説明

パイロットリレー

【課題】バルブシートの締切性能を悪化させることなく、且つきめ細かく、バランス圧の調整を行うことが可能なパイロットリレーを提供する。
【解決手段】ポペット弁組立体装着部12におけるポペット弁組立体15の摺動位置をハウジング1の外側から調整可能とする摺動位置調整機構27を設ける。摺動位置調整機構27は、第1のネジ体40と、第1のネジ体40の第1のネジ部40aと螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部41aを有する第2のネジ体41と、第2のネジ体41の第2のネジ部41aと螺合する内周面を有するとともに、ハウジング1に取り付けられて第1のネジ体40および第2のネジ体41を覆うカバー42とから構成し、第2のネジ部41aのネジピッチを第1のネジ部40aのネジピッチよりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気作動型の調節弁(バルブ)の開度制御を行うポジショナなどに用いられるパイロットリレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブ駆動制御、プロセスオートメーション、その他一般産業用機器の駆動制御に際してはポジショナが用いられており、このポジショナをバルブに取り付けることにより、バルブの開度制御を可能としている。
【0003】
図24にこのバルブの開度制御を可能とするポジショナの要部の構成を示す。同図において、100はポジショナであり、このポジショナ100は上位コントローラ200から電気信号で送られてくるバルブ開度信号を空気圧信号Pnに変換する電空変換部101と、この電空変換部101によって変換された空気圧信号(入力空気圧)Pnを増幅してバルブ300に出力空気圧信号(出力空気圧)Poとして出力するパイロットリレー(圧力信号増幅器)102とから構成されている。
【0004】
このようなポジショナ100に用いられるパイロットリレー102には、1つの入力空気圧Pnに対して1つの出力空気圧Poを出力する単動型と、1つの入力空気圧Pnに対して2つの出力空気圧Po1,Po2を出力する複動型とが存在する。複動型のパイロットリレー102は、2つの出力ポートを有し、バルブ300を正動作させる場合には第1のポートの出力空気圧Po1を第2のポートの出力空気圧Po2よりも高くし、逆動作させる場合には第2のポートの出力空気圧Po2を第1のポートの出力空気圧Po1よりも高くする。
【0005】
図25に特許文献1に示された複動型のパイロットリレーの構造を示す。同図において、401はハウジングであり、ハウジング401内には入力空気圧室402,第1の供給空気圧室403,第2の供給空気圧室404,第1の出力空気圧室405,第2の出力空気圧室406,排気室407およびフィードバック室408が設けられている。
【0006】
また、ハウジング401内には、入力空気圧室402に導かれる入力空気圧(ノズル背圧)Pnによって変位するダイアフラム409が設けられており、このダイアフラム409にスプール(移動体)410が矢印A方向およびB方向へ移動可能に支持されている。スプール410は、第1の出力空気圧室405に位置する第1の開口410aと、第2の出力空気圧室406に位置する第2の開口410bと、第1の開口410aおよび第2の開口410bを排気室407に連通させる排気通路410cとを有している。
【0007】
第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405との間にはシートリング411が設けられている。このシートリング411は第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405とを画成する第1の隔壁の役割を果たす。第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406との間にはハウジング401の内壁にリング壁412が形成されている。このリング壁412は第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406とを画成する第2の隔壁の役割を果たす。
【0008】
また、第1の供給空気圧室403と第1の出力空気圧室405との間には、シートリング411の中心孔411aを貫通して、左右に移動可能に第1のポペット弁413が設けられている。第1のポペット弁413は、スプール410の第1の開口410aを開閉する排気弁413aと、シートリング411の中心孔(第1の連通孔)411aを開閉する給気弁413bとを一体的に有している。
【0009】
第2の供給空気圧室404と第2の出力空気圧室406との間には、リング壁412の中心孔412aを貫通して、左右に移動可能に第2のポペット弁414が設けられている。第2のポペット弁414は、スプール410の第2の開口410bを開閉する排気弁414aと、リング壁412の中心孔(第2の連通孔)412aを開閉する給気弁414bとを一体的に有している。
【0010】
また、第1の供給空気圧室403には、第1のポペット弁413を矢印B方向、すなわち給気弁413bが第1の連通孔411aを閉じる方向に付勢する第1のバネ415が設けられている。第2の供給空気圧室404には、第2のポペット弁414を矢印A方向、すなわち給気弁414bが第2の連通孔412aを閉じる方向に付勢する第2のバネ416が設けられている。
【0011】
この複動型のパイロットリレーでは、第1の供給空気圧室403および第2の供給空気圧室404にエアー供給管417を通して供給空気圧Psが供給され、入力空気圧室402にノズル背圧導入管418を通して入力空気圧Pnが導かれる。また、第1の出力空気圧室405から第1のエアー出力管419を通して出力空気圧Po1がバルブ300に出力され、第2の出力空気圧室406から第2のエアー出力管420を通して出力空気圧Po2がバルブ300に出力される。また、フィードバック室408は第2の出力空気圧室405と連通し、スプール410に支持されたダイアフラム421によって画成されている。また、排気室407は大気と連通している。
【0012】
この複動型のパイロットリレーにおいて、入力空気圧Pnを減少させると、ダイアフラム409が矢印A側に移動し、それに伴って、ダイアフラム409に支持されているスプール410も矢印A側に移動する。すると、スプール410は、その移動に伴って第1のポペット弁413を第1のバネ415の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第1のポペット弁413の給気弁413bが第1の連通孔411aを開く。この時、スプール410の第1の開口410aは、第1のポペット弁413の排気弁413aによって閉じられる。一方、第2のポペット弁414は、第2のバネ416の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第2のポペット弁414の給気弁414bが第2の連通孔412aを閉じる。この時、スプール410の第2の開口410bは、第2のポペット弁414の排気弁414aによって開かれる。
【0013】
これにより、エアー供給管417を通して第1の供給空気圧室403に供給されたエアーは、第1の連通路411aを通って第1の出力空気圧室405内に導入された後に、第1のエアー出力管419を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第2のエアー出力管420を通って第2の出力空気圧室406内に戻った後、スプール410の第2の開口410bより排気通路410cに入り、排気室407に排出される。
【0014】
一方、入力空気圧Pnを増加させると、ダイアフラム409が矢印B側に移動し、それに伴って、ダイアフラム409に支持されているスプール410も矢印B側に移動する。すると、スプール410は、その移動に伴って第2のポペット弁414を第2のバネ416の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第2のポペット弁414の給気弁414bが第2の連通孔412aを開く。この時、スプール410の第2の開口410bは、第2のポペット弁414の排気弁414aによって閉じられる。一方、第1のポペット弁413は、第1のバネ415の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第1のポペット弁413の給気弁413bが第1の連通孔411aを閉じる。この時、スプール410の第1の開口410aは、第1のポペット弁413の排気弁413aによって開かれる。
【0015】
これにより、エアー供給管417を介して第2の供給空気圧室404に供給されたエアーは、第2の連通路412aを通って第2の出力空気圧室406内に導入された後に、第2のエアー出力管420を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第1のエアー出力管419を通って第1の出力空気圧室405内に戻った後、スプール410の第1の開口410aより排気通路410cに入り、排気室407に排出される。
【0016】
このようにして、入力空気圧室402に導かれる入力空気圧Pnによって、スプール410および一対のポペット弁412,413が動作し、その動作によって、増幅された出力空気圧Po1およびPo2がエア出力管419および420を通してバルブ300へ出力されるものとなる。この場合、入力空気圧Pnの減少方向の圧力を調整することによって、バルブ300を正動作させる場合の出力空気圧Po1が調整されるものとなり、入力空気圧Pnの増加方向の圧力を調整することによって、バルブ300を逆動作させる場合の出力空気圧Po2が調整されるものとなる。
【0017】
この複動型のパイロットリレーでは、出力空気圧Po1とPo2とのバランス圧(入力空気圧Pnに対して出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とが交差する点の出力空気圧(図18,図19参照)を調整する機構が必要であり、このためにシートリング411に対してシートアジャスタ422が設けられている。シートリング411は、スプール410の移動方向と同方向へ移動自在に設けられており、バネ423によってスプール410側へ付勢されている。
【0018】
シートアジャスタ422はその先端部がテーパ状とされており、このシートアジャスタ422を、その先端がシートリング411に当接する配置で、ハウジング401の壁部分を貫通しつつ外部より出力空気圧室405内にねじ込んでいる。この機構によれば、ハウジング401の壁部分に対するシートアジャスタ422の螺合の割合を調節することにより、ポペット弁413の給気弁413bに対するシートリング(弁座)411の位置を調節して、バランス圧の調整を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−40513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述した特許文献1に示されたバランス圧の調整機構によると、シートアジャスタ422の先端部がシートリング411に片当たりしているため、シートリング411が傾き、バルブシートの締切性能が悪化して、パイロットリレーの特性の悪化を引き起こす虞があった。
【0021】
また、バランス圧の調整を何度も繰り返しているうちに当接面が摩耗し、これによってもシートリング411が傾き、バルブシートの締切性能が悪化して、パイロットリレーの特性の悪化を引き起こす虞があった。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バルブシートの締切性能を悪化させることなく、且つきめ細かく、バランス圧の調整を行うことが可能なパイロットリレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するために本発明は、ハウジング内に形成された入力空気圧室,第1の供給空気圧室,第2の供給空気圧室,第1の出力空気圧室,第2の出力空気圧室および排気室と、入力空気圧室に導かれる入力空気圧によって変位するダイアフラムと、第1の出力空気圧室に位置する第1の開口と,第2の出力空気圧室に位置する第2の開口と,第1の開口および第2の開口を排気室に連通させる排気通路とを有し、ダイアフラムに支持されてハウジング内を移動する移動体と、第1の供給空気圧室と第1の出力空気圧室とを画成する第1の隔壁に形成された第1の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、移動体の第1の開口を開閉する第1の排気弁および第1の連通孔を開閉する第1の給気弁とを一体的に有する第1のポペット弁と、第2の供給空気圧室と第2の出力空気圧室とを画成する第2の隔壁に形成された第2の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、移動体の第2の開口を開閉する第2の排気弁および第2の連通孔を開閉する第2の給気弁とを一体的に有する第2のポペット弁と、第1のポペット弁を第1の給気弁が第1の連通孔を閉じる方向に付勢する第1のバネ部材と、第2のポペット弁を第2の給気弁が第2の連通孔を閉じる方向に付勢する第2のバネ部材とを備えたパイロットリレーであって、第1のバネ部材を収容する空間および第1の隔壁を有し、第1の隔壁に形成されている第1の連通孔から第1の排気弁を突出させた状態で第1のポペット弁および第1のバネ部材を保持する第1のポペット弁組立体と、ハウジングの外側にその開口部が臨む通路を有し、この通路の開口部からその内壁面に沿って第1のポペット弁組立体が摺動可能に装着され、その通路の底部に残された空間が第1の出力空気圧室とされるポペット弁組立体装着部と、第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触し、ポペット弁組立体装着部における第1のポペット弁組立体の摺動位置をハウジングの外側から調整可能とする摺動位置調整手段とを備え、摺動位置調整手段は、第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触する平板部と,この平板部から第1のポペット弁組立体とは反対側の面に突出した突出部と,この突出部の外周面に形成された第1のネジ部とを有する第1のネジ体と、第1のネジ体の第1のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部を有する第2のネジ体と、第2のネジ体の第2のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、ハウジングに取り付けられて第1のネジ体および第2のネジ体を覆うカバーとを備え、第2のネジ部のネジピッチは第1のネジ部のネジピッチよりも大きいことを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、ハウジングの外側にその開口部が臨む通路がポペット弁組立体装着部とされ、このポペット弁組立体装着部の開口部からその内壁面に沿って、第1のポペット弁組立体が摺動可能に装着され、その通路の底部に残された空間が第1の出力空気圧室とされる。第1のポペット弁組立体は、第1のバネ部材を収容する空間および第1の隔壁を有し、第1の隔壁に形成されている第1の連通孔から第1の排気弁を突出させた状態で第1のポペット弁および第1のバネ部材を保持する。第1のポペット弁組立体に対しては、この第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触し、ポペット弁組立体装着部における第1のポペット弁組立体の摺動位置をハウジングの外側から調整可能とする摺動位置調整手段が設けられる。
【0025】
摺動位置調整手段は、第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触する平板部と,この平板部から第1のポペット弁組立体とは反対側の面に突出した突出部と,この突出部の外周面に形成された第1のネジ部とを有する第1のネジ体と、第1のネジ体の第1のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部を有する第2のネジ体と、第2のネジ体の第2のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、ハウジングに取り付けられて第1のネジ体および第2のネジ体を覆うカバーとから構成され、第2のネジ部のネジピッチは第1のネジ部のネジピッチよりも大きいものとされている。
【0026】
この発明において、第1のポペット弁組立体は、そのハウジングの外側に臨む面に面接触する第1のネジ体の平板部に押されて、ポペット弁組立体装着部の通路内をその内壁面に沿って摺動移動する。この際、第1のポペット弁組立体は安定した姿勢で摺動移動するので、第1のポペット弁組立体が傾くことはない。また、第1のポペット弁組立体において、第1のポペット弁が傾くこともない。これにより、安定した姿勢のまま、第1の給気弁と第1の連通孔との間の抵抗(隙間)を変え、バルブシートの締切性能を悪化させることなく、バランス圧の調整を行うことが可能となる。
【0027】
また、摺動位置調整手段において、第1のネジ体と第2のネジ体とは差動ネジ構造を形成する。この差動ネジ構造では、第2のネジ体の外周面に形成された第2のネジ部のネジピッチ(P2)が第1のネジ体の外周面に形成された第1のネジ部のネジピッチ(P1)よりも大きくされているので、第1のネジ体の進退量をきめ細かく設定することが可能となる。これにより、第1のポペット弁組立体の進退量をきめ細かく設定して、バランス圧の微調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ハウジングの外側にその開口部が臨む通路をポペット弁組立体装着部とし、このポペット弁組立体装着部の開口部からその内壁面に沿って第1のポペット弁組立体を摺動可能に装着し、この第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触し、ポペット弁組立体装着部における第1のポペット弁組立体の摺動位置をハウジングの外側から調整可能とする摺動位置調整手段を設けたので、第1のポペット弁組立体を安定した姿勢で摺動移動させるようにして、バルブシートの締切性能を悪化させることなく、バランス圧の調整を行うことが可能となる。
【0029】
また、本発明によれば、摺動位置調整手段を、第1のポペット弁組立体のハウジングの外側に臨む面に面接触する平板部と,この平板部から第1のポペット弁組立体とは反対側に突出した突出部と,この突出部の外周面に形成された第1のネジ部とを有する第1のネジ体と、第1のネジ体の第1のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部を有する第2のネジ体と、第2のネジ体の第2のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、ハウジングに取り付けられて第1のネジ体および第2のネジ体を覆うカバーとから構成し、第2のネジ部のネジピッチを第1のネジ部のネジピッチよりも大きいものとしたので、第1のネジ体と第2のネジ体とで形成される差動ネジ構造により、第1のポペット弁組立体の進退量をきめ細かく設定して、バランス圧の微調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るパイロットリレー(複動型のパイロットリレー)の一実施の形態の構造を示す図である。
【図2】このパイロットリレーにおいてバランス圧の調整に用いる摺動位置調整機構に関連する部分を拡大して示す図である。
【図3】この摺動位置調整機構を側面から見た図(図2におけるC方向から見た図)である。
【図4】この摺動位置調整機構に用いる第1のネジ体の側面図および底面図である。
【図5】この摺動位置調整機構に用いる第2のネジ体の上面図,側面図および底面図である。
【図6】この摺動位置調整機構に用いるカバーの上面図,側断面図および底面図である。
【図7】この摺動位置調整機構に用いるガイドの側断面図および底面図である。
【図8】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順1)を説明する図である。
【図9】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順2)を説明する図である。
【図10】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順3)を説明する図である。
【図11】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順4)を説明する図である。
【図12】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順5)を説明する図である。
【図13】この摺動位置調整機構の第1のポペット弁組立体に対する取付手順(手順6)を説明する図である。
【図14】この摺動位置調整機構において第2のネジ体を最も緩めた状態を示す図である。
【図15】この摺動位置調整機構において第2のネジ体を最もねじ込んだ状態を示す図である。
【図16】バランス圧を高くする場合の第1のポペット弁組立体の摺動位置の調整状況を示す図である。
【図17】バランス圧を低くする場合の第1のポペット弁組立体の摺動位置の調整状況を示す図である。
【図18】出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とのバランス圧が高くなった状態を示す図である。
【図19】出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とのバランス圧が低くなった状態を示す図である。
【図20】第1の出力空気圧室にがたつき防止用のバネを設けるようにした例を示す図である。
【図21】カバーの内周面にガイドを分割して設けるようにした例を示す図である。
【図22】ガイドを分割して設けるようにした場合に共通部品として形成されるそのガイドの側断面図および正面図である。
【図23】ガイドを分割して設けるようにした場合のカバーの側断面図および底面図である。
【図24】パイロットリレーを用いたポジショナの要部の構成図である。
【図25】特許文献1に示された複動型のパイロットリレーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係るパイロットリレー(複動型のパイロットリレー)の一実施の形態の構造を示す図である。
【0032】
同図において、1はハウジングであり、ハウジング1内には入力空気圧室2,第1の供給空気圧室3,第2の供給空気圧室4,第1の出力空気圧室5,第2の出力空気圧室6,排気室7およびバイアス室8が形成されている。
【0033】
また、ハウジング1内には、入力空気圧室2に導かれる入力空気圧(ノズル背圧)Pnによって変位するダイアフラム9が設けられており、このダイアフラム9にスプール(移動体)10が矢印A方向およびB方向へ移動可能に支持されている。
【0034】
スプール10は、第1の出力空気圧室5に位置する第1の開口10aと、第2の出力空気圧室6に位置する第2の開口10bと、第1の開口10aおよび第2の開口10bを排気室7に連通させる排気通路10cとを有している。排気通路10cは、第1の開口10aと第2の開口10bとを結ぶ貫通路10c1と、この貫通路10c1の内壁面より排気室7へ向け開口された排気孔10c2,10c3とから構成されている。
【0035】
また、ハウジング1の一方側の端部には、ハウジング1の外側にその開口部11aが臨む通路11が第1のポペット弁組立体装着部12として設けられており、ハウジング1の他方側の端部には、ハウジング1の外側にその開口部13aが臨む通路13が第2のポペット弁組立体装着部14として設けられている。
【0036】
第1のポペット弁組立体装着部12には、ハウジング1の外側に臨む通路11の開口部11aから、その通路11の内壁面に沿って、第1のポペット弁組立体15が摺動可能に装着され、その通路11の底部に残された空間が第1の出力空気圧室5とされている。また、第2のポペット弁組立体装着部14には、ハウジング1の外側に臨む通路13の開口部13aから、その通路13の内壁面に沿って、第2のポペット弁組立体16が摺動可能に装着され、その通路13の底部に残された空間が第2の出力空気圧室6とされている。
【0037】
第1のポペット弁組立体15は、円筒状のシート部17と、このシート部17がその前面に着脱可能に取り付けられた円柱状のシート保持部18との分割構造とされており 、シート部17とシート保持部18との間に内部空間19が形成されている。シート部17の上面17aには内部空間19と第1の出力空気圧室5とを連通させる第1の連通孔17bが形成されている。このシート17の上面17aが第1の供給空気圧室3と第1の出力空気圧室5とを画成する第1の隔壁の役割を果たす。
【0038】
シート部17とシート保持部18との間の内部空間19には第1のバネ20が収容されており、この第1のバネ20に付勢された状態で第1のポペット弁21がシート部17とシート保持部18との間に保持されている。内部空間20は第1の供給空気圧室3と連通している。第1のポペット弁21は、その先端部に排気弁21aを有し、その後端部に給気弁21bを有している。
【0039】
この保持状態において、第1のポペット弁21は、シート部17に形成された第1の連通孔17bを貫通して、左右に移動可能に第1のバネ20によって付勢されている。また、給気弁21bが第1の貫通孔17bを閉じる方向に付勢され、排気弁21aが第1の貫通孔17bから突出している。この第1のポペット弁組立体15では、シート部17とシート保持部18との分割構造とされているので、第1のバネ20および第1のポペット弁21の組み込み作業が容易である。
【0040】
第2のポペット弁組立体16も第1のポペット弁組立体15と同様の構成とされている。すなわち、第2のポペット弁組立体16は、円筒状のシート部22と、このシート部22がその前面に着脱可能に取り付けられた円柱状のシート保持部23との分割構造とされており、シート部22とシート保持部23との間に内部空間24が形成されている。シート部22の上面22aには内部空間24と第2の出力空気圧室6とを連通させる第2の連通孔22bが形成されている。このシート22の上面22aが第2の供給空気圧室4と第2の出力空気圧室6とを画成する第2の隔壁の役割を果たす。
【0041】
シート部22とシート保持部23との間の内部空間24には第2のバネ25が収容されており、この第2のバネ25に付勢された状態で第2のポペット弁26がシート部22とシート保持部23との間に保持されている。内部空間24は第2の供給空気圧室4と連通している。第2のポペット弁26は、その先端部に排気弁26aを有し、その後端部に給気弁26bを有している。
【0042】
この保持状態において、第2のポペット弁26は、シート部22に形成された第2の連通孔22bを貫通して、左右に移動可能に第2のバネ25によって付勢されている。また、給気弁26bが第2の貫通孔22bを閉じる方向に付勢され、排気弁26aが第2の貫通孔22bから突出している。この第2のポペット弁組立体26でも、シート部22とシート保持部23との分割構造とされているので、第2のバネ25および第2のポペット弁26の組み込み作業が容易である。
【0043】
第1のポペット弁組立体15に対しては、この第1のポペット弁組立体15のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部18の底面18a)に面接触し、第1のポペット弁組立体装着部12における第1のポペット弁組立体15の摺動位置をハウジング1の外側から調整可能とする摺動位置調整機構27が設けられている。この摺動位置調整機構27については後述する。
【0044】
第2のポペット弁組立体16に対しては、この第2のポペット弁組立体16を第2のポペット弁組立体装着部14に装着した後、すなわちハウジング1の外側に臨む開口部13aから第2のポペット弁組立体16を通路13内に押し込んだ後、その通路13の開口部13aにリング状の止板28を取り付けている。すなわち、止板28のリング面を第2のポペット弁組立体16のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部23の底面23a)に面接触させ、第2のポペット弁組立体装着部14における第2のポペット弁組立体16の位置を規制している。
【0045】
この複動型のパイロットリレーでは、第1の供給空気圧室3,第2の供給空気圧室4およびバイアス室8にエアー供給管29を通して供給空気圧Psが供給され、入力空気圧室2にノズル背圧導入管30を通して入力空気圧Pnが導かれる。また、第1の出力空気圧室5から第1のエアー出力管31を通して出力空気圧Po1がバルブ300に出力され、第2の出力空気圧室6から第2のエアー出力管32を通して出力空気圧Po2がバルブ300に出力される。
【0046】
なお、バイアス室8は入力空気圧室2と排気室7との間に設けられ、ダイアフラム9を介して入力空気圧室2に隣接し、ダイアフラム33を介して排気室7に隣接している。ダイアフラム33はダイアフラム9と同様、ハウジング1とスプール10との間に設けられ、スプール10を支持している。また、排気室7は大気と連通しており、スプール10の両端にはハウジング1との間にOリング34,35が装着されている。また、第1のポペット弁組立体15のシート部17およびシート保持部18にもハウジング1との間にOリング36,37が装着されている。また、第2のポペット弁組立体16のシート部22およびシート保持部23にもハウジング1との間にOリング38,39が装着されている。
【0047】
この複動型のパイロットリレーにおいて、入力空気圧Pnを減少させると、ダイアフラム9が矢印A側に移動し、それに伴って、ダイアフラム9に支持されているスプール10も矢印A側に移動する。すると、スプール10は、その移動に伴って第1のポペット弁21を第1のバネ20の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第1のポペット弁21の給気弁21bが第1の連通孔17bを開く。この時、スプール10の第1の開口10aは、第1のポペット弁21の排気弁21aによって閉じられる。一方、第2のポペット弁26は、第2のバネ25の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第2のポペット弁26の給気弁26bが第2の連通孔22bを閉じる。この時、スプール10の第2の開口10bは、第2のポペット弁26の排気弁26aによって開かれる。
【0048】
これにより、エアー供給管29を通して第1の供給空気圧室3に供給されたエアーは、第1のポペット弁組立体15の内部空間19に入り、第1の連通路17bを通って第1の出力空気圧室5内に導入された後に、第1のエアー出力管31を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第2のエアー出力管32を通って第2の出力空気圧室6内に戻った後、スプール10の第2の開口10bより排気通路10cに入り、排気室7に排出される。
【0049】
一方、入力空気圧Pnを増加させると、ダイアフラム9が矢印B側に移動し、それに伴って、ダイアフラム9に支持されているスプール10も矢印B側に移動する。すると、スプール10は、その移動に伴って第2のポペット弁26を第2のバネ25の付勢力に抗して押し下げ、それに伴って、第2のポペット弁26の給気弁26bが第2の連通孔22bを開く。この時、スプール10の第2の開口10bは、第2のポペット弁26の排気弁26aによって閉じられる。一方、第1のポペット弁21は、第1のバネ20の付勢力によって押し上げられ、それに伴って、第1のポペット弁21の給気弁21bが第1の連通孔17bを閉じる。この時、スプール10の第1の開口10aは、第1のポペット弁21の排気弁21aによって開かれる。
【0050】
これにより、エアー供給管29を介して第2の供給空気圧室4に供給されたエアーは、第2のポペット弁組立体16の内部空間24に入り、第2の連通路22bを通って第2の出力空気圧室6内に導入された後に、第2のエアー出力管32を通ってバルブ300に供給される。一方、バルブ300からのエアーは、第1のエアー出力管31を通って第1の出力空気圧室5内に戻った後、スプール10の第1の開口10aより排気通路10cに入り、排気室7に排出される。
【0051】
このようにして、入力空気圧室2に導かれる入力空気圧Pnによって、スプール10および一対のポペット弁21,26が動作し、その動作によって、増幅された出力空気圧Po1およびPo2がエア出力管31および32を通してバルブ300へ出力されるものとなる。この場合、入力空気圧Pnの減少方向の圧力を調整することによって、バルブ300を正動作させる場合の出力空気圧Po1が調整されるものとなり、入力空気圧Pnの増加方向の圧力を調整することによって、バルブ300を逆動作させる場合の出力空気圧Po2が調整されるものとなる。
【0052】
〔摺動位置調整機構〕
この複動型のパイロットリレーでは、出力空気圧Po1とPo2とのバランス圧を調整する機構が必要であり、このために第1のポペット弁組立体15に対して、この第1のポペット弁組立体15の摺動位置をハウジング1の外側から調整可能とする摺動位置調整機構27が設けられている。
【0053】
摺動位置調整機構27は、図2にその関連する部分を拡大して示すように、第1のポペット弁組立体15のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部18の底面18a)に面接触する第1のネジ体40と、第1のネジ体40の外周面に形成されている第1のネジ部40aと螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部41aを有する第2のネジ体41と、第2のネジ体41の第2のネジ部41aと螺合する内周面を有するとともに、ハウジング1に取り付けられて第1のネジ体40および第2のネジ体41を覆うカバー42とから構成されている。
【0054】
なお、摺動位置調整機構27において、第2のネジ体41の先端部41bはカバー42の上面42aを貫いて外側に突き出ており、このカバー42の上面42aに突き出た第2のネジ体41の先端部41bに、この第2のネジ体41を回転しての第1のネジ体40の位置の調整後(後述)、周り止めのナット43が締結されている。第2のネジ体41の先端部41bには、図3に示すように、第2のネジ体41を工具を用いて回転させることができるように、マイナス溝41eが形成されている。また、カバー42のハウジング1側の開口部42bには、その内周面42cに、別部材として、リング状のガイド44が嵌め込まれている。また、カバー42はネジ45,45を用いてハウジング1に取り付けられている。
【0055】
図4(a)および(b)に第1のネジ体40の側面図および底面図を示す。第1のネジ体40は、円板状の平板部40−1と、この平板部40−1の一方側の面に突出した突出部40−2との一体構造とされており、突出部40−2の外周面40bに第1のネジ部40aが形成されている。また、平板部40−1の外周面40cには、径方向に突出する大径部として、ガイドピン40d1,40d2が形成されている。ガイドピン40d1,40d2は互いに相対する位置に設けられている。この第1のネジ体40において、平板部40−1の底面40eが第1のポペット弁組立体15のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部18の底面18a)に面接触する。
【0056】
図5(a),(b)および(c)に第2のネジ体41の上面図,側断面図および底面図を示す。第2のネジ体41は円柱状のネジ体とされており、その中心部に底面41dから掘られたネジ孔41eが形成されている。このネジ孔41eに第1のネジ体40の第1のネジ部40aが螺合される。また、前述したように、第2のネジ体41の外周面には第2のネジ部41aが形成されており、第2のネジ体41の先端部41bにはマイナス溝41cが形成されている。ここで、第2のネジ体41の第2のネジ部41aのネジピッチをP2、第1のネジ体40の第1のネジ部40aのネジピッチをP1とした場合、第2のネジ部41aのネジピッチP2は第1のネジ部40aのネジピッチP1よりも大きいものとされている。
【0057】
図6(a),(b)および(c)にカバー42の上面図,側断面図および底面図を示す。カバー42は2つの段差孔42−1,42−2と貫通孔42−3とを有している。第1の段差孔42−1,第2の段差孔42−2,貫通孔42−3の順に径が小さくなっている。第1の段差孔42−1はガイド44が嵌め込まれる段差孔であり、第2の段差孔42−2は第1の段差孔42−1に嵌め込まれたガイド44と合わせてガイド部を構成する段差孔である。この場合、第2の段差孔42−2が本発明でいう第1のガイドに相当し、第1の段差孔42−2に嵌め込まれるガイド44が第2のガイドに相当する。
【0058】
第1の段差孔42−1の内周面にはガイド44に形成された凸部44c1,44c2(図7参照)が係合される位置合わせ溝42d1,4d2が形成されている。第2の段差孔42−2には第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2が係合されるガイド溝42e1,42e2が形成されている。段差孔42−1,42−2の深さは第1のネジ体40の平板部40−1の厚さとほゞ等しくされている。貫通孔42−3はその終端部がネジ孔42fとされている。このネジ孔42fに第2のネジ体41の第2のネジ部41aが螺合される。また、カバー42には、ハウジング1に接する鍔部42g1,42g2が形成されており、この鍔部42g1,42g2にハウジング1への取付孔42h1,42h2が形成されている。
【0059】
図7(a)および(b)にガイド44の側断面図および底面図を示す。ガイド44には、その中央部に第1のネジ体40の平板部40−1とほゞ同径でそれよりも僅かに大きいのガイド孔44aが形成されており、ガイド孔44aにはガイドピン40d1,40d2に対応してガイド溝44b1,44b2が形成されている。また、ガイド44の外周には凸部44c1,44c2が形成されており、ガイド44の厚さは第1のネジ体40の平板部40−1の厚さとほゞ等しくされている。
【0060】
〔摺動位置調整機構の取り付け〕
図8〜図11を用いて第1のポペット弁組立体15に対する摺動位置調整機構27の取付手順について説明する。
〔手順1(図8)〕
先ず、第1のネジ体40を第2のネジ体41に最後までねじ込み、ネジユニットU1とする。すなわち、第1のネジ体40の第1のネジ部40aを第2のネジ体41のネジ孔41eに最後まで螺合させ、第1のネジ体40と第2のネジ体41とを組み合わせたネジユニットU1とする。
〔手順2(図9)〕
次に、このネジユニットU1をカバー42の第1の段差孔42−1の底面にぶつかるまでねじ込む。すなわち、第2のネジ体41の第2のネジ部41aをカバー42のネジ孔42fに螺合させ、第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2が第1の段差孔42−1の底面にぶつかるまで、ネジユニットU1全体をカバー42に対してねじ込む。
【0061】
〔手順3(図10)〕
次に、第1のネジ体40の回転を拘束した状態で、第2のネジ体41を回し、第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2をカバー42の第2の段差孔42−2に形成されているガイド溝42d1,42d2に落とし込む。
〔手順4(図11)〕
次に、ガイド44を第1の段差孔42−1に嵌め込み、カバーユニットU2とする。この時、ガイド44の凸部44c1,44c2を第1の段差孔42−1の位置合わせ溝42d1,42d2(図6(c))に嵌め込むことによって、ガイド44のガイド溝44b1,44b2(図7(b))と第2の段差孔42−2のガイド溝42e1,42e2(図6(c))との位置が合致する。
【0062】
〔手順5(図12)〕
次に、カバーユニットU2で第1のポペット弁組立体15をハウジング1の第1のポペット弁組立体装着部12に押し込む。すなわち、第1のネジ体40の平板部40−1の底面40eを第1のポペット弁組立体15のハウジング1の外側に臨む面(シート保持部18の底面18a)に面接触させ、この第1のネジ体40の平板部40−1の底面40eを面接触させた状態で、第1のポペット弁組立体15をハウジング1の第1のポペット弁組立体装着部12に押し込む。
【0063】
〔手順6(図13)〕
次に、第2のネジ体41を回し、第1のポペット弁組立体装着部12における第1のポペット弁組立体15の摺動位置を調整し、最後に周り止めのナット43で固定する。図14に第2のネジ体41を最も緩めた状態を示す。図15に第2のネジ体41を最もねじ込んだ状態を示す。
【0064】
第1のネジ体40と第2のネジ体41とは差動ネジ構造を形成し、第2のネジ体41を回転させると、第2のネジ体40が移動する。この場合、第1のネジ体40は、その平板部40−1に形成されているガイドピン40d1,40d2とカバー42の内周面に形成されているガイド溝42e1,42e2およびガイド44の内周面に形成されているガイド溝44b1,44b2との係合によって、その周方向の回動が規制される一方、その軸方向の移動が案内される。
【0065】
第1のポペット弁組立体15の摺動位置の調整に際し、第2のネジ体41を回転させると、第1のネジ体40が回転を伴うことなく、直線的に平行に移動し、これに伴って、第1のポペット弁組立体15も、ポペット弁組立体装着部12の通路11内をその内壁面に沿って直線的に平行移動する。この摺動移動に際して、カバー42の内周面に形成されているガイド溝42e1,42e2とガイド44の内周面に形成されているガイド溝44b1,44b2とが1つのガイド部となって、第1のネジ体40の平行移動を案内する。
【0066】
〔摺動位置調整機構を用いてのバランス圧の調整〕
この複動型のパイロットリレーにおいて、出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とのバランス圧の調整を行う場合、摺動位置調整機構27を用いる。図16にバランス圧を高くする場合の第1のポペット弁組立体15の摺動位置の調整状況を示し、図17にバランス圧を低くする場合の第1のポペット弁組立体15の摺動位置の調整状況を示す。
【0067】
〔バランス圧を高くする場合〕
バランス圧を高くする場合、カバー42に対して第2のネジ体41をねじ込む(図16)。この場合、第2のネジ体41をカバー42に対してねじ込む方向に回転させると、第1のネジ体40が回転を伴うことなく、スプール10側に直線的に平行に移動する。これに伴って、第1のポペット弁組立体15もスプール10側に、直線的に平行移動する。
【0068】
この際、第1のポペット弁組立体15は、第1のネジ体40の平板部40−1の全体で押されながら、ポペット弁組立体装着部12の通路11内をその内壁面に沿って安定した状態で摺動移動する。このため、摺動位置の調整中、第1のポペット弁組立体15が傾くことはなく、第1のポペット弁組立体15において第1のポペット弁21が傾くこともない。
【0069】
第1のポペット弁組立体15がスプール10側に摺動移動すると、第1のポペット弁21の排気弁21aがスプール10の第1の開口10aの端面(弁座)で押されて、第1のポペット弁21が第1のバネ20の付勢力に抗して押し下げられ、第1のポペット弁21の給気弁21bと第1の連通孔17bとの間の隙間が広がる。これにより、給気弁21bと第1の連通孔17bとの間の抵抗が小さくなって、図18に示すように、出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とのバランス圧が高くなる。
【0070】
〔バランス圧を低くする場合〕
バランス圧を低くする場合、カバー42に対して第2のネジ体41を緩める(図17)。この場合、第2のネジ体41をカバー42に対して緩める方向に回転させると、第1のネジ体40が回転を伴うことなく、スプール10とは反対側に直線的に平行に移動する。これに伴って、第1のポペット弁組立体15もスプール10とは反対側に、直線的に平行移動する。
【0071】
この際、第1のポペット弁組立体15は、第1のネジ体40の平板部40−1の全体で支えられながら、ポペット弁組立体装着部12の通路11内をその内壁面に沿って安定した状態で摺動移動する。このため、摺動位置の調整中、第1のポペット弁組立体15が傾くことはなく、第1のポペット弁組立体15において第1のポペット弁21が傾くこともない。
【0072】
第1のポペット弁組立体15がスプール10とは反対側に摺動移動すると、第1のポペット弁21が第1のバネ20の付勢力によって押し上げられ、第1のポペット弁21の給気弁21bと第1の連通孔17bとの間の隙間が狭くなる。これにより、、給気弁21bと第1の連通孔17bとの間の抵抗が大きくなり、図19に示すように、出力空気圧Po1と出力空気圧Po2とのバランス圧が低くなる。
【0073】
このようにして、安定した姿勢のまま、給気弁21bと第1の連通孔17bとの間の抵抗(隙間)を変え、バルブシートの締切性能を悪化させることなく、バランス圧の調整を行うことができるようになる。なお、上述においては、第1のポペット弁組立体15での調整状況について述べたが、第2のポペット弁組立体16において、第2のポペット弁26の給気弁26bと第2の連通孔22bとの間の抵抗(隙間)も同様にして変化する。
【0074】
また、摺動位置調整機構27において、第1のネジ体40と第2のネジ体41とは差動ネジ構造を形成する。この場合、第2のネジ体41の第2のネジ部41aのネジピッチP2が第1のネジ体40の第1のネジ部40aのネジピッチP1よりも大きくされているので、第2のネジ体41の1回転あたり(P2−P1)だけ第1のネジ体40が平行移動する。これにより、第1のネジ体40の進退量をきめ細かく設定して、すなわち第1のポペット弁組立体15の進退量をきめ細かく設定して、バランス圧の微調整を行うことが可能となる。
【0075】
なお、上述した実施の形態において、図20に示すように、第1の出力空気圧室5に、第1のポペット弁組立体15の前面と第1の出力空気圧室5の底面との間に挾圧させた状態で、第1のポペット弁組立体15の摺動移動に際するがたつきを防止するがたつき防止用のバネ46を設けるようにしてもよい。このがたつき防止用のバネ46を設けることによって、ポペット弁組立体装着部12の通路11内の内壁面に沿った摺動移動がさらに安定し、第1のポペット弁組立体15における第1のポペット弁21の傾きもさらに少なくなる。
【0076】
また、上述した実施の形態では、カバー42に第2の段差孔42−2を形成し、この段差孔42−2にガイド溝42e1,42e2を形成するようにしたが、 すなわちカバー42の内周面に第1のガイドを一体的に形成し、この第1のガイドの前面に別部材として第2のガイド44を嵌め込むようにしたが、図21に示すように、カバー42の内周面に別部材として第1のガイド47−1と第2のガイド47−2とを設けるようにしてもよい。
【0077】
この場合、第1のガイド47−1と第2のガイド47−2とは共通部品とし、第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2を含む平板部40−1を挟むようにして、第1のガイド47−1と第2のガイド47−2とをその両側にセットする。
【0078】
図22(a)および(b)に共通部品として形成されるガイド47(47−1,47−2)の側断面図および正面図を示す。ガイド47はリング状とされ、その中央部に第1のネジ体40の平板部40−1とほゞ同径でそれよりも僅かに大きいのガイド孔47aが形成されている。このガイド47には、ガイド孔47aの前面に切欠溝として、第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2が係合されるガイド溝47b1,47b2が形成されている。また、ガイド47の外周に、カバー42の内周面に嵌め込む際の位置合わせとされる凸部47c1,47c2が形成されている。
【0079】
図23(a),(b)にガイド47を用いる場合のカバー42の側断面図および底面図を示す。このカバー42では、段差孔42−1のみを設けるものとし、この段差孔42−1の深さを深くしている。この段差孔42−1の内周面にガイド47に形成された凸部47b1,47b2が係合される位置合わせ溝42d1,4d2を形成し、この段差孔42−1にガイド47−1とガイド47−2とを合わせて嵌め込むことによってガイド部とする。
【0080】
カバー42の内周面に第1のガイドを一体的に形成し、この第1のガイドの前面に別部材として第2のガイド44を嵌め込む方式では、カバーユニットU2の組み立て作業の際に第1のネジ体40のガイドピン40d1,40d2をカバー42のガイド溝42e1,42e2に落とし込まなければならないが、ガイド部が2つのガイド47に分割されていれば、分割されたガイド47を第1のネジ体40の側面部から囲むようにして取り付けることができるので、作業性が向上する。
【0081】
また、上述した実施の形態では、第1のネジ体40と第1のポペット弁組立体15とを別体としたが、第1のネジ体40と第1の第1のポペット弁組立体15とを一体化させてもよい。すなわち、第1のポペット弁組立体15のシート保持部18の底面に第1のネジ体40を一体的に設けてもよい。第1のネジ体40と第1の第1のポペット弁組立体15とを別体とすると、カバーユニットU2の組み立て作業の工程で、シート保持部18を単体でポペット弁組立体装着部12に取り付けられるとともに、第1のネジ体40と第2のネジ体41、カバー42の螺合作業もシート保持部18が介在しないので、作業性が向上する。
【0082】
また、上述した実施の形態では、ポペット弁組立体15を第1のポペット弁組立体とし、ポペット弁組立体16を第2のポペット弁組立体とし、ポペット弁組立体15に対して摺動位置調整機構27を設けるようにしたが、ポペット弁組立体16を第1のポペット弁組立体とし、ポペット弁組立体15を第2のポペット弁組立体とし、ポペット弁組立体16に対して摺動位置調整機構27を設けるようにしてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、カバー42の内周面に第1のガイドを一体的に形成し、この第1のガイドの前面に別部材として第2のガイド44を嵌め込むようにしたが、カバー42の内周面に第1のガイドおよび第2のガイドを一体的に形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のパイロットリレーは、入力空気圧信号を増幅する圧力信号増幅器として、空気作動型の調節弁の開度制御を行うポジショナなどに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…ハウジング、2…入力空気圧室、3…第1の供給空気圧室、4…第2の供給空気圧室、5…第1の出力空気圧室、6…第2の出力空気圧室、7…排気室、8…バイアス室、9…ダイアフラム、10…スプール(移動体)、10a…第1の開口、10b…第2の開口、10c…排気通路、10c1…貫通路、10c1,10c2…排気孔、11…通路、11a…開口部、12…第1のポペット弁組立体装着部、13…通路、13a…開口部、14…第2のポペット弁組立体装着部、15…第1のポペット弁組立体、16…第2のポペット弁組立体、17…シート部、17a…上面、17b…第1の連通路、18…シート保持部、18a…底面、19…内部空間、20…第1のバネ、21…第1のポペット弁、21a…排気弁、21b…給気弁、22…シート部、22a…上面、22b…第2の連通路、23…シート保持部、23a…底面、24…内部空間、25…第2のバネ、26…第2のポペット弁、26a…排気弁、26b…給気弁、27…摺動位置調整機構、28…止板、29…エア供給管、30…ノズル背圧導入管、31…第1のエア出力管、32…第2のエア出力管、33…ダイアフラム、34〜39…Oリング、40…第1のネジ体、40−1…平板部、40−2…突出部、40a…第1のネジ部、40b…外周面、40c…外周面、40d1,40d2…ガイドピン、40e…底面、41…第2のネジ体、41a…第2のネジ部、41b…先端部、41c…マイナス溝、41d…底面、41e…ネジ孔、42…カバー、42−1…第1の段差孔、42−2…第2の段差孔、42−3…貫通孔、42a…上面、43b…開口部、42c…内周面、42d1,42d2…位置合わせ溝、42e1,42e2…ガイド溝、42f…ネジ孔、42g1,42g2…鍔部、42h1,42h2…取付孔、43…ナット、44…ガイド、44a…ガイド孔、44b1,44b2…ガイド溝、44c1,44c2…凸部、45…ネジ、46…がたつき防止用のバネ、47(47−1,47−2)…ガイド、47a…ガイド孔、47b1,47b2…ガイド溝、47c1,47c2…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に形成された入力空気圧室,第1の供給空気圧室,第2の供給空気圧室,第1の出力空気圧室,第2の出力空気圧室および排気室と、
前記入力空気圧室に導かれる入力空気圧によって変位するダイアフラムと、
前記第1の出力空気圧室に位置する第1の開口と,前記第2の出力空気圧室に位置する第2の開口と,前記第1の開口および前記第2の開口を前記排気室に連通させる排気通路とを有し、前記ダイアフラムに支持されて前記ハウジング内を移動する移動体と、
前記第1の供給空気圧室と前記第1の出力空気圧室とを画成する第1の隔壁に形成された第1の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、前記移動体の第1の開口を開閉する第1の排気弁および前記第1の連通孔を開閉する第1の給気弁とを一体的に有する第1のポペット弁と、
前記第2の供給空気圧室と前記第2の出力空気圧室とを画成する第2の隔壁に形成された第2の連通孔を貫通して移動可能に設けられ、前記移動体の第2の開口を開閉する第2の排気弁および前記第2の連通孔を開閉する第2の給気弁とを一体的に有する第2のポペット弁と、
前記第1のポペット弁を前記第1の給気弁が前記第1の連通孔を閉じる方向に付勢する第1のバネ部材と、
前記第2のポペット弁を前記第2の給気弁が前記第2の連通孔を閉じる方向に付勢する第2のバネ部材とを備えたパイロットリレーであって、
前記第1のバネ部材を収容する空間および前記第1の隔壁を有し、前記第1の隔壁に形成されている前記第1の連通孔から前記第1の排気弁を突出させた状態で前記第1のポペット弁および前記第1のバネ部材を保持する第1のポペット弁組立体と、
前記ハウジングの外側にその開口部が臨む通路を有し、この通路の開口部からその内壁面に沿って前記第1のポペット弁組立体が摺動可能に装着され、その通路の底部に残された空間が前記第1の出力空気圧室とされるポペット弁組立体装着部と、
前記第1のポペット弁組立体の前記ハウジングの外側に臨む面に面接触し、前記ポペット弁組立体装着部における前記第1のポペット弁組立体の摺動位置を前記ハウジングの外側から調整可能とする摺動位置調整手段とを備え、
前記摺動位置調整手段は、
前記第1のポペット弁組立体の前記ハウジングの外側に臨む面に面接触する平板部と,この平板部から前記第1のポペット弁組立体とは反対側の面に突出した突出部と,この突出部の外周面に形成された第1のネジ部とを有する第1のネジ体と、
前記第1のネジ体の第1のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、外周面に第2のネジ部を有する第2のネジ体と、
前記第2のネジ体の第2のネジ部と螺合する内周面を有するとともに、前記ハウジングに取り付けられて前記第1のネジ体および前記第2のネジ体を覆うカバーとを備え、
前記第2のネジ部のネジピッチは前記第1のネジ部のネジピッチよりも大きい
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項2】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記平板部は、その外周面の一部に径方向に突出する大径部を有し、
前記カバーは、その内周面に前記平板部の大径部に係合し、前記平板部の周方向の回動を規制する一方、前記平板部の軸方向の移動を案内するガイド部を有する
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項3】
請求項2に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記ガイド部は、
前記カバーの内周面に一体的に形成された第1のガイドと、この第1のガイドの前面に別部材として嵌め込まれる第2のガイドとから構成される
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項4】
請求項2に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記ガイド部は、
前記カバーの内周面に別部材として嵌め込まれる第1のガイドと、この第1のガイドの前面に別部材として嵌め込まれる第2のガイドとから構成される
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項5】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記第1のポペット弁組立体は、
前記第1の連通孔が形成されたシート部と、このシート部が着脱可能に取り付けられたシート保持部との分割構造とされ、
前記シート部と前記シート保持部との間に前記第1のバネ部材および前記第1のポペット弁が保持されている
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項6】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記第1のネジ体と前記第1のポペット弁組立体とが一体化されている
ことを特徴とするパイロットリレー。
【請求項7】
請求項1に記載されたパイロットリレーにおいて、
前記第1の出力空気圧室に前記第1のポペット弁組立体の前面と前記第1の出力空気圧室の底面とによって挾圧された状態でがたつき防止用のバネが設けられている
ことを特徴とするパイロットリレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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