パイプ材の切断方法及びその切断装置
【課題】肉厚の変化を生じさせることなく,しかも切断面を綺麗にしながらパイプ材を切断し得るパイプ材の切断方法を提供する。
【解決手段】環状に配列した複数のカット型12a,12bを半径方向内向きに作動することにより,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を縮径変形させながら,芯型8の内刃18と環状配列の複数のカット型12a,12bの外刃19a,19bとの剪断作用によりスリット付きパイプ材1を切断する。
【解決手段】環状に配列した複数のカット型12a,12bを半径方向内向きに作動することにより,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を縮径変形させながら,芯型8の内刃18と環状配列の複数のカット型12a,12bの外刃19a,19bとの剪断作用によりスリット付きパイプ材1を切断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パイプ材の外周側に配設される外刃と,パイプ材の内周側に配設される内刃との半径方向に沿う相対移動に伴ない剪断作用によりパイプ材を切断するパイプ材の切断方法及びその切断装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるパイプ材の切断方法及び装置は,下記特許文献1に開示されているように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように,従来のパイプ材の切断方法及び装置は,外刃を環状の固定刃とし,内刃をパイプ材の周方向に配列される複数の分割刃とし,その分割刃群を固定刃に対して半径方向外向きに作動することで,分割刃群側のパイプ材を拡径させながら固定刃及び分断刃群に剪断作用を発揮させてパイプ材を切断するものである。こうした切断方法及び装置では,分割刃群の半径方向外向きの移動により分割刃の相互間に隙間ができるため,綺麗な切断面を得ることが困難な上,切断される側のパイプ材は,半径方向外向きに移動する分割刃群により拡径され,肉厚が減少するという不都合が生じる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,肉厚の変化を生じさせることなく,しかも切断面を綺麗にしながらパイプ材を切断し得るパイプ材の切断方法及びその切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明のパイプ材の切断方法は,切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリットの幅を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材を用意し,このスリット付きパイプ材に所望長さの切断領域を設定する工程と,前記切断領域以外の領域でスリット付きパイプ材の内周面に,一端外周縁に環状の内刃を有する芯型を嵌合して,前記内刃を前記切断領域の内端位置に合わせながら前記スリットの幅を一定寸法に広げた状態にスリット付きパイプ材を保持する工程と,一端内周縁に円弧状の外刃を有する複数のカット型を,その外刃を前記切断領域の内端位置に合わせながら該切断領域のスリット付きパイプ材の外周面上に相互に一定間隔をおいて環状に配列する工程と,環状に配列した前記複数のカット型を半径方向内向きに作動することにより,前記切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,前記内刃及び外刃に剪断作用を発揮させて前記切断領域の内端位置でスリット付きパイプ材を切断する工程とを含むことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴のパイプ材の切断方法を実施するためのパイプ材の切断装置であって,前記芯型と協働して前記切断領域以外のスリット付きパイプ材を押えるように一対の下部及び上部保持型を備え,その下部保持型を下部弾性部材を介して下型ホルダに支持する一方,上部保持型を,前記下型ホルダに対して昇降し得る上型ホルダに上部弾性部材を介して支持し,前記切断領域のスリット付きパイプ材の外周面上に配置される一対の下部カット型及び上部カット型を前記下型ホルダ及び上型ホルダにそれぞれ固定して取り付け,前記下型ホルダに対して前記上型ホルダを下降させることによって,前記下部及び上部弾性部材を圧縮変形させて,前記下部及び上部保持型のスリット付きパイプ材に対する保持力を強めると共に,前記切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,前記内刃及び外刃に剪断作用を発揮させて前記切断領域の内端位置でスリット付きパイプ材を切断するように,前記上部カット型を前記下部カット型に対して作動するようにしたことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば,環状に配列した複数のカット型を半径方向内向きに作動することにより,切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,芯型の内刃と環状配列の複数のカット型外刃との剪断作用によりスリット付きパイプ材を切断するので,切断領域のスリット付きパイプ材の縮径時には,そのスリットの幅の縮小を伴なうことで,スリット付きパイプ材に座屈による皺の発生や,肉厚の変化を防ぐことができ,しかもその切断時には,環状配列の複数のカット型の外刃は,相互間に殆ど隙間が無い環状を呈することになって良好な剪断作用を発揮することができ,これらにより綺麗な切断面を得ることができる。
【0009】
本発明の第2の特徴によれば,芯型と,一対の下部及び上部カット型を有する構造簡単な切断装置によりスリット付きパイプ材を,皺や肉厚の変化を生じさせることなく綺麗に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のパイプ切断方法及び装置により切断すべきスリット付きパイプ材の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るパイプ切断装置の縦断正面図(図3の1−1線断面図)で,ワークとしてのスリット付きパイプ材をセットした状態を示す。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】上記ワークの押え込み状態を示す,図2との対応図。
【図6】図5の6−6線断面図。
【図7】図5の7−7線断面図。
【図8】上記ワークの切断終了状態を示す,図2及び図5との対応図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】図8の10−10線断面図。
【図11】本発明の別の実施形態を示す,三個以上のカット型の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0012】
先ず,図1において,切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリット2の幅を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材1が用意される。このスリット付きパイプ材1には所望長さの切断領域Aが設定される。
【0013】
次に,このスリット付きパイプ材1を切断するパイプ切断装置について説明する。
【0014】
先ず図2〜図3において,パイプ切断装置5は,プレス機械のボルスタ(図示せず。)に支持される下型ホルダ6と,同プレス機械のスライド(図示せず。)に支持される上型ホルダ7とを有する。下型ホルダ6には,芯型8,下部保持型10及び下部カット型12aが配設され,プレス機械のスライドに支持される上型ホルダ7には,上部保持型11及び上部カット型12bが配設される。下型ホルダ6の上面には,鉛直方向に延びる複数のガイドポスト13,13…が立設され,これらガイドポスト13,13…が摺動自在に嵌合して,上型ホルダ7の昇降姿勢を安定させる複数のガイドボス14,14…が上型ホルダ7に固設される。
【0015】
前記芯型8は,スリット付きパイプ材1の内周面に嵌合して,そのスリット2を所定幅に開いた状態に保持するように形成されたもので,その一端部周縁には環状の内刃18が形成される。この芯型8の外周面には,上記スリット2を貫通して,下型ホルダ6の,鉛直方向に延びる支持孔15に摺動自在に嵌装される支持ロッド8aが一体に突設される。
【0016】
前記下部保持型10は,下部弾性部材16を介して下型ホルダ6に上下動可能に支持され,また前記上部保持型11は,上部弾性部材17を介して上型ホルダ7に上下動可能に支持されるもので,これら下部及び上部保持型10,11の対向面には,前記芯型8と協働してスリット付きパイプ材1の周壁を内外から挟圧,保持する半円筒状の保持面10a,11aが形成される。
【0017】
下部保持型10の下型ホルダ6に対する上下動は,下部保持型10に設けられる鉛直方向の複数の下部支持孔15を,下型ホルダ6の上面に立設される一対の下部ガイド・ストッパボルト21,21に摺動自在に嵌合することで規制され,また上部保持型11の上型ホルダ7に対する上下動は,この上部保持型11に設けられる鉛直方向の複数の上部支持孔15を,上型ホルダ7の下面に立設される一対の上部ガイド・ストッパボルト22,22に摺動自在に嵌合することで規制される。その際,下部及び上部保持型10,11は,それぞれの一端面が前記芯型8の内刃18と略面一となるように配置される。実際には,スリット付きパイプ材1の材質や切断面精度,刃の耐久性等を考慮して,下部及び上部保持型10,11の各一端面と芯型8の内刃18との間には適当な微小クリアランスが設定される。
【0018】
前記下部カット型12aは,下型ホルダ6の上面に固定して取り付けられ,また前記上部カット型12bは,上型ホルダ7の下面に固定して取り付けられるもので,その際,下部カット型12aは,下部保持型10の一端面に摺動自在に当接配置され,また上部カット型12bは,上部保持型11の一端面に摺動自在に略当接配置される。こゝでも実際には,スリット付きパイプ材1の材質や切断面精度,刃の耐久性等を考慮して,上部カット型12bと上部保持型11との対向面間には適当な微小クリアランスが設定される。
【0019】
これら下部及び上部カット型12a,12bは,上型ホルダ7が前記下降限界まで下降したとき,互いに当接させる対向面を有しており,それらの対向面には,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を押圧,縮径させ得る半円筒状の押圧面20a,20bが形成される(図10参照)。更にこれら半円筒状の押圧面20a,20bの,前記下部及び上部保持型10,11側の内周縁には半円状の外刃19a,19bが形成される。
【0020】
而して,下部及び上部カット型12a,12bが互いに対向面を当接させたとき(図10参照),押圧面20a,20bは,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を,その外径が芯型8の外径と一致するように縮径することができ,同時に半円状の外刃19a,19bは,芯型8即ち内刃18の外径と一致する隙間の無い環状を呈するようになっている。
【0021】
上記パイプ切断装置5を使用してスリット付きパイプ材1を切断する方法を次に説明する。
【0022】
先ず,図1に示すように,切断すべく用意したスリット付きパイプ材1に,前述のように所望長さの切断領域Aを設定する。
【0023】
次に,図2に示すように,上型ホルダ7を上昇位置に保持した状態において,上記スリット付きパイプ材1を矢印Pに沿って前進させて芯型8の後端側からその外周面に嵌合していくと,スリット2が所定幅に開きながら,芯型8の支持ロッド8aを受け入れていく。そしてスリット付きパイプ材1の外周面下半周を下部保持型10の保持面10aに支承させながら,スリット付きパイプ材1の切断領域Aを芯型8の内刃18より外方へ張り出させて,切断領域Aの内端位置を内刃18に合わせる。
【0024】
そこで,図5〜図7に示すように,上型ホルダ7を下降させると,上部保持型11も下降してその保持面11aが芯型8との対応位置でスリット付きパイプ材1の外周面上半周に当接する。
【0025】
上型ホルダ7が更に下降すると,下部及び上部弾性部材16,17が圧縮され,その反発力が下部及び上部保持型10,11に加わることで,下部及び上部保持型10,11は,芯型8と協働してスリット付きパイプ材1を強固に挟持しながら更に下降していく。即ち,下部及び上部保持型10,11,スリット付きパイプ材1,芯型8の四者が一体となって下降する。
【0026】
一方,切断領域Aのスリット付きパイプ材1は,その下降により下部カット型12aに近づき,また上部カット型12bは上型ホルダ7の下降により切断領域Aのスリット付きパイプ材1に近づいていく。こうして下部及び上部カット型12a,12bは,切断領域Aのスリット付きパイプ材1の外周面を押圧して,スリット2の幅の縮小を伴ないつゝそれを縮径させていく。
【0027】
したがって,下部及び上部カット型12a,12bの半円状の外刃19a,19bは,芯型8の内刃18に向かいながらスリット付きパイプ材1をその外周側から剪断していき,その剪断終了位置では,図8〜図10に示すように,下部及び上部カット型12a,12bが対向面を相互に当接させて両外刃19a,19bを相互に隙間が無い環状に配置させる。かくして,スリット付きパイプ材1は切断領域Aの内端位置で切断される。そして上型ホルダ7の下降は,下部及び上部カット型12a,12b同士が当接することで停止する。
【0028】
切断後,上型ホルダ7を上昇させれば,図2〜図4に示すように,上部カット型12bは下部カット型12aから遠く離間し,下部及び上部保持型10,11は,下部及び上部弾性部材16,17の復元力により当初位置に戻ることになる。
【0029】
しかる後,切断された切断領域Aのスリット付きパイプ材1を取り出し,芯型8上に残ったスリット付きパイプ材1を,新たに設定した切断領域Aの長さ分だけ,スリット付きパイプ材1を矢印Pに沿って前進させ,以後,上記と同様な作業を繰り返す。
【0030】
次に,図11に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
この第2実施形態は,各内周縁に外刃19a〜19fを有する六個のカット型12a〜12fをスリット付きパイプ材1の切断領域A外周に配列して,これらを半径方向内向きに作動して,芯型8の内刃18との協働による剪断作用により切断領域Aのスリット付きパイプ材1を切断するようにしたもので,その他の構成は前実施形態と同様であるので,図11中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
上記のように,本発明のパイプ材の切断方法によれば,環状に配列した複数のカット型12a,12b;12a〜12fを半径方向内向きに作動することにより,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を縮径変形させながら,芯型8の内刃18と環状配列の複数のカット型12a,12b;12a〜12fの外刃19a,19b;19a〜19fとの剪断作用によりスリット付きパイプ材1を切断するので,切断領域Aのスリット付きパイプ材1の縮径時には,そのスリット2の幅の縮小を伴なうことで,スリット付きパイプ材1に座屈による皺の発生や肉厚の変化を防ぐことができ,しかもその切断時には,環状配列の複数のカット型12a,12b;12a〜12fの外刃19a,19b;19a〜19fは,相互間に殆ど隙間が無い環状を呈することになって良好な剪断作用を発揮するので,綺麗な切断面を得ることができる。
【0033】
また本発明のパイプ材の切断装置5によれば,芯型8と,一対の下部及び上部カット型12a,12bを有する簡単な構造によりスリット付きパイプ材1を,皺や肉厚の変化を生じせることなく綺麗に切断することができる。
【0034】
尚,所望寸法に切断されたスリット付きパイプ材1は,スリット2に臨む両側端を溶接することにより,通常のパイプに構成することができる。
【0035】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,切断領域のスリット付きパイプ材の周囲に配列するカット型は複数であればよく,その数を問わない。
【符号の説明】
【0036】
A・・・・・・切断領域
1・・・・・・スリット付きパイプ材
6・・・・・・下型ホルダ
7・・・・・・上型ホルダ
8・・・・・・芯型
10・・・・・下部保持型
11・・・・・上部保持型
12a,12b・・・カット型(下部,上部カット型)
16・・・・・下部弾性部材
17・・・・・上部弾性部材
18・・・・・内刃
19a,19b・・・外刃
【技術分野】
【0001】
本発明は,パイプ材の外周側に配設される外刃と,パイプ材の内周側に配設される内刃との半径方向に沿う相対移動に伴ない剪断作用によりパイプ材を切断するパイプ材の切断方法及びその切断装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるパイプ材の切断方法及び装置は,下記特許文献1に開示されているように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように,従来のパイプ材の切断方法及び装置は,外刃を環状の固定刃とし,内刃をパイプ材の周方向に配列される複数の分割刃とし,その分割刃群を固定刃に対して半径方向外向きに作動することで,分割刃群側のパイプ材を拡径させながら固定刃及び分断刃群に剪断作用を発揮させてパイプ材を切断するものである。こうした切断方法及び装置では,分割刃群の半径方向外向きの移動により分割刃の相互間に隙間ができるため,綺麗な切断面を得ることが困難な上,切断される側のパイプ材は,半径方向外向きに移動する分割刃群により拡径され,肉厚が減少するという不都合が生じる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,肉厚の変化を生じさせることなく,しかも切断面を綺麗にしながらパイプ材を切断し得るパイプ材の切断方法及びその切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明のパイプ材の切断方法は,切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリットの幅を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材を用意し,このスリット付きパイプ材に所望長さの切断領域を設定する工程と,前記切断領域以外の領域でスリット付きパイプ材の内周面に,一端外周縁に環状の内刃を有する芯型を嵌合して,前記内刃を前記切断領域の内端位置に合わせながら前記スリットの幅を一定寸法に広げた状態にスリット付きパイプ材を保持する工程と,一端内周縁に円弧状の外刃を有する複数のカット型を,その外刃を前記切断領域の内端位置に合わせながら該切断領域のスリット付きパイプ材の外周面上に相互に一定間隔をおいて環状に配列する工程と,環状に配列した前記複数のカット型を半径方向内向きに作動することにより,前記切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,前記内刃及び外刃に剪断作用を発揮させて前記切断領域の内端位置でスリット付きパイプ材を切断する工程とを含むことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴のパイプ材の切断方法を実施するためのパイプ材の切断装置であって,前記芯型と協働して前記切断領域以外のスリット付きパイプ材を押えるように一対の下部及び上部保持型を備え,その下部保持型を下部弾性部材を介して下型ホルダに支持する一方,上部保持型を,前記下型ホルダに対して昇降し得る上型ホルダに上部弾性部材を介して支持し,前記切断領域のスリット付きパイプ材の外周面上に配置される一対の下部カット型及び上部カット型を前記下型ホルダ及び上型ホルダにそれぞれ固定して取り付け,前記下型ホルダに対して前記上型ホルダを下降させることによって,前記下部及び上部弾性部材を圧縮変形させて,前記下部及び上部保持型のスリット付きパイプ材に対する保持力を強めると共に,前記切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,前記内刃及び外刃に剪断作用を発揮させて前記切断領域の内端位置でスリット付きパイプ材を切断するように,前記上部カット型を前記下部カット型に対して作動するようにしたことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば,環状に配列した複数のカット型を半径方向内向きに作動することにより,切断領域のスリット付きパイプ材を縮径変形させながら,芯型の内刃と環状配列の複数のカット型外刃との剪断作用によりスリット付きパイプ材を切断するので,切断領域のスリット付きパイプ材の縮径時には,そのスリットの幅の縮小を伴なうことで,スリット付きパイプ材に座屈による皺の発生や,肉厚の変化を防ぐことができ,しかもその切断時には,環状配列の複数のカット型の外刃は,相互間に殆ど隙間が無い環状を呈することになって良好な剪断作用を発揮することができ,これらにより綺麗な切断面を得ることができる。
【0009】
本発明の第2の特徴によれば,芯型と,一対の下部及び上部カット型を有する構造簡単な切断装置によりスリット付きパイプ材を,皺や肉厚の変化を生じさせることなく綺麗に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のパイプ切断方法及び装置により切断すべきスリット付きパイプ材の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るパイプ切断装置の縦断正面図(図3の1−1線断面図)で,ワークとしてのスリット付きパイプ材をセットした状態を示す。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】上記ワークの押え込み状態を示す,図2との対応図。
【図6】図5の6−6線断面図。
【図7】図5の7−7線断面図。
【図8】上記ワークの切断終了状態を示す,図2及び図5との対応図。
【図9】図8の9−9線断面図。
【図10】図8の10−10線断面図。
【図11】本発明の別の実施形態を示す,三個以上のカット型の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0012】
先ず,図1において,切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリット2の幅を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材1が用意される。このスリット付きパイプ材1には所望長さの切断領域Aが設定される。
【0013】
次に,このスリット付きパイプ材1を切断するパイプ切断装置について説明する。
【0014】
先ず図2〜図3において,パイプ切断装置5は,プレス機械のボルスタ(図示せず。)に支持される下型ホルダ6と,同プレス機械のスライド(図示せず。)に支持される上型ホルダ7とを有する。下型ホルダ6には,芯型8,下部保持型10及び下部カット型12aが配設され,プレス機械のスライドに支持される上型ホルダ7には,上部保持型11及び上部カット型12bが配設される。下型ホルダ6の上面には,鉛直方向に延びる複数のガイドポスト13,13…が立設され,これらガイドポスト13,13…が摺動自在に嵌合して,上型ホルダ7の昇降姿勢を安定させる複数のガイドボス14,14…が上型ホルダ7に固設される。
【0015】
前記芯型8は,スリット付きパイプ材1の内周面に嵌合して,そのスリット2を所定幅に開いた状態に保持するように形成されたもので,その一端部周縁には環状の内刃18が形成される。この芯型8の外周面には,上記スリット2を貫通して,下型ホルダ6の,鉛直方向に延びる支持孔15に摺動自在に嵌装される支持ロッド8aが一体に突設される。
【0016】
前記下部保持型10は,下部弾性部材16を介して下型ホルダ6に上下動可能に支持され,また前記上部保持型11は,上部弾性部材17を介して上型ホルダ7に上下動可能に支持されるもので,これら下部及び上部保持型10,11の対向面には,前記芯型8と協働してスリット付きパイプ材1の周壁を内外から挟圧,保持する半円筒状の保持面10a,11aが形成される。
【0017】
下部保持型10の下型ホルダ6に対する上下動は,下部保持型10に設けられる鉛直方向の複数の下部支持孔15を,下型ホルダ6の上面に立設される一対の下部ガイド・ストッパボルト21,21に摺動自在に嵌合することで規制され,また上部保持型11の上型ホルダ7に対する上下動は,この上部保持型11に設けられる鉛直方向の複数の上部支持孔15を,上型ホルダ7の下面に立設される一対の上部ガイド・ストッパボルト22,22に摺動自在に嵌合することで規制される。その際,下部及び上部保持型10,11は,それぞれの一端面が前記芯型8の内刃18と略面一となるように配置される。実際には,スリット付きパイプ材1の材質や切断面精度,刃の耐久性等を考慮して,下部及び上部保持型10,11の各一端面と芯型8の内刃18との間には適当な微小クリアランスが設定される。
【0018】
前記下部カット型12aは,下型ホルダ6の上面に固定して取り付けられ,また前記上部カット型12bは,上型ホルダ7の下面に固定して取り付けられるもので,その際,下部カット型12aは,下部保持型10の一端面に摺動自在に当接配置され,また上部カット型12bは,上部保持型11の一端面に摺動自在に略当接配置される。こゝでも実際には,スリット付きパイプ材1の材質や切断面精度,刃の耐久性等を考慮して,上部カット型12bと上部保持型11との対向面間には適当な微小クリアランスが設定される。
【0019】
これら下部及び上部カット型12a,12bは,上型ホルダ7が前記下降限界まで下降したとき,互いに当接させる対向面を有しており,それらの対向面には,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を押圧,縮径させ得る半円筒状の押圧面20a,20bが形成される(図10参照)。更にこれら半円筒状の押圧面20a,20bの,前記下部及び上部保持型10,11側の内周縁には半円状の外刃19a,19bが形成される。
【0020】
而して,下部及び上部カット型12a,12bが互いに対向面を当接させたとき(図10参照),押圧面20a,20bは,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を,その外径が芯型8の外径と一致するように縮径することができ,同時に半円状の外刃19a,19bは,芯型8即ち内刃18の外径と一致する隙間の無い環状を呈するようになっている。
【0021】
上記パイプ切断装置5を使用してスリット付きパイプ材1を切断する方法を次に説明する。
【0022】
先ず,図1に示すように,切断すべく用意したスリット付きパイプ材1に,前述のように所望長さの切断領域Aを設定する。
【0023】
次に,図2に示すように,上型ホルダ7を上昇位置に保持した状態において,上記スリット付きパイプ材1を矢印Pに沿って前進させて芯型8の後端側からその外周面に嵌合していくと,スリット2が所定幅に開きながら,芯型8の支持ロッド8aを受け入れていく。そしてスリット付きパイプ材1の外周面下半周を下部保持型10の保持面10aに支承させながら,スリット付きパイプ材1の切断領域Aを芯型8の内刃18より外方へ張り出させて,切断領域Aの内端位置を内刃18に合わせる。
【0024】
そこで,図5〜図7に示すように,上型ホルダ7を下降させると,上部保持型11も下降してその保持面11aが芯型8との対応位置でスリット付きパイプ材1の外周面上半周に当接する。
【0025】
上型ホルダ7が更に下降すると,下部及び上部弾性部材16,17が圧縮され,その反発力が下部及び上部保持型10,11に加わることで,下部及び上部保持型10,11は,芯型8と協働してスリット付きパイプ材1を強固に挟持しながら更に下降していく。即ち,下部及び上部保持型10,11,スリット付きパイプ材1,芯型8の四者が一体となって下降する。
【0026】
一方,切断領域Aのスリット付きパイプ材1は,その下降により下部カット型12aに近づき,また上部カット型12bは上型ホルダ7の下降により切断領域Aのスリット付きパイプ材1に近づいていく。こうして下部及び上部カット型12a,12bは,切断領域Aのスリット付きパイプ材1の外周面を押圧して,スリット2の幅の縮小を伴ないつゝそれを縮径させていく。
【0027】
したがって,下部及び上部カット型12a,12bの半円状の外刃19a,19bは,芯型8の内刃18に向かいながらスリット付きパイプ材1をその外周側から剪断していき,その剪断終了位置では,図8〜図10に示すように,下部及び上部カット型12a,12bが対向面を相互に当接させて両外刃19a,19bを相互に隙間が無い環状に配置させる。かくして,スリット付きパイプ材1は切断領域Aの内端位置で切断される。そして上型ホルダ7の下降は,下部及び上部カット型12a,12b同士が当接することで停止する。
【0028】
切断後,上型ホルダ7を上昇させれば,図2〜図4に示すように,上部カット型12bは下部カット型12aから遠く離間し,下部及び上部保持型10,11は,下部及び上部弾性部材16,17の復元力により当初位置に戻ることになる。
【0029】
しかる後,切断された切断領域Aのスリット付きパイプ材1を取り出し,芯型8上に残ったスリット付きパイプ材1を,新たに設定した切断領域Aの長さ分だけ,スリット付きパイプ材1を矢印Pに沿って前進させ,以後,上記と同様な作業を繰り返す。
【0030】
次に,図11に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
この第2実施形態は,各内周縁に外刃19a〜19fを有する六個のカット型12a〜12fをスリット付きパイプ材1の切断領域A外周に配列して,これらを半径方向内向きに作動して,芯型8の内刃18との協働による剪断作用により切断領域Aのスリット付きパイプ材1を切断するようにしたもので,その他の構成は前実施形態と同様であるので,図11中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
上記のように,本発明のパイプ材の切断方法によれば,環状に配列した複数のカット型12a,12b;12a〜12fを半径方向内向きに作動することにより,切断領域Aのスリット付きパイプ材1を縮径変形させながら,芯型8の内刃18と環状配列の複数のカット型12a,12b;12a〜12fの外刃19a,19b;19a〜19fとの剪断作用によりスリット付きパイプ材1を切断するので,切断領域Aのスリット付きパイプ材1の縮径時には,そのスリット2の幅の縮小を伴なうことで,スリット付きパイプ材1に座屈による皺の発生や肉厚の変化を防ぐことができ,しかもその切断時には,環状配列の複数のカット型12a,12b;12a〜12fの外刃19a,19b;19a〜19fは,相互間に殆ど隙間が無い環状を呈することになって良好な剪断作用を発揮するので,綺麗な切断面を得ることができる。
【0033】
また本発明のパイプ材の切断装置5によれば,芯型8と,一対の下部及び上部カット型12a,12bを有する簡単な構造によりスリット付きパイプ材1を,皺や肉厚の変化を生じせることなく綺麗に切断することができる。
【0034】
尚,所望寸法に切断されたスリット付きパイプ材1は,スリット2に臨む両側端を溶接することにより,通常のパイプに構成することができる。
【0035】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,切断領域のスリット付きパイプ材の周囲に配列するカット型は複数であればよく,その数を問わない。
【符号の説明】
【0036】
A・・・・・・切断領域
1・・・・・・スリット付きパイプ材
6・・・・・・下型ホルダ
7・・・・・・上型ホルダ
8・・・・・・芯型
10・・・・・下部保持型
11・・・・・上部保持型
12a,12b・・・カット型(下部,上部カット型)
16・・・・・下部弾性部材
17・・・・・上部弾性部材
18・・・・・内刃
19a,19b・・・外刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリット(2)の幅(S)を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材(1)を用意し,このスリット付きパイプ材(1)に所望長さの切断領域(A)を設定する工程と,
前記切断領域(A)以外の領域でスリット付きパイプ材(1)の内周面に,一端外周縁に環状の内刃(18)を有する芯型(8)を嵌合して,前記内刃(18)を前記切断領域(A)の内端位置に合わせながら前記スリット(2)の幅(S)を一定寸法に広げた状態にスリット付きパイプ材(1)を保持する工程と,
一端内周縁に円弧状の外刃(19a,19b)を有する複数のカット型(12a,12b)を,その外刃(19a,19b)を前記切断領域(A)の内端位置に合わせながら該切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)の外周面上に相互に一定間隔をおいて環状に配列する工程と,
環状に配列した前記複数のカット型(12a,12b)を半径方向内向きに作動することにより,前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)を縮径変形させながら,前記内刃(18)及び外刃(19a,19b)に剪断作用を発揮させて前記切断領域(A)の内端位置でスリット付きパイプ材(1)を切断する工程とを含むことを特徴とする,パイプ材の切断方法。
【請求項2】
請求項1記載のパイプ材の切断方法を実施するためのパイプ材の切断装置であって,
前記芯型(8)と協働して前記切断領域以外のスリット付きパイプ材(1)を押えるように一対の下部及び上部保持型(10,11)を備え,その下部保持型(12a)を下部弾性部材(16)を介して下型ホルダ(6)に支持する一方,上部保持型(12b)を,前記下型ホルダ(6)に対して昇降し得る上型ホルダ(7)に上部弾性部材(17)を介して支持し,
前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)の外周面上に配置される一対の下部カット型(12a)及び上部カット型(12b)を前記下型ホルダ(6)及び上型ホルダ(7)にそれぞれ固定して取り付け,
前記下型ホルダ(6)に対して前記上型ホルダ(7)を下降させることによって,前記下部及び上部弾性部材(16,17)を圧縮変形させて,前記下部及び上部保持型(10,11)のスリット付きパイプ材(1)に対する保持力を強めると共に,前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)を縮径変形させながら,前記内刃(18)及び外刃(19a,19b)に剪断作用を発揮させて前記切断領域(A)の内端位置でスリット付きパイプ材(1)を切断するように,前記上部カット型(12b)を前記下部カット型(12a)に対して作動するようにしたことを特徴とする,パイプ材の切断装置。
【請求項1】
切断すべきパイプ材として,外周に有する一条のスリット(2)の幅(S)を増減させるように変形し得るスリット付きパイプ材(1)を用意し,このスリット付きパイプ材(1)に所望長さの切断領域(A)を設定する工程と,
前記切断領域(A)以外の領域でスリット付きパイプ材(1)の内周面に,一端外周縁に環状の内刃(18)を有する芯型(8)を嵌合して,前記内刃(18)を前記切断領域(A)の内端位置に合わせながら前記スリット(2)の幅(S)を一定寸法に広げた状態にスリット付きパイプ材(1)を保持する工程と,
一端内周縁に円弧状の外刃(19a,19b)を有する複数のカット型(12a,12b)を,その外刃(19a,19b)を前記切断領域(A)の内端位置に合わせながら該切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)の外周面上に相互に一定間隔をおいて環状に配列する工程と,
環状に配列した前記複数のカット型(12a,12b)を半径方向内向きに作動することにより,前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)を縮径変形させながら,前記内刃(18)及び外刃(19a,19b)に剪断作用を発揮させて前記切断領域(A)の内端位置でスリット付きパイプ材(1)を切断する工程とを含むことを特徴とする,パイプ材の切断方法。
【請求項2】
請求項1記載のパイプ材の切断方法を実施するためのパイプ材の切断装置であって,
前記芯型(8)と協働して前記切断領域以外のスリット付きパイプ材(1)を押えるように一対の下部及び上部保持型(10,11)を備え,その下部保持型(12a)を下部弾性部材(16)を介して下型ホルダ(6)に支持する一方,上部保持型(12b)を,前記下型ホルダ(6)に対して昇降し得る上型ホルダ(7)に上部弾性部材(17)を介して支持し,
前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)の外周面上に配置される一対の下部カット型(12a)及び上部カット型(12b)を前記下型ホルダ(6)及び上型ホルダ(7)にそれぞれ固定して取り付け,
前記下型ホルダ(6)に対して前記上型ホルダ(7)を下降させることによって,前記下部及び上部弾性部材(16,17)を圧縮変形させて,前記下部及び上部保持型(10,11)のスリット付きパイプ材(1)に対する保持力を強めると共に,前記切断領域(A)のスリット付きパイプ材(1)を縮径変形させながら,前記内刃(18)及び外刃(19a,19b)に剪断作用を発揮させて前記切断領域(A)の内端位置でスリット付きパイプ材(1)を切断するように,前記上部カット型(12b)を前記下部カット型(12a)に対して作動するようにしたことを特徴とする,パイプ材の切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−59845(P2013−59845A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201431(P2011−201431)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000138521)株式会社ユタカ技研 (134)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000138521)株式会社ユタカ技研 (134)
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