説明

パケット中継装置

【課題】リング制御プロトコルに非対応のパケット中継装置がネットワーク上に存在する場合でも、ネットワーク構成変更時に非対応のパケット中継装置のアドレス情報を更新することができるパケット中継装置を得る。
【解決手段】 リング制御プロトコル対応のパケット中継装置2は、リング制御プロトコルにより断線などのネットワーク7の構成変化を検知したとき、自パケット中継装置2の支線に接続されている端末5の有無を確認し、自パケット中継装置2の支線に接続されている端末5が有る場合に、端末5のMACアドレスを送信元MACアドレスフィールドに格納したイーサネット(登録商標)フレームを自パケット中継装置2からネットワーク7を構成する他のパケット中継装置にブロードキャスト送信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークの構成変更時のアドレス情報を更新するパケット中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のネットワークシステムでは、複数のパケット中継装置をリング状に接続し、経路冗長性を持たせることがあるが、単にリング状に接続しただけでは、パケットがリング内を周回し続けてしまうため、論理的にリングの一部を使えなくするなどのリング制御プロトコルが多数提案されている。
リングに構成変更が発生した場合、リング上の各パケット中継装置は、学習しているアドレス情報を削除する必要があるが、リング制御プロトコルにおいては、リングの構成変更が起きたときに、プロトコル管理用パケットを用いて各パケット中継装置のアドレス情報を削除している。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2007−174119号公報(第4〜13頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リングを構成するパケット中継装置が、ある特定のリング制御プロトコルにより制御されているものの、リング上に同プロトコルに対応していないパケット中継装置が位置している場合がある。この場合、リング構成変更時のアドレス情報削除のためのプロトコル管理用パケットが、リング制御プロトコルに非対応のパケット中継装置では解釈できないため、構成変更が起きた際も、非対応のパケット中継装置では、古いアドレス情報が残ったままとなり、通信経路の切り替えに時間がかかるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、リング制御プロトコルに非対応のパケット中継装置がネットワーク上に存在する場合でも、ネットワーク構成変更時に非対応のパケット中継装置のアドレス情報を更新することができるパケット中継装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるネットワークシステムにおいては、ネットワークを構成するパケット中継装置であって、
ネットワーク構成が変化したことを検出する手段、
ネットワーク構成が変化したことを検出したとき、自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段、
及び自パケット中継装置に接続されている端末が有る場合に、端末のMACアドレスが格納された送信元フィールドを有するフレームを、ネットワークを構成する他のパケット中継装置に送信する手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、ネットワークを構成するパケット中継装置であって、
ネットワーク構成が変化したことを検出する手段、
ネットワーク構成が変化したことを検出したとき、自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段、
及び自パケット中継装置に接続されている端末が有る場合に、端末のMACアドレスが格納された送信元フィールドを有するフレームを、ネットワークを構成する他のパケット中継装置に送信する手段を備えたので、リング制御プロトコルに非対応のパケット中継装置がネットワーク上に存在する場合でも、構成変更時の通信復旧時間を、ネットワーク上の全装置がリング制御プロトコル対応である場合と同等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下に、この発明の実施の形態1について図に基づき説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による正常時のネットワークシステムを示す構成図である。
図1において、パケット中継装置1〜4は、リングポートを介してリング状のネットワーク7(レイヤ2ネットワーク)を構成している。パケット中継装置1〜3は、同一のリング制御プロトコルが動作しているリング制御プロトコル対応の装置であり、パケット中継装置4は、リング制御プロトコルが動作していない、リング制御プロトコル非対応の装置である。端末5は、パケット中継装置2の支線に接続されており、端末6は、パケット中継装置4の支線に接続されている。
図1では、リング制御プロトコルにより、パケット中継装置1のパケット中継装置2側のリングポートを論理的に使えない状態(Blocking8の状態)にしている。
【0009】
図2は、この発明の実施の形態1によるリング切断時のネットワークシステムを示す構成図である。
図2において、1〜7は図1におけるものと同一のものである。図2では、パケット中継装置2とパケット中継装置3との間の切断箇所9で、ネットワークが切断されている。ネットワークの切断が発生したときは、図1のBlocking8は、解除される。
【0010】
図3は、この発明の実施の形態1によるパケット中継装置の処理動作を示すフローチャートである。
【0011】
図4は、この発明の実施の形態1によるパケット中継装置の再学習用パケットの構造を示す図である。
図4において、再学習用パケットの構造は、例えば、イーサネット(登録商標)のフォーマットが使用され、プリアンブルF0、宛先MACアドレスF1、送信元MACアドレスF2、データ種別F3、通信データF4、ビット誤り検出用符号列(FCS)F5の計6つのフィールドF0〜F5で構成されている。
【0012】
次に、動作について説明する。
図1のネットワークの例では、リング制御プロトコルにより、パケット中継装置1のパケット中継装置2側のリングポートを論理的に使えない状態(Blocking状態)にしている。そのため端末5及び端末6間の通信は、パケット中継装置2、パケット中継装置3、パケット中継装置4を介して行われ、パケット中継装置4では、端末5のMACアドレスは、パケット中継装置3の方向に存在していることを学習し、学習アドレス情報として保持している。
【0013】
リング状のネットワーク7上の一箇所で障害が発生した場合、例えば図2のように、パケット中継装置2とパケット中継装置3の間の切断箇所9で切断した場合、リング制御プロトコルが動作する、リング制御プロトコル対応のパケット中継装置1〜3では、プロトコル管理用パケットにより学習アドレス情報が削除される。
ところが、リング制御プロトコルが動作していない、リング制御プロトコル非対応のパケット中継装置4では、学習アドレス情報が残り、端末5のMACアドレスは、パケット中継装置3の方向にあるという情報がそのまま残り続けてしまう。このため、端末6からパケット中継装置4に届いた端末5宛てのパケットは、パケット中継装置4からパケット中継装置3へと送られ、パケット中継装置2とパケット中継装置3の間が切断しているため、端末5に届かない状態となる。
【0014】
実施の形態1は、この問題を解決するためのものであり、以下にその説明を行う。
ネットワークの切断が発生したときは、パケット中継装置1のパケット中継装置2側のリングポートを論理的に使えない状態にしたBlocking8は、解除される。
【0015】
次に、図2の構成において、1つのパケット中継装置2に着目し、このパケット中継装置2の処理動作について、図3を用いて説明する。他のリング制御プロトコル対応のパケット中継装置も同様に動作する。
パケット中継装置2において、リング制御プロトコルにより、リング構成変更を検知(ステップS1:ネットワーク構成が変化したことを検出する手段)した際、自パケット中継装置2の支線に接続されている端末の有無を確認する(ステップS2:自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段)。パケット中継装置は、リングポート以外のポートの先に接続されている端末のMACアドレスを把握しており、このMACアドレスを参照して、自パケット中継装置2の支線に接続されている端末の有無を確認する。
自パケット中継装置2の支線に接続されている端末5の存在が確認できれば、他のパケット中継装置に、端末5のMACアドレスを送信元MACアドレス(F2)としたイーサネット(登録商標)フレーム(再学習用パケット:プロトコル種別の一例としてはUDP)をブロードキャスト送信(ステップS3:端末のMACアドレスが格納された送信元フィールドを有するフレームを、ネットワークを構成する他のパケット中継装置に送信する手段)して、終了する(ステップS4)。
【0016】
このイーサネット(登録商標)フレームをパケット中継装置4が受信すると、受信ポート情報を用いて、イーサネット(登録商標)フレームの送信元の端末5が、パケット中継装置1方向に存在することを検知する。そして、パケット中継装置4では、端末5のMACアドレスに関する学習アドレス情報が更新され、パケット中継装置4は、端末5がパケット中継装置3方向では無く、パケット中継装置1方向に存在することを学習し、端末間の通信を復旧することができる。
このとき、リング制御プロトコル対応のパケット中継装置1〜3も、上述のイーサネット(登録商標)フレームの受信により、端末5の方向を学習し、学習アドレス情報を更新する。
【0017】
ステップS3で送信される再学習用パケットの構造は、例えば、図4に示すようなイーサネット(登録商標)のフォーマットが使用される。すなわち、このパケットは、プリアンブルF0、宛先MACアドレスF1、送信元MACアドレスF2、データ種別F3、通信データF4、ビット誤り検出用符号列(FCS)F5の計6つのフィールドF0〜F5で構成されている。
宛先MACアドレスF1には、ブロードキャストを示す値を、送信元MACアドレスF2には、端末5のMACアドレスを、データ種別F3には、再学習用パケットであることを示す値を、通信データF4には何も入れないように、それぞれセットした再学習用パケットが送信される。
なお、再学習用パケットは、端末5のMACアドレスを送信元MACアドレス(F2)とした点が、送信元(この場合はパケット中継装置2)のMACアドレスを送信元MACアドレス(F2)とする通常のパケットと異なっている。
【0018】
また、再学習用パケットは、リング構成変更時だけ送信するのではなく、ネットワークの状態に関わらず、常に定期的に送信してもよく、これによれば、リング構成変更時の処理負荷低減の効果がある。
このとき、自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段により、端末の有無を確認し、端末が有る場合に、端末のMACアドレスが格納された送信元MACアドレスフィールドを有する再学習用パケットを、ネットワークを構成する他のパケット中継装置に定期的に送信する。
【0019】
以上のように、実施の形態1によれば、リング制御プロトコル非対応のパケット中継装置を含むリングにおいても、リング制御プロトコルによるリング構成変更検知時にネットワーク上のすべてのパケット中継装置に対して、端末を送信元MACアドレスとするフレームを送信することで、構成変更時の通信復旧時間を、リング上の全パケット中継装置がリング制御プロトコル対応である場合と同等にすることができ、通信切替時間を短縮させることが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記の実施の形態1の構成態様のみに限定されるものでは無く、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による正常時のネットワークシステムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるリング切断時のネットワークシステムを示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるパケット中継装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1によるパケット中継装置の再学習用パケットの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1〜4 パケット中継装置
5,6 端末
7 ネットワーク
8 blocking
9 切断箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを構成するパケット中継装置であって、
上記ネットワーク構成が変化したことを検出する手段、
上記ネットワーク構成が変化したことを検出したとき、自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段、
及び上記自パケット中継装置に接続されている端末が有る場合に、上記端末のMACアドレスが格納された送信元フィールドを有するフレームを、上記ネットワークを構成する他のパケット中継装置に送信する手段を備えたことを特徴とするパケット中継装置。
【請求項2】
ネットワークを構成するパケット中継装置であって、
自パケット中継装置に接続されている端末の有無を確認する手段、
及び上記自パケット中継装置に接続されている端末が有る場合に、上記端末のMACアドレスが格納された送信元フィールドを有するフレームを、上記ネットワークを構成する他のパケット中継装置に定期的に送信する手段を備えたことを特徴とするパケット中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−130089(P2010−130089A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299821(P2008−299821)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】