説明

バリウムイオン源の精製

精製された硝酸バリウムを調製する方法は、硝酸バリウム結晶を溶液から沈殿させる工程、及び少なくとも10wt%の硝酸を含む水溶液により硝酸バリウム結晶を洗浄する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には精製された硝酸塩の製造方法に関し、詳細には硝酸バリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組成調整(composition−modified)チタン酸バリウムパウダーの調製のための湿式化学共沈手順において、最終産物の性能に有害な不純物を出発物質から除くことが望ましい。一例は硝酸バリウム[Ba(NO32]前駆体であり、ナトリウム(Na+)イオン、カリウム(K+)イオン、及びストロンチウム(Sr2+)イオンが特に望ましくない不純物であり、最初の2つは印加された電界の下で可動イオンであり、3つめは比誘電率を抑制する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[好ましい実施形態の説明]
特定の実施形態において、硝酸バリウムなどの硝酸塩は、硝酸などの硝酸イオン源を加えることにより、バリウムイオンなどの金属イオンを含む溶液から硝酸塩を沈殿させることにより製造される。硝酸塩は分離され、硝酸溶液により洗浄される。一例において、硝酸溶液は、少なくとも10wt%の硝酸など、少なくとも5wt%の硝酸を含む。別な例において、硝酸溶液は、30℃以下など、50℃以下の温度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
一例において、そのように調製された硝酸バリウムは望ましい純度を有し、十分に純度の高い組成調整チタン酸バリウムパウダーの調製に使用される。そのような組成調整チタン酸バリウムパウダーは、例えば、エネルギー貯蔵ユニットなどの容量性構造に有用な誘電物質の形成に使用できる。特に、硝酸バリウムの本精製プロセスは、ナトリウム(Na+)イオン及びカリウム(K+)イオンの両方の濃度をこれらの結晶から著しく低減させる。
【0005】
一実施形態において、硝酸バリウムを調製する方法は、硝酸バリウム結晶を沈殿させ、結晶を洗浄することを含む。この方法は、例えば炭酸バリウムなどのバリウム源を溶解させることなどによる、硝酸バリウム結晶が沈殿する一次溶液の調製も含むことがある。或いは、試薬等級のバリウム溶液などの市販のバリウム溶液も使用できる。
【0006】
硝酸バリウムの結晶又は粒子を沈殿させる工程は、バリウムイオンを含む一次溶液から硝酸バリウム結晶を沈殿させることを含む。硝酸溶液などのニトラート源を一次溶液に加えて、硝酸バリウム結晶が沈殿する混合溶液(combined solution)を形成することができる。一例において、硝酸溶液は、少なくとも50wt%の硝酸、少なくとも60wt%の硝酸、又はさらには少なくとも70wt%の硝酸など、少なくとも40wt%硝酸を含む水溶液である。ニトラート源は、混合溶液に、少なくとも15wt%の硝酸、又はさらには少なくとも20wt%の硝酸など、少なくとも10wt%の硝酸を与えるのに十分な量で使用できる。特定の例において、混合溶液中の硝酸の量は、10wt%〜30wt%の範囲になり得る。沈殿は、15℃〜35℃の範囲又は20℃〜30℃の範囲など、10℃〜50℃の範囲の温度で実施できる。
【0007】
沈殿の間、一次溶液又は混合溶液はかき混ぜることができる。例えば、混合溶液は、攪拌、振盪、又は音波攪拌により、かき混ぜることができる。特に、混合溶液は、超音波攪拌などの音波攪拌を利用してかき混ぜることができる。
【0008】
硝酸バリウム結晶は、混合溶液の少なくとも一部から分離できる。例えば、結晶は、デカント、濾過、遠心分離、又はこれらの組み合わせにより分離できる。特に、結晶は沈降させることができ、混合溶液の一部が結晶からデカントされる。別な例において、結晶は濾過材を利用して濾過できる。さらなる例において、結晶は、遠心分離器を利用して混合溶液の一部から分離できる。遠心分離は、バッチ式の遠心分離でも、サイクロン遠心分離などの連続的な遠心分離でもよい。
【0009】
さらに、硝酸バリウム結晶は、水溶液などの洗浄溶液を使用して洗浄できる。洗浄は、分離の後に実施してよく、或いは分離と組み合わせても実施できる。特に、洗浄溶液は、硝酸などのニトラート源を含む。例えば、洗浄溶液は、少なくとも10wt%の硝酸、少なくとも15wt%の硝酸、又はさらには少なくとも20wt%の硝酸など、少なくとも5wt%の硝酸を含み得る。さらなる例において、洗浄溶液は、15wt%〜25wt%の範囲など、15wt%〜35wt%の範囲で硝酸を含む。
【0010】
洗浄は、相対的な低い温度の洗浄溶液により実施できる。例えば、洗浄溶液の温度は、35℃以下、30℃以下、28℃以下、25℃以下、又はさらには20℃以下など、50℃以下でよい。さらなる例において、洗浄溶液の温度は、10℃〜30℃の範囲など、4℃〜30℃の範囲でよい。
【0011】
洗浄の後で、硝酸バリウム結晶を溶解させて、精製されたバリウム源溶液を形成できる。そのような源の溶液は、セラミック成分を含んでいるバリウムを沈殿させるためのバリウムイオンの源として使用できる。特定の例において、バリウム源溶液を、チタンの源及び他の成分と共に沈殿反応に使用して、組成調整チタン酸バリウムを形成できる。或いは、硝酸バリウム結晶を、使用のために乾燥できる。
【0012】
さらなる例において、精製されたバリウム源溶液は一次溶液として使用でき、上述のプロセスを繰り返して、バリウム源がさらに精製される。上述のプロセスの1回の実施は単一パスと称される。2回以上のプロセスの実施は、プロセスが繰り返される回数によって、例えば、二重パス、三重パス、又は四重パスと称される。
【0013】
特定の例において、プロセスを一回実施した後のバリウムイオンの収率と定義される、バリウムイオンの単一パス収率は、少なくとも80%である。例えば、バリウムイオンの単一パス収率は、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、又はそれ以上など、少なくとも85%になり得る。
【0014】
さらなる例において、バリウム源中の不純物濃度(ppm)と得られる結晶中の不純物濃度との比と定義される、不純物の単一パス分離係数は高い。生じる結晶が再溶解されて同じバリウムイオン濃度を有する試験溶液を形成する限り、分離係数は、一次溶液に基づいて測定することもできる。特に、ストロンチウムの単一パス分離係数は、少なくとも2000、少なくとも4000、又はさらには少なくとも8000など、少なくとも1000である。カルシウムの単一パス分離係数は、少なくとも200、又はさらには少なくとも450など、少なくとも100になり得る。ナトリウムの単一パス分離係数は、少なくとも100、又はさらには少なくとも200など、少なくとも50になり得る。さらなる例において、カリウムの単一パス分離係数は、少なくとも50、又はさらには少なくとも90など、少なくとも20になり得る。
【0015】
バリウム及び硝酸は例示的な成分として先に記載されているが、他のカチオン及びニトラート源も使用できる。特に、方法は、カチオンを含む一次溶液に硝酸イオン源を加えて、カチオン硝酸塩結晶を沈殿させることを含み得る。方法は、結晶を分離して、結晶を洗浄溶液により洗浄することをさらに含み得る。洗浄溶液は、少なくとも10wt%の硝酸イオン源を含み、温度は30℃以下である。
【0016】
特定の例において、バリウムイオンなどのカチオンを含む一次溶液が調製される。例えば、出発バリウム化合物は、炭酸バリウム(BaCO3)でよい。一例において、炭酸バリウムは、硝酸を含む水溶液など、酸性水溶液を使用して溶解させることができる。
BaCO3+2HNO3→Ba(NO32+CO2(g)+H2
【0017】
特に、1モルのBaCO3(式量197.3359g/mol)と2モルのHNO3[(式量63.01284g/mol)、(25℃で70wt% 15.5524MのHNO3の128.5976mL)に相当、25℃での密度1.400g/mL]から、1モルのBa(NO32(式量261.3368g/mol)が生じる。
【0018】
超音波攪拌により脱イオン水に硝酸バリウムが溶けた室温の飽和溶液に、70wt%(15.5524M)の硝酸が、例えば、20wt%(4.435M)の硝酸水溶液が生じるのに十分な量で加えられる。この組み合わせ溶液中の硝酸バリウムの溶解度を超えているので、硝酸バリウムが溶解状態から結晶化する。結晶は、濾過、デカント、又は母液の遠心分離により分離され、次いで冷却された20wt%(4.435M)硝酸により洗浄される。このようにすると、脱イオン水で洗浄した場合のような著しい損失の代わりに、結晶性Ba(NO32の量の損失は最小限である。より高い濃度の硝酸による洗浄も利用できる。
【0019】
冷却された硝酸による脱水工程は、Ba(NO32の最小限の損失で、要求される精製を行う。この精製手順の他の特徴は、望ましい純度に達するまで繰り返すことができる点である。
【0020】
25℃でのBa(NO32の溶解度は、9.858g/100mL溶液、すなわち0.377mol/L溶液である。1モルのBa(NO32[式量261.3368g/mol]を溶解させるには、2.899Lの脱イオン水が使用される。20wt%のHNO3(4.435M)中のBa(NO32の溶解度は、0.366g/100mL、すなわち0.018mol/L溶液である。このように、溶解度の差は24.645倍である。
【実施例】
【0021】
実施例1
硝酸バリウムのほぼ飽和している溶液を得て、バリウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、及びストロンチウムに関して分析する。金属含量は、誘導結合プラズマ分光法により決定する。メスシリンダーを使用して、2.899Lの溶液を超音波槽に移す。超音波を作動させ、878mLのCleanroomLPグレードの70%硝酸を槽に加える。直ちに結晶が形成する。
【0022】
系を5分間超音波攪拌したままにしておく。超音波を切った後、5分間結晶を沈降させる。3.4Lをポンプで吸引して溶液をデカントし、体積のおよそ10%を残す。蠕動ポンプを使用して溶液をデカントし、吸引ラインを槽の液体レベルの少し下に維持して結晶の損失を最小限にする。デカントした液体を金属含量に関して分析する。
【0023】
次いで、以下の手順に従って、予め10℃に冷却してある20%硝酸により結晶を2回洗浄する。最初に、超音波を作動させる。次に、CleanroomLPグレード硝酸から誘導した、1Lの高純度の20%硝酸を槽に加える。系を5分間超音波攪拌したままにする。超音波を切った後、液体を、およそ10%が残るまで蠕動ポンプによりデカントする。最初の洗浄の後、818mLが除去され、第二の洗浄の後、1.1Lが除去される。
【0024】
デカントした液体を金属含量に関して分析する。濃度データを以下の表1にまとめる。各デカントの間に除去した体積を利用して、最初に存在したミリグラムと精製の間に除去したミリグラムとを比べることにより、最後の欄に除去パーセントを計算する。
【0025】
【表1】

【0026】
上述のプロセスをさらに繰り返すと、カルシウム、ナトリウム、及びストロンチウムの濃度が減るが、カリウムの濃度は一定のままである。カリウムの濃度は、CleanroomLP硝酸の仕様に近い。さらなる精製は硝酸源の純度により限定されるようである。
【0027】
実施例2
Optimaグレードの硝酸では、汚染物質の濃度はより低く、一般的に一兆分率(parts per trillion)範囲である。Optimaグレードの硝酸は、不純物の超低濃度を報告している。例えば、カルシウムの濃度は20ppt未満、典型的には10ppt未満であり;カリウムの濃度は10ppt未満、典型的には5ppt未満であり;ナトリウムの濃度は10ppt未満、典型的には5ppt未満であり;ストロンチウムの濃度は10ppt未満、典型的には1ppt未満である。
【0028】
1モルのBa(NO32を含むBa(NO32飽和溶液(総体積2.899L)を精製するには:
20wt%HNO3溶液を提供する、878mLのOptimaグレードの70wt%HNO3を加えると、その結果、溶液は16.048モルの(NO3-及び1モルのBa+2を溶液中に含み、Ba(NO32の溶解限度を超える。0.9560モルの量のBa(NO32が結晶化する。超音波攪拌下で、粒径は限定され、Ba(NO32結晶中にトラップされる混入物イオンは非常に少ない。デカントにより、その体積の5%〜10%(0.378L)に溶液を脱水する。母液は、汚染物質及び少量のBa(NO32を含む。
【0029】
残存するスラリーを、Optimaグレード硝酸から誘導した1Lの20wt%HNO3により洗浄する。0.013モルの量のBa(NO32が溶解するが、溶液中に残る望ましくないイオンは洗い流され続ける。洗浄手順は、望ましい純度が得られるまで繰り返すことができる。上述の方法で1Lの20wt%HNO3によりBa(NO32結晶を洗浄するたびに、およそ0.013モルのBa(NO32が洗浄液に溶ける。20wt%HNO3ではなく脱イオン水が使用されると、およそ0.105モルのBa(NO32結晶が溶ける。
【0030】
特に、単一工程再結晶手順は、その低コスト、結晶生成物の非常に高い収率、高純度の結晶生成物を生み出す非常に高い分離係数、従来の実験器具による実施が比較的容易なこと、及び非常に高い効率のため、注目に値する。表2は、得られた洗浄済み結晶中の不純物の濃度を示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示されるBa(NO32溶液試料の分析では、Na+、K+、Ca++、及びSr++元素は1.0ppm未満であり、K+及びCa++は100ppb未満である。追加の洗浄により、Na+、K+、及びCa++のそれぞれで濃度は50ppb未満になり得る。さらに、他の不純物元素のほとんどは、1.0ppm未満の濃度であり、おそらく100ppb未満である。
【0033】
本プロセスの具体的な実施形態を先に記載したが、この手順は他の硝酸塩化合物の精製にも適用可能である。硝酸塩は水溶性なので、上述の方法は、金属元素の性質及び不純物の性質によっては、他の金属元素を精製するための低コストの方法になる。
【0034】
比較例1
飽和水溶液からの水の蒸発による従来の再結晶において、各再結晶では、溶解したままの部分(母液)は蒸発の前の溶液の不純物由来の不純物に富んでおり、これらの不純物を望ましくないとしない用途のために回収できる。
【0035】
連続工程のそれぞれに50パーセントの収率が選択される段階的手順の例は以下のとおりである:
1)103gのBa(NO32を1kgの脱イオン水に溶かすことにより、硝酸バリウムの飽和溶液で始める;
2)溶液の体積が500mLに減るまで沸点付近の温度に液体を加熱する。溶液から水が除去されるのにつれて、Ba(NO32の結晶が形成する;
3)熱い溶液を濾過して、精製された結晶を残存する母液から分離する;
4)精製された結晶を500mLの脱イオン水に溶かし、新しいBa(NO32の飽和溶液を作成する;かつ
5)望ましい純度が得られるまで工程2〜4を繰り返す。
【0036】
単回の再結晶では、約50パーセントの硝酸バリウムが、不純物富化される。2回の再結晶では、約75パーセントが不純物富化され、3回の再結晶では87.5パーセントが不純物富化され、わずか12.5パーセント純度富化される。そのために、高純度硝酸バリウムの収率は12.5%以下である。
【0037】
比較例2
10〜20wt%のHNO3水溶液からのBa(NO32結晶化精製は、飽和Ba(NO32水溶液からの従来の水の蒸発よりも効率がよいが、その理由は、不純物分離係数が前者でははるかに大きいからである。分別結晶化プロセスの全てに言えるが、収穫逓減の原理が働く。分離係数は、結晶の純度上昇に伴い低下する。例えば、分離係数は、低純度の物質には500にもなるが、高純度の物質ではわずか5ほどである。5という低い値は実際的であるが、収率は低い。カルシウム及びストロンチウムイオンのおよそ5ppmの濃度が達成されている。ナトリウム及びカリウムの濃度に関しては、およそ6ppmで分離係数10が得られる。
【0038】
第一の実施形態において、精製された硝酸バリウムを調製する方法は、硝酸溶液を、バリウムイオンを含む水溶液に加えて硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程を含む。硝酸溶液は、少なくとも10wt%の硝酸を有する混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる。方法は、硝酸バリウム結晶の沈殿の間に混合溶液をかき混ぜる工程、硝酸バリウム結晶を分離する工程、及び硝酸バリウム結晶を、少なくとも15wt%の硝酸を含み30℃以下の温度を有する洗浄溶液により洗浄する工程も含む。バリウムイオンの単一パス収率は少なくとも80%である。ストロンチウムの単一パス分離係数は少なくとも2000である。
【0039】
第一の実施形態の一例において、水溶液は、少なくとも20wt%の硝酸を含む。例えば、水溶液は、15wt%〜35wt%の範囲の硝酸を含む。
【0040】
第一の実施形態の別な例において、温度は、25℃以下など、28℃以下である。例えば、温度は10℃〜30℃の範囲など、4℃〜30℃の範囲である。
【0041】
第一の実施形態のさらなる例において、分離する工程は濾過を含む。追加の例において、分離する工程はデカントを含む。別な例において、分離する工程は遠心分離を含む。
【0042】
第一の実施形態の追加の例において、かき混ぜる工程は超音波攪拌を含む。
【0043】
第一の実施形態の別な例において、沈殿させる工程は、少なくとも40wt%の硝酸を含む硝酸溶液を加えることを含む。例えば、硝酸溶液は、少なくとも60wt%の硝酸又は少なくとも70wt%硝酸など、少なくとも50wt%の硝酸を含む。
【0044】
第一の実施形態のさらなる例において、方法は、洗浄された硝酸バリウム結晶を溶解させる工程を含む。別な例において、方法は、溶解させる工程に次いで沈殿させる工程及び洗浄する工程を繰り返すことを含む。
【0045】
第一の実施形態の追加の例において、バリウムイオンの単一パス収率は、少なくとも90%、少なくとも92%、又はさらには少なくとも94%など、少なくとも85%である。特定の例において、ストロンチウムの単一パス分離係数は、少なくとも2000、少なくとも4000、又はさらには少なくとも8000など、少なくとも1000である。
【0046】
第一の実施形態の別な例において、カルシウムの単一パス分離係数は、少なくとも450など、少なくとも200である。さらなる例において、ナトリウムの単一パス分離係数は、少なくとも200など、少なくとも100である。追加の例において、カリウムの単一パス分離係数は、少なくとも90など、少なくとも50である。
【0047】
第二の実施形態において、精製された硝酸バリウムを調製する方法は、硝酸溶液を、バリウムイオンを含む溶液と混合して硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程、硝酸バリウム結晶を分離する工程、及び硝酸バリウム結晶を、少なくとも10wt%の硝酸を含み50℃以下の温度を有する洗浄溶液により洗浄する工程を含む。
【0048】
第三の実施形態において、精製された硝酸バリウムを調製する方法は、硝酸溶液を、バリウムイオンを含む水溶液に加えて硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程を含む。硝酸溶液は、少なくとも10wt%の硝酸を有する混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる。方法は、硝酸バリウム結晶の沈殿の間に混合溶液をかき混ぜる工程、硝酸バリウム結晶を分離する工程、及び硝酸バリウム結晶を、少なくとも15wt%の硝酸を含み30℃以下の温度を有する洗浄溶液により洗浄する工程を含む。
【0049】
第四の実施形態において、精製された硝酸バリウムを調製する方法は、溶液から硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程、及び硝酸バリウム結晶を、少なくとも10wt%の硝酸を含む水溶液により洗浄する工程を含む。
【0050】
第四の実施形態の一例において、水溶液は、少なくとも20wt%の硝酸など、少なくとも15wt%の硝酸を含む。例えば、水溶液は、15wt%〜35wt%の範囲の硝酸を含む。
【0051】
第四の実施形態の別な例において、水溶液の温度は50℃以下である。例えば、温度は、30℃以下、28℃以下、又はさらには25℃以下など、35℃以下である。追加の例において、温度は、10℃〜30℃の範囲など、4℃〜30℃の範囲である。
【0052】
第四の実施形態のさらなる例において、方法は、沈殿した硝酸バリウム結晶を溶液から分離する工程をさらに含む。例えば、分離する工程は濾過を含む。追加の例において、分離する工程はデカントを含む。別な例において、分離する工程は遠心分離を含む。
【0053】
第四の実施形態の追加の例において、方法は、沈殿させる工程の間に溶液をかき混ぜる工程をさらに含む。第四の実施形態の別な例において、かき混ぜる工程は超音波攪拌を含む。
【0054】
第四の実施形態のさらなる例において、沈殿させる工程は、少なくとも50wt%の硝酸、少なくとも60wt%の硝酸、又はさらには少なくとも70wt%の硝酸など、少なくとも40wt%の硝酸を含む硝酸溶液を加えることを含む。
【0055】
第四の実施形態の別な例において、硝酸溶液は、少なくとも15wt%の硝酸又はさらには少なくとも20wt%の硝酸など、少なくとも10wt%の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる。特定の例において、量は、10wt%〜30wt%の範囲の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分である。
【0056】
第四の実施形態の追加の例において、方法は、洗浄された硝酸バリウム結晶を溶解させる工程を含む。別な例において、方法は、溶解させる工程に次いで沈殿させる工程及び洗浄する工程を繰り返すことを含む。
【0057】
第四の実施形態のさらなる例において、バリウムイオンの単一パス収率は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、又はさらには少なくとも94%など、少なくとも80%である。別な例において、ストロンチウムの単一パス分離係数は、少なくとも2000、少なくとも4000、又はさらには少なくとも8000など、少なくとも1000である。追加の例において、カルシウムの単一パス分離係数は、少なくとも450など、少なくとも200である。さらなる例において、ナトリウムの単一パス分離係数は、少なくとも200など、少なくとも100である。追加の例において、カリウムの単一パス分離係数は、少なくとも90など、少なくとも50である。
【0058】
第五の実施形態において、精製された金属硝酸塩を調製する方法は、硝酸イオン源を、カチオンを含む一次溶液に加えて、カチオン硝酸塩結晶を沈殿させる工程、カチオン硝酸塩結晶を一次溶液から分離する工程、及びカチオン硝酸塩結晶を、少なくとも10wt%の硝酸を含み30℃以下の温度を有する洗浄溶液により洗浄する工程を含む。
【0059】
全般的な説明又は実施例において先に記載された作業の全てが必要なわけでなく、特定の作業の一部が必要でないことがあり、記載されたものに加えて1つ以上のさらなる作業が実施され得ることに留意されたい。なおさらに、作業が列記された順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0060】
上記の明細書において、特定の実施形態に関連して概念が記載されてきた。しかし、当業者は、以下の請求項に述べられる本発明の範囲から逸脱せずに、種々の改良及び変更がなされ得ることを認識する。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味でなく説明的な意味にみなされるものとし、そのような改良の全ては本発明の範囲に含まれるものとする。
【0061】
本明細書では、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの他の変形は、非排除的な包含を網羅するものとする。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもこれらの特徴に限定されるわけでなく、明白に列記されず、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有でない他の特徴を含むことがある。さらに、明らかに反対に述べられていない限り、「又は(or)」は、包含的な又はであり、排除的な又はでない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つにより満たされる:Aは正しく(又は存在し)Bが誤りである(又は存在しない)、Aは誤りであり(又は存在せず)Bが正しい(又は存在する)、AとBは両方とも正しい(又は存在する)。
【0062】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を記載するために利用される。これは、便宜上、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためだけになされる。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読むものとし、単数は、明らかに他の意味でない限り複数も含む。
【0063】
利益、他の利点、及び問題に対する解決法は、具体的な実施形態に関連して先に記載された。しかし、利益、利点、又は解決法が起こるように、又はより顕著になるようにする利益、利点、問題に対する解決法、及び特徴は、請求項のいずれか、又は全ての請求項の重要な、必要な、必須な特徴であると解釈しないものとする。
【0064】
本明細書を読んだ後で、当業者は、特定の特徴が、明確さのために別々な実施形態の文脈で本明細書に記載され、単一の実施形態において組み合わせて与えることも可能であることを認識するだろう。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載された種々の特徴を、別々にも、任意の副組み合わせでも与えることができる。さらに、ある範囲で述べられた値の言及は、その範囲内の各値を全て含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製された硝酸バリウムを調製する方法であって、前記方法が、
硝酸溶液をバリウムイオンを含む水溶液に加えて、硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程であって、前記硝酸溶液が、少なくとも10wt%の硝酸を有する混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる工程と、
前記硝酸バリウム結晶の沈殿の間に、前記混合溶液をかき混ぜる工程と、
前記硝酸バリウム結晶を分離する工程と、
少なくとも15wt%の硝酸を含みかつ30℃以下の温度を有する洗浄溶液により前記硝酸バリウム結晶を洗浄する工程と、
を含み、
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも80%であり、そして、
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも2000である方法。
【請求項2】
前記水溶液が少なくとも20wt%の硝酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液が、15wt%〜35wt%の範囲の硝酸を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度が28℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が25℃以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が4℃〜30℃の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記温度が10℃〜30℃の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分離する工程が濾過を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分離する工程がデカントを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分離する工程が遠心分離を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
かき混ぜる工程が超音波攪拌を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
沈殿させる工程が、少なくとも40wt%の硝酸を含む硝酸溶液を加えることを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記硝酸溶液が少なくとも50wt%の硝酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硝酸溶液が少なくとも60wt%の硝酸を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記硝酸溶液が少なくとも70wt%の硝酸を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄された硝酸バリウム結晶を溶解させる工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶解させる工程に次いで、沈殿させる工程及び洗浄する工程を繰り返すことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも85%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも90%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
バリウムの単一パス収率が少なくとも92%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも94%である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも1000である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも2000である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも4000である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも8000である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
カルシウムの単一パス分離係数が少なくとも200である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
カルシウムの単一パス分離係数が少なくとも450である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ナトリウムの単一パス分離係数が少なくとも100である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ナトリウムの単一パス分離係数が少なくとも200である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
カリウムの単一パス分離係数が少なくとも50である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
カリウムの単一パス分離係数が少なくとも90である、請求項31に記載の方法。
【請求項32】
精製された硝酸バリウムを調製する方法であって、前記方法が、
硝酸溶液をバリウムイオンを含む溶液と混合して、硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程と、
前記硝酸バリウム結晶を分離する工程と、
少なくとも10wt%の硝酸を含みかつ50℃以下の温度を有する洗浄溶液により前記硝酸バリウム結晶を洗浄する工程と、を含む方法。
【請求項33】
精製された硝酸バリウムを製造する方法であって、前記方法が、
硝酸溶液をバリウムイオンを含む水溶液に加えて、硝酸バリウム結晶を沈殿させる工程であって、前記硝酸溶液が、少なくとも10wt%の硝酸を有する混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる工程と、
前記硝酸バリウム結晶の沈殿の間に、混合溶液をかき混ぜる工程と、
前記硝酸バリウム結晶を分離する工程と、
少なくとも15wt%の硝酸を含みかつ30℃以下の温度を有する洗浄溶液により前記硝酸バリウム結晶を洗浄する工程と、を含む方法。
【請求項34】
精製された硝酸バリウムを製造する方法であって、前記方法が、
硝酸バリウム結晶を溶液から沈殿させる工程と、
少なくとも10wt%の硝酸を含む水溶液により前記硝酸バリウム結晶を洗浄する工程と、を含む方法。
【請求項35】
前記水溶液が少なくとも15wt%の硝酸を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記水溶液が少なくとも20wt%の硝酸を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水溶液が15wt%〜35wt%の範囲の硝酸を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記水溶液の温度が50℃以下である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記温度が35℃以下である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記温度が30℃以下である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記温度が28℃以下である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記温度が25℃以下である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記温度が4℃〜30℃の範囲である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記温度が10℃〜30℃の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記沈殿した硝酸バリウム結晶を前記溶液から分離する工程をさらに含む、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
分離する工程が濾過を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
分離する工程がデカントを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
分離する工程が遠心分離を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
沈殿させる工程の間に前記溶液をかき混ぜる工程をさらに含む、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
かき混ぜる工程が超音波攪拌を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
沈殿させる工程が、少なくとも40wt%の硝酸を含む硝酸溶液を加えることを含む、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記硝酸溶液が少なくとも50wt%の硝酸を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記硝酸溶液が少なくとも60wt%の硝酸を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記硝酸溶液が少なくとも70wt%の硝酸を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記硝酸溶液が、少なくとも10wt%の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分な量で加えられる、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記量が、少なくとも15wt%の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記量が、少なくとも20wt%の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記量が、10wt%〜30wt%の範囲の硝酸を含む混合溶液を与えるのに十分である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記洗浄された硝酸バリウム結晶を溶解させる工程をさらに含む、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
溶解させる工程に次いで、沈殿させる工程及び洗浄する工程を繰り返すことをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも80%である、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも85%である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも90%である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
バリウムの単一パス収率が少なくとも92%である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
バリウムイオンの単一パス収率が少なくとも94%である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも1000である、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも2000である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも4000である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
ストロンチウムの単一パス分離係数が少なくとも8000である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
カルシウムの単一パス分離係数が少なくとも200である、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
カルシウムの単一パス分離係数が少なくとも450である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ナトリウムの単一パス分離係数が少なくとも100である、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
ナトリウムの単一パス分離係数が少なくとも200である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
カリウムの単一パス分離係数が少なくとも50である、請求項34〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
カリウムの単一パス分離係数が少なくとも90である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
精製された金属硝酸塩を製造する方法であって、前記方法が、
硝酸イオン源をカチオンを含む一次溶液に加えて、カチオン硝酸塩結晶を沈殿させる工程と、
前記カチオン硝酸塩結晶を一次溶液から分離する工程と、
少なくとも10wt%の硝酸を含みかつ30℃以下の温度を有する洗浄溶液により前記カチオン硝酸塩結晶を洗浄する工程と、を含む方法。

【公表番号】特表2013−517219(P2013−517219A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−507954(P2013−507954)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2011/021887
【国際公開番号】WO2012/134424
【国際公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(508267956)イーストー,インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】