説明

バルブ開閉状態表示装置

【課題】現時点におけるバルブの開閉状態を判別できるとともに、通常時において、バルブが開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについて判別できるバルブ開閉状態表示装置を提供する。
【解決手段】配管を開閉するバルブ100に取り付けられ、バルブ100の開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示具5は、バルブ100に付与された固有情報を表示する固有情報表示領域12a、バルブの通常時における開閉状態を表示する第1通常開閉状態表示領域14aを有し、この第1通常開閉状態表示領域14aに対して表示変更タブレット20を重ねて着脱することによって、第1通常開閉状態表示領域14aの表示を切り換える。さらに、バルブ開閉状態表示具5及び表示変更タブレット20において、開放状態を示す表示領域と、閉鎖状態を示す表示領域とは色分けされており、固有情報表示領域12a及び第1通常開閉状態表示領域14aは同色である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所における各種の配管に設けられたバルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所の作業員が、配管のバルブを開閉する操作を行う際、バルブが閉じているのか開いているのか、外観だけでは容易に確認することはできない。
【0003】
そこで、従来、特許文献1に開示された技術が提案されている。特許文献1によれば、ハンドルの回転操作に連動して回転する指示回転板を設け、この指示回転板の回転量によってバルブがどのくらい開放されているかが分かるようにしたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−121645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バルブが閉じているのか開いているのか、外観だけでは容易にする確認することはできない場合に、バルブの開閉状態を確認するには、実際にバルブを開閉してみるしかない。しかしながら、バルブの開閉状態を確認する際、一つ一つのバルブのハンドルを回して確認することは、配管内の流体の流れに影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで、既存のバルブを、開閉状態表示付のバルブに取り換えることが考えられる。しかし、一つ一つのバルブを取り換えることは、莫大なコスト高につながる。また、バルブが開放されているか閉鎖されているかを判別できるとしても、通常時において、バルブが開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについては判別できない。
【0007】
本発明は、このようか課題を解決し、現時点においてバルブが開放されているか閉鎖されているかを判別できるとともに、通常時において、バルブが開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについて判別できるようなバルブ開閉状態表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0009】
(1) 配管を開閉するバルブに取り付けられ、当該バルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置において、前記バルブに付与された固有情報を表示する固有情報表示領域、及び前記バルブの通常時における開閉状態を表示する第1通常開閉状態表示領域を有する第1表示手段と、前記第1通常開閉状態表示領域に重ねて着脱自在に取り付けられ、前記第1通常開閉状態表示領域に表示されている開閉状態とは異なる開閉状態を表示する非通常開閉状態表示領域を有する第2表示手段とを備え、前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域は、前記固有情報に対応するバルブが通常時において開放の場合には第1表示色に着色されており、前記固有情報に対応するバルブが通常時において閉鎖の場合には前記第1表示色とは異なる第2表示色に着色されており、前記非通常開閉状態表示領域は、前記固有情報に対応するバルブが通常時において開放の場合には前記第2表示色に着色されており、前記固有情報に対応するバルブが通常時において閉鎖の場合には前記第1表示色に着色されていることを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0010】
(1)によれば、通常時においては、第1表示手段から第2表示手段を外しておくことにより、通常時においてバルブが開放なのか閉鎖なのかを第1通常開閉状態表示領域を視認することによって判別することが可能になる。さらに、バルブを操作する場合には、第1通常開閉状態表示領域に第2表示手段を重ねて、第1通常開閉状態表示領域を非通常開閉状態表示領域に変更する。この非通常開閉状態表示領域を視認することにより、現在、バルブが通常時の状態とは異なる状態、すなわち、通常時の状態が開放の場合には、現在、閉鎖状態であること、通常時の状態が閉鎖の場合には、現在、開放状態であることが判る。また、例えば、第1表示色が「赤」、第2表示色が「緑」とした場合、通常時においては開放となるバルブの場合には、第1表示手段の固有情報表示領域及び第1通常開閉状態表示領域がともに「赤」となるため、現在、バルブが開放されていることが色によって判別することが可能になる。また、バルブの操作時においては、第1通常開閉状態表示領域に第2表示手段を重ねて、第1通常開閉状態表示領域を非通常開閉状態表示領域に変更することにより、表示色が赤から緑に変わる。このため、固有情報表示領域の赤と非通常開閉状態表示領域の緑を視認することにより、通常時は開放であるが、現時点では閉鎖されていることが判る。このように、現時点でバルブが開放されているか閉鎖されているかを判別できるとともに、通常時において、バルブが開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについて判別することが可能なバルブ開閉状態表示装置を提供することが可能になる。
【0011】
(2) (1)において、前記固有情報が付与されているバルブの開閉状態を個々に表示する開閉状態表示領域を有し、各バルブの開閉状態を一覧表示するバルブ開閉状態表示板を備え、前記開閉状態表示領域は、前記固有情報表示領域と同一表示態様の表示板固有情報表示領域、及び通常時において前記第1表示手段から取り外した前記第2表示手段を取り付ける取付領域を有し、前記第2表示手段は、前記非通常開閉状態表示領域の裏面に、前記第1表示手段の表示内容を表示しかつ前記非通常開閉状態表示領域と同一の表示色に着色された第2通常開閉状態表示領域を有し、前記取付領域は、前記非通常開閉状態表示領域と同一色に着色され、かつ前記非通常開閉状態表示領域に表示された開閉状態を表示することを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0012】
(2)によれば、バルブ開閉状態表示板において、所定の固有情報に対応する開閉状態表示領域の取付領域に第2表示手段が取り付けられている場合には、所定の固有情報に対応するバルブが、通常時は開閉状態であり、第2表示手段が取り外されている場合には、バルブが操作されていることが判別できる。また、例えば、第1表示色が「赤」、第2表示色が「緑」とした場合、通常時において開放されるバルブに対応する開閉状態表示領域の表示板固有情報表示領域は「赤」となり、さらに取付領域に、第2通常開閉状態表示領域を表示させるように第2表示手段を取り付けることにより、開閉状態表示領域全体が「赤」になる。これにより、バルブ開閉状態表示板の開閉状態表示領域の表示色によって、通常時で開放されるバルブであると判別することが可能になる。また、第2表示手段を、第1通常開閉状態表示領域に取り付けるために、取付領域から外した場合、「緑」に着色された取付領域が視認されるようになる。このため、所定の固有情報に対応するバルブは、通常時は開放であるが、現時点では閉鎖されていることが、バルブ開閉状態表示板の開閉状態表示領域の表示色によって判るようになる。
【0013】
(3) (2)において、前記開閉状態表示領域は、前記バルブ開閉状態表示板の板面に磁力によって吸着する吸着部材に形成されていることを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0014】
(3)によれば、バルブの数に応じて、バルブ開閉状態表示板における開閉状態表示領域の数を容易に増減させることが可能になる。
【0015】
(4) (1)〜(3)において、前記第1表示手段は、前記第1通常開閉状態表示領域に鉄板を設け、前記第2表示手段は、マグネット部材を有するタブレット体からなることを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0016】
(4)によれば、第1表示手段の第1通常開閉状態表示領域に対して、第2表示手段をマグネット部材の磁力によって吸着させるために、第2表示手段の着脱が容易になる。
【0017】
(5) (1)〜(4)において、前記バルブに巻き付けるベルト状の面ファスナを備え、前記第1表示手段は、前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域を有する面の裏面に、ベルト状の面ファスナを挿通する挿通部を有し、前記挿通部に挿通した面ファスナを前記バルブに巻き付けてから前記面ファスナの両端部を密着させて、前記バルブに取り付けられることを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0018】
(5)によれば、面ファスナを用いてバルブ開閉状態表示装置をバルブに容易に取り付けることが可能になる。
【0019】
(6) (5)において、前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域は、上下方向に並列し、前記挿通部は、前記面ファスナを上下方向、及び当該上下方向に対して直角方向に挿通可能な孔部を有することを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【0020】
(6)によれば、バルブの方向に応じて、面ファスナの挿通方向を変えることが可能になる。これにより、固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域が見易くなるように、しかも容易にバルブ開閉状態表示装置をバルブに取り付けることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、現時点でバルブが開放されているか閉鎖されているかを判別できるとともに、通常時において、バルブが開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについて判別することが可能なバルブ開閉状態表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態におけるバルブ開閉状態表示装置の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るバルブ開閉状態表示具の外観を示す斜視図である。
【図3】図2のバルブ開閉状態表示具をバルブに取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】表示変更タブレットの背面側を示す斜視図である。
【図5】図2の背面側の斜視図である。
【図6】図2のバルブ開閉状態表示具をバルブに取り付けた状態を示す正面図である。
【図7】バルブ開閉状態表示板を示す説明図である。
【図8】表示板用バルブ開閉状態表示部材の構成を示す斜視図である。
【図9】表示板用バルブ開閉状態表示部材の使用時の状態を示す斜視図である。
【図10】表示板用バルブ開閉状態表示部材の使用時の状態を示す斜視図である。
【図11】複数のバルブを有する配管系統おける通常時のバルブ開閉状態表示具の表示例を示す説明図である。
【図12】複数のバルブを有する配管系統においてバルブを切り換えた場合のバルブ開閉状態表示具の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態におけるバルブ開閉状態表示装置の概要を示す説明図である。バルブ開閉状態表示装置1は、バルブ100に取り付けるバルブ開閉状態表示具5と、管理室などに設けたバルブ開閉状態表示板50とを備えており、バルブ開閉状態表示板50とバルブ開閉状態表示具5との間で、表示変更タブレット20を移動させることにより、バルブ開閉状態表示具5及びバルブ開閉状態表示板50の表示を変更するものである。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係るバルブ開閉状態表示具の外観を示す斜視図である。図3は図2のバルブ開閉状態表示具をバルブに取り付けた状態を示す正面図である。図2に示すように、バルブ開閉状態表示具5は、第1表示手段に相当する通常状態表示部材10、第2表示手段に相当する表示変更タブレット20、及び面ファスナ30によって構成されている。そして、バルブ開閉状態表示具5は、図3に示すように、バルブ100に面ファスナ30によって取り付けられ、バルブ100の開閉状態を表示する。
【0026】
次に、バルブ開閉状態表示具5の構成について、図2を参照しながら説明する。通常状態表示部材10は、正面視した場合に正方形であり、側面視した場合に中央に段差が形成されており、この段差によって上段部12と下段部14の二段に分けられた段状部材である。
【0027】
上段部12の上面には、バルブに付与された固有番号を表示する固有情報表示領域12aが形成されている。また、下段部14の上面には、通常におけるバルブの開閉状態を表示する第1通常開閉状態表示領域14aが形成されている。また、通常状態表示部材10を正面視した場合に、段差のラインは、正方形を二等分しているため、固有情報表示領域12aと第1通常開閉状態表示領域14aとは同型である。なお、固有情報表示領域12a及び前記第1通常開閉状態表示領域14aが、上下方向に並列されており、固有情報表示領域12aの下方に第1通常開閉状態表示領域14aが配置されている。
【0028】
表示変更タブレット20は、下段部14上に重ねる直方体型の部材であり、図5に示すように、下段部14上に表示変更タブレット20を重ねた場合、通常状態表示部材10と表示変更タブレット20とによって、側面が長方形の直方体型が構成される。
【0029】
通常状態表示部材10及び表示変更タブレット20は、プラスチック材を、例えば、射出成型することによって、製造される。ここで、通常状態表示部材10の内部には、鉄板16が埋め込まれ、表示変更タブレット20の内部には、マグネット26が埋め込まれている。鉄板16は、固有情報表示領域12a及び第1通常開閉状態表示領域14aの背後に位置付けられている。これにより、通常状態表示部材10の下段部14上に表示変更タブレット20を重ねた場合、表示変更タブレット20内部のマグネット26が、通常状態表示部材10内の鉄板16に吸着するように磁力が働くため、通常状態表示部材10の下段部14上に表示変更タブレット20を重ねた状態が維持される。
【0030】
なお、図2に示す例においては、鉄板16が、固有情報表示領域12a及び第1通常開閉状態表示領域14aの背後に位置付けられているが、それに限らず、通常状態表示部材10の背後にのみ設けてもよい。また、図2に示す例においては、鉄板16が通常状態表示部材10の内部に埋め込まれているものであるが、それに限らず、鉄板16を下段部14の上面に貼着し、鉄板16の板面に第1通常開閉状態表示領域14aを形成してもよい。
【0031】
表示変更タブレット20における正面側の長方形の面には、第1通常開閉状態表示領域14aに表示されている開閉状態とは異なる開閉状態を表示する非通常開閉状態表示領域20aが形成されている。すなわち、第1通常開閉状態表示領域14aに、バルブが開放状態である旨が表示されている場合には、非通常開閉状態表示領域20aに、バルブが閉鎖状態である旨が表示される。逆に、第1通常開閉状態表示領域14aに、バルブが閉鎖状態である旨が表示されている場合には、非通常開閉状態表示領域20aに、バルブが開放状態である旨が表示される。
【0032】
また、表示変更タブレット20における、非通常開閉状態表示領域20aが形成されている面の反対面には、図4に示すように、固有情報表示領域12a(図2参照)と第1通常開閉状態表示領域14a(図2参照)との表示内容を合わせて表示する第2通常開閉状態表示領域20bが形成されている。
【0033】
このように、第1通常開閉状態表示領域14a、非通常開閉状態表示領域20a及び第2通常開閉状態表示領域20bは、バルブが開放状態であるか閉鎖状態であるかが表示されている。ここで、開放状態を表示する領域は、「赤」に着色され、閉鎖状態を表示する領域は「緑」に着色されている。このように、第1通常開閉状態表示領域14a、非通常開閉状態表示領域20a及び第2通常開閉状態表示領域20bに着色した色は、第1表示色及び第2表示色に相当する。固有情報表示領域12aには、第1通常開閉状態表示領域14aと同一色が着色されている。
【0034】
次に、バルブ開閉状態表示具5の表示例について、図2、図4を用いて説明する。まず、バルブ開閉状態表示具5を取り付けるバルブ100は、「F101」という固有番号が付与され、通常時には開放されているものとする。このバルブ100に取り付けるバルブ開閉状態表示具5の固有情報表示領域12aには「F101」という文字が表示されている。また、第1通常開閉状態表示領域14aには「常時開」という文字が表示されている。また、非通常開閉状態表示領域20aには「F101 閉」という文字が表示されている。また、第2通常開閉状態表示領域20bには「F101 常時開」という文字が表示されている。さらに、固有情報表示領域12a、第1通常開閉状態表示領域14a及び第2通常開閉状態表示領域20bには、「赤」が着色され、非通常開閉状態表示領域20aには、「緑」が着色されている。このため、固有番号が「F101」のバルブ開閉状態表示具5は、表示変更タブレット20が取り付けられていない場合には、全体に「赤」が表示され、表示変更タブレット20が取り付けられた場合には、上方が「赤」、下方が「緑」に表示される。
【0035】
図5は、図2の背面側の斜視図である。通常状態表示部材10の裏側には、帯状の面ファスナ30を挿入するための挿入部38が形成されている。挿入部38は、通常状態表示部材10の背面よりも小さい正方形の正方形板38aと、この正方形板38aを通常状態表示部材10の裏面に対して離間した位置に配置するように支持する4本の支持脚38bとから構成されている。4本の支持脚38bは、正方形板38aの4つの角部から、対角線方向に沿って外側に延在しており、正方形板38aの4つの角部において曲げ部が形成されている。そして、4本の支持脚38bの先端部は、通常状態表示部材10の裏面における角部近傍に固定されている。これにより、正方形板38aと支持脚38bとの間に、段差のラインに沿った方向、すなわち上下方向に対して直角方向に延びる孔部38cと、上下方向に延びる孔部38dが形成される。なお、正方形板38a及び4つの支持脚38bは、通常状態表示部材10の射出成型時において形成される。
【0036】
そして、孔部38cに面ファスナ30を挿通し、面ファスナ30をバルブに巻き付けてから面ファスナ30の両端部を密着させることにより、図3に示すように、バルブ100にバルブ開閉状態表示具5が取り付けられる。なお、図3に示すバルブ100は縦方向に設置されているが、バルブ100が横方向の場合には、孔部38dに面ファスナ30を挿通して、図5に示すように取り付ける。このように、バルブ100の方向に応じて、面ファスナ30を挿通する孔部を選択することにより、バルブ開閉状態表示具5の表示を見易くすることが可能になる。
【0037】
次に、バルブ開閉状態表示具5の使用例について、図3を参照しながら説明する。通常時においては、図3(a)に示すように、通常状態表示部材10に表示変更タブレット20は取り付けられていない。このため、固有情報表示領域12a及び第1通常開閉状態表示領域14aが視認可能である。作業者は、表示変更タブレット20がないことから現時点は通常状態であると判別することができる。また、第1通常開閉状態表示領域14aの「常時開」という表示を視認することによって、バルブ100は、通常時において開放されるべきものであり、現時点で開放状態であることがわかる。さらに、固有情報表示領域12a及び第1通常開閉状態表示領域14aは、ともに「赤」に着色されているため、例えば、作業員が第1通常開閉状態表示領域14aの文字が視認できない場合であっても、バルブ開閉状態表示具5の全体が「赤」であることを認識することによって、バルブ100は現時点で開放されていると判別することが可能になる。なお、通常時において、バルブ100に取り付けられたバルブ開閉状態表示具5の表示変更タブレット20は、後述するバルブ開閉状態表示板50(図7参照)に吸着させている。
【0038】
バルブ100を閉鎖する場合には、バルブ100の開閉を行う作業員が、バルブ開閉状態表示板50(図7参照)から、閉鎖するバルブ100の固有番号が表示されている表示変更タブレット20を取り外し、図3(b)に示すように、表示変更タブレット20を第1通常開閉状態表示領域14aに重ねて取り付ける。これにより、図3(c)に示すように、第1通常開閉状態表示領域14aの表示が非通常開閉状態表示領域20aの表示に変更される。なお、表示変更タブレット20は、内部に設けたマグネット26が通常状態表示部材10内の鉄板16に吸着することにより、通常状態表示部材10に取り付けた状態で維持される。
【0039】
これにより、バルブ100の開閉を行う作業員以外の作業員は、表示変更タブレット20が存在することから現時点で開閉状態が切り換えられていると判別することができる。さらに、非通常開閉状態表示領域20aの「F101 閉」という表示を視認することによって、バルブ100は、現時点で閉鎖状態であることが判る。さらに、固有情報表示領域12aは「赤」、非通常開閉状態表示領域20aは「緑」に着色されているため、例えば、作業員が非通常開閉状態表示領域20aの文字が視認できない場合であっても、上方が「赤」で下方が「緑」であることを認識することによって、バルブ100は、通常時においては開放されるべきであるが、現時点では閉鎖されていることが判る。
【0040】
図7はバルブ開閉状態表示板を示す説明図である。バルブ開閉状態表示板50は、マグネット部材が吸着可能な平面板であり、このバルブ開閉状態表示板50に、表示板用バルブ開閉状態表示部材60が配置される。表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、内部にマグネット66(図8参照)が埋め込まれており、このマグネット66の磁力によって、表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、バルブ開閉状態表示板50に吸着された状態で維持される。また、表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、複数のバルブ100に個々に用意されており、複数の表示板用バルブ開閉状態表示部材60が、バルブ開閉状態表示板50に並べて配置される。
【0041】
図8は、表示板用バルブ開閉状態表示部材の構成を示す斜視図である。表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、正面視した場合に正方形であり、側面視した場合に中央に段差が形成されており、この段差によって上段部62と下段部64の二段に分けられた段状部材である。ここで、表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、通常状態表示部材10(図2参照)から挿入部38(図5参照)を除去して背面を平面に形成したものと同一形状である。
【0042】
上段部62の上面には、バルブに付与された固有番号を表示する表示板固有情報表示領域62aが形成されている。また、下段部64の上には、通常時において表示変更タブレット20を取り付ける取付領域64aが形成されている。表示板固有情報表示領域62aには、固有情報表示領域12a(図2参照)と同様に、バルブに付与された固有番号が表示されている。また、取付領域64aには、表示変更タブレット20の非通常開閉状態表示領域20aと同一色が着色されており、かつ非通常開閉状態表示領域20a(図2参照)に表示された開閉状態が表示されている。
【0043】
また、表示板用バルブ開閉状態表示部材60において、マグネット66は、上段部62及び下段部64に渡って埋め込まれた板状のものである。ここで、マグネット66は、下段部64において、表示変更タブレット20における第2通常開閉状態表示領域20b側の磁極と同じ磁極が取付領域64aに対向するように埋め込まれている。このため、表示板用バルブ開閉状態表示部材60に表示変更タブレット20を吸着させる際に、非通常開閉状態表示領域20aと取付領域64aとを重ね合わせた場合にのみ、表示変更タブレット20が表示板用バルブ開閉状態表示部材60に吸着する。したがって、表示板用バルブ開閉状態表示部材60に表示変更タブレット20を吸着させた場合には、第2通常開閉状態表示領域20bが視認可能な状態となる。
【0044】
次に、表示板用バルブ開閉状態表示部材60の表示例について説明する。例えば、「F101」という固有番号が付与されたバルブ100は、通常時には開放されているものとする。このバルブ100の開閉状態を表示する表示板用バルブ開閉状態表示部材60の表示板固有情報表示領域62aには「F101」という文字が表示されている。また、取付領域64aには「閉」という文字が表示されている。表示板固有情報表示領域62aには、「赤」が着色され、取付領域には、「緑」が着色されている。このため、固有番号が「F101」の表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、表示変更タブレット20が取り付けられていない場合には、上方が「赤」、下方が「緑」に表示され、表示変更タブレット20が取り付けられた場合には、全体に「赤」が表示される。
【0045】
次に、バルブ開閉状態表示板50の使用例について、図7、図9〜図12を参照しながら説明する。図7に示すバルブ開閉状態表示板50は、例えば、図11に示すディーゼルエンジンに対して燃料を供給するための配管系統に設けられた、固有番号がF101〜F129のバルブ100の開閉状態を表示する。ここで、図11に示す配管系統におけるバルブ100には、同一の固有番号が表示されているバルブ開閉状態表示具5がそれぞれ装着されている。また、バルブ開閉状態表示板50には、F101〜F129の固有番号が表示された表示板用バルブ開閉状態表示部材60が、固有番号順に並列配置されている。
【0046】
通常時においては、表示変更タブレット20が表示板用バルブ開閉状態表示部材60に取り付けられており、第2通常開閉状態表示領域20bが視認可能な状態となる。ここで、表示板固有情報表示領域62aと第2通常開閉状態表示領域20bとは同色であることから、例えば、通常時において開放されている固有番号F101のバルブ100に対応する表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、赤く表示されており、バルブ開閉状態表示具5も同様に赤く表示されている。また、通常時において閉鎖されている固有番号F106のバルブ100に対応する表示板用バルブ開閉状態表示部材60は、緑が表示されており、バルブ開閉状態表示具5も同様に緑が表示されている。
【0047】
次に、図11に示す配管系統から、例えば、点検のために燃料を抜き取る場合には、固有番号が、F101、F102、F105、F106、F110、F115、F118及びF123のバルブ100の開閉状態を変える。バルブ100の開閉作業を行う際には、図9に示すように、開閉作業を行う固有番号に対応する表示板用バルブ開閉状態表示部材60から表示変更タブレット20を外し、この表示変更タブレット20をバルブ開閉状態表示具5の第1通常開閉状態表示領域14a上に、非通常開閉状態表示領域20aを表に向けて取り付ける。これにより、図10に示すように、バルブ開閉状態表示板50を見て、取付領域64aにおける表示変更タブレット20の有無により、現在、配管系統において開閉状態が切り換えられているバルブ100を把握することが可能になる。さらに、取付領域64aの表示を視認することにより、バルブ100の開閉状態を把握することが可能になる。また、表示板用バルブ開閉状態表示部材60の表示が見えなくても、表示板用バルブ開閉状態表示部材60において上下の色が異なっている表示板用バルブ開閉状態表示部材60に対応するバルブ100は、現時点で切り換えられていると判別できる。具体的に、図10において、固有番号がF101の表示板用バルブ開閉状態表示部材60を視認することにより、固有番号がF101のバルブ100は、通常時においては開放であるが、現時点においては閉鎖されていることが、表示内容あるいは色によって判別できる。また、固有番号がF106のバルブ100は、通常時においては閉鎖であるが、現時点においては開放されていることが、表示内容あるいは色によって判別できる。
【0048】
また、図12に示すように、バルブ開閉状態表示具5における色の表示態様は、同一の固有番号の表示板用バルブ開閉状態表示部材60における色の表示態様に一致している。このため、バルブ開閉状態表示具5あるいは表示板用バルブ開閉状態表示部材60のいずれかを視認することによって、通常時においてあるべき開閉状態、及び現時点での開閉状態を判別することが可能になる。
【0049】
また、配管工事によって配管系統のバルブが増えた場合、あるいは減った場合には、該当する固有番号の表示板用バルブ開閉状態表示部材60をバルブ開閉状態表示板50に取り付けたり、あるいは取り外すことによって、バルブ開閉状態表示板50に現状の配管系統に対応したバルブの開閉状態を表示することが可能になる。
【0050】
このように構成した本実施形態によれば、バルブ100の配置場所に赴いたときに、バルブ開閉状態表示具5の表示内容又は色の表示態様を視認することにより、現時点でバルブ100が開放されているか閉鎖されているかを判別できるとともに、通常時において、バルブ100が開放されているべきものか閉鎖されているべきものかについて判別することが可能になる。同様に、バルブ開閉状態表示板50の表示内容又は色の表示態様を視認することにより、配管系統全体に取り付けられているバルブ100について、現時点でバルブ100が開放されているか閉鎖されているかを判別できるとともに、通常時において、バルブ100が開放されているべきものか閉鎖されているべきものかを判別することが可能になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、図2に示すバルブ開閉状態表示具5によれば、通常状態表示部材10に鉄板16を埋め込み、表示変更タブレット20にマグネット26を埋め込んでいるが、逆に、通常状態表示部材10にマグネット部材を埋め込み、表示変更タブレット20に鉄板を埋め込んでもよい。また、通常状態表示部材10に対して鉄板16の代わりにマグネット部材を埋め込んでもよい。さらには、表示変更タブレット20自体をマグネットによって構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 バルブ開閉状態表示装置
5 バルブ開閉状態表示具
10 通常状態表示部材
12 上段部
12a 固有情報表示領域
14 下段部
14a 第1通常開閉状態表示領域
16 鉄板
20 表示変更タブレット
20a 非通常開閉状態表示領域
20b 第2通常開閉状態表示領域
26、66 マグネット
30 面ファスナ
38 挿入部
38a 正方形板
38b 支持脚
38c 孔部
38d 孔部
50 バルブ開閉状態表示板
60 表示板用バルブ開閉状態表示部材
62 上段部
62a 表示板固有情報表示領域
64 下段部
64a 取付領域
100 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を開閉するバルブに取り付けられ、当該バルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置において、
前記バルブに付与された固有情報を表示する固有情報表示領域、及び前記バルブの通常時における開閉状態を表示する第1通常開閉状態表示領域を有する第1表示手段と、
前記第1通常開閉状態表示領域に重ねて着脱自在に取り付けられ、前記第1通常開閉状態表示領域に表示されている開閉状態とは異なる開閉状態を表示する非通常開閉状態表示領域を有する第2表示手段とを備え、
前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域は、前記固有情報に対応するバルブが通常時において開放の場合には第1表示色に着色されており、前記固有情報に対応するバルブが通常時において閉鎖の場合には前記第1表示色とは異なる第2表示色に着色されており、
前記非通常開閉状態表示領域は、前記固有情報に対応するバルブが通常時において開放の場合には前記第2表示色に着色されており、前記固有情報に対応するバルブが通常時において閉鎖の場合には前記第1表示色に着色されていることを特徴とするバルブ開閉状態表示装置。
【請求項2】
前記固有情報が付与されている複数の前記バルブの開閉状態を個々に表示する開閉状態表示領域を有し、各バルブの開閉状態を一覧表示するバルブ開閉状態表示板を備え、
前記開閉状態表示領域は、前記固有情報表示領域と同一表示態様の表示板固有情報表示領域、及び通常時において前記第2表示手段を取り付ける取付領域を有し、
前記第2表示手段は、前記非通常開閉状態表示領域の裏面に、前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域の表示内容を表示しかつ前記第1通常開閉状態表示領域と同一の表示色に着色された第2通常開閉状態表示領域を有し、
前記取付領域は、前記非通常開閉状態表示領域と同一色に着色され、かつ前記非通常開閉状態表示領域に表示された開閉状態を表示することを特徴とする請求項1記載のバルブ開閉状態表示装置。
【請求項3】
前記開閉状態表示領域は、前記バルブ開閉状態表示板の板面に磁力によって吸着する吸着部材に形成されていることを特徴とする請求項2記載のバルブ開閉状態表示装置。
【請求項4】
前記第1表示手段は、前記第1通常開閉状態表示領域に鉄板を設け、
前記第2表示手段は、マグネット部材を有するタブレット体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のバルブ開閉状態表示装置。
【請求項5】
前記バルブに巻き付けるベルト状の面ファスナを備え、
前記第1表示手段は、前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域を有する面の裏面に、ベルト状の面ファスナを挿通する挿通部を有し、前記挿通部に挿通した面ファスナを前記バルブに巻き付けてから前記面ファスナの両端部を密着させて、前記バルブに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のバルブ開閉状態表示装置。
【請求項6】
前記固有情報表示領域及び前記第1通常開閉状態表示領域は、上下方向に並列し、
前記挿通部は、前記面ファスナを上下方向、及び当該上下方向に対して直角方向に挿通可能な孔部を有することを特徴とする請求項5記載のバルブ開閉状態表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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