説明

バラストタンクの空気抜き装置

【課題】 船舶の重量を増ことなく、海水の侵入を防止して安全性を高めることができ、注排水を確実に可能としたバラストタンクの空気抜き装置の提供。
【解決手段】 バラストタンクの空気抜き装置は、船舶1のバラストタンク3の上部から乾玄甲板7の上面所定位置まで延設してなる第1の空気抜き管9と、第1の空気抜き管9の頂部に設けた管頭金物11と、管頭金物11の出入口部に設けた分岐管13と、分岐管13の一方の出入口に接続され所定の高さにまで延設した第2の空気抜き管19と、分岐管13の他方の出入口に接続され逆止作用が排水方向に向けて配置し乾玄甲板7の上に排水可能にしてなる逆止弁15とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラストタンクの空気抜き装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のバラストタンクは、船舶の二重底および船側に、二重底タンクや深水タンクの形状で設けられている。これらタンクの注排水時には、空気抜き装置が必要である。
図3は、従来の標準的なバラストタンクの空気抜き装置を示す概略図である。この図3において、符号101は船舶であり、この船舶101の船底には、バラストタンク103が設けられている。従来の標準的なバラストタンクの空気抜き装置は、船側105の側において、バラストタンク103のタンクトップから乾玄甲板107まで空気抜き管109を垂設し、前記空気抜き管109の頂部に管頭金物111を取り付け固定したものである(特許文献1参照)。
バラストタンク103に注水するときには、バラストタンク103の水のレベルに応じて空気が空気抜き管109を介して管頭金物111から大気に放出される。
【0003】
一方、バラストタンク103から排水するときには、管頭金物111、空気抜き管109を介してバラストタンク103の内部に吸引する。
また、管頭金物111は、通常、開放状態になっており、海水などを被り管頭金物111に水が侵入したときは、内部のフロートが上昇し、海水等の侵入を防止できる構造となっている。バラストタンク103に注水時に、バラストタンク103がオーバーフローしたときには、バラストタンク103からの海水は空気抜き管109を介して管頭金物111にゆき、管頭金物111内のフロートを抑えて、当該管頭金物111から暴露に放出する。
この図3に示すバラストタンクの空気抜き装置は、バラストタンク103のタンクトップから管頭金物111の放出口までの水頭がH1である。
【0004】
図4は、従来の他のバラストタンクの空気抜き装置を示す概略図である。この図4においても、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を行うものとする。この図4に示すバラストタンクの空気抜き装置は、近年、安全性を重視する船舶が要求されるようになったために採用された構造である。万が一の衝突などで、一部区画が損傷し、船舶が横傾斜しても、損傷していない区画が船舶の横傾斜を増長しないような構造がとられた結果、図4に示すようなバラストタンクの空気抜き装置の構造とされたものである。この図4に示すバラストタンクの空気抜き装置は、空気抜き管109aを乾玄甲板107の上において横走りに配置し、空気抜き管109aの末端が船舶101の船体中心付近に配置されるようにするとともに、その空気抜き管109aの末端に管頭金物111を取り付けることにより、海水等が管頭金物111から侵入しないような構造としている。
【0005】
これにより、バラストタンク103の注排水における空気の排出・吸入が可能となり、かつ、万一の衝突などによっても管頭金物111からの浸水の恐れが非常に小さなものとなる。
この図4に示すバラストタンクの空気抜き装置は、バラストタンク103のタンクトップから管頭金物111の放出口までの水頭がH1であるが、空気抜き管109aの管路長が長くなって管路抵抗が大きくなるため、実質的な水頭はH2となる。
【0006】
図5は、従来のさらに他のバラストタンクの空気抜き装置を示す概略構成図である。この図5においても、同一構成要素には同一の符号を付して説明をする。
この図5に示すバラストタンクの空気抜き装置は、乾玄甲板が暴露できない自動車専用船などに採用された構造である。
【0007】
この図5に示すバラストタンクの空気抜き装置は、海水が侵入しないように安全性を増すため、船側105の側において、バラストタンク103のタンクトップから1つ、2つ上のデッキまで導設した空気抜き管109bと、前記空気抜き管109bの頂部に固定した管頭金物111と、前記管頭金物111の出入口に接続され下向きと横向きの二つの出入口部を設けた分岐管113と、逆止弁115を設けた排水管117とを備え、前記分岐管113の横向きの出入口部を管頭金物111の高さ位置で船側外板105aに貫通し、前記分岐管113の下向きの分岐部分に逆止弁115を設けた排水管117を接続連通し、当該排水管117の末端を所定の下側位置で船側外板105aに貫通配置したものである。
【0008】
この図5に示すバラストタンクの空気抜き装置は、バラストタンク103のタンクトップから管頭金物111の放出口までの水頭がH3である。
ところで、水頭Hとバラストタンク103の板圧との間には、バラストタンク103の板厚をT[mm]、防撓材の心距をS[m]、水頭をH[m]とすると、次のような関係がある。すなわち、
T=3.6SH1/2+3.5
なる関係が成立する。
したがって、バラストタンク103の板厚は、上記式を用い上記水頭Hを基に設計されている。
【特許文献1】特開2002−178982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図3に示す従来のバラストタンクの空気抜き装置にあっては、構造は簡単なものの、万が一の衝突などのときに空気抜き管からの海水の侵入を防止できないという欠点があった。
これに対して、図4に示す従来のバラストタンクの空気抜き装置にあっては、空気抜き管を乾玄甲板上を横走りさせることにより、管頭金物からの海水の侵入を防止することはできるものの、水頭がH2と高くなってバラストタンクの板厚を厚くして強度を増さなければならないほか、筒乾玄甲板上を空気抜き管が横切るため、船舶の前後方向の交通性が悪くなるという欠点があった。
【0010】
さらに、図5に示す従来のバラストタンクの空気抜き装置にあっては、上述したような構造であるため、海水の侵入は防止できるものの、バラストタンクがオーバーフローした場合には、H3の水頭がかかり、この水頭H3を基に上記数式からバラストタンクの板厚を設計しなければならないため、同様に、板厚が厚くなって船舶の自重が重くなるという欠点があった。
本発明は、上述した従来の欠点を解消し、船舶の重量を増ことなく、かつ、海水の侵入を防止することにより安全性を高めることができ、しかも、注排水を確実にできるバラストタンクの空気抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る発明の係るバラストタンクの空気抜き装置は、船舶のバラストタンクの上部から乾玄甲板の上面所定位置まで延設してなる第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管の頂部に設けた管頭金物と、前記管頭金物の出入口部に設けた分岐管と、前記分岐管の一方の出入口に接続されるとともに所定の高さにまで延設した第2空気抜き管と、前記分岐管の他方の出入口に接続され逆止作用が排水方向に向けて配置し乾玄甲板上に排水可能にしてなる逆止弁とを備えたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、本願請求項2に係る発明のバラストタンクの空気抜き装置は、船舶のバラストタンクの上部から乾玄甲板の上面所定位置まで延設してなる第1の空気抜き管と、前記第1の空気抜き管の頂部に設けた管頭金物と、前記管頭金物の出入口部に設けた分岐管と、前記分岐管の一方の出入口に接続されるとともに所定の高さにまで延設してなる第2空気抜き管と、前記分岐管の他方の出入口に接続され所定の下方位置まで延設してなる排水管と、前記排水管に設けられ排水方向に向けられた逆止弁とを備え、前記第2の空気抜き管の上部末端を船側外板に貫通して船外の連通し、かつ、前記排水管を管頭金物から所定の下の位置で船側外板に貫通し船外に連通してなることを特徴とするものである。
本願請求項3に係る発明のバラストタンクの空気抜き装置では、本願請求項1または2に係る発明において、前記管頭金物および分岐管は一体に構成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上述したように本発明に係るバラストタンクの空気抜き装置よれば、上述した構造としたため、バラストタンクの水頭は上がらず、バラストタンクの板厚も軽減でき、船舶の自重も軽くなる。また、排水管には逆止弁が設けられているので、海水の侵入を完全に防止できる。さらに、第2空気抜き管が所定の高さに配置されているので、船体が傾斜しても、海水が侵入することがなく、安全な船舶とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明を実施するための第1の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置を示す構成図であって、図1(a)は全体構造を、図1(b)は管頭金物の構造を、それぞれ示す図である。
この図1において、符号1は船舶、符号3はバラストタンク、符号5は船側、符号5aは船側外板、符号7は乾玄甲板、符号9は第1の空気抜き管、符号11は管頭金物、符号13は分岐管、符号15は逆止弁、符号17は排水管、符号19は第2の空気抜き管である。
【0014】
この第1の実施形態に係るバラストタンクの空気抜き装置は、図1(a)に示すように、船舶1のバラストタンク3のタンクトップ(上部)から乾玄甲板7を貫通して乾玄甲板7の上面より所定高さ(バラストタンク3のタンクトップから水頭H1の高さ)となるように設けた第1の空気抜き管9と、前記第1の空気抜き管9の頂部に設けた管頭金物11と、前記管頭金物11の出入口部に設けた分岐管13と、前記分岐管13の一方(上向き)の出入口に接続されるとともに所定の高さhにまで延設した第2空気抜き管19と、前記分岐管13の他方(下向き)の出入口に接続され逆止作用が排水方向(図示矢印J方向)に向けて配置された逆止弁15とを備えた構造をしている。
【0015】
また、管頭金物11は、図1(b)に示すように、カバー11aの横に設けた出入口部11bと、前記出入口11bとカバー11a内部とを図示上側で連通する管路11cと、この管路11cに設けられ海水等が侵入したときに浮き上がって管路11cを塞ぐフロート11dとから構成されている。
次に、このような構造を有するバラストタンクの空気抜き装置の作用を説明する。
まず、バラストタンク3に注水し、バラストタンク3から海水がオーバーフローしたとすると、海水は第1の空気抜き管9、管頭金物11、逆止弁15を通って乾玄甲板7に排出される。このオーバーフローしたときには、バラストタンク3には水頭H1が加わることになる。
【0016】
一方、バラストタンク3に注水することにより、バラストタンク3から空気が排出されるときには、バラストタンク3の内部の空気は第1の空気抜き管9、管頭金物11、第2の空気抜き管19の上部末端から大気に放出される。
バラストタンク3の内部の海水を排水する場合には、空気は第2の空気抜き管19、管頭金物11、第1の空気抜き管9を介してバラストタンク3内に吸引されることになる。
なお、仮に海水等が第2の空気抜き管19から侵入しても、管頭金物11のフロート11dが浮き上がって管路11cを塞ぐので、海水の侵入を防止することができる。
【0017】
したがって、本発明を実施するための第1の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、バラストタンク3の水頭はH1のままでよいので水頭は上がらず、バラストタンク3の板厚も軽減でき、船舶1の自重も軽くできる。 また、第1の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、排水管17には逆止弁15が設けられているので、海水の侵入を完全に防止することができる。
さらに、第1の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、第2の空気抜き管19が管頭金物11より所定の高さhだけ上に配置されているので、船舶1の船体が傾斜しても、第2の空気抜き管19から海水が侵入することがなく、安全な船舶とすることができる。
【0018】
図2は、本発明を実施するための第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置を示す構成図である。この図2に示すバラストタンクの空気抜き装置は、乾玄甲板が暴露できない自動車専用船などに採用されたものである。
この第2の実施形態に係るバラストタンクの空気抜き装置は、図2に示すように、船舶1のバラストタンク3のタンクトップ(上部)から乾玄甲板7を貫通して乾玄甲板7の上面より所定高さ(バラストタンク3のタンクトップから水頭H1の高さ)となるように設けた第1の空気抜き管9と、前記第1の空気抜き管9の頂部に設けた管頭金物11と、前記管頭金物11の出入口部に設けた分岐管13と、前記分岐管13の一方(上向き)の出入口に接続されるとともに所定の高さhにまで延設した第2空気抜き管19と、前記分岐管13の他方(下向き)の出入口に接続され所定の下方位置まで延設してなる排水管17と、前記排水管17に設けられ逆止作用が排水方向(図示矢印J方向)に向けて配置された逆止弁15とを備えた構造をしている。
【0019】
また、第2の空気抜き管19の上部末端は、船側外板5aに貫通して船外に連通している。前記排水管17は、管頭金物11から所定の下の位置において、船側外板5aに貫通し船外に連通している。
このような第2の実施形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によっても、第1の実施の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置と同様な作用効果を奏する。
すなわち、本発明を実施するための第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、バラストタンク3の水頭はH1のままでよいので水頭は上がらず、バラストタンク3の板厚も軽減でき、船舶1の自重も軽くできる。 また、第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、排水管17には逆止弁15が設けられているので、海水の侵入を完全に防止することができる。
【0020】
さらに、第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置によれば、第2の空気抜き管19が管頭金物11より所定の高さhだけ上に配置されているので、船舶1の船体が傾斜しても、第2の空気抜き管19から海水が侵入することがなく、安全な船舶とすることができる。
なお、第2の実施形態に係るバラストタンクの空気抜き装置では、排水管17の下端は、図2の点線で示すようにLWLの下になるように配置してもよい。
上記第1および第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置において、管頭金物11と分岐管13とを別々な部材で説明したが、これに限ることなく、管頭金物11と分岐管13とを一体的に構成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明を実施するための第1の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明を実施するための第2の最良の形態に係るバラストタンクの空気抜き装置を示す構成図である。
【図3】図3は、従来の標準的なバラストタンクの空気抜き装置を示す概略図である。
【図4】図4は、従来の他のバラストタンクの空気抜き装置を示す概略図である。
【図5】図5は、従来のさらに他のバラストタンクの空気抜き装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 船舶
3 バラストタンク
5 船側
5a 船側外板
7 乾玄甲板
9 第1の空気抜き管
11 管頭金物
13 分岐管
15 逆止弁
17 排水管
19 第2の空気抜き管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のバラストタンクの上部から乾玄甲板の上面所定位置まで延設してなる第1の空気抜き管と、
前記第1の空気抜き管の頂部に設けた管頭金物と、
前記管頭金物の出入口部に設けた分岐管と、
前記分岐管の一方の出入口に接続されるとともに所定の高さにまで延設した第2空気抜き管と、
前記分岐管の他方の出入口に接続され逆止作用が排水方向に向けて配置し乾玄甲板上に排水可能にしてなる逆止弁とを備えたことを特徴とするバラストタンクの空気抜き装置。
【請求項2】
船舶のバラストタンクの上部から乾玄甲板の上面所定位置まで延設してなる第1の空気抜き管と、
前記第1の空気抜き管の頂部に設けた管頭金物と、
前記管頭金物の出入口部に設けた分岐管と、
前記分岐管の一方の出入口に接続されるとともに所定の高さにまで延設してなる第2空気抜き管と、
前記分岐管の他方の出入口に接続され所定の下方位置まで延設してなる排水管と、
前記排水管に設けられ排水方向に向けられた逆止弁とを備え、
前記第2の空気抜き管の上部末端を船側外板に貫通して船外の連通し、かつ、前記排水管を管頭金物から所定の下の位置で船側外板に貫通し船外に連通してなることを特徴とするバラストタンクの空気抜き装置。
【請求項3】
前記管頭金物および分岐管は一体に構成してなることを特徴とするを特徴とする請求項1または2記載のバラストタンクの空気抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−38828(P2007−38828A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224949(P2005−224949)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)