バーコード読取装置
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明はバーコード読取装置に係り、特にバーコードをより正確に読取れるようにしたバーコード読取装置に関する。
〔従来の技術〕
第9図は従来のレーザ光線を用いたバーコード読取装置を示している。符号1はレーザ発振源を示しており、このレーザ発振源1からのレーザ光は、中心軸の回りを回転または揺動運動するミラー2により反射されて、バーコード3上を繰返して走査する。このレーザ光による走査は、100〜1000回/秒程度の繰返し走査である。バーコード3上を走査して反射した散乱光には黒バーと白バーとの明暗による強弱があり、この強弱を有する散乱光はレンズ4で収束されて受光器5に受光される。この受光器5は反射した散乱光の強弱を電気信号に変換して出力する。
この出力された信号は増幅器6により増幅されて低周波のノイズを除去するハイパスフィルタ7に送られる。ここでノイズを除去した信号は切変えスイッチ8を通じて互いに除去する周波数の異なるローパスフィルタ9及び10に送られる。ここで所定の周波数を除去された信号は微分回路11を経て比較回路12に送られ、ここでタイミングパルス発生器13からのパルス信号と比較され、整形回路14に送られる。ここでは信号の波形が整形され、この整形された信号はバーコードの判別回路(図示せず)に送られる。
上述の散乱光が受光器5に理想的に受光された場合には、ここから出力される信号の波形は第10図のAに示すような波形になる。この波形Aは、バーコード3の黒バーと白バーとの境界を明瞭に読取っていることを示しており、斯る境界の情報をいかに正確に読取るかがバーコード3を正確に読取るための重要な要因となる。しかしながら、実際にはノイズやレーザ光の偏りや回路定数など種々の影響を受けて波形に歪みが生じ、受光器5から出力される信号の波形はBに示すような波形になる。これを読取り易くするために微分回路を通してCに示すようないわゆるエッヂ信号を生成し、波形Cと波形Bとから、Dに示すような整形された波形を生成する。波形Cにおけるエッヂ信号はバーコード3の黒バーと白バーとの境界に相当する。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、この種のレーザ光を用いた従来の読取装置では、レーザ光によりバーコード3を繰返し走査しても、上述のように、該バーコード3の黒バーと白バーとの境界を、100〜1000回/秒程度しか走査することができず、しかも一回の走査により得られる黒バーと白バーとの境界の情報は一回限りであるので、これら境界の情報が不足しがちになり、よってバーコードを充分に読取ることができないという問題がある。
また、この種の従来の読取装置では、上述の整形した波形Dに、パルスの歯抜け15,15やノイズによる不要パルスの付加などが発生し易く、したがってバーコードの判別回路(図示せず)におけるコードの読取りが不正確になり易いという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、バーコードの黒バーと白バーとの境界の情報を充分に読取り、バーコードを正確に読取ることができるようにしたバーコード読取装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、変位付与手段はレーザ発振源それ自体を揺動させる首振り機構であることを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、変位付与手段はレーザ発振源からのレーザ光に往復変位を与えるための揺動ミラーまたは平行移動ミラーであることを特徴とするものである。
〔作用〕
本発明によれば、走査する方向にレーザ光を往復変位させるので、バーコード上を走査するレーザ光の繰返しが、仮に、100〜1000回/秒程度の繰返しであったとしても、従来では、一回の全体走査により得られる黒バーと白バーとの境界の情報が一回限りであったのに比べて、この発明によれば、レーザ光が往復変位する分だけの境界の情報が豊富になり、しかも、この往復変位の周波数と同程度の狭帯域の周波数を持つ読取り信号を取出すので、全体として得られる境界上での情報は、実際の繰返し走査の数倍から数十倍になり、バーコードの読取り信頼度が著しく向上する。
〔実施例〕
以下、本発明によるバーコード読取装置の一実施例を第9図と同一部分には同一符号を付して示した第1図乃至第8図を参照して説明する。
第1図において、符号1はレーザ発振源を示し、このレーザ発振源1からのレーザ光1aは、中心軸の回りを回転または揺動運動するミラー2により反射されてバーコード3上を走査する。このバーコード3上で反射した散乱光1bには黒バーと白バーとの明暗による強弱があり、この強弱を有する散乱光1bはレンズ4で収束されて受光器5に受光される。この受光器5は反射した散乱光1bの強弱を電気信号に変換して出力する。
この出力信号は所定の高周波を通過させる通過帯域幅の狭い高周波狭帯域フィルタ21に送られ、このフィルタ21を通過した高周波の信号は増幅器22に送られる。また受光器5の出力信号は増幅器25にて増幅されて、所定の低周波を通過させる通過帯域幅の広い低周波広帯域フィルタ26に送られる。そして、増幅器22で増幅された信号及び低周波広帯域フィルタ26を通過した信号は整数回路23に送られ、ここではタイミングパルス発生回路24からのパルス信号とともに整形され、この整形された信号はバーコードの判別回路(図示せず)に送られる。増幅器25及び低周波広帯域フィルタ26は省略してもよく、通過帯域幅の狭い高周波狭帯域フィルタ21のみを用いて信号を取出すよう構成してもよい。この高周波狭帯域フィルタ21は狭帯域周波数取出手段を構成している。
本実施例によれば、第2図からも明らかなように、レーザ発振源1に首振り機構(図示せず)が付設されている。この首振り機構はレーザ光の走査方向に往復する変位を与える変位付与手段を構成している。この例では、ミラー2により反射されてバーコード3上に到達するレーザ光1aには変位1の微振動が与えられ、この変位1はミラー2にバーコード3が近づいた場合に変位1′に減少する。また、変位付与手段としてはレーザ発振源1に僅かな振動を付与できればよい。例えば、第3図に示すように、バーコード3の最小幅の黒バー27の幅を0.15mm程度として、ミラー2から150mm程度の位置にあるバーコード3を走査する、と仮定すると、レーザ光1aに0.1mm程度の微振動変位を与えるためには、レーザ発振源1の首振り角度をθ=0.04°程度にすればよい。この時に、付与すべき微振動の振幅はバーコード3の黒バーまたは白バーのうちの最小幅よりも小さい範囲に設定することが重要である。この程度の微振動を与えることは技術的に充分に可能であり、この時には、バーコード3全体を繰返して走査する周期よりも、微振動を与える周期の方を充分に小さくすることも重要である。
次に、第4図乃至第6図を参照して本実施例の作用を説明する。
第4図において、27はバーコード3の最小幅の黒バーを示し、30〜33は微振動しながら走査方向に(図中で左方から右方に)通過していくレーザ光を示している。第5図5図Aはレーザ光に与えられる微振動を示し、この微振動の振幅は黒バーの最小幅よりも小さい。第5図Bはレーザ光走査位置Lの時間Tに対する変化であって、点線は微振動を与えない場合の変化を示し、実線は第5図Aに示す微振動を与えた場合の変化を示している。従来のものでは、第5図Bに点線で示すように、レーザ光の走査位置Lは時間Tに対して直線的に変化するが、この実施例では、レーザ光に微振動を与えているので、走査位置Lは時間Tに対して実線で示すように往復変位しながら変化する。このレーザ光は、第4図に示すように、30の時点で白バー上を走査し、31の時点で白バーと黒バーとの境界上を走査し、また32の時点で黒バー上を走査し、さらに33の時点で再び白バー上を走査している。
第5図Bに示すように、微振動を与えない場合には一回の走査により白バーと黒バーとの境界の情報が一回限りであったのに比べ、この実施例によれば、一回の走査により、白バーと黒バーとの境界はそれぞれ複数回(5回)に亘って読みとられているので、いわゆる境界部の情報は飛躍的に増大する。よって、白バーと黒バーとの反射率の比、いわゆるバーコード白黒コントラスト、PCS値が小さい場合でもバーコード3の読取り信頼度が著しく向上し、比較的黒っぽい下地に黒バーを印刷しても読取りが可能になり、また、何回も走査する必要がなくなるので、相対的にレーザ出力を減ずることが可能になり、しかも溶接作業現場などのノイズの多い場所でも読取りが可能になるなど種々の効果が得られる。
すなわち、この実施例によれば、レーザ光に与える微振動の周波数と、上記の高周波狭帯域フィルタ21を通過する信号の周波数とを一致させることが重要である。すると、高周波狭帯域フィルタ21を通過する信号の波形は、第4図及び第6図のAに示すように、レーザ光が黒バー27の端を通過するときにのみ高周波の信号35を発生させる波形になる。この波形Aの信号は増幅器22で増幅されて整形回路23に送られる。同時に、増幅器25で増幅されて低周波広帯域フィルタ26を通過する信号の波形は、Bに示すような波形になり、この波形Bの信号も同じく整形回路23に送られる。この整形回路23にて、波形A及び波形Bの信号は整形され、Cに示すような正確な矩形波の信号になる。これによれば、高周波狭帯域フィルタ21を通してレーザ光の微振動の周波数と同じ周波数の信号を取出すので、いわゆる明瞭なエッジ信号を生成することができ、極めて正確な矩形状の波形Cを生成することができる。
第7図及び第8図はそれぞれ他の実施例を示している。第7図によれば、レーザ発振源1自体に振動を付与するのではなく、レーザ発振源1とミラー2との間に揺動ミラー38を設けておき、この揺動ミラー38を振らすことによりレーザ光に微振動を付与しようとするものである。
第8図によれば、レーザ発振源1とミラー2との間に平行移動ミラー39を設け、この平行移動ミラー39を平行に微振動させることによりレーザ光に微振動を付与しようとするものである。これによれば上述と同様の効果を得ることができ、第8図の実施例では、バーコード3がどのような位置におかれても、常に微振動による変位1は一定であるので、バーコード3を遠距離においても幅の狭いバーコード3を正確に読取ることができる。
以上、一実施例に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、磁歪素子、電歪素子、または表面弾性波素子などのいわゆる表面振動素子でミラーを構成し、該素子の表面を振動させることによりレーザ光に微振動を付与するようにしてもよい。これによれば付与する振動変位の周期を小さく(周波数を高く)する場合に効果的である。また、2個のミラーを縦横に直交させて配置しておき横のミラーを縦方向に移動させて、上下方向に多段に印刷されたバーコードを走査して読取るよう構成してもよい。
〔発明の効果〕
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えているので、バーコード上を1回走査するレーザ光の繰返しが、仮に、100〜1000回/秒程度の繰返しであったとしても、レーザ光が往復変位する分だけ白バーと黒バーとの境界の情報が豊富になり、しかもこの往復変位の周波数と同程度の狭帯域の周波数を持つ読取り信号を取出すので、全体として得られる境界上での情報は、実際の繰返し走査の数倍から数十倍になり、バーコードの読取り信頼度を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明によるバーコード読取装置の一実施例を示す回路図、第2図は同じく変位付与手段を示す平面図、第3図は同じくレーザ光の往復変位の幅を示す平面図、第4図はレーザ光の往復変位を示す説明図、第5図Aはレーザ光に与えられる微振動を示す線図、同図Bはレーザ光走査位置の時間に対する変化を示す線図、第6図R>図は読取り信号の波形を示す波形図、第7図及び第8図はそれぞれ他の実施例を示す平面図、第9図は従来のバーコード読取装置を示す回路図、第10図は従来の読取り信号の波形を示す波形図である。
1……レーザ発振源、1a,1b……レーザ光、2……ミラー、3……バーコード、4……レンズ、5……受光器、21……高周波狭帯域フィルタ、22……増幅器、23……整形回路、25……増幅器、26……低周波広帯域フィルタ、35……高周波の信号、38……揺動ミラー、39……平行移動ミラー。
〔産業上の利用分野〕
本発明はバーコード読取装置に係り、特にバーコードをより正確に読取れるようにしたバーコード読取装置に関する。
〔従来の技術〕
第9図は従来のレーザ光線を用いたバーコード読取装置を示している。符号1はレーザ発振源を示しており、このレーザ発振源1からのレーザ光は、中心軸の回りを回転または揺動運動するミラー2により反射されて、バーコード3上を繰返して走査する。このレーザ光による走査は、100〜1000回/秒程度の繰返し走査である。バーコード3上を走査して反射した散乱光には黒バーと白バーとの明暗による強弱があり、この強弱を有する散乱光はレンズ4で収束されて受光器5に受光される。この受光器5は反射した散乱光の強弱を電気信号に変換して出力する。
この出力された信号は増幅器6により増幅されて低周波のノイズを除去するハイパスフィルタ7に送られる。ここでノイズを除去した信号は切変えスイッチ8を通じて互いに除去する周波数の異なるローパスフィルタ9及び10に送られる。ここで所定の周波数を除去された信号は微分回路11を経て比較回路12に送られ、ここでタイミングパルス発生器13からのパルス信号と比較され、整形回路14に送られる。ここでは信号の波形が整形され、この整形された信号はバーコードの判別回路(図示せず)に送られる。
上述の散乱光が受光器5に理想的に受光された場合には、ここから出力される信号の波形は第10図のAに示すような波形になる。この波形Aは、バーコード3の黒バーと白バーとの境界を明瞭に読取っていることを示しており、斯る境界の情報をいかに正確に読取るかがバーコード3を正確に読取るための重要な要因となる。しかしながら、実際にはノイズやレーザ光の偏りや回路定数など種々の影響を受けて波形に歪みが生じ、受光器5から出力される信号の波形はBに示すような波形になる。これを読取り易くするために微分回路を通してCに示すようないわゆるエッヂ信号を生成し、波形Cと波形Bとから、Dに示すような整形された波形を生成する。波形Cにおけるエッヂ信号はバーコード3の黒バーと白バーとの境界に相当する。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、この種のレーザ光を用いた従来の読取装置では、レーザ光によりバーコード3を繰返し走査しても、上述のように、該バーコード3の黒バーと白バーとの境界を、100〜1000回/秒程度しか走査することができず、しかも一回の走査により得られる黒バーと白バーとの境界の情報は一回限りであるので、これら境界の情報が不足しがちになり、よってバーコードを充分に読取ることができないという問題がある。
また、この種の従来の読取装置では、上述の整形した波形Dに、パルスの歯抜け15,15やノイズによる不要パルスの付加などが発生し易く、したがってバーコードの判別回路(図示せず)におけるコードの読取りが不正確になり易いという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、バーコードの黒バーと白バーとの境界の情報を充分に読取り、バーコードを正確に読取ることができるようにしたバーコード読取装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、変位付与手段はレーザ発振源それ自体を揺動させる首振り機構であることを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、変位付与手段はレーザ発振源からのレーザ光に往復変位を与えるための揺動ミラーまたは平行移動ミラーであることを特徴とするものである。
〔作用〕
本発明によれば、走査する方向にレーザ光を往復変位させるので、バーコード上を走査するレーザ光の繰返しが、仮に、100〜1000回/秒程度の繰返しであったとしても、従来では、一回の全体走査により得られる黒バーと白バーとの境界の情報が一回限りであったのに比べて、この発明によれば、レーザ光が往復変位する分だけの境界の情報が豊富になり、しかも、この往復変位の周波数と同程度の狭帯域の周波数を持つ読取り信号を取出すので、全体として得られる境界上での情報は、実際の繰返し走査の数倍から数十倍になり、バーコードの読取り信頼度が著しく向上する。
〔実施例〕
以下、本発明によるバーコード読取装置の一実施例を第9図と同一部分には同一符号を付して示した第1図乃至第8図を参照して説明する。
第1図において、符号1はレーザ発振源を示し、このレーザ発振源1からのレーザ光1aは、中心軸の回りを回転または揺動運動するミラー2により反射されてバーコード3上を走査する。このバーコード3上で反射した散乱光1bには黒バーと白バーとの明暗による強弱があり、この強弱を有する散乱光1bはレンズ4で収束されて受光器5に受光される。この受光器5は反射した散乱光1bの強弱を電気信号に変換して出力する。
この出力信号は所定の高周波を通過させる通過帯域幅の狭い高周波狭帯域フィルタ21に送られ、このフィルタ21を通過した高周波の信号は増幅器22に送られる。また受光器5の出力信号は増幅器25にて増幅されて、所定の低周波を通過させる通過帯域幅の広い低周波広帯域フィルタ26に送られる。そして、増幅器22で増幅された信号及び低周波広帯域フィルタ26を通過した信号は整数回路23に送られ、ここではタイミングパルス発生回路24からのパルス信号とともに整形され、この整形された信号はバーコードの判別回路(図示せず)に送られる。増幅器25及び低周波広帯域フィルタ26は省略してもよく、通過帯域幅の狭い高周波狭帯域フィルタ21のみを用いて信号を取出すよう構成してもよい。この高周波狭帯域フィルタ21は狭帯域周波数取出手段を構成している。
本実施例によれば、第2図からも明らかなように、レーザ発振源1に首振り機構(図示せず)が付設されている。この首振り機構はレーザ光の走査方向に往復する変位を与える変位付与手段を構成している。この例では、ミラー2により反射されてバーコード3上に到達するレーザ光1aには変位1の微振動が与えられ、この変位1はミラー2にバーコード3が近づいた場合に変位1′に減少する。また、変位付与手段としてはレーザ発振源1に僅かな振動を付与できればよい。例えば、第3図に示すように、バーコード3の最小幅の黒バー27の幅を0.15mm程度として、ミラー2から150mm程度の位置にあるバーコード3を走査する、と仮定すると、レーザ光1aに0.1mm程度の微振動変位を与えるためには、レーザ発振源1の首振り角度をθ=0.04°程度にすればよい。この時に、付与すべき微振動の振幅はバーコード3の黒バーまたは白バーのうちの最小幅よりも小さい範囲に設定することが重要である。この程度の微振動を与えることは技術的に充分に可能であり、この時には、バーコード3全体を繰返して走査する周期よりも、微振動を与える周期の方を充分に小さくすることも重要である。
次に、第4図乃至第6図を参照して本実施例の作用を説明する。
第4図において、27はバーコード3の最小幅の黒バーを示し、30〜33は微振動しながら走査方向に(図中で左方から右方に)通過していくレーザ光を示している。第5図5図Aはレーザ光に与えられる微振動を示し、この微振動の振幅は黒バーの最小幅よりも小さい。第5図Bはレーザ光走査位置Lの時間Tに対する変化であって、点線は微振動を与えない場合の変化を示し、実線は第5図Aに示す微振動を与えた場合の変化を示している。従来のものでは、第5図Bに点線で示すように、レーザ光の走査位置Lは時間Tに対して直線的に変化するが、この実施例では、レーザ光に微振動を与えているので、走査位置Lは時間Tに対して実線で示すように往復変位しながら変化する。このレーザ光は、第4図に示すように、30の時点で白バー上を走査し、31の時点で白バーと黒バーとの境界上を走査し、また32の時点で黒バー上を走査し、さらに33の時点で再び白バー上を走査している。
第5図Bに示すように、微振動を与えない場合には一回の走査により白バーと黒バーとの境界の情報が一回限りであったのに比べ、この実施例によれば、一回の走査により、白バーと黒バーとの境界はそれぞれ複数回(5回)に亘って読みとられているので、いわゆる境界部の情報は飛躍的に増大する。よって、白バーと黒バーとの反射率の比、いわゆるバーコード白黒コントラスト、PCS値が小さい場合でもバーコード3の読取り信頼度が著しく向上し、比較的黒っぽい下地に黒バーを印刷しても読取りが可能になり、また、何回も走査する必要がなくなるので、相対的にレーザ出力を減ずることが可能になり、しかも溶接作業現場などのノイズの多い場所でも読取りが可能になるなど種々の効果が得られる。
すなわち、この実施例によれば、レーザ光に与える微振動の周波数と、上記の高周波狭帯域フィルタ21を通過する信号の周波数とを一致させることが重要である。すると、高周波狭帯域フィルタ21を通過する信号の波形は、第4図及び第6図のAに示すように、レーザ光が黒バー27の端を通過するときにのみ高周波の信号35を発生させる波形になる。この波形Aの信号は増幅器22で増幅されて整形回路23に送られる。同時に、増幅器25で増幅されて低周波広帯域フィルタ26を通過する信号の波形は、Bに示すような波形になり、この波形Bの信号も同じく整形回路23に送られる。この整形回路23にて、波形A及び波形Bの信号は整形され、Cに示すような正確な矩形波の信号になる。これによれば、高周波狭帯域フィルタ21を通してレーザ光の微振動の周波数と同じ周波数の信号を取出すので、いわゆる明瞭なエッジ信号を生成することができ、極めて正確な矩形状の波形Cを生成することができる。
第7図及び第8図はそれぞれ他の実施例を示している。第7図によれば、レーザ発振源1自体に振動を付与するのではなく、レーザ発振源1とミラー2との間に揺動ミラー38を設けておき、この揺動ミラー38を振らすことによりレーザ光に微振動を付与しようとするものである。
第8図によれば、レーザ発振源1とミラー2との間に平行移動ミラー39を設け、この平行移動ミラー39を平行に微振動させることによりレーザ光に微振動を付与しようとするものである。これによれば上述と同様の効果を得ることができ、第8図の実施例では、バーコード3がどのような位置におかれても、常に微振動による変位1は一定であるので、バーコード3を遠距離においても幅の狭いバーコード3を正確に読取ることができる。
以上、一実施例に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、磁歪素子、電歪素子、または表面弾性波素子などのいわゆる表面振動素子でミラーを構成し、該素子の表面を振動させることによりレーザ光に微振動を付与するようにしてもよい。これによれば付与する振動変位の周期を小さく(周波数を高く)する場合に効果的である。また、2個のミラーを縦横に直交させて配置しておき横のミラーを縦方向に移動させて、上下方向に多段に印刷されたバーコードを走査して読取るよう構成してもよい。
〔発明の効果〕
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えているので、バーコード上を1回走査するレーザ光の繰返しが、仮に、100〜1000回/秒程度の繰返しであったとしても、レーザ光が往復変位する分だけ白バーと黒バーとの境界の情報が豊富になり、しかもこの往復変位の周波数と同程度の狭帯域の周波数を持つ読取り信号を取出すので、全体として得られる境界上での情報は、実際の繰返し走査の数倍から数十倍になり、バーコードの読取り信頼度を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明によるバーコード読取装置の一実施例を示す回路図、第2図は同じく変位付与手段を示す平面図、第3図は同じくレーザ光の往復変位の幅を示す平面図、第4図はレーザ光の往復変位を示す説明図、第5図Aはレーザ光に与えられる微振動を示す線図、同図Bはレーザ光走査位置の時間に対する変化を示す線図、第6図R>図は読取り信号の波形を示す波形図、第7図及び第8図はそれぞれ他の実施例を示す平面図、第9図は従来のバーコード読取装置を示す回路図、第10図は従来の読取り信号の波形を示す波形図である。
1……レーザ発振源、1a,1b……レーザ光、2……ミラー、3……バーコード、4……レンズ、5……受光器、21……高周波狭帯域フィルタ、22……増幅器、23……整形回路、25……増幅器、26……低周波広帯域フィルタ、35……高周波の信号、38……揺動ミラー、39……平行移動ミラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えたことを特徴とするバーコード読取装置。
【請求項2】前記変位付与手段はレーザ発振源それ自体を揺動させる首振り機構であることを特徴とする請求項1に記載のバーコード読取装置。
【請求項3】前記変位付与手段はレーザ発振源からのレーザ光に往復変位を与えるための揺動ミラーまたは平行移動ミラーであることを特徴とする請求項1に記載のバーコード読取装置。
【請求項1】バーコード上でレーザ光を走査させて該バーコードを読取るようにしたバーコード読取装置において、レーザ光に走査方向の往復変位を付与する変位付与手段と、この変位付与手段で付与する振動周波数とほぼ同程度の狭帯域周波数を持つ読取り信号を取出す狭帯域周波数取出手段とを備えたことを特徴とするバーコード読取装置。
【請求項2】前記変位付与手段はレーザ発振源それ自体を揺動させる首振り機構であることを特徴とする請求項1に記載のバーコード読取装置。
【請求項3】前記変位付与手段はレーザ発振源からのレーザ光に往復変位を与えるための揺動ミラーまたは平行移動ミラーであることを特徴とする請求項1に記載のバーコード読取装置。
【第1図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第8図】
【第9図】
【第10図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第8図】
【第9図】
【第10図】
【特許番号】第2742716号
【登録日】平成10年(1998)2月6日
【発行日】平成10年(1998)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−309863
【出願日】平成1年(1989)11月29日
【公開番号】特開平3−168886
【公開日】平成3年(1991)7月22日
【審査請求日】平成8年(1996)9月19日
【出願人】(999999999)株式会社ニューロン
【登録日】平成10年(1998)2月6日
【発行日】平成10年(1998)4月22日
【国際特許分類】
【出願日】平成1年(1989)11月29日
【公開番号】特開平3−168886
【公開日】平成3年(1991)7月22日
【審査請求日】平成8年(1996)9月19日
【出願人】(999999999)株式会社ニューロン
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