説明

パターン位相差フィルム、パターン偏光板、画像表示装置、及び立体画像表示システム

【課題】支持体フィルムの光学特性によるクロストーク発生の軽減。
【解決手段】 光学異方性を有する支持体フィルム(14)、及び該支持体フィルム上に、面内遅相軸の方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2位相差領域を有するパターン位相差層(12)を少なくとも有するパターン位相差フィルムであって、前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であるパターン位相差フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D画像表示用光学フィルム等として有用なパターン位相差フィルム、並びにそれを有するパターン偏光板、画像表示装置及び立体画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する3D画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。例えば、かかる光学部材には、遅相軸やレターデーション等が互いに異なる領域が規則的に面内に配置されたパターン位相差フィルムが利用されている。過去にはパターン位相差層の支持体として、等方性であるガラスが用いられてきたが(例えば特許文献1)、近年では生産性の観点から、支持体として樹脂からなる透明フィルムを用いる要望が高まっている。一方、特許文献1にも記載があるように、樹脂を用いて支持体を作製した場合、その位相差により、出射する円偏光を歪めてしまうという問題があった。
【0003】
特許文献2には、支持体の遅相軸をパターン領域の遅相軸の二等分線と平行または直交とすることにより、右眼と左眼とで円偏光の状態の差をなくすことが開示されているが、これは根本的にクロストークを解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−253824号公報
【特許文献2】特許第4508280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クロストーク量の軽減に寄与するパターン位相差フィルム及びパターン偏光板、並びにそれを利用したクロストークの発生が軽減された画像表示装置及び立体画象表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 光学異方性を有する支持体フィルム、及び該支持体フィルム上に、面内遅相軸の方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2位相差領域を有するパターン位相差層を少なくとも有するパターン位相差フィルムであって、前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であるパターン位相差フィルム。
[2] 前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが、5°以上である[1]のパターン位相差フィルム。
[3] 前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが、7°以上である[1]又は[2]のパターン位相差フィルム。
[4] 前記支持体フィルムの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である[1]〜[3]のいずれかのパターン位相差フィルム。
[5] 前記支持体フィルムのRe(550)が、10nm以下である[1]〜[4]のいずれかのパターン位相差フィルム。
[6] 前記支持体フィルムのRe(550)が、5nm以下である[1]〜[5]のいずれかのパターン位相差フィルム。
[7] 前記第1及び第2位相差領域のRe(550)が110〜165nmであり、且つ第1及び第2位相差領域の面内遅相軸が互いに直交している[1]〜[6]のいずれかのパターン位相差フィルム。
[8] [1]〜[7]のいずれかのパターン位相差フィルム、及び直線偏光膜を少なくとも有するパターン偏光板。
[9] 画像表示パネル部、及び該画像表示パネル部の視認側表面に[1]〜[7]のいずれかのパターン位相差フィルム、又は[8]のパターン偏光板を有する画像表示装置。[10] [9]の画像表示装置、及び該画像表示装置と観察者との間に配置される偏光板を少なくとも有する立体画像表示システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、支持体の位相差を0にできない場合でも、支持体の位相差によるクロストーク量を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のパターン位相差フィルムの一例の断面模式図(a)及び上面模式図(b)である。
【図2】本発明のパターン位相差フィルムの一例の面内遅相軸と直線偏光膜の吸収軸との関係の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の立体画像表示システムの一例の断面模式図である。
【図4】露光マスクの一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書中、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
[Re(λ)]
本明細書において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
なお、本明細書では、特に付記がない限りは屈折率の測定波長は550nmとする。
【0011】
1.パターン位相差フィルム
本発明は、光学異方性を有する支持体フィルム、及び該支持体フィルム上に、面内遅相軸の方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2位相差領域を有するパターン位相差層を少なくとも有するパターン位相差フィルムであって、前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であるパターン位相差フィルムに関する。本発明のパターン位相差フィルムは、例えば、立体画像表示装置の画像表示パネル部の視認側表面に配置され、左右眼用偏光画像の分離に利用される。
【0012】
一例は、前記第1及び第2位相差領域のRe(550)がλ/4程度であり、且つ第1及び第2位相差領域の面内遅相軸が互いに直交しているパターン位相差フィルムである。該パターン位相差フィルムに直線偏光画像が入射すると、第1及び第2位相差領域をそれぞれ通過した偏光画像は互いに逆向きの円偏光画像に変換される。互いに逆向きの円偏光板が左右眼用レンズとして配置される円偏光メガネを装着した観察者が観察すれば、該観察者の右眼には右眼用円偏光画像のみを、左眼には左眼用円偏光画像のみを入射させることができる。視差のある画像を左右眼それぞれに入射させれば、観察者は立体画像として認識する。
【0013】
しかし、パターン位相差層の支持体がフィルムであるパターン位相差フィルムでは、支持体として用いるフィルムの光学特性が影響し、左右眼用の理想的な偏光画像に変換できず、パターン位相差フィルムから出射する円偏光が歪み、立体画像を観察した際にクロストークが生じてしまう。支持体として用いるフィルムのレターデーションを低下することで支持体フィルムの影響を軽減することができるが、フィルムのレターデーションを完全に0にすることは困難であり、また実現できたとしても、生産性などの観点から実用に沿わない。
【0014】
本発明では、支持体として用いるフィルムの面内遅相軸の向きをランダムにしているので、パターン位相差層の第1及び第2位相差領域に、支持体フィルムの位相差がランダムに影響を及ぼすことになり、トータルとしては支持体フィルムの位相差の影響が平均化される。それにより、クロストークの発生量を軽減することができる。従来、液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる位相差フィルムについては、表示特性を向上させるために、フィルムの面内遅相軸方向のばらつきをなるべく低減し、面内遅相軸の揃ったフィルムを用いることが好ましいとされ、改良技術に関する研究開発もその方向性で様々な検討がなされてきた。このことに鑑みれば、本発明では、従来の知見に基づく改良技術の方向性とは逆向きの技術思想により、クロストークという3D表示特有の課題を解決するに至ったと言うことができる。
【0015】
ここで、面内遅相軸がランダムな状態とは、具体的には、後述の測定方法により測定される面内遅相軸方向のばらつきが3°以上のことを言い、5°以上が好ましく、7°以上がより好ましく、10°以上が更に好ましく、15°以上が更に好ましい。ばらつきを3°以上にすることで、たとえ支持体として用いるフィルムが等方性でなくても、フィルムのレターデーションに起因して生じるクロストークの発生量を軽減することができる。
【0016】
支持体フィルムの光学特性によるクロストーク発生量の軽減効果の観点では、面内遅相軸方向のばらつきが大きいほうが好ましく、上記効果の観点ではばらつきの上限値はないが、上限値は90°となる。
【0017】
また、支持体フィルムのレターデーションが高いと、本発明の効果が損なわれる場合がある。よって、支持体フィルムのRe(550)は小さいほうがよく、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることがより好ましい。一方、支持体フィルムが完全な等方性の場合は、3D表示装置としては理想であるが、そもそも支持体フィルムを光が通過した際に偏光状態が変化しないため、本発明の効果は出ない。支持体フィルムが異方性を持ち、かつその異方性が小さいときに本発明の効果が大きい。一方、完全な等方性のフィルムを作製することは困難である。本発明では、完全な等方性ではなくとも、その面内遅相軸をランダムな方向に向かせることで、同じレターデーションでも面内遅相軸がそろっている場合に比べて、よりクロストークを小さくすることができる。
【0018】
本発明のパターン位相差フィルムが有するパターン位相差層は、面内遅相軸及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2位相差領域を有する。パターンの形状及び配置については特に制限はないが、左右画像が不均一にならないようにするためには、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。一例は、同一の幅のストライプ状の第1及び第2位相差領域が交互に配置されたパターン位相差層である。
【0019】
本発明のパターン位相差フィルムが有する第1及び第2位相差領域の態様については特に制限はない。直線偏光膜との組み合わせによって、右眼用及び左眼用の偏光画像を分離可能な、パターン化の態様のいずれであってもよい。第1及び第2位相差領域のRe、それぞれの面内遅相軸の関係、及び直線偏光膜の吸収軸との関係について、いくつかの例をまとめれば、以下の通りである。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明のパターン位相差フィルムの一例の断面模式図を図1(a)に、上面模式図を図1(b)にそれぞれ示す。図1に示すパターン位相差フィルムは、上記表中の第1の態様のパターン位相差層を有する例である。
図1に示すパターン位相差フィルム10は、図1(a)に断面模式図として示す通り、支持体フィルム14、及びその上に、パターン位相差層12を有する。パターン位相差層12と支持体フィルム14との間には、パターン位相差層12の形成に利用される配向膜が配置されていてもよい。配向膜の一例は、同一の液晶組成物を互いに異なる方向(具体的には液晶の長軸を互いに直交する方向)に配向制御可能な第1及び第2の配向制御領域を有する。配向膜は、例えば、マスク露光又はマスクラビング処理を行うことで形成することができる。仮支持体上に配向膜を利用してパターン位相差層を別途形成し、該パターン位相差層を、支持体フィルム14上に転写してもよく、その場合は、パターン位相差フィルムは、配向膜を含まなくても、勿論よい。
【0022】
パターン位相差層12は、図1(b)に上面模式図を示す様に、第1及び第2の位相差領域12a及び12bが、均等且つ対称に配置されたパターン位相差層であることが好ましい。第1及び第2の位相差領域12a及び12bは、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有するとともに、Reがλ/4程度(具体的には、110〜165nmであり、120〜145nmであることが好ましい)であることが好ましい。
【0023】
本発明のパターン位相差フィルムは、他の機能層を有していてもよい。他の機能層の例にはハードコート層、光反射防止層が含まれる。これらの層を、支持体フィルム上に形成した積層フィルムを作製し、本発明のパターン位相差フィルムと貼合してもよい。また、パターン位相差層を形成した後に、又は形成する前に、支持体として利用されるフィルムの裏面(パターン位相差層を形成する面と反対側の面)に、上記機能層を、貼合もしくは塗布等により形成してもよい。また、パターン位相差層を形成した後に、パターン位相差層の表面に直接、貼合もしくは塗布等により形成してもよい。
【0024】
本発明のパターン位相差フィルムの製造方法については特に制限はない。一例は、
支持体となるフィルムを準備すること、
該フィルムの表面に互いに異なる配向制御能を有する配向膜を形成すること、
該配向膜の表面に液晶組成物からなる塗布層を形成し、配向させること、及び
配向状態を固定して、第1及び第2位相差領域を形成すること、
を含む方法である。
上記フィルムの面内遅相軸をランダムにする処理は、上記1以上の工程の実施と同時に実施されるか、又は上記いずれかの工程の間に1以上実施することができる。通常は、配向膜を形成する前に支持体となるフィルムに対して実施されるか、又は支持体となるフィルムの製造中に実施される。
【0025】
支持体フィルム:
支持体として用いるフィルムとしては、光透過性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れる重合体や樹脂を主成分とするフィルムが好ましい。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0026】
また、前記支持体として用いるフィルムの主成分としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0027】
また、前記支持体として用いられるフィルムの主成分としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることができる。
【0028】
上記した通り、支持体として用いるフィルムは低位相差であるのが好ましい。フィルムのReを低下させるために、フィルムに1種以上の添加剤を添加してもよい。フィルムの光学異方性を低下させる添加剤については、特に制限はなく、従来公知の添加剤をいずれも利用することができる。
【0029】
支持体として用いられる前記フィルムは、面内遅相軸をランダムにする処理を施されているのが好ましい。前記処理の例には、製膜の過程で所定の方向に配向した主成分ポリマー等の配向を緩和するための処理が挙げられる。一例は、フィルムを加熱する処理である。また他の例は、フィルムの表面(好ましくは表面及び裏面)に、アセトン等の有機溶媒を塗布して、乾燥する処理である。有機溶媒の塗布により、フィルム中に溶媒が一部浸透し、フィルム中の主成分ポリマー等の配向の緩和が促進される。
【0030】
また、フィルムの面内遅相軸のランダム化は、積極的に実施される処理によって達成される場合に限られるものではない。例えば、製膜の過程で、主成分ポリマー等の配向が促進されないように製膜条件を調整することによっても、製造されるフィルムの面内遅相軸をランダムにすることができる。一例は、製膜の過程で、フィルムに負荷されるテンションを軽減する方法である。フィルムにテンションがかかりやすいのは、溶液製膜法では、フィルムを乾燥して、溶媒を蒸発させる工程であるので、当該乾燥工程において、フィルムに過度なテンショがかからない条件で乾燥を実施することで、面内遅相軸のランダム化を達成できる。さらに、乾燥終了する際のフィルム中の残留溶媒量が多いほど、面内遅相軸がランダム化する傾向がある。また、フィルムの延伸倍率を低下すること、及び延伸温度を低下させることも、面内遅相軸のランダム化に寄与する。
【0031】
配向膜:
本発明に利用可能な配向膜は、マスク露光又はマスクラビング等により、互いに異なる配向制御能を有する第1及び第2配向制御領域を有するパターン配向膜が挙げられる。また、他に利用可能な配向膜としては、液晶分子が、配向膜への紫外線照射部分でラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行になるように配向し、未照射部分で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して直交配向する配向膜が挙げられる。また、マスクラビングにより配向膜を形成してもよい。又は、光配向膜を利用してもよい。
【0032】
パターン位相差層:
本発明のパターン位相差フィルムが有するパターン位相差層は、液晶組成物から形成することができる。使用する液晶については特に制限はなく、円盤状液晶及び棒状液晶のいずれも用いることができる。Re(550)がλ/4程度の位相差領域は、円盤状液晶の垂直配向(円盤面を層面に対して垂直にして配向した状態)を固定することによって、又は棒状液晶の水平配向(棒状液晶の長軸を層面に対して水平にして配向した状態)を固定することによって形成することができる。
【0033】
パターン位相差層の形成方法として、以下の態様が挙げられる。
第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、後述する所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。後述する所定のピリジニウム誘導体等は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における偏在性及び密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特開2012−008170号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0034】
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特開2012−032661号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
本態様では、例えばマスクを用いたマスク露光等の処理は、配向膜に対して実施される。
【0035】
第3の態様は、配向膜中に光酸発生剤を添加する態様である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0036】
上記パターン形成方法の態様は例示であって、上記態様に限定されるものではない。
【0037】
2.パターン偏光板
本発明は、本発明のパターン位相差フィルムと、直線偏光膜とを少なくとも有するパターン偏光板にも関する。直線偏光膜は、パターン位相差層の表面と貼合してもよいし、支持体フィルムの表面と貼合してもよい。また、直線偏光膜と本発明のパターン位相差フィルムとの間に他のフィルム(例えば直線偏光膜の保護フィルム)が配置されていてもよいが、その場合には、該他のフィルムも、面内遅相軸がランダムであり且つ低位相差のフィルムであるのが好ましく、好ましい範囲は、上記した支持体として用いられるフィルムのこれらの特性の好ましい範囲と同様である。直線偏光膜と本発明のパターン位相差フィルムとの間には、他のフィルムが配置されていないのが好ましい。
【0038】
図1に示すパターン位相差フィルム10を直線偏光膜と組み合わせる際は、図2に模式的に示す通り、直線偏光膜16の吸収軸Pを、パターン位相差層12の第1及び第2位相差領域12a及び12bそれぞれの面内遅相軸と±45°で交差させて貼合するのが好ましい。
【0039】
本発明は、本発明のパターン位相差フィルム又はパターン偏光板と、画像表示パネル部とを少なくとも有する画像表示装置及び立体画像表示システムにも関する。本発明のパターン位相差フィルム又はパターン偏光板は、画像表示パネル部の視認側に配置され、表示パネル部が表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。
【0040】
本発明では、画像表示パネル部の構成については、なんら制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。また、透過モードの液晶パネル等、視認側表面に画像表示のための直線偏光膜を有する態様では、本発明のパターン位相差フィルムは、当該直線偏光膜との組み合わせによって、上記機能を達成してもよい。勿論、液晶表示パネルの表面に、直線偏光膜を有する本発明のパターン偏光板を配置してもよいが、その場合は、パターン偏光板の直線偏光膜の吸収軸と、液晶パネル部の直線偏光膜の吸収軸とを一致させて配置する。
【0041】
本発明の立体画像表示システムは、本発明の画像表装置、及び該画像表示装置と観察者との間に配置される偏光板を少なくとも有することを特徴とする。前記偏光板の一例は、観察者が装着する偏光メガネである。偏光メガネの左右眼用レンズとして配置される偏光板は、円偏光板、楕円偏光板、及び直線偏光板のいずれであってもよい。画像表示装置が表示する偏光画像に応じて選択される。具体的には、本発明の画像表示装置が互いに逆向きの円偏光画像をそれぞれ表示する態様では、左右眼用レンズとして互いに逆向きの円偏光板を有する円偏光メガネが用いられる。
【0042】
図3に、本発明の立体画象表示システムの一例の断面模式図を示す。図3に示す例は、画像表示装置の画像表示パネル部として、液晶パネルを有する態様である。
図3に示す立体画像表示システムは、画像表示装置30と、画像表示装置30を観察する観察者と画像表示装置30との間に、円偏光板40を有する。円偏光板40は、例えば、観察者が装着する円偏光メガネである。
【0043】
画像表示パネル部20は、液晶パネルであって、互いの吸収軸を直交にして配置された一対の直線偏光膜22a及び22bと、その間に配置される液晶セル21と、を有する。直線偏光膜22a及び22bと液晶セル21との間には、光学補償フィルム23a及び23bがそれぞれ配置されていて、液晶セル21の視野角補償に寄与している。液晶セル21の液晶駆動モードによっては、光学補償フィルム23a及び23bは不要であり、例えば偏光膜22a及び22bを保護するための保護フィルムに置き換えられていてもよい。また光学補償フィルム23a及び23bは、液晶セル21の液晶駆動モードによっては、それぞれ2枚以上配置されていてもよい。
【0044】
直線偏光膜22aの視認側表面、即ち観察者側表面には、図1に示す本発明のパターン位相差フィルムの一例10が配置されていて、画像表示パネル部から入射される直線偏光画像は、パターン位相差フィルム10を通過することで、左右眼用の互いに逆向きの円偏光画像として出射する。左右眼用レンズとして互いに逆向きの円偏光板40を有する偏光メガネを装着した観察者が観察すると、右眼には右眼用画像のみが、左眼には左眼用画像のみが入射する。視差のある画像を左右眼それぞれに入射すれば、観察者は立体画像として認識する。
【0045】
前記画像表示装置が有する液晶パネルのモードについては特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等、いずれの表示モードの態様であってもよい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
《測定法》
まず、特性の測定法および評価法を以下に示す。
[面内遅相軸方向のばらつき]
試料70mm×110mmを切り出し、相対湿度60%で2時間調湿し、自動複屈折計「KOBRA AD200」(王子計測機器(株)製)で面内遅相軸方向を測定した。試料は全幅を均等に分割して13箇所から切り出し、その最大値、最小値の差を面内遅相軸方向のばらつきとした。
なお、切り出す試料のサイズによっては、試料を13箇所から切り出せない場合もあるが、13個より少ない試料において最大値、最小値の差が本発明で規定した値以上となる場合には、その試料(支持体フィルム)を用いたパターン位相差フィルムは本発明の範囲であることは言うまでもない。
【0048】
[クロストーク]
W220S(Hyundai製)に付属の3Dメガネを立体画像表示装置の正面に配置し、更に3Dメガネの左右のレンズを結ぶ線と地面が平行になるように配置した。立体画像表示装置に表示する3Dコンテンツには、片目に白を、もう片方の目に黒を表示する3Dコンテンツを用い、暗室において、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、3Dメガネ越しに白輝度、黒輝度を測定し、次の式で正面クロストークを算出した。
クロストーク(%)=2×黒輝度/(白輝度+黒輝度)×100
【0049】
[参考例1]
(パターン位相差層の作製)
ガラス基板上に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドラン
プ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射し、光配向膜付ガラス基板を作製した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を、図4(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図4(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
【0050】
【化1】

【0051】
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付ガラス基板上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線
を照射して、その配向状態を固定化して、ガラス基板上にパターン位相差層を作製した。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであり、第1位相差領域、及び第2位相差領域ともに、Re(550)が130nmであり、それぞれの面内遅相軸は直交していた。
【0052】
────────────────────────────────────────
光学異方性層用組成
────────────────────────────────────────
棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
【0053】
【化2】

【0054】
[実施例1]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
〔セルロースアシレート溶液A組成〕
・酢化度2.94のセルロースアシレート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
・メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0055】
(マット剤溶液Aの調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)20質量部と、メタノール80質量部とを30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液Aを調製した。
〔マット剤溶液Aの組成〕
・平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
・メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
・セルロースアシレート溶液A 10.3質量部
【0056】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。光学的異方性を低下する化合物および波長分散調整剤は下記の化合物を用いた。
(添加剤溶液組成)
・下記レターデーション低下化合物 49.3質量部
・下記波長分散調整剤 7.6質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
・メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
・セルロースアシレート溶液A 12.8質量部
【0057】
【化3】

【0058】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
前記セルロースアシレート溶液Aを94.6質量部と、マット剤溶液を1.3質量部と、添加剤溶液4.1質量部とをそれぞれ濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。前記組成でレターデーション低下化合物および波長分散調整剤のセルロースアシレートに対する質量比はそれぞれ11.7%、1.2%であった。
残留溶剤量55%でフィルムをバンドから剥離し、フィルム両端をクリップで保持したテンターゾーンで18kgf/m(176N/m)のテンションを加えながら95℃で乾燥させた。この時、テンター入り口に対する最大拡縮率は103%であった。残留溶剤量が20〜22%の段階でテンタークリップからフィルムを離脱し、端部をカッター刃で切り落とした。次いで、複数のロール群からなる乾燥ゾーンで搬送しながら乾燥させた。乾燥温度は100℃〜135℃で行い、セルロースアシレートフィルム1を作製した。膜厚は80μmであった。
得られたフィルムのRe、面内遅相軸方向のばらつきを前記の項に記載の方法で測定した。結果を下記表に示す。
【0059】
[実施例2]
(セルロースアシレートフィルム2の作製)
実施例1で使用したドープの流量を調整し、得られたフィルムの膜厚を40μmになるようにして流延を行った。残留溶剤量55%でフィルムを剥ぎ取った後、フィルム両端をクリップで保持したテンターゾーンで15kgf/m(147N/m)のテンションを加えながら90℃で乾燥させた。残留溶媒量が20%の段階でテンターから離脱したこと以外は製造例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム2を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0060】
[実施例3]
(セルロースアシレートフィルム3の作製)
テンター離脱時の残留溶剤量を50%としたこと以外は実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム3を作製した。実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0061】
[実施例4]
(セルロースアシレートフィルム4の作製)
テンターの幅方向テンションを2kgf/m(19.6N/m)としたこと以外は実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム4を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0062】
[実施例5]
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Bを調製した。
〔セルロースアシレート溶液B組成〕
・酢化度2.94(6位のアセチル基置換度0.94)
のセルロースアセテート 100.0質量部
・ジクロロメタン(第1溶媒) 415.0質量部
・メタノール(第2溶媒) 75.0質量部
・ブタノール(第3溶媒) 10.0質量部
・二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)
0.4質量部
【0063】
(セルロースアシレートフィルム5の作製)
前記セルロースアシレート溶液Bを30℃に加温し、バンド流延機を用いて流延した。残留溶媒55%の状態でフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートの透明のフィルムを得た。
【0064】
(延伸)
上記製膜したセルロースアシレートフィルムを、ロール延伸機を用いて150℃にて、延伸倍率5%の縦一軸延伸処理を実施した。延伸倍率は、ニップロールの周速を調整することで制御した。
【0065】
(熱処理)
得られたフィルムの両端をテンタークリップで把持した後、240℃の加熱ゾーン内を通過させてセルロースアシレートフィルム5を作製した。膜厚は80μmであった。
得られたフィルムについて実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0066】
[実施例6]
(セルロースアシレートフィルム6の作製)
延伸時の温度を130℃としたこと以外は実施例5と同様にしてセルロースアシレートフィルム6を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0067】
[実施例7]
(セルロースアシレートフィルム7の作製)
延伸時の温度を120℃としたこと以外は実施例5と同様にしてセルロースアシレートフィルム7を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0068】
[実施例8]
(セルロースアシレートフィルム8の作製)
延伸倍率を0%としたこと以外は実施例5と同様にしてセルロースアシレートフィルム8を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0069】
[実施例9]
(セルロースアシレートフィルム9の作製)
延伸倍率を0%としたこと以外は実施例6と同様にしてセルロースアシレートフィルム9を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0070】
[実施例10]
(セルロースアシレートフィルム10の作製)
延伸倍率を0%としたこと以外は実施例7と同様にしてセルロースアシレートフィルム10を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0071】
[実施例11]
(セルロースアシレートフィルム11の作製)
熱処理温度を250℃としたこと以外は実施例8と同様にしてセルロースアシレートフィルム11を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0072】
[実施例12]
(セルロースアシレートフィルム12の作製)
熱処理温度を260℃としたこと以外は実施例8と同様にしてセルロースアシレートフィルム12を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0073】
[実施例13]
(セルロースアシレートフィルム13の作製)
セルロースアシレートフィルム8の両面にアセトンを塗布し、セルロースアシレートフィルム13を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0074】
[実施例14]
(セルロースアシレートフィルム14の作製)
セルロースアシレートフィルム10の両面にアセトンを塗布し、セルロースアシレートフィルム14を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0075】
[実施例15]
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂1の製造)
窒素雰囲気下、脱水したトルエン600部と、1−ヘキセン30部と、8−メチルカルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン200部とを室温で反応器に入れて混合した後、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.5部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/L)3.0部を添加し、この系を80℃で3時間、加熱撹拌して重合した。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液400部に対して、水素化触媒としてRuHCl(CO)〔P(C653〕3.0部を加え、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセン開環重合体水素化ポリマーを24%含有する反応溶液を得た。
得られた溶液に、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ化学社製、イルガノックス1010)を、重合体100部当たり0.3部添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器((株)日立製作所製)を用いて、温度295℃、圧力1kPa以下で、溶液から溶媒であるトルエンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、前記開環重合体水素化ポリマーを溶融状態で押出機からストランド状に押し出し、冷却後、ペレット化して回収した。
【0076】
(ノルボルネンフィルム1の作製)
得られた熱可塑性ノルボルネン系樹脂1のペレットを、塩化メチレンに溶解して固形分濃度が30%の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をステンレス製の無端ベルト上に流延した。当該無端ベルト上のフィルムを40℃で40分乾燥して、当該無端ベルトからフィルムを剥離し、続いて100℃で180分、さらに120℃で120分乾燥して、ノルボルネンの透明フィルムを得た
【0077】
(延伸)
上記製膜したノルボルネンフィルムを、同軸二軸延伸機を使用して、160℃、縦延伸倍率1.41倍、横延伸倍率1.41倍で同時二軸延伸を行い、ノルボルネンフィルム1を作製した。膜厚は51μmであった。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0078】
[比較例1]
(セルロースアシレートフィルム15の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Bを調製した。
【0079】
〔セルロースアシレート溶液B組成〕
・酢化度2.96のセルロースアシレート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
・メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0080】
(マット剤溶液Bの調製)
実施例1におけるマット剤溶液Aの調製において、セルロースアシレート溶液Aをセルロースアシレート溶液Bに変更した以外は同様にしてマット剤溶液Bを調製した。
【0081】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。レターデーション低下化合物および波長分散調整剤は実施例1と同様の化合物を用いた。
〔添加剤溶液組成〕
・前記レターデーション低下化合物 54.0質量部
・前記波長分散調整剤 7.6質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
・メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
・セルロースアセテート溶液B 12.8質量部
前記セルロースアセテート溶液Bを94.6質量部と、マット剤溶液を1.3質量部と、添加剤溶液4.1質量部とを、それぞれ濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。前記組成でレターデーション低下化合物および波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ16.0%、1.2%であった。
作製したドープを用いて、バンド流延機で流延した。残留溶剤量45%でフィルムを剥ぎ取った後、フィルム両端をクリップで保持したテンターゾーンで35kgf/m(343N/m)のテンションを加えながら95℃で乾燥させた。残留溶媒量が27%の段階でテンターから離脱し、搬送テンションを10kgf/m(10N/m)にしたこと以外は実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム15を作製した。得られたフィルムの残留溶剤量を調べた結果、0.3%であった。また、膜厚は80μmであった。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0082】
[比較例2]
(セルロースアシレートフィルム16の作製)
テンターの幅方向のテンションを60kgf/m(588N/m)にしたこと以外は実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム16を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す。
【0083】
[比較例3]
(セルロースアシレートフィルム17の作製)
乾燥後にフィルムの両端をテンタークリップで把持した後、240℃の加熱ゾーン内を通過させた以外は実施例5と同様にしてセルロースアシレートフィルム17を作製した。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に締めす。
【0084】
[比較例4]
(熱可塑性ノルボルネン系樹脂2の製造)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7
−ジエン(以下、DCPと略記)40部、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下、MTFと略記)100部およびテトラシクロ〔4.4.0,
2,5.17,10〕ドデカ−3−エン(以下、TCDと略記)60部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。この重合溶液に、ブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて、重合触媒を不活性化し、重合反応を停止した。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加えて、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら、220℃まで昇温した後、4時間反応させて、DCP/MTF/TCD開環重合体水素化ポリマーを20%含有する反応溶液を得た。
この反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ化学社製、イルガノックス1010)を、得られた溶液に添加して溶解させた(重合100部体当たり0.1部)。次いで、円筒型濃縮乾燥器((株)日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から溶媒であるシクロヘキサンおよびその他の揮発性成分を除去しつつ、前記開環重合体水素化ポリマーを溶融状態で押出機からストランド状に押し出し、冷却後、ペレット化して回収した。
【0085】
(ノルボルネンフィルム2の作製)
得られた熱可塑性ノルボルネン系樹脂2のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後、リーフディスク形状のポリマーフィルターを設置した65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を使用して、押出成形機の温度260℃、ダイス温度260℃で押出し、押出されたシート状の熱可塑性ノルボルネン系樹脂を3本の冷却ドラム(直径300mm、ドラム温度100℃、引き取り速度0.35m/s)に通して冷却し、ノルボルネンの透明フィルムを得た。
【0086】
(延伸)
上記製膜したノルボルネンフィルムを、同軸二軸延伸機を使用して、136℃、縦延伸倍率1.41倍、横延伸倍率1.41倍で同時二軸延伸を行い、ノルボルネンフィルム2を作製した。膜厚は99μmであった。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして光学性能を評価した。結果を下記表に示す
【0087】
(パターン位相差フィルム1〜19の作製)
上記作製したセルロースアシレートフィルム1〜17の片面をアルカリ鹸化処理し、参考例1と同様にパターン位相差層を形成し、パターン位相差フィルム1〜14、16〜18をそれぞれ作製した。
また、参考例1で作製したパターン位相差層を剥がし、上記作製したノルボルネンフィルム1及び2の片面それぞれに、接着剤を用いて貼り合わせ、パターン位相差フィルム15及び19をそれぞれ作製した。
【0088】
(パターン位相差フィルム付偏光板1〜19の作製)
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=50/125)を、鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜と貼り合せ、偏光膜の反対側の面に、パターン位相差フィルム1〜19を位相差層が偏光膜側となるように接着剤を用いて貼りあわせ、パターン位相差フィルム付偏光板1〜19を作製した。このときVA用位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度が直交、パターン位相差層の面内遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
【0089】
(立体画像表示装置1〜19の作製)
NEC社製LCD22WMGXの視認側の偏光板をはがし、上記作製したパターン位相差フィルム付偏光板1〜19のVA用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せ、立体画像表示装置1〜19を作製した。
【0090】
(クロストークの評価)
上記作製した立体画像表示装置1〜19についてクロストークを前記の項に記載の方法で測定した。比較例2のクロストークと比較して、各実施例、比較例のクロストークがどれだけ減少したかを以下の基準で評価した。結果を下記表に示す。
A:5%以上減少
B:3%以上減少
C:1%以上減少
D:1%以下減少
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
上記表に示す結果から、支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であると、面内遅相軸方向のばらつきが3°未満のフィルムを支持体として用いたパターン位相差フィルムと比較して、顕著にクロストーク発生量を軽減できることが理解できる。
例えば、上記表中、比較例1では、支持体フィルムのReを4nmまで低減しても、面内遅相軸方向のばらつきが3°未満であるので、クロストークの発生が顕著であり、一方、実施例3では、支持体フィルムのReが6nmであり、比較例1よりも高いにもかかわらず、面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であるので、クロストーク発生量が格段に軽減されていることが理解できる。
また、上記表中、比較例3では、支持体フィルムのReを1nmまで低減しても、面内遅相軸方向のばらつきが3°未満であるために、クロストークの発生量は「C」の評価にとどまっているのに対して、面内遅相軸方向のばらつきが3°以上である実施例では、比較例3よりもReが顕著に高い支持体フィルムを用いても、クロストークの発生量は比較例3と同等であり、また比較例3と同様に低Reであると、クロストークの発生量が格段に軽減されることが理解できる。
実施例15と比較例4との比較からも、同等のReを有するフィルムを支持体として用いた場合に、面内遅相軸を3°以上にばらつかせることで、クロストーク量が顕著に軽減できることが同様のことが理解できる。
【0095】
さらに、上記実施例では、面内遅相軸のランダム化のための方法は様々であり、また支持体フィルムの主成分が異なっていても同様に効果が得られることから、本発明の効果は、面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であれば、ランダム化のための処理方法や支持体の主成分に影響されずに、得られる効果であると言える。
【符号の説明】
【0096】
10 パターン位相差フィルム
12 パターン位相差層
12a、12b 第1及び第2位相差領域
14 支持体フィルム
16 直線偏光膜
20 画像表示パネル部
21 液晶セル
22a、22b 直線偏光膜
23a、23b 光学補償フィルム
24 保護フィルム
30 画像表示装置
40 偏光板
42 直線偏光膜
44 λ/4板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性を有する支持体フィルム、及び該支持体フィルム上に、面内遅相軸の方向及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2位相差領域を有するパターン位相差層を少なくとも有するパターン位相差フィルムであって、前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが3°以上であるパターン位相差フィルム。
【請求項2】
前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが、5°以上である請求項1に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項3】
前記支持体フィルムの面内遅相軸方向のばらつきが、7°以上である請求項1又は2に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項4】
前記支持体フィルムの波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20nm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項5】
前記支持体フィルムのRe(550)が、10nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項6】
前記支持体フィルムのRe(550)が、5nm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項7】
前記第1及び第2位相差領域のRe(550)が110〜165nmであり、且つ第1及び第2位相差領域の面内遅相軸が互いに直交している請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム、及び直線偏光膜を少なくとも有するパターン偏光板。
【請求項9】
画像表示パネル部、及び該画像表示パネル部の視認側表面に請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン位相差フィルム、又は請求項8に記載のパターン偏光板を有する画像表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像表示装置、及び該画像表示装置と観察者との間に配置される偏光板を少なくとも有する立体画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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