説明

バラスト水の処理方法

【課題】本発明は従来技術における問題を解決し、船舶での使用に際し、適応性、安全性並びに操作性が高く、取り込み海水中に含まれる有害生物を殺滅するバラスト水の処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】バラスト水の取水パイプ、排水パイプ並びにバラストタンクへの送水パイプに、OHRを設置することによりバラスト水の処理方法で、有害生物を含む海水を取り入れた時のポンプの水圧と水流を利用して、OHRを用いて海水中にキャビテーションを発生させて、有害生物をキャビテーションの状態下に曝すこと並びに物理的に破砕することによって、有害生物の少なくとも大部分を死滅させ、処理後の海水を生物汚染の無い船舶のバラスト水として排出可能することから、船舶における有害生物を含むバラスト水の処理問題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物を含むことがある船舶のバラスト水の処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶は積み荷の状態によって喫水が変化するため、船舶の安定性、航行の安全上等のために一定の喫水を確保する必要があり、荷揚げ港で荷積み状態に対応してバラストタンク海水を取り入れ並びに排出するようにしている。しかし、このバラスト水に、細菌、有害プランクトン等の有害微生物や甲殻類、貝類等の有害生物(以後、有害微生物と有害生物の総称を有害生物とする)が含まれることやタンク内で繁殖することがあるため、このようなバラスト水が荷積み港で排出されると、その港を汚染することになる。
そのため、有害生物を含むバラスト水の排出が問題視され、条約(非特許文献1)により禁止される可能性が生じている。
【0003】
そこで、有害微生物を処理する方法の分野の内で、有害微生物を処理するものとして、塩素処理方法、オゾン処理方法、電気化学処理方法、パイプミキサーによってキャビテーションを発生させる方法等の一般的方法並びにバラストタンク内の海水を過酸化水素液にして、その状態を長時間維持することにより有害プランクトンのシスト殺滅方法(特許文献1参照)温水や蒸気を用いて、バラストタンク内の沈殿物中の有害プランクトンを加熱よって死滅させ、バラストタンク内の水を清浄な海水域で張り替えて、バラストタンク内の全海水が清浄な海水にする方法(特許文献2参照)、固定床型電極電解層にバラスト水を供給して微生物を死滅処理する方法(特許文献3参照)、バラスト水中の高電圧パルス放電の衝撃によって微生物を損傷させる方法(特許文献4参照)、バラストタンク内のバラスト水の酸素濃度2%以下にするように窒素ガスでの置換方法(特許分5参照)等の各種の有害微生物処理方法が提案されている。
【0004】
しかし、塩素処理方法ではトリハロメタン等の有害物質が発生し、船舶中に次亜塩素酸や塩素ガスを保管する危険性がある。また二酸化塩素処理では殺菌には効果があるが、危険性があり薬品費が高くなる。オゾン処理方法では、有害微生物を含んだ海水を多量に処理するために多量のオゾンが必要になり費用が高くなる。電気化学処理では電極の汚れや目詰まり防止用の細かいフィルタが必要になり、そのメンテナンスが容易でないこと並びに細かいフィルタを使用することによる圧力損失等があり、有害微生物を含んだ海水を多量に処理するには不利である。従来のパイプミキサーの処理方法ではキャビテーションの発生が不十分で殺菌力が不足である。バラスト水の張り替え方法では船舶の安定性及び安全性を考えると排水と取水の操作が両方同時に必要でありポンプや系統の切り替えの操作が煩雑になる。さらに有害微生物を含んだバラスト水の直接排出は、海洋汚染の原因になる。タンク内の窒素ガス置換方法では窒素置換が速やかに進行しないことやタンク内の酸素不足で作業員に危険性があることや特に航海日程が短いと殺菌が不十分になること等従来技術には諸問題がある。
【0005】
【非特許文献1】海と安全 2004 秋
【特許文献1】特開平5−910号公報
【特許文献2】特開平8−91288号公報
【特許文献3】特開平2001−974号公報
【特許文献4】特開平2002−192161号公報
【特許文献5】特開平2002−234487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術における問題を解決し、船舶での使用に際し、適応性、安全性並びに操作性が高く、取り込み海水中に含まれる有害生物を殺滅するバラスト水の処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1と3はバラスト水の処理方法であり、有害生物を含む海水を取り入れた時のポンプの水圧と水流を利用して、OHR(非特許文献2)を用いて上記海水中にキャビテーションを発生させて、上記有害生物をキャビテーションの状態下に曝すことことにより、上記有害生物の少なくとも大部分を死滅させ、処理後の上記海水を生物汚染の無い船舶のバラスト水として排出可能することを特徴とする。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、請求項2と4はバラスト水の処理方法であり、有害生物を含む海水を取り入れた時のポンプの水圧と水流を利用して、OHRを用いて上記有害生物を物理的に破砕することによって、上記有害生物の少なくとも大部分を死滅させ、処理後の上記海水を生物汚染の無い船舶のバラスト水として排出可能することを特徴とする。
【0009】
【非特許文献2】植松秀人 超音波TECHNO 20001.5
【発明の効果】
【0010】
本発明により、請求項1と3でのバラスト水の処理方法で、有害生物を含む海水を取り入れた時のポンプの水圧と水流を利用して、OHRを用いて上記海水中にキャビテーションを発生させて、上記有害生物をキャビテーションの状態下に曝すことにより、上記有害生物の少なくとも大部分を死滅させ、処理後の上記海水を生物汚染の無い船舶のバラスト水として排出可能することから、船舶における有害生物を含むバラスト水の処理問題を解決できる。
【0011】
また請求項2と4でのバラスト水の処理方法で、有害生物を含む海水を取り入れた時のポンプの水圧と水流を利用して、OHRを用いて上記有害生物を物理的に破砕することによって、上記有害生物の少なくとも大部分を死滅させ、処理後の上記海水を生物汚染の無い船舶のバラスト水として排出可能することからも、船舶における有害生物を含むバラスト水の処理問題を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
バラスト水の取水パイプ、排水パイプ並びにバラストタンク直前の送水パイプに必要に応じて、OHRを一個または複数個を設置する。ただし発生した気泡は、配管に悪影響を与える可能性があるため(非特許文献3)、OHRの配置位置はバラストタンク直前の送水パイプが好ましいと考えられる。特にバラストタンク直前の送水パイプにOHRを複数個設置する場合では、処理海水を例えば、2個のバラストタンク間を往復させる工程を繰り返すと有害生物を死滅させる効果が向上する。またバラストタンクへの注水工程と排水工程の処理海水の水流に対してOHRの向きが逆になるため、これら一連の工程を繰り返すたびに、OHRに付着した有害生物の残骸が除去できる。
【0013】
【非特許文献3】NHK サイエンスZERO 2005.6.4放送
【0014】
このOHRにより、水中で急激な局所的圧力変動が生じ、全体的に無数の気泡が発生し、この気泡が急激に崩壊するキャビテーションが水中で全体的に発生する。この崩壊時に生じる衝撃波による物理的破壊作用と、キャビテーション内部での水分子の分解によって生じたOHラジカルによる化学的な酸化作用により、有害生物が死滅する。
【0015】
このキャビテーションによる殺菌作用の一例として、集団感染を起こすクリプトスポリウム等のオーシスト殻のような堅い殻で保護され、死滅が困難な菌であっても、強力な衝撃波によって保護殻を破壊すると殺菌が可能であると報告されている(非特許文献4)。
このことから、有害生物であっても、その体内の細胞を超音波による気泡崩壊時に生じる衝撃波による物理的破壊作用と、キャビテーション内部での水分子の分解によって生じたOHラジカルによる化学的な酸化作用により破壊が可能であり、甲殻類、貝類の場合は、生物の全細胞を完全に分解せずとも、呼吸器官等の生命維持に重要な器官の細胞を破壊すればその生命体は、生命を維持出来ずに死滅する。特に甲殻類、貝類の場合では、呼吸器官で海水を取り込んで呼吸しているため、呼吸器官の細胞は気泡崩壊時の衝撃波やOHラジカルの影響を受けやすい。
【0016】
【非特許文献4】第10回ソノケミストリー検討会 講演論文集 2001 「27.超音波を用いた酵母の殺菌」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害生物を含む海水を船舶のバラスト水として排出可能にするには、この海水にOHRを用いて超音波を発生させてキャビテーション気泡を発生させて、有害生物の少なくとも大分部を死滅させることを特徴とするバラスト水の処理方法。
【請求項2】
有害生物を含む海水を船舶のバラスト水として排出可能にするには、この海水にOHRを用いてガイドベージ並びにカレントカッターによる物理的破砕によって、有害生物の少なくとも大分部を死滅させることを特徴とするバラスト水の処理方法。
【請求項3】
有害生物を含む海水を船舶のバラスト水として排出可能にするには、スリットを通過させることにより有害生物を物理的粉砕した後に請求項1の工程を行い、有害生物の少なくとも大分部を死滅させることを特徴とするバラスト水の処理方法。
【請求項4】
有害生物を含む海水を船舶のバラスト水として排出可能にするには、この海水にスリットを通過させることにより有害生物を物理的粉砕した後に請求項2の工程を行い、有害生物の少なくとも大分部を死滅させることを特徴とするバラスト水の処理方法。