パイプ又はケーブルが延在する少なくとも1つの導管を動的に封止するシステム
封止された接続部を提供するシステムであって、接続部内には1つ以上のケーブル、パイプまたはダクト(2)が延在する。システムは、開口内もしくは開口上に、密封的に固定もしくは固定可能なフレーム(100)を備える。フレーム(100)は、複数のケーブル、パイプまたはダクト(2)のうちの少なくとも1つが挿入されるのに適した1つ以上の導管(203)を備え、導管にはさらに、導管(203)の内周壁と、複数のパイプ、ケーブルまたはダクト(2)の少なくとも1つとの間のスペースを密封的に塞ぐ弾性変形可能なプラグ(4)が挿入されるのに適している。システムは、さらに、各導管(203)内において、導管(203)に挿入されたプラグ(4)の一端が移動することを防止するための少なくとも1つのブロック部材(37)を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供するシステムに関する。
【0002】
本発明は、導管スリーブを介して少なくとも1つのパイプ、ケーブルまたはダクトが挿入される開口を封止するシステムに関する。導管スリーブは、開口の周囲にぴったりと密封するように固定され、または、開口に一致している。
【背景技術】
【0003】
開口は、床、デッキ、壁またはパーティションに設けられた管状の通路を含む。あるいは、別のチューブが少なくとも部分的に挿入されるチューブも開口に含まれる。
【0004】
上述したようなシステムは例えば、流体が両方のチューブを通して流れることができるように、それぞれ異なる直径を有し、互いに接続された2つのチューブに用いられる。一方のチューブは、例えば、家庭用機器の接続部を形成し、主線もしくはその支線を形成すチューブよりも直径が小さい。これらのチューブは、例えば、水、ガス、油、液体、化学物質などを輸送するのに使用される。本発明に係るシステムにより、チューブ同士の間に位置するスペースを封止する。
【0005】
また、互いに接続されたこれらのチューブ内に、例えば、電話、電気、およびテレビ用のケーブルを通すこともできる。あるいは、グラスファイバーケーブルと保護チューブとの間のシーリングとしてシステムを利用することも可能である。また、このようなシステムを建物の壁、とくに、構造壁および床だけでなく、天井や屋根に使用してもよい。この場合、「無プラスチックチューブ部分(lost plastic tube parts)」により、流し込まれたコンクリート中に、水、ガス、またはケーブル用のチューブを通すための通路が開口されている。もちろん、ボーリングによりコンクリートの基礎に通路を設けてもよい。ダクトと「無チューブ部分」または穿孔の内壁との間のスペースは、後に、本発明に係るシステムによって封止できる。
【0006】
さらに、本発明に係るシステムは、新しい建物、船、および海洋設備の建設、および/または、保守に利用することもできる。一般的には、これらの建設の際、各セクションは、予め決められた計画に沿って、船の場合は造船所のドックで、プレハブのパーティションを設置して形成される。パーティションを設置する前であっても、例えば溶接によりパーティションに貫通チューブを設けることができる。貫通チューブは、上述した導管スリーブであってもよい。貫通チューブにダクトを通した後、貫通チューブの内壁と挿入されたダクトとの間のスペースを、本発明に係るシステムによって封止することができる。貫通チューブと、それに挿入されたダクト、ケーブル、またはチューブを、それぞれ異なる金属含有材料から製造することが可能である。これは、貫通チューブとそれに挿入されるダクト、ケーブルまたはチューブとの接触がなく、少なくとも実質的に電解腐食が発生しないためである。
【0007】
導管スリーブとチューブまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを、以下では、単に「スペース」と呼ぶこともある。
【0008】
GB2186442には、ケーブルおよびパイプの接続システムが開示されている。このシステムは、開口を備える金属のフレームを備え、開口は、貫通ブロックとブランキングブロックで埋められている。貫通ブロックは、2つのハーフブロックからなり、これらのブロックが一体となって、パイプ、ケーブルまたはダクトを挿入可能な開口を有するブロックを形成する。すなわち、貫通ブロックの2つの部材が、パイプ、ケーブルまたはダクトを囲むことができる。各パイプ、ケーブルまたはダクトは、このようにして少なくとも2ブロックによって囲まれる。開口の残りのスペースはブランクブロックでふさがれる。これにより、導管スリーブ、ここでは、金属フレーム、の内壁と、導管スリーブ、すなわち金属フレーム内に延在するパイプ、ダクトまたはケーブルとの間のスペースは、ブロックでふさがれる。支持板をブロックの各層の間に配置することもできる。その後、組み立てられたブロックに圧力をかけて、ケーブル、パイプまたはダクト周囲のブロックを圧縮することで、ケーブル、パイプまたはダクト周囲の貫通ブロックを封止するとともに、これらを一緒に締め付け、また、フレームすなわち導管スリーブの側壁および支持板に対して押し付けている。このため、システムは圧縮および梱包システムも含む。ナットまたは圧縮ボルトの締め付けを要するシステムによって、圧力をかけることができる。圧縮に必要な力は非常に高く、その一部はダクトパイプまたはケーブルに、多くの場合、静力学的に、伝達される。このシステムでは、積み重ねられた複数のブロックに均等に荷重を分配することができない。実際に、ダクトパイプまたはケーブルに荷重の一部がかかることで、均等な分配が妨げられる。ダクトパイプまたはダクトのせいで小さな圧縮しかかけられなかったブロックは、容易に外れてしまう。別の問題として、ゴムの不可逆変形により接続システムの柔軟性が低下することがある。これにより、システムの一部が突然はるかに高い圧力にさらされて悪影響を及ぼすことがある。
【0009】
設置が難しく、時間とコストがかかり、在庫管理に多大な手間がかかるシステムであること以外にも、このシステムは、長期的に満足の得られる機能を果たさない。ゴムは、よく加硫したゴムであっても、時間がたつにつれて自然な緩和が発生する。ゴムが適切に飽和状態にされていない、または、加硫されていないときにも、化学緩和が発生する。これにより、全体的なゴムの緩和が進む。この結果、GB2186442に開示された圧縮梱包システムでは、圧縮ボルトまたはナットを、頻繁に締め直す必要がある。更なる問題は、温度変化によって、熱膨張または収縮の影響により、圧縮ボルトの緩みまたは締め付けすぎが発生し、封止効果の低下、あるいは、ゴムの不可逆変形を引き起こす。
【0010】
とくに、プラスチックブレードを備えたプラスチックパイプまたはケーブルが金属フレーム、すなわち導管スリーブ内に延在している場合、これらのチューブまたはケーブルの外側面は、径方向内側の圧力を受け、これらのパイプの外径は、「クリープ」と呼ばれる現象によって減少することがある。これが発生すると、物理的な現象であるクリープと、緩和の両方によって、圧縮ゴムブロックと径方向に圧縮されたプラスチックパイプによって機能していたシーリングの性能が低下するため、圧縮梱包ステムにおいて圧縮ボルトとナットの締め直しを一層頻繁に行う必要がでてくる。しかし、圧縮ボルトおよび/またはナットをどれほど頻繁に締め直しても、締め直しの直後から、ゴムの緩和およびプラスチックパイプのクリープの現象が発生し続けるので、封止性能はすぐに、一層悪化する。
【0011】
世界最大かつ最新の海上石油プラントであるサンダーホースは、ハリケーン「デニス」がメキシコ湾を通過した後、20〜30度程度傾いてることがわかった。この傾斜について最終的な報告はまだなされていないが、初期調査は、GB2186442と同様のシステムを利用したマルチケーブル接続部を介して、スペース間での水の移動が起こっていたことを指摘している。
【0012】
導管を通るパイプの周囲の導管スリープに、ゴムリングを同軸に設けたシステムが知られている。ゴムリングは、鋼製のリング状板の間で圧縮される。これにより、径方向の力が全角度方向に均等に作用するように構成することができる。ただし、ゴムの緩和の問題、および、プラスチックパイプの場合はクリープの問題によって、圧縮鋼板を頻繁に締め直す必要がある。
【0013】
WO2004/111513には、導管スリーブの内壁と、スリーブ内に延在するパイプ、ケーブル、またはダクトとの間のスペースに挿入される、弾性変形可能な材料から形成されたシステム、より具体的にはプラグが開示されている。プラグは、スペースに挿入される封止プラグを形成する2つの縦部材を有する。縦部材のそれぞれの外側部は、使用中に環状接触面となる長手方向に離間した複数の外側リブを有し、これらの環状接触面は、封止プラグと開口の内壁との間を周方向に塞ぐ。さらに、縦部材にはそれぞれ、内側に、使用中に環状接触面となる複数の内側リブを有し、これらの環状接触面は、封止プラグと開口内に延在するパイプ、ケーブルまたはダクトとの間を周方向に塞ぐ。縦部材はそれぞれ、開口の外側端部に対向して配置される外側カラーを有する。プラグが組み立てられると、これらのカラーはフランジの一部を構成し、フランジには縦部材を挿入するための力がかけられる。フランジは、開口の外側端部に対向するように設計されている。開口の外側端部は、このように、フランジでカバーされている。フランジによって、均一な挿入を確実に行うことができ、縦部材の外側リブは並んで管状接触面を形成し、内側リブは並んで管状接触面を形成する。
【0014】
このシーリングシステムの利点は、挿入が非常に簡単であるということである。また、縦部材にグリースを塗布すると、手動でも挿入することができる。更なる利点は、非常に高い圧力がフランジに作用したとしても、プラグが導管スリーブすなわち開口の中に押し込まれることがほとんどないということである。すなわち、このシーリングシステムは、非常に高い圧が、開口すなわち導管に最初に挿入される側のプラグに作用したとしても、封止性能を保つことができるということである。最初に挿入される側のプラグの端部に非常に高い圧力が作用した後、プラグが導管スリーブすなわち開口から押しだされる可能性がある。別の利点は、リブによってシーリングシステムにある程度の柔軟性がもたらされ、締め直しが不要となることである。ゴムが緩和しても、リブによる環状接触面は維持され、封止作用が維持される。これにより、開口すなわち導管スリーブ内に延在するプラスチックパイプの直径を小さくするクリープ現象も発生しにくくなる。このように、クリープ自体は発生しにくくなるが、導管スリーブ内に延在するプラスチックパイプに作用する実際の径方向の負荷は、ゴムの緩和によって時間がたつにつれて低下するので、クリープが発生する可能性が高まるのではなくて、低下する。
【0015】
WO2004/111513A1に開示されたシステムは、満足できるレベルで動作するものであるが、シーリングシステムの一端側に作用する圧力が突然増大した場合でも封止効果を維持する必要性を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これに対応することが、本発明の第1の目的である。
【0017】
第1の目的を達成するとともに、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供するのに適したシステムを提供することが、第2の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の目的は、以下のシステムを提供することによって達成される。すなわち、システムは、少なくとも1本のパイプ、ケーブルまたはダクトが通る開口を、開口の周囲にぴったりと密封するように固定された、または開口に一致した導管スリーブを介して動的に封止する。システムは、少なくとも、導管スリーブ内にぴったりと密封するように挿入可能であって、弾性変形可能なプラグを備える。プラグは、外側部と内側部の2つの端面を有する。各端面は、当該端面を導管スリーブへ取り付けられるような寸法を有する。外側部は、プラグと導管スリーブの内周壁との間において環状接触面となる、プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の外側リブを備える。内側部は、プラグと少なくとも1本のパイプ、ケーブル、またはダクトとの間において環状接触面となる、プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の内側リブを備える。内側部および/または外側部には、長手方向におけるプラグの圧縮と、内側リブおよび外側リブの少なくとも一方の交差方向の移動を容易にする少なくとも1つのヒンジ可能面部が設けられている。
【0019】
各端面は、当該端面を導管スリーブ内に取り付けられるような寸法を有し、プラグの全体がスリーブ内に挿入される。プラグの一端部に非常に高い圧力がかけられたとき、その端部はまず、他端側へ押し付けられる。ヒンジ可能面部は、プラグの長手方向の圧縮を容易にする。圧縮が起きると、少なくとも内側リブまたは外側リブの交差方向の移動により、封止性能を実際、確実に向上させることができる。封止プラグの一端部に高い圧力が作用すると、導管の内壁と、導管スリーブを通るパイプ、ケーブルまたはダクトとの間のスペースにおいて封止がさらに高まる。すなわち、動的な封止動作が開始される。
【0020】
なお、本システムは、導管スリーブを介して開口を通るプラスチックパイプに継続的に高い圧力をかけるものではない。プラグの一方の端部に非常に高い圧力がかかったときのみ、非常に高い径方向の圧力が発生する。その結果、プラスチックパイプに大きなクリープが発生することがほとんどなくなる。
【0021】
本発明によるシステムの一実施の形態において、ヒンジ可能面部は、2つの隣接するリブの、向かい合う斜面によって形成される。この実施の形態では、プラグが長手方向に圧縮されると、少なくとも2つのリブが交差方向に容易に移動するようになる。さらに、縦の長さに対してリブの数を大きくすることができる。2つの隣接するリブの組のそれぞれについて、ヒンジ可能面部を設けることも可能である。すなわち、プラグの縦の長さを非常に効率的に利用することができる。これにより、挿入後に、プラグの一端に圧力波を作用することなく、全体的な封止性能を向上させることができ、さらに、プラグの一端に圧力波を作用させるとさらに一層向上させることができる。
【0022】
本発明によるシステムの一実施の形態は、さらに、使用中にプラグの両端にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグの下流側の端部が、圧力勾配の下流側に移動することを防止するためのブロック部材を備える。これにより、挿入を均等にしてリブを整列させ、環状接触面が確実に正しく形成されるようにできるだけでなく、プラグ全体が導管スリーブ内において外圧の勾配に対して下流側に移動することなく、プラグを確実に圧縮することができる。これにより、さらに、封止性能の向上が容易になる。このシステムは、例えば突然水中に沈んだり、爆発、ハリケーンまたは津波が発生したときでさえも、それによる衝撃に絶えることができる。実験により、プラグの両端の圧力差が15bar(水面下150mにおける圧力に相当)となるまで、プラグの封止完全性を維持することがわかった。
【0023】
これは、本発明によるシステムの一実施の形態において、とくに、上述したプラグが2つ、導管スリーブ内に配置され、ブロック部材がこれらの2つのプラグの間に配置されるものに適用される。この場合、システムは、外圧の勾配の発生する方向に拘わらず、動的に封止を行うことができる。いずれの状況でも、1つのプラグが圧縮されることで、その封止用の接触面が増大し、通常の接触面に対して高い負荷をかけられる。その結果、全体的な封止作用が大きく向上する。
【0024】
本発明によるシステムの一実施の形態において、使用中に導管に対して、外圧の勾配の下流側にプラグの両端が同時かつ同様に移動することを防止するために、少なくとも2つのブロック部材を備えるものもまた、これらの効果を有する。圧力勾配の方向にかかわらず、常にプラグが圧縮され、その封止機能が向上する。
【0025】
本発明はさらに、上述したプラグと導管スリーブを有する接続システムに関する。
【0026】
本発明はさらに、導管スリーブにおける、導管スリーブと、導管スリーブ内に延在するパイプ、チューブまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを封止する方法に関する。
【0027】
第2の目的は、独立請求項1の主題よって達成される。
【0028】
図面を参照して、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるシステムの概略斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材の概略斜視図をに示す。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材を概略的に示す。
【図4】図4は、図3に示す一実施の形態によるシステムの縦部材の概略断面図である。
【図5】図5は、図3に示す縦部材によって組み立てられたプラグが、導管スリーブと、導管スリーブ内に挿入される1本のパイプ、ケーブル、またはダクトとの間のスペースに挿入された状態を概略的に示す。
【図6】図6は、図3に示す縦部材が、図5に示すスペースに挿入された状態における概略断面図を示す。
【図7】図7は、本発明によるシステムの更なる実施の形態を概略的に示す。
【図8】図8は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図9】図9は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図10】図10は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図11】図11は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図12】図12は、本発明のさらなる実施の形態におけるシステムの上面概略図を示す。
【図13】図13は、図12のI-I断面を矢印V方向からみた概略図を示す。
【図14】図14は、図12に上面図を示した実施の形態の概略斜視図を示す。
【図15】図15は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態の概略斜視図を示す。
【図16】図16は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態の概略斜視図を示す。
【図17】図17は、本発明の一実施の形態におけるシステムの一部を示す概略斜視図である。
【図18】図18は、本発明の一実施の形態におけるシステムの一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同様の部分には同様の参照符号を付している。
【0031】
図1は、簡単のために一部を切り欠いた状態のパーティション1を示す。パーティション1は、2つのコンパートメントI、IIに分割されている。パーティション1は、パイプ2が延在する開口を備えている。本明細書において、以下に「パイプ」と記載する場合、パイプはダクトまたはケーブルでもよい。導管スリーブ3は、開口に一致している。または、導管スリーブ3が開口の周囲にぴったりと、密封的に固定されていると理解することもできる。一般に、導管スリーブは、1本以上のケーブル、パイプまたはダクトが挿入されるのに適した導管の一例である。導管は、さらに、導管の内周壁と、その中に延在するパイプ、ケーブルまたはダクトとの間のスペースを密封的に満たす弾性変形可能なプラグが挿入されるのに適している。システムは、図1に示すように、導管スリーブ3内にぴったりと密封的に挿入可能な弾性変形可能なプラグ4を備えている。パーティション1は鉄鋼壁としてもよい。導管スリーブ3は、鉄鋼から製造されてもよく、実際に、鋼管としてもよい。鋼管を、パーティション1の開口内に溶接してもよい。パイプ2を導管スリーブ3内に通す前に、プラグ4を導管スリーブ3内に挿入できるように、プラグ4を単一の部材から構成してもよい。しかし、多くの場合、少なくとも2つ部分に分かれた縦部材5を組み立てたものをプラグ4とする。この場合、プラグ4の挿入前に、パイプ2が導管スリーブ3に通されるときに、プラグ4も形成して挿入することができる。図1において、プラグ4の2つの部分からなる縦部材5を、破線で示している。プラグ4の縦部材5の1つの斜視図を図2に示す。
【0032】
図3は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材5の内側を概略的に示す。縦部材5を2つ組み合わせることで、1つのプラグ4を形成することができる。図3の上部UPと下部LPは、縦部材5の長手方向Lに沿った断面に対応している。図3の上部UPの断面の拡大図を、図4に示す。縦部材5には、外側部7が設けられている。外側部7は、プラグ5と導管スリーブ3の内周壁10との間において環状接触面9(図5参照)となる、プラグ4の長手方向に離間した複数の外側リブ8を有し、これらの外側リブ8は、頂点8aを有する。内側部6は、プラグ4とパイプ2との間において環状接触面12となる、プラグ4の長手方向に離間した複数の内側リブ11を有し、これらの内側リブ11は、頂点11aを有する。「離間」とは、リブが隣接するリブに接していない部分を有するという状態を含む。しかしながら、「離間」はリブ同士が互いに隣接する状態を除外するものではない。
【0033】
本実施の形態において、内側部6には、複数のヒンジ可能面部15が設けられている。ヒンジ可能面部15により、長手方向Lにおけるプラグの圧縮と、内側リブ11および/または外側リブ8の少なくともいずれかの交差方向の移動が容易に実現できる。ヒンジ可能面部15は、図4において破線で示す円によって表されている。本実施の形態において、ヒンジ可能面部15は、2つの隣接する内側リブ11の、向かい合う斜面14によって形成されている。本実施例では、ヒンジ可能面部15は、内側部6に設けられている。内側部には、4つのヒンジ可能面部15が設けられていることがわかる。内側部6に、ヒンジ可能面部15を1つだけ設けることももちろん可能である。しかし、ヒンジ可能面部15の数が増えるほど、プラグ4の長手方向の圧縮が容易になる。さらに、2つの隣接する内側リブ11の対向する斜面14によって、より多くのヒンジ可能面部を設けると、交差方向の移動が容易になる内側リブ11の数が多くなる。ヒンジ可能面部15によって、どのように動的封止が可能となるかは、後述する。ここでは、ヒンジ可能面部15を内側部6に設ける例を示しているが、この代わりに、1つ以上のヒンジ可能面部を外側部7に設けてもよいことを指摘しておく。
【0034】
ここでは、縦部材5についてより詳細に説明する。各内側リブ11は、台形であることが望ましい。内側リブ11はそれぞれ、長手方向Lに延在し、使用中にパイプ2に当接する当接面13を有する。各内側リブ11は、当接面13の両側に、当接面13から離れるように延在する斜面14を有する。各斜面14の坂の部分は、縦部材5の交差方向Tに対して角度γをとり、縦部材5が挿入されると各内側リブ11が実質的に曲がらないように構成されている。挿入動作については、後述する。また、内側リブ11の形と角度γの大きさにより、プラグ4の挿入時に、内側リブがパイプ2の周りを容易に摺動できるといえる。
【0035】
斜面14の傾斜は、傾斜が始まる当接面13から隣接する内側リブ11の斜面14と合流する位置Pまで、実質的に一定である。複数の内側リブ11のうちの1つの内側リブの両側にある斜面14の傾斜は、それぞれ実質的に同じであるが、傾斜が異なるようにすることもできる。2つの隣接する内側リブ11の斜面14は、共同でV字形の溝、すなわちヒンジ可能面を形成する。図示の例では、すべての内側リブ11の斜面は実質的に同じである。角度γは、60〜80度の間、望ましくは65〜77度の間、より望ましくは70〜75度の間である。
【0036】
プラグ4および各縦部材5の一端は、プラグ4または縦部材5が挿入される導管スリーブ3の部分から遠く離れた位置にあたるので、遠端部17と呼んでもよい。プラグ4および各縦部材5の他端は、遠端部に対して、プラグ4または縦部材4が挿入される導管スリーブの部分に近いので、基端部とよんでもよい。
【0037】
外側リブ8は、それぞれ実質的に鋸歯19の形状を有し、基端部18へ向かって上昇する上昇面20を有する。なお、1つの外側リブ8のみ、あるいは、全てではないがいくつかの外側リブ8が鋸歯19の形状を有するようにすることももちろん可能である。この例では、全ての外側リブ8が鋸歯19の形状を有している。鋸歯19の頂点8aに隣接する上昇面20の部分21は、頂点8aから離れて配置された上昇面20の部分22に対して、長手方向Lと角度αをなすレベリング部を備えている。部分21は、使用中に、導管スリーブ3の内壁10に押し付けられる押圧面23として機能する。押圧面23は、長手方向Lに対して角度αをなす。角度αは、頂点8aから離れて配置された上昇面20の部分22と長手方向Lとのなす角度βよりも小さい。角度αは、どのような状況であっても、ゼロよりも大きい。
【0038】
レベリング部21と上昇面20の部分22との交点は、上昇面20から出っ張った屈曲部24を形成する。この例では、平面同士の交点で屈曲部24形成されているが、面同士の向きに関して、面同士がもっとなだらかに接続する場合の交点で屈曲部を形成することも可能である。鋸歯19の降下面25には、頂点8aから比較的離れた位置に部分26が設けられている。部分26は、降下面25の頂点8aに隣接する部分27に対して、基端部18に向かって傾斜するように形成されている。鋸歯19の頂点8aに隣接する降下面25の部分27は、長手方向Lと角度θをなす。角度θは、頂点8aから離れて配置された降下面25の部分26と長手方向Lとがなす角度ωよりも大きい。
【0039】
鋸歯19の頂点8aに隣接する降下面25の部分27と、頂点8aから離れた降下面25の部分26との交点28は、降下面25においてへこんだ屈曲部28を形成する。屈曲部、すなわち交点24は、屈曲部28よりも交差方向において外側に位置する。なお、交点24に対して述べたことは、屈曲部28にも当てはまる。すなわち、降下面20の部分27と部分26とがよりゆるかに合流する場合でも、本実施の形態においては、屈曲と理解する。さらに、鋸歯19のレベリング部を含む上昇面20を設けることなく、降下面25に屈曲部28を有する鋸歯を設けることも可能である。
【0040】
図4にさらに示すように、第1の仮想交差面Aが、外側部7の外側面29および内側部6の当接面13と交差する。外側面29および当接面13は、同じ仮想交差面Aと交差し、長手方向Lにおいて同様の長さを有する。同じ仮想交差面Aと交差する外側面29,および/または当接面13の、長手方向における全長にわたって、外側面29と当接面13は実質的に互いに平行である。
【0041】
図5,6は、縦部材5,そしてプラグ4が、開口に挿入されたときに、どのように導管スリーブ3の内壁10およびパイプ2と協働するかを詳細に示す概略図である。図5は、導管スリーブ3の内壁10の断面図であり、縦部材5によって形成された封止プラグ4を、導管スリーブ3の半分を省略した状態で見た図である。一般に、プラグ4の挿入前に、導管スリーブ3にパイプ2が挿入された状態で、縦部材5をチューブ2の周りにしっかりと装着した後、長手方向Lに沿って導管スリーブ3の内壁10とパイプ2との間のスペース30内に押し込む。
【0042】
各縦部材5は、遠端部17の外側部7に導入リブ31を有するので、挿入が容易である。導入リブ31は、ある外周レベルまで延在する。この外周レベルは、交差方向において、それぞれ他の外側リブ8が延在する外周レベルよりも内側に位置する。
【0043】
長手方向Lにさらに押し込むことで、内側リブ11も導管スリーブ3の内壁10と接触する。とくに、頂点8aと、少なくとも押圧面23の一部が内壁10と接する。この挿入時に発生する摩擦力に抗するために、多くの場合、縦部材、および/または導管スリーブ3のの内壁10,および/またはパイプ2に、例えばワセリン(商標)や軟せっけんといった潤滑剤を塗布することが必要である。とくに、内壁10がコンクリートから製造される場合、潤滑剤は高い摩擦力を減少させる効果的な解決策である。
【0044】
プラグ4および縦部材5は手動で挿入可能であるべきである。しかし、場合によっては、縦部材5から形成される封止プラグ4を、長手方向Lのさらに奥に移動させるために、例えばハンマーが必要になることもある。例えば、木、または硬質プラスチックからなり、スペース30に自由に挿入可能な補助部材を、プラグ4の基端部18を覆うように利用してもよい。これにより、プラグの代わりに、ハンマーで補助部材を長手方向にたたくことができ、プラグ4の縦部材5をハンマーで傷つけてしまうことがない。
【0045】
プラグ4が導管スリーブに完全に挿入されると、少なくとも各押圧面23の一部は、導管スリーブ3の内壁10に押し付けられる。
【0046】
図6は、導管スリーブ3の内壁10の断面を示す。挿入された状態の封止プラグ4も、同じ断面図に示されている。縦部材5の当接面13によって形成された環状接触面12は、破線で示されている。プラグ4は、図5および図6に示すよりももっと奥まで挿入可能なことは明らかである。
【0047】
また、例えば基端部17に作用する高い圧力によって、導管スリーブ3に挿入されたプラグ4が移動しそうになっても、環状接触面9,12の摩擦力によってそのような移動が阻止されることも明らかである。縦部材5から組み立てられた封止プラグ4は、遠端部17にかかる圧力が7barとなるまで移動を阻止できることがわかった。
【0048】
何らかの理論に縛られるわけではないが、本発明による封止システムは、以下に述べるように動的に動作する。本発明において可能な動作を理解するには、図6のイラストが役立つだろう。プラグ4が単一のプラグとして構成される場合、または縦部材5を組み合わせて構成される場合であっても、プラグ4の基端部18と縁端部17が、互いに向かって圧縮されると、ヒンジ可能面部15はこれに反応し、隣接する2つの内側リブ11の対向する斜面14のなす角度が、圧縮前よりも小さくなる。対向する斜面14をそれぞれ有する2つの内側リブ11は、交差方向の内側に作用する力を受ける。その結果、環状接触面12の幅が増大する。ここで、幅は、環状接触面の長手方向の寸法である。これにより、プラグ4とパイプ2の表面とのの間の封止性能が向上する。しかし、パイプ2はへこんでいないため、内側リブ11に対して反力を加える。プラグ4の反応として、外側リブ8が交差方向に、すなわち、本実施例において径方向外側に、押し付けられる。この結果として、押圧面23のより大きな表面積が、導管スリーブ3の内壁10と接触することになる。すなわち、環状接触面9の幅も増加する。この場合も、幅は、環状接触面9の長手方向の寸法のことである。その結果、プラグ4と導管スリーブ3の内壁10との間の封止性能が大きく向上する。
【0049】
長手方向Lのプラグ4の圧縮が止まると、プラグ4は、圧縮前の位置に戻ろうとすることは容易に理解できる。そこで、本システムでは、プラグの遠端部および基端部にかかる圧力が増加したときに、封止一体性を向上することによって、プラグの長手方向の圧縮において動的に反応するようにする。
【0050】
圧縮から解放されても、プラグにはある程度の柔軟性が残っており、振動および衝撃の吸収、およびパイプと導管の内壁にかかる比較的小さな負荷を許容する。
【0051】
図7〜11は、本発明によるシステムの別の実施形態を示す。これらの実施形態において、システムは、さらに、ブロック部材37を備える。ブロック部材37は、使用中にプラグの両端にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグの下流側が、圧力勾配の下流側に移動することを防止する。
【0052】
図7は、本発明によるシステムの一実施の形態を示し、これは、パーティション1のどちら側が危険であるかが分かっているような状況に適している。この状況では、高圧力が発生したとすると、コンパートメントIではなくてコンパートメントIIに発生するものと推測される。このシステムは、使用中にプラグ4の両端17,18にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグ4の下流側端部17が、圧力勾配の下流側に移動することを防止するブロック部材37を有する。すなわち、非常に高い圧力がコンパートメントIIに発生し、コンパートメントIは低圧の場合、プラグ4は基端部18が遠端部17側に移動することによって圧縮される。したがって、コンパートメントIIの圧力が非常に高いときに、プラグは圧縮し、図6を用いて説明したように、環状接触面9,12の作用が高まる。この実施の形態では、ブロック部材37は導管スリーブ3に固定されている。実際、本実施の形態では、ブロック部材37は導管スリーブ3の一部であると考えてもよい。ブロック部材37を導管スリーブ3に溶接してもよいが、導管スリーブ3とブロック部材37をが粉砕プロセス(milling process)を利用して形成されるのが好ましい。導管スリーブ3の内壁は、摩擦係数の低い表面とするのが好ましい。表面を磨いてもよい。これにより、基端部18の縁端部17方向への移動が容易になり、長手方向におけるプラグ4の圧縮が容易になる。本実施の形態において、ブロック部材37は、実質的に環状である。プラグ4の遠端部17に対応するブロック部材37の側面は、少なくとも、プラグ4の遠端部17および導入リブ31の形状に一致するようにしてもよい。さらに、ブロック部材が内径側に延びすぎないことも重要である。これは、パイプ2が導管スリーブ3に挿入された後だけでなく、パイプ2が導管スリーブ3に挿入されているときにも、ブロック部材とパイプ2との接触を避けるためである。ブロック部材37がパイプ2に接触してしまった場合にパイプ2のあらゆる損傷を避けるために、ブロック部材の端部は丸く面取りされている。
【0053】
図8に、本発明によるシステムの別の実施の形態を示す。この実施の形態もまた、どちら側が危険であるか分かっているような状況に適したものである。すなわち、高い圧力がコンパートメントIではなくてコンパートメントIIに発生すると予測される場合である。この実施の形態では、導管スリーブ3とブロック部材37は別々の部品である。導管スリーブ3には、導管スリーブ3の端部から外径側に延びるカラー3aが設けられており、これによって、使用中に、プラグの遠端部17が囲まれる。ブロック部材37が2つの部材を備え、これらが使用中に環状保持リングを形成するようにしてもよい。パイプが挿入された後、リングをパイプ2の周囲に取り付け、例えばボルトとナットを用いてカラー3aに固定することができる。また、環状リング37とカラー3aをそれぞれ穿孔に適切に並べて配置する。ブロック部材が内径側に若干延長可能で、パイプ2に近接可能であるように示されているが、保持リングは、内径方向の長さをもっと小さくすることが好ましい。また、パイプ2に対向する保持リングの端部は、丸く面取りされていることが好ましい。導管スリーブ3が非常に長い、すなわち、プラグ4の長さよりも長いものである場合、ブロック部材37を固定する前に、導管スリーブ3の内壁とパイプ2との間の環状スペースにゴムのスリーブを挿入することが好ましい。このゴムスリーブ(図8には不図示)は、パイプ2を取り囲み、コンパートメントIの圧力に対してコンパートメントIIの圧力が非常に高い場合に、プラグ4の圧縮が起こる前に、プラグ4が導管3の全長にわたって移動する必要がないようにするためのものである。その代わりに、圧縮がすぐに始まり、高応答な動的封止システムとすることができる。封止の完全性の向上を、さらに、図6を用いて説明した機構と組み合わせてもよい。
【0054】
図9に、本発明によるシステムの一実施の形態を示す。これは、パーティション1のどちら側から危険な状況が導管スリーブ3にせまってくるかわからない場合に適したものである。本実施の形態は、特に、パーティション1の両側に発生した火災に対応するのに適している。本システムは2つのプラグ4を備えている。これらの2つのプラグ4のうちの一方は、コンパートメントIから導管スリーブ3に挿入され、他方は、コンパートメントIIから導管スリーブ3に挿入される。本実施の形態では、ブロック部材37が2つのプラグ4の間に配置されている。ここでも、ブロック部材37を、例えば導管スリーブ3の内壁10に溶接された保持リングとすることは可能であるが、図示のように、パーティション1の開口を導管スリーブ3の直径よりも小さくし、導管スリーブ3を、パーティション1に設けられた小さな開口の周囲に、同軸となるように溶接することもできる。パーティション1の一部は、これにより、導管スリーブ3内において、保持リングとして、すなわちブロック部材37として作用する。ここでも、図示のブロック部材は内径側にいくらか大きく延在しているが、ブロック部材の内径方向の長さは、少し短めのほうが好ましい。
【0055】
図10は、本発明によるシステムの一実施の形態を示す。これも、パーティション1のどちら側から危険な状況、例えば火災が導管スリーブ3にせまってくるかわからない場合に適したものである。本システムもまた、ブロック部材37を備えている。このブロック部材37は、図示のように、図8に示す実施の形態において説明したようには、導管スリーブ3に固定可能である。2つのプラグ4の遠端部17の間において導管スリーブ内に閉じ込められる空気の量ができるだけ少ないのが好ましい。これは、導管スリーブ3の長さを、2つのプラグ4の合計の長さよりも若干短くすることで、または、導管スリーブ3内に、ゴムスリーブ(破線で図示)を挿入し、スリーブを2つのプラグ4の間に配置することで、実現できる。プラグ4同士の間の空隙は断熱材として機能する。熱膨張によって空隙内の空気の圧力が増大すると、空隙自体がブロック部材として機能し、基端部18にかかる高圧によってプラグ4の圧縮を容易に発生させることができる。これは熱膨張なしでも起こり得る。とくに、隙間の容量が小さい場合、容量をわずかに低下させることで、空隙内に閉じ込められた空気の圧力が上昇する。この場合、隙間はブロック部材として機能することができる。
【0056】
最後に、図11は、本発明によるシステムの一実施の形態を示しており、導管スリーブ自体が短いものである。本実施の形態では、プラグ4にはそれぞれ、プラグ4の外側から交差方向内側に延在する環状スロットが設けられている。このスロットは、プラグ4の基端部18に最も近い外側リブと、基端部18との間に設けられている。プラグ4の挿入後、この環状スロットには図示のようにブロック部材37が挿入される。ブロック部材はさらに、図8に示す実施の形態において説明したように、導管スリーブ3に固定可能である。
【0057】
導管スリーブに固定可能なブロック部材37は、明らかに、複数の部品から構成されること、または、パイプの一端において、ブロック部材をパイプ周りに摺動することなくパイプ周囲に取り付けることができるような少なくとも1つの部品であることが好ましい。
【0058】
さらなるブロック部材37を、図示のようにプラグ4同士の間に設けてもよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0059】
コンパートメントIIで爆発が起こった場合、図9,図10,および図11に示す実施の形態においては、パーティション全体が長手方向LにおいてコンパートメントIの方向に移動したときに、少なくとも、コンパートメントIに延在もしくは対向する導管スリーブ内のプラグが確実に導管スリーブ内に保持される。図10と図11に示す実施の形態においては、爆発によってパーティション1が長手方向Lのいずれの方向に移動されたとしても、両方のプラグ4が保持される。この特徴的な効果は、動的応答の封止システムを提供するだけでなく、例えば爆発によってパーティション全体が長手方向Lに移動するような状況においても、プラグ4を含む導管スリーブ3が、パーティション1と同時にともに移動することである。
【0060】
縦部材5,すなわちプラグ4の製造に用いる弾性材料は、耐火性能を有することが好ましい。ゴムは、温度上昇の際に膨張するようにしてもよい。シリコンゴムを使用することも可能である。適切なEPDMを利用してもよい。硬さは、例えばショアA硬度70とすることができる。充分な柔軟性があり、EPDMの圧縮性と同程度の圧縮性を有するゴムであればどのようなゴムでも適している。導電性のあるゴムを用いることも可能である。縦部材の製造中に、通常は、これに適した成形型を利用する。このような製造処理自体は、知られている。例えば、射出成形と圧縮成形の両方を使用可能である。ブロック部材は、金属性とすることができるが、ブロック部材を導管スリーブ3に固定可能とする場合は、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、あるいは、ポリエーテルスルホンアミド(PES)のような、硬質プラスチックから製造してもよい。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、複数のパイプが通る導管スリーブを封しするのに適したプラグも可能である。さらに、WO2004/111513,とくに、1つ以上のパイプが通る導管内のスペースを埋めるように設計されたプラグを示した図と、後述する図17を引用する。
【0062】
封止プラグ4は、実質的に筒状にすることが望ましいが、これから逸脱しすることも可能である。したがって、システムを、四角形および/又は長方形の導管スリーブに適したものとすることもできる。多角形の導管スリーブに適した実施の形態も除外されない。他の非円形、例えば楕円形の導管スリーブ用の実施の形態も、可能である。導管スリーブに挿入されるパイプ、ケーブル、およびダクトに関する適性についても同様である。システムを、例えば、使用中に、断面が円形以外のパイプ等を封止プラグで取り巻くように構成することもできる。必要に応じて、当業者は、寸法を調整したり、状況に合わせた寸法設計を行うことができる。
【0063】
ブロック部材を導管スリーブに固定、もしくは固定可能とする方法は、種々の異なるメカニズムを利用することができる。ブロック部材を、溶接により導管スリーブに固定してもよい。しかし、ブロック部材を、導管スリーブと一体化するように固定してもよい。あるいは、マシニングにより単一の金属部品としたり、モールド成形により単一の成形部品としてもよい。ブロック部品37は、例えば、1つ以上のねじを利用したり、ラッチ機構を利用したり、この分野において知られた種々の機械結合によって固定可能とすることができる。
【0064】
本発明の1つの態様は、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供する。図12〜16を用いて説明する。この実施の形態において、システムは、開口内もしくは開口上に、密封的に固定(不図示)もしくは固定可能なフレーム100を備える。どのようにフレームを開口内もしくは開口上に固定するかは、後述する。フレーム100は、基本的に複数の導管203を有する。上述したように、図1,5〜11は、導管3として単一の導管スリーブ3を有する形態を示している。これらの図面は、フレーム100も示している。しかし、これらの図面に示されたフレームは、それぞれ、単一の導管スリーブ3のみを備えている。したがって、これらのフレームはそれぞれ、単一の導管を有する。
【0065】
この明細書の図面において示される各導管は、複数のケーブル、パイプまたはダクト2のうちの少なくとも1つが挿入されるのに適している。各導管は、さらに、導管の内周壁10と、導管を通るケーブル、パイプ、またはダクト2との間のスペース30を密封的に埋めるための弾性変形可能なプラグ4が挿入されるのに適している。図12〜16に示すシステムは、各導管203内において、導管203に挿入されたプラグ4の一端が移動することを防止するための少なくとも1つのブロック部材37を備えている。
【0066】
図13は、図12に示す矢印V方向からみたI−I断面図を示す。ブロック部材37が、それぞれフレーム100に固定されていることがわかる。実際に、図12,13に示す形態において、各ブロック部材37は、フレーム100に一体的に接続されている。ブロック部材37はそれぞれ、導管103のいずれか1つの中に固定されている。図12〜16に示す実施の形態は、単一の材料ブロックから導管203をマシニングすることで実現できる。導管203は、ブロックの一端に向かって、ブロックの他端よりもはるかに細い。導管203の直径を減少させることで、ブロック部材37が形成される。図13において、導管203の直径を、「D」として破線で示す。ブロック部材37の位置における導管203の直径は、「d」として破線で示す。本実施の形態では、フレーム100とブロック部材37は、単一の部品から構成される。
【0067】
各導管スリーブ3の内周壁10は、例えば適切な粉砕プロセス(milling process)によって形成される摩擦係数の低い面とすることが好ましい。これにより、プラグ4の挿入が容易になるとともに、上述したように、プラグ4の基端部に突然高い圧力がかかった場合のプラグ4の応答性を高めることができる。
【0068】
図12〜16に示す実施の形態において、フレーム100と全てのブロック部材37は、1つの部品として形成されている。このフレームがマシニングにより形成される材料ブロックは、鉄鋼またはアルミニウムであることが好ましい。これにより、フレーム100を、例えばパーティションのような同様の対応材料に溶接することが可能となる。フレーム100を鉄鋼またはアルミニウムの構成(建築)部材(不図示)に溶接するために、図16に破線で示すようにフレームにフランジFを設けてもよい。フランジによって、溶接中、または溶接後に発生する熱的ストレスを収める緩衝ゾーンZが設けられ、導管203の大幅な寸法の変化を避けることができる。しかし、溶接処理によって影響を受けるフレーム100の位置から比較的離れた位置にブロック部材37を設置することで、緩衝ゾーンを設けることも可能である。図15に概略的に示す実施の形態においては、リング状のブロック部材37を、フレーム100がパーティションに対して溶接される位置Pから離れた位置に配置している。また、図13に示すように、緩衝ゾーンZをブロック部材37自体によって設けることももちろん可能である。交差方向に関しても、フランジFを用いて、あるいは用いずに、フレーム100に緩衝ゾーンZを設けてもよい。これに関して、2個の隣接した導管の間のフレームの最小厚さ「t」は、外側面104と直近の導管203との間に位置する材料Tの最小厚さよりも薄い。
【0069】
また、フランジFの設置は、フレームを、開口を取り囲むパーティションの一部にボルトで取り付けるのが好ましいような場合にも、適している。さらに、フランジFなしではフレームによってカバーできないような寸法の開口に対しても、フランジFは適している。ボルトを利用する場合は、当該分野において知られているように、封止ガスケットを利用する。
【0070】
図12〜14においては、フレーム100が16個の導管203を備えているが、導管203の数はこれには限定されない。図15、16は、それぞれ4個と9個の導管203を備えるフレーム100を示している。フレーム100の形状は種々の適切な形状とすることができ、四角形には限定されず、細長い形状としたり、例えば丸や六角形としてもよい。多くの場合、長方形のフレームが最も適していると考えられる。導管203を行列状に並べるのが最も便利かもしれないが、フレーム100内に導管203を密集して配置する蜂の巣(亀甲模様)状や別の形状を採用することも考えられる。当業者には、最適な配置が容易に見つけられるだろう。フレームの強度、および各導管に作用する可能性のある圧力といった要素は、フレームの重さも含めて、フレームの最適なデザインを実現するための基準となる。使用に際しては、導管からとび出たプラグの交差方向のサイズを考慮する必要がないように、各導管はプラグの全体を受け入れることが好ましい。
【0071】
図12〜16においては、各フレームが同様のサイズの導管203を備えているが、導管203を異なるサイズとすることも可能である。さらに、全ての導管203の断面を円形とする必要もなく、別の断面形状とすることも可能である。図16に示すように、プラグ4は、導管203の内壁10と導管203内に延在する複数のパイプ2の間のスペース30を塞ぐのに適している。3つの部分からなるプラグ4の一例を図17に示す。
【0072】
フレーム100の全ての導管203内に、最初から1つ以上のパイプを延在させる必要はない。フレーム100を十分に大きく、比較的多数の導管203を備えるようにすることが可能であって、実際は、フレーム100を設置するときに、直ちに必要となるものである。いくつかの導管203に、いわゆる閉止プラグ101を設け、少なくとも一時的にケーブル、パイプ、またはダクトが延在していない導管203を封止するように塞ぐことが可能である。新たなケーブルをフレームに挿入する必要があるとき、あるいはケーブルを取り除く必要があるときに、封止された接続部全体を取り外す必要がない。他の導管の封止状態を乱すことなく、1つ以上の導管203に対してのみ作業を行うことができる。
【0073】
図1および図5〜11に示した1つの導管203を有するシステムについて説明した全ての事項は、2個以上の導管203を備えるフレーム100にも同様に適用される。したがって、ブロック部材37は、システムに対して独立した部分とすることができ、フレーム100に対して固定可能としてもよい。ブロック部材は、例えば、硬い材料からなる板であって、板が固定されるフレーム100の各導管203の直径よりも小さい直径をそれぞれ有する複数の貫通部(recess)を備えるようにしてもよい。板の固定は、例えば、ねじと、フレーム100の所定の位置に設けられたねじ穴とを用いてもよい。
【0074】
システムは、1つ以上の導管203を有するフレーム100を備えているが、各導管203において、プラグ4の両端が、プラグ4が挿入された導管203に対して、同時かつ同様に移動することを防止するために、追加ブロック部材を備えるように構成してもよい。通常、望ましくは、追加ブロック部材37はフレーム100に対して固定可能である。
【0075】
システムは、複数の導管スリーブ3のうちの1つにぴったりと密封的に挿入可能であって、弾性変形可能なプラグ4を備えてもよい。各導管3は、例えば図13に破線の矢印102で示すように、プラグ4の全体が挿入されるのに適した長さを有することが好ましい。図9,10,および11に示すように、各導管は、互いに軸方向に隣接する、すなわち、長手方向に並んだ2つのプラグを収容するのに適した長さとしてもよい。これは、図12〜16を参照して説明したフレーム100にも同様に適用される。
【0076】
フレーム100が複数の導管203を有する場合に、ブロック部材37の少なくとも一部は、対応する導管203内に配置され、ブロック部材37の両側において、導管203がプラグ全体を収容するのに適した長さを持つように構成してもよい。導管3がプラグの全体を収容するのに適している場合、プラグの基端部は、フレーム100の前面と同一面となるようにしてもよい。上述したような種々のプラグ4を、適したプラグとしてもよい。
【0077】
すべての導管203が同じであることが理想的である。この場合、各プラグ4の、少なくとも外径に関する寸法も同一とする。
【0078】
最後に、上述したように、フレームは金属製とすることができるが、その代わりに、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、または、ポリエーテルスルホンアミド(PES)を含む硬質プラスチックなどのエンジニアリングプラスチックから製造してもよい。フレームを、例えば海岸における建設作業に用い、当該分野においてよく知られた適切な封止道具を用いて、コンクリート壁に設けられた開口内、もしくは開口上に設置することができる。また、フランジF付きの実施の形態も、エンジニアリングプラスチックから製造してもよい。この場合、フランジは、好ましくはガスケットを用いて、フレームをパーティション用の建設材料にボルトで固定する場合に適している。
【0079】
上記説明から明らかなように、本発明によるシステムには、締付け部材が不要である。プラグは、プラグの一端または両端から作用する圧力の増加により、締め付けられるように設置される。しかし、プラグを締め付けるだけのための要素を用いる代わりに、プラグおよびシステム全体として封止しようとしている媒体(例えばガスや流体)によって増加する圧力を用いて、締め付けを行うことも考えられる。
【0080】
これらの全ての変形例も、添付の特許請求の範囲に定義された発明の範囲内に属すると理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供するシステムに関する。
【0002】
本発明は、導管スリーブを介して少なくとも1つのパイプ、ケーブルまたはダクトが挿入される開口を封止するシステムに関する。導管スリーブは、開口の周囲にぴったりと密封するように固定され、または、開口に一致している。
【背景技術】
【0003】
開口は、床、デッキ、壁またはパーティションに設けられた管状の通路を含む。あるいは、別のチューブが少なくとも部分的に挿入されるチューブも開口に含まれる。
【0004】
上述したようなシステムは例えば、流体が両方のチューブを通して流れることができるように、それぞれ異なる直径を有し、互いに接続された2つのチューブに用いられる。一方のチューブは、例えば、家庭用機器の接続部を形成し、主線もしくはその支線を形成すチューブよりも直径が小さい。これらのチューブは、例えば、水、ガス、油、液体、化学物質などを輸送するのに使用される。本発明に係るシステムにより、チューブ同士の間に位置するスペースを封止する。
【0005】
また、互いに接続されたこれらのチューブ内に、例えば、電話、電気、およびテレビ用のケーブルを通すこともできる。あるいは、グラスファイバーケーブルと保護チューブとの間のシーリングとしてシステムを利用することも可能である。また、このようなシステムを建物の壁、とくに、構造壁および床だけでなく、天井や屋根に使用してもよい。この場合、「無プラスチックチューブ部分(lost plastic tube parts)」により、流し込まれたコンクリート中に、水、ガス、またはケーブル用のチューブを通すための通路が開口されている。もちろん、ボーリングによりコンクリートの基礎に通路を設けてもよい。ダクトと「無チューブ部分」または穿孔の内壁との間のスペースは、後に、本発明に係るシステムによって封止できる。
【0006】
さらに、本発明に係るシステムは、新しい建物、船、および海洋設備の建設、および/または、保守に利用することもできる。一般的には、これらの建設の際、各セクションは、予め決められた計画に沿って、船の場合は造船所のドックで、プレハブのパーティションを設置して形成される。パーティションを設置する前であっても、例えば溶接によりパーティションに貫通チューブを設けることができる。貫通チューブは、上述した導管スリーブであってもよい。貫通チューブにダクトを通した後、貫通チューブの内壁と挿入されたダクトとの間のスペースを、本発明に係るシステムによって封止することができる。貫通チューブと、それに挿入されたダクト、ケーブル、またはチューブを、それぞれ異なる金属含有材料から製造することが可能である。これは、貫通チューブとそれに挿入されるダクト、ケーブルまたはチューブとの接触がなく、少なくとも実質的に電解腐食が発生しないためである。
【0007】
導管スリーブとチューブまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを、以下では、単に「スペース」と呼ぶこともある。
【0008】
GB2186442には、ケーブルおよびパイプの接続システムが開示されている。このシステムは、開口を備える金属のフレームを備え、開口は、貫通ブロックとブランキングブロックで埋められている。貫通ブロックは、2つのハーフブロックからなり、これらのブロックが一体となって、パイプ、ケーブルまたはダクトを挿入可能な開口を有するブロックを形成する。すなわち、貫通ブロックの2つの部材が、パイプ、ケーブルまたはダクトを囲むことができる。各パイプ、ケーブルまたはダクトは、このようにして少なくとも2ブロックによって囲まれる。開口の残りのスペースはブランクブロックでふさがれる。これにより、導管スリーブ、ここでは、金属フレーム、の内壁と、導管スリーブ、すなわち金属フレーム内に延在するパイプ、ダクトまたはケーブルとの間のスペースは、ブロックでふさがれる。支持板をブロックの各層の間に配置することもできる。その後、組み立てられたブロックに圧力をかけて、ケーブル、パイプまたはダクト周囲のブロックを圧縮することで、ケーブル、パイプまたはダクト周囲の貫通ブロックを封止するとともに、これらを一緒に締め付け、また、フレームすなわち導管スリーブの側壁および支持板に対して押し付けている。このため、システムは圧縮および梱包システムも含む。ナットまたは圧縮ボルトの締め付けを要するシステムによって、圧力をかけることができる。圧縮に必要な力は非常に高く、その一部はダクトパイプまたはケーブルに、多くの場合、静力学的に、伝達される。このシステムでは、積み重ねられた複数のブロックに均等に荷重を分配することができない。実際に、ダクトパイプまたはケーブルに荷重の一部がかかることで、均等な分配が妨げられる。ダクトパイプまたはダクトのせいで小さな圧縮しかかけられなかったブロックは、容易に外れてしまう。別の問題として、ゴムの不可逆変形により接続システムの柔軟性が低下することがある。これにより、システムの一部が突然はるかに高い圧力にさらされて悪影響を及ぼすことがある。
【0009】
設置が難しく、時間とコストがかかり、在庫管理に多大な手間がかかるシステムであること以外にも、このシステムは、長期的に満足の得られる機能を果たさない。ゴムは、よく加硫したゴムであっても、時間がたつにつれて自然な緩和が発生する。ゴムが適切に飽和状態にされていない、または、加硫されていないときにも、化学緩和が発生する。これにより、全体的なゴムの緩和が進む。この結果、GB2186442に開示された圧縮梱包システムでは、圧縮ボルトまたはナットを、頻繁に締め直す必要がある。更なる問題は、温度変化によって、熱膨張または収縮の影響により、圧縮ボルトの緩みまたは締め付けすぎが発生し、封止効果の低下、あるいは、ゴムの不可逆変形を引き起こす。
【0010】
とくに、プラスチックブレードを備えたプラスチックパイプまたはケーブルが金属フレーム、すなわち導管スリーブ内に延在している場合、これらのチューブまたはケーブルの外側面は、径方向内側の圧力を受け、これらのパイプの外径は、「クリープ」と呼ばれる現象によって減少することがある。これが発生すると、物理的な現象であるクリープと、緩和の両方によって、圧縮ゴムブロックと径方向に圧縮されたプラスチックパイプによって機能していたシーリングの性能が低下するため、圧縮梱包ステムにおいて圧縮ボルトとナットの締め直しを一層頻繁に行う必要がでてくる。しかし、圧縮ボルトおよび/またはナットをどれほど頻繁に締め直しても、締め直しの直後から、ゴムの緩和およびプラスチックパイプのクリープの現象が発生し続けるので、封止性能はすぐに、一層悪化する。
【0011】
世界最大かつ最新の海上石油プラントであるサンダーホースは、ハリケーン「デニス」がメキシコ湾を通過した後、20〜30度程度傾いてることがわかった。この傾斜について最終的な報告はまだなされていないが、初期調査は、GB2186442と同様のシステムを利用したマルチケーブル接続部を介して、スペース間での水の移動が起こっていたことを指摘している。
【0012】
導管を通るパイプの周囲の導管スリープに、ゴムリングを同軸に設けたシステムが知られている。ゴムリングは、鋼製のリング状板の間で圧縮される。これにより、径方向の力が全角度方向に均等に作用するように構成することができる。ただし、ゴムの緩和の問題、および、プラスチックパイプの場合はクリープの問題によって、圧縮鋼板を頻繁に締め直す必要がある。
【0013】
WO2004/111513には、導管スリーブの内壁と、スリーブ内に延在するパイプ、ケーブル、またはダクトとの間のスペースに挿入される、弾性変形可能な材料から形成されたシステム、より具体的にはプラグが開示されている。プラグは、スペースに挿入される封止プラグを形成する2つの縦部材を有する。縦部材のそれぞれの外側部は、使用中に環状接触面となる長手方向に離間した複数の外側リブを有し、これらの環状接触面は、封止プラグと開口の内壁との間を周方向に塞ぐ。さらに、縦部材にはそれぞれ、内側に、使用中に環状接触面となる複数の内側リブを有し、これらの環状接触面は、封止プラグと開口内に延在するパイプ、ケーブルまたはダクトとの間を周方向に塞ぐ。縦部材はそれぞれ、開口の外側端部に対向して配置される外側カラーを有する。プラグが組み立てられると、これらのカラーはフランジの一部を構成し、フランジには縦部材を挿入するための力がかけられる。フランジは、開口の外側端部に対向するように設計されている。開口の外側端部は、このように、フランジでカバーされている。フランジによって、均一な挿入を確実に行うことができ、縦部材の外側リブは並んで管状接触面を形成し、内側リブは並んで管状接触面を形成する。
【0014】
このシーリングシステムの利点は、挿入が非常に簡単であるということである。また、縦部材にグリースを塗布すると、手動でも挿入することができる。更なる利点は、非常に高い圧力がフランジに作用したとしても、プラグが導管スリーブすなわち開口の中に押し込まれることがほとんどないということである。すなわち、このシーリングシステムは、非常に高い圧が、開口すなわち導管に最初に挿入される側のプラグに作用したとしても、封止性能を保つことができるということである。最初に挿入される側のプラグの端部に非常に高い圧力が作用した後、プラグが導管スリーブすなわち開口から押しだされる可能性がある。別の利点は、リブによってシーリングシステムにある程度の柔軟性がもたらされ、締め直しが不要となることである。ゴムが緩和しても、リブによる環状接触面は維持され、封止作用が維持される。これにより、開口すなわち導管スリーブ内に延在するプラスチックパイプの直径を小さくするクリープ現象も発生しにくくなる。このように、クリープ自体は発生しにくくなるが、導管スリーブ内に延在するプラスチックパイプに作用する実際の径方向の負荷は、ゴムの緩和によって時間がたつにつれて低下するので、クリープが発生する可能性が高まるのではなくて、低下する。
【0015】
WO2004/111513A1に開示されたシステムは、満足できるレベルで動作するものであるが、シーリングシステムの一端側に作用する圧力が突然増大した場合でも封止効果を維持する必要性を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これに対応することが、本発明の第1の目的である。
【0017】
第1の目的を達成するとともに、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供するのに適したシステムを提供することが、第2の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の目的は、以下のシステムを提供することによって達成される。すなわち、システムは、少なくとも1本のパイプ、ケーブルまたはダクトが通る開口を、開口の周囲にぴったりと密封するように固定された、または開口に一致した導管スリーブを介して動的に封止する。システムは、少なくとも、導管スリーブ内にぴったりと密封するように挿入可能であって、弾性変形可能なプラグを備える。プラグは、外側部と内側部の2つの端面を有する。各端面は、当該端面を導管スリーブへ取り付けられるような寸法を有する。外側部は、プラグと導管スリーブの内周壁との間において環状接触面となる、プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の外側リブを備える。内側部は、プラグと少なくとも1本のパイプ、ケーブル、またはダクトとの間において環状接触面となる、プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の内側リブを備える。内側部および/または外側部には、長手方向におけるプラグの圧縮と、内側リブおよび外側リブの少なくとも一方の交差方向の移動を容易にする少なくとも1つのヒンジ可能面部が設けられている。
【0019】
各端面は、当該端面を導管スリーブ内に取り付けられるような寸法を有し、プラグの全体がスリーブ内に挿入される。プラグの一端部に非常に高い圧力がかけられたとき、その端部はまず、他端側へ押し付けられる。ヒンジ可能面部は、プラグの長手方向の圧縮を容易にする。圧縮が起きると、少なくとも内側リブまたは外側リブの交差方向の移動により、封止性能を実際、確実に向上させることができる。封止プラグの一端部に高い圧力が作用すると、導管の内壁と、導管スリーブを通るパイプ、ケーブルまたはダクトとの間のスペースにおいて封止がさらに高まる。すなわち、動的な封止動作が開始される。
【0020】
なお、本システムは、導管スリーブを介して開口を通るプラスチックパイプに継続的に高い圧力をかけるものではない。プラグの一方の端部に非常に高い圧力がかかったときのみ、非常に高い径方向の圧力が発生する。その結果、プラスチックパイプに大きなクリープが発生することがほとんどなくなる。
【0021】
本発明によるシステムの一実施の形態において、ヒンジ可能面部は、2つの隣接するリブの、向かい合う斜面によって形成される。この実施の形態では、プラグが長手方向に圧縮されると、少なくとも2つのリブが交差方向に容易に移動するようになる。さらに、縦の長さに対してリブの数を大きくすることができる。2つの隣接するリブの組のそれぞれについて、ヒンジ可能面部を設けることも可能である。すなわち、プラグの縦の長さを非常に効率的に利用することができる。これにより、挿入後に、プラグの一端に圧力波を作用することなく、全体的な封止性能を向上させることができ、さらに、プラグの一端に圧力波を作用させるとさらに一層向上させることができる。
【0022】
本発明によるシステムの一実施の形態は、さらに、使用中にプラグの両端にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグの下流側の端部が、圧力勾配の下流側に移動することを防止するためのブロック部材を備える。これにより、挿入を均等にしてリブを整列させ、環状接触面が確実に正しく形成されるようにできるだけでなく、プラグ全体が導管スリーブ内において外圧の勾配に対して下流側に移動することなく、プラグを確実に圧縮することができる。これにより、さらに、封止性能の向上が容易になる。このシステムは、例えば突然水中に沈んだり、爆発、ハリケーンまたは津波が発生したときでさえも、それによる衝撃に絶えることができる。実験により、プラグの両端の圧力差が15bar(水面下150mにおける圧力に相当)となるまで、プラグの封止完全性を維持することがわかった。
【0023】
これは、本発明によるシステムの一実施の形態において、とくに、上述したプラグが2つ、導管スリーブ内に配置され、ブロック部材がこれらの2つのプラグの間に配置されるものに適用される。この場合、システムは、外圧の勾配の発生する方向に拘わらず、動的に封止を行うことができる。いずれの状況でも、1つのプラグが圧縮されることで、その封止用の接触面が増大し、通常の接触面に対して高い負荷をかけられる。その結果、全体的な封止作用が大きく向上する。
【0024】
本発明によるシステムの一実施の形態において、使用中に導管に対して、外圧の勾配の下流側にプラグの両端が同時かつ同様に移動することを防止するために、少なくとも2つのブロック部材を備えるものもまた、これらの効果を有する。圧力勾配の方向にかかわらず、常にプラグが圧縮され、その封止機能が向上する。
【0025】
本発明はさらに、上述したプラグと導管スリーブを有する接続システムに関する。
【0026】
本発明はさらに、導管スリーブにおける、導管スリーブと、導管スリーブ内に延在するパイプ、チューブまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを封止する方法に関する。
【0027】
第2の目的は、独立請求項1の主題よって達成される。
【0028】
図面を参照して、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるシステムの概略斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材の概略斜視図をに示す。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材を概略的に示す。
【図4】図4は、図3に示す一実施の形態によるシステムの縦部材の概略断面図である。
【図5】図5は、図3に示す縦部材によって組み立てられたプラグが、導管スリーブと、導管スリーブ内に挿入される1本のパイプ、ケーブル、またはダクトとの間のスペースに挿入された状態を概略的に示す。
【図6】図6は、図3に示す縦部材が、図5に示すスペースに挿入された状態における概略断面図を示す。
【図7】図7は、本発明によるシステムの更なる実施の形態を概略的に示す。
【図8】図8は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図9】図9は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図10】図10は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図11】図11は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態を概略的に示す。
【図12】図12は、本発明のさらなる実施の形態におけるシステムの上面概略図を示す。
【図13】図13は、図12のI-I断面を矢印V方向からみた概略図を示す。
【図14】図14は、図12に上面図を示した実施の形態の概略斜視図を示す。
【図15】図15は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態の概略斜視図を示す。
【図16】図16は、本発明によるシステムのさらなる実施の形態の概略斜視図を示す。
【図17】図17は、本発明の一実施の形態におけるシステムの一部を示す概略斜視図である。
【図18】図18は、本発明の一実施の形態におけるシステムの一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同様の部分には同様の参照符号を付している。
【0031】
図1は、簡単のために一部を切り欠いた状態のパーティション1を示す。パーティション1は、2つのコンパートメントI、IIに分割されている。パーティション1は、パイプ2が延在する開口を備えている。本明細書において、以下に「パイプ」と記載する場合、パイプはダクトまたはケーブルでもよい。導管スリーブ3は、開口に一致している。または、導管スリーブ3が開口の周囲にぴったりと、密封的に固定されていると理解することもできる。一般に、導管スリーブは、1本以上のケーブル、パイプまたはダクトが挿入されるのに適した導管の一例である。導管は、さらに、導管の内周壁と、その中に延在するパイプ、ケーブルまたはダクトとの間のスペースを密封的に満たす弾性変形可能なプラグが挿入されるのに適している。システムは、図1に示すように、導管スリーブ3内にぴったりと密封的に挿入可能な弾性変形可能なプラグ4を備えている。パーティション1は鉄鋼壁としてもよい。導管スリーブ3は、鉄鋼から製造されてもよく、実際に、鋼管としてもよい。鋼管を、パーティション1の開口内に溶接してもよい。パイプ2を導管スリーブ3内に通す前に、プラグ4を導管スリーブ3内に挿入できるように、プラグ4を単一の部材から構成してもよい。しかし、多くの場合、少なくとも2つ部分に分かれた縦部材5を組み立てたものをプラグ4とする。この場合、プラグ4の挿入前に、パイプ2が導管スリーブ3に通されるときに、プラグ4も形成して挿入することができる。図1において、プラグ4の2つの部分からなる縦部材5を、破線で示している。プラグ4の縦部材5の1つの斜視図を図2に示す。
【0032】
図3は、本発明の一実施の形態によるシステムの縦部材5の内側を概略的に示す。縦部材5を2つ組み合わせることで、1つのプラグ4を形成することができる。図3の上部UPと下部LPは、縦部材5の長手方向Lに沿った断面に対応している。図3の上部UPの断面の拡大図を、図4に示す。縦部材5には、外側部7が設けられている。外側部7は、プラグ5と導管スリーブ3の内周壁10との間において環状接触面9(図5参照)となる、プラグ4の長手方向に離間した複数の外側リブ8を有し、これらの外側リブ8は、頂点8aを有する。内側部6は、プラグ4とパイプ2との間において環状接触面12となる、プラグ4の長手方向に離間した複数の内側リブ11を有し、これらの内側リブ11は、頂点11aを有する。「離間」とは、リブが隣接するリブに接していない部分を有するという状態を含む。しかしながら、「離間」はリブ同士が互いに隣接する状態を除外するものではない。
【0033】
本実施の形態において、内側部6には、複数のヒンジ可能面部15が設けられている。ヒンジ可能面部15により、長手方向Lにおけるプラグの圧縮と、内側リブ11および/または外側リブ8の少なくともいずれかの交差方向の移動が容易に実現できる。ヒンジ可能面部15は、図4において破線で示す円によって表されている。本実施の形態において、ヒンジ可能面部15は、2つの隣接する内側リブ11の、向かい合う斜面14によって形成されている。本実施例では、ヒンジ可能面部15は、内側部6に設けられている。内側部には、4つのヒンジ可能面部15が設けられていることがわかる。内側部6に、ヒンジ可能面部15を1つだけ設けることももちろん可能である。しかし、ヒンジ可能面部15の数が増えるほど、プラグ4の長手方向の圧縮が容易になる。さらに、2つの隣接する内側リブ11の対向する斜面14によって、より多くのヒンジ可能面部を設けると、交差方向の移動が容易になる内側リブ11の数が多くなる。ヒンジ可能面部15によって、どのように動的封止が可能となるかは、後述する。ここでは、ヒンジ可能面部15を内側部6に設ける例を示しているが、この代わりに、1つ以上のヒンジ可能面部を外側部7に設けてもよいことを指摘しておく。
【0034】
ここでは、縦部材5についてより詳細に説明する。各内側リブ11は、台形であることが望ましい。内側リブ11はそれぞれ、長手方向Lに延在し、使用中にパイプ2に当接する当接面13を有する。各内側リブ11は、当接面13の両側に、当接面13から離れるように延在する斜面14を有する。各斜面14の坂の部分は、縦部材5の交差方向Tに対して角度γをとり、縦部材5が挿入されると各内側リブ11が実質的に曲がらないように構成されている。挿入動作については、後述する。また、内側リブ11の形と角度γの大きさにより、プラグ4の挿入時に、内側リブがパイプ2の周りを容易に摺動できるといえる。
【0035】
斜面14の傾斜は、傾斜が始まる当接面13から隣接する内側リブ11の斜面14と合流する位置Pまで、実質的に一定である。複数の内側リブ11のうちの1つの内側リブの両側にある斜面14の傾斜は、それぞれ実質的に同じであるが、傾斜が異なるようにすることもできる。2つの隣接する内側リブ11の斜面14は、共同でV字形の溝、すなわちヒンジ可能面を形成する。図示の例では、すべての内側リブ11の斜面は実質的に同じである。角度γは、60〜80度の間、望ましくは65〜77度の間、より望ましくは70〜75度の間である。
【0036】
プラグ4および各縦部材5の一端は、プラグ4または縦部材5が挿入される導管スリーブ3の部分から遠く離れた位置にあたるので、遠端部17と呼んでもよい。プラグ4および各縦部材5の他端は、遠端部に対して、プラグ4または縦部材4が挿入される導管スリーブの部分に近いので、基端部とよんでもよい。
【0037】
外側リブ8は、それぞれ実質的に鋸歯19の形状を有し、基端部18へ向かって上昇する上昇面20を有する。なお、1つの外側リブ8のみ、あるいは、全てではないがいくつかの外側リブ8が鋸歯19の形状を有するようにすることももちろん可能である。この例では、全ての外側リブ8が鋸歯19の形状を有している。鋸歯19の頂点8aに隣接する上昇面20の部分21は、頂点8aから離れて配置された上昇面20の部分22に対して、長手方向Lと角度αをなすレベリング部を備えている。部分21は、使用中に、導管スリーブ3の内壁10に押し付けられる押圧面23として機能する。押圧面23は、長手方向Lに対して角度αをなす。角度αは、頂点8aから離れて配置された上昇面20の部分22と長手方向Lとのなす角度βよりも小さい。角度αは、どのような状況であっても、ゼロよりも大きい。
【0038】
レベリング部21と上昇面20の部分22との交点は、上昇面20から出っ張った屈曲部24を形成する。この例では、平面同士の交点で屈曲部24形成されているが、面同士の向きに関して、面同士がもっとなだらかに接続する場合の交点で屈曲部を形成することも可能である。鋸歯19の降下面25には、頂点8aから比較的離れた位置に部分26が設けられている。部分26は、降下面25の頂点8aに隣接する部分27に対して、基端部18に向かって傾斜するように形成されている。鋸歯19の頂点8aに隣接する降下面25の部分27は、長手方向Lと角度θをなす。角度θは、頂点8aから離れて配置された降下面25の部分26と長手方向Lとがなす角度ωよりも大きい。
【0039】
鋸歯19の頂点8aに隣接する降下面25の部分27と、頂点8aから離れた降下面25の部分26との交点28は、降下面25においてへこんだ屈曲部28を形成する。屈曲部、すなわち交点24は、屈曲部28よりも交差方向において外側に位置する。なお、交点24に対して述べたことは、屈曲部28にも当てはまる。すなわち、降下面20の部分27と部分26とがよりゆるかに合流する場合でも、本実施の形態においては、屈曲と理解する。さらに、鋸歯19のレベリング部を含む上昇面20を設けることなく、降下面25に屈曲部28を有する鋸歯を設けることも可能である。
【0040】
図4にさらに示すように、第1の仮想交差面Aが、外側部7の外側面29および内側部6の当接面13と交差する。外側面29および当接面13は、同じ仮想交差面Aと交差し、長手方向Lにおいて同様の長さを有する。同じ仮想交差面Aと交差する外側面29,および/または当接面13の、長手方向における全長にわたって、外側面29と当接面13は実質的に互いに平行である。
【0041】
図5,6は、縦部材5,そしてプラグ4が、開口に挿入されたときに、どのように導管スリーブ3の内壁10およびパイプ2と協働するかを詳細に示す概略図である。図5は、導管スリーブ3の内壁10の断面図であり、縦部材5によって形成された封止プラグ4を、導管スリーブ3の半分を省略した状態で見た図である。一般に、プラグ4の挿入前に、導管スリーブ3にパイプ2が挿入された状態で、縦部材5をチューブ2の周りにしっかりと装着した後、長手方向Lに沿って導管スリーブ3の内壁10とパイプ2との間のスペース30内に押し込む。
【0042】
各縦部材5は、遠端部17の外側部7に導入リブ31を有するので、挿入が容易である。導入リブ31は、ある外周レベルまで延在する。この外周レベルは、交差方向において、それぞれ他の外側リブ8が延在する外周レベルよりも内側に位置する。
【0043】
長手方向Lにさらに押し込むことで、内側リブ11も導管スリーブ3の内壁10と接触する。とくに、頂点8aと、少なくとも押圧面23の一部が内壁10と接する。この挿入時に発生する摩擦力に抗するために、多くの場合、縦部材、および/または導管スリーブ3のの内壁10,および/またはパイプ2に、例えばワセリン(商標)や軟せっけんといった潤滑剤を塗布することが必要である。とくに、内壁10がコンクリートから製造される場合、潤滑剤は高い摩擦力を減少させる効果的な解決策である。
【0044】
プラグ4および縦部材5は手動で挿入可能であるべきである。しかし、場合によっては、縦部材5から形成される封止プラグ4を、長手方向Lのさらに奥に移動させるために、例えばハンマーが必要になることもある。例えば、木、または硬質プラスチックからなり、スペース30に自由に挿入可能な補助部材を、プラグ4の基端部18を覆うように利用してもよい。これにより、プラグの代わりに、ハンマーで補助部材を長手方向にたたくことができ、プラグ4の縦部材5をハンマーで傷つけてしまうことがない。
【0045】
プラグ4が導管スリーブに完全に挿入されると、少なくとも各押圧面23の一部は、導管スリーブ3の内壁10に押し付けられる。
【0046】
図6は、導管スリーブ3の内壁10の断面を示す。挿入された状態の封止プラグ4も、同じ断面図に示されている。縦部材5の当接面13によって形成された環状接触面12は、破線で示されている。プラグ4は、図5および図6に示すよりももっと奥まで挿入可能なことは明らかである。
【0047】
また、例えば基端部17に作用する高い圧力によって、導管スリーブ3に挿入されたプラグ4が移動しそうになっても、環状接触面9,12の摩擦力によってそのような移動が阻止されることも明らかである。縦部材5から組み立てられた封止プラグ4は、遠端部17にかかる圧力が7barとなるまで移動を阻止できることがわかった。
【0048】
何らかの理論に縛られるわけではないが、本発明による封止システムは、以下に述べるように動的に動作する。本発明において可能な動作を理解するには、図6のイラストが役立つだろう。プラグ4が単一のプラグとして構成される場合、または縦部材5を組み合わせて構成される場合であっても、プラグ4の基端部18と縁端部17が、互いに向かって圧縮されると、ヒンジ可能面部15はこれに反応し、隣接する2つの内側リブ11の対向する斜面14のなす角度が、圧縮前よりも小さくなる。対向する斜面14をそれぞれ有する2つの内側リブ11は、交差方向の内側に作用する力を受ける。その結果、環状接触面12の幅が増大する。ここで、幅は、環状接触面の長手方向の寸法である。これにより、プラグ4とパイプ2の表面とのの間の封止性能が向上する。しかし、パイプ2はへこんでいないため、内側リブ11に対して反力を加える。プラグ4の反応として、外側リブ8が交差方向に、すなわち、本実施例において径方向外側に、押し付けられる。この結果として、押圧面23のより大きな表面積が、導管スリーブ3の内壁10と接触することになる。すなわち、環状接触面9の幅も増加する。この場合も、幅は、環状接触面9の長手方向の寸法のことである。その結果、プラグ4と導管スリーブ3の内壁10との間の封止性能が大きく向上する。
【0049】
長手方向Lのプラグ4の圧縮が止まると、プラグ4は、圧縮前の位置に戻ろうとすることは容易に理解できる。そこで、本システムでは、プラグの遠端部および基端部にかかる圧力が増加したときに、封止一体性を向上することによって、プラグの長手方向の圧縮において動的に反応するようにする。
【0050】
圧縮から解放されても、プラグにはある程度の柔軟性が残っており、振動および衝撃の吸収、およびパイプと導管の内壁にかかる比較的小さな負荷を許容する。
【0051】
図7〜11は、本発明によるシステムの別の実施形態を示す。これらの実施形態において、システムは、さらに、ブロック部材37を備える。ブロック部材37は、使用中にプラグの両端にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグの下流側が、圧力勾配の下流側に移動することを防止する。
【0052】
図7は、本発明によるシステムの一実施の形態を示し、これは、パーティション1のどちら側が危険であるかが分かっているような状況に適している。この状況では、高圧力が発生したとすると、コンパートメントIではなくてコンパートメントIIに発生するものと推測される。このシステムは、使用中にプラグ4の両端17,18にかかる外圧に勾配が発生している場合に、プラグ4の下流側端部17が、圧力勾配の下流側に移動することを防止するブロック部材37を有する。すなわち、非常に高い圧力がコンパートメントIIに発生し、コンパートメントIは低圧の場合、プラグ4は基端部18が遠端部17側に移動することによって圧縮される。したがって、コンパートメントIIの圧力が非常に高いときに、プラグは圧縮し、図6を用いて説明したように、環状接触面9,12の作用が高まる。この実施の形態では、ブロック部材37は導管スリーブ3に固定されている。実際、本実施の形態では、ブロック部材37は導管スリーブ3の一部であると考えてもよい。ブロック部材37を導管スリーブ3に溶接してもよいが、導管スリーブ3とブロック部材37をが粉砕プロセス(milling process)を利用して形成されるのが好ましい。導管スリーブ3の内壁は、摩擦係数の低い表面とするのが好ましい。表面を磨いてもよい。これにより、基端部18の縁端部17方向への移動が容易になり、長手方向におけるプラグ4の圧縮が容易になる。本実施の形態において、ブロック部材37は、実質的に環状である。プラグ4の遠端部17に対応するブロック部材37の側面は、少なくとも、プラグ4の遠端部17および導入リブ31の形状に一致するようにしてもよい。さらに、ブロック部材が内径側に延びすぎないことも重要である。これは、パイプ2が導管スリーブ3に挿入された後だけでなく、パイプ2が導管スリーブ3に挿入されているときにも、ブロック部材とパイプ2との接触を避けるためである。ブロック部材37がパイプ2に接触してしまった場合にパイプ2のあらゆる損傷を避けるために、ブロック部材の端部は丸く面取りされている。
【0053】
図8に、本発明によるシステムの別の実施の形態を示す。この実施の形態もまた、どちら側が危険であるか分かっているような状況に適したものである。すなわち、高い圧力がコンパートメントIではなくてコンパートメントIIに発生すると予測される場合である。この実施の形態では、導管スリーブ3とブロック部材37は別々の部品である。導管スリーブ3には、導管スリーブ3の端部から外径側に延びるカラー3aが設けられており、これによって、使用中に、プラグの遠端部17が囲まれる。ブロック部材37が2つの部材を備え、これらが使用中に環状保持リングを形成するようにしてもよい。パイプが挿入された後、リングをパイプ2の周囲に取り付け、例えばボルトとナットを用いてカラー3aに固定することができる。また、環状リング37とカラー3aをそれぞれ穿孔に適切に並べて配置する。ブロック部材が内径側に若干延長可能で、パイプ2に近接可能であるように示されているが、保持リングは、内径方向の長さをもっと小さくすることが好ましい。また、パイプ2に対向する保持リングの端部は、丸く面取りされていることが好ましい。導管スリーブ3が非常に長い、すなわち、プラグ4の長さよりも長いものである場合、ブロック部材37を固定する前に、導管スリーブ3の内壁とパイプ2との間の環状スペースにゴムのスリーブを挿入することが好ましい。このゴムスリーブ(図8には不図示)は、パイプ2を取り囲み、コンパートメントIの圧力に対してコンパートメントIIの圧力が非常に高い場合に、プラグ4の圧縮が起こる前に、プラグ4が導管3の全長にわたって移動する必要がないようにするためのものである。その代わりに、圧縮がすぐに始まり、高応答な動的封止システムとすることができる。封止の完全性の向上を、さらに、図6を用いて説明した機構と組み合わせてもよい。
【0054】
図9に、本発明によるシステムの一実施の形態を示す。これは、パーティション1のどちら側から危険な状況が導管スリーブ3にせまってくるかわからない場合に適したものである。本実施の形態は、特に、パーティション1の両側に発生した火災に対応するのに適している。本システムは2つのプラグ4を備えている。これらの2つのプラグ4のうちの一方は、コンパートメントIから導管スリーブ3に挿入され、他方は、コンパートメントIIから導管スリーブ3に挿入される。本実施の形態では、ブロック部材37が2つのプラグ4の間に配置されている。ここでも、ブロック部材37を、例えば導管スリーブ3の内壁10に溶接された保持リングとすることは可能であるが、図示のように、パーティション1の開口を導管スリーブ3の直径よりも小さくし、導管スリーブ3を、パーティション1に設けられた小さな開口の周囲に、同軸となるように溶接することもできる。パーティション1の一部は、これにより、導管スリーブ3内において、保持リングとして、すなわちブロック部材37として作用する。ここでも、図示のブロック部材は内径側にいくらか大きく延在しているが、ブロック部材の内径方向の長さは、少し短めのほうが好ましい。
【0055】
図10は、本発明によるシステムの一実施の形態を示す。これも、パーティション1のどちら側から危険な状況、例えば火災が導管スリーブ3にせまってくるかわからない場合に適したものである。本システムもまた、ブロック部材37を備えている。このブロック部材37は、図示のように、図8に示す実施の形態において説明したようには、導管スリーブ3に固定可能である。2つのプラグ4の遠端部17の間において導管スリーブ内に閉じ込められる空気の量ができるだけ少ないのが好ましい。これは、導管スリーブ3の長さを、2つのプラグ4の合計の長さよりも若干短くすることで、または、導管スリーブ3内に、ゴムスリーブ(破線で図示)を挿入し、スリーブを2つのプラグ4の間に配置することで、実現できる。プラグ4同士の間の空隙は断熱材として機能する。熱膨張によって空隙内の空気の圧力が増大すると、空隙自体がブロック部材として機能し、基端部18にかかる高圧によってプラグ4の圧縮を容易に発生させることができる。これは熱膨張なしでも起こり得る。とくに、隙間の容量が小さい場合、容量をわずかに低下させることで、空隙内に閉じ込められた空気の圧力が上昇する。この場合、隙間はブロック部材として機能することができる。
【0056】
最後に、図11は、本発明によるシステムの一実施の形態を示しており、導管スリーブ自体が短いものである。本実施の形態では、プラグ4にはそれぞれ、プラグ4の外側から交差方向内側に延在する環状スロットが設けられている。このスロットは、プラグ4の基端部18に最も近い外側リブと、基端部18との間に設けられている。プラグ4の挿入後、この環状スロットには図示のようにブロック部材37が挿入される。ブロック部材はさらに、図8に示す実施の形態において説明したように、導管スリーブ3に固定可能である。
【0057】
導管スリーブに固定可能なブロック部材37は、明らかに、複数の部品から構成されること、または、パイプの一端において、ブロック部材をパイプ周りに摺動することなくパイプ周囲に取り付けることができるような少なくとも1つの部品であることが好ましい。
【0058】
さらなるブロック部材37を、図示のようにプラグ4同士の間に設けてもよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0059】
コンパートメントIIで爆発が起こった場合、図9,図10,および図11に示す実施の形態においては、パーティション全体が長手方向LにおいてコンパートメントIの方向に移動したときに、少なくとも、コンパートメントIに延在もしくは対向する導管スリーブ内のプラグが確実に導管スリーブ内に保持される。図10と図11に示す実施の形態においては、爆発によってパーティション1が長手方向Lのいずれの方向に移動されたとしても、両方のプラグ4が保持される。この特徴的な効果は、動的応答の封止システムを提供するだけでなく、例えば爆発によってパーティション全体が長手方向Lに移動するような状況においても、プラグ4を含む導管スリーブ3が、パーティション1と同時にともに移動することである。
【0060】
縦部材5,すなわちプラグ4の製造に用いる弾性材料は、耐火性能を有することが好ましい。ゴムは、温度上昇の際に膨張するようにしてもよい。シリコンゴムを使用することも可能である。適切なEPDMを利用してもよい。硬さは、例えばショアA硬度70とすることができる。充分な柔軟性があり、EPDMの圧縮性と同程度の圧縮性を有するゴムであればどのようなゴムでも適している。導電性のあるゴムを用いることも可能である。縦部材の製造中に、通常は、これに適した成形型を利用する。このような製造処理自体は、知られている。例えば、射出成形と圧縮成形の両方を使用可能である。ブロック部材は、金属性とすることができるが、ブロック部材を導管スリーブ3に固定可能とする場合は、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、あるいは、ポリエーテルスルホンアミド(PES)のような、硬質プラスチックから製造してもよい。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、複数のパイプが通る導管スリーブを封しするのに適したプラグも可能である。さらに、WO2004/111513,とくに、1つ以上のパイプが通る導管内のスペースを埋めるように設計されたプラグを示した図と、後述する図17を引用する。
【0062】
封止プラグ4は、実質的に筒状にすることが望ましいが、これから逸脱しすることも可能である。したがって、システムを、四角形および/又は長方形の導管スリーブに適したものとすることもできる。多角形の導管スリーブに適した実施の形態も除外されない。他の非円形、例えば楕円形の導管スリーブ用の実施の形態も、可能である。導管スリーブに挿入されるパイプ、ケーブル、およびダクトに関する適性についても同様である。システムを、例えば、使用中に、断面が円形以外のパイプ等を封止プラグで取り巻くように構成することもできる。必要に応じて、当業者は、寸法を調整したり、状況に合わせた寸法設計を行うことができる。
【0063】
ブロック部材を導管スリーブに固定、もしくは固定可能とする方法は、種々の異なるメカニズムを利用することができる。ブロック部材を、溶接により導管スリーブに固定してもよい。しかし、ブロック部材を、導管スリーブと一体化するように固定してもよい。あるいは、マシニングにより単一の金属部品としたり、モールド成形により単一の成形部品としてもよい。ブロック部品37は、例えば、1つ以上のねじを利用したり、ラッチ機構を利用したり、この分野において知られた種々の機械結合によって固定可能とすることができる。
【0064】
本発明の1つの態様は、1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが接続部を通って延在する場合に、封止された接続部を提供する。図12〜16を用いて説明する。この実施の形態において、システムは、開口内もしくは開口上に、密封的に固定(不図示)もしくは固定可能なフレーム100を備える。どのようにフレームを開口内もしくは開口上に固定するかは、後述する。フレーム100は、基本的に複数の導管203を有する。上述したように、図1,5〜11は、導管3として単一の導管スリーブ3を有する形態を示している。これらの図面は、フレーム100も示している。しかし、これらの図面に示されたフレームは、それぞれ、単一の導管スリーブ3のみを備えている。したがって、これらのフレームはそれぞれ、単一の導管を有する。
【0065】
この明細書の図面において示される各導管は、複数のケーブル、パイプまたはダクト2のうちの少なくとも1つが挿入されるのに適している。各導管は、さらに、導管の内周壁10と、導管を通るケーブル、パイプ、またはダクト2との間のスペース30を密封的に埋めるための弾性変形可能なプラグ4が挿入されるのに適している。図12〜16に示すシステムは、各導管203内において、導管203に挿入されたプラグ4の一端が移動することを防止するための少なくとも1つのブロック部材37を備えている。
【0066】
図13は、図12に示す矢印V方向からみたI−I断面図を示す。ブロック部材37が、それぞれフレーム100に固定されていることがわかる。実際に、図12,13に示す形態において、各ブロック部材37は、フレーム100に一体的に接続されている。ブロック部材37はそれぞれ、導管103のいずれか1つの中に固定されている。図12〜16に示す実施の形態は、単一の材料ブロックから導管203をマシニングすることで実現できる。導管203は、ブロックの一端に向かって、ブロックの他端よりもはるかに細い。導管203の直径を減少させることで、ブロック部材37が形成される。図13において、導管203の直径を、「D」として破線で示す。ブロック部材37の位置における導管203の直径は、「d」として破線で示す。本実施の形態では、フレーム100とブロック部材37は、単一の部品から構成される。
【0067】
各導管スリーブ3の内周壁10は、例えば適切な粉砕プロセス(milling process)によって形成される摩擦係数の低い面とすることが好ましい。これにより、プラグ4の挿入が容易になるとともに、上述したように、プラグ4の基端部に突然高い圧力がかかった場合のプラグ4の応答性を高めることができる。
【0068】
図12〜16に示す実施の形態において、フレーム100と全てのブロック部材37は、1つの部品として形成されている。このフレームがマシニングにより形成される材料ブロックは、鉄鋼またはアルミニウムであることが好ましい。これにより、フレーム100を、例えばパーティションのような同様の対応材料に溶接することが可能となる。フレーム100を鉄鋼またはアルミニウムの構成(建築)部材(不図示)に溶接するために、図16に破線で示すようにフレームにフランジFを設けてもよい。フランジによって、溶接中、または溶接後に発生する熱的ストレスを収める緩衝ゾーンZが設けられ、導管203の大幅な寸法の変化を避けることができる。しかし、溶接処理によって影響を受けるフレーム100の位置から比較的離れた位置にブロック部材37を設置することで、緩衝ゾーンを設けることも可能である。図15に概略的に示す実施の形態においては、リング状のブロック部材37を、フレーム100がパーティションに対して溶接される位置Pから離れた位置に配置している。また、図13に示すように、緩衝ゾーンZをブロック部材37自体によって設けることももちろん可能である。交差方向に関しても、フランジFを用いて、あるいは用いずに、フレーム100に緩衝ゾーンZを設けてもよい。これに関して、2個の隣接した導管の間のフレームの最小厚さ「t」は、外側面104と直近の導管203との間に位置する材料Tの最小厚さよりも薄い。
【0069】
また、フランジFの設置は、フレームを、開口を取り囲むパーティションの一部にボルトで取り付けるのが好ましいような場合にも、適している。さらに、フランジFなしではフレームによってカバーできないような寸法の開口に対しても、フランジFは適している。ボルトを利用する場合は、当該分野において知られているように、封止ガスケットを利用する。
【0070】
図12〜14においては、フレーム100が16個の導管203を備えているが、導管203の数はこれには限定されない。図15、16は、それぞれ4個と9個の導管203を備えるフレーム100を示している。フレーム100の形状は種々の適切な形状とすることができ、四角形には限定されず、細長い形状としたり、例えば丸や六角形としてもよい。多くの場合、長方形のフレームが最も適していると考えられる。導管203を行列状に並べるのが最も便利かもしれないが、フレーム100内に導管203を密集して配置する蜂の巣(亀甲模様)状や別の形状を採用することも考えられる。当業者には、最適な配置が容易に見つけられるだろう。フレームの強度、および各導管に作用する可能性のある圧力といった要素は、フレームの重さも含めて、フレームの最適なデザインを実現するための基準となる。使用に際しては、導管からとび出たプラグの交差方向のサイズを考慮する必要がないように、各導管はプラグの全体を受け入れることが好ましい。
【0071】
図12〜16においては、各フレームが同様のサイズの導管203を備えているが、導管203を異なるサイズとすることも可能である。さらに、全ての導管203の断面を円形とする必要もなく、別の断面形状とすることも可能である。図16に示すように、プラグ4は、導管203の内壁10と導管203内に延在する複数のパイプ2の間のスペース30を塞ぐのに適している。3つの部分からなるプラグ4の一例を図17に示す。
【0072】
フレーム100の全ての導管203内に、最初から1つ以上のパイプを延在させる必要はない。フレーム100を十分に大きく、比較的多数の導管203を備えるようにすることが可能であって、実際は、フレーム100を設置するときに、直ちに必要となるものである。いくつかの導管203に、いわゆる閉止プラグ101を設け、少なくとも一時的にケーブル、パイプ、またはダクトが延在していない導管203を封止するように塞ぐことが可能である。新たなケーブルをフレームに挿入する必要があるとき、あるいはケーブルを取り除く必要があるときに、封止された接続部全体を取り外す必要がない。他の導管の封止状態を乱すことなく、1つ以上の導管203に対してのみ作業を行うことができる。
【0073】
図1および図5〜11に示した1つの導管203を有するシステムについて説明した全ての事項は、2個以上の導管203を備えるフレーム100にも同様に適用される。したがって、ブロック部材37は、システムに対して独立した部分とすることができ、フレーム100に対して固定可能としてもよい。ブロック部材は、例えば、硬い材料からなる板であって、板が固定されるフレーム100の各導管203の直径よりも小さい直径をそれぞれ有する複数の貫通部(recess)を備えるようにしてもよい。板の固定は、例えば、ねじと、フレーム100の所定の位置に設けられたねじ穴とを用いてもよい。
【0074】
システムは、1つ以上の導管203を有するフレーム100を備えているが、各導管203において、プラグ4の両端が、プラグ4が挿入された導管203に対して、同時かつ同様に移動することを防止するために、追加ブロック部材を備えるように構成してもよい。通常、望ましくは、追加ブロック部材37はフレーム100に対して固定可能である。
【0075】
システムは、複数の導管スリーブ3のうちの1つにぴったりと密封的に挿入可能であって、弾性変形可能なプラグ4を備えてもよい。各導管3は、例えば図13に破線の矢印102で示すように、プラグ4の全体が挿入されるのに適した長さを有することが好ましい。図9,10,および11に示すように、各導管は、互いに軸方向に隣接する、すなわち、長手方向に並んだ2つのプラグを収容するのに適した長さとしてもよい。これは、図12〜16を参照して説明したフレーム100にも同様に適用される。
【0076】
フレーム100が複数の導管203を有する場合に、ブロック部材37の少なくとも一部は、対応する導管203内に配置され、ブロック部材37の両側において、導管203がプラグ全体を収容するのに適した長さを持つように構成してもよい。導管3がプラグの全体を収容するのに適している場合、プラグの基端部は、フレーム100の前面と同一面となるようにしてもよい。上述したような種々のプラグ4を、適したプラグとしてもよい。
【0077】
すべての導管203が同じであることが理想的である。この場合、各プラグ4の、少なくとも外径に関する寸法も同一とする。
【0078】
最後に、上述したように、フレームは金属製とすることができるが、その代わりに、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、または、ポリエーテルスルホンアミド(PES)を含む硬質プラスチックなどのエンジニアリングプラスチックから製造してもよい。フレームを、例えば海岸における建設作業に用い、当該分野においてよく知られた適切な封止道具を用いて、コンクリート壁に設けられた開口内、もしくは開口上に設置することができる。また、フランジF付きの実施の形態も、エンジニアリングプラスチックから製造してもよい。この場合、フランジは、好ましくはガスケットを用いて、フレームをパーティション用の建設材料にボルトで固定する場合に適している。
【0079】
上記説明から明らかなように、本発明によるシステムには、締付け部材が不要である。プラグは、プラグの一端または両端から作用する圧力の増加により、締め付けられるように設置される。しかし、プラグを締め付けるだけのための要素を用いる代わりに、プラグおよびシステム全体として封止しようとしている媒体(例えばガスや流体)によって増加する圧力を用いて、締め付けを行うことも考えられる。
【0080】
これらの全ての変形例も、添付の特許請求の範囲に定義された発明の範囲内に属すると理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止された接続部を提供するシステムであって、前記接続部内には1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが延在し、
前記システムは、開口内もしくは開口上に、密封的に固定もしくは固定可能なフレームを備え、
前記フレームは、前記複数のケーブル、パイプまたはダクトのうちの少なくとも1つが挿入されるのに適した1つ以上の導管を備え、前記導管にはさらに、前記導管の内周壁と、前記複数のパイプ、ケーブルまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを密封的に塞ぐ弾性変形可能なプラグが挿入されるのに適しており、
前記システムは、さらに、各導管内において、前記導管に挿入されたプラグの一端が移動することを防止するための少なくとも1つのブロック部材を備え、
前記少なくとも1つのブロック部材は前記フレームに一体的に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つのブロック部材は、実質的にリング状の部材を複数備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムにおいて、
前記導管は、それぞれ、摩擦係数の低い表面を有する内周壁を備えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のシステムにおいて、
前記フレームと前記少なくとも1つのブロック部材は単一の部品から構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記フレームは鉄鋼またはアルミニウムからなることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記フレームに、前記フレームを鉄鋼またはアルミニウムの建設部材に溶接するために、または前記フレームをパーティション用の建設部材にボルトで固定するために、フランジが設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のシステムにおいて、
前記導管の大幅な寸法の変化を避けるように、前記フレームには、溶接中および/または溶接後に発生する熱的ストレスを収める緩衝ゾーンが設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記複数の導管は全て同一であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管のそれぞれにおいて、プラグの両端が、前記プラグが挿入された前記導管スリーブに対して、同時かつ同様に移動することを防止するために、少なくとも1つの追加ブロック部材を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの追加ブロック部材は、前記フレームに固定可能であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管のそれぞれにぴったりと密封するように挿入可能であって、弾性変形可能な少なくとも1つのプラグをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管は、それぞれ、プラグ全体を収容するのに適した長さをもつことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
各導管は、互いに軸方向に隣りあう2つのプラグを収容するのに適した長さを有することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、
各導管は、前記少なくとも1つのブロック部材を構成する部分を有し、前記ブロック部材の両側において、前記導管がプラグ全体を収容するのに適した長さを持つことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記プラグは、外側部と内側部の2つの端面を有し、各端面は、当該端面を前記導管へ取り付けられるような寸法を有し、
前記外側部は、前記プラグと前記導管の内周壁との間において環状接触面となる、前記プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の外側リブを備え、
前記内側部は、前記プラグと、前記導管スリーブ内に延在する前記少なくとも1本のケーブル、パイプ、またはダクトとの間において環状接触面となる、前記プラグの前記長手方向に離間した頂点を有する複数の内側リブを備え、
前記内側部および/または前記外側部には、前記長手方向における前記プラグの圧縮と、前記内側リブおよび前記外側リブの少なくとも一方の交差方向の移動を容易にする少なくとも1つのヒンジ可能面部が設けられることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記ヒンジ可能面部は、2つの隣接するリブの、向かい合う斜面によって形成されることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載のシステムにおいて、
前記ヒンジ可能面部は、前記内側部に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15,16,または17に記載のシステムにおいて、
前記プラグは、少なくとも2つの縦長部材を組み立てたものであることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
少なくとも一時的にケーブル、パイプ、またはダクトが延在していない導管スリーブを密封的に塞ぐための少なくとも1つの閉止プラグをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
締付け部材が不要であることを特徴とするシステム。
【請求項1】
封止された接続部を提供するシステムであって、前記接続部内には1つ以上のケーブル、パイプまたはダクトが延在し、
前記システムは、開口内もしくは開口上に、密封的に固定もしくは固定可能なフレームを備え、
前記フレームは、前記複数のケーブル、パイプまたはダクトのうちの少なくとも1つが挿入されるのに適した1つ以上の導管を備え、前記導管にはさらに、前記導管の内周壁と、前記複数のパイプ、ケーブルまたはダクトの少なくとも1つとの間のスペースを密封的に塞ぐ弾性変形可能なプラグが挿入されるのに適しており、
前記システムは、さらに、各導管内において、前記導管に挿入されたプラグの一端が移動することを防止するための少なくとも1つのブロック部材を備え、
前記少なくとも1つのブロック部材は前記フレームに一体的に接続されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つのブロック部材は、実質的にリング状の部材を複数備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムにおいて、
前記導管は、それぞれ、摩擦係数の低い表面を有する内周壁を備えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のシステムにおいて、
前記フレームと前記少なくとも1つのブロック部材は単一の部品から構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記フレームは鉄鋼またはアルミニウムからなることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記フレームに、前記フレームを鉄鋼またはアルミニウムの建設部材に溶接するために、または前記フレームをパーティション用の建設部材にボルトで固定するために、フランジが設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のシステムにおいて、
前記導管の大幅な寸法の変化を避けるように、前記フレームには、溶接中および/または溶接後に発生する熱的ストレスを収める緩衝ゾーンが設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記複数の導管は全て同一であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管のそれぞれにおいて、プラグの両端が、前記プラグが挿入された前記導管スリーブに対して、同時かつ同様に移動することを防止するために、少なくとも1つの追加ブロック部材を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1つの追加ブロック部材は、前記フレームに固定可能であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管のそれぞれにぴったりと密封するように挿入可能であって、弾性変形可能な少なくとも1つのプラグをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記導管は、それぞれ、プラグ全体を収容するのに適した長さをもつことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
各導管は、互いに軸方向に隣りあう2つのプラグを収容するのに適した長さを有することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、
各導管は、前記少なくとも1つのブロック部材を構成する部分を有し、前記ブロック部材の両側において、前記導管がプラグ全体を収容するのに適した長さを持つことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記プラグは、外側部と内側部の2つの端面を有し、各端面は、当該端面を前記導管へ取り付けられるような寸法を有し、
前記外側部は、前記プラグと前記導管の内周壁との間において環状接触面となる、前記プラグの長手方向に離間した頂点を有する複数の外側リブを備え、
前記内側部は、前記プラグと、前記導管スリーブ内に延在する前記少なくとも1本のケーブル、パイプ、またはダクトとの間において環状接触面となる、前記プラグの前記長手方向に離間した頂点を有する複数の内側リブを備え、
前記内側部および/または前記外側部には、前記長手方向における前記プラグの圧縮と、前記内側リブおよび前記外側リブの少なくとも一方の交差方向の移動を容易にする少なくとも1つのヒンジ可能面部が設けられることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
前記ヒンジ可能面部は、2つの隣接するリブの、向かい合う斜面によって形成されることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載のシステムにおいて、
前記ヒンジ可能面部は、前記内側部に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15,16,または17に記載のシステムにおいて、
前記プラグは、少なくとも2つの縦長部材を組み立てたものであることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
少なくとも一時的にケーブル、パイプ、またはダクトが延在していない導管スリーブを密封的に塞ぐための少なくとも1つの閉止プラグをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
締付け部材が不要であることを特徴とするシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−501813(P2010−501813A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526060(P2009−526060)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058814
【国際公開番号】WO2008/023058
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505338545)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058814
【国際公開番号】WO2008/023058
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505338545)
【Fターム(参考)】
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