説明

バランサ装置とバランサ装置による配管系部品の交換方法

【課題】CVD装置などの膜付装置において、その配管系部品の組込み・交換作業を行うにあたり、クリーンルーム内での使用が可能で、作業員の労働負荷を極力軽減できるような補助作業用のバランサ装置を提供すること。
【解決手段】軸受け台9に支承され、垂直方向に作動するピストンロッド5とシリンダ4とからなるバランサを内蔵したユニバーサルアーム2を有し、前記ピストンロッド5の先端部に部品支え部材6を設けた配管系部品交換作業の補助作業用バランサ装置であって、該バランサ装置のピストンロッド5の先端部に設けられた部品支え部材6にて交換部品を支えながら該交換部品12と配管系との接続を解除して該交換部品12を取り外した後、その取り外した位置に新たな交換部品を該バランサ装置の部品支え部材6にて支えながら装着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体の成膜装置であるCVD装置の配管組立や配管系部品交換などの補助作業に使用可能なバランサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CVD高温拡散炉中で、半導体ウエハの表面に、例えば窒化膜(Si膜)を成長させて膜付けする際に、副生される塩化アンモニウム(NHCl)は、CVD装置の排気系配管やバルブの内面に付着堆積する。膜付け効率の低下を防ぐためには、この副生物を取り除く必要がある。なお付着堆積を防止する方法としては、排気系配管やバルブを加熱し、付着堆積物を昇華させる方法(例えば、特許文献1、2参照)等が知られているが、その方法だけでは十分に付着防止を達成することができない。結局はこの付着堆積物を洗浄除去するために、排気系配管やバルブが人手によってCVD装置から取り外され、新たなバルブや配管に交換されているのが現状である。こうした部品交換作業は、一般に高所(約2m)での重量物取扱い作業となることが多く、しかも精度が要求される作業でもあり、また中腰で交換部品を支持する作業であるため、肉体疲労と相俟って危険を伴う作業でもある。したがって、こうした交換作業は常に二人の作業員を一組として作業が行われ、作業効率が極めて低いものである。
【0003】
また、CVD装置は通常クリーンルーム内に設置され、稼動されている。したがって、配管系のバルブなどの部品交換作業も当然クリーンルーム内で行われるので、その補助作業に使われるバランサ装置自体からの発塵の少ない構造が望まれる。そのため、クリーンルームや食品工場などの高い防塵性が要求される環境では、防塵ツールバランサ(例えば、特許文献3参照)が使用されているが、その高防塵性を確保するためにケーシング内の空気を吸引する真空源を備えていて、装置本体が比較的大きくなるという欠点を有している。
【特許文献1】特開2003−209100号公報
【特許文献2】特開平8−172083号公報
【特許文献3】特開2001−106499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述した背景に鑑みて為されたものであり、CVD装置の配管系部品の組込み・交換作業を行うにあたって、高い防塵性が要求されるクリーンルームでの使用が可能で、設置が容易でコンパクトな構造を有し、使い勝手がよく、しかも作業員の労働負荷を極力軽減できるような補助作業用のバランサ装置と、そのようなバランサ装置を備えた成膜装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1、2の発明は、軸受け台に支承されたアームが、ユニバーサルアームを構成しており、該ユニバーサルアームには、垂直方向に作動するピストンロッドとシリンダを有するバランサが収納され、そして、該バランサに接続して該バランサの作動を制御するための制御ユニットが付設されており、前記ピストンロッドの先端部には部品支え部材が設けられているバランサ装置であって、そのユニバーサルアームは前後左右に移動可能な機構を有する周知の十字移動台(図示せず)に取付けられる。請求項3の発明は、更に作業性を向上させるために、そのユニバーサルアームが回転軸の周りに回転するようにしたものである。
請求項4の発明は、その軸受け台が配管系の設置されている場所のどこにでも必要に応じて取付けられるように、任意の位置または方向に取付け可能な固着手段、たとえば、取付けネジやボルト孔または補助基板等が設けられている。
【0006】
請求項5の発明は、周知の移動可能な支持台、例えば車輪付きの台車にバランサ装置を載置固定したものであり、さらにその移動支持台に配管系の交換しようとする部品の位置に応じて高さの調整ができるような伸縮機構を備えることもできる。
請求項6の発明は、ユニバーサルアーム内の気圧をクリーンルーム内の気圧よりも負圧に保つことにより、アーム内の汚染空気がクリーンルーム内に拡散することを防止したクリーンルーム対応のバランサ装置である。このような負圧のバランサ装置は、図示しないユニバーサルアームの排気口から必要に応じて真空源を介して排気することで容易に得ることがきる。
請求項7の発明は、請求項1〜6に記載されたバランサ装置を用いて配管系部品を交換する方法であり、それはバランサ装置のピストンロッドの先端部に設けられた交換部品支え部材にて、交換部品を支えながら該交換部品と配管系との接続を解除して前記交換部品を取り外した後、その取り外した位置に新たな交換部品を前記バランサ装置の交換部品支え部材にて支えながら装着する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーンルームでの使用が可能で、設置が容易でコンパクトな構造を有し、使い勝手がよく、しかも作業員の労働負荷を極力軽減できるような補助作業用のバランサ装置を提供することができるようになったので、CVD装置などの配管系部品の組込み・交換作業を行うにあたっては、一人の作業員で十分対応することができるようになり、安全かつ作業効率の飛躍的な向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明するが、同一の機能及び構成部品については、同一の符号又は名称を付けて説明を省略する場合がある。
図1は本発明のバランサ装置の概要説明図である。1は本発明のバランサ装置本体で、2はユニバーサルアームに相当する水平回動アーム(以下「ユニバーサルアーム」という)を示しており、回転軸3の周りに回動可能に設けられ、その中には制御ユニットCによって制御されるエアーバランサのシリンダ4に接続され、垂直方向、つまり図面では上下方向に作動するピストンロッド5が設けられている。
【0009】
ピストンロッド5の先端部には、配管系の交換部品を支える部品支え部材6が固定されている。この部品支え部材6は、交換部品の寸法・形状にあわせて適宜選定して、容易に取付け・取り外しができるようにボルトなどで固定するのが望ましい。
更に、部品支え部材6の底面には、部品を固定して吊り下げるための紐通し板7が設けられている。この紐通し板7は平板を複数のボルトで部品支え部材6の底面に取付けたもので、後述する配管系の交換部品を取付け固定する帯紐を通して締め付け固定するものであるが、この形状構成に限定されることはなく、必要に応じて適当な形状、大きさに設計される。
【0010】
8は軸受け台9上に固定された回転軸受けで、この実施例ではボールベアリングを用いた回転軸受けが使用されているが、この軸受けは軸受け台9の上に載置された周知の十字移動台として直接アームを固定した前後左右に移動可能な軸受けとして使用することもできるし、軸受け台9上の十字移動台に載置して前後左右はもとより、360度回転可能な軸受けとしてユニバーサルアーム2を構成することもできる。
軸受け台9には、壁や後述する移動台に取付けるため複数のボルト孔10を有する固定板11が設けられている。この固定板11は、軸受け台9に対し、図1に示すようにL字状の板が好ましいが、バランサ装置1を設置する位置によっては単なる平板でよい場合もあり、任意設計事項である。
制御ユニットCは、バランサ装置1に付属して使用されるものであって、バランサの近くで操作し易い位置に配置するのが望ましい。
【0011】
以下、本発明の実施例およびその操作について説明する。
図2および図3は、本発明のバランサ装置の部品交換要領説明図であり、同図に基づき通常高所に設置されるメインバルブの交換作業要領について説明する。
配管P1、P2は排気配管で、クランプ14(便宜上破線で表示する)を介してメインバルブ12に接続されている。バランサ装置は、軸受け台9によってパネル13に固定され、その裏側には、制御ユニットCが取付けられている。
【0012】
そこで、メインバルブ12を取り外す場合(ガスの供給は止められていることが前提である)、先ずバランサ装置1のユニバーサルアーム2のピストンロッド5をメインバルブ12の真上に持ってきて、予め、部品支え部材6の紐通し板7に通してボルトで固定してある帯紐15を、図2、図3に示すようにメインバルブ12に襷掛けしてこれをしっかりと固定する。この帯紐15には、固定用のバックルを使用してもよいが、迅速な着脱を行うには、この帯紐の一部にマジックテープ(登録商標)のようなタッチクローズ型のファスナーを設けるのが好ましい。
【0013】
メインバルブ12の固定が終わったら、クランプ14を取り外し、配管P1、P2とメインバルブ12との接続を解除する。その後、制御ユニットCのスイッチを入れて負荷バランスの調整が完了すると指先でメインバルブ12を押し上げるだけでメインバルブ12はたやすく上方に移動し、図3の状態で停止する。この後、メインバルブ12を手で支えながらゆっくり手元に引き寄せるとユニバーサルアーム2も回動し、多大な労力を要せずして安全で作業が行い易い手元位置にメインバルブ12を移動することができる。
【0014】
逆に新たなメインバルブ12に置き換える場合には、先に取り外した場合と同様に、新たなメインバルブ12に帯紐15を襷掛けして、しっかりと部品支え部材6に固定する。つぎにバランサ装置1のユニバーサルアーム2を先にメインバルブ12を取り外した位置の真上に移動させて、部品支え部材6に固定されたメインバルブ12の接続口と配管P1、P2の接続口とをほぼ合致させた後、バランサ装置1を介して指先で微調整しながら位置合わせを行い、図2のようにメインバルブ12と配管P1、P2をクランプ14にて再び接続固定する。
【0015】
本発明の実施例では、バランサの上下のストロークは、20mm、上下荷重時の操作力は約1〜1.5kgである。したがって、吊り下げた部品に対し負荷バランスをとった状態では、指先の操作だけで軽く持ち上げることができる。また、交換部品を取り外すためにユニバーサルアーム2を回転させて手元に持って来るにも極めて軽く操作ができる。
【0016】
従来は、配管系部品の交換作業には、常に二人の作業員を必要としていたが、前述のように本発明を採用すれば、一人の作業員で事足りるようになる。
図3では、本発明のバランサ装置1をパネル13に取付けて使用する例を説明したが、移動可能な搬送用の支持台(図示せず)にこのバランサ装置1を載置固定して必要な場所まで移動して部品の交換を行うこともできる。
また、移動可能な支持台に高さの調整機構である周知のエレベータ装置(図示せず)などを付設すれば、高さの調整も自由にできて更に汎用性の高いものになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は本発明の概要説明図である。
【図2】は本発明の部品交換要領説明図である。
【図3】は本発明の部品交換要領説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・・バランサ装置
2・・・ユニバーサルアーム
5・・・ピストンロッド
6・・・部品支え部材
9・・・軸受け台
11・・・固定板
15・・・帯紐
C・・・・制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け台に支承されたユニバーサルアームと、該ユニバーサルアームに収納された、垂直方向に作動するピストンロッドとシリンダとからなるバランサと、前記バランサを作動制御する制御ユニットとを備え、前記ピストンロッドの先端部には部品支え部材が設けられていることを特徴とするバランサ装置。
【請求項2】
ユニバーサルアームは、軸受け台上の十字移動台に載置されていることを特徴とする請求項1記載のバランサ装置。
【請求項3】
ユニバーサルアームの回転軸は、軸受け台上の十字移動台に支承されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバランサ装置。
【請求項4】
軸受け台には、任意の位置又は任意の方向に取付け可能な固着手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のバランサ装置。
【請求項5】
移動可能な支持台に載置されたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のバランサ装置。
【請求項6】
バランサを収納したユニバーサルアーム内の気圧は、クリーンルーム内の気圧よりも負圧に保持されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のバランサ装置。
【請求項7】
バランサ装置のピストンロッドの先端部に設けられた交換部品支え部材にて交換部品を支えながら該交換部品と配管系との接続を解除して該交換部品を取り外した後、その取り外した位置に新たな交換部品を前記バランサ装置の交換部品支え部材にて支えながら装着することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のバランサ装置による配管系部品の交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−39238(P2007−39238A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250241(P2005−250241)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(593051113)株式会社コイデエンジニアリング (1)
【出願人】(399079380)日本機材株式会社 (1)