説明

バルコニー、廊下の構築方法

【課題】プレキャストコンクリート部材を利用したバルコニー、廊下の構築方法において、プレキャストコンクリート部材の運搬中及び現場での取り扱いを容易にし、作業能率を向上させることを目的としている。
【解決手段】手摺り用立ち上がり部6と排水溝7とを有するスラブ先端部3を、スラブ本体部2とは別に、予めプレキャストコンクリート部材として成形し、該成形時に、めねじ孔付きの金属製インサート21をスラブ先端部3に埋め込む。建築現場において、前記各金属製インサート21のめねじ孔21aに、ねじ付き鉄筋14を螺着すると共に、該ねじ付き鉄筋14の突出部分を前記スラブ本体部2の形成空間内に配置する。そして、前記スラブ本体部2を現場にて後打ちコンクリートで成形し、前記ねじ付き鉄筋14の突出部分をスラブ本体部2内に埋め込み、前記スラブ先端部3をスラブ本体部2と一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションやアパート等の集合住宅に設けられるバルコニー、廊下の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のバルコニー、廊下の構築方法としては、建築現場において、建物の外壁と共に後打ちコンクリートにより、バルコニー、廊下全体を成形する在来工法と、バルコニー、廊下を、工場等において、プレキャストコンクリート部材として予め成形し、工場から建築現場へ運搬し、建築現場にて前記プレキャストコンクリート部材のバルコニー等全体を建物の外壁等に結合するプレキャスト工法がある。
【0003】
後者のプレキャスト工法としても、手摺り用の立ち上がり部及び排水溝と共にスラブ全体をプレキャストコンクリート部材として一体成形する工法(特許文献1)や、立ち上がり部及び排水溝をフル成形すると共にスラブをハーフ成形したプレキャストコンクリート部材を工場にて製造し、建築現場にて、スラブの残りの部分をコンクリート成形すると共に前記プレキャストコンクリート部材を結合する工法(特許文献2)とがある。
【0004】
また、手摺りが鉄筋コンクリート造りの場合は、手摺りを含む断面L字状のプレキャストコンクリート部材として成形する工法と、スラブ先端部に手摺り用立ち上がり部を一体に成形した断面が略I字状のプレキャストコンクリート部材として成形する工法がある。
【特許文献1】特開平10−331250号公報。
【特許文献2】特開平7−23101号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルコニー、廊下を、すべて建築現場にてコンクリート成形する在来工法では、建築現場におけるコンクリート成形作業が煩雑になり、特に、建物の外観を維持するために、スラブ先端部の立ち上がり部の仕上げに手間がかかる。
【0006】
これに対し、プレキャス工法では、スラブ等を工場にて一律に仕上げることができるので、スラブ先端部を簡単かつ短時間で綺麗な外観に仕上げることができ、現場での作業を容易にすると共に工期を短縮できる。
【0007】
しかし、現在のプレキャスト工法は、プレキャストコンクリート部材として、スラブ先端部を含むスラブ(又はハーフスラブ)全体を、工場から建築現場まで運搬し、しかも、2階以上については、重量物である前記スラブを揚重機により荷揚げし、所定の箇所に位置決めする必要があり、運搬に手間がかかると共に、大型の揚重機が必要となり、コストの面で課題も残る。
【0008】
特に、プレキャストコンクリート部材のスラブから、外壁等との結合用に鉄筋を長く突出させている場合には、運搬時にさらに大きなスペースが必要になると共に、鉄筋の突出部分が引っ掛からないように慎重に取り扱う必要があり、運搬及び取り扱い作業に手間がかかる。
【0009】
本発明は、後者のプレキャスト工法において、外観及び構造が複雑なスラブ先端部のみをプレキャストコンクリート部材とし、一方、表面仕上げ精度が要求されないスラブ本体部を建築現場における後打ちコンクリート成形とすることにより、バルコニー等の外観仕上げ作業の容易性を維持しつつ、プレキャストコンクリート部材の運搬、揚重作業を容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は、建物の外壁に片持ち状に支持されるバルコニー、廊下の構築方法において、手摺り用立ち上がり部と排水溝とを一体に有するスラブ先端部を、前記建物の外壁に結合されるスラブ本体部とは別に、予めプレキャストコンクリート部材として成形し、該成形時に、複数のめねじ孔付き金属製インサートを前記スラブ先端部に埋め込み、建築現場において、前記各金属製インサートのめねじ孔にねじ付き鉄筋を螺着すると共に、該ねじ付き鉄筋の突出部分を前記スラブ本体部の形成空間内に配置し、前記スラブ本体部を現場にて後打ちコンクリートで成形することにより、前記ねじ付き鉄筋の突出部分をスラブ本体部内に埋め込むと共に、前記スラブ先端部をスラブ本体部と一体化する。
【0011】
本願請求項2記載の発明は、建物の外壁に片持ち状に支持されるバルコニー、廊下の構築方法において、手摺り用立ち上がり部と排水溝とを一体に有するスラブ先端部を、前記建物の外壁に結合されるスラブ本体部とは別に、予めプレキャストコンクリート部材として成形し、該成形時に、複数のめねじ孔付き金属製インサートと、前記スラブ先端部から略水平に突出する複数の鉄筋とを、前記スラブ先端部に埋め込み、建築現場において、前記各金属製インサートのめねじ孔に、前記鉄筋とは別のねじ付き鉄筋を螺着すると共に、該ねじ付き鉄筋の突出部分と前記予めスラブ本体部に埋め込んだ前記鉄筋の突出部分とを、前記スラブ本体部の形成空間内に配置し、前記スラブ本体部を現場にて後打ちコンクリートで成形することにより、前記各鉄筋の突出部分をスラブ本体部内に埋め込むと共に、前記スラブ先端部をスラブ本体部と一体化する。
【0012】
本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のバルコニー、廊下の構築方法において、前記スラブ先端部の成形時、前記手摺り用立ち上がり部に、手摺り用のめねじ孔付きの金属製インサートを埋め込み、スラブ先端部の成形後に、前記手摺り用の金属製インサートのめねじ孔に、手摺り連結用の鉄筋を螺着する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、構造が複雑で外観の維持が要求される手摺り用立ち上がり部及び排水溝を含むスラブ先端部のみをプレキャストコンクリート部材とし、成形が容易なスラブ本体部を建築現場での後打ちコンクリート成形としているので、スラブ先端部を、容易にかつ短時間で綺麗な外観に仕上げることができると共に、スラブ全体をプレキャストコンクリート部材とする工法に比べ、運搬並びに建築現場にての取り扱い及び揚重作業が容易になり、コストの低減も達成できる。
【0014】
しかも、建築現場にて、金属製インサートにねじ付き鉄筋を螺着し、該ねじ付き鉄筋を、スラブ本体部とスラブ先端部との結合補強又はひび割れ防止に利用するので、スラブ先端部のプレキャスト時においては、スラブ先端部から突出する鉄筋の数量を減らし、あるいは皆無にすることができ、これにより、プレキャストコンクリート部材であるスラブ先端部の運搬時及び現場での揚重作業時の取り扱いが容易になると共に、コストも低減できる。
【0015】
さらに、手摺り用立ち上がり部にも、手摺り用のめねじ孔付きの金属製インサートを埋め込んでいると、建築現場にて、プレキャストコンクリート部材であるスラブ先端部の立ち上がり部に対して、手摺り用の鉄筋を簡単に組み込むことが出来ると共に、コンクリート打設時、手摺り用のコンクリートを、下部から噴き出させることなく、容易に立ち上がり部の上に打設することができる。しかも、手摺り用の鉄筋は、プレキャスト後に金属製インサートに螺着するので、運搬及び揚重作業を繁雑化させる心配もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
図1〜図8は、本発明によるバルコニーの構築方法の第1の実施の形態であり、これらの図面に基づいてバルコニーの構築方法及びバルコニーを説明する。
【0017】
(構築後のバルコニーの概略構造)
図1は、構築後のバルコニーの縦断面図であり、バルコニーBは、建物の外壁又は梁部材1に、現場での後打ちコンクリートにより片持ち状に一体成形されたスラブ本体部2と、該スラブ本体部2とは別に、プレキャストコンクリート部材として予め成形されると共に前記スラブ本体部2の先端面に結合されたスラブ先端部3と、現場での後打ちコンクリートにより成形された鉄筋コンクリート製の手摺り4とから構成されている。
【0018】
スラブ先端部3には、上方に突出する手摺り用立ち上がり部6と、該立ち上がり部6に隣接すると共にバルコニーの長さ方向に沿って略水平に延びる排水溝7が一体に成形されており、前記立ち上がり部6の上端面6aに前記鉄筋コンクリート製の手摺り4が立設されている。
【0019】
バルコニーBに組み込まれる鉄筋として、スラブ本体部2内には、溶接により格子状に組み立てられた鉄筋組立体10が略水平姿勢に埋設され、手摺り内4には、溶接により格子状に組み立てられた鉄筋組立体11が略垂直姿勢に埋設され、スラブ先端部3内には、溶接により格子状に組み立てられた略水平姿勢の鉄筋組立体13が上下一対埋設されると共に、略水平な第1の金属製インサート21と、略垂直な第2の金属製インサート22が埋設されている。
【0020】
スラブ先端部3とスラブ本体部2とを結合するための鉄筋として、スラブ先端部3内の前記鉄筋組立体13が、スラブ先端部3の結合面3aからスラブ本体部2内に略水平に一定量W2(たとえば20cm)だけ延長されており、該延長部分がひび割れ補強鉄筋13aとしてスラブ本体部2内に埋設されている。さらに、上記鉄筋組立体13の鉄筋径(たとえば10φmm)より太径(たとえば16φmm)の引張鉄筋14が前記第1の金属製インサート21に螺着されており、この引張鉄筋14は、スラブ本体部2内に、水平に対してやや傾斜姿勢で所定量W3(たとえば60cm)だけ突入し、スラブ本体部2内に埋設されている。
【0021】
また、スラブ先端部3と手摺り4とを結合するための鉄筋として、前記引張鉄筋14と同径の太径のジョイント筋15が前記第2の金属製インサート22に螺着されており、該ジョイント筋15は手摺り4内に略垂直に所定量H1だけ突入し、前記手摺り用鉄筋組立体11に連結されると共に手摺り4内に埋設されている。
【0022】
(スラブ先端部の詳細構造)
図2はプレキャスト直後のスラブ先端部3の平面図、図3及び図4は、それぞれ図2のIII-III、IV-IV断面拡大図、図5は第1の金属製インサート21を一部断面で示す側面図、図6はスラブ先端部用の型枠及びそれによる成形作業を示す断面図である。
【0023】
図3において、スラブ先端部3内に上下に配列された鉄筋組立体13のうち、前記ひび割れ補強鉄筋13aが一体に形成されている上下の鉄筋は、先端部において連結部24によって連結されており、また、鉄筋組立体13の先端部からは、立ち上がり部6内に至る立ち上がり鉄筋部25が一体的に形成されている。
【0024】
図5において、第1の金属製インサート21は、外周面に、螺旋状の突起が形成された異形鉄筋であり、一方の端部には引張鉄筋14を螺着するための所定深さD1のめねじ孔21aが形成され、他方の端部21bは、アンカー部としてY字状に分離している。
【0025】
図4において、第1の金属製インサート21は、スラブ先端部3内に、略スラブ幅方向に延びるように配設されると共に、前記めねじ孔21aが、スラブ先端部3の結合面3aからスラブ本体部2側に向いて開口している。前記めねじ孔21aの深さD1は、たとえば20mm程度に設定されている。第2の金属製インサート22は、第1の金属製インサート21と同じ形状であり、一端(上端)にめねじ孔22aを備え、他端(下端)にY字状の端部22bを備えており、スラブ先端部3内から立ち上がり部6の上端面6aに向けて垂直上方に延び、上端めねじ孔22aが立ち上がり部6の上端面6aから上方に向いて開口している。
【0026】
図2において、プレキャスト時のスラブ先端部3は基本的に所定長さL1に定寸法化されており、前記所定長さL1は、たとえば3mに設定されている。これら基本寸法のスラブ先端部3に加え、各現場のバルコニーの寸法に合わせ、基本寸法のスラブ先端部3と同断面形状で、基本寸法より短い調節用スラブ先端部がプレキャストコンクリート部材として成形される。図2に示す基本寸法のスラブ先端部3において、ひび割れ補強鉄筋13aは、バルコニー長さ方向にL2(略200mm)の間隔を置いて配置されており、引張鉄筋用の第1の金属製インサート21は、バルコニー長さ方向に、前記ひび割れ補強鉄筋13aの間隔L2の略3倍程度の間隔L3(略600mm)をおいて配設されている。第2の金属製インサート22も、バルコニー長さ方向に略600mmの間隔をおいて配設されている。
【0027】
(バルコニー構築方法)
(1)プレキャストによるスラブ先端部3の成形作業を示す図6において、スラブ先端部3は、建築現場での取付姿勢から90°回転した状態でコンクリート成形される。型枠装置として、スラブ長さ方向に間隔をおいて配置された複数の架台30と、該架台30上に固定された下側型枠部材31と、該下側型枠部材31の左右両端に固定された左側型枠部材35及び右側型枠部材33と、スラブ長さ方向の端部に配置された一対の端面成形型枠36と、から構成されており、左側型枠部材35は、立ち上がり部6及び排水溝7を形成する成形面35a,35bを有している。また、一対の端面形成部材36の一方は、スラブ長さ方向に移動可能となっており、これにより、スラブ先端部3の長さを変更できるようになっている。なお、左右の型枠部材35,33の上端は、連結部材37によりゲート状に連結されている。
【0028】
工場等に前記型枠を設置し、該型枠内に、鉄筋組立体13及び第1、第2の金属製インサート21,22を配置し、適宜の仮固定材により前記鉄筋組立体13及び金属製インサート21,22を仮固定し、上方から型枠内にコンクリートを流し込み、コンクリートの上面(結合面3a)を水平に均して、成形する。成形後は、左右の左側型枠部材35、33を取り外すと共に端面成形型枠36を取り外すことにより、スラブ長さ方向に移動することにより、型枠を開き、成形後のスラブ先端部3を型枠から取り出す。
【0029】
スラブ先端部3としては、基本的には図2に示す基準寸法のものを量産することになるが、現実のバルコニー寸法に合わせ、同一断面形状で寸法の短い調節用スラブ先端部を成形する。この場合は、前記一方の可動式端面成形型枠36を位置調節することにより、スラブ先端部3を所望の長さに仕上げる。
【0030】
(2)前記のように工場でコンクリート成形したスラブ先端部3を、トラック等の輸送手段に積載し、建築現場まで運搬する。
【0031】
(3)図7及び図8は、建築現場における作業を簡単に示している。図7において、既に構築された階下のバルコニーB1に複数本の支保工40を設置し、該支保工40の上にスラブ成形用の下側型枠41を載置する。下側型枠41の上には、スラブ長さ方向に沿ってレール42を仮設置し、該レール42上に、バルコニー長さ方向に移動自在に台車43を載せる。
【0032】
建築現場まで運搬されたスラブ先端部3を、クレーン等の吊り下げ装置により台車43上に吊り込み、台車43により、バルコニー長さ方向の所定位置まで移動し、足場に設けたチェーンブロック等の小形の吊り下げ装置により、スラブ先端部3を、台車43上から仮想線で示すように下側型枠41の先端部の所定位置に移し替える。
【0033】
(4)図8は型枠の設置状態を示しており、前述のようにスラブ先端部3を所定位置に設置し、スラブ本体部用の鉄筋組立体10を組み付けると共に、スラブ先端部3の各金属製インサート21、22に、引張鉄筋14と手摺り接続用のジョイント筋15をそれぞれ螺着し、手摺り用の型枠50、スラブ本体部用の側方型枠51及び建物外壁用の型枠等を設置する。また、手摺り用型枠50内に鉄筋組立体11を組み込む。上記のように各型枠50、51等を設置すると共に、各鉄筋組立体10,11及び鉄筋14、15を組み込んだ状態とした後、スラブ本体部成形空間S1と、手摺り成形空間S2とに、個別に上方からコンクリートを流し込み、各空間S1,S2の天端面を所定高さに均す。この成形により、スラブ先端部3に固着された引張鉄筋14及びジョイント筋15を、それぞれスラブ本体部2及び手摺り4に埋め込むことになる。
【0034】
本実施の形態によると、長い引張鉄筋14を後付けによりスラブ先端部3の金属製インサート21に螺着し、また、ジョイント筋15も後付けにて金属製インサート22に螺着しているので、スラブ先端部3を、工場から建築現場に運搬する際には、バルコニー全体をプレキャストコンクリート部材とする従来の構築方法に比べ、プレキャストコンクリート部材の取り扱いが容易になると共にトラック等にコンパクトに積載することができ、運搬及び取り扱い作業が楽になると共に、運搬コストも低減できる。しかも、スラブ先端部3のプレキャストコンクリート部材は、バルコニー全体のプレキャストコンクリート部材よりも軽量で小さいので、建築現場においても、小形の揚重機により、所望の階まで簡単に吊り込むことができると共に、足場に設置した小形の吊り込み装置により、簡単に所定位置に設置でき、現場での作業も容易になる。
【0035】
また、プレキャストコンクリート部材のスラブ先端部3は、図2のように基本的に所定寸法に基準化しており、これらに加えて、現場調節用の短い寸法のスラブ先端部を各現場に合わせて追加製造するので、この点でも、製造、運搬及び吊り揚げ等の作業規格を統一化でき、各作業が容易になる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図9及び図10は、プレキャストコンクリート部材で成形されるスラブ先端部3の変形例を示しており、主として、アルミ製の手摺りを後付けするバルコニーに適用され、第2の金属製インサートを備えていない。第2の金属製インサートを備えていないこと以外の構造は図3及び図4に示す構造と同じであり、同じ部品には同じ番号を付してある。アルミ製手摺りは、たとえば、立ち上がり部6の上端面6aに孔を明け、アルミ手摺り用支柱を埋め込み、充填材等により固定する。勿論、前記図3及び図4のような第2の金属製インサート22を利用して、アルミ製手摺りを設置することも可能である。
【0037】
[第3の実施の形態]
図11及び図12は、スラブ先端部3から突出するすべての鉄筋15、62を、スラブ先端部3に埋め込んだ金属製インサート22,61に螺着する構成である。すなわち、図11のように、鉄筋組立体13は、スラブ先端部3内に完全に埋め込まれており、図12のように、引張兼ひび割れ補強鉄筋62用に、結合面3aからめねじ孔61aが開口する第1の金属製インサート61を上下2段に埋め込んだ構造である。
【0038】
[第4の実施の形態]
図13は、図2,図3及び図4と同様なスラブ先端部3において、スラブ本体部2内に突入する上下のひび割れ補強鉄筋13aが、スラブ先端部3の外側において、連結部13bによりU字状に一体結合された構造である。その他の構造は、図2、図3及び図4の構造と同じであり、同じ部品には同じ番号を付してある。
【0039】
[その他の実施の形態]
(1)図3及び図4のように、引張鉄筋14と上下のひび割れ補強鉄筋13aとを備えたスラブ先端部3において、上側又は下側の一方のひび割れ補強鉄筋13aを、めねじ孔付きの金属製インサートを利用してスラブ先端部に固着する構造とすることも可能である。
【0040】
(2)前記各実施の形態では、バルコニー及びその構築方法を説明したが、集合住宅の廊下の構築にも本発明を適用できることは、説明するまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
マンション、ホテル、アパート等、各種集合住宅のバルコニー又は廊下の構築に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による構築方法により構築したバルコニーの一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のバルコニーに用いられるスラブ先端部であって、プレキャストによる成形後のスラブ先端部の平面図である。
【図3】図2のIII-III断面拡大図である。
【図4】図2のIV-IV断面拡大図である。
【図5】金属製インサートを一部断面で示す側面図である。
【図6】スラブ先端部用の型枠及びそれによるコンクリート成形作業を示す断面図である。
【図7】建築現場にてスラブ先端部を設置した状態を示す作業説明図である。
【図8】建築現場にて型枠を設置した状態を示す作業説明図である。
【図9】本発明にかかるスラブ先端部の第2の実施の形態を示す図3と同様な箇所の縦断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態のスラブ先端部を示す図4と同様な箇所の縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態のスラブ先端部を示す図3と同様な箇所の縦断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態のスラブ先端部を示す図4と同様な箇所の縦断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態を示す図1と同様なバルコニーの縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 スラブ本体部
3 スラブ先端部
4 鉄筋コンクリート製手摺り
6 手摺り用立ち上がり部
7 排水溝
13 スラブ先端部の鉄筋組立体
13a ひび割れ補強鉄筋
14 引張鉄筋(ねじ付き鉄筋)
21,22、61 金属製インサート
62 引張兼ひび割れ補強鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に片持ち状に支持されるバルコニー、廊下の構築方法において、
手摺り用立ち上がり部と排水溝とを一体に有するスラブ先端部を、前記建物の外壁に結合されるスラブ本体部とは別に、予めプレキャストコンクリート部材として成形し、該成形時に、複数のめねじ孔付き金属製インサートを前記スラブ先端部に埋め込み、
建築現場において、前記各金属製インサートのめねじ孔にねじ付き鉄筋を螺着すると共に、該ねじ付き鉄筋の突出部分を前記スラブ本体部の形成空間内に配置し、前記スラブ本体部を現場にて後打ちコンクリートで成形することにより、前記ねじ付き鉄筋の突出部分をスラブ本体部内に埋め込むと共に、前記スラブ先端部をスラブ本体部と一体化することを特徴とするバルコニー、廊下の構築方法。
【請求項2】
建物の外壁に片持ち状に支持されるバルコニー、廊下の構築方法において、
手摺り用立ち上がり部と排水溝とを一体に有するスラブ先端部を、前記建物の外壁に結合されるスラブ本体部とは別に、予めプレキャストコンクリート部材として成形し、該成形時に、複数のめねじ孔付き金属製インサートと、前記スラブ先端部から略水平に突出する複数の鉄筋とを、前記スラブ先端部に埋め込み、
建築現場において、前記各金属製インサートのめねじ孔に、前記鉄筋とは別のねじ付き鉄筋を螺着すると共に、該ねじ付き鉄筋の突出部分と前記予めスラブ本体部に埋め込んだ前記鉄筋の突出部分とを、前記スラブ本体部の形成空間内に配置し、前記スラブ本体部を現場にて後打ちコンクリートで成形することにより、前記各鉄筋の突出部分をスラブ本体部内に埋め込むと共に、前記スラブ先端部をスラブ本体部と一体化することを特徴とするバルコニー、廊下の構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルコニー、廊下の構築方法において、
前記スラブ先端部の成形時、前記手摺り用立ち上がり部に、手摺り用のめねじ孔付きの金属製インサートを埋め込み、
スラブ先端部の成形後に、前記手摺り用の金属製インサートのめねじ孔に、手摺り連結用のねじ付きの鉄筋を螺着することを特徴とするバルコニー、廊下の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−156922(P2008−156922A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347515(P2006−347515)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000207872)大末建設株式会社 (3)