説明

パスタソース

【課題】 スパゲッティーやマカロニ等のパスタへの吸水を抑えることができるパスタソースを提供する。
【解決手段】 リゾリン脂質を製品に対して好ましくは0.002〜2%、より好ましくは0.01〜1%、および微結晶セルロースを製品に対して好ましくは0.01〜2%、より好ましくは0.02〜1%含有しているパスタソース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパゲッティーやマカロニ等のパスタへの吸水を抑えることができるパスタソースに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の料理やファッションを中心としたイタリアブームの渦中にあって、パスタはその原動力の一つとして重要な役割を果たしてきた。現在では、現地の有名店がこぞって進出し、市場には多種多様なパスタが出回っている。また、パスタの販売形態においても、パスタ料理店、家庭用のレトルトパスタソース、スーパーやコンビニ等での店舗販売等の様々な販売形態があるが、近年、宅配でもパスタを扱うようになってきた。
【0003】
宅配の場合、店舗で茹でたパスタとパスタソースを和えた後、保温バッグに入れてご家庭まで配達されるが、茹でたパスタは吸水性が顕著であるため、パスタソースと和えた後、温かい状態で保温バッグに入れると、配達時間の間にパスタソース中の水分がパスタに吸収され、パスタが歯ごたえの無い食感となり美味しくなくなるという問題があった。
【0004】
このような状況下、特開2007−60914号公報(特許文献1)には、ガティガムを含有することにより、パスタへの吸水を抑えたパスタソースが開示されている。
【0005】
しかしながら、ガティガムを含有させた特許文献1のパスタソースは、ある程度パスタへの吸水を防止できるものの、満足できるものとは言い難いものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−60914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、スパゲッティーやマカロニ等のパスタへの吸水を抑えることができるパスタソースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく配合原料について鋭意研究を重ねた結果、リゾリン脂質と微結晶セルロースを配合するならば、意外にもパスタへの吸水を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)リゾリン脂質と微結晶セルロースとを含有しているパスタソース、
(2)リゾリン脂質の含有量が、製品に対して0.002〜2%である(1)のパスタソース、
(3)微結晶セルロースの含有量が、製品に対して0.01〜2%である(1)または(2)のパスタソース、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スパゲッティーやマカロニ等のパスタへの吸水を抑えることができるパスタソースを提供できることから、当該パスタソースとパスタを和えて保温しても、パスタの歯ごたえのある食感が維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0012】
本発明においてパスタソースとは、茹でたスパゲッティーやマカロニ等のパスタに絡めてパスタ料理に仕上げるためのソースであって、当該ソースが缶、ガラス、パウチ等の包装容器に充填・密封されたものをいう。また、当該パスタソースは、必要に応じて、レトルト処理や冷凍処理を施しても良い。また、味の種類としては、カルボナーラソース、きのこクリームソース、ミートソース、ラグーソース、トマトソース等の各種パスタソースが挙げられる。
【0013】
本発明は、上記パスタソースにおいて、リゾリン脂質と微結晶セルロースとを含有することを特徴とし、これにより、パスタへの吸水を抑えたパスタソースとなる。
【0014】
ここで、本発明のリゾリン脂質とは、リン脂質のグリセロール骨格の1位または2位に結合した脂肪酸残基のいずれか一方が加水分解により水酸基となったものであり、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジン酸等を挙げることができる。これらは単独で、あるいはこれらの混合物で、若しくは、これらを主成分とする組成物で配合しうる。リゾリン脂質の含有量は、製品に対して0.002〜2%が好ましく、0.01〜1%がより好ましい。リゾレシチンの含有量が前記範囲より少なくなると、たとえ後述する微結晶セルロースと組み合わせたとしても、パスタに吸水されやすいパスタソースとなり好ましくない傾向となる。一方、リゾレシチンの含有量を前記範囲より多くしたとしても、期待する程の吸水防止効果が得られ難く経済的でなく、また風味の変化が生じやすくなる傾向となる。
【0015】
具体的にリゾリン脂質としては、卵黄、大豆、ナタネ等から抽出したリン脂質を常法によりホスフォリパーゼにて酵素処理したものであり、上記卵黄等を直接ホスフォリパーゼで酵素処理した後、エタノール等の溶剤で抽出して得られるリゾリン脂質でも構わない。リゾリン脂質は、リゾリン脂質濃度100%の純粋なものに限る必要はなく、粗製のリゾリン脂質、つまりリゾレシチン(例えば、リゾリン脂質濃度10〜60%程度のもの)であっても差し支えない。例えば、実施例1において、リゾリン脂質濃度20%のリゾレシチンをパスタソースに0.2%配合した場合、リゾリン脂質の含有量は0.04%となる。なお、リゾリン脂質として、卵黄由来の卵黄リゾリン脂質を用いると、本発明のパスタソースに用いた場合、風味がより好ましいものが得られる。
【0016】
本発明で使用する微結晶セルロースは、セルロースを酸加水分解またはアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合体をいう。微結晶セルロースの結晶粒子の大きさとしては、平均粒径20μm以下、好ましくは10μm以下2μm以上である。また、前述した微結晶セルロースには、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、デキストリン、ペクチン等の分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する微結晶セルロース製剤を用いてもよい。また、本発明で使用する微結晶セルロースは、商業上入手可能なものであればいずれのものでもよい。微結晶セルロースの含有量は、製品に対して0.01〜2%が好ましく、0.02〜1%がより好ましい。微結晶セルロースの含有量が前記範囲より少なくなるとたとえ前述したリゾレシチンと組み合わせたとしても、パスタに吸水されやすいパスタソースとなり好ましくない傾向となる。一方、微結晶セルロースの含有量を前記範囲より多くしたとしても、期待する程の吸水防止効果が得られ難く経済的でなく、またパスタソースがボテボテとした状態となりやすくなる傾向となる。
【0017】
本発明のパスタソースは、リゾレシチンと微結晶セルロースを含有させる他に本発明の効果を損なわない範囲でパスタソースに通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、牛乳、バター、チーズ等の乳製品、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等の食用油脂、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋等の処理を施した化工澱粉、並びに湿熱処理澱粉等の澱粉類、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム等のガム質、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁等の酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、醤油等の各種調味料、糖アルコール、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、全卵、卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、動植物のエキス類、胡椒、唐辛子等の香辛料、並びに各種蛋白質やこれらの分解物等、ひらたけ、椎茸、エリンギ、しめじ、マッシュルーム、玉葱、ニンニク、トマト、オリーブ、魚肉類等の具材等が挙げられる。
【0018】
また、本発明のパスタソースの製造方法は、上記リゾリン脂質と微結晶セルロースを任意の時期に配合させる以外は、常法に則り製すればよい。また、得られたパスタソースは、パウチや缶等の包装容器に充填・密封した後、必要に応じてレトルト殺菌処理や冷凍処理を行ってもよい。
【0019】
以下、本発明のパスタソースについて、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
下記に示す配合割合で仕上がり100kgの冷凍カルボナーラソースを製した。つまり、撹拌機付きのニーダーに、下記の配合割合に準じ、原料が均一になるように加熱撹拌した。90℃達温後加熱を停止し、ベーコンとブラックペパーを加え、仕上げ撹拌してソースを得た。得られたソースをパウチに充填・密封し、冷却後、−20℃にて凍結処理をし、冷凍カルボナーラソースを製した。なお、リゾレシチンは卵黄由来のものを用いた。
【0021】
<配合割合>
牛乳 15%
クリーム 5%
ナチュラルチーズ 5%
生卵黄 3%
化工澱粉 1%
食塩 1%
微結晶セルロース 0.2%
リゾレシチン(リゾリン脂質20%) 0.2%
キサンタンガム 0.1%
ベーコン 10%
ブラックペパー 0.1%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0022】
[比較例1]
実施例1において、微結晶セルロースを除いた以外は、実施例1と同様の方法で、冷凍カルボナーラソースを製した。
【0023】
[比較例2]
実施例1において、卵黄由来のリゾレシチン(リゾリン脂質20%)を除した以外は、実施例1と同様の方法で、冷凍カルボナーラソースを製した。
【0024】
[比較例3]
実施例1において、卵黄由来のリゾレシチン(リゾリン脂質20%)を卵黄由来のレシチン(リン脂質30%)に変更し、パスタソースに対するリン脂質の配合量をリゾリン脂質の配合量と同量となるようにした以外は、実施例1と同様の方法で、冷凍カルボナーラソースを製した。
【0025】
[試験例1]
実施例1および比較例1〜3で得られた冷凍カルボナーラソースを−20℃で2週間冷凍保存した。そして、前記冷凍カルボナーラソースを流水解凍して、湯煎にて温め、茹でたパスタと和えた後、保温バッグに1時間入れて、取り出したものについて、パスタの状態を比較評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1の結果より、リゾリン脂質及び微結晶セルロースを配合した実施例1は、微結晶セルロースを配合していない比較例1、リゾリン脂質を配合していない比較例2及びリゾリン脂質の代わりにリン脂質を配合した比較例3と比較して、パスタへの吸水を抑えられることが理解される。
【0028】
[試験例2]
<リゾリン脂質の適正配合割合>
実施例1の配合割合を基本にして、卵黄由来のリゾレシチンの配合割合を表2に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の方法で、冷凍カルボナーラソースを製した。そして、得られた冷凍カルボナーラソースを−20℃で2週間冷凍保存した。次に、前記冷凍カルボナーラソースを流水解凍して、湯煎にて温め、茹でたパスタと和えた後、保温バッグに1時間入れて、取り出したものについて、パスタの状態を比較評価した。結果を表2に示す。なお、評価基準は試験例1に準ずる。
【0029】
【表2】

【0030】
表2より、パスタソースに対するリゾリン脂質の配合割合は、好ましくは0.002〜2%、より好ましくは0.01〜1%とすると、パスタへの吸水を抑えられることが理解される。
【0031】
[試験例3]
<微結晶セルロースの適正配合割合>
実施例1の配合割合を基本にして、微結晶セルロースの配合割合を表3に示すとおりにした以外は、実施例1と同様の方法で、冷凍カルボナーラソースを製した。そして、得られた冷凍カルボナーラソースを−20℃で2週間冷凍保存した。次に、前記冷凍カルボナーラソースを流水解凍して、湯煎にて温め、茹でたパスタと和えた後、保温バッグに1時間入れて、取り出したものについて、パスタの状態を比較評価した。結果を表3に示す。なお、評価基準は試験例1に準ずる。
【0032】
【表3】

【0033】
表3より、パスタソースに対する微結晶セルロースの配合割合は、好ましくは0.01〜2%、より好ましくは0.02〜1%とすると、パスタへの吸水を抑えられることが理解される。
【0034】
[実施例2]
下記に示す配合割合で仕上がり100kgのレトルトきのこクリームソースを製した。つまり、撹拌機付きのニーダーに、下記の配合割合に準じ、原料が均一になるように加熱撹拌してソースを得た。得られたソースをパウチに充填・密封し、120℃、20分間レトルト殺菌し、しかる後、冷却してレトルトきのこクリームソースを製した。なお、リゾレシチンは卵黄由来のものを用いた。
【0035】
<配合割合>
牛乳 50%
クリーム 30%
化工澱粉 1%
食塩 1%
微結晶セルロース 0.2%
リゾレシチン(リゾリン脂質20%) 0.2%
キサンタンガム 0.1%
しめじ 6%
舞茸 6%
ベーコン 3%
清水 残余
――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0036】
実施例2で得られたレトルトきのこクリームソースを湯煎にて温め、茹でたパスタと和えた後、保温バッグに1時間入れて、取り出したものについて、パスタの状態を評価したところ、微結晶セルロースおよび/またはリゾリン脂質を配合しなかったものと比べ、パスタへの吸水が抑えられていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リゾリン脂質と微結晶セルロースとを含有していることを特徴とするパスタソース。
【請求項2】
リゾリン脂質の含有量が、製品に対して0.002〜2%である請求項1記載のパスタソース。
【請求項3】
微結晶セルロースの含有量が、製品に対して0.01〜2%である請求項1または2記載のパスタソース。