説明

パイプコンベヤ

【目的】 荷の片寄りやローラの損傷等が生じた場合でも、トラフ変換部において搬送ベルトが一側方に片寄ることなく、両側方に均等に押し拡げられて、正常にプーリに巻きつくようにする。
【構成】 パイプ状に丸められた搬送ベルト(1)がトラフ変換部(B)に至ると、まず搬送ベルト(1)の両側縁部が拡張ローラ(21)により両側方に均等に押し拡げられ、次いでダミープーリ(24)により、一旦上方へ反らされて平にされた後、プーリ(2)に巻きつくので、搬送ベルト(1)は一側方に片寄ることがなく、かつプーリ(2)への巻きつき時に両側縁部が折り返えされることがない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無端の帯状搬送ベルトの一部をパイプ状に丸め、その中に搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤに関する。
【0002】
【従来の技術】図4〜図7は、従来のパイプコンベヤの一例を示す。
【0003】この従来のパイプコンベヤは、無端の帯状搬送ベルト(1)を、互いに離間した前後1対のプーリ(2)(3)間に平ベルト状に展開して掛け回し、両プーリ(2)(3)のいずれかをモータ等の駆動手段(図示略)により回転させることによって循環させられるようになっている。
【0004】搬送ベルト(1)における両プーリ(2)(3)間の往路部分(1a)と復路部分(1b)との各中間部は、搬送方向に沿って設けられた支持枠(4)に適宜の間隔で固定された図5に示すような多数の保形枠(5)における上室(5a)と下室(5b)との各中央に形成された窓孔(5c)を通過させられ、その通過時に、窓孔(5c)の周縁にほぼ環状に配設された複数の保形ローラ(6)によりパイプ状に丸められる。
【0005】図4に示すように、搬送ベルト(1)における一方のプーリ(2)又は(3)に掛け回されて平ベルト状に展開した部分からパイプ状に丸められるまで、又はパイプ状に丸められた部分から他方のプーリ(3)又は(2)に掛け回されて平ベルト状に展開するまでのトラフ変換部(A)(A')(B)(B')においては、搬送ベルト(1)は、支持枠(4)の前後の端部中位部より前後方向に延出するフレーム(7)に固着された複数の案内枠(8)に枢支された樋状等のガイドローラ(9)により、漸次パイプ状に丸められるように、又は漸次平ベルト状に展開するように案内される。
【0006】図6に略示するように、平板状に展開して後部のプーリ(3)を下方より回走した搬送ベルト(1)は、トラフ変換部(A)の各案内枠(8)を通過して漸次パイプ状に丸められる間に、供給ホッパ(10)より投下された搬送物(11)を包み込む。
【0007】ついで、各保形枠(5)の上部の窓孔(5c)を通過し、トラフ変換部(B)において各案内枠(8)を通過する間に漸次平ベルト状に展開させられ、前部のプーリ(2)を上方より回走する時、搬送物(11)を荷受ホッパ(12)に投入し、その後、トラフ変換部(A')おいて再びパイプ状に丸められて、各保形枠(5)の下部の窓孔(5c)を通過し、さらにトラフ変換部(B')において再度平ベルト状に展開させられた後、後部プーリ(3)に戻って循環する。
【0008】以上は、パイプコンベヤの構成と動作を略述したものであるが、従来の搬送ベルト(1)のトラフ変換部(B)は、図7に示すように、展開した搬送ベルト(1)の中央部と両側縁部とが前部のプーリ(2)のけん引力により平均に伸長するように、搬送ベルト(1)のパイプ状に丸められた部分の中心軸線(CL)の延長線を、展開した搬送ベルト(1)と接触を開始する前部のプーリ(2)の外周の頂点(2a)と一致させるか又は頂点(2a)より下方に位置させていた(例えば特開昭63-262320号公報参照)。
【0009】なお、トラフ変換部(A)における後部のプーリ(3)と搬送ベルト(1)との関係は、トラフ変換部(B)と前後が対称の同様の関係になっている(図示略)。また、トラフ変換部(A')はトラフ変換部(B)と、さらにトラフ変換部(B')はトラフ変換部(A)と、それぞれ上下対称の関係になっている(図示略)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のような従来のパイプコンベヤにおいては、トラフ変換部(B)に進入した直後の搬送ベルト(1)は、まだパイプ状に丸められており、その部分では、搬送ベルト(1)の両側縁部は、互いに連続しておらず、単に重合しているだけであるので、両側縁部の応力は互いに無関係に発生し、応力分布は不均一となる。
【0011】したがって、搬送ベルト(1)のわずかの捩れ等によっても、両側縁部の応力に差が生じ、各部の伸長量が異なったり、樋状の展開部が傾斜したり、平板状の展開部がプーリ(2)に接する点で側方に片寄ったりするおそれがある。
【0012】このようなおそれをなくすため、トラフ変換部内に自動調心ローラを設け、ベルトの横方向への偏位を防止するようにしたものがあるが、荷が片寄ったり、ローラが損傷したような場合、自動調心ローラによるベルト走行調整が正常に働かず、搬送ベルト(1)の側縁部が案内枠(8)等に接触して損傷したり、側縁部が折り返えされたりするトラブルが発生している。
【0013】本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、荷の片寄りやローラの損傷等が生じた場合でも、トラフ変換部において搬送ベルトが一側方に片寄ることなく、両側方に均等に押し拡げられて、正常にプーリに巻きつくように改良したパイプコンベヤを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、互いに離間した1対のプーリ間に掛け回されて循環する無端の帯状搬送ベルトの両プーリ間の中間部をパイプ状に丸め、その中に搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤにおいて、搬送ベルトのパイプ状に丸められた部分から一方のプーリに掛け回されて平ベルト状に展開するまでのトラフ変換部における搬送ベルトの内側に、前記一方のプーリと平行をなすダミープーリを該プーリ寄りに配設するとともに、前記トラフ変換部における搬送ベルトのパイプ状に丸められた部分寄りに、搬送ベルトの両側縁部を両外側方に押し拡げる少なくとも1対の拡張ローラを設けたことを特徴としている。
【0015】実施にあたっては、ダミープーリを、搬送ベルトの軸線と直交する軸まわりに回動可能として支持体に装着し、かつ搬送ベルトの側方への片寄りを検知する検知手段の作動に基づいて、前記ダミープーリの前記軸まわりの角度を、前記片寄りを補正するように自動的に調節する自動調節装置を設けるのがよい。
【0016】
【作用】パイプ状に丸められた搬送ベルトがトラフ変換部に至ると、まず搬送ベルトの両側縁部が拡張ローラにより両側方に均等に押し拡げられ、次いでダミープーリにより、一旦外方(上側のトラフ変換部にあっては上方、下側のトラフ変換部にあっては下方)へ反らされて平にされた後、プーリに巻きつくので、搬送ベルトは一側方に片寄ることがなく、かつプーリへの巻きつき時に両側縁部が折り返えされることがない。
【0017】
【実施例】図1〜図3は、本発明の一実施例を示す。なお、上述の従来のものと同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略し、以下の説明では、従来の構成と異なる本発明の特徴的な構成についてのみ説明する。
【0018】本実施例においては、トラフ変換部(B)における搬送ベルト(1)のパイプ状に丸められた部分に最も近い最後部(図1の右方が前方である。)の案内枠(8)の上部中央に、前後方向を向くローラ支持体(20)が固着され、そのローラ支持体(20)には、展開されつつある搬送ベルト(1)の両側縁部を両外側方に漸次押し拡げる3対の拡張ローラ(21)が、前後方向に並べて設けられている。
【0019】各拡張ローラ(21)を回転自在に枢支する軸(22)は、前方のものほど左右の開き角が大となるようにして、ローラ支持体(20)に固定されている。なお、各軸(22)は、ローラ支持体(20)に1個ずつ固着してもよいが、例えばすべての軸(22)の上端をローラ支持体(20)の中央に配設した前後方向を向く支持軸(23)に枢嵌し、各軸(22)を上記のような所望の方向に向かせた状態で、支持軸(23)に螺合したナット(図示略)を締め付けて、すべての軸(22)を固定するようにすることにより、各拡張ローラ(21)を取付角度調節可能とするのがよい。
【0020】トラフ変換部(B)における最前部の案内枠(8)とプーリ(2)との間には、プーリ(2)とほぼ平行をなす水平なダミープーリ(24)が配設されている。
【0021】このダミープーリ(24)は、フレーム(7)の前部に枢支された垂直な回転軸(25)の上端に中央下面が固着された上向きコ字状のプーリ支持枠(26)に水平な軸(27)をもって枢支され、フレーム(7)上に設けた自動調節装置(27)により、プーリ支持枠(26)及び回転軸(24)と一体となって回転させられるようになっている。
【0022】自動調節装置(27)は、内部にモータと、ウォーム及びウォームホイール等からなる減速装置と、制御装置(いずれも図示略)とを備え、次に説明する搬送ベルト(1)の側方への片寄りを検知する検知手段(32)の作動に基づいて、ダミープーリ(24)を後述するような態様で自動的にわずかに回転させるようになっている。
【0023】プーリ(2)とダミープーリ(24)との間には、搬送ベルト(1)の両側部を適宜の間隔を置いて上下より挾む上下1対の支持板(29)(30)が左右にそれぞれ配設され、この支持板(29)(30)の対向面に、搬送ベルト(1)により光路が遮られることによって作動するようにした発光素子(31a)と受光素子(31b)とからなる複数対の公知の光電式ベルト検知センサ(31)が、左右方向に並べて設けられている。
【0024】これらの複数対のセンサ(31)により、搬送ベルト(1)の側方への片寄りを検知する検知手段(32)が構成されている。
【0025】すなわち、左右の作動しているセンサ(31)の数を比較することにより、搬送ベルト(1)がいずれの側方にどの程度片寄っているかを検知することができる。
【0026】例えば、搬送ベルト(1)が図2に想像線で示すように右方(図2の図面上の上方)に片寄った場合は、右方の4個のセンサ(31)のうちの3個が作動し、かつ左方の4個のセンサ(31)のうちの1個のみが作動するので、そのことにより、搬送ベルト(1)がセンサ(31)の1個分だけ右方に片寄ったことが検知される。
【0027】それに基づいて、自動調節装置(27)は、搬送ベルト(1)のこの片寄りを矯正するように、ダミープーリ(24)を、図2に実線で示すプーリ(2)と平行な位置から、同じく想像線で示す位置まで時計方向にわずかに回転させる。
【0028】すると、搬送ベルト(1)がダミープーリ(24)を通過する際に、搬送ベルト(1)に走行方向をダミープーリ(24)の中心軸線と直交する方向に向けようとする矯正力が働き、搬送ベルト(1)は、図2に実線で示す元の正常な状態に復帰させられる。
【0029】搬送ベルト(1)が、元の正常な状態に復帰させられると、左右の4個ずつのセンサ(31)のうちの2個ずつがそれぞれ作動し、搬送ベルト(1)が正常な状態に復帰させられたことが検知手段(32)により検知される。
【0030】すると、それに基づいて、自動調節装置(27)はダミープーリ(24)を、図2に実線で示すプーリ(2)と平行な位置に復帰回転させ、以後搬送ベルト(1)は、正常な状態で走行することができる。
【0031】(33)は、トラフ変換部(A')における最前部の案内枠(8)とプーリ(2)との間の搬送ベルト(1)の復路部分(1b)に下方より圧接するようにフレーム(7)に装着された押し上げローラである。
【0032】本実施例によると、パイプ状に丸められた搬送ベルト(1)がトラフ変換部(B)に至ると、まず搬送ベルト(1)の両側縁部が拡張ローラ(21)により両側方に均等に押し拡げられ、次いでダミープーリ(24)により、一旦上方へ反らされて平にされた後、プーリ(2)に巻きつくので、搬送ベルト(1)は一側方に片寄ることがなく、かつプーリ(2)への巻きつき時に両側縁部が折り返えされることがない。
【0033】また、ダミープーリ(24)を、上述のように、搬送ベルト(1)の片寄りに応じてそれを矯正する方向に自動的に回転させる自動調節装置(27)を設ければ、より完璧である。
【0034】以上の説明は、トラフ変換部(B)のみについてのものであるが、図4に示すようなトラフ変換部(B')を、上記のトラフ変換部(B)と前後及び上下に対称の構造としても、上記とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0035】また、上述の実施例は、搬送ベルト(1)の一側縁部の外面と他側縁部の内面とを互いに重合させて、パイプ状に丸めるパイプコンベヤの場合であるが、搬送ベルト(1)の両側縁部の内面同士を拝み合せ状に重合させて、パイプ状に丸めたパイプコンベヤあるいは、両側縁同士を、単に、当接もしくは近接させたパイプコンベヤにも、本発明を効果的に適用することができる。
【0036】さらに、拡張ローラ(21)は、1対、2対又は4対以上設けてもよい。
【0037】
【発明の効果】本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a) パイプ状に丸められた搬送ベルトがトラフ変換部に至ると、まず搬送ベルトの両側縁部が拡張ローラにより両側方に均等に押し拡げられ、次いでダミープーリにより、一旦外方へ反らされて平にされた後、プーリに巻きつくので、搬送ベルトは一側方に片寄ることがなく、かつプーリへの巻きつき時に両側縁部が折り返えされることがない。したがって、搬送ベルトの側縁部が案内枠等に接触して損傷したりするおそれもなくなる。
【0038】(b) また、ダミープーリを、搬送ベルトの軸線と直交する軸まわりに回動可能として支持体に装着し、かつ搬送ベルトの側方への片寄りを検知する検知手段の作動に基づいて、前記ダミープーリの前記軸まわりの角度を、前記片寄りを補正するように自動的に調節する自動調節装置を設けると(請求項2記載の発明)、万一搬送ベルトに片寄りが生じたとしても、それを積極的に矯正することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の要部の側面図である。
【図2】同じく要部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【図4】従来のパイプコンベヤの一例を示す概略側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う拡大断面図である。
【図6】従来のパイプコンベヤの後部の概略平面図である。
【図7】従来のパイプコンベヤの前部の概略側面図である。
【符号の説明】
(1)搬送ベルト (1a)往路部分
(1b)復路部分 (2)(3)プーリ
(4)支持枠 (5)保形枠
(5a)上室 (5b)下室
(5c)窓孔 (6)保形ローラ
(7)フレーム (8)案内枠
(9)案内ローラ (10)供給ホッパ
(11)搬送物 (12)荷受ホッパ
(20)ローラ支持体 (21)拡張ローラ
(22)軸 (23)支持軸
(24)ダミープーリ (25)回転軸
(26)プーリ支持枠 (27)軸
(28)自動調節装置 (29)(30)支持板
(31)センサ (31a)発光素子
(31b)受光素子 (32)検知手段
(33)押し上げローラ
(A)(A')(B)(B')トラフ変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに離間した1対のプーリ間に掛け回されて循環する無端の帯状搬送ベルトの両プーリ間の中間部をパイプ状に丸め、その中に搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤにおいて、搬送ベルトのパイプ状に丸められた部分から一方のプーリに掛け回されて平ベルト状に展開するまでのトラフ変換部における搬送ベルトの内側に、前記一方のプーリと平行をなすダミープーリを該プーリ寄りに配設するとともに、前記トラフ変換部における搬送ベルトのパイプ状に丸められた部分寄りに、搬送ベルトの両側縁部を両外側方に押し拡げる少なくとも1対の拡張ローラを設けたことを特徴とするパイプコンベヤ。
【請求項2】 ダミープーリを、搬送ベルトの軸線と直交する軸まわりに回動可能として支持体に装着し、かつ搬送ベルトの側方への片寄りを検知する検知手段の作動に基づいて、前記ダミープーリの前記軸まわりの角度を、前記片寄りを補正するように自動的に調節する自動調節装置を設けたことを特徴とする請求項1記載のパイプコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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