説明

バーナ装置

【課題】混合管部内部における流動を阻害することなく燃料ガスと一次空気とを確実に混合させることができると共に、一次空気の流量を安定させることができ、しかも吸入口の口径とスロート部の流通断面積とを比較的大きくして良好な燃焼を得ることができるバーナ装置を提供する。
【解決手段】
吸入口4とガス噴出ノズル12との間に整流部材22を設ける。整流部材22に、吸入口4の軸線の上側に位置して吸入口4の一部を横断する方向に延びる上部壁板23を設ける。上部壁板23の下縁の一部から下方に延び、吸入口4の軸線の両側又は何れか一側に位置して吸入口4の一部に対向する側部壁板26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ装置に関し、詳しくは、バーナ本体に備える吸入口から燃料ガスと共に一次空気を取り入れ、燃料ガスと一次空気との混合ガスを燃焼板に供給して燃焼させるバーナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバーナ装置としては、例えば、温風暖房機の熱源として採用されるものが知られており、ガス噴出ノズルが臨んで燃料ガスと一次空気とを流入させる吸入口と、該吸入口から流入する燃料ガスと一次空気とを混合して混合ガスを生成する混合管部とを備えている。混合管部は、吸入口から連続して略水平方向に延設されている。そして混合管部により混合された混合ガスは混合管部の下流側から分布室を経て燃焼板等に備える多数の炎孔に送られ燃焼される。
【0003】
混合管部には、吸入口の近傍で吸入口より流通断面積が小さいスロート部が設けられており、燃料ガスと一次空気とがスロート部を通過するときに両者の流れが乱されることにより、混合管部において燃料ガスと一次空気とが円滑に混合されるようになっている。
【0004】
ところで、燃料ガスと一次空気とは、混合管部で十分に混合されることが望ましく、両者の混合が不十分であると、多数の炎孔において形成される火炎が不均一となる。また、燃料ガスと一次空気との混合は、スロート部の流通断面積を小さくするほど良好に行われることが知られているが、スロート部の流通断面積が小さいと燃料ガスと一次空気との通過流量も小さくなり、特に吸入口から吸入される一次空気の量が不足する。一次空気を多量に吸入させるためには、吸入口の口径を大きくすると共にスロート部の流通断面積を比較的大きくしなければならず、これに伴って両者の混合具合が悪化する。このように、スロート部の流通断面積の大きさによって良好な混合と良好な燃焼とを両立させることは困難である。
【0005】
そこで、混合管部の内部に障害物を配置し、燃料ガスと一次空気との流れが混合管部の内部で激しく乱れるようにして、燃料ガスと一次空気とを十分に混合させるようにしたバーナ装置が知られている(特許文献1参照)。これによれば、混合管部の内部において障害物により燃料ガスと一次空気との混合が促されるので、吸入口の口径とスロート部の流通断面積とを共に大きくすることができる。
【0006】
しかし、混合管部の内部に障害物を設けることによって、混合管部の内部での混合ガスの流動が阻害され、吸入口から十分な一次空気が吸入されなくなるおそれがあるばかりか、吸入口から一次空気が過剰に吸入されても、その空気量を制限することかできず、一次空気量の過不足が生じて良好な燃焼を得ることが困難となるおそれがある。
【特許文献1】特開平7−63310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる不都合を解消して、本発明は、混合管部内部における流動を阻害することなく燃料ガスと一次空気とを確実に混合させることができると共に、一次空気の流量を安定させることができ、しかも吸入口の口径とスロート部の流通断面積とを比較的大きくして良好な燃焼を得ることができるバーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、軸線方向にガス噴出ノズルが臨んで燃料ガスと共に一次空気を吸入する吸入口と、該吸入口より流通断面積が小さいスロート部を介して該吸入口に連なり燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する混合管部と、該混合管部で生成された混合ガスにより火炎を形成する炎孔とを備えるバーナ装置において、前記吸入口と前記ガス噴出ノズルとの間の位置に整流部材を備え、該整流部材は、前記吸入口の軸線の上側に位置して該吸入口の一部を横断する方向に延びる上部壁板と、該上部壁板の下縁の一部から下方に延び、前記吸入口の軸線の両側又は何れか一側に位置して該吸入口の一部に対向する側部壁板とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記整流部材が吸入口とガス噴出ノズルとの間の位置にあって、その上部壁板と側部壁板とによって、吸入口から吸入される一次空気の流れに乱れを形成することができる。これにより、スロート部における燃料ガスと一次空気との流れの乱れを増加させることができ、混合管部の内部において燃料ガスと一次空気とを良好に混合させることができる。しかも、整流部材は吸入口の外側にあるので、障害物が混合管部の内部に設けられている場合のような燃料ガスと一次空気との流動が阻害されることはなく、吸入口から吸入される一次空気の量の低下も殆どないので、十分な量の一次空気を燃料ガスに混合させることができる。従って、吸入口の口径とスロート部の流通断面積とを比較的大きくすることができ、良好な燃焼を得ることができる。
【0010】
更に、前記側部壁板を吸入口の軸線の両側又は何れか一側に延設することにより、一時的に多くの一次空気が吸入口へ向かう事態が生じても、吸入口から吸入される一次空気の量を適度に制限することができ、過剰な一次空気量による燃焼効率の低下を防止することができる。
【0011】
前記側部壁板について更に詳しく説明すれば、例えば、本発明のバーナ装置を温風暖房機の熱源として採用したとき、温風暖房機の背面側の吸気口及びフィルターが設けられている場合には、フィルターの外れ及び目詰まり等によって、バーナ装置の吸入口から見て一側方(フィルター側)から送られる一次空気の量に大きな変動が生じる。このとき、前記側部壁板が吸入口の軸線の一側(フィルター側)或いは両側に設けられていれば、該側部壁板によって一次空気の量の変動が抑制され、吸入口から吸入する一次空気の量を安定させることができるので、良好な燃焼状態を維持することができる。或いはまた、温風暖房機の前板が外された場合にも、バーナ装置の吸入口から見て他側方(前板側)から送られる一次空気の量に大きな変動が生じるが、前記側部壁板が吸入口の軸線の他側(前板側)或いは両側に設けられていれば、該側部壁板によって一次空気の量の変動が抑制されるので、良好な燃焼状態を維持することができる。
【0012】
また、本発明において、前記上部壁板の前記吸入口の軸線側に位置する下縁と前記側部壁板の前記吸入口の軸線側に位置する側縁と該側部壁板の下縁とに、該吸入口に向かって延出する延出片を設けることが好ましい。該延出片を設けることにより、ガス噴出ノズルの周囲から吸入口へ向かう一次空気の円滑な流れを維持しつつその一次空気の流れに一層多くの乱れを形成することができ、良好な燃焼を確実に得ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記整流部材は、前記吸入口と前記上部壁板との間の上方を覆う板状の張出部を備えることが好ましい。張出部によって、吸入口の周囲の空気の拡散を抑制することができ、その空気を一次空気として確実に吸入口に吸入させることができる。そして、張出部の下方に前記上部壁板が位置するので、張出部によって案内された空気を効率よく確実に上部壁板に突き当てることができる。しかも、張出部の外側から吸入口に向かう空気の流れが一定して得られるので、例えば、温風暖房機の熱源として本発明のバーナ装置を採用したときに、温風暖房機の筐体内部の空気の流れの影響を殆ど受けずに吸入口に向かう空気の流れを形成することができる。また、張出部は吸入口の上方を覆っていることにより、塵埃等の異物が張出部の上面でせき止められて吸入口からの侵入が防止される。これによって、バーナ装置内部での異物燃焼を防止することができ、バーナ装置の耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記上部壁板は、前記吸入口へ向かう一次空気が通過自在の穴部を備えることが好ましい。吸入口へ向かう一次空気は、吸入口へ吸入されるに先立って上部壁板に衝突するが、このとき、前記穴部を抜けることで激しい乱れとなる。これによって、混合管部の内部における燃料ガスと一次空気との混合を一層促進させることができる。また、例えば、一時的に上部壁板に向かう一次空気の流速が低下するようなことがあっても、穴部を通過することによって一次空気の流れを円滑に確保して、燃料ガスと一次空気との良好な混合を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のバーナ装置1は、図示しない温風暖房機の熱源として用いられる全一次空気式のものであり、図1に示すように、バーナ本体2と、バーナ本体2の上部に取り付けられた燃焼板3とによって構成されている。
【0016】
バーナ本体2は、その一側部に、円形に開口された吸入口4と、吸入口4より流通断面積が小さいスロート部5とを備えるロート状の吸入口体6を一体に備えている。吸入口体6は、そのスロート部5がバーナ本体2の内部に形成されている円筒状の混合管部7の上流端部に連通して設けられている。混合管部7の上部には、混合管部7の下流端に連通する分布室8が形成され、分布室8には、複数の貫通孔9が開設された分布板10が設けられている。前記燃焼板3は、複数の炎孔11が形成されたセラミックス製の板体であり、分布板10の上方に対向して水平に設けられている。
【0017】
吸入口4には、その中心で軸線方向にガス噴出ノズル12(図4参照)が臨み、ガス噴出ノズル12から燃料ガスが送り込まれるようになっている。このとき、燃料ガス流によりその周囲から一次空気を取り込み、吸入口4から吸入された燃料ガスと一次空気とが混合管部7で混合されて分布室8で均等に分散分布され、分布板10の貫通孔9を経て燃焼板3の炎孔11により火炎を形成する。なお、符号13で示すものは酸欠検知バーナである。
【0018】
吸入口体6は、図1及び図2に示すように、その吸入口4の端縁が矩形板状の枠体14に一体に連結されている。枠体14には、吸入口4に合致する開口部15が形成され、その上端部にはバーナ本体2に一体に連結する上部連結舌片16が連設されている。枠体14の一側縁と下側縁とには、図示しない温風暖房機の筐体にネジ止め連結するための側部連結舌片17と下部連結舌片18とが夫々連設されている。また、枠体14の他側縁には、図4に示すように、ガス噴出ノズル12が取り付けられたノズルホルダ19を支持するホルダ支持片20が連設されている。ホルダ支持片20には、複数の通気孔21が形成されている。
【0019】
更に、図1及び図2に示すように、枠体14には、所定形状に打抜き形成された金属板を折り曲げて形成された整流部材22が設けられている。整流部材22は、図2及び図3に示すように、吸入口4の軸線の上側に位置して該吸入口4の一部を横断する方向に延びる上部壁板23を備えている。上部壁板23には、複数の穴部24が貫通して形成されており、その一側端縁には、枠体14にネジ止め連結する連結部25が連設されている。整流部材22は該連結部25によって吸入口4とガス噴出ノズル12との間の位置に固定される。
【0020】
上部壁板23の下縁の一部には、一対の側部壁板26が連設されている。両側部壁板26は、吸入口4の軸線の両側に位置して該吸入口4の一部に対向する。上部壁板23と両側部壁板26とは、一枚の金属板から打抜くときに吸入口4とガス噴出ノズル12との対向位置に対応する部分を切欠くことによって形成され、このときに、上部壁板23と両側部壁板26とに包囲された部分が、ガス噴出ノズル12から噴出される燃料ガスを通過させる開放部27となる。
【0021】
また、上部壁板23における吸入口4の軸線側に位置する下縁、両側部壁板26における吸入口4の軸線側に位置するそれぞれの側縁、及び両側部壁板26の下縁には、吸入口4に向かって延出する延出片28が連続して設けられている。
【0022】
更に、図2及び図3に示すように、整流部材22には、連結部25の上端縁から水平に折り曲げ形成された板状の張出部29が設けられている。張出部29は、図1及び図2に示すように、枠体14の上部連結舌片16から吸入口4の外側に位置し、吸入口4と上部壁板23との間の上方を覆う。
【0023】
次に、本実施形態のバーナ装置1における整流部材22の作用を図4を参照して説明する。ガス噴出ノズル12から吸入口4に向かって燃料ガスが噴出されると、燃料ガスの噴流Gにより吸入口4の周囲にある空気にも流れが生じ、燃料ガスと共に吸入口4へ向かう。このとき、吸入口4の上方に張り出す整流部材22の張出部29により、吸入口4の周囲にある空気の分散が防止されているので、その空気は確実に吸入口4へ向かう。
【0024】
また、張出部29の外側からは吸入口4の周囲に空気が入り込むことができ(矢印A1)、ガス噴出ノズル12の下方からも十分な量の空気が吸入口4の周囲に入り込むことができる(矢印A2)ので、吸入口4に向かう空気の流れを一定して得ることができる。
【0025】
燃料ガスと共に吸入口4へ向かう空気は、吸入口4の手前で、整流部材22の上部壁板23及び側部壁板26に衝突し、上部壁板23及び側部壁板26に包囲された部分である開放部27を抜ける。このとき、延出片28に接触した空気の流れA3に乱れが生じ、この状態で一次空気として吸入口4に取り込まれて、更にスロート部5に向かう。同時に、上部壁板23に衝突した空気が穴部24を抜けることによって空気の流れA4に激しい乱れが生じる。これによって、開放部27を抜ける空気の流れの乱れが一層激しくなり、一次空気としてスロート部5に向かうときに燃料ガスとの混合が促進される。
【0026】
このように、一次空気として吸入口4に吸入される空気は、整流部材22によって吸入口4に吸入される前に気流が乱されるので、例えば、混合管部7の内部に障害物等を設けて燃料ガスと一次空気との混合を行う必要がなく、また、混合管部7の内部での混合ガスの流動が妨げられることがないので、十分な量の一次空気を吸入口4から取り込むことができる。
【0027】
更に、整流部材22によって、吸入口4に吸入される空気には既に流れの乱れが生じているので、スロート部5の流通断面積が比較的大きくても、十分に混合が促進され、混合管部7の内部での混合ガスの生成が円滑且つ確実に行われる。そしてこれによって、燃焼板3の炎孔11に燃料ガスと一次空気とが良好に混合された混合ガスが供給され、炎孔11において良好に火炎を形成することができる。
【0028】
そして、このとき、開放部27を抜ける空気の流れの乱れに十分な乱れが形成されるだけでなく、側部壁板26によって空気の流量も適度に制限されので、吸入口4への過剰な空気流は抑制され、良好な燃焼状態を維持することができる。即ち、例えば、図示しないが、温風暖房機の背面側の吸気口にフィルターが設けられており、このフィルターの外れや目詰まりによって空気の流動経路や流量が大きく変動するが、前記側部壁板26によって過剰な空気量が制限されると共に空気流の変動が抑えられるので、適量の空気を一次空気として安定して吸入口4に導くことができる。同じく、温風暖房機の前板が外れて過剰な空気が吸入口4へ流入しようとしても、前記側部壁板26によって適度な空気量に制限されるので、適量の空気を一次空気として安定して吸入口4に導くことができる。このように、前記側部壁板26を設けることにより、温風暖房機内部に生じる空気の変動に影響を受けることなく良好な燃焼状態を維持することができる。
【0029】
また、張出部29は吸入口4の上方を覆っているので、吸入口4の上方から吸入口4へ向かう塵埃が張出部29によってせき止められ、バーナ本体2内部への塵埃の侵入を阻止することができる。これによって塵埃による燃焼への悪影響を回避することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、吸入口4の軸線の両側に一対の側部壁板26を設けたが、温風暖房機の内部における配置に応じて何れか一方側にのみ側部壁板26を設けるようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、前記延出片28と張出部29とを備える整流部材22を採用した例を示したが、延出片28と張出部29とは何れも、取り付けスペースや、温風暖房機の能力に応じて選択的に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態のバーナ装置を示す説明的断面図。
【図2】本実施形態のバーナ装置の要部を示す説明的斜視図。
【図3】整流部材を示す説明的斜視図。
【図4】整流部材の作用を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1…バーナ装置、4…吸入口、5…スロート部、7…混合管部、11…炎孔、12…ガス噴出ノズル、22…整流部材、23…上部壁板、24…穴部、26…側部壁板、28…延出片、29…張出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向にガス噴出ノズルが臨んで燃料ガスと共に一次空気を吸入する吸入口と、該吸入口より流通断面積が小さいスロート部を介して該吸入口に連なり燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する混合管部と、該混合管部で生成された混合ガスにより火炎を形成する炎孔とを備えるバーナ装置において、
前記吸入口と前記ガス噴出ノズルとの間の位置に整流部材を備え、
該整流部材は、前記吸入口の軸線の上側に位置して該吸入口の一部を横断する方向に延びる上部壁板と、該上部壁板の下縁の一部から下方に延び、前記吸入口の軸線の両側又は何れか一側に位置して該吸入口の一部に対向する側部壁板とを備えることを特徴とするバーナ装置。
【請求項2】
前記上部壁板の前記吸入口の軸線側に位置する下縁と前記側部壁板の前記吸入口の軸線側に位置する側縁と該側部壁板の下縁とには、該吸入口に向かって延出する延出片が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバーナ装置。
【請求項3】
前記整流部材は、前記吸入口と前記上部壁板との間の上方を覆う板状の張出部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のバーナ装置。
【請求項4】
前記上部壁板は、前記吸入口へ向かう一次空気が通過自在の穴部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のバーナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−185252(P2008−185252A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18695(P2007−18695)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】