説明

バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物

【課題】生産量が減少している魚油の部分硬化油を使用しなくても、抱水性及びクリーミング性が良好なバタークリーム用の油中水型乳化組成物と耐熱保形性と口溶けに優れたバタークリームを提供すること。
【解決手段】
アルギン酸エステルを含有すること特徴とするバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物、特に好ましくは、更に下記(1)〜(3)を有するバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
(1)上記アルギン酸エステルの含有量が、上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の水相中、0.1〜30質量%である。
(2)上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用される油脂は、その構成脂肪酸組成中にベヘン酸を含有しており、該構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量が0.5〜10質量%である。
(3)上記ベヘン酸の由来の一部又は全部が、ベヘン酸を含有するランダムエステル交換油脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーミング性及び抱水性に優れたバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物、及び該油中水型乳化油脂組成物を使用して得られる、口溶けが良好でありながら高い耐熱保形性を有するバタークリームに関する。
【背景技術】
【0002】
製菓製パン用のトッピングクリームやサンドクリームとして、油中水型クリーム、即ちバタークリームが広く用いられている。このバタークリームは、一般に、液糖、ショートニング等の油脂組成物及び呈味成分等を混合することにより得られる。ここで、バタークリームには、夏季のような高温下でも形状を保つことのできる耐熱保形性と口溶けが共に良好であることが要求され、また、バタークリームを製造するための油脂組成物については、水性原料をより多く乳化することのできる抱水性、容易に空気を抱き込むことのできるクリーミング性といった物性面に優れることが要求される。
【0003】
従来、上記バタークリームの原料油脂、特にバタークリームを製造するための油脂組成物としては、良好な物性や機能を有し、且つ安価である魚油が多用されてきた。この魚油は、部分水素添加により硬化させて好ましい物性を有するように調製した魚硬化油として広く利用されてきた。
【0004】
しかし、近年になりマイワシ等の小魚の漁獲量が減少し魚油の生産量が不足してきたことにより、魚硬化油の使用を制限せざるを得ない状況に変わりつつある。そのため、魚硬化油からナタネ油、大豆油、パーム油等の植物油脂を代表とする各種の動植物油脂への置換が進められている。
【0005】
しかしながら、これらの油脂は、物性や機能、特に耐熱保形性、クリーミング性や抱水性が明らかに魚硬化油に比べ劣っているため、バタークリームの原料油脂としては適しておらず、魚硬化油と同等の物性や機能を、魚硬化油を使用せずに得ることは大変困難であった。
【0006】
そのため、これらの各種の動植物油脂又はこれらの硬化油若しくは分別油に対し、油脂配合に特徴を持たせたり、エステル交換等を行なったりすることにより、魚硬化油と同等の物性や機能を与え、バタークリームの原料油脂として適当な油脂を得る試みが各種行なわれている。
【0007】
例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド及びラウリン系油脂を含んでなるサンドクリーム用油脂組成物(例えば特許文献1参照)、ベヘン酸を含有するフィリング類(例えば特許文献2参照)、油脂の構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が50〜70質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20〜35質量%である油脂配合物をランダムエステル交換してなることを特徴とするクリーミング性改良油脂(例えば特許文献3参照)、多糖類を含有し、且つ乳化剤を含有しないことを特徴とする油中水型乳化組成物(例えば特許文献4参照)が提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載されている油脂組成物は、油脂の構成脂肪酸としてラウリン酸を多く含んでいるため、経時的な加水分解に伴って独特の石鹸臭が生じるという問題があった。また、特許文献2に記載されているフィリング類では、耐熱保形性の改善は見られるものの、一方でクリーミング性や口溶けが悪くなってしまうという問題があった。また、特許文献3に記載されているクリーミング性改良油脂では、耐熱保形性とクリーミング性は改善されているものの、抱水性が十分とは言えなかった。特許文献4に記載されている油中水型乳化組成物では、クリーミング性を向上させることができたものの、十分な耐熱保形性を得ることはできなかった。
【0009】
このように、魚硬化油を使用せずに抱水性及びクリーミング性が良好であり、更には得られるバタークリームの耐熱保形性と口溶けが共に良好であるバタークリーム用油脂組成物を得ることは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−201380号公報
【特許文献2】WO2006/095505
【特許文献3】特開2005−60614号公報
【特許文献4】特開2000−245378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、魚硬化油を使用せずに抱水性及びクリーミング性が良好であり、更には得られるバタークリームの耐熱保形性と口溶けが共に良好であるバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討したところ、従来は水中油型乳化作用を有する多糖類として知られているアルギン酸エステルを、油中水型乳化油脂組成物に使用してみたところ、ごく少量添加した場合に限り、上記目的が達成されること、特にクリーミング性が顕著に改善されることを知見した。更に、原料油脂としてベヘン酸を含有する油脂、特に特定量のベヘン酸を含有するエステル交換油脂を使用した場合、更に良好な改善効果、特にクリーミング性が顕著に改善されることを知見した。
【0013】
本発明は上記知見に基づいて完成されたもので、アルギン酸エステルを含有すること特徴とするバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物、特に好ましくは、更に下記(1)〜(3)を有するバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を提供するものである。
(1)上記アルギン酸エステルの含有量が、上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の水相中、0.1〜30質量%である。
(2)上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用される油脂は、その構成脂肪酸組成中にベヘン酸を含有しており、該構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量が0.5〜10質量%である。
(3)上記ベヘン酸の由来の一部又は全部が、ベヘン酸を含有するランダムエステル交換油脂である。
【0014】
また、本発明は、上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を使用したバタークリームを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、魚硬化油を使用せずとも抱水性及びクリーミング性が良好であり、更には得られるバタークリームの耐熱保形性と口溶けが共に良好であるバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳述する。尚、本発明において、油中水型とは、連続した油相中に、水又は水を主体とする粒子が分散している乳化形態を指す。具体的な乳化形態としては、W/O型のみならず、O/W/O型や、O/W/O型の特別な形態であるO/O型をも含む。
先ず、本発明で使用するアルギン酸エステルについて述べる。
【0017】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用するアルギン酸エステルは、アルギン酸を構成するカルボキシル基の少なくとも一部がエステル化されたものである。アルギン酸は、コンブやワカメに代表される褐藻類等に含まれる多糖類であり、β−D−マンヌロン酸と、α−L−グルロン酸とが1−4結合したヘテロポリマーであり、様々な分子量のものが知られている。
【0018】
例えば、褐藻類の細胞間には、高分子のアルギン酸(分子量約100000〜200000)が豊富に含まれているため、褐藻類を希硫酸で洗浄した後、炭酸ナトリウム溶液で抽出して、硫酸で沈殿させる方法を用いることによって、褐藻類からアルギン酸を高分子のアルギン酸として取得することができる。
【0019】
また、上記高分子のアルギン酸は、例えば、高分子のアルギン酸に酵素を作用させる方法、酸化還元剤等を反応させる方法、熱分解する方法、又は加圧分解する方法等の公知の方法を用いることにより容易に低分子のアルギン酸(分子量約40000以上100000未満)とすることができる。
【0020】
本発明で使用するアルギン酸エステルは、上記アルギン酸を常法に従ってエステル化反応させたものであり、飲食品に使用可能なものであれば特に制限されず、分子量又はエステル化度等も特に制限されない。また、アルギン酸エステルとしては、商品名「ダックロイドPF−H」、「ダックロイドPF」、「ダックロイドEF」、「ダックロイドLF−M」、「ダックロイドLF」、「ダックロイドSLF−3」(以上、株式会社フードケミファ製のアルギン酸プロピレングリコールエステル)、「キミロイドLV」(キミカ社製のアルギン酸プロピレングリコールエステル)等の市販品も好適に使用することができる。
【0021】
上記アルギン酸エステルとしては、上記課題を効果的に改善でき、且つ広く一般に使用されている点から、アルギン酸の2価アルコールエステルが好ましく、例えばアルギン酸エチレングリコールエステル又はアルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられ、中でも、アルギン酸プロピレングリコールエステルが更に好ましい。
【0022】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物における上記アルギン酸エステルの含有量は、アルギン酸エステルの分子量等によって適宜調節されるものであるが、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物における水相の20℃における粘度が、好ましくは10mPa・s〜10000mPa・sの範囲、更に好ましくは50mPa・s〜5000mPa・sの範囲、最も好ましくは100mPa・s〜1000mPa・sの範囲となるような含有量とする。
上記水相の20℃における粘度が10mPa・sよりも小さいとクリーミング性の改善効果が十分に得られない場合があり、また10000mPa・sよりも大きいと、水相の粘度が高くなり口溶けが悪くなる傾向がある。
尚、上記アルギン酸エステルを油相へ添加し、分散させてから使用する場合は、水相へ添加した場合に、上記粘度になるような量のアルギン酸エステルを含有させるものとする。上記粘度は、BROOKFIELD社製DV−I VISCOMETERにより測定したものである。
【0023】
上記水相の粘度を上記の好ましい範囲とするための上記アルギン酸エステルの含有量は、該水相中、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜25質量%、最も好ましくは0.7〜20質量%である。上記アルギン酸エステルの含有量が水相中で0.1質量%より小さいと、抱水性及びクリーミング性が悪いものとなり、上記アルギン酸エステルの含有量が水相中で30質量%より大きいと、口溶け、風味発現性が悪いものとなる。
【0024】
次に、本発明で使用する油脂について述べる。
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用する油脂としては、食用に適する油脂であれば特に制限されず、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂を使用することができるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も使用することができ、更に、これらの食用油脂に、水素添加、分別若しくはエステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明では魚油又はその硬化油を使用せずとも上記目的を達成できることから、生産量が減少している魚油又はその硬化油を使用しないことが好ましい。尚、本発明では、上記の油脂の1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0025】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物においては、使用する油脂としては、その構成脂肪酸組成中に、ベヘン酸を含有するものが好ましく、使用する油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量を好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜8質量%、最も好ましくは1.5〜7質量%とする。構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量が0.5質量%未満であると、得られるバタークリームの耐熱保形性が不十分で高温時にだれやすくなり、10質量%を超えると得られるバタークリームの口溶けが急激に悪くなる傾向がある。
【0026】
上記油脂の構成脂肪酸組成におけるベヘン酸の由来としては、ベヘン酸を含有する油脂を配合する方法が挙げられる。ベヘン酸を含有する油脂としては、例えばハイエルシン菜種極度硬化油、魚油極度硬化油等のベヘン酸を含有する極度硬化油、又は、ハイエルシン菜種極度硬化油、魚油極度硬化油等のベヘン酸を含有する極度硬化油を使用して得られたベヘン酸を含有するエステル交換油脂等を挙げることができるが、本発明では、上記油脂の構成脂肪酸組成におけるベヘン酸の由来の一部又は全部がベヘン酸を含有するランダムエステル交換油脂であることが好ましく、更には全部がベヘン酸を含有するランダムエステル交換油脂由来であることが、クリーミング性を高い状態に保ったまま、得られるバタークリームの耐熱保形性及び口溶けをより向上させることができる点で好ましい。
【0027】
上記ベヘン酸を含有するエステル交換油脂の、構成脂肪酸組成における好ましいベヘン酸含量は5〜20質量%であり、更に好ましくは6〜18質量%である。
【0028】
また、上記油脂の構成脂肪酸組成におけるベヘン酸以外の脂肪酸としては、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸が挙げられ、油脂の構成脂肪酸組成における炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が35〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることが更に好ましい。
【0029】
上記エステル交換の反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル交換反応であることが必要である。
【0030】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂、ケイ藻土又はセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0031】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物における上記油脂の含有量は、油中水型乳化の安定化のためには、好ましくは20〜95質量%、更に好ましくは30〜95質量%、最も好ましくは40〜95質量%である。
【0032】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物では、上述したアルギン酸エステルと構成脂肪酸としてベヘン酸を含有する油脂とを併用することにより、耐熱保形性を相乗的に向上させることができる。
【0033】
また、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物は、トランス酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「トランス酸を実質的に含有しない」とは、バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の全構成脂肪酸中、トランス酸含量が好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下であることをいう。
【0034】
水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂(極度硬化油脂)を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
【0035】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物は上記ベヘン酸を含有するエステル交換油脂を使用することで、部分水素添加油脂を使用せずとも、適切なコンステンシーを有する油脂組成物とすることができる。
【0036】
また、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物における水の含有量は、特に制限されるものではないが、油中水型乳化の安定化のためには、好ましくは4〜79質量%、更に好ましくは4〜69質量%、最も好ましくは4〜59質量%である。
【0037】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物には、上記アルギン酸エステル、油脂、水以外に、通常、油中水型乳化油脂組成物に使用されることが知られているその他の原料を、本発明の効果を損なわない範囲で任意に使用することができるが、好ましくは、上記その他の原料の合計の含有量が、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物中、40質量%以下とする。
【0038】
上記その他の原料としては、乳化剤、澱粉類、安定剤、蛋白質、卵類、糖類や甘味料、果実、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、ナッツペースト、香辛料、茶、酒類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、調味料、酵素、着香料、着色料、食品保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤、pH調整剤等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0039】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記乳化剤の含有量は、特に制限はないが、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜3質量%、更に好ましくは0〜2質量%である。
【0040】
上記安定剤としては、リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸塩類(クエン酸塩、酒石酸塩等)、無機塩類(炭酸塩等)、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。上記安定剤の含有量は、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜3質量%である。
【0041】
上記蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、乳蛋白質、血清アルブミン、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、大豆蛋白質、エンドウ蛋白、トウモロコシ蛋白、その他の動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質、並びにこれらの加水分解物、これらを含有する食品素材が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて1種又は2種以上の蛋白質として、或いは1種又は2種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。上記蛋白質の含有量は、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜1質量%である。
【0042】
上記糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム等の糖類又は甘味料が挙げられる。これらの糖類や甘味料は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記糖類の含有量は、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物中、好ましくは0〜60質量%、更に好ましくは0〜30質量%である。
【0043】
次に、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の製造方法について説明する。
上述したように本発明における油中水型の乳化形態には、W/O型、O/W/O型及びO/O型の乳化形態を含むが、以下の説明では、代表例として、W/O型の乳化形態の場合の製造方法について詳述する。
【0044】
先ず、水に、上記アルギン酸エステル、必要に応じ乳化剤等その他の成分を添加、混合して水相を用意する。これとは別に、油脂、好ましくは構成脂肪酸としてベヘン酸を含有する油脂に、必要に応じその他の成分を添加、混合して油相を用意する。上記油脂として(ランダム)エステル交換油脂を使用する場合、上述した方法により(ランダム)エステル交換反応を行い得られた(ランダム)エステル交換油脂を準備しておく。
これらの水相と油相は好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが好ましい。尚、アルギン酸エステルは油相に分散させて使用することもできる。
【0045】
次に、上記水相と上記油相とを混合乳化してW/O型乳化物を得る。そして、該W/O型乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌処理の方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
続いて、上記W/O型乳化物を冷却し、可塑化して、W/O型の乳化形態の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を得る。冷却、可塑化する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等も挙げられる。
【0046】
また、W/O型の乳化形態の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0047】
このようにして得られるW/O型の乳化形態の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物において、上記油相と上記水相との割合は、質量比率で、好ましくは20〜95:5〜80、更に好ましくは30〜95:5〜70、最も好ましくは40〜95:5〜60である。
尚、O/W/O型の乳化形態の場合、油相1(内油相1)と水相と油相2(外油相)の割合は、質量比率で、好ましくは25〜65:10〜55:10〜35、更に好ましくは
25〜55:25〜55:10〜30である。また、O/O型の乳化形態の場合、油相1(内油相1)と水相と油相2(外油相)の割合は、質量比率で、好ましくは15〜45:
35〜65:5〜35、更に好ましくは20〜40:40〜60:10〜30である。
【0048】
本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物は、油脂のクリーミング性を利用し、気相を導入することによって油脂の比重を小さくする操作を製造工程に含む、バタークリームに用いられる油脂として好適に用いることができるが、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物が糖分を含有する場合等風味成分を含有する場合はそのまま、或いはクリーミングすることでバタークリームとして使用することも可能である。
【0049】
次に、本発明のバタークリームについて説明する。
バタークリームとは、マーガリンやショートニングをクリーミングし、ここに、糖液や、卵類、乳等を配合して製造される油中水型或いは油中水中油型の乳化形態を持つクリームの総称であり、従来のバタークリームは、糖液等の比重の大きい原材料を多く配合するため、食感が重いものであった。本発明のバタークリームにおいては、本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を使用することにより、バタークリームの比重を小さくすることができるので、本発明のバタークリームは軽い食感を有する。また、本発明のバタークリームは、高温保存時(約30〜35℃)の耐熱保型性及び離水耐性も良好である。
本発明のバタークリームにおける本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の使用量は、バタークリームの用途や乳化形態等により異なるものであり、特に限定されるものではないが、おおよそバタークリーム中に20〜95質量%である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例により何等制限されるものではない。
【0051】
バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用するエステル交換油脂A−1〜A−4は、以下の製造例1〜4により製造した。
【0052】
[製造例1]エステル交換油脂A−1の製造
構成脂肪酸組成における炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が85質量%である大豆油68質量部と、構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量が48質量%であるハイエルシン菜種極度硬化油32質量部とを配合し、続いて化学触媒(ナトリウムメチラート)0.1質量部を添加してランダムエステル交換反応を行い、構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量が15.6質量%であり、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が57.8質量%であるランダムエステル交換油脂A−1を得た。
【0053】
[製造例2]エステル交換油脂A−2の製造
大豆油の配合量を68質量部から90質量部に変更し、ハイエルシン菜種極度硬化油の配合量を32質量部から10質量部に変更した以外は[製造例1]と同様にして、構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量が5.2質量%であり、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が76.5質量%であるランダムエステル交換油脂A−2を得た。
【0054】
[製造例3]エステル交換油脂A−3の製造
大豆油の配合量を68質量部から95質量部に変更し、ハイエルシン菜種極度硬化油の配合量を32質量部から5質量部に変更した以外は[製造例1]と同様にして、構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量が2.8質量%であり、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が80.8質量%であるランダムエステル交換油脂A−3を得た。
【0055】
[製造例4]エステル交換油脂A−4の製造
大豆油の配合量を68質量部から45質量部に変更し、ハイエルシン菜種極度硬化油の配合量を32質量部から55質量部に変更した以外は[製造例1]と同様にして、構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量が26.6質量%であり、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸含量が38.3質量%であるランダムエステル交換油脂A−4を得た。
【0056】
製造例1〜4で得られたエステル交換油脂A−1〜A−4を使用して、バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を、以下の実施例1〜12又は比較例1〜4により製造した。尚、バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の水相における粘度は、BROOKFIELD社製DV−I VISCOMETERにより測定した。
【0057】
[実施例1]
エステル交換油脂A−1を16.63質量部、パーム油を66.52質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0058】
[実施例2]
エステル交換油脂A−1を16.38質量部、パーム油を65.52質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドSLF−3)1.6質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0059】
[実施例3]
エステル交換油脂A−1を16.62質量部、パーム油を66.48質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.40質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は950mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0060】
[実施例4]
エステル交換油脂A−1を16.57質量部、パーム油を66.29質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.64質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は9700mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0061】
[実施例5]
エステル交換油脂A−1を16.66質量部、パーム油を66.65質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.19質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は95mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0062】
[実施例6]
エステル交換油脂A−2を16.63質量部、パーム油を66.52質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:1.0質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.5質量%]
【0063】
[実施例7]
エステル交換油脂A−1を49.89質量部、パーム油を16.63質量部、大豆油を16.63質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:9.4質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.7質量%]
【0064】
[実施例8]
エステル交換油脂A−1を64.86質量部、パーム油を18.29質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650cp(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成におけるベヘン酸含量:12.2質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:2.2質量%]
【0065】
[実施例9]
エステル交換油脂A−3を8.32質量部、パーム油を66.52質量部、大豆油を8.32質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の油中水型乳化組成物を製造した。尚、水相粘度は650cp(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:0.3質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.2質量%]
【0066】
[実施例10]
エステル交換油脂A−1を24.95質量部、パーム油を58.21質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:4.7質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.5質量%]
【0067】
[実施例11]
パーム油を74.84質量部、大豆油8.32質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:0.0質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.1質量%]
【0068】
[実施例12]
エステル交換油脂A−4を16.63質量部、パーム油を45.73質量部、大豆油20.79質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(フードケミファ社製、ダックロイドPF)0.35質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の本発明のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:5.3質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:0.9質量%]
【0069】
[比較例1]
エステル交換油脂A−1を16.66質量部、パーム油を66.66質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部及びアルギン酸ナトリウム(ダニスコ社製、FD155)0.18質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の比較例のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0070】
[比較例2]
エステル交換油脂A−1を16.37質量部、パーム油を65.49質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水17.5質量部及びキサンタンガム(大日本住友製薬社製、モナートガムOB)0.14質量部を配合してなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の比較例のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は650mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0071】
[比較例3]
エステル交換油脂A−1を16.70質量部、パーム油を66.80質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部からなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の比較例のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は1mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:3.1質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:1.4質量%]
【0072】
[比較例4]
菜種硬化油(融点35℃)41.75質量部、パーム硬化油(融点45℃)8.35質量部、菜種油33.40質量部、レシチン0.20質量部、グリセリンモノオレイン酸エステル0.20質量部、及び香料0.10質量部を配合してなる油相と、水16.0質量部からなる水相とを55〜65℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を90℃にて殺菌し、次いでコンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の比較例のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を製造した。尚、水相粘度は1mPa・s(20℃)であった。[油脂の構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量:0.3質量%、油脂の構成脂肪酸組成全体におけるトランス酸含量:26.3質量%]
【0073】
上記実施例1〜12及び上記比較例1〜4それぞれで得られたバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物について、以下の評価方法により25℃におけるクリーミング性試験と抱水性試験を行い、その評価結果を下記[表1]に記載した。
【0074】
<クリーミング性評価方法>
バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物各300gを15℃に調温し、25℃の環境下において、卓上ミキサーでビーターを使用し、高速でクリーミングし、比重が0.35になるまでの時間を測定した。クリーミング性について下記(評価基準)に従って評価を行なった。
【0075】
(クリーミング性評価基準)
◎ 比重0.35に達するまで時間 4分未満
○ 比重0.35に達するまで時間 4分以上8分未満
△ 比重0.35に達するまで時間 8分以上12分未満
× 比重0.35に達するまで時間 12分以上
【0076】
<抱水性評価方法>
比重が0.35になったクリームに水を100gずつ投入混合し、抱水できなくなった点をもって抱水量とし、下記(評価基準)に従って評価を行なった。
【0077】
(抱水性評価基準)
◎ 抱水量が900g以上
○ 抱水量が600g以上900g未満
△ 抱水量が300g以上600g未満
× 抱水量が300g未満
【0078】
<バタークリームの製造>
実施例1〜12及び比較例1〜4それぞれで得られたバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を比重0.35になるまでクリーミングしたもの100質量部に、転化糖液糖35質量部及びラム酒2.5質量部を混合し、低速で1分混合し、バタークリームをそれぞれ得た。
【0079】
<バタークリームの評価方法>
得られたバタークリームについて、官能試験(口溶け)及び耐熱保形性試験を行ない、その評価結果を下記[表2]に記載した。尚、官能試験においては、25℃に1晩調温したサンプルを用い、口溶けを下記(評価基準)に従い4段階で評価した。また耐熱保形性試験においては、バタークリームを一旦25℃に調温した後、絞り袋に入れ、菊型口金でシャーレに花型に絞り、蓋をし、これを5℃に60分調温後、20℃、25℃及び30℃の各恒温槽に一晩おき、離水状況及びダレの状況を観察し、下記(評価基準)に従い4段階で評価した。
【0080】
(口溶け評価基準)
5点 大変良好
4点 良好
3点 まずまず良好
2点 やや劣る
1点 不良
【0081】
(耐熱保形性評価基準)
5点 離水がなく、保形性も全く問題ない。
4点 やや離水が見られるが、保形性は全く問題ない。
3点 やや離水が見られるが、保形性はほぼ問題ない。
2点 離水があり、保形性もやや悪い。
1点 離水が激しく、保形性も悪い。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
上記評価結果から分かるとおり、アルギン酸エステルを含有する油中水型乳化油脂組成物は、クリーミング性、抱水性に良好なものであり、該乳化油脂組成物から得られるバタークリームは口溶け、耐熱保形性に優れるものであった(実施例1〜12)。
それに対し、アルギン酸エステルを含有しない油中水型乳化油脂組成物は、耐熱保形性はある程度満足できるものの、クリーミング性、抱水性が劣るものであった(比較例1〜4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸エステルを含有することを特徴とするバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項2】
上記アルギン酸エステルの含有量が、上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物の水相中、0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1記載のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項3】
上記バタークリーム用油中水型乳化油脂組成物に使用される油脂は、その構成脂肪酸組成中にベヘン酸を含有しており、該構成脂肪酸組成全体におけるベヘン酸含量が0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項4】
上記ベヘン酸の由来の一部又は全部が、ベヘン酸を含有するランダムエステル交換油脂であることを特徴とする請求項3記載のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項5】
トランス酸を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のバタークリーム用油中水型乳化油脂組成物を使用したバタークリーム。

【公開番号】特開2012−23(P2012−23A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135889(P2010−135889)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】