説明

バンド構造

【課題】 電位差腐食が起こり難く、耐久性の高いバンド構造を提供する。
【解決手段】 合成樹脂製のバンド本体5と腕時計ケース1のバンド取付部3とを金属製のばね棒7、16で連結するバンド構造において、ばね棒7、16と異なる金属からなる装飾部材13をバンド本体5の表面にばね棒7、16によって取り付ける際に、この装飾部材13と異なる金属からなるスペーサ部材14をバンド本体5と装飾部材13との間に配置させ、このスペーサ部材14にばね棒7、16を圧接させた。従って、バンド本体5の表面に取り付けられる装飾部材13をばね棒7、16と異なる金属で形成しても、この装飾部材13とバンド本体5との間に配置されたスペーサ部材14によって、装飾部材13とばね棒7、16とを電位差の発生し難い接触状態にして、電位差腐食が起こり難くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計や洋服、バッグ、鞄などに用いられるバンド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計に用いられるバンド構造においては、特許文献1に記載されているように、金属製の本体駒とこれに隣接する他の金属製の本体駒との両方に跨った状態で、合成樹脂製の連結駒を配置し、この連結駒と本体駒とを金属製の連結ピンによって連結するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34292号公報
【0004】
この種のバンド構造に用いられている本体駒は、金属板の両側を折り曲げることにより、バンドの長手方向と直交するバンド幅方向に側壁部が設けられた構成になっている。この側壁部の両端部には、連結ピンがそれぞれ挿入する取付孔が互いに対向して設けられている。連結駒は、ウレタン樹脂などの合成樹脂からなり、バンド幅方向に連結ピンがそれぞれ挿入するピン挿入孔が本体駒の取付孔に対応して設けられている。
【0005】
このようなバンド構造では、本体駒とこれに隣接する他の本体駒との両方に跨って連結駒を配置し、この状態で金属製の連結ピンを本体駒とこれに隣接する他の本体駒との両方における各側壁部にそれぞれ設けられた各取付孔から連結駒の各ピン挿入孔にそれぞれ挿入させて、本体駒とこれに隣接する他の本体駒との両方における反対側に位置する各側壁部の取付孔にそれぞれ挿入させることにより、本体駒を連結駒によって順次連結するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなバンド構造では、金属製の本体駒のカラー化を図るために、本体駒をアルマイト処理によるカラー化が可能なアルミニウムで形成し、連結ピンを強度の高いステンレスで形成した場合に、アルミニウムの本体駒とステンレスの連結ピンとが異なる金属になり、この異なる金属同士が圧接すると、電位差の生じやすい電気的接触状態となり、この電気的接触状態によってアルミニウムの本体駒とステンレスの連結ピンとの間で電位差腐食が発生しやすくなる。
【0007】
この電位差腐食とは、イオン化傾向の低い金属がイオン化傾向の高い金属を浸食することであり、ステンレスの連結ピンがアルミニウムの本体駒に直接圧接して接触すると、電気的接触状態になり易く、更に腕に装着して使用する際に汗や水などの湿った環境のときに電池作用が起きやすく、この電池作用によって電位差腐食が発生しやすい。
【0008】
このような電位差腐食が発生すると、イオン化傾向の低いステンレスの連結ピンがイオン化傾向の高いアルミニウムの本体駒を浸食する。このため、本体駒の側壁部に設けられた取付孔が徐々に腐食して大きくなり、連結ピンが抜け出してしまう恐れが生じる。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、電位差腐食が起こり難く、耐久性の高いバンド構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、合成樹脂製のバンド部と他の部材とを金属製の連結部材で連結するバンド構造において、前記連結部材と異なる金属からなり、前記バンド部の表面に前記連結部材によって取り付けられる装飾部材と、この装飾部材と異なる金属からなり、前記バンド部と前記装飾部材との間に前記連結部材が圧接して取り付けられるスペーサ部材とを備えていることを特徴とするバンド構造である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、バンド部の表面に金属製の連結部材によって取り付けられる装飾部材を連結部材と異なる金属で形成しても、この装飾部材とバンド部との間に連結部材が圧接して取り付けられるスペーサ部材によって、装飾部材と連結部材、および装飾部材とスペーサ部材とを電位差の発生し難い接触状態にすることができる。このため、装飾部材と連結部材、および装飾部材とスペーサ部材とが異なる金属であっても、その異なる金属同士の間で電位差腐食を起こり難くすることができ、これにより装飾部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を腕時計の時計バンドに適用した一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1に示された時計バンドにおけるA−A矢視における要部の拡大断面図である。
【図3】図1に示された時計バンドの要部を示した拡大斜視図である。
【図4】図3に示された時計バンドにおけるB−B矢視における要部の拡大断面図である。
【図5】図3に示された時計バンドの要部を分解して示した拡大斜視図である。
【図6】図1に示された時計バンドにおいて、バンド本体を取り除いた状態を示した要部の拡大裏面図である。
【図7】図1に示された時計バンドの一実施形態におけるスペーサ部材の変形例を示した要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図6を参照して、この発明を腕時計のバンドに適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2が装着されており、この腕時計ケース1の内部には、時計モジュール(図示せず)が組み込まれている。
【0014】
また、この腕時計ケース1における12時と6時とに位置する各側面には、図1に示すように、バンド取付部3がそれぞれ側方に突出して設けられている。このバンド取付部3には、時計バンド4がそれぞれ取り付けられるように構成されている。この場合、バンド取付部3には、図2に示すように、時計バンド4の長手方向と直交するバンド幅方向に貫通する貫通孔3aがそれぞれ設けられている。
【0015】
時計バンド4は、図1および図3に示すように、ウレタン樹脂などの軟質の合成樹脂製のバンド本体5を備えている。このバンド本体5における腕時計ケース1側に位置する端部には、図1〜図3に示すように、腕時計ケース1のバンド取付部3が挿入する取付凹部6が上面および先端面に開放されて設けられている。この取付凹部6の両側に位置するバンド本体5の両側部5aには、図3に示すように、ばね棒7が取付凹部6内を通して取り付けられている。
【0016】
この場合、取付凹部6の両側に位置するバンド本体5の両側部5aには、図3および図4に示すように、一対の取付孔8が互いに対向して設けられている。この一対の取付孔8は、取付凹部6にバンド取付部3が配置された際に、このバンド取付部3の貫通孔3aに対応して連続するように形成されている。
【0017】
ばね棒7は、図2、図3および図6に示すように、その中間部がバンド本体5の取付凹部6内に配置された腕時計ケース1のバンド取付部3の貫通孔3a内に挿入し、この状態で両端部がバンド本体5の一対の取付孔8に挿入されることにより、腕時計ケース1のバンド取付部3に時計バンド4のバンド本体5を連結するように構成されている。
【0018】
すなわち、このばね棒7は、図2に示すように、パイプ本体10と、このパイプ本体10内に配置されたコイルばね11と、パイプ本体10の両端部内に挿入されてコイルばね11のばね力によって押し出される一対の係止ピン12とを備えている。この場合、一対の係止ピン12の外周面には、図2および図6に示すように、ストッパーリング部12aがそれぞれ設けられている。
【0019】
このばね棒7は、ステンレスなどの強度の高い金属からなり、図2に示すように、パイプ本体10の両端部がバンド本体5の一対の取付孔8に挿入された際に、一対の係止ピン12がコイルばね11のばね力によって押し出され、この押し出された一対の係止ピン12の各先端部が一対の取付孔8から外部に突出するように構成されている。
【0020】
一方、バンド本体5の表面には、図2〜図5に示すように、装飾部材13およびスペーサ部材14が配置される装着凹部15が取付凹部6を囲うように設けられている。この装着凹部15は、図5に示すように、取付凹部6を除くバンド本体5の上面、側面、および先端面に亘って一段低く形成されている。この装着凹部15に対応する箇所のバンド本体5には、図4および図6に示すように、上述したばね棒7のほかに、別のばね棒16が取り付けられている。
【0021】
この場合、装着凹部15に対応する箇所のバンド本体5には、図4に示すように、別のばね棒16が挿入する取付孔17が、バンド本体5の取付凹部6からバンド本体5の長手方向に沿って離れた位置に設けられている。別のばね棒16は、上述したばね棒7と同じ構成で、図4および図6に示すように、バンド本体5の取付孔17に挿入されて取り付けられるように構成されている。
【0022】
このばね棒16も、図2および図6に示すように、パイプ本体10内に設けられたコイルばね11のばね力によって、一対の係止ピン12がパイプ本体10の両端部から外部に押し出され、この押し出された一対の係止ピン12の各先端部がバンド本体5の取付孔17から外部に突出し、この突出した各係止ピン12の先端部がバンド本体5の側面に位置する装着凹部15内に突出するように構成されている。
【0023】
装飾部材13は、図3および図5に示すように、装着凹部15におけるバンド本体5の上面に対応する上面部18と、装着凹部15におけるバンド本体5の側面に対応する一対の側面部19と、装着凹部15におけるバンド本体5の先端面に対応する一対の先端面部20とを有し、これらが金属板によって一体に形成されている。この場合、装飾部材13の一対の側面部19には、ばね棒7、16の各係止ピン12がそれぞれ挿入する挿入孔19aが設けられている。
【0024】
これにより、装飾部材13は、図2〜図6に示すように、スペーサ部材14と共にバンド本体5の装着凹部15内に配置され、この状態で一対の側面部19の各挿入孔19aにばね棒7、16の各係止ピン12がそれぞれ挿入することにより、バンド本体5に対して取り付けられるように構成されている。
【0025】
また、スペーサ部材14は、図5に示すように、装飾部材13の上面部18に対応する上面部21と、装飾部材13の側面部19に対応する一対の側面部22とを有し、これらが金属板によって一体に形成されている。このスペーサ部材14における一対の側面部22には、図5および図6に示すように、ばね棒7、16の各係止ピン12がそれぞれ挿入する挿入孔22aが、装飾部材13の一対の側面部19に設けられた各挿入孔19aに対応して設けられている。
【0026】
これにより、スペーサ部材14は、図2、図5および図6に示すように、装飾部材13と共にバンド本体5の装着凹部15内に配置され、この状態で一対の側面部22の各挿入孔22aにばね棒7、16の各係止ピン12がそれぞれ挿入すると、この係止ピン12のストッパーリング部12aがコイルばね11のばね力によって挿入孔22aの周縁部に押し付けられて圧接し、この状態でバンド本体5に対して取り付けられるように構成されている。
【0027】
ところで、装飾部材13は、ばね棒7、16と異なる金属で形成されている。すなわち、この装飾部材13は、高級感が得られる金属で、且つばね棒7、16よりもイオン化系傾向の高い金属、例えばアルミニウム合金を含むアルミニウム系の金属、マグネシウム合金を含むマグネシウム系の金属、銅合金を含む銅系の金属などの非鉄金属で形成されているが、特にカラー化が容易なアルミニウムによって形成されていることが望ましい。
【0028】
すなわち、この装飾部材13は、アルミニウムで形成されていることにより、表面をアルマイト処理することが可能になり、このアルマイト処理によって表面に硬質の酸化皮膜が形成されると共に、この酸化皮膜を染料によって着色することが可能となり、これによりカラー展開(カラー化)が容易に図れると共に、高級感が得られ、デザイン性が高められる。
【0029】
一方、ばね棒7、16は、装飾部材13よりもイオン化系傾向の低い金属、例えばステンレス系や炭素鋼などの金属で形成されている。この場合、ばね棒7、16は、強度の高いステンレスで形成されていることが望ましい。また、スペーサ部材14は、装飾部材13と異なる金属で、好ましくはばね棒7、16と同じステンレスによって形成されている。
【0030】
このため、ばね棒7、16とスペーサ部材14とは、図2および図6に示すように、ばね棒7、16の各係止ピン12のストッパーリング部12aがコイルばね11のばね力によってスペーサ部材14の各挿入孔22aの周縁部に押し付けられていても、その両者が同じ金属であることにより、ばね棒7、16とスペーサ部材14との間で電位差腐食が起こらないように構成されている。
【0031】
次に、このような時計バンド4を腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付ける場合について説明する。
この場合には、時計バンド4のバンド本体5に設けられた取付凹部6に腕時計ケース1のバンド取付部3を挿入する。このときには、バンド取付部3の貫通孔3aとバンド本体5の取付凹部6の両側部5aに設けられた一対の取付孔8とを対応させて連続させる。
【0032】
この状態で、ばね棒7をバンド取付部3の一方の取付孔8からバンド取付部3の貫通孔3aを通してバンド取付部3の他方の取付孔8に挿入し、ばね棒7の両端部に位置する一対の係止ピン12の各先端部をバンド本体5の一対の取付孔8からバンド本体5の装着凹部15内に突出させる。同様に、別のばね棒16をバンド本体5における取付凹部6から離れた位置の取付孔17に挿入して配置し、この別のばね棒16の各係止ピン12の先端部をバンド本体5の装着凹部15内に突出させる。
【0033】
この後、バンド本体5の装着凹部15にスペーサ部材14と装飾部材13とを順に配置する。この場合には、まず、スペーサ部材14をバンド本体5の装着凹部15に配置する。このときには、バンド本体5の装着凹部15内に突出しているばね棒7、16の各係止ピン12を各コイルばね11のばね力に抗して各パイプ本体10内に向けて押し込み、この状態でスペーサ部材14をバンド本体5の装着凹部15に配置する。
【0034】
そして、スペーサ部材14の一対の側面部22に設けられた各挿入孔22aをばね棒7、16の各係止ピン12の先端部に対応させると、ばね棒7、16の各係止ピン12が各コイルばね11のばね力によってそれぞれ押し出され、バンド本体5の装着凹部15に配置されたスペーサ部材14の一対の側面部22に設けられた各挿入孔22a内にそれぞれ挿入する。
【0035】
このときには、図2に示すように、各係止ピン12のストッパーリング部12aがコイルばね11のばね力によってスペーサ部材14の側面部22における各挿入孔22aの周縁部に押し付けられて圧接し、この状態で各係止ピン12の先端部が各挿入孔22aを通して外部に突出する。これにより、スペーサ部材14がバンド本体5の装着凹部15内に取り付けられる。
【0036】
この後、装飾部材13をバンド本体の装着凹部15に配置する。このときには、スペーサ部材14の側面部22から突出してバンド本体5の装着凹部15内に突出しているばね棒7、16の各係止ピン12をコイルばね11のばね力に抗してスペーサ部材14の側面部22に設けられた挿入孔22a内に向けて押し込み、この状態で装飾部材13をスペーサ部材14上に配置してバンド本体の装着凹部15に配置する。
【0037】
このときにも、装飾部材13の一対の側面部19に設けられた各挿入孔19aをばね棒7、16の各係止ピン12の先端部に対応させると、ばね棒7、16の各係止ピン12がコイルばね11のばね力によって押し出され、バンド本体5の装着凹部15に配置された装飾部材13の一対の側面部19に設けられた各挿入孔19a内に挿入する。これにより、装飾部材13がばね棒7、16によってバンド本体5の装着凹部15内にスペーサ部材14と共に取り付けられる。
【0038】
次に、このようなバンド構造の作用について説明する。
この時計バンド4は腕に装着して使用することができる。このときには、バンド本体5の表面の装着凹部15に配置される装飾部材13と、この装飾部材13をバンド本体5の装着凹部15に取り付けるばね棒7、16とが異なる金属で形成されていても、この装飾部材13とバンド本体5との間に配置されたスペーサ部材14によって、装飾部材13とばね棒7、16とを電位差の発生し難い接触状態、つまり電気的接触状態でない接触状態することができる。
【0039】
すなわち、装飾部材13をアルミニウムで形成し、ばね棒7、16をステンレスで形成し、このばね棒7、16の一部、つまり係止ピン12のストッパーリング部12aをスペーサ部材14に圧接させた状態で、バンド本体5の表面の装着凹部15に装飾部材13をスペーサ部材14と共にばね棒7、16で取り付けているので、装飾部材13とばね棒7、16とを電気的接触状態でない接触状態することができ、これにより装飾部材13とばね棒7、16との間で電位差腐食が起き難くすることができる。
【0040】
この場合、スペーサ部材14がばね棒7、16と同じステンレスで形成されているので、このスペーサ部材14にばね棒7、16の一部、つまり係止ピン12のストッパーリング部12aが圧接しても、スペーサ部材14とばね棒7、16とを電位差の発生し難い接触状態、つまり電気的接触状態でない接触状態することができ、これによりスペーサ部材14とばね棒7、16との間で電位差腐食が起き難くすることができる。
【0041】
また、スペーサ部材14にばね棒7、16の一部、つまり係止ピン12のストッパーリング部12aが圧接しても、このスペーサ部材14が装飾部材13に圧接することがないので、装飾部材13とスペーサ部材14とを電気的接触状態でない接触状態することができ、これにより装飾部材13とスペーサ部材14との間で電位差腐食が起き難くすることができる。
【0042】
ところで、電位差腐食とは、イオン化傾向の低い金属がイオン化傾向の高い金属を浸食することであり、ステンレス製のばね棒7、16およびステンレス製のスペーサ部材14がアルミニウム製の装飾部材13に圧接した際に電気的接触状態になりやすく、更に腕に装着して使用する際に汗や水などの湿った環境のときに電池作用が起き易く、この電池作用によっても電位差腐食が起きやすい。
【0043】
ただし、ばね棒7、16とスペーサ部材14とは同じステンレスで形成されているので、ばね棒7、16の一部、つまり係止ピン12のストッパーリング部12aがスペーサ部材14の一対の側面部22aにおける挿入孔22aの周縁部に圧接していても、ばね棒7、16とスペーサ部材14とが電気的接触状態にならず、これらの間では電位差腐食が起き難い。
【0044】
このように、装飾部材13とばね棒7、16とが異なる金属で、装飾部材13がばね棒7、16よりもイオン化傾向の高いアルミニウムで形成され、ばね棒7、16が装飾部材13よりもイオン化傾向の低いステンレスで形成されている場合に、ばね棒7、16の係止ピン12のストッパーリング部12aが、スペーサ部材14の一対の側面部22aにおける挿入孔22aの周縁部に圧接して装飾部材13に圧接していないため、装飾部材13とばね棒7、16とが電気的接触状態にならず、これらの間で電位差腐食が起き難い。
【0045】
すなわち、ばね棒7、16の係止ピン12のストッパーリング部12aがスペーサ部材14の一対の側面部22aにおける挿入孔22aの周縁部に圧接することにより、ばね棒7、16の係止ピン12が装飾部材13の一対の側面部19の挿入孔19aに挿入するだけで、その挿入孔19aの周縁部に圧接することがない。このため、装飾部材13とばね棒7、16とが電位差の発生し難い接触状態になり、電位差腐食が起き難くすることができ、これによりイオン化傾向の低いステンレスのばね棒7、16がイオン化傾向の高いアルミニウムの装飾部材13を浸食するのを防ぐことができる。
【0046】
また、装飾部材13とスペーサ部材14とは異なる金属で、装飾部材13がスペーサ部材14よりもイオン化傾向の高いアルミニウムで形成され、スペーサ部材14が装飾部材13よりもイオン化傾向の低いステンレスで形成されている場合に、ばね棒7、16の係止ピン12のストッパーリング部12aが、スペーサ部材14の一対の側面部22aにおける挿入孔22aの周縁部に圧接しても、このスペーサ部材14と装飾部材13とが互いに圧接していないため、装飾部材13とスペーサ部材14とが電気的接触状態にならず、これらの間でも電位差腐食が起き難い。
【0047】
このように、装飾部材13をアルミニウムで形成しても、装飾部材13とばね棒7、16との間、および装飾部材13とスペーサ部材14との間が電気的接触状態にならず、これらの間で電位差腐食が起き難いので、装飾部材13をアルミニウムによって容易に且つ良好に製作することができる。
【0048】
このため、装飾部材13の表面をアルマイト処理することにより、装飾部材13の表面に硬質の酸化皮膜を形成することができると共に、この酸化皮膜を染料によって着色することができ、これにより装飾部材13のカラー展開(カラー化)を容易に図ることができる。このため、この装飾部材13によってバンド本体5の高級感を得ることができると共に、デザイン性をも高めることができる。
【0049】
このように、このバンド構造によれば、合成樹脂製のバンド本体5と腕時計ケース1のバンド取付部3とを金属製のばね棒7、16で連結するバンド構造において、ばね棒7、16と異なる金属からなる装飾部材13をバンド本体5の表面にばね棒7、16によって取り付ける際に、この装飾部材13と異なる金属からなるスペーサ部材14をバンド本体5と装飾部材13との間に配置させ、このスペーサ部材14にばね棒7、16を圧接させた構成であることにより、装飾部材13に電位差腐食が起こり難くして、耐久性を高めることができる。
【0050】
すなわち、このバンド構造では、バンド本体5の表面に金属製のばね棒7、16によって取り付けられる装飾部材13をばね棒7、16と異なる金属で形成しても、この装飾部材13とバンド本体5との間に配置されたスペーサ部材14によって、装飾部材13とばね棒7、16とを電位差の発生し難い接触状態、つまり電気的接触状態でない接触状態にすることができる。
【0051】
このため、装飾部材13とばね棒7、16とを異なる金属で形成しても、ばね棒7、16が圧接するスペーサ部材14によって、異なる金属同士である装飾部材13とばね棒7、16との間で電位差腐食が起こり難くすることができ、これによりばね棒7、16の金属素材の影響を受けずに、装飾部材13を自由な金属で形成できると共に、装飾部材13の耐久性を向上させることができる。
【0052】
この場合、装飾部材13とスペーサ部材14とは、スペーサ部材14にばね棒7、16が圧接しても、装飾部材13とスペーサ部材14とが互いに圧接しないため、その両者が電気的接触状態にならず、電位差の生じない接触状態であるから、装飾部材13とスペーサ部材14との間で電位差腐食が起きないようにすることができる。
【0053】
また、このバンド構造では、ばね棒7、16とスペーサ部材14とが同じ金属で形成されていることにより、ばね棒7、16の一部、つまり係止ピン12のストッパーリング部12aがスペーサ部材14の一対の側面部22aにおける挿入孔22aの周縁部に圧接していても、ばね棒7、16とスペーサ部材14とが電位差の発生し難い接触状態であるため、ばね棒7、16とスペーサ部材14との間で電位差腐食が起きないようにすることができる。
【0054】
また、このバンド構造では、装飾部材13がばね棒7、16およびスペーサ部材14よりもイオン化系傾向の高い金属で形成されており、ばね棒7、16およびスペーサ部材14が装飾部材13よりもイオン化系傾向の低い金属で形成されていることにより、本来であれば、ばね棒7、16と装飾部材13とが電位差の発生しやすい電気的接触状態となり、装飾部材13に電位差腐食が起こるはずである。
【0055】
しかし、このバンド構造では、ばね棒7、16がスペーサ部材14に押し付けられて圧接していることにより、ばね棒7、16が装飾部材13に圧接することがない。このため、装飾部材13とばね棒7、16とが電位差の発生し難い接触状態になり、電位差腐食が起こり難くすることができる。
【0056】
この場合、装飾部材13は、ばね棒7、16およびスペーサ部材14よりもイオン化系傾向の高いアルミ系の金属で形成されており、ばね棒7、16およびスペーサ部材14は、装飾部材13よりもイオン化系傾向の低いステンレス系の金属で形成されていることにより、装飾部材13をイオン化系傾向の高いアルミ系の金属で形成しても、ばね棒7、16が装飾部材13に圧接することがない。
【0057】
このため、装飾部材13とばね棒7、16とが電位差の発生し難い接触状態になり、装飾部材13とばね棒7、16との間で電位差腐食が発生するのを抑制することができる。これにより、イオン化傾向の低いステンレスのばね棒7、16がイオン化傾向の高いアルミニウムの装飾部材13を浸食するのを防ぐことができる。
【0058】
これにより、装飾部材13をアルミニウムによって容易に且つ良好に製作することができるので、装飾部材13の表面をアルマイト処理することにより、装飾部材13の表面に硬質の酸化皮膜を形成することができると共に、この酸化皮膜を染料などで容易に着色することができ、これにより装飾部材13のカラー展開(カラー化)を容易に図ることができると共に、この装飾部材13によってバンド本体5の高級感を得ることができると共に、デザイン性をも高めることができる。
【0059】
また、スペーサ部材14は、装飾部材13とバンド本体5との間におけるほぼ全域に亘って配置されているので、スペーサ部材14を装飾部材13と共にバンド本体5の表面に容易に配置することができ、これによりスペーサ部材14を容易に且つ良好にバンド本体5に対して取り付けることができるので、組立作業が容易にできると共に、ばね棒7、16をスペーサ部材14に確実に且つ良好に圧接することができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、スペーサ部材14を装飾部材13とバンド本体5との間におけるほぼ全域に亘って配置した場合について述べたが、これに限らず、例えば図7に示す変形例のように、装飾部材13の側面部19に対応する箇所に部分的にスペーサ部材25を設けた構成であっても良い。この場合には、スペーサ部材25を平板状のステンレスで形成し、このスペーサ部材25にばね棒7、16の係止ピン12の先端部が挿入する挿入孔25aを、装飾部材13の側面部19に設けられた挿入孔19aに対応させて設ければ良い。
【0061】
また、上述した実施形態では、時計バンド4のバンド本体5を腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付けるバンド構造について述べたが、これに限らず、例えばバンド駒の間に連結駒を配置し、この連結駒とバンド駒とをばね棒で連結してバンド本体を構成するバンド構造にも適用することができる。
【0062】
この場合、バンド駒は、合成樹脂製の駒本体と、この駒本体を覆う装飾部材と、この装飾部材と駒本体との間に配置されてばね棒が圧接するスペーサ部材とを有し、装飾部材をばね棒およびスペーサ部材よりもイオン化系傾向の高いアルミ系の金属で形成し、ばね棒およびスペーサ部材を装飾部材よりもイオン化系傾向の低いステンレス系の金属で形成すれば良い。
【0063】
また、上述した実施形態では、ばね棒7、16とスペーサ部材14とを同じステンレスで形成した場合について述べたが、必ずしもばね棒7、16とスペーサ部材14との両者を同じステンレスで形成する必要はなく、例えばばね棒7、16とスペーサ部材14との一方をイオン化系傾向の低いステンレスで形成し、その他方をイオン化系傾向の低い炭素鋼で形成しても良い。
【0064】
さらに、上述した実施形態では、バンド本体5とバンド取付部3とを連結すると共に、バンド本体5に装飾部材13を取り付けるための連結部材として、ばね棒7、16を用いた場合について述べたが、必ずしもばね棒7、16である必要はなく、ねじなどの締結機能を有するねじ部材を用いても良い。例えば、ねじ孔を有するねじ筒にねじ部を有するねじ棒を螺合させることにより、スペーサ部材にねじ棒を圧接させた状態で、ねじ棒の先端部で装飾部材を取り付けるように構成すれば良い。
【0065】
なおまた、上述した実施形態およびその変形例では、腕時計に用いられる時計バンドに適用した場合について述べたが、必ずしも時計バンドに適用する必要はなく、例えば洋服やバッグ、鞄などのバンドにも広く適用することができる。
【0066】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0067】
(付記)
請求項1に記載の発明は、合成樹脂製のバンド部と他の部材とを金属製の連結部材で連結するバンド構造において、前記連結部材と異なる金属からなり、前記バンド部の表面に前記連結部材によって取り付けられる装飾部材と、この装飾部材と異なる金属からなり、前記バンド部と前記装飾部材との間に前記連結部材が圧接して取り付けられるスペーサ部材とを備えていることを特徴とするバンド構造である。
【0068】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンド構造において、前記連結部材と前記スペーサ部材とは同じ金属で形成されていることを特徴とするバンド構造である。
【0069】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のバンド構造において、前記装飾部材は、前記連結部材および前記スペーサ部材よりもイオン化系傾向の高い金属で形成されており、前記連結部材および前記スペーサ部材は、前記装飾部材よりもイオン化系傾向の低い金属で形成されていることを特徴とするバンド構造である。
【0070】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバンド構造において、前記装飾部材は、前記連結部材および前記スペーサ部材よりもイオン化系傾向の高いアルミ系の金属で形成されており、前記連結部材および前記スペーサ部材は、前記装飾部材よりもイオン化系傾向の低いステンレス系の金属で形成されていることを特徴とするバンド構造である。
【0071】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンド構造において、前記スペーサ部材は、前記装飾部材と前記バンド部との間におけるほぼ全域に配置されていることを特徴とするバンド構造である。
【0072】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバンド構造において、前記連結部材はばね棒であり、前記バンド部は合成樹脂製のバンド本体であり、前記他の部材は腕時計ケースに設けられたバンド取付部であることを特徴とするバンド構造である。
【符号の説明】
【0073】
1 腕時計ケース
3 バンド取付部
4 時計バンド
5 バンド本体
6 取付凹部
7、16 ばね棒
8、17 取付孔
10 パイプ本体
11 コイルばね
12 係止ピン
12a ストッパーリング部
13 装飾部材
14、25 スペーサ部材
15 装着凹部
19a 装飾部材の挿入孔
22a スペーサ部材の挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のバンド部と他の部材とを金属製の連結部材で連結するバンド構造において、
前記連結部材と異なる金属からなり、前記バンド部の表面に前記連結部材によって取り付けられる装飾部材と、
この装飾部材と異なる金属からなり、前記バンド部と前記装飾部材との間に前記連結部材が圧接して取り付けられるスペーサ部材と
を備えていることを特徴とするバンド構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバンド構造において、前記連結部材と前記スペーサ部材とは同じ金属で形成されていることを特徴とするバンド構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバンド構造において、前記装飾部材は、前記連結部材および前記スペーサ部材よりもイオン化系傾向の高い金属で形成されており、前記連結部材および前記スペーサ部材は、前記装飾部材よりもイオン化系傾向の低い金属で形成されていることを特徴とするバンド構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバンド構造において、前記装飾部材は、前記連結部材および前記スペーサ部材よりもイオン化系傾向の高いアルミ系の金属で形成されており、前記連結部材および前記スペーサ部材は、前記装飾部材よりもイオン化系傾向の低いステンレス系の金属で形成されていることを特徴とするバンド構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンド構造において、前記スペーサ部材は、前記装飾部材と前記バンド部との間におけるほぼ全域に配置されていることを特徴とするバンド構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバンド構造において、前記連結部材はばね棒であり、前記バンド部は合成樹脂製のバンド本体であり、前記他の部材は腕時計ケースに設けられたバンド取付部であることを特徴とするバンド構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66645(P2013−66645A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208729(P2011−208729)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)