説明

バスト補正用パッド

【課題】バストのボリュームアップと同時にリフトアップあるいは前中心へ寄せる機能も同時に生じるバスト補整用のパッドを提供する。
【解決手段】円弧状に膨出した下辺となる第一辺と、該第一辺と対向して上辺となる円弧状に窪んだ第二辺と、前記第一辺と第二辺の左右両側を夫々連続する湾曲した第三辺と第四辺を有し、全周が円弧形状とされている大略三日月状の外形を備え、前記外形を有する弾性材がカバー布で被覆され、装着時に外面側となる面が平坦面とされている一方、肌側には第一辺側から第二辺側へと延在する複数の膨出部が谷部を介して並設され、前記膨出部は、前記第三辺と第一辺および第二辺に囲まれた領域に位置する大面積膨出部と、該大面積膨出部から前記第四辺側にかけて前記谷部を介して分断された2〜5個の小面積膨出部とからなり、かつ、前記大面積膨出部の厚さは小面積膨出部の厚さよりも大とし、前記肌側が内周側となるように全体的に湾曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスト補整用パッドに関し、ブラジャー等のカップ部を有する衣類のカップ部の内面側に設けられるパッド収容部に着脱自在に挿入して、使用者のニーズに合わせたバストシルエットに補整するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のバスト補整用パッドは従来から種々提供されており、例えば、パッドにバスト形状に沿うように屈曲部を設けたものとして、特開平9−137307号公報(特許文献1)と特開平11−229206号公報(特許文献2)のパッドが提供されている。
【0003】
前記特許文献1で提供されているパッドは、図6に示されるように、全体的に弾性質素材により形成し、乳房の下半分を被覆する形状のパッドとされている。該パッドの上辺1は乳頭部近傍を被覆する被覆部4を含む曲線とし、下辺2は乳房の下線に沿う曲線とし、上辺1と下辺2との間に屈折部5が設けられている。屈折部5は上辺の被覆部4を頂部として下方に向けて所定角度の広がりを有する3本の屈折用ライン5A、5B、5Cを有する肉薄のほぼ三角形状とされている。
また、特許文献2のパッドは、図7に示す形状とされ、所定の厚みを有するブラジャー用のパッドにおいて、パッドを使用時における左右方向に折り曲げ可能とする折り曲げ部6が中央部に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−137307号公報
【特許文献2】特開平11−229206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1の女性胸部用パッドは、3本の屈折用ライン5A,5B,5Cからなる屈折部5が折れ曲がり、乳頭から下方に向けた側面形状を上向きに矯正し、シャープなバストラインを現出させるためのものであり、個人のバストサイズやバスト形状に対応したものではない。
また、前記特許文献2のパッドは、パッドが乳房カップの左右方向に折れ曲がって着用者のバストの形状に沿わせるだけのものであり、バストを上部に引き上げ(リフトアップ)たり、脇側から中央部に寄せる効果を期待できるものではない。
【0006】
さらに、特許文献1の女性胸部用パッドと特許文献2のパッドのいずれも、中央部付近を除いた全体は、ある程度の厚みを有するパッドとなっている。
しかし、単に全体的に厚みを有するパッドを用いても、パッドによるバスト全体のボリュームアップ効果を期待することができるが、バストの形状を着用者の求める形状に補整するには改善の余地がある。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、バストのボリュームアップを図ることを基本としながら、バストの上部引き上げ(リフトアップ)機能を重視する場合、バストを脇側から中央部へ寄せる機能を重視する場合のいずれにも適用でき、着用者が理想とするバスト形状に近づけることができるパッドを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、円弧状に膨出した下辺となる第一辺と、該第一辺と対向して上辺となる円弧状に窪んだ第二辺と、前記第一辺と第二辺の左右両側を夫々連続する湾曲した第三辺と第四辺を有し、全周が円弧形状とされている大略三日月状の外形を備え、
前記外形を有する弾性材がカバー布で被覆され、装着時に外面側となる面が平坦面とされている一方、肌側には第一辺側から第二辺側へと延在する複数の膨出部が谷部を介して並設され、
前記膨出部は、前記第三辺と第一辺および第二辺に囲まれた領域に位置する大面積膨出部と、該大面積膨出部から前記第四辺側にかけて前記谷部を介して分断された2〜5個の小面積膨出部とからなり、かつ、前記大面積膨出部の厚さは小面積膨出部の厚さよりも大とし、さらに、前記肌側が内周側となるように全体的に湾曲されていることを特徴とするバスト補整用パッドを提供している。
【0009】
前記のように、パッド装着時に外面側となる面は平坦面とされており、外観は平滑に保たれる一方、肌側には第一辺側から第二辺側へと延在する複数の膨出部が谷部を介して並設させていることで、バストの形状に応じて複数の谷部を支点として自然に折れ曲がり、複数の各小面積膨出部をバストに密着させ、パッド全体をバストに立体的にフィットさせることができる。その結果、カップ部とバストの間に隙間を生じさせず、バストシルエットを自然な外観から遊離した人工的なものとせず、滑らかなシルエットとすることができる。
【0010】
さらに、肌側に大面積膨出部と小面積膨出部を設けることにより、基本的にバストのボリュームアップを図りながら、バスト形状を上向き補整あるいは中央側に寄せる補整を同時に行うことができる。
即ち、大面積膨出部は小面積膨出部よりも厚くされており、そのためバストのボリュームアップ効果と同時にバストの肉を任意の方向に押し出す効果を有する。一方、小面積膨出部は大面積膨出部よりも厚さを小さくしているため、大面積部から流れた肉を吸収することができ、理想としたバスト形状とした状態でカップ部内にすっきりと収めることができる。
例えば、バストの形状を主として上向きに押し上げた形状としたい場合には、大面積膨出部をカップ部内の前中心側に位置させることで、該大面積部によりバストトップ(乳頭)より下部の肉を上方へ押し上げることができる。
また、バストの形状を主として前中心の中央側に寄せた形状としたい場合には、前記大面積膨出部をカップ部内の脇側に位置させることで、バストの肉を前中心に寄せることができる。
【0011】
また、本発明のパッドでは、前記大面積膨出部の面積および厚さ、小面積部の個数、面積、厚さも多種類設けて多様化しており、小さなバストのボリュームアップを目的とする場合には、大面積膨出部の面積を大きく且つ厚さを大とした物を用いることで、ボリュームアップ効果を図ることができる。一方、大きなバストのリフトアップ(持ち上げ)を目的とする場合には、大面積膨出部の面積および厚さを比較的小さくしたものを用いて、リフトアップ(持ち上げ)効果を主に持たせることができる。
このように、前記大面積膨出部の面積と厚さに応じて、バストのボリュームアップ効果とリフトアップ効果のいずれを重視するかにより使い分けることができる。
【0012】
前記大面積膨出部の形状は台地型とするのが好ましい。台地型形状とすることで、バストを比較的広い面積で所定方向から押し上げることができる。
また、大面積膨出部及び小面積膨出部は、いずれも外形ラインに丸みを帯びさせることにより、自然なシルエットを現出させることができる。
【0013】
前記小面積膨出部は、前記したように複数の谷部を介して分断された2〜5個としていることにより、複数の谷部で漸次滑らかに折れ曲がることができ、パッドに柔軟性を持たせることができる。かつ、谷部は上辺と下辺との間の上下方向で且つ大面積膨出側に傾斜された形状としているため、大面積膨出側へと丸みを帯びた状態で湾曲させることができる。
また、谷部は、左右方向ではなく、上下方向とし、大面積膨出部および小面積膨出部とも上下方向では分断していない。そのため、左右方向の谷部を設けた場合に発生する上下方向の折れ曲がりを防止でき、パッドに上下方向のハリを持たせることができる。
【0014】
前記膨出部を仕切る谷部は、前記第一辺から第二辺へと、前記大面積膨出部側へと傾斜させて、互いに略平行に設けられていることが好ましい。
このように谷部を内側に向けて傾斜させて、互いに略並行に設けることにより、パッドは傾斜した谷部に沿って折れ曲がるため、バストの形状により正確に沿わすことができ、バストへのフィット感を持たせることができる。
なお、谷部は直線として設けてもよいが、緩やかな波型形状としてもよく、波型形状とすることによって、直線とするよりもパッドにさらなる反発力(ハリ)を持たせることができる。
【0015】
また、パッドは、前述したように、カップのサイズと共に、またはニーズに応じて、多種類提供することが好ましい。
カップサイズに応じて、パッド自体の大きさ及び形状を変えていると共に、カップサイズに応じて、大面積膨出部と小面積膨出部の比率を変えたり、大面積膨出部の厚さを変えてもよい。パッドに設ける小面積膨出部の数は大面積膨出部の面積の大きさに応じて、2〜5個の範囲内で選択して設けている。
【0016】
例えば、バストが比較的小さい着用者用のパッドとしては、パッドの全面積に占める前記大面積膨出部の面積および厚さを大きくして、バストのボリュームアップを重視した設計とすることが好ましい。具体的には、例えば、AAカップ、Aカップ、Bカップのブラジャーに用いる場合にはパッドの全面積に占める大面積膨出部の面積を55〜70%として残りの30〜45%の面積に小面積膨出部を2〜4個設け、大面積膨出部の最大厚さを13〜20mm程度と高めに設定している。
【0017】
C,D,Eカップのバストサイズの着用者用のパッドとしては、バストのボリュームアップ効果をやや抑えて、バストのリフトアップによるバストシルエットの成形性を重視する設計とすることが好ましい。具体的には、例えば、パッドの全面積に占める大面積膨出部の面積を45〜60%程度として、残りの40〜55%の面積に小面積膨出部を3〜5個設け、大面積膨出部の最大厚さを10〜15mm程度と中程度の厚さにしている。
【0018】
また、Fカップ以上のバストサイズの着用者用のパッドとしては、バストのボリュームアップ効果はほとんど不要であるため、バストのリフトアップや前中心への寄せ機能を主目的とした設計とすることが好ましい。具体的には、例えば、パッドの全面積に占める大面積膨出部の面積を35〜50%程度として、残りの50〜65%の面積に小面積膨出部を4,5個設け、大面積膨出部の最大厚さを8〜13mm程度と薄めに設定するなどである。このような構成とすると、パッドの全面積に占める大面積膨出部の面積及び厚さは小さいため、余分なボリュームアップはなく、リフトアップあるいは前中心への寄せ機能を高めることができる。
【0019】
本発明のパッドは、左右一対のパッドを、その装着時において左右のパッドを入れ替えることによって、大面積膨出部と小面積膨出部の存する位置を、前中心側と、脇側とのいずれ側にも配置することができる。
大面積膨出部を前中心側に、小面積膨出部を脇側に位置させることで、脇からバストを寄せてすっきりとした形状とすることができる。かつ、カップ部内の下からバストを押し出して、バストを上方向に持ち上げバスト上部のボリュームアップを図ることができる。
これに対して、大面積膨出部を脇側に、小面積膨出部を前中心側に位置させることで、バストを脇から直接的に内側に押し出して、バストのボリュームを補って、丸みのある形に成形することができる。
【0020】
本発明のパッドは、弾性材をカバー布で被覆されて構成しており、前記弾性材としては外面側となる第一弾性材と、肌側となる第二弾性材との積層材を用い、第二弾性材は第一弾性材よりも柔軟性を有する低硬度とされていることが好ましい。
かつ、これら第一弾性材と第二弾性材とは、第一弾性材の外面が平坦状とされた状態で一体的にプレス成形されて前記肌側の膨出部が成形されており、かつ、全外周縁に沿って圧縮された縁取り部が設けられていることが好ましい。
【0021】
前記のように、パッドを弾性材で構成することにより、バストを柔らかく包むように保持しながらバストの保形性の機能も備えたものとすることができる。特に、変形後の原形への復帰が迅速に行われ、単にバストの動きに追従して伸びるだけでなく、ばねのように跳ね返す力を有し、動的快適性を有する。
さらに、前記のように、前記第一弾性材と前記第二弾性材の弾性材に硬度の差異を設けることで、肌側は柔かいために快適な着用感が得られ、表側はパッドとしての成形性、ハリを保つことができる。
特に、外面に近接する小面積膨出部および谷部は比較的高硬度となるため、ハリを持たせることができ、バストに対する補整機能を高めることができる。
【0022】
前記第一弾性材、前記第二弾性材の素材としては、例えば、硬度の異なるポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエステルエラストマーの発泡体等の熱可塑性樹脂等からなる発泡体や繊維構造体、不織布等を用いることができる。
【0023】
詳細には、本発明のパッドは、表側と裏側の両側にカバー布を設けて、例えば、肌側から、カバー布、低硬度弾性材、高硬度弾性材、カバー布とする4層構造として製造することが好ましい。
具体的な製造方法の一例としては、硬度の異なる2枚のシート状の弾性材の片面側に各々カバー布を接着剤等であらかじめ張り合わせておき、両者を弾性材側を内側に、カバー布側を外側に合わせて配置したのち、プレス成形し、所望の寸法および形状に打ち抜く等の方法によりカットして製造している。また、縁取り部がプレス成形時に全外周縁に沿って設けられていることが好ましい。
縁取り部を有することで、パッド全体の形状維持を図ることができる。
縁取り部の幅、厚さは特に限定されないが、幅を略3〜7mm、厚みを略0.5〜2mmとするのが好ましい。縁取り部はプレス成形により形成する場合には硬くなるので、カット後にオーバーロックミシンを掛けて、保護しておくのが好ましい。
カバー材の素材は、特に限定されないが、肌触りの良いポリエステル、ナイロン、綿等の天竺ニット等が挙げられる。
【0024】
前記バスト補正用パッドは、カップ部を有する衣類のパッドに装着して使用することができる。該カップ部を有する衣類としては、ブラジャーが最も好適であるが、ブラスリップ、ボディスーツ等のカップ部にも装着することができる。前述したように、必要に応じて左右のパッドを入れ替えて使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
前述したように、本発明のバスト補正用パッドは、大面積膨出部によりバストの肉を任意の方向に押し出し、小面積膨出部が押し出されたバストの肉をフィットしながら収容すると共にカップからはみ出さないように内側に寄せることができる。このように、本発明のパッドは、バストのボリュームアップを図りながら、リフトアップ機能あるいは前中心への寄せ機能の両方を同時に達成することができる。
【0026】
また、前記大面積膨出部と前記小面積膨出部をバストサイズに応じた設計とすることにより、例えば、小さなバスト用のバスト補正用パッドとしてはバストアップを重視した設計とし、大きなバスト用にはバストのリフトアップを重視した設計とすることができ、使用者のニーズに合わせたパッドとすることができる。
さらに、左右のパッドを入れ替えることにより、バストの形状や好みに応じて異なるバストのボリュームアップあるいは/及びリフトアップ方法をとることができ、使用者の理想のバストシルエットに近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は本発明の第一実施形態に示す。
図1に示すように、第一実施形態のバスト補正用のパッド10は、円弧状に膨出した下辺となる第一辺11と、該第一辺と対向して上辺となる円弧状に窪んだ第二辺12と、前記第一辺11と第二辺12の右側に連続する湾曲した第三辺13と、前記第一辺11と第二辺12の左側に連続する湾曲した第四辺14を有し、全周を円弧形状とし、大略三日月状の外形としている。
図1(A)のように、装着時に肌側となる面には、大面積膨出部15と3個の小面積膨出部16を、谷部17(17A,17B,17C)を介して並設する一方、外面側となる面(図示せず)は平坦面としている。
【0028】
大面積膨出部15は、第三辺13と第一辺11および第二辺12に囲まれた領域に位置している。大面積膨出部15は、図1(B)(C)に示すような台地型形状として設けている。台地型形状とすることで、大面積膨出部15の上底部15Aが比較的広い面積で効率的にバストの肉を押し上げることができるようにしている。また、大面積膨出部の角部は丸みを帯びた形状としている。
【0029】
大面積膨出部15から前記第四辺14側にかけて、前記第一辺11から第二辺12へと、前記大面積膨出部15側へと傾斜させて、互いに略平行に谷部17(17A,17B,17C)を設け、これら谷部を介して3個の小面積膨出部16(16A,16B、16C)を分断して設けている。
【0030】
また、本実施形態のパッド10は、全外周縁に沿って幅が略5mm、厚さが略1mmの縁取り部18を設け、パッド10の形状保持性を高めている。縁取り部18はオーバーロックミシンによる縁かがりにより端始末処理を施している。
パッド10は図1(B)(C)に示すように、肌側が内周側となるようにパッド10は全体的に湾曲させている。
【0031】
本実施形態のバスト補正用のパッド10は、全体の面積を略5200mm2とし、大面積膨出部15の面積を略3400mm2としている。また、大面積膨出部15の最大厚さ(平坦面と上底部15Aの厚さ)は略17mmとし、小面積膨出部16の最大厚さは略4mm、谷部の厚さを略2mmとしている。
本実施形態のパッド10は、大面積膨出部の面積をパッド10全体の面積の略65%とし、大面積膨出部の厚さも比較的大きく設けている。よって、本実施形態のパッド10はバストのボリュームアップ効果が重視されるようなAA,A,Bカップ等の比較的小さいバストサイズの着用者用として好適なものとしている。
【0032】
前記パッド10は、前記したように、大略三日月形の弾性材19をカバー布で被覆している。
詳しくは、前記弾性材19は、図2に示すように、外面側となる第一弾性材20と、肌側となる第二弾性材21との積層材からなり、該積層材の表と裏にそれぞれカバー布22を配置している。
前記第二弾性材21は第一弾性材20よりも柔軟性を有する低硬度の素材としている。
本実施形態では、第一弾性材として高硬度タイプ軟質ウレタンフォームを、第二弾性材としては低硬度タイプの軟質ウレタンフォームを用いている。
前記高硬度軟質ウレタンフォームとしてはJIS K 6400に規定の硬度が略190〜260Nのものが好適に用いられ、前記低硬度軟質ウレタンフォームとしてはJIS K 6400に規定の硬度が略25〜85Nのものが好適に用いられる。
また、カバー布22としては、特に限定されないが、本実施形態においてはポリエステル100%の天竺ニットを用いている。
【0033】
前記バスト補正用パッド10の製造方法について説明する。
まず、図2のように、カバー布22を接着剤でラミネートしたシート形状の第一弾性材20の上に、カバー布22を接着剤でラミネートした第二弾性材21を、カバー布22が外側および肌側となるように重ねて配置する。
その後、所定の大きさの大面積膨出部15、小面積膨出部16、谷部17及び縁取り部18の形状を賦形できる形状とした上部金型とし、平坦状の下部金型を用い、下部金型上に前記積層材を設置して、上部金型を加熱プレスして、同時に大面積膨出部15,小面積膨出部16,谷部17及び縁取り部18を形成している。
その後、縁取り部18に沿ってカットし、縁取り部18には捲縮糸を用いてオーバーロックミシンにより縁かがりの端子末処理を行って縁取り部を形成、本実施形態のバスト補正用のパッド10を製造している。
【0034】
前記した第一実施形態のバスト補整用のパッド10では、大面積膨出部15により持ち上げられたバストは、段差の低い小面積膨出部16側へとスムーズに移動し、移動したバストに各谷部17(17A,17B,17C)が折れ曲がって小面積膨出部16をフィットさせることができるため、バストのボリュームアップとリフトアップを行なうことができ、美しいバストシルエットを保つことができる。
【0035】
図3に第一実施形態のバスト補正用のパッド10を装着したブラジャー30を示す。
ブラジャー30は、カップ部31、土台部32、肩紐33、背面部(図示せず)を備え、カップ部31の裏側(肌側)には袋状のパッド収納部(図示せず)を有する。前記バスト補正用のパッド10は、前記ブラジャー30のパッド収納部に、前記大面積膨出部15、小面積膨出部16が肌側となり、円弧状に膨出した第一辺11を下部となるように装着している。
【0036】
パッド10は左右のカップ部(31A,31B)のいずれにも装着することができる。
図3(A)は、第一実施形態のパッド10を、装着時において左胸のカップ部となる31Aに装着し、右胸のカップ部31Bには第一実施形態と左右対称のパッド10’を装着している状態を示す。
このようにパッド10及びパッド10’を装着すると、大面積膨出部15がカップ部31A,31B内の前中心側の位置するため、矢印Xのように下方向からバストを押し上げ、バスト上部にボリュームを持たせることができる。また、脇側に配置した小面積膨出部が、バストを脇から内側に寄せるので、脇側はすっきりとした形状とすることができる。
【0037】
図3(B)は第一実施形態のパッド10を、装着時において右胸のカップ部となる31Bに装着し、左胸のカップ部31Aには第一実施形態と左右対称のパッド10’を装着している。このようにパッド10及びパッド10’を装着すると、大面積膨出部15がカップ部31A,31B内の脇側に位置し、矢印Yの方向にバストを脇側から前中心に向けて寄せることができる。このため、脇側からバストをリフトアップし、脇はすっきりとさせて、バストのボリュームを補い、丸みのあるバストシルエットとすることができる。
【0038】
図4は第二実施形態のバスト補正用パッド10−2を示す。
第二実施形態のパッド10−2は、全体の面積を略6500mm2とし、大面積膨出部15’の面積を略3600mm2とし、小面積膨出部16’(16A’,16B’,16C’,16D’)を4本設けている。
また、大面積膨出部15’の最大厚さは略13mmとしている。
【0039】
第二実施形態では、第一実施形態のパッド10と比べて、パッド自体を大きくし、かつ大面積膨出部15’の面積をパッド10−2全体の面積の略55%と小さくし、その分小面積膨出部16’の占める面積を増加させている。さらに、大面積膨出部15’の厚さも小さく設定している。
【0040】
このように、第二実施形態のパッド10−2は、ブラジャー等に装着した場合に、第一実施形態のパッド10よりもバストのボリュームアップ効果を少し抑えて、バストのリフトアップによるバストシルエットの成形性を重視する設計に移行したものである。そのため、パッド10−2は、C,Dカップ等のバストのバストサイズが中程度の着用者用のパッドとして好適である。
なお、他の構成および作用は第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0041】
図5は第三実施形態のバスト補正用パッド10−3を示す。
第三実施形態のパッド10−3は、全体の面積を略7000mm2とし、大面積膨出部15”の面積を略3200mm2とし、小面積膨出部16”(16A”,16B”,16C”,16D”,16E”)を5本設けている。
また、大面積膨出部15”の最大厚さは略10mmとしている。
【0042】
この第三実施形態のパッド10−3は、第一実施形態のパッド10,第二実施形態のパッド10−2と比べて、さらに大面積膨出部15”の面積をパッド10−3全体の面積の略46%と小さくしており、その分小面積膨出部16”の占める面積を増加させ、大面積膨出部15”の厚さも小さく設定している。そのため、該パッド10−3は、バストのボリュームアップ効果としては極力抑えて、バストのリフトアップを主目的とする設計としている。また、小面積膨出部16”および谷部17”が大きなバストをしっかりと内側に寄せるため、バストがカップ部の脇側からはみ出ることもなく、美しいバストシルエットとすることができる。そのため、パッド10−3は、Eカップ以上の大きなバストサイズの着用者用のパッドとして好適である。
なお、他の構成および作用は第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0043】
本発明のバスト補正用パッドは、ブラジャーに限定されず、ブラスリップ、ボディスーツ等のカップ部を有する衣類に装着することができる。
なお、本発明のバスト補正用パッドは、前述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、使用者のニーズにより、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一実施形態のバスト補整用のパッドを示し、(A)は着用時に肌側となる方からみた平面図、(B)は(A)のA−A断面図、(C)は(A)のB−B断面図である。
【図2】第一実施形態のバスト補正用パッドの素材構成を示す図である。
【図3】第一実施形態のバスト補正用パッドを装着したブラジャーを示し、(A)は大面積膨出部を前中心側に配置して装着した状態を示す図、(B)は大面積膨出部を脇側に配置して装着した状態を示す図である。
【図4】第二実施形態のバスト補正用パッドを示し、(A)は装着時に肌側となる方からみた平面図、(B)は(A)のC−C断面図、(C)は(A)のD−D断面図である。
【図5】第三実施形態のバスト補正用パッドを示し、(A)は装着時に肌側となる方からみた平面図、(B)は(A)のE−E断面図、(C)は(A)のF−F断面図である。
【図6】従来例を示す図である。
【図7】他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10,10−1,10−2 パッド
11 第一辺
12 第二辺
13 第三辺
14 第四辺
15 大面積膨出部
16 小面積膨出部
17 谷部
18 縁取り部
19 弾性材
20 第一弾性材
21 第二弾性材
22 カバー布
30 ブラジャー
31 カップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に膨出した下辺となる第一辺と、該第一辺と対向して上辺となる円弧状に窪んだ第二辺と、前記第一辺と第二辺の左右両側を夫々連続する湾曲した第三辺と第四辺を有し、全周が円弧形状とされている大略三日月状の外形を備え、
前記外形を有する弾性材がカバー布で被覆され、装着時に外面側となる面が平坦面とされている一方、肌側には第一辺側から第二辺側へと延在する複数の膨出部が谷部を介して並設され、
前記膨出部は、前記第三辺と第一辺および第二辺に囲まれた領域に位置する大面積膨出部と、該大面積膨出部から前記第四辺側にかけて前記谷部を介して分断された2〜5個の小面積膨出部とからなり、かつ、前記大面積膨出部の厚さは小面積膨出部の厚さよりも大とし、さらに、前記肌側が内周側となるように全体的に湾曲されていることを特徴とするバスト補整用パッド。
【請求項2】
前記弾性材は外面側となる第一弾性材と、肌側となる第二弾性材との積層材からなり、
前記第二弾性材は第一弾性材よりも柔軟性を有する低硬度とされ、これら第一弾性材と第二弾性材とは第一弾性材の外面が平坦状とされた状態で一体的にプレス成形されて前記肌側の膨出部が成形されており、かつ、全外周縁に沿って圧縮された縁取り部が設けられている請求項1に記載のバスト補整用パッド。
【請求項3】
前記膨出部を仕切る谷部は、前記第一辺から第二辺へと、前記大面積膨出部側へと傾斜させて、互いに略平行に設けられている請求項1または請求項2に記載のバスト補整用パッド。
【請求項4】
前記大面積膨出部をカップ部内の前中心側に位置させることで、バスト押し上げ機能を付与している一方、
前記大面積膨出部をカップ部内の脇側に位置させることで、バストを前中心に寄せる機能を付与している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバスト補整用パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−303013(P2007−303013A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131209(P2006−131209)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】