる弁機構は本例示に限定されるものではなく、このチェック弁11に代えて同様の機能を備える他種の弁を設けることもできる。
【0024】
本実施形態のバケットコンベアは、前述した第1実施形態のバケットコンベア1と同様の効果が得られ、さらに、バケット5の底部9に1つ又は2つ以上の空気流通孔10を穿設するとともに、この空気流通孔に、バケット5の上部開口が上向きの時に閉止し、下向きの時に開口するチェック弁11を設けたことによって、搬送時に被搬送物から液体が落下するのを防止でき、特に高含水率汚泥のような被搬送物を搬送時に、液漏れによる周囲の汚染がなく、メンテナンスが容易となる。
【実施例】
【0025】
以下の実施例により、本発明の効果を実証した。
本実施例では、後述する例1〜例5の各バケットを作製し、各バケットに高含水率汚泥を充填し、転倒させた際の汚泥排出状態、汚泥付着状態を観察し、比較した。
【0026】
[高含水率汚泥]
下記成分(1)〜(5)を混合し、粘着性の高い高含水率汚泥を調製した。
(1)メタン発酵残渣(水分:85%)、
(2)家畜分能糞尿(水分:98%)、
(3)生ゴミ他(水分:85%)、
(4)段ボール(水分:15%)、及び
(5)水(調製物全体の含水率が85%となる適当な量)。
【0027】
[バケット]
材質がSUS304からなり、開口部500mm角、深さ500mm、底部450mm角の図2のバケット5を基本構造とした。
例1のバケットは、前記基本構造のバケットを用いた。(比較例1)
例2のバケットは、前記基本構造のバケットの底に直径20mmの孔を開けた。(比較例2)
例3のバケットは、前記基本構造のバケットの1/2の深さにビニールシート製の内袋を装着した。(実施例1)
例4のバケットは、前記基本構造のバケットの1/2の深さに樹脂製網袋(開口:1mm角)からなる内袋を装着した。(実施例2)
例5のバケットは、前記例4のバケットの内面に、市販天ぷら油を塗布した。(実施例3)
【0028】
[試験条件]
例1〜例5の各バケットに、前記の通り調製した高含水率汚泥(以下、汚泥と記す。)を入れ、10回床に軽く落として、満杯とした。
次に、各バケットを転倒させ、汚泥が落下するか否かを観察した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示したように、基本構造のバケット(孔及び内袋無し)を用いた例1及びこのバケットの底に孔を設けた例2では、充填した汚泥がバケット内面に付着し、バケットを転倒しても汚泥が落下しなかった。
一方、本発明に係る例3〜例5のバケットは、バケットに内袋を装着したことによって、汚泥を排出することができた。
通気性の無いシートからなる内袋を装着した例3のバケットは、汚泥を充填したバケットを転倒することで汚泥を排出することができたが、内袋に汚泥が付着して残留した。一方、通気性のよい網袋を内袋として用いた例4では、汚泥が内袋に残留することなく、汚泥を排出することができた。さらに、バケット内面に油を塗布した例5のバケットは、最もスムーズに汚泥を排出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のバケットコンベアの構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示すバケットの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示すバケットの要部断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示すバケットの要部断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…バケットコンベア、2,3…プーリー、4…無端ベルト、5…バケット、6…内袋、7…固定部、8…側壁部、9…底部、10…空気流通孔、11…チェック弁(弁機構)、12…ボール、13…弁蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上下1対のプーリーと、該上下1対のプーリーに巻回された無端ベルトと、該無端ベルトの長手方向に沿って所定の間隔をおいて取り付けられた複数のバケットとを有してなるバケットコンベアにおいて、
前記バケットの内側に、該バケットの上部開口に沿うように開口した内袋が、上部開口が下向きになった際に裏返しになるよう装着されていることを特徴とするバケットコンベア。
【請求項2】
前記内袋が網状であることを特徴とする請求項1に記載のバケットコンベア。
【請求項3】
前記バケットの底部に空気流通孔を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバケットコンベア。
【請求項4】
前記空気流通孔は、前記バケットの上部開口が上向きの時に閉止し、下向きの時に開口する弁機構を備えていることを特徴とする請求項3に記載のバケットコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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