説明

バレル容器

【課題】確実にめっき処理を行なうことができる、バレル容器を提供する。
【解決手段】
本発明に係るバレル容器は、被めっき物を収容する多角筒形のバレル容器1であって、バレル容器1の両端面に当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成された一対の端壁部10と、一対の端壁部10の間に互いに隣接して形成された複数の側壁部20と、を備え、側壁部20には、バレル容器1の内側と外側を連通する開口部21が形成され、開口部21の少なくとも一つは、バレル容器1の内側において、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線と接していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル容器に関する。特に小型の被めっき物のめっき処理に適したバレル容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ型電子部品の外部電極をめっき処理する場合、低コストで大量に処理できるバレルめっき法が主流である。そして、バレルめっき法の中で、例えば電解バレルめっき法が低コストで大量に処理できる電解バレルめっき法がある。電解バレルめっき法は、以下のような方法である。すなわち、バレル容器の中に導電性メディアと被めっき物とを収容し、バレル容器をめっき浴に浸漬させる。そして、バレル容器内に陰極端子を配置し、バレル容器外のめっき浴中に陽極端子を配置する。そして、バレル容器を回転させながら通電し、被めっき物にめっきを行なう。
【0003】
バレル容器の形状は、一般に多角筒形が多い。例えば六角筒形の場合、バレル容器は一対の端壁部と6つの側壁部とを備える。そして、両方の端壁部間の中心部分を結ぶ線が回転軸となっている。側壁部には、めっき液が自由に通過できるように、開口部が形成されている。
【0004】
従来のバレル容器の構造として、例えば特許文献1に知られたものがある。図3は従来のバレル容器の側面の断面図である。図3に示すバレル容器は六角筒形である。六角筒形の側壁部には、矩形状の窓125が設けられている。そして各窓125にはそれぞれ窓蓋126が着脱可能に取り付けられている。これらの各窓蓋126には格子状の桟127が形成されている。これらの桟127と一体にめっき液を通すメッシュ128が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−241997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4(A)は、従来のバレル容器の斜視図である。バレル容器100は、一対の端壁部110と6つの側壁部120とを備えている。そして、特許文献1では、図4(A)のように、各側壁部120にはそれぞれ複数の開口部121が形成されている。
【0007】
図4(B)は、従来のバレル容器の側壁部の断面図である。図4(B)の左側の図は、バレル容器100を槽132中の液131に浸漬する途中の図である。矢印はバレル容器100の浸漬方向を示す。図4(B)の右側の図は、バレル容器100を液131に浸漬して、バレル容器100を回転させる際の図である。矢印は、バレル容器100の回転方向を示す。液131は、めっき液や洗浄液等が挙げられる。従来のバレル容器100の構造の場合には、浸漬過程で、隣接する側壁部間の角部に気泡が閉じ込められ、浸漬後に気泡133がバレル容器100内に残留してしまう。バレル容器100内に気泡が残留すると、被めっき物がバレル容器100内部の気泡と液との界面に浮いてしまう。その結果、めっき処理が完全に行なわれず、めっき皮膜がつかない問題や、めっき皮膜の薄いものができてしまう問題が生じていた。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされてものであり、確実にめっき処理を行なうことができるバレル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバレル容器は、被めっき物を収容する多角筒形のバレル容器であって、前記バレル容器の両端面に当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成された一対の端壁部と、前記一対の端壁部の間に互いに隣接して形成された複数の側壁部と、を備え、前記側壁部には、前記バレル容器の内側と外側を連通する開口部が形成され、前記開口部の少なくとも一つは、前記バレル容器の内側において、隣接する2つの前記側壁部によって形成される接線と接していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るバレル容器は、被めっき物を収容する多角筒形のバレル容器であって、前記バレル容器の両端面に当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成された一対の端壁部と、前記一対の端壁部の間に互いに隣接して形成された複数の側壁部と、を備え、前記側壁部には、前記バレル容器の内側と外側を連通する開口部が形成され、前記開口部の少なくとも一つは、隣接する2つの前記側壁部によって形成される接線を跨いで配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、バレル容器の浸漬過程において、隣接する側壁部間の角部から気泡が抜けやすくなる。そのため、被めっき物にめっき皮膜がつかない問題や、めっき皮膜の薄いものができてしまう問題が生じず、確実にめっき処理を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るバレル容器を示す図である。(実施形態1)
【図2】本発明に係るバレル容器を示す図である。(実施形態2)
【図3】従来のバレル容器を示す断面図である。
【図4】従来のバレル容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1に、実施形態1のバレル容器の例を示す。
【0015】
図1(A)は、本発明に係るバレル容器の斜視図である。バレル容器1は、被めっき物を収容する役割を有する。バレル容器1の材質は、塩化ビニル、アクリル、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0016】
バレル容器1は、多角筒形であり、一対の端壁部10と複数の側壁部20を備えている。端壁部10は、バレル容器1の両端面に、当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成されている。そして、実施形態1はバレル容器1が六角筒形の例であり、6つの側壁部20を備えている。側壁部20は、端壁部10の間に互いに隣接して形成されている。実施形態1では、六角柱の空間を形成するように形成される。側壁部20には、複数の開口部21が形成されている。開口部21はバレル容器1の内側と外側を連通するように形成されている。開口部21は例えばメッシュ(図示せず)で覆われている。メッシュは開口部21を取り囲む非開口部22によって保持される。メッシュの網目サイズは、めっき液や洗浄液を容易に通過させるが、被めっき物や導電性メディアを外部に通過させない大きさに設定されている。開口部21内に格子状の桟を設けて、桟にメッシュを貼りつけても良い。また、桟にメッシュを一体成形したものをはめ込んでも良い。この場合には、開口部21の大きさが大きくなっても、メッシュの強度を確保しやすい。
【0017】
バレル容器1は回転軸を中心として回転する。回転軸は、一対の端壁部10の中心部分を結ぶ線で形成されている。
【0018】
図1(B)は、本発明に係るバレル容器1の側壁部の断面図である。図1(B)の左側の図は、バレル容器1を槽32中の液31に浸漬する途中の図である。矢印はバレル容器1の浸漬方向を示す。図1(B)の右側の図は、バレル容器1を液31に浸漬して、バレル容器1を回転させる際の図である。矢印は、バレル容器1の回転方向を示す。液31は、めっき液や洗浄液等が挙げられる。
【0019】
開口部21は、バレル容器1の内側において、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線と接している。すなわち、本実施形態では、隣接する側壁部間の角部が開口部21の存在により開放されることになる。したがって従来の構造に比べて、浸漬過程において側壁部間の角部から気泡が抜けやすくなる。
【0020】
また、開口部21は、図1(A)のように、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線の少なくとも一部に接していれば、本発明の効果を奏する。
【0021】
また、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線に開口部21が接する構造が、少なくとも1つあれば良い。この場合、バレル容器1の回転の最中に、その構造が液面側に到達する際に気泡がバレル容器1の外に排出されるためである。
(実施形態2)
本発明に係る別の実施形態について、以下に説明する。実施形態1と共通する部分については記載を省略する。
【0022】
図2に、実施形態2のバレル容器の例を示す。図2(A)は、本発明に係るバレル容器1の斜視図である。図2(B)は、本発明に係るバレル容器1の側壁部の断面図である。
【0023】
実施形態2では、開口部21が、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線を跨いで配置されている。すなわち、隣接する側壁部の角部に開口部が配置されている。そのため、実施形態1に比べて、気泡がより抜けやすくなり、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0024】
また、開口部21は、図2(A)のように、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線の少なくとも一部を跨いでいれば、本発明の効果を奏する。
【0025】
また、隣接する2つの側壁部20によって形成される接線を開口部が跨ぐ構造が、少なくとも1つあれば良い。この場合、バレル容器1の回転の最中に、その構造が液面側に到達する際に気泡がバレル容器1の外に排出されるためである。
【0026】
なお、バレル容器1の形状は六角筒形に限らず、六角以外の多角筒形にも適用可能である。
【0027】
以上、本発明に係るバレル容器がこの内容に限定されることはなく、発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更を加えることができる。例えば、本明細書では電解めっき法について説明したが、本発明に係るバレル容器は無電解めっき法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 バレル容器
10 端壁部
20 側壁部
21 開口部
22 非開口部
31 液
32 槽
110 端壁部
120 側壁部
121 開口部
122 非開口部
125 窓
126 窓蓋
127 桟
128 メッシュ
131 液
132 槽
133 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を収容する多角筒形のバレル容器であって、
前記バレル容器の両端面に当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成された一対の端壁部と、前記一対の端壁部の間に互いに隣接して形成された複数の側壁部と、を備え、
前記側壁部には、前記バレル容器の内側と外側を連通する開口部が形成され、
前記開口部の少なくとも一つは、前記バレル容器の内側において、隣接する2つの前記側壁部によって形成される接線と接していることを特徴とするバレル容器。
【請求項2】
被めっき物を収容する多角筒形のバレル容器であって、
前記バレル容器の両端面に当該バレル容器の回転軸に対して垂直に形成された一対の端壁部と、前記一対の端壁部の間に互いに隣接して形成された複数の側壁部と、を備え、
前記側壁部には、前記バレル容器の内側と外側を連通する開口部が形成され、
前記開口部の少なくとも一つは、隣接する2つの前記側壁部によって形成される接線を跨いで配置されていることを特徴とするバレル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−144435(P2011−144435A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7666(P2010−7666)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)