説明

パイプとプレートとの接合方法

【課題】 プレート1のパイプ挿通孔2にパイプ3を挿通してその挿通部をろう付け固定する接合方法において、組立て易くと共に構造が簡単で且つ、簡単な設備で製造することができる接合方法の提供。
【解決手段】 プレート1のパイプ挿通孔2をパイプ3の外周より僅かに大に形成すると共に、そのパイプ挿通孔2の内周に3以上の爪部4を一体に突設する。そしてパイプ3をパイプ挿通孔2に挿入して爪部4によりパイプ3の外周を保持した状態で、その挿通部をろう付け固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のタンクに突設されるパイプの如く、そのパイプの一端部をタンクを構成するプレートのパイプ挿通孔に挿通して、その挿通部をろう付け固定する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の金属製タンクは、そのタンク本体がプレートを箱状に形成してなり、その開口をチューブプレートで閉塞する。そのタンク本体の一側には、熱交換媒体の流入口が形成され、その流入口にパイプの一端が挿通され、その挿通部が一体にろう付け固定されている。また、チューブプレートには多数のチューブが貫通し、各チューブ間にフィンが配置されて熱交換器コアを構成する。
このような金属製のタンクおよび熱交換器コアは、互いに接合される少なくとも一方の表面にろう材が被覆され或いは、接合部にろう材が配置されて、高温の炉内に挿入され各部品間が一体にろう付け固定されるものである。なお、タンクとパイプとの接合をコアのろう付け工程から分離して行うこともできる。
【0003】
このようなパイプとタンクとの組立ては、従来次のようにして行われていた。タンクのパイプ挿通孔の開口をパイプ外周よりも極めて僅かに小に形成し、そのパイプ挿通孔にパイプの一端部を圧入することにより、そのパイプをタンクに保持させる。
また、他の組立て方法として、パイプの開口端部外周に図2(A)のフランジ部6を曲折形成しておく。そして、タンクのパイプ挿通孔2をパイプ3の外周よりも僅かに大に形成し、そのパイプ挿通孔2にパイプ3の端部を挿通する。次いで、パイプ3の開口縁を図2(B)の如く拡開し、そこに拡開部7を形成する。それによって、パイプ3をプレート1のパイプ挿通孔2に保持させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者のパイプとプレートとの接合方法は、パイプ3の外周とプレート1のパイプ挿通孔2との嵌め合い公差を厳密に要求し、部品の製造コストが高くなる欠点がある。
また、後者の接合方法は、フランジ部6の形成および拡開部7の形成が面倒であると共に、組立て工数が多くなり、その点から製造コストが高くなる欠点がある。
さらに両者とも、設備コストがかかると共に、パイプサイズ毎に適宜な治具が必要となる。
そこで、本発明はその組立てが容易で確実にパイプ3の外周をパイプ挿通孔2に保持させることができると共に、ろう付けの際に両者間の隙間を均一に保持し得る信頼性の高いろう付けができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、プレート(1) に穿設されたパイプ挿通孔(2) に、パイプ(3) を挿通して、その挿通部をろう付け固定するパイプとプレートとの接合方法において、 前記パイプ挿通孔(2) を前記パイプ(3) の外周より僅かに大に形成すると共に、そのパイプ挿通孔(2) の内周に周方向に離間して3以上の爪部(4) を一体に突設し、その爪部(4) の先端がパイプ(3) の外周より僅かに中心側に位置するように形成する工程と、
次いで、そのパイプ(3) をパイプ挿通孔(2) に挿入して、その爪部(4) によりパイプ(3) の外周を保持した状態で、その挿通部をろう付け固定する工程と、を有するパイプとプレートとの接合方法である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記パイプ挿通孔(2) が、互いに対向する一対の平行部(2a)とその両端間を連結する一対の円弧部(2b)とからなり、前記爪部(4) が円弧部(2b)の始まりまたはその近傍に位置するように構成したパイプとプレートとの接合方法である。
請求項3に記載の本発明は、請求項2において、
前記平行部(2a)の中間部には前記爪部が存在しないように構成したパイプとプレートとの接合方法である。
【0007】
請求項4に記載の本発明は、請求項2において、
前記円弧部(2b)の中間位置にも前記爪部(4) が形成されたパイプとプレートとの接合方法である。
請求項5に記載の本発明は、前記パイプ挿通孔(2) が円形孔からなり、その円形孔を3以上に分割して、その各分割点に前記爪部(4) が形成されたパイプとプレートとの接合方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接合方法は、パイプ挿通孔2に3以上の爪部4を一体に突設すると共に、その爪部4の先端がパイプ3の外周より僅かに中心側に位置し且つ、パイプ挿通孔2をパイプ3の外周より僅かに大に形成しているから、パイプ3をパイプ挿通孔2に容易に挿入することができる。そしてそのパイプ3の外周を3以上の爪部4で保持することにより、パイプ3の外周とパイプ挿通孔2との隙間を均等に保持できる。それにより、ろう付けの際、ろう材が一方側に片寄ることなく、ろう付けの信頼性を高めることができる。それと共に、製造し易く作業工数の少ない接合方法を提供できる。
【0009】
上記構成において、パイプ挿通孔2の形状を一対の平行部2aと一対の円弧部2bとから構成し、円弧部2bの始まりまたはその近傍位置に爪部4を配置することができる。
この場合には、比較的パイプの変形し難い部分に爪部4が配置されるため、ろう付けの信頼性を向上できる。
上記構成において、平行部2aの中間部に爪部が存在しないようにした場合には、さらにろう付けの信頼性を向上し得る。
【0010】
上記構成において、円弧部2bの中間位置にも爪部4を形成させることができる。それによって、パイプ3をパイプ挿通孔2内に確実に保持し、ろう付けの信頼性を向上できる。
上記構成において、パイプ挿通孔2を円形孔とし、その円形孔を3以上に分割してその各分割点に爪部4を配置することができる。
このようにすることにより、円形パイプの外周を均等に保持し、パイプ挿通孔2とパイプ3の外周との隙間を均一に保持してろう付けの信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1(A)は本発明のパイプとプレートとの組立て状態を示す要部正面図(パイプを横断面で示す)であり、(B)は(A)のB部拡大図であり、(C)は(B)のC−C矢視断面図である。
この接合方法は、プレート1のパイプ挿通孔2およびパイプ3の断面外周が楕円形に形成されたものである。即ち、パイプ挿通孔2は一対の平行部2aと、両平行部2aの端部間を連結する一対の円弧部2bとからなり、パイプ挿通孔2の外周がパイプ3の外周よりも僅かに大に形成されている。そして、パイプ挿通孔2の平行部2aの両端位置および夫々の円弧部2bの中間位置の二箇所に互いに離間して一対ずつの爪部4が突設されている。この爪部4はプレート1にパイプ挿通孔2を形成するプレス工程において、一体に形成することができる。或いは、パイプ挿通孔2を形成した後に、パイプ挿通孔2の孔縁部の一部を塑性変形することにより爪部4を一体に突設させてもよい。
【0012】
この爪部4は、平面視三角形状等に形成され、その先端はパイプ3の外周よりも僅かに中心側に突出している。また、この例ではパイプ3の外周には予めろう材5が被覆されている。なお、それに代えてプレート1側にろう材を被覆してもよい。また、線状または箔状のろう材5を両者の間に配置してもよい。
このようなパイプ3を、プレート1のパイプ挿通孔2に挿入する。すると、パイプ挿通孔2の内周に突設された爪部4がパイプ3の外周に咬着し、パイプ3をパイプ挿通孔2内に保持する。
【0013】
このように組立てられたパイプ3とプレート1のパイプ挿通孔2とには、僅かに隙間が形成されるが、爪部4の突出量を等しくすることにより、パイプ挿通孔2とパイプ3の外周との隙間を均一に保持することができる。なお、図1は説明の都合上、両者の隙間を大きくとってあるが、実際には、殆ど目視できない隙間である。
そして、組立てられたプレート1とパイプ3とは、高温の炉内に挿入され、ろう材5を溶融させ、次いでそれを冷却固化することにより、パイプ3の外周とプレート1のパイプ挿通孔2の内周との間を一体にろう付け固定することができる。
なお、上記の例ではパイプ3の外周およびパイプ挿通孔2が楕円形に形成されていたが、それに代えて両者を円形に形成してもよい。その場合には、パイプ挿通孔2を3以上に分割し、その各分割点に爪部4を一体に突設すればよい。
【0014】
このようにしてなる熱交換器は、パイプ3の先端開口にホース等を接続し、熱交換媒体をパイプ3を介して、タンクの一部を構成するプレート1内に供給し、次いでそれを図示しない各チューブに分流させる。そしてチューブおよびフィンの外面側に冷却風を流通させ、その冷却風と熱交換媒体との間に熱交換を行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の接合方法のろう付け工程の第1手順を示す説明図であって、プレート1のパイプ挿通孔2にパイプ3を挿通した状態を示す正面図(パイプ3を断面とする)およびそのB部拡大図並びにC−C断面図。
【図2】従来型パイプとプレートとの接合手順を順に示す縦断面略図。
【符号の説明】
【0016】
1 プレート
2 パイプ挿通孔
2a 平行部
2b 円弧部
3 パイプ
4 爪部
5 ろう材
6 フランジ部
7 拡開部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート(1) に穿設されたパイプ挿通孔(2) に、パイプ(3) を挿通して、その挿通部をろう付け固定するパイプとプレートとの接合方法において、
前記パイプ挿通孔(2) を前記パイプ(3) の外周より僅かに大に形成すると共に、そのパイプ挿通孔(2) の内周に周方向に離間して3以上の爪部(4) を一体に突設し、その爪部(4) の先端がパイプ(3) の外周より僅かに中心側に位置するように形成する工程と、
次いで、そのパイプ(3) をパイプ挿通孔(2) に挿入して、その爪部(4) によりパイプ(3) の外周を保持した状態で、その挿通部をろう付け固定する工程と、を有するパイプとプレートとの接合方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記パイプ挿通孔(2) が、互いに対向する一対の平行部(2a)とその両端間を連結する一対の円弧部(2b)とからなり、前記爪部(4) が円弧部(2b)の始まりまたはその近傍に位置するパイプとプレートとの接合方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記平行部(2a)の中間部には前記爪部(4) が存在しないように構成したパイプとプレートとの接合方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記円弧部(2b)の中間位置にも前記爪部(4) が形成されたパイプとプレートとの接合方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記パイプ挿通孔(2) が円形孔からなり、その円形孔を3以上に分割して、その各分割点に前記爪部(4) が形成されたパイプとプレートとの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−10131(P2006−10131A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185062(P2004−185062)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)