説明

パイル構造材及びその製造方法と装置

【課題】縦横のパイル密度に大きな差を生じさせることがなく、カットパイル表面において畝状あるいは縞状の筋が発生しないパイル構造材を提供する。
【解決手段】基材1の表面に、パイル長に応じた所定長のパイル糸を、2本1組のパイルを形成するように折曲して縦横に並列して接着する際、基材1の上方において、パイル糸選択送出部から選択されて送出されたパイル糸Pを所定長に切断するとともに、切断したパイル糸Pを2本1組のパイルP1,P1を形成するように中央部で折曲しながら、折曲部P2を基材1の表面の接着剤層3に接着する際、縦横に並列するパイル糸Pの植設位置の所要数毎に、折曲された2本のパイルP1,P1の並列方向を交互に縦横に交差した配列をなすように方向変換して接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてカーペット、各種マット類、壁面材や天井材等の各種内装材、壁掛け等の装飾材その他に広範囲に利用できるパイル構造材及びその製造方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、表面がパイルよりなるカーペットにおいて、従来のウィルトンカーペットやアキスミンスターカーペットに代えて、例えば、縦横が数10cmの方形をなす所謂タイル型カーペットが出現している。かかるタイル型カーペットにおいて、下記の特許文献1に例示するように、編織布や不織布、ゴム材や合成樹脂材等により形成された板状や厚みのあるシート状の基材の表面に、パイル長に応じて一定長さに切断した多数本のパイル糸を、中央部で折曲して該折曲部を接着して植設することが提案されている。
【0003】
特許文献1の場合は、縦横1方向のパイル列を2列一組として、各列毎のパイル糸を横一列に引き揃えた状態で保持しておき、これを並列状態のまま引き出して、一定長さに切断し、切断した各パイル糸をその中央部で折曲するとともに、該折曲部を基材の表面に接着することによりパイル糸を植設するものである。この場合、各列のパイル糸の折曲方向、つまりは各パイル糸の折曲された2本1組のパイルの並列方向は同一方向になる。
【0004】
また、ウィルトンカーペットやアキスミンスターカーペットの場合も、基布に植設された各パイル糸は、縦横1方向に折曲されて並列し、折曲された2本1組のパイルが同方向、例えば縦方向に並列しているのが普通である。
【0005】
そのため、従来のカーペットの場合、折曲されて縦横に並列して植設されたパイル糸は、縦横1方向(例えば縦方向)には折曲された2本のパイルが並列し、他方向(例えば横方向)には折曲された2本のパイルの1本のみが並列することになる。そのため横方向のパイル密度は小さくなる。
【0006】
すなわち、パイル糸が一定長さに切断され折曲されて植設されている場合、折曲された2本1組のパイルP1,P1が、平面的には図17のように同方向に並んで並列することになり、そのため、2本1組のパイルP1,P1の並列方向のパイル密度は、他方向のパイル密度に比して高くなる。例えば、パイル糸の接着間隔が縦横共に同間隔であると、縦方向のパイル密度は、横方向のパイル密度の2倍になる。
【0007】
そのため、パイル表面には、縦方向のパイル列が畝状になって現れ、畝と畝の間に凹みや隙間が生じることがあり、外観的に不体裁になる。特に、シャーリング加工した後のパイル表面においても、前記同様の畝状の筋が現れることになるため、不体裁であり、特に高級感が求められる使用には不向きなものである。
【0008】
なお、前記の問題を解決するために、前記2本1組のパイルの並列方向とは交差する方向の間隔を狭くして、全体的なパイル密度を均一化することが考えられるが、パイル糸の植設機構等の関係で、横方向の間隔を狭くするのには限界があり、どうしても、経方向に比して緯方向のパイル密度が粗くなり、縦横方向のパイル密度を均一化するのは困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−189845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、縦横のパイル密度を均一化でき、パイル表面において畝状あるいは縞状の筋が発生しないパイル構造材を提供するものであり、さらには、このパイル構造材を得るための製造方法と製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する本発明は、板状又はシート状の基材の表面に、所定長に切断されたパイル糸が、2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲され、該折曲部で縦横に並列して接着され植設されてなるパイル構造材であって、各パイル糸は、縦横に並列するパイル糸の植設位置の所要数毎に、折曲された2本1組のパイルの並列方向が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着されてなることを特徴とするものである。これにより、パイル表面の縦横のパイル密度が均一化したものになる。
【0012】
また、本発明は、前記のパイル構造材の製造方法で、板状又はシート状の基材の表面に、パイル長に応じた所定長に切断されたパイル糸が、2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲され、該折曲部で縦横に並列して接着され植設されてなるパイル構造材の製造方法であって、前記基材の上方において供給されるパイル糸を所定長に切断し、切断したパイル糸を2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲しながら該折曲部を基材の表面に接着する際、縦横に並列するパイル糸の植設位置の所要数毎に、折曲された2本1組のパイルの並列方向が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着することを特徴とする。
【0013】
これにより、縦横のパイル密度を均一化したパイル構造材を得ることができる。特に、折曲された2本1組のパイルの並列方向が、縦横に並列するパイル糸の植設位置の1個所毎に交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着した場合、全面に渡って縦横のパイル密度をより一層均一化できることになる。さらに、供給されるパイル糸がパイル表面の柄模様に応じて各植設位置毎にパイル糸選択送出部から選択されて送出されるパイル糸であるものとすることにより、縦横のパイル密度を均一にして表面状態の良好な柄模様を表現できる。
【0014】
また、本発明は、前記のパイル構造材の製造装置であり、板状又はシート状の基材を載置できる縦横に移動制御自在なxyテーブルと、該xyテーブル上に、基材を載置できる所要の間隔をおいて該xyテーブルと共に移動可能に支持され、パイル糸の植設ピッチに相当する間隔で縦横に並列して多数の接着ガイド用の貫通孔が形成された多孔のガイドボードと、前記ガイドボードの上方において、パイル糸供給部から供給される複数種のパイル糸をそれぞれ水平方向に送出可能に保持する複数の導糸孔部が縦横1方向に並列して、かつ並列方向に移動可能に配置され、1つの導糸孔部を選択して所定の送出用停止位置に停止させることができるパイル糸選択送出部と、前記パイル糸選択送出部の前記送出用停止位置の前方において、選択された導糸孔部から水平方向に送出されるパイル糸を中央部に押下用ガイド空間を空けて両側から挟持する開閉自在な一対の挟持部材を有してなるパイル糸保持部と、前記パイル糸保持部と前記パイル糸選択送出部との間で、選択された導糸孔部から送出され前記両挟持部材間に挟持されたパイル糸を所定長にカットするカッター装置と、前記パイル糸保持部の両挟持部材間の押下用ガイド空間の上方対応位置において押下駆動手段により降下可能に支持された棒状の押下部材を備え、該押下部材の降下により該押下部材の下端部がガイド空間を横切って保持されているパイル糸に係合して、該パイル糸を、パイル糸保持部から下方に抜き出し、かつ前記ガイドボードの1つの接着ガイド用の貫通孔に挿入して折曲するとともに、該折曲部を前記xyテーブル上の基材の表面に押圧し接着するように設けられた押下接着手段とを備え、前記押下接着手段の押下部材は、前記押下駆動手段により、非回転状態で降下する場合と、降下中に所定の角度回転する場合とを適宜選択的に制御可能に設けられてなることを特徴とする。
【0015】
これにより、パイル糸選択送出部から選択されて送出されるパイル糸を、所定長さに切断し、切断したパイル糸を押下接着手段により押下して2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲しながら、縦横に並列するパイル糸の植設位置の所要数毎に、2本1組のパイルの並列方向を交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着することができ、縦横のパイル密度を均一化したパイル構造材を製造することができる。
【0016】
前記のパイル構造材の製造装置において、前記押下接着部材は、ロータリーアクチュエータにより、非回転状態で降下する場合と、1/4回転して降下する場合とを選択的に制御されるものとすることができる。
【0017】
前記のパイル構造材の製造装置において、前記押下駆動手段が、押下部材を、非回転状態で降下させる場合と、降下中に所定の角度回転させる場合とを適宜選択的に制御できるロータリーアクチュエータであるものが好ましい。
【0018】
前記のパイル構造材の製造装置において、パイル糸供給部から前記パイル糸選択送出部に到るパイル糸の供給経路には、パイル糸の送出長さ分を直線状走行部から側方へ引き出して保留しておくための引き出しローラを含む測長保留部が設けられてなるものが好ましい。
【0019】
前記パイル糸の測長保留部の前記引き出しローラは、1方向に押圧付勢するバネ手段を備えるエアーシリンダーに連接されて支持され、エアーシリンダーの作動によりバネ手段に抗してパイル糸を直線状走行部から側方の保留走行部へ引き出すように設けられてなるものとすることができる。
【0020】
前記のパイル構造材の製造装置において、前記測長保留部とパイル糸選択送出部との間に、パイル糸の送出を規制するパイル糸押さえ手段が設けられてなるものが、パイル糸の送出長さを一定に保持する上で好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上記したように本発明のパイル構造材によれば、所定長さに切断され中央部で折曲されて縦横に並列して基材表面に接着され植設されたパイル糸が、植設位置の所要数、例えば1個所毎に、2本1組のパイルの並列方向が縦横に交互に交差した配列をなしており、縦横のパイル密度が全面にわたって均一化しているため、縦横いずれの方向においても、密度差による畝状の筋や縞が生じることがなく、パイル表面が極めて綺麗で外観的体裁の良好なものとなり、例えばカーペット、マット、あるいは内装材その他の各種の用途において、高級感を呈するものになる。また、パイル表面を柄出しした壁掛け等の装飾品としても好適に使用できるものになる。
【0022】
また、本発明のパイル構造材の製造方法及び装置により、前記のように縦横のパイル密度が全面にわたり均一化し、表面状態の良好なパイル構造材を問題なく確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例のパイル構造材を示す略示斜視図である。
【図2】同上のパイル構造材の一部の拡大断面図である。
【図3】同上のパイル構造材のパイル糸の配列状態の略示平面説明図である。
【図4】同上のパイル構造材を製造する装置の1実施例の概略平面図である。
【図5】同上のxyテーブルとガイドボード部分の一部を切欠した平面図である。
【図6】同上の断面図である。
【図7】xyテーブル上の支持板の平面図(a)と、枠状部材の1部の断面図(b)である。
【図8】同上の支持板上への基材の供給状態を示す断面説明図である。
【図9】同上の植設機構部分の略示正面図である。
【図10】同上の植設機構部分のパイル糸送出前の略示縦断側面図である。
【図11】同上のパイル糸送出時の略示縦断側面図である。
【図12】(a)(b)(c)のそれぞれ同上のパイル糸の送出及び挟持状態の平面説明図である。
【図13】押下接着手段の正面図(a)と側面図(b)である。
【図14】送出されたパイル糸を挟持した状態の断面説明図である。
【図15】(a)(b)(c)のそれぞれ同上の押下部材の押下作用によるパイル糸の折曲及び接着状態の断面説明図である。
【図16】同上のパイル糸の方向を交互に変えて接着する場合の断面図である。
【図17】従来のパイル構造材のパイル糸の配列状態の略示平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0025】
図1〜図3は、本発明のパイル構造材Aの概略を示している。このパイル構造材Aは、板状又はシート状の基材1の表面に、所定長に切断されかつ多数本のパイル糸Pが、中央部で2本1組のパイルP1,P1を形成するように折曲されて、かつ該折曲部P2で縦横に並列して接着され植設されてなる。3は例えばヒートシール用等の合成樹脂製等の接着剤層を示す。
本発明のパイル構造材Aは、縦横に並列するパイル糸Pの植設位置の所要数、例えば1個所もしくは数個所毎に、図2及び図3に示すように、折曲された2本1組のパイルP1,P1の並列方向が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて各パイル糸Pが基材1の表面に接着されてなる。例えば図3のように、縦横に並列するパイル糸Pの植設位置の1個所、すなわち1本の各パイル糸P毎に、折曲された2本1組のパイルP1,P2の並列方向(パイル糸Pの折曲方向)が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着され植設されてなるものである。
【0026】
前記パイル糸Pの植設位置の縦横のそれぞれの列においても、例えば2〜3本のパイル糸P毎に、折曲された2本1組のパイルP1,P1の並列方向が交互に縦横に交差した方向をなすように配列しておくこともできるが、パイル表面全体のパイル密度の均一性、シャーリング加工後の表面の体裁、美麗さ等の点からは、図3のように、前記パイル糸Pの植設位置の1個所毎に交互に方向を変えて植設しておくのが好ましい。
【0027】
前記パイル糸Pの縦横の植設ピッチは、パイル糸Pの素材や太さ、用途等に応じて適宜設定できるが、シャーリング加工後のパイル表面に毛割れによる筋が生じないように設定するのが好ましい。
【0028】
なお、前記パイル糸Pとしては、ウールその他の紡績糸よりなる天然繊維、アクリル、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維その他の各種素材の糸を使用できる。さらに必要に応じて、多数本の細い糸を殆ど撚らずに集合した状態のパイル用糸条を用いることもできる。また、前記の板状又はシート状の基材1としては、編織布、不織布、合成樹脂材、ゴム材、紙質や木質のボードの少なくとも1種が、用途に応じて選択されて用いられる。タイル型カーペットの場合、縦横所定寸法の方形にカットされ、表面に接着剤が塗布されて使用される。これらの基材1には必要に応じてバッキング材が積層される場合がある。
【0029】
本発明のパイル構造材Aの製造に用いる製造装置の概略を、図4〜図16に基づいて説明する。図において、10は縦横に移動自在なxyテーブルであり、サーボモータ等を利用した周知の移動手段により、板状又はシート状の基材1を所定位置に載置してxy方向すなわち縦横方向に移動可能であり、任意の位置に移動制御できるようになっている。通常、後述するガイドボードの接着ガイド用の貫通孔によって設定されるパイル糸Pの植設位置の間隔に合わせて縦横に移動するように制御される。
【0030】
前記xyテーブル10の上には、該xyテーブル10上に載置される基材1の上方に、植設するパイル糸Pの長さよりも小さい所要の間隔、例えば2〜3mm程度の間隔をおいて該xyテーブル10と共に移動可能に折曲及び接着ガイド用のガイドボード11が平行に支持されている。12は支持脚であり、前記ガイドボード11は該支持脚12上に皿ネジ等の締結手段13により固定されている。
【0031】
前記ガイドボード11は、植設するパイル糸Pの長さによっても異なるが、例えば厚みが5〜25mm、好ましくは10〜20mmで、パイル構造材Aにおいて縦横に並列するパイル糸Pの植設位置の間隔(植設ピッチ)に応じた間隔で、前記パイル糸Pを後述のように中央部で折曲しかつ折曲状態を保持して接着できるようにする接着ガイド用の貫通孔14が多数縦横に並列して形成された多孔板からなる。前記の貫通孔14は、製造対象のパイル構造材Aのパイル形態やパイル密度及びパイル糸Pの太さ等によって異なるが、例えば、直径が1.5〜5.0mm、より好ましくは2.0〜3.5mmで、貫通孔同士間に少なくとも0.15mm、好ましくは0.2〜0.3mm程度の厚みを残すように1.7〜5.5mmの間隔で形成される。もちろん、前記以外の直径、配置間隔に形成して実施することもできる。
【0032】
前記基材1は前記xyテーブル10上に直に載置することもできるが、図示する実施例の場合は、xyテーブル10の上の前記ガイドボード11との間に、基材1を加熱状態で受支する熱板を兼ねる支持板15が、前記支持脚12をガイドにして上下動可能に配置されている。この支持板15は、例えばxyテーブル10との間あるいはxyテーブル10の外方に配置されるエアシリンダー等の適宜の上下動付与手段(図示せず)に連結されて支持され、パイル糸Pの接着作業時には、図8の実線のように載置した基材1の表面(接着剤層3の表面)がガイドボード11の下面との間に2〜3mmの間隙を保有する位置に保持されるとともに、基材1全体のパイル糸Pの植設が完了した時点で、植設されたパイル糸Pがガイドボード11の貫通孔14から抜脱する位置まで、例えば2cm程度降下できるように設けられる(図8の鎖線)。
【0033】
前記支持板15への基材1の供給はxyテーブル10の側方から行われるが、この際、図8のように、xyテーブル10の側方に設けた余熱部16に基材1を置いて、基材1の表面に塗布されている接着剤層3を予備的に加熱しておき、加熱状態の基材1を前記支持板15上に供給するのが、支持板15上での加熱時間を短縮でき好ましい。16aは室をなす余熱部16の開閉部を示す。
【0034】
図示する実施例の場合、前記支持板15の上面に、前記側方から供給される基材1を定位置に位置決めして保持するための枠状部材17が四方を囲むように設けられている。図7に略示するように、前記枠状部材17における前記余熱部16と対向する一側辺の部材17aは、前記支持板15に対し起伏自在に設けられており、前記余熱部16からの基材1の供給時には支持板15の上面の凹部18に伏倒状態になって基材1を受け入れ、受け入れ後に起立した状態になるように設けられている。また、前記部材17aと対向する反対側の部材17bについても、パイル糸Pの植設完了後の基材1、つまりパイル構造材Aの取り出しの際に伏倒状態にできるように、支持板15に対し起伏自在に設けておくことができる。植設完了後の基材1を、新たな基材1の供給作用によって反対側に送り出すこともできる。さらに前記両部材17a,17bと直交する方向の部材17c,17cは、エアシリンダー等により位置変位可能に支持され、両部材17c,17c間の間隔を適宜調整できるように設けられる。
【0035】
図中の符号20は前記ガイドボード11のやや上方の所要の位置に設置したパイル糸選択送出部である。このパイル糸選択送出部20は、図9〜図11に示すように、例えば、クリールスタンド等のパイル糸供給部(図示せず)から、製造対象のパイル構造材Aのパイル表面の柄模様に応じて引き出し供給される多種、多色の各種のパイル糸Pを、それぞれ個々に水平方向に送出可能に保持する複数の導糸孔部21が、縦横1方向に並列してかつ適宜移動手段22により並列方向に移動可能に配置されてなり、選択した任意のパイル糸Pの導糸孔部21を、それぞれ後述する押下接着手段50によるパイル糸Pの折曲及び接着用の押下位置を基準として、該押下位置に対応して設定される所定の送出用停止位置に停止させることができるように設けられている。図の場合、前記各導糸孔部21は、上方から供給されるパイル糸Pを水平方向に方向転換して送出できるようにL字形をなして並設され、一体的に構成されている。
【0036】
前記各導糸孔部21を前記送出用停止位置に移動させる移動手段22は、サーボモータによるボールネジの回転により1方向に往復移動可能な移動体22aを有してなり、前記各導糸孔部21は並列状態をなして前記移動体22aに連結された取付板部材23の水平板部に取着されて支持されており、制御部(図示せず)からの指令により移動体22aの移動を制御することにより、任意の糸種(色又は材質等)のパイル糸Pの導糸孔部21を、選択的に前記送出用停止位置に移動停止させることができるようになっている。
【0037】
前記各導糸孔部21は、それぞれ例えば水平通路部分にエアを吹き込み導入するためのエア導入部24が設けられており、該水平通路部分にエアを導入して送出側口端部21aより噴出させることにより、該導糸孔部21に挿通されたパイル糸Pを水平方向前方に送出させることができるようになっている。
【0038】
また、前記パイル糸供給部から前記パイル糸選択送出部20の導糸孔部21に到る各パイル糸Pの供給経路の一部、例えば前記パイル糸選択送出部20の直前部分の前記取付板部材23に沿う部分には、それぞれ個別にパイル糸Pの送出長さ分を直線状走行部25aから側方へ引き出して保留しておくための引き出しローラ26を備える測長保留部27が設けられている。
【0039】
前記パイル糸Pの測長保留部27における前記引き出しローラ26は、1方向に押圧付勢する押しバネ等のバネ手段28aを備えるエアシリンダー28に連接されて進退自在に支持されており、パイル糸Pを送出しない通常時(非送出時)には、エアーシリンダー28の作動により前記バネ手段28aに抗した引張作用でパイル糸Pを直線状走行部25aから側方の保留用走行部25bへ引き出した状態に保持し(図10の状態)、また、該パイル糸Pの送出の際には、前記エアシリンダー28の作動を解除して前記バネ手段28aの付勢力によってパイル糸Pに作用しない位置(図11の状態)になるように設けられている。これにより、前記パイル糸Pが直線状走行部25aの位置にまで戻り、前記保留用走行部25bの引き出し分の長さのパイル糸Pを送出できるようになっている。したがって、前記引き出しローラ26によるパイル糸Pの引き出しによる保留長さを調整することにより、パイル糸Pの送出長さを調整し設定できることにもなる。
【0040】
さらに、前記各パイル糸Pの測長保留部27と前記パイル糸選択送出部20との間、特には前記パイル糸Pの測長保留部27の下部位置には、それぞれパイル糸選択送出部20の導糸孔部21からのパイル糸Pの送出時以外は、該パイル糸Pの送出を規制するためのパイル糸押さえ手段30が設けられている。このパイル糸押さえ手段30は、該パイル糸Pを前記取付板23等に対して押さえる押さえ部材31が、1方向に引張付勢する引きバネ等のバネ手段32aを備えるエアシリンダー32に連結されて進退自在に設けられてなり、基本的に前記導糸孔部21からのパイル糸Pの送出時以外は押さえ作用をするように設けられている。
【0041】
前記測長保留部27のエアシリンダー28及び押さえ手段30のエアシリンダー32は前記取付板部材23の一部に取設されており、前記導糸孔部21ととも移動するように設けられている。図中の35は、前記測長保留部27のパイル糸Pの供給側に設けられたパイル糸Pの戻り規制のための保持部であり、供給されるパイル糸Pをバネ部材36により弾力的に押さえるように設けられている。
【0042】
図中の37はバルブユニットであり、前記パイル糸選択送出部20の選択された各導糸孔部21へのエア導入のためのエア供給をそれぞれ制御するバルブ(図示を省略)、及び前記各パイル糸Pの測長保留部27の各エアシリンダー28及び押さえ手段30の各エアーシリンダー32へのエア供給をそれぞれ制御するバルブ(図示を省略)を備える。これらのバルブは主としてソレノイドバルブからなり、制御部からの信号により、各導糸孔部21毎のパイル糸Pの植設作用に合わせて制御されるように構成される。図中の38は前記バルブユニット36から各導糸孔部21へのエア通路、39は前記各エアシリンダー28及び32へのエア供給路である。前記エア供給路39は途中で二股に分かれて両エアシリンダー28,32に通じている。
【0043】
前記バルブユニット37における各バルブは、例えば、選択した導糸孔部21のパイル糸Pの送出時には、制御部からの信号により該導糸孔部21へのエア通路38のバルブを開にする一方、エア供給路39のバルブを閉にすることにより、導糸孔部21にエアを導入すると同時に、測長保留部27のエアシリンダー28と押さえ手段30のエアシリンダー32へのエア供給を遮断して、パイル糸Pを導糸孔部21に導入したエアにより送出できるように制御され、また、所定長のパイル糸Pの送出が完了したときは、前記導糸孔部21へのエア通路38のバルブを閉にする一方、エア供給路39のバルブを開にすることにより、導糸孔部21へのエア導入を遮断するのと同時に、測長保留部27のエアシリンダー28と押さえ手段30のエアシリンダー32へのエア供給を行うように制御され、パイル糸の送出を停止するとともに、測長保留部27の引き出しローラ26によりパイル糸Pを保留用走行部25bに引き出しておくように設定され制御される。
【0044】
通常、前記バルブユニット37は、所定長のパイル糸Pの送出を検知した時に制御部からの信号により、前記押さえ手段30のエアシリンダー33の作動が最初に行われるように僅かな時間差をもって動作するように制御される。
【0045】
さらに、前記パイル糸選択送出部20の前記送出用停止位置の前方(パイル糸Pの送出方向の前方)には、後述する押下接着手段50によるパイル糸Pの折曲及び接着用の押下位置を中心にして、選択された導糸孔部21から水平方向に送り出されるパイル糸Pを両側から挟持する開閉自在な一対のブロック状の挟持部材41,41を有するパイル糸保持部40が設けられている。
【0046】
前記両挟持部材41,41は、エアシリンダー42,42の作動により開閉動作するように設けられており、これにより両挟持部材41,41間に送り込まれるパイル糸Pを挟持できるようになっている。両挟持部材41,41の対向面側の中央部には、パイル糸挟持状態において押下用ガイド空間43を形成する凹溝43a,43aが形成されており、パイル糸Pを挟持するとき、後述する押下接着手段50の棒状の押下部材51を下方に通すことができる平面より見て円形(楕円形を含む)のガイド空間43を両挟持部材41,41間に形成できるようになっている。前記ガイド空間43は、必ずしも円形である必要はなく、押下部材51を通すことができる形状であれば、種々の形状による実施が可能である。なお、前記両挟持部材41,41によるパイル糸Pの挟持力は、押下部材51の降下によりパイル糸Pを抜き出せる程度に設定される。
【0047】
符号44は、前記両挟持部材41,41を開閉可能に支持し、かつエアシリンダー42,42を支持する支持板であり、前記ガイド空間43に相当する位置に後述する押下接着手段50の押下部材51を貫挿できるガイド用貫通孔45が設けられており、該貫通孔45を通して前記パイル糸Pを押下できるように設けられている。図中の46は送出されたパイル糸Pを検知するセンサであり、このセンサ36によりパイル糸Pを検知したときに、挟持部材41,41のエアシリンダー42,42が作動して挟持動作を行うように構成され、さらに制御部からの信号により、上記パイル糸選択送出部20のパイル糸送出を停止するように設定される。なお、前記支持板44は不動のフレーム部材に連結されて所定の位置に支持されている(図示せず)。
【0048】
前記パイル糸保持部40と前記パイル糸選択送出部20との間には、導糸孔部21から送出されてパイル糸保持部40の挟持部材41,41により挟持されたパイル糸Pを所定長にカットするカッター装置48が設けられている。このカッター装置48の構造は、鋏式、スライド刃や回転刃式等の種々のカッターを利用できるが、実施上は鋏式のカッター装置が好ましい。いずれも、前記挟持部材41,41による挟持動作後に直ちに切断作用するように構成される。
【0049】
前記パイル糸保持部40の両挟持部材41,41間のガイド空間43及び支持板44の貫通孔45と対応する位置、すなわち折曲及び接着用の押下位置の上方には、折曲及び接着用の押下接着手段50が設けられている。この押下接着手段50は、前記ガイド空間43及び貫通孔45を通過して降下できる下方に延びた棒状の押下部材51を有してなり、該押下部材51が、適宜押下駆動手段52に連結されて上下動可能に支持されてなる。
【0050】
押下駆動手段52は、例えばロータリーアクチュエータよりなり、該ロータリーアクチュエータに連結されて下方鉛直方向に延びる棒状の押下部材51が、ロータリーアクチュエータの作動により降下するとともに、この降下作用により、該押下部材51の下端部51aが前記ガイド空間43を横切って保持されているパイル糸Pに係合して、該パイル糸Pを、パイル糸保持部40の両挟持部材41,41間から抜き出し、かつその下方の支持板44の貫通孔45及び前記ガイドボード11の接着ガイド用の貫通孔14に挿入して折曲するとともに、該折曲部P2をxyテーブル10上の基材1、すなわち前記支持板15上の基材1の表面の接着剤層3に押圧し接着するように設けられている。
【0051】
特に、前記押下接着手段50の押下部材51は、前記ロータリーアクチュエータ等の押下駆動手段52の作動により、非回転状態で降下する場合と、降下時に、所定の位置から下方、特には下端部51aがパイル糸Pと係合する位置から下方において、所望の角度、例えば1/4回転する場合とを適宜選択可能に設けられており、縦横に並列して接着されるパイル糸Pの植設位置の所要数、例えば1個所毎に、交互に選択されて押下接着動作を行うように構成されている。
【0052】
そのため、前記押下部材51の下端51aは、図13(a)(b)のように、前記挟持部材41,41により水平に挟持されたパイル糸Pに跨って係止できるように、逆V字形または円弧状の軸直角方向の凹溝53が形成されて下方向きの二股状をなしている。これにより、押下部材51の降下の際には、図14に鎖線で示すように、前記二股状部分がパイル糸Pに対し跨って係止した状態で降下でき、かつ該押下部材51の回転によりパイル糸Pも同伴回転させることができ、これによって折曲された2本1組のパイルP1,P1の並列方向を変換させることができるようになっている。
【0053】
図の場合、前記押下部材51の下部において前記凹溝53の溝方向の両側面がテーパ状に切欠形成されており、折曲された2本のパイルP1,P1が、該押下部材51の両側の切欠部分で前記ガイドボード11の貫通孔14内に保持されるようになっている(図15の(b)(c))。
【0054】
上記したパイル糸Pの供給経路中の測長保留部27及びパイル糸押さえ手段30並びに移動手段22を含むパイル糸選択送出部20、パイル糸保持部40、カッター装置48、押下接着手段50等を組み合わせ構成した植設機構を、1台のxyテーブル10上に1組だけを設けて実施することもできるが、実施上は、前記構成の植設機構を1ユニットとして、1台のxyテーブル10上に複数組、例えば図4のように4組の前記植設機構を設けて実施するのが好ましい。
【0055】
この場合、図のように、前記xyテーブル10上に載置される基材1に対応するガイドボード11の領域を、例えば4つの領域に区画し、各区画毎に一組の前記植設機構を設けておき、それぞれの植設機構をxyテーブル10の移動に合わせて同時にかつ個別に制御し、それぞれの植設機構において、パイル糸選択送出部20によるパイル糸Pの選択送出、パイル糸保持部40によるパイル糸Pの保持、カッター装置48による切断、押下接着手段50によるパイル糸Pの折曲及び接着の一連の植設動作を同時に行うように構成しておく。これにより、前記四つの区画において、所定の位置例えば隅角部の植設位置を原点位置として縦横の任意の方向に順次同時に植設することができ、植設効率を向上できる。
【0056】
上記した実施例の製造装置を使用して、本発明の実施例に係るパイル構造材Aを製造する方法を装置の動作状態と共に説明する。
【0057】
製造開始までの準備作業として、製造対象のパイル構造材Aの柄模様や色彩に応じた糸種や色種の所要数のパイル糸、例えば12色の色柄の場合には12色のパイル糸Pを、それぞれパイル糸供給部から供給経路中の測長保留部27及び送出規制のためのパイル糸押さえ手段30の部分を通して引き出し、それぞれに対応したパイル糸選択送出部20の各導糸孔部21に挿通し送出可能に保持させておく。このとき、バルブユニット37の制御により、各導糸孔部21へのエア通路38のバルブを閉にする一方、エア供給路39のバルブを全て開にしておくことにより、測長保留部27のエアシリンダー28と押さえ手段30のエアシリンダー32へのエア供給を行い、測長保留部27の引き出しローラ26により各パイル糸Pを保留用走行部25bに引き出しておき、さらに各押さえ手段30の押さえ部材31を押さえ作用させておく(図10)。
【0058】
そして、パイル構造材Aの製造を開始し、xyテーブル10の上の熱板を兼ねる支持板15上に、表面に接着剤を塗布した不織布等の基材1を供給し、例えば枠状部材17により所定の位置に位置決めして載置し、表面の接着剤層3を加熱軟化状態に保持する。この際、基材1を予め余熱部16に置いて表面の接着剤層3を予備的に加熱しておくのが、加熱時間を短縮でき好ましい。
【0059】
この後、xyテーブル10の移動制御により、該xyテーブル10上の基材1の表面における所定の1つのパイル糸Pの植設位置、すなわち縦横に所定の間隔で並列して設定される植設位置のうちの植設開始のための1番目の植設位置、例えば隅角部の1つの植設位置に対応するガイドボード11の1つの貫通孔14を、押下接着手段50による折曲及び接着用の押下位置の下方に位置させる。同時に、制御部からの選択指令により、移動手段22を移動制御して移動体22aと共にこれに連結されたパイル糸選択送出部20の各導糸孔部21を移動させ、パイル表面の柄模様に応じて、該植設位置のパイルの色彩等に対応する所定のパイル糸Pの導糸孔部21を選択して、該導糸孔部21を送出用停止位置に移動し停止させる。
【0060】
次に、制御部からの指令によりバルブユニット37のバルブを制御し、選択されて送出用停止位置に停止した1つの前記導糸孔部21へのエア通路38のバルブを開にし、該導糸孔部21にエアを導入するとともに、該導糸孔部21に到るパイル糸Pの供給経路の測長保留部27のエアシリンダー28及び押さえ手段30のエアシリンダー32へのエア供給路39のバルブを閉にして、該エアシリンダー28及び32へのエア供給を遮断する。これにより、測長保留部27の引き出しローラ26をバネ手段28aの付勢力でパイル糸Pに作用しない位置に進出させ、同時に押さえ手段30の押さえ部材31をバネ手段32aの付勢力でパイル糸Pに対する押さえ作用を解除する。
【0061】
これにより、前記導糸孔部21に導入されるエアにより、該導糸孔部21に保持されているパイル糸Pが送出される。特に、前記測長保留部27における直線状走行部25aから保留用走行部25bに引き出されている長さ分のパイル糸Pが水平方向に送出される(図11)。
【0062】
前記のように、送出されたパイル糸Pは、前記送出用停止位置の前方の折曲及び接着用の押下位置を中心に配置されているパイル糸保持部40の一対の挟持部材41,41の間を通って延びる(図12(b))。そして、前記パイル糸Pの所定長さ分が送出された時、例えばその先端をセンサ46により検知すると、これを合図にして直ちに挟持部材41,41のエアシリンダー42,42が作動して挟持動作を行い、前記パイル糸Pを挟持する(図12(c))。
【0063】
また、同時に、制御部からの信号により、前記パイル糸選択送出部20のパイル糸Pの送出を停止するようにバルブユニット37のバルブが制御される。すなわち、前記導糸孔部21へのエア通路38のバルブを閉にする一方、エア供給路39のバルブを開にすることにより、導糸孔部21へのエア導入を遮断するとともに、測長保留部27のエアシリンダー28と押さえ手段30のエアシリンダー32へのエア供給を行い、押さえ手段30では、エアシリンダー32によりバネ手段32aに抗して押さえ部材31を進出させてパイル糸Pを押さえて送出を阻止する。一方、測長保留部27では、エアシリンダー28の作動でバネ手段28aに抗して引き出しローラ26を側方へ移動させ、パイル糸Pを保留用走行部25bに引き出しておく(図10)。
【0064】
さらに、前記パイル糸保持部40の挟持部材41,41による挟持作用の後、該パイル糸保持部40とパイル糸選択送出部20との間のカッター装置48を作動させ、前記パイル糸Pを所定長さに切断する。通常、前記挟持部材41,41に挟持されたパイル糸Pの中央部が、挟持部材41,41間の押下用ガイド空間43の部分に位置する長さに切断する。したがって、切断されたパイル糸Pは、その中央部が前記ガイド空間43を横切って保持されていることになる(図12(c))。
【0065】
前記切断作用の後、パイル糸保持部40の上方に設けられた押下接着手段50の押下駆動手段52、例えばロータリーアクチュエータを作動させて、棒状の押下部材51を降下させる。この押下部材51の降下の際、該押下部材51の下端部51aが前記挟持部材41,41の前記ガイド空間43の部分に入り込んで降下し(図15(a))、この際、下端部の凹溝53による二股状部分が該ガイド空間43の部分を横切って保持されているパイル糸Pに係合して、該パイル糸Pの中央部を押下し、該パイル糸Pを両挟持部材41,41間から抜き出しながら、その下方に位置しているガイドボード11の接着ガイド用の貫通孔14に挿入しさらに押下する(図15(b))。これにより、押下されるパイル糸Pは前記貫通孔14の内周面に沿って2本のパイルP1,P1を形成するように折曲される。このとき、押下部材51の下端部51aの両側面がテーパー状に切欠されていることにより、折曲された2本のパイルP1,P1の部分が前記貫通孔14の内周面との間の隙間に保持される。また、前記押下部材51により押下されることで、前記貫通孔14を通過したパイル糸Pの折曲部b2がガイドボード11の下方に位置している基材1の表面の接着剤層3に押下部材51による押下作用に押し付けられ接着される(図15(c))。この押下接着作用のあと、前記押下部材51は、押下駆動手段52の作動により前記パイル糸Pを残して上昇し、ガイドボード11及びパイル糸保持部40の上方の元の位置に復帰する。接着されたパイル糸Pはガイドボード11の貫通孔14内に保持されたままである。
【0066】
この後、xyテーブル10の移動制御により、縦横に並列するパイル糸Pの次の植設位置、つまり隣接する植設位置に対応するガイドボード11の貫通孔14を、前記押下接着手段50による折曲及び接着用の押下位置の下方に対応位置させるように移動させて、上記同様に、移動手段22によりパイル糸選択送出部20の各導糸孔部21を移動させて、パイル表面の柄模様に応じて、該植設位置のパイルの色彩等に対応する所定のパイル糸Pの導糸孔部21を選択して送出用停止位置に移動停止させ、該導糸孔部21のパイル糸Pを送出し、該パイル糸Pをパイル糸保持部40の挟持部材41,41により挟持して、カッター装置48により切断し、切断後、押下接着手段50の押下部材51を降下させて、切断したパイル糸Pの中央部を押下し、ガイドボード11の貫通孔14に挿入して2つのパイルP1,P1を形成するように折曲するととも、ガイドボード11の貫通孔14を抜き出た折曲部P2を基材1の表面に接着する。
【0067】
このようにして、基材1の表面の各パイル糸Pの植設位置毎に、順次、パイル表面に表現する柄模様に対応するパイル糸Pをパイル糸選択送出部20から選択して送出し、送出したパイル糸Pを所定長に切断するとともに、切断したパイル糸Pを2本1組のパイルP1,P1を形成するように中央部で折曲しながら、該折曲部P2を基材1の表面に接着する。
【0068】
特に、本発明の製造装置の場合は、切断された各パイル糸Pを押下接着手段50の押下部材51により押下して折曲及び接着する際、ロータリーアクチュエータ等の押下駆動手段52の作動により、非回転状態で降下する場合と、降下時に所定の位置から下方において所望の角度、例えば1/4回転して降下する場合とを適宜選択でき、非回転状態で降下する場合は、上記したようにパイル糸Pの送出方向に2本のパイルP1,P1が並列するように折曲して植設でき、また、降下時に前記下端部51aがパイル糸Pに係合した状態で1/4回転する場合は、前記押下部材51の下端部51aの二股状部分が前記パイル糸Pに跨って係合した状態で該押下部材51が回転するのに伴って、下端部51aに係合しているパイル糸Pも、これに同伴して回転しながらガイドボード11の接着ガイド用の貫通孔14に押し込まれて折曲されることで(図16の鎖線)、折曲された2本のパイルP1,P1の並列方向が前記とは交差した配列をなして基材1の表面に植設される。
【0069】
そのため、縦横に並列するパイル糸Pの植設位置の所要数、例えば1個所毎に、折曲された2本1組のパイルP1,P1の並列方向を交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着することができ(図16)、これにより、縦横のパイル密度が全面にわたって均一化し、パイル表面において畝状の筋や縞が発生したり、毛割れが生じたりする虞がなく、体裁よく美麗なパイル表面を有する例えば図1(図2)のようなパイル構造材を提供できる。
【0070】
上記のようにして、1枚のパイル構造材のパイル植設が完了すと、xyテーブル10上の支持板15を降下させて、ガイドボード11の貫通孔14内に保持されているパイルP1,P1を下方に抜脱させて側方へ取り出する。取り出されたパイル構造材は接着剤を硬化させた後、シャーリング等の処理工程に送られる。前記支持板15上には、新たに基材1が供給され、上記同様のパイル植設が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、カーペット、壁面材や天井材等の内装材、壁掛け等の装飾材等に使用される各種のパイル構造材に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
A…パイル構造材、P…パイル糸、P1…パイル、P2…折曲部、1…基材、3…接着剤層、10…xyテーブル、11…ガイドボード、12…支持脚、14…貫通孔、15…支持板、16…余熱部、17…枠状部材、17a,17b,17c…測辺の部材、20…パイル糸選択送出部、21…導糸孔部、21a…送出側口端部、22… 移動手段、22a…移動体、23…取付板部材、24…エア導入部、25a…直線状走行部、25b…保留用走行部、26…引き出しローラ、27…測長保留部、28…エアシリンダー、28a…バネ手段、30…パイル糸押さえ手段、31…押さえ部材、32…エアシリンダー、32a…バネ手段、35…保持部、36…バネ部材、37…バルブユニット、38…エア通路、39…エア供給路、40…パイル糸保持部、41…挟持部材、42…エアシリンダー、43…押下用ガイド部、43a…凹溝、44…支持板、45…ガイド用貫通孔、46…センサ、48…カッター装置、50…押下接着手段、51…押下部材、51a…下端部、52…押下駆動手段、53…凹溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状又はシート状の基材の表面に、所定長に切断されたパイル糸が、2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲され、該折曲部で縦横に並列して接着され植設されてなるパイル構造材であって、
前記パイル糸は、縦横に並列するパイル糸の植設位置の所要数毎に、折曲された2本1組のパイルの並列方向が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着されてなることを特徴とするパイル構造材。
【請求項2】
板状又はシート状の基材の表面に、所定長に切断されたパイル糸が、2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲され、該折曲部で縦横に並列して接着され植設されてなるパイル構造材の製造方法であって、
前記基材の上方において供給されるパイル糸を所定長に切断し、切断したパイル糸を2本1組のパイルを形成するように中央部で折曲しながら該折曲部を基材の表面に接着する際、縦横に並列するパイル糸の植設位置の所要数毎に、折曲された2本1組のパイルの並列方向が交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着することを特徴とするパイル構造材の製造方法。
【請求項3】
折曲された2本1組のパイルの並列方向が、縦横に並列するパイル糸の植設位置の1個所毎に交互に縦横に交差した配列をなすように方向を変えて接着する請求項2に記載のパイル構造材の製造方法。
【請求項4】
供給されるパイル糸がパイル表面の柄模様に応じて各植設位置毎にパイル糸選択送出部から選択されて送出されるパイル糸である請求項2又は3に記載のパイル構造材の製造方法。
【請求項5】
板状又はシート状の基材を載置できる縦横に移動制御自在なxyテーブルと、
該xyテーブル上に、基材を載置できる所要の間隔をおいて該xyテーブルと共に移動可能に支持され、パイル糸の植設ピッチに相当する間隔で縦横に並列して多数の接着ガイド用の貫通孔が形成されたガイドボードと、
前記ガイドボードの上方において、パイル糸供給部から供給される複数種のパイル糸をそれぞれ水平方向に送出可能に保持する複数の導糸孔部が縦横1方向に並列して、かつ並列方向に移動可能に配置され、1つの導糸孔部を選択して所定の送出用停止位置に停止させることができるパイル糸選択送出部と、
前記パイル糸選択送出部の前記送出用停止位置の前方において、選択された導糸孔部から水平方向に送出されるパイル糸を中央部に押下用ガイド空間を空けて両側から挟持する開閉自在な一対の挟持部材を有してなるパイル糸保持部と、
前記パイル糸保持部と前記パイル糸選択送出部との間で、選択された導糸孔部から送出されて前記両挟持部材間に挟持されたパイル糸を所定長にカットするカッター装置と、
前記パイル糸保持部の両挟持部材間の押下用ガイド空間の上方対応位置において押下駆動手段により降下可能に支持された棒状の押下部材を備え、該押下部材の降下により該押下部材の下端部がガイド空間を横切って保持されているパイル糸に係合して、該パイル糸を、パイル糸保持部から下方に抜き出し、かつ前記ガイドボードの1つの接着ガイド用の貫通孔に挿入して折曲するとともに、該折曲部を前記xyテーブル上の基材の表面に押圧し接着するように設けられた押下接着手段とを備え、
前記押下接着手段の押下部材は、前記押下駆動手段により、非回転状態で降下する場合と、降下中に所定の角度回転する場合とを適宜選択的に制御可能に設けられてなることを特徴とするパイル構造材の製造装置。
【請求項6】
前記押下駆動手段が、押下部材を、非回転状態で降下させる場合と、降下中に所定の角度回転させる場合とを適宜選択的に制御できるロータリーアクチュエータである請求項5に記載のパイル構造材の製造装置。
【請求項7】
パイル糸供給部から前記パイル糸選択送出部に到るパイル糸の供給経路には、パイル糸の送出長さ分を直線状走行部から側方へ引き出して保留しておくための引き出しローラを含む測長保留部が設けられてなる請求項5又は6に記載のパイル構造材の製造装置。
【請求項8】
前記パイル糸の測長保留部の前記引き出しローラは、1方向に押圧付勢するバネ手段を備えるエアーシリンダーに連接されて支持され、エアーシリンダーの作動によりバネ手段に抗してパイル糸を直線状走行部から側方の保留用走行部へ引き出すように設けられてなる請求項7に記載のパイル構造材の製造装置。
【請求項9】
前記測長保留部とパイル糸選択送出部との間に、パイル糸の送出を規制するパイル糸押さえ手段が設けられてなる請求項7又は8に記載のパイル構造材の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−16482(P2012−16482A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155861(P2010−155861)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(504153244)
【Fターム(参考)】