説明

バルブアッセンブリ

【課題】小型化及び軽量化を図り得る構造簡単な内燃機関用バルブアッセンブリを提供する。
【解決手段】燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させるようにシリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、前記バルブに軸線方向移動不能に設けられた平板状の係止部材と、基端部が前記シリンダヘッドの外表面に直接又は間接的に係合した状態で前記バルブに外挿されるコイルスプリングであって、先端部が基端部よりも小径とされたコイルスプリングとを備え、前記係止部材は、前記コイルスプリングの先端部を係止し得るように軸線方向一方側を向く係合面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジン又は2輪車用エンジンや汎用エンジン等の内燃機関に備えられるバルブアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドには、燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させ得るようにバルブアッセンブリが装着される。
該バルブアッセンブリは、前記シリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、該バルブを軸線方向他方側の遮断方向へ付勢するコイルスプリングとを備えており、カム部材を介して前記バルブが前記コイルスプリングの付勢力に抗して軸線方向一方側へ押動されることによって、前記燃焼室とガスラインとが連通するようになっている。
前記コイルスプリングは、基端部が前記シリンダヘッドに係止され且つ先端部が前記バルブの軸部に係止された状態で、該バルブに外挿されている。
【0003】
ところで、従来のバルブアッセンブリにおいては、前記コイルスプリングの先端部が、前記バルブの軸部に外挿される半割形状のコッタと、該コッタに外挿されるリテーナとによって、前記バルブの軸部に係止されるように構成されていた為、該コイルスプリングの先端部を係止する為の構造が大型化及び複雑化し、結果として、バルブアッセンブリ全体の大型化及び重量化を招いていた(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0004】
詳しくは、前記バルブの軸部の先端側には凹部が形成されている。
前記半割形状のコッタは、内周面に前記凹部に対応した凸部を有し、且つ、外周面が前記バルブの軸線方向他方側へ行くに従って拡径されたテーパ状とされている。
前記リテーナは、内周面が前記コッタの外周面形状に対応したテーパ状とされた本体部と、該本体部の外周面から径方向外方へ延在されたフランジ部とを有している。
【0005】
このように、従来のバルブアッセンブリにおいては、前記コッタの外周面を軸線方向他方側(前記シリンダヘッドから離間する方向)へ行くに従って拡径するテーパ状とし、且つ、前記リテーナの内周面を前記コッタのテーパ状外周面に当接するテーパ状とすることで、前記コイルスプリングの先端部を係止する前記リテーナを前記バルブに対して軸線方向移動不能としている為に、前記コッタ及び前記リテーナが大型化及び複雑化してしまい、結果として、前記バルブアッセンブリの大型化及び重量化を招いていた。
【0006】
又、他の構成のバルブアッセンブリとして、下記特許文献3には、前記コッタに代えて断面円形状の係止部材を備えた構成が提案されている。
斯かる従来のバルブアッセンブリは、前記構成により、コスト低廉化及び軽量化を図り得るとされている。
しかしながら、前記特許文献3に記載の構成は、前記リテーナの内周面が軸線方向他方側(前記シリンダヘッドから離間する方向)へ行くに従って拡径されたテーパ状とされており、該リテーナは、前記テーパ状内周面の最大径部分より径方向外方に延在されたフランジ部によって前記コイルスプリングを係止するように構成されている。
斯かる構成では、前記コイルスプリングの先端部を前記バルブの軸部に十分には近接させることができず、結果として、前記リテーナ及び前記係止部材に大きな曲げモーメントがかかることになる。従って、前記リテーナ及び前記係止部材には前記曲げモーメントに対抗し得る強度が要求され、大型化及び重量化を招く。
【特許文献1】実開平3−123914号公報
【特許文献2】特開昭57−10720号公報
【特許文献3】特開2004−60616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、コイルスプリングの先端部を可及的にバルブの軸部に近接させた位置で係止でき、これにより、小型化及び軽量化を図り得る構造簡単な内燃機関用バルブアッセンブリの提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、前記目的を達成するために、燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させるようにシリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、前記バルブに軸線方向移動不能に設けられた平板状の係止部材と、基端部が前記シリンダヘッドの外表面に直接又は間接的に係合した状態で前記バルブに外挿されるコイルスプリングであって、先端部が基端部よりも小径とされたコイルスプリングとを備え、前記係止部材は、前記コイルスプリングの先端部を係止し得るように軸線方向一方側を向く係合面を有しているバルブアッセンブリを提供する。
【0009】
好ましくは、前記コイルスプリングは、前記先端部の端面に、前記係止部材が係入される凹部を有し得る。
【0010】
又、好ましくは、前記係止部材は、前記バルブの軸部に形成された凹溝の外径よりも大径で且つ前記軸部の外径よりも小径の中央孔と、前記中央孔を外方に開放するスリットとを有し得る。
【0011】
さらに、本発明の他態様は、前記目的を達成する為に、燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させるようにシリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、前記バルブに軸線方向移動不能に設けられた平板状の係止部材であって、軸線方向一方側を向く係合面を有する係止部材と、円筒状の内周面が前記バルブの外周面に摺接された状態で該バルブに軸線方向移動可能に外挿される平板状のリテーナであって、軸線方向他方側を向く当接面が前記係止部材の係合面と当接することで軸線方向他方側への移動端が画されたリテーナと、基端部が前記シリンダヘッドの外表面に直接又は間接的に係合した状態で前記バルブに外挿されるコイルスプリングであって、先端部が基端部よりも小径とされたコイルスプリングとを備え、前記リテーナは、前記コイルスプリングの先端部を係止し得るように軸線方向一方側を向く支持面を有しているバルブアッセンブリを提供する。
好ましくは、前記リテーナの外径は、前記コイルスプリングの前記基端部の内径よりも小径とされ得る。
【0012】
前記種々の態様において、前記バルブは前記シリンダヘッドに固設されたバルブガイドの軸線孔に軸線方向摺動可能に挿入されている場合には、好ましくは、前記コイルスプリングは、前記バルブガイドを囲繞するように前記基端部から軸線方向他方側へ延びる大径部と、該大径部から軸線方向他方側へ行くに従って小径とされ且つ前記先端部で終焉するテーパ部とを有し得る。
【0013】
より好ましくは、前記コイルスプリングの先端部の内径は、前記バルブガイドの外径よりも小径とされ得る。
【0014】
前記種々の態様において、好ましくは、前記バルブは、軸部及び該軸部から軸線方向一方側へ延びるフレア部を有するステム部材であって、該フレア部が開放端とされた中空部を有するステム部材と、前記ステム部材のフレア部にかしめにより固着される蓋部材とを備え得る。
前記フレア部は、一端側へ行くに従って拡径された拡径部と、変曲点を挟んで該拡径部から一端側に延びる縮径部とを有し得る。前記縮径部は、縦断面視において、前記拡径部に対して交差するように構成される。
前記蓋部材は、前記拡径部及び前記縮径部によって挟持される。
より好ましくは、前記ステム部材及び前記蓋部材によって画される内部空間に粉状クーラントを収容させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、燃焼室及びガスラインを遮断させる軸線方向他方側の遮断方向へバルブを付勢するコイルスプリングを先端部の外径が基端部の外径よりも小径となるように構成し、該コイルスプリングの先端部を平板状の係止部材によって係止するように構成したので、該コイルスプリングの先端部をバルブの軸部に可及的に近接させた位置で係止することができる。従って、前記コイルスプリングから前記係止部材に付加される曲げモーメントを小さくでき、これにより、バルブアッセンブリ全体の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0016】
本発明の他態様によれば、燃焼室及びガスラインを遮断させる軸線方向他方側の遮断方向へバルブを付勢するコイルスプリングを先端部の外径が基端部の外径よりも小径となるように構成すると共に、平板状の係止部材によって軸線方向他方側への移動端が画されるリテーナを円筒状内周面を有する平板状とし、前記円筒状内周面が前記バルブの外周面に摺接された状態で該リテーナを該バルブに軸線方向移動可能に外挿し、且つ、該リテーナに軸線方向一方側を向くように設けられた支持面によって前記コイルスプリングの先端部を支持するように構成したので、該コイルスプリングの先端部をバルブの軸部に可及的に近接させた位置で係止することができる。従って、前記コイルスプリングから前記リテーナ及び前記係止部材に付加される曲げモーメントを小さくでき、これにより、バルブアッセンブリ全体の軽量化及び小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
以下に、本発明に係るバルブアッセンブリの好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係るバルブアッセンブリ100が適用された内燃機関500(エンジン)の一例を示す部分模式断面図である。
【0018】
図1に示す内燃機関500は、燃焼室610,該燃焼室610に燃料ガスを供給する為の燃料ガス供給ライン620及び該燃焼室610において燃焼された後のガスを排出する為の燃焼ガス排出ライン630が形成されたシリンダヘッド600と、前記燃料ガス供給ライン620及び前記燃焼ガス排出ライン630を開閉制御し得るように該両ライン620,630にそれぞれ備えられた本実施の形態に係るバルブアッセンブリ100とを備えている。
【0019】
前記バルブアッセンブリ100は、対応するガスライン620,630の前記燃焼室610に通じるポート620P,630Pを該燃焼室610に対して開放又は遮断し得るように、前記シリンダヘッド600に軸線方向Xに関し移動可能に装着されている。
【0020】
詳しくは、図1に示すように、該バルブアッセンブリ100は、前記シリンダヘッド600に軸線方向移動可能に装着されるバルブ1と、前記バルブ1に軸線方向移動不能に固着される係止部材40と、内周面51が前記バルブ1の外周面に摺接された状態で該バルブ1に軸線方向移動可能に外挿される平板状のリテーナ50であって、前記係止部材40によって軸線方向他方側(前記シリンダヘッド600から離間する方向)への移動端が画された平板状のリテーナ50と、基端部が前記シリンダヘッド600の外表面に係止され且つ先端部が前記リテーナに係止されたコイルスプリング60であって、前記リテーナ50及び前記係止部材40を介して前記バルブ1を軸線方向他方側へ付勢するコイルスプリング60とを備えている。
【0021】
斯かるバルブアッセンブリ100は、前記内燃機関500に備えられる駆動機構によって、対応する前記ポート620P,630Pを連通又は遮断させるようになっている。
即ち、前記駆動機構には、駆動軸710によって軸線回りに回転駆動されるカム部材720が備えられている。
そして、前記カム部材720が作動的に前記コイルスプリング60の付勢力に抗して前記バルブ1を軸線方向一方側(前記シリンダヘッド600に近接する方向)へ押動する際には、前記バルブ1が対応する前記ポート620P,630Pを前記燃焼室610に連通させる開放位置をとり、且つ、前記カム部材720による押動力が付与されない際には、前記バルブ1が前記コイルスプリング60の付勢力によって対応する前記ポート620P,630Pを前記燃焼室610に対して遮断させる遮断位置をとるようになっている。
なお、図1は、前記燃料ガス供給ライン620及び前記燃焼ガス排出ライン630が共に、対応する前記バルブアッセンブリ100によって前記燃焼室610に対して遮断されている状態を示している。
【0022】
図2に、前記バルブ1の縦断面図を示す。
図1及び図2に示すように、前記バルブ1は、軸部11と、該軸部11から軸線方向一方側に延びるフレア部12とを有している。
【0023】
前記軸部1は、前記シリンダヘッド600に軸線方向移動可能に支持されている。
詳しくは、前記シリンダヘッド600には、軸線孔が設けられた中空のバルブガイド650が固設されており(図1参照)、前記軸部11は該バルブガイド650の軸線孔に軸線方向摺動可能に挿通されている。
なお、図1中の符号660は、前記バルブガイド650における軸線孔の上端開口と前記軸部11との間をシールするシール部材である。
【0024】
前記フレア部12は、前記バルブ1が前記遮断位置に位置する際には対応する前記ポート620P,630Pの弁座に着座することで該対応する前記ポート620P,630Pを前記燃焼室610に対して遮断し、且つ、前記バルブ1が前記開放位置に位置する際には前記弁座から離間することで対応する前記ポート620P,630Pを前記燃焼室610に対して連通させるように構成されている。
【0025】
本実施の形態においては、該バルブ1は、前記軸部11及び前記フレア部12が一体形成されたステム10を備えている。
該ステム部材10は、前記フレア部12が開放端とされた中空部15を有する中空形状とされている。
斯かるステム部材10は、例えば、鉄鋼,耐熱鋼,ステンレス及びチタン合金等の板状部材を絞り加工することによって、形成することができる。
【0026】
さらに、該バルブ1は、前記ステム部材10の中空部15を閉塞するように前記フレア部の開放端にかしめによって連結される蓋部材20を有している。
該蓋部材20は、例えば、鉄鋼,耐熱鋼,ステンレス及びチタン合金等の平板状部材を用いて形成される。
このように、前記バルブ1を中空形状とすることにより、前記バルブアッセンブリ100全体の軽量化を図ることができる。
【0027】
詳しくは、該蓋部材20は、上面が前記中空部に面する中央部と、前記軸部10の軸線Xを基準にして該中央部から径方向外方へ延びる周縁部とを有しており、該周縁部が前記ステム部材10に連結されるようになっている。
なお、図2に示す形態においては、前記中央部を前記軸線Xに対して略直交する平板状としたが、縦断面視において凸形状又は凹形状とすることも可能である。
又、図1中の符号19は、前記中空部15の前記開放端とは反対側の端部を閉塞する為に前記軸部10に挿入されたプラグであり、該プラグ19は前記軸部10の中空部15に挿入された状態で、かしめ処理されている。
【0028】
好ましくは、図2に示すように、前記バルブ1は、前記ステム部材10及び前記蓋部材20によって画される内部空間15に粉状クーラント30を備えることができる。
このように粉状クーラント30を備える場合には、該バルブ1は、前記ステム部材10の中空部15内に前記粉状クーラント30を予め収容させた状態で、前記蓋部材20をかしめによって該ステム部材10に連結させることにより、形成される。
斯かる粉状クーラント30としては、例えば、平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム又はセラミックスの粒状体を用いることができる。
【0029】
本実施の形態においては、前記バルブ1はさらに下記構成を備えている。
即ち、図2に示すように、前記蓋部材20の周縁部が前記ステム部材10にかしめによって連結された後の状態において、前記ステム部材10のフレア部12が、前記軸部11の軸線Xを基準にして、一端側(即ち、中空部15の開口端側)へ行くに従って拡径された拡径部12aと、変曲点12bを挟んで該拡径部12aから一端側に延びる縮径部12cとを有するようになっている。
【0030】
詳しくは、前記縮径部12cは、縦断面視において、前記拡径部12aに対して交差するように構成されている。
即ち、前記拡径部12a及び前記縮径部12cは、図2に示すように、前記拡径部12aの縦断面視外形線と前記縮径部12cの縦断面視外形線とが略平行ではなく、所定角度で交差するように構成されており、且つ、前記蓋部材20は斯かる構成の拡径部12a及び縮径部12cによって挟持されるようになっている。
【0031】
このように構成された前記バルブ1は、前記ステム部材10を中空形状とすることにより軽量化を図り、且つ、該ステム部材10の中空部15内に粉状クーラント30を収容することにより温度上昇を有効に抑えることに加えて、内燃機関作動中における前記中空部15内の圧力上昇を有効に防止することができる。
【0032】
即ち、前記バルブ1は前記燃焼室610に臨むように配設されている為、該バルブ1は、内燃機関の作動中においては、通常、燃料ガス供給ライン620では約450℃、燃焼ガス排出ライン630では約800℃の高温に晒されることになる。
従って、前記ステム部材10の中空部15内に収容されたクーラント30によって、該ステム部材10の温度上昇が幾分緩和されたとしても、前記中空部15の内圧上昇によって該ステム部材10が膨張変形する虞がある。
特に、ステム部材10の軽量化を図る為に、該ステム部材10の肉厚を薄くした場合にはその危険性が高くなる。
【0033】
この点に関し、前記バルブ1は、前記拡径部12a及び前記縮径部12cによって挟持されるように該蓋部材20がかしめによって前記ステム部材10のフレア部12に連結されると共に、かしめた後の状態の縦断面視において、前記縮径部12cが前記拡径部12aに対して交差するように構成されている。
斯かる構成を備えている為、内燃機関の作動時において、該バルブ1が高温に晒されると、前記拡径部12aと前記縮径部12cとの間の変曲点12bが前記軸部11の軸線Xを基準にして径方向外方へ熱膨張し、これにより、前記ステム部材10と前記蓋部材20との間に、収容する粉状クーラント30が外部に漏れ出ることを防止しつつ、前記中空部15を外部に連通する隙間が生じることになる。
従って、温度上昇に伴う前記中空部15の内圧上昇を有効に防止することができ、これにより、前記ステム部材10の変形を防ぐことができる。
【0034】
さらに、本実施の形態においては、前記バルブ1が、前記燃焼室610に開口する前記隙間によって、前記中空部15の内圧を逃がし得るようになっている。従って、該バルブ1内へのエンジンオイルの混入防止及び該バルブ1の破損防止を有効に図りつつ、前記中空部15の内圧上昇を抑えることができる。
即ち、前記軸部11の他端部(前記フレア部12とは反対側の端部)近傍(図2のA部)に内圧逃がし孔を設けると、エンジンオイルがバルブ1の中空部15内に流入する虞がある。
また、前記軸部11から前記フレア部12に至る部分(図2のB部)に前記内圧逃がし孔を設けると、該内圧逃し孔付近が応力集中の場となり、ステム部材10が破損する虞がある。
これに対し、前記バルブ1においては、前記内圧逃がし孔として、前記ステム部材10と前記蓋部材20との間に生じる前記隙間を用いている。即ち、前記バルブ1においては、前記内圧逃がし孔が前記燃焼室610内に位置している。従って、該バルブ1内へのエンジンオイルの混入防止及び該バルブ1の破損防止を有効に図りつつ、前記中空部15の内圧上昇を抑えることができる。
【0035】
図1及び図2に示すように、前記蓋部材20が前記ステム部材10の軸部11に対して略直交するように配設される場合には、好ましくは、縦断面視において、前記縮径部12cを一端側(自由端側)へ行くに従って前記軸部11の軸線Xに近接するように構成し得る。
斯かる構成を備えることにより、前記ステム部材10の熱膨張時に前記変曲点12bが前記軸部11の軸線Xを基準にして径方向外方へ膨張し易くなり、これにより、前記隙間をより確実に得ることができる。
【0036】
好ましくは、前記ステム部材10を、前記蓋部材20よりも熱膨張係数の大きい材料で形成することができる。
例えば、前記ステム部材10をSUS305(温度範囲0℃〜100℃における線熱膨張係数16×10−6/℃)で形成し、且つ、前記蓋部材20をSUH3(温度範囲0℃〜100℃における線熱膨張係数11×10−6/℃)で形成することができる。
このように、前記ステム部材10を前記蓋部材20よりも熱膨張し易い材料で形成することにより、内燃機関の作動時において、前記ステム部材10と前記蓋部材20との間に前記隙間を確実に形成することができる。
【0037】
なお、図1及び図2においては、前記蓋部材20を単純な平板状としたが、これに代えて、前記ステム部材10の中空部15内に開く凹状部21aを有する蓋部材20’を備えることも可能である(図3〜図5参照)。
図3に示すように、蓋部材20’の中央部における前記中空部15と面する上面に凹状部を設けることにより、仮に、前記ステム部材10の熱膨張量が大きくなり過ぎ、前記隙間が前記粉状クーラント30の粒径よりも大きくなったとしても、該粉状クーラント30が外部へ漏れ出すことを有効に防止できる。
さらに、図3に示す形態においては、前記蓋部材20’の周縁部を上方に折り曲げることで、前記凹状部を形成している為、前記ステム部材10との接触面積を大きくとることができ、これによっても、前記粉状クーラント30の漏れだしを有効に防止できると同時に、前記蓋部材20’の受熱を積極的に前記拡径部12a及び前記変曲点12bに伝達できるので、前記蓋部材20’の耐久性が向上し薄肉化も可能となる。
好ましくは、図3に示す形態においては、該蓋部材20’が弾性変形された状態で前記ステム部材10に装着されるように、前記蓋部材20’のうち,前記拡径部12aと当接する部位の肉厚を他の部位の肉厚に比して薄くすることができる。
斯かる構成を備えることにより、前記ステム部材10と前記蓋部材20’との間の隙間をより小さくすることができる。
又、図4及び図5に示すように、肉厚の蓋部材20’であって、中央部における前記中空部15に面する上面に窪みを有する蓋部材20’を用い、該窪みを前記凹状部として利用することも可能である。斯かる肉厚の蓋部材20’を用いた場合には、前記ステム部材11のかしめ量を大きくすることできる(図4参照)。従って、該蓋部材20’と前記ステム部材11との接触面積を大きくすることによる前記粉状クーラント30の漏れだし防止も図ることができる。
【0038】
なお、前記においては、前記蓋部材20をかしめのみによって前記フレア部12に連結するように構成したが、内燃機関の作動中における熱膨張によって該蓋部材20と該フレア部12との間に隙間が生じる限り、該蓋部材20の周縁部の一部を前記フレア部12に対して溶接することも可能である。
【0039】
前記コイルスプリング60は、図1に示すように、前記リテーナ50に係止される前記先端部の外径が、前記シリンダヘッド600に係止される前記基端部の外径よりも小径とされている。
【0040】
本実施の形態においては、前記コイルスプリング60は、前記バルブガイド650を囲繞するように前記基端部から軸線方向他方側へ延びる大径部61と、前記大径部61から軸線方向他方側へ行くに従って縮径され且つ前記先端部で終焉するテーパ部65とを有している。
前記大径部61は、内径が前記バルブガイド650の外径よりも大径とされている。
一方、前記テーパ部65は、前記先端部における内径が前記バルブガイド650の外径よりも小径とされるように構成されている。
【0041】
本実施の形態においては、平板状の前記係止部材40によって軸線方向他方側への移動端が画される平板状の前記リテーナ50が前記コイルスプリング60の先端部を係止するように構成されており、これにより、該コイルスプリング60の先端部を前記バルブ10の軸部11に可及的に近接可能としている。
【0042】
即ち、従来のバルブアッセンブリにおいては、背景技術の項に記載したように、外周面がテーパ状とされたコッタ及び内周面がテーパ状とされたリテーナを介してコイルスプリングの先端部が係止されていた。
【0043】
斯かる構成においては、テーパ面を形成する為に前記コッタ及び前記リテーナの肉厚(バルブの軸部を基準にした径方向幅)が厚くなり、前記コイルスプリングの先端部を前記バルブの軸部に近接させることができず、前記コイルスプリングの先端部を係止するコッタ及びリテーナに大きな曲げモーメントがかかる。
【0044】
これに対し、本実施の形態においては、平板状の前記係止部材40及び平板状の前記リテーナ50によって前記コイルスプリング60の先端部を支持するように構成されている。
詳しくは、前記軸部11には、軸線方向他端側における外表面に径方向外方に開く凹溝が形成されている。
そして、該係止部材40は、前記凹溝に係入され得る平板状のリング部材とされている。
【0045】
図6(a)に、前記係止部材40の平面図を示す。
図6(a)に示すように、前記係止部材40は、中央孔41と、該中央孔41を外方に開放するスリット42とを有している。
詳しくは、前記中央孔41は、前記凹溝の外径よりも大径で且つ前記軸部11の外径よりも小径とされる。
前記スリット42は、前記係止部材40を前記軸部11に脱着させる際に該軸部11の通路を形成するものであり、該係止部材40の前記軸部11への脱着時に該係止部材40が弾性変形することを許容するような形状及び開口幅とされる。
【0046】
斯かる構成に加えて、前記係止部材40に、前記中央孔41に開く切り欠き部43を設けることも可能である(図6(b)参照)。
このように、前記係止部材40に切り欠き部43を設けることにより、前記係止部材40のさらなる軽量化及び弾性変形容易化を図ることができる。
【0047】
図7(a)に、前記係止部材40及び前記リテーナ50近傍における前記バルブアッセンブリ100の部分縦断面図を示す。
前記リテーナ50は、円筒状の内周面51が前記軸部11の外周面に摺接された状態で該軸部に軸線方向移動可能に外挿され、且つ、前記係止部材40の軸線方向一端面と当接することで軸線方向他方側への移動端が画されるリング部材とされている。
即ち、前記係止部材40は、軸線方向一方側を向く前記一端面が前記リテーナ50と当接する係合面40aとされている(図7(a)参照)。
一方、前記リテーナ50は、内周面51が前記軸部11の外周面に摺接することによりガイドされた状態で、軸線方向一方側を向く一端面が前記コイルスプリング60の先端部と係合する支持面50bを形成し、且つ、軸線方向他方側を向く他端面が前記係止部材40の係合面40aと当接する当接面50aを形成している(図7(a)参照)。
【0048】
図1及び図7(a)に示すように、本実施の形態においては、前記リテーナ50は、前記他端面に凹部を有している。
該凹部は、前記係止部材40が係入される形状及び大きさとされている。
即ち、本実施の形態においては、前記凹部の底面が前記当接面50aを形成し、且つ、前記凹部の内周面が前記係止部材40の径方向外方への変形を防止している。
【0049】
前記リテーナ50は、円筒状の内周面51が前記軸部11の外周面によってガイドされた状態で、軸線方向一方側を向く一端面に前記支持面50bが形成され且つ軸線方向他方側を向く他端面に前記当接面50aが形成される限り、種々の形状とされ得る。
図7(a)に示すように、該リテーナ50を、前記支持面50b及び前記当接面50aを有するリング部と、該リング部の径方向内端部から軸線方向一方側へ一体的に延びる内筒部とを備えるように構成することも可能であるし、これに代えて、若しくは、加えて、図7(b)に示すように、前記リング部と、該リング部の径方向外端部から軸線方向一方側へ一体的に延びる外筒部とを備えるように構成することも可能である。
図7(a)に示すように、前記内筒部を備える構成においては、前記内周面51の軸線方向長さを長くすることができ、これにより、前記リテーナ50の前記軸部11に対する姿勢を安定させることができる。
図7(b)に示すように、前記外筒部を備える構成においては、前記コイルスプリング60の先端部を安定して係止することができる。
【0050】
又、当然ながら、図7(c)に示すように、前記リテーナ50を前記リング部のみによって構成することもできる。さらに、図7(d)に示すように、前記リテーナ50を前記リング部のみによって形成しつつ、該リング部の前記当接面50a側の径方向外端部を面取りすることも可能である。
【0051】
さらに、前述のように、前記リテーナ50における前記係止部材40との対向面(軸線方向他端面)に、該係止部材40が係入される前記凹部を設ける場合には(図7(a)〜(d)参照)、前記係止部材40を、図6(c)に示すように、複数の半割体45,45によって形成することも可能である。
【0052】
好ましくは、前記リテーナ50は、外径が前記コイルスプリング60の前記基端部の内径よりも小径とされる。
斯かる構成を備えることにより、前記コイルスプリング60から前記リテーナ50に作用する曲げモーメントをさらに低減させることができる。
【0053】
又、好ましくは、前記コイルスプリングの先端部の少なくとも一部が、前記軸部11の軸線方向に沿って視た際に前記係止部材40とオーバーラップするように構成することができ、これにより、前記コイルスプリングの先端部をより安定的に支持することができる。
【0054】
実施の形態2
次に、本発明に係るバルブアッセンブリの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施の形態に係るバルブアッセンブリ100Bの部分断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
前記実施の形態1に係るバルブアッセンブリ100は、前記平板状リテーナ50が前記コイルスプリング60の先端部を係止するように構成されていたが、本実施の形態に係るバルブアッセンブリ100Bは、前記係止部材40の係合面40aがコイルスプリング60Bの先端部を係止するように構成されている。
即ち、該バルブアッセンブリ100Bは、前記実施の形態1に係るバルブアッセンブリ100において、前記平板状リテーナ50が削除されていると共に、前記コイルスプリング60に代えてコイルスプリング60Bを備えている。
【0056】
該コイルスプリング60Bは、先端部における端面に凹部が形成されている点においてのみ、前記コイルスプリング60と相違している。
前記凹部は、前記係止部材40が係入されるような大きさ及び形状とされている。
【0057】
斯かる構成のバルブアッセンブリ100Bにおいても、前記実施の形態1におけると同様に、小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るバルブアッセンブリが適用された内燃機関(エンジン)の一例を示す部分模式断面図である。
【図2】図2は、図1に示すバルブアッセンブリにおけるバルブの縦断面図である。
【図3】図3は、前記バルブの変形例を示す縦断面図である。
【図4】図4は、前記バルブの他の変形例を示す縦断面図である。
【図5】図5は、前記バルブのさらに他の変形例を示す縦断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、前記バルブアッセンブリにおける係止部材の平面図である。
【図7】図7(a)〜(d)は、前記バルブアッセンブリの部分断面図であり、該バルブアッセンブリにおけるリテーナ及び係止部材を示している。
【図8】図8は、本発明の他の実施の形態に係るバルブアッセンブリの部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 バルブ
10 ステム部材
11 軸部
12 フレア部
12a 拡径部
12b 変曲点
12c 縮径部
20 蓋部材
20’ 蓋部材
30 粉状クーラント
40 係止部材
40a 係合面
50 リテーナ
50a 当接面
50b 支持面
51 内周面
60 コイルスプリング
61 大径部
65 テーパ部
100,100B バルブアッセンブリ
500 内燃機関
600 シリンダヘッド
610 燃焼室
620 燃料ガス供給ライン
630 燃焼ガス排出ライン
650 バルブガイド
X 軸部の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させるようにシリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、
前記バルブに軸線方向移動不能に設けられた平板状の係止部材と、
基端部が前記シリンダヘッドの外表面に直接又は間接的に係合した状態で前記バルブに外挿されるコイルスプリングであって、先端部が基端部よりも小径とされたコイルスプリングとを備え、
前記係止部材は、前記コイルスプリングの先端部を係止し得るように軸線方向一方側を向く係合面を有していることを特徴とするバルブアッセンブリ。
【請求項2】
前記コイルスプリングは、前記先端部の端面に、前記係止部材が係入される凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項3】
前記係止部材は、前記バルブの軸部に形成された凹溝の外径よりも大径で且つ前記軸部の外径よりも小径の中央孔と、前記中央孔を外方に開放するスリットとを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項4】
燃焼室とガスラインとを連通又は遮断させるようにシリンダヘッドに軸線方向移動可能に装着されるバルブと、
前記バルブに軸線方向移動不能に設けられた平板状の係止部材であって、軸線方向一方側を向く係合面を有する係止部材と、
円筒状の内周面が前記バルブの外周面に摺接された状態で該バルブに軸線方向移動可能に外挿される平板状のリテーナであって、軸線方向他方側を向く当接面が前記係止部材の係合面と当接することで軸線方向他方側への移動端が画されたリテーナと、
基端部が前記シリンダヘッドの外表面に直接又は間接的に係合した状態で前記バルブに外挿されるコイルスプリングであって、先端部が基端部よりも小径とされたコイルスプリングとを備え、
前記リテーナは、前記コイルスプリングの先端部を係止し得るように軸線方向一方側を向く支持面を有していることを特徴とするバルブアッセンブリ。
【請求項5】
前記リテーナの外径は、前記コイルスプリングの前記基端部の内径よりも小径とされていることを特徴とする請求項4に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項6】
前記バルブは前記シリンダヘッドに固設されたバルブガイドの軸線孔に軸線方向摺動可能に挿入されており、
前記コイルスプリングは、前記バルブガイドを囲繞するように前記基端部から軸線方向他方側へ延びる大径部と、該大径部から軸線方向他方側へ行くに従って小径とされ且つ前記先端部で終焉するテーパ部とを有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のバルブアッセンブリ。
【請求項7】
前記コイルスプリングの先端部の内径は、前記バルブガイドの外径よりも小径とされていることを特徴とする請求項6に記載のバルブアッセンブリ。
【請求項8】
前記バルブは、軸部及び該軸部から軸線方向一方側へ延びるフレア部を有するステム部材であって、該フレア部が開放端とされた中空部を有するステム部材と、
前記ステム部材のフレア部にかしめにより固着される蓋部材とを備えており、
前記フレア部は、一端側へ行くに従って拡径された拡径部と、変曲点を挟んで該拡径部から一端側に延びる縮径部とを有し、
縦断面視において、前記縮径部は、前記拡径部に対して交差しており、
前記蓋部材は、前記拡径部及び前記縮径部によって挟持されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のバルブアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−285186(P2007−285186A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112484(P2006−112484)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)