説明

バンドされた動力伝達Vベルト

述べられた単一ストランドのバンドされたVベルトは、少なくともバンド布の1つのプライ(45)がベルト本体の底面及び側面それぞれに沿っており、これにより耐荷重部を、それがベルト本体の側面に交差する位置で、被覆することを特徴とする。バンド布のプライは、それ自身にはオーバーラップしない。ベルト本体の両側面に配置されるバンド布の合計プライ数は、ベルト本体の底面に加えて上面(47)に配置されるバンド布の合計プライ数を超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vタイプのゴム動力伝達ベルトに関し、特にベルトの外部の駆動表面を被覆する布バンドの1又はそれ以上のプライを有するゴムVベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
被覆された又はバンドされた動力伝達Vベルトは、一般的に、ベルトコアを包囲する、ゴム外層或いは他のポリマーで浸透された布によって構成される。その被覆は、Vベルト駆動における溝車(プーリ)へ接触するときの、外部環境要素からの保護、ベルトの摩擦特性の制御、及びベルトの磨耗防止を含む多くの機能を提供する。これらの“フルカバー”Vベルトは、典型的には、布の外層の一方のエッジが他方のエッジにラップするように、製造される。このラップはベルトの全長にわたる。いくつかのベルトは、布の複数層を有する。布の2層を有するベルトは、互いに重なり合って積み重ねられたラップを有する。典型的な従来技術のバンドされたVベルトの構造は図7に示され、内部バンド11がベルトの上面である15においてラップされ、そして外部バンド13がベルトの上面である17においてラップされ、積み重なれたラップが形成されることが描かれる。これらのラップは、ベルトコアにおける厚さ変化をもたらし、それにより、抗張部材19の層が通常の水平配向から歪められる。
【0003】
耐荷重部の抗張心線は、ベルトの伝達力を負担するので、心線ラインの歪みは、抗張部材の不均衡な分布をもたらす。この不均衡な負荷は、均一な負荷心線を有するベルトと比べると、ベルトの伝達能力を低下させる。さらに、ベルトの上面或いは下面のほとんどに配置されるラップを有する場合がある従来ベルトは、曲げ抵抗性が増大する。そのような曲げ抵抗性の増大は、特に、相体的に径の小さな溝車に使用されて駆動されるとき、ベルト寿命の低下をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
曲げ抵抗性を限定する布材料の使用を最小限にする一方、ベルトの駆動表面の最適な摩擦特性を提供すると共に、埋設される抗張心線の最大限の保護を提供し、さもなければ心線ラインの歪みや抗張部材における不均衡な負荷分布を導く、ラップの使用を避ける、バンドされたVベルト構造の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面における本発明は、圧縮部と伸張部と耐荷重部とを含む、ゴムで形成された概ね台形形状の本体を含む、シングルストランドのバンドされた動力伝達Vベルトを対象とする。ベルト本体は、上面、底面、及び側面を有し、側面は傾斜しかつ互いに向けて近づくと共に、耐荷重部は、上面及び底面の少なくとも一方に実質的に平行に延在し、上面及び底面の中間にある側面に交差する。ベルト本体の底面及び側面それぞれに沿うバンド布の少なくとも1プライが設けられ、それにより耐荷重部を、それがベルト本体の側面に交差する位置において被覆する。バンド布は、それ自身にオーバーラップしない。
【0006】
他の側面において本発明は、圧縮部と伸張部と耐荷重部とを含む、ゴムで形成された概ね台形形状の本体を含む、シングルストランドのバンドされた動力伝達Vベルトを対象とする。ベルト本体は、上面、底面、及び側面を有し、側面は傾斜しかつ互いに向けて近づくと共に、耐荷重部は、上面及び底面の少なくとも一方に実質的に平行に延在し、上面及び底面の中間にある側面に交差する。ベルト本体はさらに、ベルト本体の上面及び側面それぞれに沿いかつそれらに接着され、かつ側面に沿って下方に延在し、それにより耐荷重部を、それがベルト本体の側面に交差する位置において、被覆する概ね反転U形状のバンド布の第1プライを有する。バンド布の第1プライは、それ自身にオーバーラップしない。ベルト本体は、ベルト本体の底面及び側面それぞれに沿いかつそれらに接着されると共に、側面に沿って上方に延在し、それにより耐荷重部を、それがベルト本体の側面に交差する位置で、被覆する概ねU形状のバンド布の第2プライを有し、バンド布の第2プライは、側面に沿って第1プライにオーバーラップするが、それ自身にはオーバーラップしない。
【0007】
本発明の好ましい側面は、いくつかの図面においては符号によって部材が指し示される添付図面を参照にして説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず図1、2を参照にすると、原動溝車12と、従動溝車14と、これらに巻き回され、かつ駆動関係になるようにそこに押し込められたVベルト18と、ベルトの張力を維持しかつ溝車間の弛緩を取り除くために、ベルトの上面或いは幅側面に係合する平対向面アイドラプーリ16と、を備える典型的な動力伝達駆動システム10が示される。
【0009】
動力伝達ベルトは、Vタイプのものであって、ゴム或いはゴム状物質で形成される概ね台形形状のベルト本体20を有し、圧縮部22と、伸張部24と、耐荷重部26とを含む。本発明のVベルトは、素晴らしい形状の溝車すなわちプーリの間において、自動車、工業用の動力伝達を含む、種々の用途に使用されるであろうが、本発明のバンドされたVベルトは特に工業用途において採用される。本発明のベルトに適用可能な標準的な単一ストランドの工業用Vベルトの断面は、工業規格サイズ(industry standard size)A、B、C、及びD、2L、3L、及び4L、及び3V、5V、8V、並びに標準規格サイズ(metric size)SPZ、SPA、SPB、及びSPCを含む。これらのベルトは、概ね平行な上部28と底部30の表面と、図2に示されるような傾斜され、かつ互いに向けて近づく各側面32、34とを備える標準的な台形形状を有する。代替的には、側面32、34はいくらか窪んでいる場合もあるし、そして、上面28、底面30は、クラウン形状であり、或いは他の従来の形状を呈する場合もある。
【0010】
ベルト本体20はゴムで形成されており、そして、“ゴム”とは、例えば混合ミルにおいて固体形状で処理可能である、架橋可能な天然及び合成エラストマーが意味されている。そのようなゴムには典型的には、未処理すなわち未加硫形態において、適切な添加剤、増量剤、補強剤、促進剤、フィラー、例えば硫黄又はパーオキサイドのような加硫剤、及びそれらの等価物が、ゴム処理工業でよく知られている好適なバッチ又は連続ミキサーにおいて、混合される。本発明で有用な典型的な合成ゴムとしては、ポリクロロプレン、エチレン・プロピレン共重合体、例えばEPDMのようなエチレン・プロピレン・ジエンモノマーの三元重合体、スチレンブタジエンゴム、HNBR、CSM、シリコーンゴム、フッ素エラストマー、これらの混合物、及びこれらのアロイ若しくは混合物、又は好適な熱可塑性若しくは熱硬化性ポリマーすなわち“プラストマー”、ポリエチレン、ポリエステル(ハイトレル、デュポンの登録商標)、又はサントプレン(アドバンスドエラストマーシステムズ社の登録商標)が混合された他の公知の固体で処理可能なゴムが含まれる。例えば液状注型によって形成され、ポリウレタンの多くの形態に適用できる、液体で処理可能なエラストマー物質は、上記限定範囲ではなく、本発明によって企図されたものではない。
【0011】
圧縮部22、伸張部24、及び耐荷重部26の螺旋状に巻かれた抗張部材27が埋設され、それを挟み込むガム原料層25の種々の層のいずれもが、紡織繊維補強材(textile reinforcement)を有し若しくは有しない層又はカレンダーされたシートとして、典型的にはビルディングドラムに積み重ねられた、上述したいかなるゴム材料によっても形成される場合がある。図2のVベルトのコア又はベルト本体は、例えば綿とポリエステルの複合材料、又は例えばアラミドのような他の好適な繊維のような、ゴム原料に充填された繊維を含むと共に、圧縮部及び伸張部の一方又は両方に位置される場合がある。図2のベルトの場合、最外部の伸張部の層24及び圧縮層の層36の両方が、繊維補強材が好適に充填されている。
【0012】
おおよそベルトの中立軸(neutral axis)に位置される耐荷重部26は、好ましくは、ドラムに重ねられるとき、ベルトの下敷きゴム層の上に螺旋状に巻かれ、かつ好適な種類の接着ガム層25の間に挟まれた単一ユニットの心線抗張部材27によって形成される。好ましい実施形態では、ベルトに使用されるゴムはポリクロロプレンであって、圧縮部、伸張部、及び耐荷重ガム部の全ての部分において使用される。代替的に、特に、特別に長い長さのベルトでは、耐荷重部は、例えばタイヤコードのカレンダーされたシート(耐荷重たて糸心線が、スペースが開けて配置されたピック(spaced pick)のよこ糸心線によって保持され共に布形状を呈する)のように、複数ユニットの心線によって形成され、ドラムの周りに複数回巻かれて、耐荷重部を構成する多数層を形成する場合もある。
【0013】
耐荷重部が、単一ユニット心線または複数ユニット心線のいずれかによって形成されようとも、耐荷重部は、ベルトの上面又は底面の少なくとも一方に実質的に平行に延在し、37で示される“エッジ心線”としてベルトの側面に交差する。
【0014】
好ましくは、心線サポート層23が、耐荷重部26のすぐ下に配置される。心線サポート層23は、横方向のサポートを提供するために、抗張心線27を横切って延在する相対的に太いたて糸心線を有する、1又はそれより多いタイヤコードのカレンダーされたシートによって構成される。
【0015】
本発明に従えば、上記エッジ心線37を伴うベルト本体20は、ベルト本体の底面30及び側面32、34それぞれに沿っており、かつこれらに接着されるバンドプライ布38によって被覆され、それにより耐荷重部を、それがベルト本体の側面に交差する位置37において、被覆する。示されるように、バンド布38は、A−Aで示される心線ラインを超えて、好ましくはベルトの上隅部まで延在するように、ベルトの側壁32、34を単に被覆することが好ましい。しかしながら、布層38がそれ自身にオーバーラップしない限り(図7の従来技術のベルトのようなオーバーラップ15及び/又は17)、バンド布層38が上面28の一部に沿っており、そこを被覆することは許容される。
【0016】
バンドプライ38は、“布”、すなわち糸、繊維、又はフィラメントがインターレースされて作られた平面布構造から形成される。布は、平織布、綾織布、編布、ブレード布、又はフェルト、ニードルパンチフリース等の不織布である場合もある。多くの工業用途において、ベルトに取り付けられたときの角度αである、よこ糸とたて糸の間の角度が、概ね90°の夾角を超えている織布が使用されることが好ましいと共に、好ましくは約95°〜125°であって、最も好ましい角度は約100〜約120°である。この夾角は、図2のベルトの側面を被覆するバンドプライ38に使用されており、図3の実施形態において使用される上部バンドプライ布39としても使用される。たて糸とよこ糸の間の夾角が120°(ベルトの上に取り付けられる前、パントグラフ)の範囲にあるバンドプライ布の使用は、譲受人のミッチェル(Mitchell)の米国特許2519590号明細書で、さらに十分に議論されている。
【0017】
バンドプライ38は、典型的には、そこに接着するために、少なくともベルト本体に対向する内側がゴム引きされている。外側は、クラッチへの適用においてはむき出し(bare)のままの場合もあるし、上述したようにゴム引きされている場合もある。
【0018】
単一のバンドプライ(図2のプライ38)のみが、心線ラインA−Aを被覆し、通り過ぎて延びていれば、十分である。例えば、図2のバンド形状が使用されることが可能であるし、また、バンドプライ38の内側、外側のいずれかにおいて、ベルトの上面28に沿っておりかつ伸張部24の側面を覆うと共に、心線ラインA−Aを被覆せず又はそこまで下らない反転U形状のバンドが使用されることも可能である。
【0019】
図3のVベルトは、図2のベルトに比べて幅狭でかつ高い外形断面であると共に、ベルトの外周面を被覆するための、バンド布の複数(2つ)のプライを使用する以外は、図2のベルトと同様である。図3のベルトのコア本体20aの構造は、実質的に図2の構造と同じである。そのデザイン及び構造は、ベルトに割り当てられる特定の用途によって決定される。
【0020】
バンド布の2つのプライ、すなわち、第1プライ39及び第2プライ41が、図3のベルトにおいて使用される。第1プライ、すなわち、内側バンドプライ39は、概ね反転U形状を呈し、ベルトの側面32a、34aに接着されると共に、コアベルト本体の上面28aに沿っておりかつ接着される。布層39は、側壁32a、34aに沿って下側に向って延在し、少なくとも心線ラインB−Bを通り過ぎて、好ましくは図示されるように、実質的にベルトの底隅部まで延在する。かくして、ベルトの耐荷重部26aは、それがベルト本体の側面に交差する例えば37aにおいて、内側バンドプライ39によって完全に被覆される。バンドプライ39は、好ましくは、カレンダー処理しつつ、好適なゴムによるフリクション操作(frictioning)やスキム処理(skimming)によってゴム引きされており、それにより、加硫されることが可能になり、ゴムコア20aに接着される。バンドプライ39は好ましくは、ベルトの完成された上面43を形成するその外周面に、例えば図1に示す平対向面プーリすなわちテンショナ16のような、その裏側に突き当たる装置に係合するための十分に高い摩擦係数を提供する、フリクション或いはスキム被膜を有している。しかしながら、ベルトの背面に強度のより低い表面が要求され、或いはクラッチングが要求される他の用途においては、バンドプライ39の外面は、好適な被膜を有し又は有さない、むき出し(bare)の単なる布自体である場合もある。
【0021】
概ねU形状を呈するバンド布の第2プライ41は、ベルト本体の底面30aに沿っておりかつそこに接着されると共に、側面32a、34aに沿って上方に延在し、それにより耐荷重部を、それが37aにおいてベルト本体の側面に交差する位置B−Bにおいて、被覆する。第1バンドプライ39と同様に、外部バンドプライ41は、ベルト本体の全周回りには延在せず、それ自身にオーバーラップしない。第1バンドプライ39のように、外部バンドプライ41は、内面バンドプライ39に接着するために、好ましくはその内面がゴム引きされている。優位的には、第2バンドプライ41の外面は、いかなるゴム被膜もなく、好ましくは、好適な布処理が行われる以外は、“むき出し(bare)”である。このような方法で、第2バンドプライ布41によって構成される、溝車に係合する側面の摩擦特性は、例えばクラッチングや衝撃荷重駆動のために、ベルトが係合する溝車12、14に対する相体的ないくらかのすべりを許容するように改変される場合がある。代替的に、バンドプライ41は、その内面及び外面のいずれもがゴム引きされている場合もある。
【0022】
多くの工業用途に有用な背面側の摩擦特性を達成するために内側バンドプライ39の両面をゴム引きすることによって、及びクラッチング或いは同様の用途のために外側プライ41にむき出し(bare)背部構造を使用することによって、ベルトの背部が黒色に、ベルトの側部底部が、ツートンカラーの組み合わせをするために黒色から区別される他の色を活用して、ベルトが区別されるコントラストのツートンカラーにされる場合がある。
【0023】
他のバンド布形状も本発明の範囲内である。図4〜6は、そのような代替的な形状の例を示す。図4において、バンド布45、47の2つのプライは、図2、3それぞれにおけるベルト本体20又は20aの構造及び外形に同様である場合があるベルト本体20bを、被覆する。図4において、バンド布の第1プライは、ベルト本体30bに接着される概ねU形状を有し、第2外側プライ47は、第1プライ45を覆って配置され、ベルトの側面においてそれをオーバーラップする。この外形は、基本的には図3に示されるものが反転されたものである。
【0024】
図5では、2つの第1プライ49、51が概ねU形状を呈し、ベルト本体の底部と側面に沿っておりこれらに接着されると共に、第3プライ53が上部を被覆し、かつ上方に向かって延在された第1及び第2プライの一部にオーバーラップし、ベルトの側面に沿ってそれらにオーバーラップする、概ね反転U形状のバンドである、3つのプライのカバー外形が示される。
【0025】
3つのプライのバンド布カバー外形はさらに図6に示される。これは、概ねU形状外形の第1プライ55がベルト本体20dの底部及び側面に沿っており、かつこれらに接着する点を除いて図5と同様である。第2プライ57は、ベルトの側面に沿ってプライ55にオーバーラップする概ね反転U形状を有し、そして第3最終プライ59は、ベルト本体20dの側面に沿って少なくとも第2プライ57にオーバーラップして接着する概ねU形状を有する。
【0026】
図4〜6で示されたものによって例示されるそのような外形すべては、ベルト本体の側面に交差する位置で、耐荷重部に隣接して、或いはそれを超えて延在する少なくとも1つのプライを有する。かくして、少なくとも1つの布バンド層は、図2、3で示されるエッジ心線37、37aと同様のエッジ心線を被覆する。さらに、図4〜6において、種々のバンドプライ層は、ベルトの望ましい摩擦特性、屈曲特性を提供するように、種々の層の間に適切な接着性を提供するように、用意されることが可能である。先の実施形態と同様に、これらの変更は、適切な被膜の活用を通じた布の処理によって、布がカレンダー処理その他によってゴムが浸透されるか否かによって、もたらされることが可能である。図2〜6に示されたものに加えて、ベルトの上面及び底面においてオーバーラップが避けられ、かつ十分な耐摩耗性及び外部環境に対する保護を提供するために、十分な数のバンドプライが、それらがオーバーラップするベルトの側壁に配置されるという本発明の主題を活用する、種々の他のバンドプライ外形が認識され得ることを、当該技術における当業者は理解する。上述したことは、ベルトの上面及び底面に沿って配置されるそのようなプライの数を最小にすることによって達成され、これにより曲げ抵抗性を減少させる。ベルト本体の両側面に配置されるバンド布の合計プライ数は、ベルト本体の底面に加えて上面に配置されるバンド布の合計プライ数を超える。減少された曲げ抵抗性は、結果としてベルトの駆動能力を強化し、図1に示される並列される溝車12、14の間のいくらかのミスアライメントを収める。
【0027】
種々の実施形態に従う本発明のベルトは、本発明の一部を形成しない、当該技術の知識を有する者によって理解される、知られた方法を用いて製造される場合がある。そのような1つの方法において、ベルトは反転された方法によって作られる。すなわち、図2のベルトに関しては、望ましい大きさのカレンダーされたシートである心線上部層24が、続いて接着ガム層25が、ビルディングドラムに積み重ねられる。その後、送出装置からの単一ユニットの抗張心線27が螺旋状に、適切なスペースが空けられかつ適切なテンションで、接着ガム層の外周に取り付けられる。次いで、心線の後に、接着ガムの他のプライが加えられる。抗張心線の上にある接着ガム層の上には、その後、好適なバナーテーブル(Banner Table)(“Banner”はバローズマニュファクチャリング社(Burrows Manufacturing Ltd.)の登録商標)において互いに接着され、重ね形状にされた一連のシートで構成され得るクロス心線のカレンダーされたシート23が取り付けられる。その後この層には、繊維が充填されカレンダーされたシート36が巻き付けられることによって取り付けられ、そして最後には、その層の上に、圧縮ゴム層22が積み重ねられる。その後、完全に組み立てられたスリーブは、ナイフ或いは他の切断装置によって輪郭がかたどられて、個々の未処理の(未加硫の)ベルト本体が作られ、そこに3面のみにおいて(底面と側面)バンド布のプライ38が取り付けられる。バンドプライ38は、カレンダーにおいてその両面がゴムによってフリクション処理されている場合もあるし、或いはむき出し(bare)背面が望ましい限りにおいては、その内面がゴムによってスキムされ、かつ原動及び従動溝車の側面が係合するその外面が、むき出し(bare)のままである場合もある。その後、個々の未加硫ベルトストランドは、例えば蒸気オートクレーブで上昇された温度と圧力下、従来のように加硫され、使用できる状態にある完全に一体化された加硫されたベルトが得られる。
【0028】
加硫を成すために使用される実際の硬化装置は、典型的には、よく知られた環状モールド(ring mold)である場合があり、シュワバウアー(Schwabauer)の米国特許4095480号明細書に開示される例のように、その個々の未加硫ベルトストランドは、金属モールド及び環状部材によって区画される個々のキャビティに配置される。代替的には、特に非常に長さが長いベルトにおいては、例えばステックレイン(Stecklein)とドーアティー(Daugherty)の米国特許4332576号明細書に開示される、よく知られたステップ硬化処理(step curing process)が使用される場合がある。
【0029】
以下の行われた実施例は、本発明の好ましい実施形態についてさらに詳細を提供し、かつ本発明に従って作られたベルトに帰すことができる優位点を実証する。
【0030】
[実施例1]
図面の図3の実施形態に実質的に一致する本発明のVベルト、及びバンドプライ構造を除いて同様に作られた比較ベルトが、以下のように製造された。ビルディングドラムの上には、まず、1mm長さで超微細径のバージン綿繊維が加えられたポリクロロプレンゴムから構成され、ポリクロロプレンポリマー5重量部に対して綿繊維1重量部の割合である、0.030インチ(0.76mm)厚さのカレンダーされた繊維充填原料24aが取り付けられた。ポリクロロプレンゴムには、さらに、3〜5mm長さのポリエステル繊維も、ポリクロロプレンポリマー10重量部に対してポリエステル繊維1重量部の割合で混合されていた。次いで、繊維充填原料層の上には、0.017インチ(0.43mm)厚さのポリクロロプレン接着ガムのシートが取り付けられ、その上には単一ユニットの抗張心線27が螺旋巻きされた。抗張心線は、0.055インチ(1.40mm)のゲージ厚さを有するアラミド繊維から形成され、以下のように、心線表面には3連続被膜が施されていた;第1処理は標準的な構成のプライマーで成された:第2処理はプライマーの上にレゾルシノールホルムアルデヒドラテックス(RFL)被膜が成された;第3最終処理層は、溶剤に分配された液状ポリクロロプレンセメントに浸漬されて成された。心線は、2500−1/5タイプのものであった、すなわち、2500dtexから成り、4回撚り/インチ(0.16回撚り/mm)の“Z”撚りの各糸から構成され、その撚り糸5本が、2回撚り/インチ(0.08回撚り/mm)で“S”方向に撚られて心線に形成された。次いで、心線の後には、0.017インチ(0.43mm)厚さの接着ガムの他方のプライが追加された。接着ガムの上には、抗張心線27に対して概ね垂直に延在し、0.024インチ(0.61mm)の厚さを有する主たる(プライマー)心線を有し、“タイヤコード”として知られる0.030インチ(0.76mm)のクロス心線布が取り付けられた。このクロス心線布は、RFL処理されており、マルチユニットナイロンタイヤコードは、1インチあたり36のプライマー心線端部(1mmあたり1.42の心線端部)を有していた。次の層36aは、クロス心線の上に取り付けられ、層24aと同じ繊維充填原料であり、次いで最後は、0.042インチ(1.07mm)厚さのポリクロロプレンガム原料が取り付けられた。
【0031】
上述した積み重ねられた未加硫成分のカーカスは、個々のベルト本体20aの輪郭にかたどられ、次いで、そのようなベルト本体各々は、反転すなわち裏返され、以下に示すように、ベルト本体の外周にバンドプライが取り付けられた。第1バンドプライ39は、RFL処理され、次いで両面にポリクロロプレンゴムによってフリクション処理された0.021インチ(0.53mm)厚さの布から構成されていた。その布は、初期の、たて糸繊維とよこ糸繊維の間の角度であるバイアス角度αが120°で、ベルトに取り付けられたときの最終バイアス角度αが105°である処理済綿−ナイロン織布であった。その布自体は、75%綿/25%ナイロンのブレンドで構成されていた。このバンドプライ39は、バンドプライがベルト本体20aの上面28を被覆し、かつベルトの側部32a、34aに沿って下方に、実質的にベルト本体の底隅部まで延在するが、隅部の回り及びベルト本体30aの底部の上には延在しないように、概ね反転U形状で取り付けられた。
【0032】
バンド布の第2プライ41は、RFL処理された布が、両面にフリクション処理されずに内周面のみにスキム処理がされ、層41の外周面にはゴムが取り付けられず、それによりその隙間にゴムが浸透されないむき出し(bare)処理布であった点を除いては、プライ39で使用された布と同一の布材料で形成された。このバンド布の第2プライ41は、図3に示すように、概ねU形状で取り付けられ、ベルト本体の底部30aを被覆し、ベルトの側面に沿って、実質的にベルトの上隅部まで上方に延在するが、上面43には延在せず、自身にオーバーラップしない。
【0033】
かくして形成された個々の未加硫単一ストランドベルトは、次いで、圧力下、約170℃の温度で約15分間標準的な環状モールドで加硫され、それは完全に一体化加硫されて、試験のための完成した5V断面の工業ベルトとなった。本発明に従って作られた前出の環状硬化ベルトは、ベルトAとして示される。
【0034】
上述したものと同一のベルトの第2のセットは、環状硬化ではなく、標準的なステップ硬化加硫装置を用いて加硫された。本発明に従って作られたこれらのベルトは、ベルトBとして示される。
【0035】
比較ベルトは、以下の点を除いては、上述した本発明のベルトと同様の材料並びに構造及び加硫のステップを使用して作られた。布の2つのバンドプライは、取り付けられ、図3の本発明のベルトの内側プライ39に対応する第1すなわち内側プライは、ベルト本体20aの底部に沿っており、そこでそれ自身にオーバーラップするように取り付けられ、ベルトの底部において継目が形成された。同様に、図3の本発明の布41に対応するバンド布の外側プライは、第1プライバンド布の周りに巻かれ、上面43の中央でそれ自身に完全にオーバーラップされ、これにより、完成されたベルトはベルトの底部における1つのオーバーラップと、ベルトの上部における1つのオーバーラップとを有していた。ベルトは環状モールドで硬化された。これらのベルトは比較ベルトとして示される。
【0036】
完成されたベルトA、ベルトB、及び比較ベルトそれぞれ2本について、5V断面の工業ベルトにとって最小限の直径に達しない、直径4.41インチ(112mm)の2つの同一径の溝車12、14を使用して、図1に示したものと同様の駆動装置に組み入れられることによって試験された。ベルトそれ自体は、70.5インチ(1791mm)の長さを有する。溝車は、4:1のテンション比、10馬力(HP)の荷重で、1750rpmで回転された。
【0037】
表1は試験されたベルトの平均寿命を時間で供する。ベルトの寿命の最後は、ベルトが破壊されたときの時間に対応した。表1からわかるように、環状モールド硬化プロセスを使用して加硫された、図3に示される本発明のベルトすなわちベルトAは、完全にバンドされた比較のベルトに比べて、およそ40%長い寿命を有した。ステップ硬化された本発明のベルトBも、環状モールド硬化された比較ベルトを超える寿命を有していた(通常、環状モールド加硫ベルトが、ステップ硬化処理によって加硫された対応するベルトよりも同等若しくはそれより長い寿命を有することを期待する。)。
【0038】
【表1】

【0039】
[実施例2]
本試験では、実施例1と同様に作られたベルトA及び比較ベルトは、原動、従動溝車12、14のミスアライメントの許容差(toleration)を定めて以下の試験が実施された。本試験では70.5インチ(1791mm)長さの5V断面ベルトを、2つの同一径で呼称直径7.1インチ(180mm)の溝車を、4:1のテンション比、30HPの荷重で、1750rpmで回転させて、走行させた。2つの溝車は、故意に3°ミスアライメントさせられていた。本試験の結果は、本発明のベルトAが、完全にバンドされた比較ベルトに比べて、およそ22%長く走行したことを示した表2に供される。
【0040】
【表2】

【0041】
本発明は、説明の目的のために上記において詳細に記載されたが、このような詳細は単にその目的のためであって、種々の変形が、請求の範囲によって限定されるものを除いて本発明の精神あるいは範囲から逸脱することなく当業者によって可能であることが理解される。ここに例示的に開示された本発明は、ここに特に開示されない、いかなる要素がなくても適切に実現されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】簡略化されたVベルト駆動装置である。
【図2】図1の駆動装置におけるVベルトに関し、2−2断面に沿って得られた断面斜視図である。
【図3】本発明の代替的な実施形態を一部断面斜視図で示す。
【図4】本発明の代替的なカバーすなわちバンド外形の模式図である。
【図5】本発明に従った更なる代替的なバンド構造である。
【図6】本発明に従ったなお更なる代替的なバンド構造である。
【図7】従来技術のVベルトの立断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)圧縮部、伸張部、及び耐荷重部を含み、ゴムから形成された概ね台形形状のベルト本体を備え、
(b)前記ベルト本体は上面、底面、及び側面を有し、前記側面が傾斜しかつ互いに向けて近づき、前記耐荷重部が少なくとも前記上面及び前記底面の一方に実質的に平行に延在すると共に、前記上面及び前記底面の間にある前記側面に交差し、
(c)前記ベルト本体の前記底面及び各々の前記側面に沿いかつそれらに接着され、それにより前記耐荷重部をそれが前記ベルト本体の前記側面に交差する位置で被覆するバンド布の少なくとも1つのプライを備え、前記バンド布のプライはそれ自身にオーバーラップしない
単一ストランドのバンドされた動力伝達Vベルト。
【請求項2】
前記バンド布は、たて糸とよこ糸の織布であって、前記たて糸とよこ糸の間の夾角は約95〜約125°である請求項1に記載のVベルト。
【請求項3】
前記ベルトの前記側面における前記バンド布は、実質的にゴムが浸透されていない請求項1に記載のVベルト。
【請求項4】
前記バンド布は、RFL定着剤(adhesion promoter)の被膜処理が施されている請求項3に記載のVベルト。
【請求項5】
概ね反転U形状のバンド布の第2プライは、前記ベルト本体の上面に沿いかつそこに接着され、下方に向って延在すると共に、前記耐荷重部が前記側面に交差する位置にある或いはそれより下方にある前記ベルトの側面それぞれにおいて、前記バンド布の1つのプライにオーバーラップする請求項1に記載のVベルト。
【請求項6】
前記バンド布の1つのプライに加えて、前記バンド布の1つのプライの少なくとも一部の周りを包むバンド布の少なくとも更なる1つのプライが設けられ、これにより1又はそれより多い継目を作り出すバンド布の全てのオーバーラップは、前記ベルトの前記側面に隣接して配置される請求項1に記載のVベルト。
【請求項7】
前記耐荷重部は、コード布の心線が前記抗張心線に対して概ね横切るように延在するコード布が下方に配置される、螺旋状に延在する単一ユニットの抗張心線によって形成される請求項1に記載のVベルト。
【請求項8】
(a)圧縮部、伸張部、及び耐荷重部を含み、ゴムから形成された概ね台形形状のベルト本体を備え、
(b)前記ベルト本体は上面、底面、及び側面を有し、前記側面が傾斜しかつ互いに向けて近づき、前記耐荷重部が少なくとも前記上面及び前記底面の一方に実質的に平行に延在すると共に、前記上面及び前記底面の間にある前記側面に交差し、
(c)前記ベルト本体の前記上面及び各々の前記側面に沿いかつそれらに接着されると共に、前記側面に沿って下方に延在し、それにより前記耐荷重部を、それが前記ベルト本体の前記側面に交差する位置で被覆する概ね反転U形状のバンド布の第1プライを備え、前記第1プライはそれ自身にオーバーラップしない
単一ストランドのバンドされた動力伝達Vベルト。
【請求項9】
前記バンド布の第1プライは、前記ベルト本体の前記上面がその上にゴム層を有するように、その両面がゴム引きされている請求項8に記載のVベルト。
【請求項10】
バンド布の第2プライが前記ベルトの側面の外周を形成し、その側面は実質的にゴムが浸透されていない請求項9に記載のVベルト。
【請求項11】
前記バンド布の第1プライはたて糸とよこ糸の織布であって、前記たて糸とよこ糸の間の夾角は約100〜約120°である請求項8に記載のVベルト。
【請求項12】
バンド布の第2プライがたて糸とよこ糸の織布であって、前記たて糸とよこ糸の間の夾角は約100〜約120°である請求項11に記載のVベルト。
【請求項13】
前記バンド布の第1及び第2プライに加えて、前記バンド布の第1及び第2プライの少なくとも一部の周りを包むバンド布の少なくとも更なる1つのプライが設けられ、これにより1又はそれより多い継目を作り出すバンド布の全てのオーバーラップは、前記ベルトの前記側面に隣接して配置される請求項8に記載のVベルト。
【請求項14】
前記耐荷重部は、コード布の心線が前記抗張心線に対して概ね横切るように延在するコード布が下方に配置される、螺旋状に延在する単一ユニットの抗張心線によって形成される請求項8に記載のVベルト。
【請求項15】
(a)圧縮部、伸張部、及び耐荷重部を含み、ゴムから形成された概ね台形形状のベルト本体を備え、
(b)前記ベルト本体は上面、底面、及び側面を有し、前記側面が傾斜しかつ互いに向けて近づき、前記耐荷重部が少なくとも前記上面及び前記底面の一方に実質的に平行に延在すると共に、前記上面及び前記底面の間にある前記側面に交差し、
(c)前記ベルト本体の前記底面及び各々の前記側面に沿っており、それにより前記耐荷重部を、それが前記ベルト本体の前記側面に交差する位置で、被覆するバンド布の少なくとも1つのプライを備え、前記バンド布のプライはそれ自身にオーバーラップせず、
(d)前記ベルト本体の両側面に配置されたバンド布の合計プライ数が、前記ベルト本体の前記底面に加えて前記上面に配置されるバンド布の合計プライ数を超える
単一ストランドのバンドされた動力伝達Vベルト。
【請求項16】
前記ベルト本体の側面には、バンド布の2つのプライが配置されかつオーバーラップされると共に、前期ベルト本体の上面及び底面それぞれには、バンド布の1つのプライが配置される請求項15に記載のVベルト。
【請求項17】
原動溝車、従動溝車、及び前記原動及び従動溝車に駆動関係となるように巻き回された請求項15に記載のVベルトを備えるVベルト駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−546960(P2008−546960A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517234(P2008−517234)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/025061
【国際公開番号】WO2007/002704
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)