説明

バランサー

【課題】各種工作機械等の回転体において、回転体が低速回転する場合であっても、高速回転の場合と同等の動的アンバランスの修正が可能なバランサーを提供すること。
【解決手段】同質量,同形状である複数個のウェイト40と、該複数のウェイトをそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室30が穿設されたウェイトホルダー(21+22)とを含んで構成される、回転体に取り付け(23)て、該回転体の回転軸を中心に一体となって回転しうるものであり、ウェイトの形状が収納室形状の相似縮小形状であり、各収納室が収納室中心軸に沿って伸びる円筒状空間でありかつ収納室中心軸と直交する両端面が凹曲面であり、各収納室中心軸の中点がそれぞれ回転軸と直交する任意の平面内で前記回転軸を中心とする一の円周における接点でありかつ互いに回転軸まわりの回転対称性を有するように位置するバランサーとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工作機械など各種回転体の振れ回りを抑制するためのバランサーに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工作機械等の回転体においては、回転時の振り回り等の動的アンバランスの修正が必要不可欠である。従来は、バランス測定器によりアンバランス重量とその位相角を測定・表示し、アンバランス重量に相当する重量を削り取り又は付加することにより、動的アンバランスの修正を行っていた。しかしかかる動的アンバランスの修正は、一定の測定回転数における固定型のバランス修正であるため、修正時の動的アンバランスはよいが、大幅に回転数が変化した場合や工具交換等により回転体の重量が変化したりすると、動的アンバランスの修正値も変化するため、再び動的アンバランスを生じてしまうこととなる。即ち、回転条件が変化した場合に対応することができず、回転条件が変化する都度バランス修正を行う必要があった。
【0003】
この点、特許文献1のバランサーは、回転体と一体として回転駆動するケーシングと、ケーシングの回転周方向に対して放射状にケーシング内に穿設された収納室と、収納室に緩衝域を有して収納された外錘と、外錘内に穿設された内錘保持室と、内錘保持室に緩衝域を有して保持された内錘と、ケーシングのカバーとからなる自動動的アンバランス装置を基本として提供する。そして、外錘の外周面に、回転体の回転により発生する遠心力によって、収納室に付勢される摺動面を形成するとともに、収納室の内周面に、付勢された外錘の摺動面を収納室の底部に向けて摺動案内する案内面を形成するものである。これにより、各種工作機械等の回転体において、回転体の回転数や回転重量が変化する等して、回転条件が変動したとしても、その変動に追随して自動的に回転時の振り回り等の動的アンバランスを修正することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−41633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のバランサーは、回転体が、例えば50,000r.p.m.程度の高速回転をしている場合は、優れた動的アンバランスの修正を行うのであるが、回転体が例えば500 r.p.m.程度の低速回転をする場合であると、動的アンバランスの修正が不十分であった。
【0006】
そこで本発明では、各種工作機械等の回転体において、回転体が低速回転する場合であっても、高速回転の場合と同等の動的アンバランスの修正が可能なバランサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特に低速回転時に動的アンバランスの修正能力が劣るのは、回転により発生する遠心力が不足しているためであると考えて鋭意検討した。その結果、遠心力が不足している場合は、回転軸に直交する平面(XY平面)の動的アンバランスを修正するだけでは不十分で、回転軸(Z軸)方向の動的アンバランスをも修正しなければならないことを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明では、同質量,同形状である複数個のウェイトと、該複数のウェイトをそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室が穿設されたウェイトホルダーとを含んで構成される、回転体に取り付けて、該回転体の回転軸を中心に一体となって回転しうるバランサーにおいて、
前記各収納室は、
互いに対向して平行に伸びる姿勢維持平面及び案内平面と、
前記姿勢維持平面と前記案内平面とを連結する受け面を有し、
前記案内平面は、前記回転体の回転軸がその頂点を通り底面に直交する直角錐の側面に沿うように、前記回転体の回転軸に対して傾斜され、
前記姿勢維持平面及び前記受け面は、前記案内面よりも前記直角錐の底面寄りに配置され、
前記収納室それぞれは互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有するように形成され、
前記収納室は、前記受け面と対向する位置に設けたウェイト挿入口が、前記ウェイトホルダーの壁面にて蓋をされ、
前記ウェイトは、
互いに対向して平行に伸びる凭れ平面及び第一押付面と、
前記凭れ平面及び前記第一押付面を連結し、互いに対向して平行に伸びる第二押付面及び第三押付面と
前記凭れ平面,前記第一押付面,第二押付面及び第三押付面のそれぞれの両端辺をそれぞれ連結する2つの曲端面を具備し、
前記ウェイトは、前記収納室内で、前記凭れ平面が前記姿勢維持平面に当接し、前記第一押付面が前記案内平面に当接し、前記第二押付面が前記受け面に当接し、前記第三押付面が前記蓋に当接して収納され、
前記各収納室の前記受け面が凹曲面であり、前記ウェイトの前記第二押付面及び前記第三押付面が凸曲面であるバランサーとするものであり、
このうち、前記各収納室の前記受け面が凹曲面であり、前記第二押付面及び前記第三押付面が凸曲面であることを最も主要な特徴とする。
【0009】
また、前記ウェイトの凭れ平面と第一押付面とを曲面に変更して、凭れ平面,第二押付面,第一押付面及び第三押付面が連なる円筒状を形成させ、更に前記収納室形状を前記ウェイトの形状の相似拡大形状に変更することで、本発明のバランサーの特徴は、
前記ウェイトの形状は、前記収納室形状の相似縮小形状であり、
前記各収納室は、収納室中心軸に沿って伸びる円筒状空間であり、かつ前記収納室中心軸と直交する両端面が凹曲面であり、
前記各収納室中心軸の中点は、それぞれ前記回転軸と直交する任意の平面内で前記回転軸を中心とする一の円周における接点であり、かつ互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有するように位置するバランサーと表現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバランサーによれば、収納室の前記受け面を凹曲面,ウェイトの前記第二押付面及び前記第三押付面を凸曲面とすることで、或いは収納室及びウェイトの全体形状を円筒形状にすることで、回転体の回転数や回転重量が変化するに際して、回転条件が変動した場合に、動的アンバランスの修正が、XY平面方向だけでなく、Z軸(回転軸)方向についても効果的に行えるようになった。
【0011】
これにより、本発明のバランサーでは、回転体が高速回転する場合のみならず、低速回転する場合でも動的アンバランスの効果的な修正が可能となった。したがって、回転体の回転速度を問わない、低速・高速両対応のバランサーとすることができた。また、X,Y,Zの三次元全方向での動的アンバランスが修正されるため、例えば回転体として、回転砥石を具備する研削・研磨機に本発明のバランサーを適用した場合、砥石の摩耗が均等に生じ、偏摩耗が抑制されるため、回転砥石の使用寿命が飛躍的に延びる。同様に各工作機械のスピンドルに適用した場合には、スピンドルの摩耗寿命が延びる。また高精度で簡易なメカニカル構造のため、電気,油,空圧を必要とせず、機械主軸の形状に合わせた設計・製作のため、主軸形状を選ばない。
【0012】
また回転砥石を具備する研削・研磨機に本発明のバランサーを適用して、研削材の溝を研削した場合、溝底の研削精度はもちろんのこと、これまで研削が不十分だった溝側壁の研削精度が特に向上し、鏡面に近い仕上がりにすることができた。
【0013】
またバランサーのウェイトが一重構造の場合は、共振振動数を持つため回転体が共振振動数で回転した場合に、動的アンバランスの修正能力が若干劣るが、ウェイトを外ウェイトと内ウェイトとの二重構造で構成することにより、かかる共振振動数における動的アンバランスの修正能力低下を大幅に低減することができる。
【0014】
更に本発明のバランサーを前記ウェイトの形状は、前記収納室形状の相似縮小形状であり、前記各収納室は、収納室中心軸に沿って伸びる円筒状空間であり、かつ前記収納室中心軸と直交する両端面が凹曲面であり、前記各収納室中心軸の中点は、それぞれ前記回転軸と直交する任意の平面内で前記回転軸を中心とする一の円周における接点であり、かつ互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有するように位置させることで、従来よりも加工が容易になるので、バランサーとしての動的アンバランスの修正性能を劣化させることなく製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバランサーの外観概要を示した説明図である。
【図2】本発明のバランサー第一の様態を示す部品分解図である。
【図3】本発明のバランサー第一の様態に用いられるウェイトホルダー胴部の平面図である。
【図4】本発明のバランサー第一の様態に用いられるウェイトを示す,正面図(A),右側面図(B)である。
【図5】本発明のバランサー第一の様態を示す図1のXZ面(x>0,z>0)端面図である。
【図6】本発明のバランサー第二の様態を示す部品分解図である。
【図7】本発明のバランサー第二の様態に用いられるウェイトホルダー胴部の平面図である。
【図8】本発明のバランサー第二の様態に用いられるウェイトを示す,正面図(A),右側面図(B),平面図(C)である。
【図9】本発明のバランサー第二の様態を示す図1のXZ面(x>0,z>0)端面図である。
【図10】本発明のバランサー第三の様態に用いられるウェイトを示す,正面図(A)と右側面図(B),平面図(C),底面図(D)である。
【図11】本発明のバランサー第三の様態を示す図1のXZ面(x>0,z>0)端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて詳細に説明する。図1には、本発明のバランサー10の外観概要を示した。本発明のバランサーは、同質量,同形状である複数個のウェイト40と、該複数のウェイト40をそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室30を具備するウェイトホルダーとを含んで構成されるが、ウェイト40及びウェイト40の収納室30は、ウェイトホルダー内部に形成されるため、外観には現れない。なお各収納室30も、回転バランスの関係から、ウェイト同様、それぞれ同形状にする必要がある。
【0017】
ウェイトホルダー内部に収納室30を設け、該収納室30にウェイト40を収納するには、例えば図2,図6に示したように、ウェイトホルダーをウェイトホルダー蓋部21とウェイトホルダー胴部22との嵌合により一体化できる構成とし、ウェイトホルダー蓋部21とウェイトホルダー胴部22との接合部に収納室30を設けると、ウェイト40を容易に収納することができるので簡便である。分割されたウェイトホルダー胴部22とウェイトホルダー蓋部21は、収納室30にウェイト40を収納したのち、焼き嵌めなど適当な嵌合方法により一体化することができる。
【0018】
各ウェイト40は、それぞれX,Y,Z軸の三次元全方向に揺動自在になるように収納室30に収納される。各ウェイト40が収納室内での揺動可能距離は、回転体で修正されるアンバランスの程度にもよるが、一般的に各方向に0.005〜0.01mm程度であることが好ましい。揺動可能距離が長くなると、動的アンバランス修正の精度が低下しはじめる。
【0019】
図3,図7のウェイトホルダー胴部22の平面図に示したように、収納室30は複数存在し、したがってウェイト40も収納室30の室数だけ収納される。複数の収納室30は、図3,図7に示したように、回転軸(Z軸)方向から見て、該回転軸に対して回転対称性を満たすように配置される。前記回転対称性を満たすために、収納室30の個数は少なくとも複数であることが必要とされるが、回転バランスのためには奇数個数であることが好ましい。ただし3室以上設けても動的バランス修正能力はあまり変化しない一方、加工手間が多くなるため、収納室30は3室であることが最適である。図3,図7では、収納室30が3室で、120°回転対称の様態を示した。
【0020】
本発明のバランサー10は、工作機械などの回転体に取り付けて、該回転体の回転軸を中心に一体となって回転するものである。均一回転させるために、本発明のバランサー10は図1に示したようなリング状とすることが好ましい。図1の様態では、回転体とバランサー10は、バランサー10に穿設された内筒空間に設けられた回転体取付部23に回転体が取り付けられて一体となる。図1の様態では、回転体取付部23に、タップを切りしたねじ山を設け、回転体とは螺合により一体化させる様態を示したが、焼き嵌めなど螺合以外の一体化する方法を用いてもよい。
【0021】
ウェイトホルダーの材質としては、鋼相当の剛性を有し、熱膨張係数が大きく、比重量の小さい材料、例えばアルミ合金、ステンレス鋼、チタン材などが適している。一方、ウェイト40の材質については比重量が大きく防錆性能が高い材料、例えば、ステンレス鋼などが適している。
【0022】
(第一の様態)
図2では、本発明のバランサー第一の様態における部品分解図を示した。第一の様態で用いるウェイト40の形状は、後述のとおり端部に曲面を持つ円筒形状であるので、収納室30は図2に示したように、その中心でウェイトホルダー蓋部21とウェイトホルダー胴部22とに分割して穿設することが加工上容易である。
【0023】
第一の様態のバランサー10の収納室30は、円筒状の空間である。このため各収納室30には中心軸が存在する。円筒の両底面、すなわち収納室中心軸と直交する両端面31は平面ではなく凹曲面である。
【0024】
また第一の様態のバランサー10のウェイト40の形状は、図4に示した円筒形状で、円筒の両底面41が凸曲面である。すなわち収納室30形状の縮小相似形状である。図4では六面図法により第一の様態のバランサー10のウェイト形状を表したが、平面図、底面図及び背面図は、正面図(A)と同様にあらわれ、左側面図は、右側面図(B)と同様にあらわれるため省略した。このように、収納室30及びウェイト40を円筒形状にすることにより、回転軸(Z軸)方向の変位力を曲面で受けることができるので、Z軸方向の動的アンバランスを修正することができる。
【0025】
収納室30及びウェイト40の円筒の両底面形状31,41は、それぞれ対応する凸曲面、凹曲面であればよく、半球状であってもよいが、図4に示したような半球状の先端を切り落とした形状であってもよい。要は、回転軸に垂直平面(XY平面)の動的アンバランスを収納室30及びウェイト40の曲面構造で受けることのできる構造であれば足りる。
【0026】
図3に示したように、収納室30中心軸の各中点を、それぞれ回転軸(Z軸)と直交する任意の平面内で回転軸(Z軸)を中心とする一の円周における接点となって、かつ互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有する位置に配することで、第一の様態におけるバランサー10は、各収納室30の回転対称性を担保する。
【0027】
図5は、第一の様態のバランサー10において、収納室30におけるウェイト40の収納状態を示した図1のXZ面端面図である。なおX,Zとも正の領域のみを示した。図5から分かるように、収納室形状の相似縮小形状であるウェイト40は、収納室30内で、若干のスペース(0.005〜0.01mm)を残した状態で収納される。
【0028】
(第二の様態)
図6では、本発明のバランサー10第二の様態における部品分解図を示した。第二の様態で用いるウェイト40は、後述するように、回転軸(Z軸)に対して傾斜する収納室30に収納されるので、図2に示したような、その中心でウェイトホルダー蓋部21とウェイトホルダー胴部22とに分割して穿設する方法が加工上容易ではない。このためどちらか一方(図6ではウェイトホルダー胴部側)に収納室30を穿設し、別の一方(図6ではウェイトホルダー蓋部側)の当接面が収納室30のウェイト挿入口37の蓋となる様態が簡便である。
【0029】
第二の様態のバランサー10の収納室30は、姿勢維持平面32,案内平面33,受け面34及びウェイト挿入口37を具備し、Z軸方向に傾斜して設けられる。それぞれの面の位置関係は次のとおりである。図7のウェイトホルダー胴部22の平面図には、ウェイト挿入口37の全体形状があらわれる。受け面34は、図7の点線で示されるように、ウェイト挿入口37の奥に進んだ対向する底面として存在する。姿勢維持平面32と案内平面33は受け面34を介して連結するとともに、互い対向して平行に伸びている。図7では、姿勢維持平面32はその端辺が、ウェイト挿入口37の回転軸に近い側の直線としてあらわれる。案内平面33はその端辺が、ウェイト挿入口37の回転軸に遠い側の直線としてあらわれる。ウェイト挿入口37は、ウェイトホルダーの壁面(図6,図7の様態ではウェイトホルダー蓋部21との当接面)で蓋をされる。
【0030】
そして収納室30の受け面34と直交する中心線が、回転軸Zと所定角度θで傾斜している。傾斜角度θは45度±30度の15度〜75度の範囲が好ましく、なかでも45度程度が好ましい。従って収納室30は、図7のウェイトホルダー胴部平面図で見た場合、図中の点線で示されるように、収納室30は回転軸に近いウェイト挿入口37から、外方に向かうように放射状に穿設されている。
【0031】
上記の傾斜状態を収納室30の各面を用いて表現すると、案内平面33は、回転体の回転軸がその頂点を通り底面に直交する(想像上の)直角錐の側面に沿うように、回転体の回転軸に対して傾斜されている。そして姿勢維持平面32と受け面34は、案内平面33よりも、前記直角錐の底面寄りに配置されているといえる。
【0032】
また第二の様態のバランサー10のウェイト40の形状は、図8に示した形状である。図8では六面図法により第二の様態のバランサー10のウェイト形状を表したが、背面図は、正面図(A)と同様にあらわれ、左側面図は、右側面図(B)と同様にあらわれ、底面図は平面図(C)と同様にあらわれるため省略した。すなわち第二の様態のバランサー10のウェイト40の形状は、互いに対向して平行に伸びる凭れ平面42及び第一押付面43と、前記凭れ平面42及び前記第一押付面43を連結し、互いに対向して平行に伸びる第二押付面44及び第三押付面45と、前記凭れ平面42,前記第一押付面43,第二押付面44及び第三押付面45のそれぞれの両端辺をそれぞれ連結する2つの曲端面46を具備する。
【0033】
図9は、第二の様態のバランサー10において、収納室30におけるウェイト40の収納状態を示した図1のXZ面端面図である。なおX,Zとも正の領域のみを示した。図9から分かるように、下記のような位置関係で収納される。すなわち、凭れ平面42は姿勢維持平面32に当接し、第一押付面43は案内平面33に当接し、第二押付面44は受け面34に当接し、第三押付面45は、ウェイトホルダーによる蓋に当接する。
【0034】
ここで第二の様態のバランサー10では、各収納室30の受け面34は凹曲面であり、各ウェイト40の第二押付面44及び第三押付面45は凸曲面とする。このような形状にすることにより、回転軸(Z軸)方向の変位力を曲面で受けることができるので、Z軸方向の動的アンバランスを修正することができる。
【0035】
ウェイト40の曲端面46及びこれに当接する収納室30の面の形状は、円筒の両底面形状が、それぞれ対応する凸曲面、凹曲面であればよく、半球状であってもよいが、図8に示したような半球状の先端を切り落とした形状であってもよい。要は、回転軸に垂直平面(XY平面)の動的アンバランスを収納室30及びウェイト40の曲面構造で受けることのできる構造であれば足りる。
【0036】
(第三の様態)
本発明のバランサー10第三の様態は、前記第二の様態において、ウェイト40が、内ウェイト60と該内ウェイト60を挿入しうるポケット51が穿設された外ウェイト50とから構成される様態である。具体的には、図10に示したような様態である。図10では六面図法により第三の様態のバランサー10のウェイト形状を表したが、背面図は、正面図(A)と同様にあらわれ、左側面図は、右側面図(B)と同様にあらわれるため省略した。なお(C)は平面図、(D)は底面図である。
【0037】
第三の様態におけるウェイト40では、第二の様態におけるウェイト40の第三押付面45の位置に内ウェイト挿入口37を穿設し、該内ウェイト挿入口37から第二押付面44方向に伸びるポケット51を設けたものを外ウェイト50とする。内ウェイト60は、該ポケット51内に完全に収まる形状ではなく、その一部が内ウェイト挿入口37から突出する形状とする。
【0038】
図11は、第三の様態のバランサー10において、収納室30におけるウェイト(=外ウェイト50+内ウェイト60)の収納状態を示した図1のXZ面端面図である。なおX,Zとも正の領域のみを示した。図11から分かるように、内ウェイト60の突出部位は、第二の様態における第三押付面45の役割を果たす。すなわち、内ウェイト60の突出部位は凸曲面である。
【0039】
なお、第一の様態のウェイト40にあっても、上記のような内ウェイトと外ウェイトの二重構造とすることも可能であるが、第一の様態におけるウェイト形状が、両端面が曲面である円筒形状であることを考慮すると、第二の様態におけるほどの二重構造の必要性は少ないと思われる。さらに、前記内ウェイト60に、さらなるポケットを設けた三重構造以上も可能であり、かかる構造でも一層の共振振動数における効果は現れると考えられるが、加工の手間を考えると、コストパフォーマンス上の問題があると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のバランサーは、均質な回転が求められるあらゆる回転体に用いられる可能性がある。具体的にはマシニングセンタ等の各種工作機械のツールホルダ,スピンドル,モータ,スクリュー,タービンなどのほか、自動車,新幹線などの車両の車軸,飛行機のタービン軸,発電機のタービン軸などにも適用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0041】
10 バランサー
21 ウェイトホルダー蓋部
22 ウェイトホルダー胴部
23 回転体取付部
30 収納室
31 円筒状収納室の端面(曲端面)
32 姿勢維持平面
33 案内平面
34 受け面
37 ウェイト挿入口
40 ウェイト
41 円筒状ウェイトの端面(曲端面)
42 凭れ平面
43 第一押付面
44 第二押付面
45 第三押付面
46 曲端面
50 外ウェイト
51 ポケット
60 内ウェイト
Z 回転軸




【特許請求の範囲】
【請求項1】
同質量,同形状である複数個のウェイトと、該複数のウェイトをそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室が穿設されたウェイトホルダーとを含んで構成される、回転体に取り付けて、該回転体の回転軸を中心に一体となって回転しうるバランサーにおいて、
前記ウェイトの形状は、前記収納室形状の相似縮小形状であり、
前記各収納室は、収納室中心軸に沿って伸びる円筒状空間であり、かつ前記収納室中心軸と直交する両端面が凹曲面であり、
前記各収納室中心軸の中点は、それぞれ前記回転軸と直交する任意の平面内で前記回転軸を中心とする一の円周における接点であり、かつ互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有するように位置するバランサー。
【請求項2】
同質量,同形状である複数個のウェイトと、該複数のウェイトをそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室が穿設されたウェイトホルダーとを含んで構成される、回転体に取り付けて、該回転体の回転軸を中心に一体となって回転しうるバランサーにおいて、
前記各収納室は、
互いに対向して平行に伸びる姿勢維持平面及び案内平面と、
前記姿勢維持平面と前記案内平面とを連結する受け面を有し、
前記案内平面は、前記回転体の回転軸がその頂点を通り底面に直交する直角錐の側面に沿うように、前記回転体の回転軸に対して傾斜され、
前記姿勢維持平面及び前記受け面は、前記案内面よりも前記直角錐の底面寄りに配置され、
前記収納室それぞれは互いに前記回転軸まわりの回転対称性を有するように形成され、
前記収納室は、前記受け面と対向する位置に設けたウェイト挿入口が、前記ウェイトホルダーの壁面にて蓋をされ、
前記ウェイトは、
互いに対向して平行に伸びる凭れ平面及び第一押付面と、
前記凭れ平面及び前記第一押付面を連結し、互いに対向して平行に伸びる第二押付面及び第三押付面と
前記凭れ平面,前記第一押付面,第二押付面及び第三押付面のそれぞれの両端辺をそれぞれ連結する2つの曲端面を具備し、
前記ウェイトは、前記収納室内で、前記凭れ平面が前記姿勢維持平面に当接し、前記第一押付面が前記案内平面に当接し、前記第二押付面が前記受け面に当接し、前記第三押付面が前記蓋に当接して収納され、
前記各収納室の前記受け面が凹曲面であり、前記ウェイトの前記第二押付面及び前記第三押付面が凸曲面であるバランサー。
【請求項3】
前記ウェイトが、内ウェイトと該内ウェイトを挿入しうるポケットが穿設された外ウェイトとから構成され、
前記外ウェイトは、前記凭れ平面、前記第一押付面、前記第二押付面、前記2つの曲端面及び前記第二押付面に対向する前記内ウェイト挿入口を具備し、前記内ウェイト挿入口は、第二押付面方向に伸びて前記ポケットを穿設し、
前記内ウェイトは、第三押付面を具備し、該第三押付面が突出するように、前記ポケット内に挿入されている、請求項2記載のバランサー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−169431(P2011−169431A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35468(P2010−35468)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【特許番号】特許第4522493号(P4522493)
【特許公報発行日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(510047410)