説明

バッテリ装着機構

【課題】ロック爪を備えた電子機器においてもバッテリの収容が容易になると共に、ロック爪によるバッテリの位置決めが確実に行なわれるバッテリ装着機構を提供することを目的とする。
【解決手段】バッテリ112を収容するバッテリ収容凹部109と、前記バッテリ収容凹部109に隣接軸支され前記バッテリ収容凹部109を開放又は閉止する蓋部105と、を備え、前記バッテリ収容凹部109は、開口部近傍にバッテリ112を位置決めする位置に付勢されたロック爪110を備え、前記蓋部105は、バッテリ112の角部に当接するバッテリ受け部107を備える、ことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のバッテリ装着機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のバッテリ装着機構に関する先行技術文献として、特許文献1がある。特許文献1に記載のバッテリ装着機構は、電子機器の筐体にバッテリ収容凹部と、ヒンジ部を支点としてバッテリ収容凹部に開閉動作する蓋部とを備え、蓋部の閉止動作に連動してバッテリをバッテリ収容凹部の装着位置に位置決めするようにしたものである。
【0003】
特許文献1に記載のバッテリ装着機構は、蓋部を閉止動作すると、この動作に連動して蓋部の一部がバッテリを押圧操作し、バッテリ収容凹部の装着位置に位置決めすると共に、バッテリの電極をバッテリ収容凹部の電極端子に電気的に接続させることができる。
【0004】
しかし、蓋部には、開閉機構に起因するガタが不可避的に発生する。このガタは、電子機器が振動したときに、バッテリの電極と電子機器の電極端子との接続を不安定にする。そこで、蓋部とは別個独立にバッテリを位置決めするロック爪を備えた電子機器が知られている。
【0005】
ロック爪を備えた電子機器の一例を説明する。図4は、デジタルカメラ400の天地を逆にして載置した状態を示す斜視図である。蓋部401は、開放されている。ロック爪402を矢印Fに示す向きにスライドさせながら、バッテリ収容凹部403にバッテリ410を収容する。ロック爪402は、矢印Fに示す向きと逆向きに付勢されているので、バッテリ収容凹部403にバッテリ410が完全に収容されると、ロック爪402が矢印Fに示す向きと逆向きにスライドしてバッテリ410を位置決めする。
【0006】
バッテリ収容凹部403の底面には、バッテリ410を押し出す方向に付勢する図示しない付勢部材が備えられている。ロック爪402がスライドする方向と矢印Gに示すバッテリ410を収容する方向とは直交しているので、ロック爪402は、バッテリ410を安定して位置決めすることができる。付勢部材は、バッテリ410の取出しを容易にすると共に、バッテリ410をロック爪402に押し当てることによってバッテリ410の振動を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−67007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロック爪を備えた電子機器のバッテリ収容凹部にバッテリを収容させるためには、1)蓋部を開放する、2)ロック爪をスライドさせる、4)バッテリを収容させる、4)蓋部を閉止する、四つの動作が必要になり煩瑣である。また、ロック爪がバッテリを位置決めしたことを確認せずに蓋部を閉止してしまうと、電子機器の動作中にバッテリの電極と電子機器の電極端子との接続が不安定になる。
【0009】
ここで、ロック爪を備えた電子機器に特許文献1に記載のバッテリ装着機構を適用することによって、バッテリをロック爪による位置決め位置まで強制的に押し込む機構を採用すると、蓋部の一部がロック爪によるバッテリの位置決め位置を越えてバッテリを押し込む機構とならざるを得ない。
【0010】
そうすると、ロック爪によるバッテリの位置決め位置は、バッテリ収容凹部の底面に備えられた付勢部材の付勢力と、バッテリの電極と電子機器の電極端子の接続安定性とがバランスする位置に設定されているにも関わらず、これを越えてバッテリを押し込んでしまうので、付勢部材に過大な負荷をかけることになり付勢部材の経年劣化が懸念される。
【0011】
また、蓋部を閉止した状態においては、蓋部の一部がバッテリを押圧する状態が維持されるので、開閉機構に起因するガタが直接バッテリに伝わってしまい、ロック爪を別個独立に備えた意義が半減する。
【0012】
本発明は、前記課題を解決し、ロック爪を備えた電子機器においてもバッテリの収容が容易になると共に、ロック爪によるバッテリの位置決めが確実に行なわれるバッテリ装着機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明のバッテリ装着機構は、バッテリを収容するバッテリ収容凹部と、前記バッテリ収容凹部に隣接軸支され前記バッテリ収容凹部を開放又は閉止する蓋部と、を備え、前記バッテリ収容凹部は、開口部近傍にバッテリを位置決めする位置に付勢されたロック爪を備え、前記蓋部は、バッテリの角部に当接するバッテリ受け部を備える、ことを特徴とする。
【0014】
この構成により、蓋部に備えられたバッテリ受け部が、蓋部の閉止動作に伴ってバッテリをバッテリ収容凹部の一方の側壁に対して斜めに押圧し、この押圧力がバッテリとバッテリ収容凹部の一方の側壁との静止摩擦力を超えたときに、バッテリがバッテリ収容凹部の底面へ向けて勢いよく押し込まれるので、バッテリを位置決めする位置に付勢されたロック爪によってバッテリが確実に位置決めされる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、蓋部の閉止動作によってバッテリが確実に位置決めされるので、ロック爪を備えた電子機器においてもバッテリの収容が容易になると共に、ロック爪によるバッテリの位置決めが確実に行なわれるバッテリ装着機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のバッテリ装着機構を採用したデジタルカメラの三面図
【図2】本発明のバッテリ装着機構を採用したデジタルカメラの断面図
【図3】ロック爪の動作を説明する図
【図4】デジタルカメラの天地を逆にして載置した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態)
以下、本発明のバッテリ装着機構をデジタルカメラに採用した実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、デジタルカメラは、電子機器の一例である。
(1.構成)
(1−1.外観)
図1は、本発明のバッテリ装着機構を採用したデジタルカメラ100の三面図である。図1(a)は正面図であり、図1(b)は背面図であり、図1(c)は底面図である。図1(c)に示す底面図において、上段は蓋部105を閉止した状態であり、下段は蓋部105を開放した状態である。蓋部105は、図1(c)上段に示す閉止状態から図1(c)下段に示す開放状態まで、図面手前側に90度以上回動する。
【0018】
レンズバリア101を矢印Aに示す向きにスライドさせると、光学系が露出すると共に、デジタルカメラ100の電源が投入される。液晶モニタ102に被写体が表示されるので、構図を決定してシャッタボタン103を押下すると被写体の画像データを得ることができる。液晶モニタ102に表示されたメニュー画面に従って操作ボタン群104を操作することによって、撮影や再生に関する詳細な設定を行うことができる。
【0019】
デジタルカメラ100の底面には、バッテリ112とメモリカード113を収容するバッテリ収容凹部109が設けられている。図1(c)上段に示す蓋部105の閉止状態において、スライドノブ106をLOCK側にスライドさせることによって、蓋部105が開放状態に至らないようにロックすることができる。一方、蓋部105を開放するためには、スライドノブ106をOPEN側にスライドさせればよい。
【0020】
図1(c)下段に示すように、蓋部105の裏面には、閉止動作によってバッテリ112の角部に当接するバッテリ受け部107が設けられている。また、蓋部105は、バッテリ収容凹部109に隣接するヒンジ108によって、回動可能に軸支されている。
【0021】
図1(c)の下段に示す蓋部105の開放状態において、バッテリ112は、ロック爪110によって位置決め位置に位置決めされている。この状態においては、ロック爪110の押さえ部111がバッテリ112の一部に当接している。ロック爪110を矢印Bに示す向きにスライドさせると、押さえ部111がバッテリ112の一部に当接しなくなるので、バッテリ112はバッテリ収容凹部109の底面に設けられた付勢部材によって、図面手前側に押し出される。ロック爪110は、矢印Bに示す向きと逆向きに付勢されているので、バッテリ112の位置決めが不用意に解除されることはない。
(2.動作)
図2は、本発明のバッテリ装着機構を採用したデジタルカメラ100の断面図である。デジタルカメラ100を正面から見た状態において、バッテリ112を含む断面を示している。レンズバリア101が排除されるので、光学系114が視認される。
【0022】
デジタルカメラ100の天地は逆である。バッテリ収容凹部109にバッテリ112やメモリカード113を収容する際は、通常、デジタルカメラ100を天地逆に把持して行なうことになる。
【0023】
図2(a)〜(e)は、蓋部105を開放しバッテリ112をバッテリ収容凹部109に仮収容した状態から、蓋部105を閉止してデジタルカメラ100が使用可能になった状態までを時系列に示している。
【0024】
図2(a)は、蓋部105を開放しバッテリ112をバッテリ収容凹部109に仮収容した状態を示す。バッテリ112の底面は、バッテリ収容凹部109の底面に設けられた付勢部材115に当接しているが、バッテリ112に対して、それ以外の力は作用していない。ロック爪110の押さえ部111は、バッテリ112の側面に当接している。従って、ロック爪110は、付勢力に抗して矢印Cに示す向きにスライドしている。
【0025】
図2(b)は、蓋部105の一端に設けられたヒンジ108を中心に蓋部105を時計回りに回動させてバッテリ受け部107がバッテリ112の角部に当接した状態を示す。この状態においても、バッテリ112に対して力は作用していない。バッテリ受け部107は、バッテリ112の角部を受ける形状をなすが、その後の蓋部105の回動を円滑に行なうために、バッテリ112の角部に正確に密接する形状をなすものとはしていない。また、バッテリ受け部107は、その一部をリブ構造116にすることによって強度を高めている。
【0026】
なお、バッテリ受け部107は、図2に示すようにリブ構造116としてもよいし、単にバッテリ112の角部を当接保持する形状としてもよい。また、蓋部105に凹部を設けてバッテリ112の角部を当接保持するようにしてもよい。
【0027】
図2(c)は、図2(b)に示す状態から蓋部105を時計回りにさらに回動させた状態を示す。バッテリ受け部107は、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の側壁117に対して斜めに押圧する。矢印Dは、この押圧力を示している。この状態においては、バッテリ受け部107による押圧力によって、バッテリ112は、付勢部材115の付勢力に抗してバッテリ収容凹部109の底面に向けて若干移動するものの、バッテリ112とバッテリ収容凹部109の側壁117との静止摩擦力が、バッテリ受け部107による押圧力に勝るので、バッテリ112は、静止している。
【0028】
図2(d)は、図2(c)に示す状態から蓋部105を時計回りにさらに回動させた状態を示す。蓋部105を時計回りにさらに回動させると、矢印Dに示す押圧力も時計回りに回転する。そうすると、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の側壁117に押圧する分力D1が相対的に小さくなる一方、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の底面に向けて押圧する分力D2が相対的に大きくなる。
【0029】
そこで、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の底面に向けて押圧する分力D2が、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の側壁117に押圧する分力D1によって発生するバッテリ112とバッテリ収容凹部109の側壁117との静止摩擦力を超えると、バッテリ112が付勢部材115の付勢力に抗してバッテリ収容凹部109の底面へ向けて勢いよく押し込まれる。同時に、矢印Eに示す向きに付勢されているロック爪110によってバッテリ112が位置決め位置に確実に位置決めされる。
【0030】
なお、このとき、蓋部105が弾性をもつ材料で構成されていれば、弾性変形した蓋部105の復元力がバッテリ112をバッテリ収容凹部109の底面へ向けて押し込む力として作用するので、より効果的である。また、バッテリ収容凹部109の側壁117は、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の底面に向けて押圧する分力D2と、バッテリ112をバッテリ収容凹部109の側壁117に押圧する分力D1によって発生するバッテリ112とバッテリ収容凹部109の側壁117との静止摩擦力とのバランス点を考慮した材料を用いて構成してもよい。例えば、バッテリ収容凹部109が樹脂で成型されているとしても、側壁117には、バッテリ収容凹部109に用いられた樹脂とは異なる静止摩擦係数を有するシートを貼付すること等が考えられる。
【0031】
図2(e)は、蓋部105によってバッテリ収納凹部109を閉止した状態を示す。この状態から、蓋部105のスライドノブ106をLOCK側にスライドさせれば、デジタルカメラ100が使用可能な状態になる。
【0032】
なお、図2においては、ロック爪110の動作が若干理解しにくいものと思われるので、拡大図を示す。図3は、ロック爪110の動作を説明する図である。図3(a)は図2(a)と同じ状態であり、図3(b)は図2(d)と同じ状態である。
【0033】
図3(a)においては、ロック爪110の押さえ部111は、バッテリ112の側面に当接しており、ロック爪110は、付勢力に抗して図面右側にスライドしている。一方、図3(b)においては、ロック爪110が付勢力によって図面左側にスライドして、バッテリ112を位置決め位置に位置決めしている。
(その他の実施の形態)
以上、本発明のバッテリ装着機構をデジタルカメラに採用した実施の形態について説明した。しかし、本発明のバッテリ装着機構を、バッテリを用いる様々な電子機器に採用できることはいうまでもない。また、直方形状のバッテリに限らず、円筒形状のバッテリであっても本発明のバッテリ装着機構を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、蓋部の閉止動作によってバッテリが確実に位置決めされるので、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA等、バッテリを用いる様々な電子機器に採用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100 デジタルカメラ
101 レンズバリア
102 液晶モニタ
103 シャッタボタン
104 操作ボタン群
105 蓋部
106 スライドノブ
107 バッテリ受け部
108 ヒンジ
109 バッテリ収容凹部
110 ロック爪
111 押さえ部
112 バッテリ
113 メモリカード
114 光学系
115 付勢部材
116 リブ
117 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを収容するバッテリ収容凹部と、
前記バッテリ収容凹部に隣接軸支され前記バッテリ収容凹部を開放又は閉止する蓋部と、を備え、
前記バッテリ収容凹部は、
開口部近傍にバッテリを位置決めする位置に付勢されたロック爪を備え、
前記蓋部は、
バッテリの角部に当接するバッテリ受け部を備える、
ことを特徴とするバッテリ装着機構。
【請求項2】
前記蓋部は、
弾性を有する材料によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ装着機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−145433(P2011−145433A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5483(P2010−5483)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】