バスドラムの音響出力特性の最適化方法及び装置
バスキックドラムのパンチを最大化し、同時にドラムのリンギングを最小化する装置及び方法を提供し、この装置は、ドラムの共鳴膜内の通常の円形開口部内に滑り込むように構成された円柱形の本体を有する挿入具を具えている。この挿入具は共鳴膜の基本周波数を低下させ、この基本周波数の振幅を増加させ、同時に共鳴膜の振動を減衰させる寸法及び重量にされている。ドラムのリンギングは、共鳴膜の振動を速やかに減衰させることによって最小化され、減衰の増加は挿入具の重量及び形状によって生じる。ドラムの音を最適化する方法が提供され、この方法によって、パンチを最大化し共鳴膜のリンギングを最小化するように挿入具のサイズを調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本願は、米国特許出願公開第60/904619号、2007年3月2日出願に基づいて優先権を主張する。
【0002】
(発明の序論及び概要)
本発明は一般に、バスキックドラムの音響出力を最適化する技術に属する。音響出力は、バッター(打奏)ヘッド膜、共鳴膜、及びこれらの間の空間、そしてこれらの構成要素の個別の共振特性、及びこれらの構成要素のすべてを組み合わせた相互作用の共振特性を共に要因とする。以下に説明するように、本発明のシステムはまず第1に、共鳴膜の基本共振周波数を適応的に低下させ、共鳴膜の基本共振周波数の振幅を増加させ、これによりバスキックドラムの総合特性を高め、そして改善された減衰(ダンピング)特性を提供し音響出力を動的に抑圧することによって、不快な、あるいは不協和音の倍音及び「リンギング」としても知られている音波の不所望な継続を低減し、これらのすべてが従来技術に対して大いに望まれる改善である。さらに、本発明は、1つの好適例におけるその容易に着脱可能で持ち運び可能な設計により、ユーザが装置を、バスキックドラムの共鳴膜内の開口部を通して直接共鳴室内に挿入することによって、ユーザがドラムを開けることなしに装置を使用することを可能にする。
【0003】
本発明の装置は、質量を有し共鳴膜に結合され、共鳴膜の質量を増加させ、これにより共鳴膜の基本共振周波数を低下させ、そしてその革新的な結合により、同時に「リンギング」として知られている振動を減衰させ、これらのすべてが所望される改善である。これに加えて、本発明は、共鳴膜に取り付けられた調律口(調律ポート)を構成し共鳴室内に延長して、バスドラムの所望の周波数特性をさらに適応的に引き上げて強化する。さらに、本発明は、共鳴膜内の開口部を通した音波の伝搬を瞬時に制限し、そして音的に温かみのある動的な抑圧を加えるものと確信する。以上のことの結果は、低周波数の増加、より良好な鮮明度、明快さ、変化する音環境におけるより整合した音、及び動的な衝撃の増加である。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景の説明)
バスドラムの出力音は本質的に、単純な弦(ストリング)よりも最適化することがずっと困難である。すべての弦楽器に用いられる振動弦は、第2次元で振動する一次元体である。振動弦は、弦の基本周波数の整数倍である快適な音の倍音の高調波を生成する。弦の基本周波数の「ピッチ」を「調律」または「調整」することは、弦の張りを緩めるか締める単純なことである。
【0005】
振動弦とは対照的に、円形のバスキックドラムの膜は、第3次元のベッセル関数方程式で記述さえる複雑な様式で振動する二次元体である。ドラムは振動弦のように「調律」することはできない。以下に説明するように、本発明は、ユーザが所望の共振周波数を「調律」または調整することを可能にし、同時に「リンギング」として知られている不所望な倍音を最小化する。
【0006】
バッターヘッド膜をフットペダルによって叩くと共鳴膜が振動し、この振動は所望の基本共振周波数を、非高調波の不快な、及び/または不協和音のリンギングの倍音と共に含む。これらの不快な倍音は円形のドラム膜に固有であり、共鳴するドラムヘッドの張りを単に調整するだけでは除去または低減することができない。主な不協和音の倍音は、ドラムヘッド膜に加える張力にかかわらず、ドラムヘッド膜の基本周波数の約2.4倍である。上述した不協和音の倍音は、2つのドラムヘッド、即ち共鳴ヘッド膜及びバッターヘッド膜を有するバスドラムでも生成される。
【0007】
共鳴膜が非減衰の様式で振動を許容するならば、不協和音の不所望な周波数が継続し、これは耳につくだけでなく、実際に次の音波と干渉し、フットペダルのビーター(叩く道具)がバッターヘッド膜を叩く際に生成される後続音としばしば干渉しがちであるものと確信する。「リンギング」はさらに、固有の不協和音の倍音と共鳴膜の非減衰振動との組合せの結果としても発生するものと確信する。本発明は、共鳴膜の振動を速やかに減衰させることによって「リンギング」を最小化する。
【0008】
打楽器(パーカッション)産業が一般にバスドラムの音響出力の「パンチ」と表現するものを増加させることが望まれる。発明の詳細な説明及び請求項中で用いるように、「パンチ」は次の3つの特徴を含むように定義されている:
(1) 共鳴膜の基本共振周波数の低下;
(2) この基本共振周波数の振幅の増加;及び、
(3) 共鳴膜の減衰の増加。共鳴膜の減衰の増加は、後続する音波と干渉する不所望な音調の継続を低減する。
これら3つの特徴は、以下に説明するように科学的に測定することができる。これら3つの測定可能な特徴に加えて、本発明は、共鳴室から共鳴膜を通って出る音波の制限によって音響出力を動的に抑圧するものと確信する。
【0009】
共鳴膜の基本周波数を低下させることは、より深みのある、より充実した音響出力を生成し、こうした音響出力は「パンチ」の一要素である。ベッセル関数方程式として知られているように、円形ドラム膜の基本共振周波数は3つの変数によって支配される。第1の変数は膜の直径であり、直径が大きいほど基本共振周波数が低い。第2の変数は振動膜の質量であり、質量が大きいほど基本共振周波数が低い。第3の変数はドラムヘッド膜に加える張力であり、張力が大きいほど基本共振周波数が高い。
【0010】
種々の従来技術は、バスドラムの出力音を最適化することを企図し、即ち、バスキックドラムの「リンギング」を低減し、かつ/または「パンチ」を増加させようとしてきた。これらの技術は一般に、「リンギング」の問題にも「パンチ」の問題にも個別に応えている。例えば、Billingsによる特許文献1(米国特許第4805514号明細書)は、二重膜のバスキックドラムを開け、装置をドラム内に配置し、接着して取り付け、そしてドラムを閉じることを要求する。この従来技術の装置は周波数調整能力を有しない。さらに、調律及び他の調整を断念せざるを得ないドラマー(ドラム奏者)にとって、ドラムを開けることは、装置を設置し、そしてドラムヘッドを締め直す/調律することを達成するために必要な時間に加えて不都合である。
【0011】
特許文献1のさらなる欠点は、その設計が、共鳴室に挿入されるテーパー形(先細り)の入口を利用し、この入口は共鳴膜内に形成される円形の開口部または出口より大きいことにある。この設計は、ビーターのアタックの大きな度合いをバッター膜上に伝え、このことは高周波数の不所望な増加であるものと確信する。以下により詳細に説明するように、本発明は、円柱体を有する挿入具を利用し、この挿入具は共鳴室内に延び、特許文献1とは逆向きに口広げ(フレア)加工され、それ自体は、共鳴室からの音響出力をマイクロホンまたは音環境に集中させて伝える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4805514号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、円形バスキックドラムの基本共振周波数を低下させる新規の方法及び装置を提供する。ドラマーはまず第1に、基本共振周波数を適応的に低下させることによって、バスキックドラムの「パンチ」を容易に最大化することができる。以下に説明する挿入具に「質量」または「重量」を加えることによって、ユーザは共鳴膜の基本共振周波数を適応的に低下させることができる。
【0014】
これに加えて、本発明の設計は「調律口」を構成し、この調律口は、挿入されると共鳴膜の基本共振周波数の振幅を増加させる新規の方法を提供する。
【0015】
本発明の主目的は、「リンギング」を最小化する減衰(ダンピング)を同時に提供することにあり、リンギングは、固有の不協和音または不快な倍音と、最小化しなければ発生し続けて後続の音波と干渉する共鳴膜の振動との組合せである。
【0016】
本発明の他の目的は、バスキックドラム用の「調律口」を構成する新規の挿入具を提供することにあり、この挿入具は同時に、所望の基本共振周波数の振幅を適応的に増加させ、ユーザが、自然な元の音質を保ちつつ音響出力を「調律」することを可能にする。
【0017】
本発明の他の目的は、共鳴室から出る音波を瞬時に制限することによって、出力を動的に抑圧する新規の挿入具を提供することにあり、この挿入具は、変化する音環境により整合する音を生じさせるものと確信する。
【0018】
本発明の他の目的は、共鳴室から出る音をマイクロホンに集中させる新規の挿入具を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、ドラムの「パンチ」を最大化し、同時に「リンギング」を最小化することによって、バスキックドラムの音出力を適応的に最適化する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の最後の目的は、工業規格の5インチ(12.7cm)の共鳴ドラム開口部ではなく、清潔で、力強く、美的に感じの良い外観を与える新規の挿入具を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的及び利点は、以下の図面を参照した説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例の概略図である。
【図2】図2A及び2Bはそれぞれ、図1で利用する挿入物の正面図及び背面図であり、ドラムに接続する前の挿入具を示す。
【図3】本発明の第2実施例の概略図である。
【図4】図4A、4B及び4Cは、単一ドラムの出力を比較するグラフ表示であり、図4Aは本発明を適用しないドラムの出力を示し、図4Bは第1実施例を適用した出力を示し、図4Cは第2実施例を適用した出力を示す。
【図5】図5A、5B及び5Cはそれぞれ、図4A〜4Cのグラフに対応する表であり、振動するドラムヘッドによって生成される種々の周波数のデシベルレベルを示す。
【図6】本発明の第3実施例の概略図である。
【図7】本発明の第4実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(図面の詳細な説明)
図1は、本発明の第1実施例の概略図である。全体を10で示すバスドラムは2つの円形膜11及び12を含む。膜11は一般にバッター(打奏)ヘッド膜と称され、通常のバスドラムペダル14及びストライカー(叩く道具)またはビーター15によって叩かれる。第2の幕2は通常、ドラムヘッドまたは共鳴膜と称され、一般に、従来技術で知られているように膜12内に形成された円形開口部12aを有する。開口部12aは、現在技術で知られているように、ドラム10の音響出力を最適化することを助けるために設けられている。
【0024】
本発明によれば、新規の着脱可能な挿入具20を単純に膜12の開口部12a内に滑り込ませ、そして図1に示す第1実施例では少し回転させ、この少しの回転により、複数のゴム(ラバー)フィンまたは装着手段30が共鳴膜12の内面に対して外向きに延びて、挿入具20を共鳴膜12に強固に取り付ける。取り付けの他の手段は以下に説明する。
【0025】
挿入具20は円柱体25を含み、この円柱体上に複数のフィン30が装着されている。円柱体25の外径「d」は、円柱体及びフィン30が共鳴膜12内の開口部12aを通って滑り込むことができるように構成されている。挿入具20はその外側端に口広げ(フレア)加工されたフランジ40を有し、このフランジは膜12を通って外向きに延び、矢印99で示す外向きに口広げ加工さられている。なお重要なこととして、挿入具20の重量は共鳴膜12によって完全に担持される。上記のように、挿入具20の重量または質量が膜12の質量に加わり、膜12の基本周波数を直接低減する。
【0026】
本発明は、ペダル14を動かしてストライカー15にドラムのバッターヘッドまたはアタック膜11を打撃させる毎に、その後のドラム10の「パンチ」の増加をもたらす。この増加した「パンチ」は、挿入具20の重量を特定ドラム用に最適化することと、円柱体25を、アタック膜11を叩くことに応答して共鳴膜12が動く振幅を最大化するような寸法及び形状にすることとの組合せによってもたらされる。本発明の挿入具は円柱体25を利用し、円柱体25の内側端26は円柱体25の全体部分と同径であり、内側端26は共鳴膜12とバッターヘッド膜11との間に位置する。このことは、以上で参照した特許文献1に用いられているベル形または大きく口広げ加工されたベル10との明確な違いである。特許文献1のベル10の使用は、アタック膜によって生成されるエネルギーの大部分を、共鳴膜内の開口部を通る向きに指向させがちである。これとは対照的に、本発明の挿入具は、バッターヘッド膜によって生成されるエネルギーが共鳴膜12に直接伝達される割合を最大化する。挿入体20の円柱体25は、バッターヘッド膜によって生成されるエネルギーの小さい部分を除いたすべてを共鳴膜12に直接指向させやすい。円柱体25の長さ「L」は、その直径「d」を超える。この幾何学的形状は、バッターヘッド膜が叩かれた後に開口部12aを通過する音波を瞬時に制限する。挿入具20の重量、直径及び長さを定めることによって、ドラムの「パンチ」に合わせた調整が行われる。
【0027】
図1に示すドラムから挿入具20を取り除けば、ドラムの「パンチ」は次の2つの理由で低減される:第1に、挿入具を取り除くことによって共鳴膜の質量が大幅に低減され、第2に、バッターヘッド膜を叩くことによって生成されるエネルギーが共鳴膜12の開口部12aを容易に通過する。
【0028】
ドラムのリンギングは、挿入具20の重量を共鳴膜12に加えることによって最小化される。この重量は挿入具20の粘性との組合せで音響出力を速やかに減衰させ、このことはリンギングを低減させるものと確信する。
【0029】
図2A及び2Bはそれぞれ、膜12の開口部12a内に挿入する前の挿入具20の正面図及び背面図である。正面図(図2A)に示すように、口広げ加工された外側端がフランジ40であり、フランジ40は円形であり、円柱体25から外向きに延びる。フランジ40の外径を超えて延びるゴムフィン30の先端が見える。図2A及び2Bに示す例では、円柱体25は4インチ(10.16cm)の内径及び6インチ(15.24cm)の長さを有する。
【0030】
背面図(図2B)に示すように、フィン30は円柱体25に、点30aにおいて接線方向に接着剤で取り付けられている。口広げ加工された外側端40に隣接して、発泡性ガスケット(詰め物)60が担持されている。発泡性ガスケット60は、挿入具20を共鳴膜12に取り付けると膜12に寄り付く。挿入具20は、図2Bに示すように単に反時計方向に回転させることによって開口部12a内に滑り込み、これにより弾性フィン30が開口部12aを通過することができる。一旦、挿入具20が開口部12a内に一番奥まで滑り込み、これによりガスケット60が挿入具20に寄り付くと、図2Bに示すように挿入具20を時計方向に回転させて、フィン30を外向きに動かして膜12を掴ませる。挿入具20の除去は、図2Bに示すように、単に挿入具20を反時計方向に回転させて、挿入具20を、開口部12aを通して外向きに滑らせることによって達成される。フィン30は先を切り取ったベル形を有し、これにより挿入具20は容易に開口部12a内に滑り込み、開口部12aから滑り出ることができる。フィン30はゴム製であり、50〜55のデュロメーターレベルを有し、0.125インチ(3.175mm)の厚さを有する。
【0031】
図3に本発明の代案実施例を示し、この実施例では、図1に示すような膜11及び12を有するバスドラム10が、代案の挿入具120を取り付けられている。挿入具120は、図1に示す挿入具20とは1つの重要な態様が異なる。挿入具120は重り151及び152を含み、各々が重さ1オンス(28.3495g)であり、これらの重りが挿入具120の円柱体125に付け加えられて挿入具120の全重量を増加させる。
【0032】
図4A、4B及び4Cは、実験室での試行中に達成された音響出力のグラフ表示である。図4A〜4Cは、横軸に秒単位で示す時間に対するドラム出力の振幅を縦軸に示す。
【0033】
図4Aは、挿入具を共鳴膜に接続していない22インチ(55.88cm)のバスキックドラムを叩くことによって生成された。2秒間以上にわたって延びるドラムの持続的振動が「リンギング」の現象を示す。
【0034】
図4Bに、挿入具20が7.35オンス(208.37g)の重量を有する同じ22インチのドラムに適用した本発明の第1実施例(図1)の出力を示す。図4Bに見られるように、出力は速やかに減衰し、図4Aに示すリンギング効果は約1.5秒以下で速やかに終了している。
【0035】
図4Cに、(図3に示す)本発明の第2実施例の減衰を示し、ここでは挿入具120に1オンスを追加してその重量を8.35オンス(236.72g)に増加させている。ここでもリンギング効果は速やかに終了している。
【0036】
図5A、5B及び5Cに示す表は、図4A、4B及び4Cに示すグラフと共に実験室で生成されたものである。
【0037】
基本共振周波数及び振幅を図5A〜5Cに、最大デシベルレベルを有する2つの周波数の平均をとり、それぞれの周波数のデシベル値を平均することによって示す。図5では、最大振幅を有する2つの周波数は45.75Hz及び43.06Hzである。従って基本周波数は約44.4Hzであり、振幅は7.17dBと6.43dBの平均値、または約6.8dBである。
【0038】
図5Aは図4Aに対応し、ここではドラムが挿入具を取り付けられていない。
【0039】
図5Bの表は、挿入具20を取り付けた第1実施例(図1)により、共鳴膜の基本周波数が44.4Hzから28.3Hzに低下していることを示している。このことは、共鳴膜の基本周波数の33%以上の低下を示す。なお重要なこととして、デシベル単位の出力レベルが6.8デシベルから約10.5デシベルに増加し、これは、共鳴膜12における基本周波数の振動の振幅の、約50%の増加である。このことは音響出力の「パンチ」を大幅に増加させる。
【0040】
図5Cの表は図4Cに対応し、1オンスを追加して挿入具120の全重量を8.35オンスに増加させた図3の挿入具120の音響出力を示す。挿入具120へのこの重りの追加は、基本周波数を約25.6Hzに(約10%)低下させ、振幅を約10.5デシベルから約10.2デシベルに少し低下させている。
【0041】
図4A〜4Cのグラフ及び図5A〜5Cの表を生成するために利用したドラムは、直径22インチのバスキックドラムである。共鳴膜はマイラーフィルム製であり、14オンス(394.89g)の全重量を有する。図4B、4Cのグラフ及び図5B、5Cの表を生成するために利用した挿入具20、120は、8個のゴムフィン30を利用している。円柱体25、125の各々は、4インチ(10.16cm)の内径及び6インチ(15.24cm)の長さを有する。各ゴムフィンは、50〜55のデュロメター率を有するゴム製である。挿入具120(図3)に用いた追加的重りは、単にこの重りを円柱体125に接着剤で取り付けることによって追加した。
【0042】
図6に第3実施例を示し、ここでは挿入具220が、円柱体225、及びフランジ240付きの口広げ加工された外側端を有する。ゴム(ラバー)スリーブ270は円柱体225上を滑る。スリーブ270の前端は外向きに口広げ加工されて外周フランジ271を形成する。フランジ271は共鳴膜12に接触し、これにより共鳴膜12は、外側フランジ240と外周フランジ271との間に強固に係合されている。ゴムスリーブ270はストップリング(止め環)275によって定位置に保持される。挿入具220は、ドラム10を開けるか、膜12をドラムに取り付ける前に膜12に付けるかのいずれかによって付けなければならない。
【0043】
図7に第4実施例を示し、ここでは挿入具320が円柱体325、及びフランジ340付きの口広げ加工された外側端を有する。フランジ340と共鳴膜12との間に接着剤345を塗布して、挿入具320を膜12に装着する。この実施例では、機械的コネクタなしに、接着剤345が挿入具320を膜12に接続する。
【0044】
他の装着手段を利用して、本発明の円柱体及びフランジを共鳴膜に取り付けることができ、これらの装着手段は、挿入具及び/または挿入具のフランジを共鳴膜に強固に取り付けるあらゆる機械的接続装置及び/または接着剤を含む。
【0045】
以上の本発明の説明は例示及び説明目的で提示したものであり、網羅的であることを意図したものではなく、本発明を開示した形態そのものに限定することを意図したものでもない。以上の教示を考慮すれば、変更及び変形が可能である。これらの実施例は本発明の原理を最良に説明するために選定して記載したものであり、従ってその実際の応用は、他の当業者が種々の実施例における本発明を最良に利用することを可能にし、特定の利用に適した種々の変更が考えられる。本発明の範囲は請求項によって規定される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本願は、米国特許出願公開第60/904619号、2007年3月2日出願に基づいて優先権を主張する。
【0002】
(発明の序論及び概要)
本発明は一般に、バスキックドラムの音響出力を最適化する技術に属する。音響出力は、バッター(打奏)ヘッド膜、共鳴膜、及びこれらの間の空間、そしてこれらの構成要素の個別の共振特性、及びこれらの構成要素のすべてを組み合わせた相互作用の共振特性を共に要因とする。以下に説明するように、本発明のシステムはまず第1に、共鳴膜の基本共振周波数を適応的に低下させ、共鳴膜の基本共振周波数の振幅を増加させ、これによりバスキックドラムの総合特性を高め、そして改善された減衰(ダンピング)特性を提供し音響出力を動的に抑圧することによって、不快な、あるいは不協和音の倍音及び「リンギング」としても知られている音波の不所望な継続を低減し、これらのすべてが従来技術に対して大いに望まれる改善である。さらに、本発明は、1つの好適例におけるその容易に着脱可能で持ち運び可能な設計により、ユーザが装置を、バスキックドラムの共鳴膜内の開口部を通して直接共鳴室内に挿入することによって、ユーザがドラムを開けることなしに装置を使用することを可能にする。
【0003】
本発明の装置は、質量を有し共鳴膜に結合され、共鳴膜の質量を増加させ、これにより共鳴膜の基本共振周波数を低下させ、そしてその革新的な結合により、同時に「リンギング」として知られている振動を減衰させ、これらのすべてが所望される改善である。これに加えて、本発明は、共鳴膜に取り付けられた調律口(調律ポート)を構成し共鳴室内に延長して、バスドラムの所望の周波数特性をさらに適応的に引き上げて強化する。さらに、本発明は、共鳴膜内の開口部を通した音波の伝搬を瞬時に制限し、そして音的に温かみのある動的な抑圧を加えるものと確信する。以上のことの結果は、低周波数の増加、より良好な鮮明度、明快さ、変化する音環境におけるより整合した音、及び動的な衝撃の増加である。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景の説明)
バスドラムの出力音は本質的に、単純な弦(ストリング)よりも最適化することがずっと困難である。すべての弦楽器に用いられる振動弦は、第2次元で振動する一次元体である。振動弦は、弦の基本周波数の整数倍である快適な音の倍音の高調波を生成する。弦の基本周波数の「ピッチ」を「調律」または「調整」することは、弦の張りを緩めるか締める単純なことである。
【0005】
振動弦とは対照的に、円形のバスキックドラムの膜は、第3次元のベッセル関数方程式で記述さえる複雑な様式で振動する二次元体である。ドラムは振動弦のように「調律」することはできない。以下に説明するように、本発明は、ユーザが所望の共振周波数を「調律」または調整することを可能にし、同時に「リンギング」として知られている不所望な倍音を最小化する。
【0006】
バッターヘッド膜をフットペダルによって叩くと共鳴膜が振動し、この振動は所望の基本共振周波数を、非高調波の不快な、及び/または不協和音のリンギングの倍音と共に含む。これらの不快な倍音は円形のドラム膜に固有であり、共鳴するドラムヘッドの張りを単に調整するだけでは除去または低減することができない。主な不協和音の倍音は、ドラムヘッド膜に加える張力にかかわらず、ドラムヘッド膜の基本周波数の約2.4倍である。上述した不協和音の倍音は、2つのドラムヘッド、即ち共鳴ヘッド膜及びバッターヘッド膜を有するバスドラムでも生成される。
【0007】
共鳴膜が非減衰の様式で振動を許容するならば、不協和音の不所望な周波数が継続し、これは耳につくだけでなく、実際に次の音波と干渉し、フットペダルのビーター(叩く道具)がバッターヘッド膜を叩く際に生成される後続音としばしば干渉しがちであるものと確信する。「リンギング」はさらに、固有の不協和音の倍音と共鳴膜の非減衰振動との組合せの結果としても発生するものと確信する。本発明は、共鳴膜の振動を速やかに減衰させることによって「リンギング」を最小化する。
【0008】
打楽器(パーカッション)産業が一般にバスドラムの音響出力の「パンチ」と表現するものを増加させることが望まれる。発明の詳細な説明及び請求項中で用いるように、「パンチ」は次の3つの特徴を含むように定義されている:
(1) 共鳴膜の基本共振周波数の低下;
(2) この基本共振周波数の振幅の増加;及び、
(3) 共鳴膜の減衰の増加。共鳴膜の減衰の増加は、後続する音波と干渉する不所望な音調の継続を低減する。
これら3つの特徴は、以下に説明するように科学的に測定することができる。これら3つの測定可能な特徴に加えて、本発明は、共鳴室から共鳴膜を通って出る音波の制限によって音響出力を動的に抑圧するものと確信する。
【0009】
共鳴膜の基本周波数を低下させることは、より深みのある、より充実した音響出力を生成し、こうした音響出力は「パンチ」の一要素である。ベッセル関数方程式として知られているように、円形ドラム膜の基本共振周波数は3つの変数によって支配される。第1の変数は膜の直径であり、直径が大きいほど基本共振周波数が低い。第2の変数は振動膜の質量であり、質量が大きいほど基本共振周波数が低い。第3の変数はドラムヘッド膜に加える張力であり、張力が大きいほど基本共振周波数が高い。
【0010】
種々の従来技術は、バスドラムの出力音を最適化することを企図し、即ち、バスキックドラムの「リンギング」を低減し、かつ/または「パンチ」を増加させようとしてきた。これらの技術は一般に、「リンギング」の問題にも「パンチ」の問題にも個別に応えている。例えば、Billingsによる特許文献1(米国特許第4805514号明細書)は、二重膜のバスキックドラムを開け、装置をドラム内に配置し、接着して取り付け、そしてドラムを閉じることを要求する。この従来技術の装置は周波数調整能力を有しない。さらに、調律及び他の調整を断念せざるを得ないドラマー(ドラム奏者)にとって、ドラムを開けることは、装置を設置し、そしてドラムヘッドを締め直す/調律することを達成するために必要な時間に加えて不都合である。
【0011】
特許文献1のさらなる欠点は、その設計が、共鳴室に挿入されるテーパー形(先細り)の入口を利用し、この入口は共鳴膜内に形成される円形の開口部または出口より大きいことにある。この設計は、ビーターのアタックの大きな度合いをバッター膜上に伝え、このことは高周波数の不所望な増加であるものと確信する。以下により詳細に説明するように、本発明は、円柱体を有する挿入具を利用し、この挿入具は共鳴室内に延び、特許文献1とは逆向きに口広げ(フレア)加工され、それ自体は、共鳴室からの音響出力をマイクロホンまたは音環境に集中させて伝える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4805514号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、円形バスキックドラムの基本共振周波数を低下させる新規の方法及び装置を提供する。ドラマーはまず第1に、基本共振周波数を適応的に低下させることによって、バスキックドラムの「パンチ」を容易に最大化することができる。以下に説明する挿入具に「質量」または「重量」を加えることによって、ユーザは共鳴膜の基本共振周波数を適応的に低下させることができる。
【0014】
これに加えて、本発明の設計は「調律口」を構成し、この調律口は、挿入されると共鳴膜の基本共振周波数の振幅を増加させる新規の方法を提供する。
【0015】
本発明の主目的は、「リンギング」を最小化する減衰(ダンピング)を同時に提供することにあり、リンギングは、固有の不協和音または不快な倍音と、最小化しなければ発生し続けて後続の音波と干渉する共鳴膜の振動との組合せである。
【0016】
本発明の他の目的は、バスキックドラム用の「調律口」を構成する新規の挿入具を提供することにあり、この挿入具は同時に、所望の基本共振周波数の振幅を適応的に増加させ、ユーザが、自然な元の音質を保ちつつ音響出力を「調律」することを可能にする。
【0017】
本発明の他の目的は、共鳴室から出る音波を瞬時に制限することによって、出力を動的に抑圧する新規の挿入具を提供することにあり、この挿入具は、変化する音環境により整合する音を生じさせるものと確信する。
【0018】
本発明の他の目的は、共鳴室から出る音をマイクロホンに集中させる新規の挿入具を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、ドラムの「パンチ」を最大化し、同時に「リンギング」を最小化することによって、バスキックドラムの音出力を適応的に最適化する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の最後の目的は、工業規格の5インチ(12.7cm)の共鳴ドラム開口部ではなく、清潔で、力強く、美的に感じの良い外観を与える新規の挿入具を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的及び利点は、以下の図面を参照した説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例の概略図である。
【図2】図2A及び2Bはそれぞれ、図1で利用する挿入物の正面図及び背面図であり、ドラムに接続する前の挿入具を示す。
【図3】本発明の第2実施例の概略図である。
【図4】図4A、4B及び4Cは、単一ドラムの出力を比較するグラフ表示であり、図4Aは本発明を適用しないドラムの出力を示し、図4Bは第1実施例を適用した出力を示し、図4Cは第2実施例を適用した出力を示す。
【図5】図5A、5B及び5Cはそれぞれ、図4A〜4Cのグラフに対応する表であり、振動するドラムヘッドによって生成される種々の周波数のデシベルレベルを示す。
【図6】本発明の第3実施例の概略図である。
【図7】本発明の第4実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(図面の詳細な説明)
図1は、本発明の第1実施例の概略図である。全体を10で示すバスドラムは2つの円形膜11及び12を含む。膜11は一般にバッター(打奏)ヘッド膜と称され、通常のバスドラムペダル14及びストライカー(叩く道具)またはビーター15によって叩かれる。第2の幕2は通常、ドラムヘッドまたは共鳴膜と称され、一般に、従来技術で知られているように膜12内に形成された円形開口部12aを有する。開口部12aは、現在技術で知られているように、ドラム10の音響出力を最適化することを助けるために設けられている。
【0024】
本発明によれば、新規の着脱可能な挿入具20を単純に膜12の開口部12a内に滑り込ませ、そして図1に示す第1実施例では少し回転させ、この少しの回転により、複数のゴム(ラバー)フィンまたは装着手段30が共鳴膜12の内面に対して外向きに延びて、挿入具20を共鳴膜12に強固に取り付ける。取り付けの他の手段は以下に説明する。
【0025】
挿入具20は円柱体25を含み、この円柱体上に複数のフィン30が装着されている。円柱体25の外径「d」は、円柱体及びフィン30が共鳴膜12内の開口部12aを通って滑り込むことができるように構成されている。挿入具20はその外側端に口広げ(フレア)加工されたフランジ40を有し、このフランジは膜12を通って外向きに延び、矢印99で示す外向きに口広げ加工さられている。なお重要なこととして、挿入具20の重量は共鳴膜12によって完全に担持される。上記のように、挿入具20の重量または質量が膜12の質量に加わり、膜12の基本周波数を直接低減する。
【0026】
本発明は、ペダル14を動かしてストライカー15にドラムのバッターヘッドまたはアタック膜11を打撃させる毎に、その後のドラム10の「パンチ」の増加をもたらす。この増加した「パンチ」は、挿入具20の重量を特定ドラム用に最適化することと、円柱体25を、アタック膜11を叩くことに応答して共鳴膜12が動く振幅を最大化するような寸法及び形状にすることとの組合せによってもたらされる。本発明の挿入具は円柱体25を利用し、円柱体25の内側端26は円柱体25の全体部分と同径であり、内側端26は共鳴膜12とバッターヘッド膜11との間に位置する。このことは、以上で参照した特許文献1に用いられているベル形または大きく口広げ加工されたベル10との明確な違いである。特許文献1のベル10の使用は、アタック膜によって生成されるエネルギーの大部分を、共鳴膜内の開口部を通る向きに指向させがちである。これとは対照的に、本発明の挿入具は、バッターヘッド膜によって生成されるエネルギーが共鳴膜12に直接伝達される割合を最大化する。挿入体20の円柱体25は、バッターヘッド膜によって生成されるエネルギーの小さい部分を除いたすべてを共鳴膜12に直接指向させやすい。円柱体25の長さ「L」は、その直径「d」を超える。この幾何学的形状は、バッターヘッド膜が叩かれた後に開口部12aを通過する音波を瞬時に制限する。挿入具20の重量、直径及び長さを定めることによって、ドラムの「パンチ」に合わせた調整が行われる。
【0027】
図1に示すドラムから挿入具20を取り除けば、ドラムの「パンチ」は次の2つの理由で低減される:第1に、挿入具を取り除くことによって共鳴膜の質量が大幅に低減され、第2に、バッターヘッド膜を叩くことによって生成されるエネルギーが共鳴膜12の開口部12aを容易に通過する。
【0028】
ドラムのリンギングは、挿入具20の重量を共鳴膜12に加えることによって最小化される。この重量は挿入具20の粘性との組合せで音響出力を速やかに減衰させ、このことはリンギングを低減させるものと確信する。
【0029】
図2A及び2Bはそれぞれ、膜12の開口部12a内に挿入する前の挿入具20の正面図及び背面図である。正面図(図2A)に示すように、口広げ加工された外側端がフランジ40であり、フランジ40は円形であり、円柱体25から外向きに延びる。フランジ40の外径を超えて延びるゴムフィン30の先端が見える。図2A及び2Bに示す例では、円柱体25は4インチ(10.16cm)の内径及び6インチ(15.24cm)の長さを有する。
【0030】
背面図(図2B)に示すように、フィン30は円柱体25に、点30aにおいて接線方向に接着剤で取り付けられている。口広げ加工された外側端40に隣接して、発泡性ガスケット(詰め物)60が担持されている。発泡性ガスケット60は、挿入具20を共鳴膜12に取り付けると膜12に寄り付く。挿入具20は、図2Bに示すように単に反時計方向に回転させることによって開口部12a内に滑り込み、これにより弾性フィン30が開口部12aを通過することができる。一旦、挿入具20が開口部12a内に一番奥まで滑り込み、これによりガスケット60が挿入具20に寄り付くと、図2Bに示すように挿入具20を時計方向に回転させて、フィン30を外向きに動かして膜12を掴ませる。挿入具20の除去は、図2Bに示すように、単に挿入具20を反時計方向に回転させて、挿入具20を、開口部12aを通して外向きに滑らせることによって達成される。フィン30は先を切り取ったベル形を有し、これにより挿入具20は容易に開口部12a内に滑り込み、開口部12aから滑り出ることができる。フィン30はゴム製であり、50〜55のデュロメーターレベルを有し、0.125インチ(3.175mm)の厚さを有する。
【0031】
図3に本発明の代案実施例を示し、この実施例では、図1に示すような膜11及び12を有するバスドラム10が、代案の挿入具120を取り付けられている。挿入具120は、図1に示す挿入具20とは1つの重要な態様が異なる。挿入具120は重り151及び152を含み、各々が重さ1オンス(28.3495g)であり、これらの重りが挿入具120の円柱体125に付け加えられて挿入具120の全重量を増加させる。
【0032】
図4A、4B及び4Cは、実験室での試行中に達成された音響出力のグラフ表示である。図4A〜4Cは、横軸に秒単位で示す時間に対するドラム出力の振幅を縦軸に示す。
【0033】
図4Aは、挿入具を共鳴膜に接続していない22インチ(55.88cm)のバスキックドラムを叩くことによって生成された。2秒間以上にわたって延びるドラムの持続的振動が「リンギング」の現象を示す。
【0034】
図4Bに、挿入具20が7.35オンス(208.37g)の重量を有する同じ22インチのドラムに適用した本発明の第1実施例(図1)の出力を示す。図4Bに見られるように、出力は速やかに減衰し、図4Aに示すリンギング効果は約1.5秒以下で速やかに終了している。
【0035】
図4Cに、(図3に示す)本発明の第2実施例の減衰を示し、ここでは挿入具120に1オンスを追加してその重量を8.35オンス(236.72g)に増加させている。ここでもリンギング効果は速やかに終了している。
【0036】
図5A、5B及び5Cに示す表は、図4A、4B及び4Cに示すグラフと共に実験室で生成されたものである。
【0037】
基本共振周波数及び振幅を図5A〜5Cに、最大デシベルレベルを有する2つの周波数の平均をとり、それぞれの周波数のデシベル値を平均することによって示す。図5では、最大振幅を有する2つの周波数は45.75Hz及び43.06Hzである。従って基本周波数は約44.4Hzであり、振幅は7.17dBと6.43dBの平均値、または約6.8dBである。
【0038】
図5Aは図4Aに対応し、ここではドラムが挿入具を取り付けられていない。
【0039】
図5Bの表は、挿入具20を取り付けた第1実施例(図1)により、共鳴膜の基本周波数が44.4Hzから28.3Hzに低下していることを示している。このことは、共鳴膜の基本周波数の33%以上の低下を示す。なお重要なこととして、デシベル単位の出力レベルが6.8デシベルから約10.5デシベルに増加し、これは、共鳴膜12における基本周波数の振動の振幅の、約50%の増加である。このことは音響出力の「パンチ」を大幅に増加させる。
【0040】
図5Cの表は図4Cに対応し、1オンスを追加して挿入具120の全重量を8.35オンスに増加させた図3の挿入具120の音響出力を示す。挿入具120へのこの重りの追加は、基本周波数を約25.6Hzに(約10%)低下させ、振幅を約10.5デシベルから約10.2デシベルに少し低下させている。
【0041】
図4A〜4Cのグラフ及び図5A〜5Cの表を生成するために利用したドラムは、直径22インチのバスキックドラムである。共鳴膜はマイラーフィルム製であり、14オンス(394.89g)の全重量を有する。図4B、4Cのグラフ及び図5B、5Cの表を生成するために利用した挿入具20、120は、8個のゴムフィン30を利用している。円柱体25、125の各々は、4インチ(10.16cm)の内径及び6インチ(15.24cm)の長さを有する。各ゴムフィンは、50〜55のデュロメター率を有するゴム製である。挿入具120(図3)に用いた追加的重りは、単にこの重りを円柱体125に接着剤で取り付けることによって追加した。
【0042】
図6に第3実施例を示し、ここでは挿入具220が、円柱体225、及びフランジ240付きの口広げ加工された外側端を有する。ゴム(ラバー)スリーブ270は円柱体225上を滑る。スリーブ270の前端は外向きに口広げ加工されて外周フランジ271を形成する。フランジ271は共鳴膜12に接触し、これにより共鳴膜12は、外側フランジ240と外周フランジ271との間に強固に係合されている。ゴムスリーブ270はストップリング(止め環)275によって定位置に保持される。挿入具220は、ドラム10を開けるか、膜12をドラムに取り付ける前に膜12に付けるかのいずれかによって付けなければならない。
【0043】
図7に第4実施例を示し、ここでは挿入具320が円柱体325、及びフランジ340付きの口広げ加工された外側端を有する。フランジ340と共鳴膜12との間に接着剤345を塗布して、挿入具320を膜12に装着する。この実施例では、機械的コネクタなしに、接着剤345が挿入具320を膜12に接続する。
【0044】
他の装着手段を利用して、本発明の円柱体及びフランジを共鳴膜に取り付けることができ、これらの装着手段は、挿入具及び/または挿入具のフランジを共鳴膜に強固に取り付けるあらゆる機械的接続装置及び/または接着剤を含む。
【0045】
以上の本発明の説明は例示及び説明目的で提示したものであり、網羅的であることを意図したものではなく、本発明を開示した形態そのものに限定することを意図したものでもない。以上の教示を考慮すれば、変更及び変形が可能である。これらの実施例は本発明の原理を最良に説明するために選定して記載したものであり、従ってその実際の応用は、他の当業者が種々の実施例における本発明を最良に利用することを可能にし、特定の利用に適した種々の変更が考えられる。本発明の範囲は請求項によって規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスキックドラムのパンチを最大化し、同時に前記バスキックドラムのリンギングを最小化する装置であって、前記バスキックドラムがバッターヘッド膜、共鳴膜、及びこの共鳴膜内に形成された円形開口部を有する装置において、
挿入具と;
前記挿入具を前記共鳴膜に接続する装着手段とを具え、
前記挿入具が円柱形の本体を有し、この本体は、前記共鳴膜内の前記円形開口部内に滑り込むように構成され、
前記挿入具の重量、及び前記本体の長さ及び直径が、前記バスキックドラムのパンチを最大化し、同時に前記バスキックドラムのリンギングを最小化する大きさにされていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記挿入具が、前記本体の外側端にあるフランジを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装着手段が、前記共鳴膜に着脱可能なように取り付け可能であり、前記装着手段が、前記本体によって担持される複数のフレキシブルフィンを具えていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記フランジが発泡性ガスケットを担持し、前記挿入具が、前記発泡性ガスケットと前記フレキシブルフィンとの間の前記共鳴膜に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記フレキシブルフィンが、前記本体の外周上に接線方向に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記フィンがゴムであることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装着手段が、前記フランジと前記共鳴膜との間に塗布された接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記挿入具が、前記本体の外側端にある口広げ加工されたフランジを含み、当該ゴムスリーブの前端に周囲フランジを有するゴムスリーブが前記本体によって担持され、これにより、前記共鳴膜が、前記口広げ加工されたフランジと前記周囲フランジとの間に保持されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
バスドラムの出力音を最適化する方法であって、前記出力音のパンチを最大化し、かつ前記出力音のリンギングを最小化し、前記ドラムは、バッターヘッド膜、共鳴膜、及びこの共鳴膜内の円形開口部を有し、長さ及び直径を有する円柱体を有する挿入具が、前記開口部内に滑り込むように構成され、かつ前記共鳴膜に接続され、前記挿入具の重量が調整可能である方法において、
前記共鳴膜の基本周波数を低下させ、同時に、前記音出力のリンギングを最小化するように前記挿入具の重量を調整するステップと;
前記挿入具を通り前記共鳴膜内の前記開口部を通る音波の瞬時の制限を生じさせ、これにより、前記バッターヘッド膜が叩かれた後の前記共鳴膜の振動の振幅を最大化するように、前記円柱体の前記長さ及び前記直径を定めるステップと
を具えていることを特徴とするバスドラムの出力音の最適化方法。
【請求項1】
バスキックドラムのパンチを最大化し、同時に前記バスキックドラムのリンギングを最小化する装置であって、前記バスキックドラムがバッターヘッド膜、共鳴膜、及びこの共鳴膜内に形成された円形開口部を有する装置において、
挿入具と;
前記挿入具を前記共鳴膜に接続する装着手段とを具え、
前記挿入具が円柱形の本体を有し、この本体は、前記共鳴膜内の前記円形開口部内に滑り込むように構成され、
前記挿入具の重量、及び前記本体の長さ及び直径が、前記バスキックドラムのパンチを最大化し、同時に前記バスキックドラムのリンギングを最小化する大きさにされていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記挿入具が、前記本体の外側端にあるフランジを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装着手段が、前記共鳴膜に着脱可能なように取り付け可能であり、前記装着手段が、前記本体によって担持される複数のフレキシブルフィンを具えていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記フランジが発泡性ガスケットを担持し、前記挿入具が、前記発泡性ガスケットと前記フレキシブルフィンとの間の前記共鳴膜に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記フレキシブルフィンが、前記本体の外周上に接線方向に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記フィンがゴムであることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装着手段が、前記フランジと前記共鳴膜との間に塗布された接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記挿入具が、前記本体の外側端にある口広げ加工されたフランジを含み、当該ゴムスリーブの前端に周囲フランジを有するゴムスリーブが前記本体によって担持され、これにより、前記共鳴膜が、前記口広げ加工されたフランジと前記周囲フランジとの間に保持されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
バスドラムの出力音を最適化する方法であって、前記出力音のパンチを最大化し、かつ前記出力音のリンギングを最小化し、前記ドラムは、バッターヘッド膜、共鳴膜、及びこの共鳴膜内の円形開口部を有し、長さ及び直径を有する円柱体を有する挿入具が、前記開口部内に滑り込むように構成され、かつ前記共鳴膜に接続され、前記挿入具の重量が調整可能である方法において、
前記共鳴膜の基本周波数を低下させ、同時に、前記音出力のリンギングを最小化するように前記挿入具の重量を調整するステップと;
前記挿入具を通り前記共鳴膜内の前記開口部を通る音波の瞬時の制限を生じさせ、これにより、前記バッターヘッド膜が叩かれた後の前記共鳴膜の振動の振幅を最大化するように、前記円柱体の前記長さ及び前記直径を定めるステップと
を具えていることを特徴とするバスドラムの出力音の最適化方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−520502(P2010−520502A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551721(P2009−551721)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/002621
【国際公開番号】WO2008/108961
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509244237)
【出願人】(509244248)
【出願人】(509244226)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/002621
【国際公開番号】WO2008/108961
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509244237)
【出願人】(509244248)
【出願人】(509244226)
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