説明

バーナーの火炎検知手段

【目的】エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼させた際の火炎の薄い色の光であっても確実に着火を検知できるようにしたバーナーの火炎検知手段を提供するものである。
【解決手段】貫通穴を形成した火炎安定板20の下流側の火炎を検知する受光部42を備えた火炎センサ30を有するバーナー40において、受光部42をテーパ状で筒状の光集結部材44で囲み、そのテーパ状で筒状の光集結部材44の内面50を光を反射する面とする。これによって、火炎安定板20の下流側から上流側に至る火炎の光を、光集結部材44の内面50で大量に受け、その大量の光を最終的に火炎センサ30の受光部42に照射させる。この結果、エマルジョン燃料等の火炎の薄い色の光を火炎センサ30で確実に認識させ、未着火であるとの誤動作の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーによる燃焼が良好に行なわれているかどうかを識別するためのバーナーの火炎検知手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、灯油や軽油やA重油等の石油系燃料を着火させるバーナーとして、特許文献1等が知れられている。ここで、石油系燃料を着火させるための従来既知のバーナーを、図5に基づいて説明する。バーナー10は、噴射口12を有する燃料噴射ノズル14と、燃料噴射ノズル14から噴射される燃料に着火するための一対の電極ロッド16a,16bと、電極ロッド16a,16bの先端の端子部18a,18b(着火手段)と、燃料噴射ノズル14の噴射口12の位置や電極ロッド16a,16bの端子部18a,18bの位置から下流側の所定の距離だけ離れた位置に備えられる火炎安定板(DIFFUSER
DISK)20と、燃料噴射ノズル14や火炎安定板20の外側(半径方向の外側)に備えられる送風筒22と、送風筒22の上流側に備えられるものであって送風筒22と固定される支持板24等から成る。支持板24には燃料噴射ノズル14と一対の電極ロッド16a,16bが固定されている。なお、着火手段としては、一対の電極ロッド16a,16bと、その端子部18a,18bとから成るもの以外のものも使用されている。
【0003】
火炎安定板20は、図5や図6に示すように、円板の中央に貫通穴としての孔26を形成した環状の形状をしている。火炎安定板20の中央の孔26は、火炎安定板20を通過した後の火炎の大きさや方向を設定するものである。火炎安定板20には、孔26の位置より半径方向に放射状に複数の貫通穴としてのスリット28が形成されている。なお、貫通穴は、孔26とスリット28との少なくとも1種類を指すものとする。
【0004】
支持板24には、火炎安定板20より下流側の火炎を検知するために、火炎センサ(CDSと呼ばれている高感度焦電型赤外線センサ)30が取り付けられている。この火炎センサ30は、火炎安定板20の貫通穴を通して見える火炎安定板20より下流側の火炎の色を検知して、火炎の存在の有無(着火の適否)を識別するものである。例えば、火炎安定板20より下流側の火炎が小さく弱い場合には、火炎センサ30は良好な燃焼が行われないと識別して、燃料噴射ノズル14からの燃料の噴射の停止や、電極ロッド16a,16bへの通電を停止させるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−48309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
灯油や軽油やA重油等の石油系燃料に水を混合させたエマルジョン燃料を使用してバーナーで燃焼させた場合には、エマルジョン燃料は例えば30〜50%の水を含んでいるため、エマルジョン燃料の火炎の色は石油系燃料の火炎の色と比べて薄い色となる。また、都市ガスやLPガスを燃焼させた場合でも同様に、火炎の色は薄い色となる。既存の火炎センサ30は灯油や軽油やA重油等の石油系燃料の火炎の色を検知するよう設定されているため、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスの火炎の色を既存の火炎センサ30で検知した場合、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスの火炎の薄い光の色は不着火と判断し、燃料噴射ノズル14からの燃料の噴射の停止を行うことが稀に生じるといった不具合が発生していた。
【0007】
本発明は、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼させた際の火炎の薄い色の光であっても確実に着火を検知できるようにしたバーナーの火炎検知手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバーナーの火炎検知手段は、燃料を噴射するための燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料に着火するための着火手段と、貫通穴を形成した火炎安定板と、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側での火炎の光を検知する受光部を備えるものであって前記火炎安定板の上流側に備えられる火炎センサとを有するバーナーにおいて、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側における火炎の光を受けて反射する光集結部材を前記火炎安定板の上流側に備え、前記光集結部材に照射した火炎の光をその光集結部材で反射させて前記受光部に照射させることを特徴とするものである。本発明は、前記光集結部材を前記受光部を囲む筒状形状とし、その筒状形状を前記火炎安定板側の内部空間断面を前記受光部側の内部空間断面に比べて広いテーパ形状としたことを特徴とするものである。本発明は、前記光集結部材の筒状形状を円筒のテーパ形状としたことを特徴とするものである。本発明は、前記光集結部材を、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側における火炎の光を受けて反射する第1反射部材と、前記第1反射部材で反射された光を受けて前記受光部に向けて反射する第2反射部材とから成ることを特徴とするものである。本発明は、前記光集結部材の素材をステンレスとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバーナーの火炎検知手段は、火炎安定板の貫通穴を通って火炎安定板の下流側から上流側に照射する火炎の光のうち、直進して火炎センサの受光部に至らない光を光集結部材で大量に集めて火炎センサの受光部に集結照射させるものである。この結果、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼させた火炎の光の色が薄くても、石油系燃料の着火を認識する既存の火炎センサを使用して、燃焼状態を確実に認識することができる。この結果、燃料にエマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを使用しても、火炎センサによる不着火であると誤認することの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のバーナーの火炎検知手段は、火炎安定板の下流側の火炎の光を光集結部材で集めて反射させ、その反射させた光を火炎センサの受光部に照射させることで、着火状態を確実に認識できるようにするものである。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係わる火炎検知手段を備えたバーナー断面要部構成図、図2は火炎検知手段の要部断面図である。図1や図2において、図5と同一符号は同一部材を示す。図1に示す実施例1のバーナー40では、火炎センサ30の受光部42の周りを筒状でテ−パ状の光集結部材44で囲むものである。即ち、筒状の光集結部材44は、筒形状の内部に、火炎センサ30の受光部42を配置する。光集結部材44は、火炎センサ30に直接取り付けるのが望ましいが、支持板24に取り付けて受光部42を覆うようにしても良い。
【0012】
図2に示すように、筒状の光集結部材44は、円錐形の頂部付近を切断したテーパ円筒状の形状とするのが望ましい。テーパ円筒状の光集結部材44を火炎センサ30に取り付けた状態においては、光集結部材44の直径の小さい箇所で火炎センサ30の受光部42を覆い、直径の大きい箇所を火炎安定板20側に配置する。即ち、筒状の光集結部材44は、軸方向において直径の異なるテーパ形状となっている。言い換えると、筒状の光集結部材44においてその内部空間46の断面は、火炎安定板20側の開口部48側が広く、火炎センサ30の受光部42側が狭くなるテーパ形状に設定されている。なお、光集結部材44の筒状の断面は、円形に限らず、四角形等の多角形や楕円であっても良い。
【0013】
光集結部材44のテーパ状の内面50(図2)は、鏡面や光沢面として光を反射するための野茂のである。光集結部材44の内面50は、火炎の光を大量に集めて反射させ、その大量の光を火炎センサ30の受光部42に照射させるためのものである。光集結部材44の筒状の光集結部材44の内面50は鏡であっても良いが、強度上や経済上の観点から筒状の光集結部材44の素材を例えばステンレス等の金属とし、内面50を研磨して光を反射するための光沢を出すようにしたものが好ましい。ステンレスは、安価であり、光を反射するための光沢を出すことが容易である。
【0014】
筒状の光集結部材44の内部に配置された火炎センサ30の受光部42は、火炎安定板20の貫通穴(孔26やスリット28のうちの少なくとも1つ)からの火炎の光を検知する。火炎である光は直進するため、本発明の光集結部材44を設けない場合には、火炎センサ30の受光部42には、火炎安定板20の貫通穴から上流側に照射される火炎の光のうち、直進して受光部42に照射する受光部42の面積分の火炎の光しか検知しない。しかし、本発明の光集結部材44を設けることによって、図2に示すように、直進して筒状の光集結部材44の内面50に照射する火炎の光(火炎センサ30の受光部42に直接照射しない光)は、円錐形状の内面50による光反射によって火炎センサ30の受光部42に近づく方向に何度か反射して、最終的には火炎センサ30の受光部42に至る。
【0015】
このように、本発明の火炎検知手段は、筒状の光集結部材44の開口部48から、筒状の光集結部材44の内部空間46に入ってくる火炎の光は、直進して火炎センサ30の受光部42に至るものだけでなく、直進して筒状の光集結部材44の内面50に照射される火炎の光をも火炎センサ30の受光部42に集結させるものである。この結果、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼した薄い色の火炎の光を大量に火炎センサ30の受光部42に集結させることができるので、石油系燃料を燃焼させた火炎の光と同じ光量を得ることができる。本発明のバーナーの火炎検知手段では、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガス等の薄い色の火炎を出す燃料を使用する際に、石油系燃料の着火を認識する既存の火炎センサ30を用いた場合でも、燃料の着火を確実に認識することができる。この結果、従来発生していた不着火であるとの誤認のおそれを無くし、確実な運転を行うことができる。
【0016】
光集結部材44の形状は、開口部(火炎安定板20側)の内部空間面積が火炎センサ30の受光部42側の内部空間面積より充分大きなテーパ状とする。これによって、光集結部材44の開口部の面積を大きくし、より大量の火炎の光を光集結部材44の内壁に照射させることができる。筒状としては、断面が四角形等の多角形形状を採用することができるが、製造コストが安いことと、大量の光を火炎センサ30の受光部42に照射できることから、円筒状(テーパ円筒状)とすることが望ましい。
【0017】
なお、図1においては、火炎センサ30を支持板24に取り付けたが、火炎センサ30を送風筒22に取り付けるようにしても良い。
【実施例2】
【0018】
実施例1では、光集結部材44をテーパ筒状としたものを示した。しかし、火炎センサ30の周囲360度にテーパ筒状の光集結部材44を備える空間があれば良いが、周囲360度の他方が塞がっていて、一方にのみに空き空間がある場合もある。この実施例2では、火炎センサ30の周囲360度の一方にのみ空き空間がある場合について説明する。火炎センサ30の周囲の空き空間に光集結部材52を備える。この光集結部材52は、1枚の金属板を曲線状に湾曲させたものであり、例えば火炎センサ30に固定する。光集結部材52の湾曲形状は、火炎安定板20の管通穴を通って火炎安定板20の上流側に至る火炎の光を受け、その光を反射して火炎センサ30の受光部42に照射する形状とする。光集結部材52の金属素材としては、強度上や経済上や光沢加工上の観点からステンレスとするのが望ましい。
【0019】
本発明の実施例2の火炎検知手段においては、炎安定板20の孔26やスリット28を通って火炎安定板20の上流側から下流側に至る火炎の光は、直進して火炎センサ30の受光部42に至るものだけでなく、直進して光集結部材52に照射する火炎の光もある。光集結部材52に照射する火炎の光は、そこで反射させて火炎センサ30の受光部42に照射させる。この結果、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼した薄い色の火炎の光を大量に火炎センサ30の受光部42に集結させることができるので、石油系燃料を燃焼させた火炎の光と同じ光量を得ることができる。従って、本発明のバーナーの火炎検知手段では、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガス等の薄い色の火炎を出す燃料を使用する際に、石油系燃料の着火を認識する既存の火炎センサ30を用いることができ、燃料の着火を確実に認識することができる。
【実施例3】
【0020】
実施例1や実施例2では、1個の光集結部材44,52を用いて火炎センサ30の受光部42に火炎の光を照射するものを示したが、この実施例3では、光集結部材を複数個とするものである。火炎センサ30近傍の支持板24に第1反射部材54を固定し、火炎安定板20の上流側に第2反射部材56を固定する。第1反射部材54の反射面は第2反射部材56に対面するよう配置し、第2反射部材56の反射面は火炎センサ30の受光部42に対面するよう配置する。この実施例3では、第1反射部材54と第2反射部材56とで光集結部材を構成する。第1反射部材54は、火炎安定板20の貫通穴を通って火炎安定板20の上流側に至る火炎の光を受け、その光を反射して第2反射部材56に照射するように配置する。第2反射部材56は第1反射部材54から反射された光を受け、その光を反射して火炎センサ30の受光部42に照射するように配置する。
【0021】
本発明の実施例3の火炎検知手段においては、炎安定板20の貫通穴を通って火炎安定板20の上流側から下流側に至る火炎の光は、直進して火炎センサ30の受光部42に至るものだけでなく、直進して第1反射部材54に照射する火炎の光もある。第1反射部材54に照射した火炎の光はそこで反射して第2反射部材56を照射し、第2反射部材56に照射した火炎の光はそこで反射して火炎センサ30の受光部42を照射する。この結果、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガスを燃焼した薄い色の火炎の光を大量に火炎センサ30の受光部42に集結させることができるので、石油系燃料を燃焼させた火炎の光と同じ光量を得ることができる。従って、本発明のバーナーの火炎検知手段では、エマルジョン燃料や都市ガスやLPガス等の薄い色の火炎を出す燃料を使用しても、石油系燃料の着火を認識する既存の火炎センサ30を用いて、燃料の着火を確実に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる火炎検知手段を備えたバーナーの実施例1を示す要部断面図である。
【図2】図1に備える火炎検知手段の拡大断面図である。
【図3】本発明に係わる火炎検知手段を備えたバーナーの実施例2を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係わる火炎検知手段を備えたバーナーの実施例3を示す要部断面図である。
【図5】従来既知のバーナーの要部断面図である。
【図6】バーナーに使用される火炎安定板の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
14 燃料噴射ノズル
16a 電極ロッド
16b 電極ロッド
18a 端子部
18b 端子部
20 火炎安定板
26 孔
28 スリット
30 火炎センサ
40 バーナー
42 受光部
44 光集結部材
46 内部空間
48 開口部
50 内面
52 光集結部材
54 第1反射部材
56 第2反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射するための燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料に着火するための着火手段と、貫通穴を形成した火炎安定板と、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側での火炎の光を検知する受光部を備えるものであって前記火炎安定板の上流側に備えられる火炎センサとを有するバーナーにおいて、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側における火炎の光を受けて反射する光集結部材を前記火炎安定板の上流側に備え、前記光集結部材に照射した火炎の光をその光集結部材で反射させて前記受光部に照射させることを特徴とするバーナーの火炎検知手段。
【請求項2】
前記光集結部材を前記受光部を囲む筒状形状とし、その筒状形状を前記火炎安定板側の内部空間断面を前記受光部側の内部空間断面に比べて広いテーパ形状としたことを特徴とする請求項1記載のバーナーの火炎検知手段。
【請求項3】
前記光集結部材の筒状形状を円筒のテーパ形状としたことを特徴とする請求項2記載のバーナーの火炎検知手段。
【請求項4】
前記光集結部材を、前記貫通穴を通して前記火炎安定板の下流側における火炎の光を受けて反射する第1反射部材と、前記第1反射部材で反射された光を受けて前記受光部に向けて反射する第2反射部材とから成ることを特徴とする請求項1記載のバーナーの火炎検知手段。
【請求項5】
前記光集結部材の素材をステンレスとしたことを特徴とする請求項1乃至4記載のバーナーの火炎検知手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250489(P2009−250489A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97383(P2008−97383)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(391039999)
【Fターム(参考)】