説明

パターン分離装置及びパターン分離方法及びプログラム

【課題】過去においても直接的に測定されることがないような未知パターンの元信号を含む複合信号からも元信号を分離可能であり、その未知パターンを推定する精度が高く、かつ、汎用性の高いパターン分離の仕組みを提供する。
【解決手段】パターン分離情報抽出部104は、複合信号のサンプルを抽出する。パターン推定部108は、複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルとから、特定の元信号の値が変化するパターンを推定する。そして、パターン分離部110は、複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された観測信号のサンプルと、パターン推定部108により推定された特定の元信号のパターンとに基づき、複数の元信号の値を算出することにより、複合信号を複数の元信号に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン分離装置及びパターン分離方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電と系統からの供給電力によって実負荷をまかなう配電区間の負荷推定方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、将来の太陽光発電システムの発電量を予測する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193605号公報
【特許文献2】特開2006−33908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力需要等の、異なるパターンを持つ信号の組み合わせからなる信号(以下では「複合信号」)の分析において、複合信号から、組み合わされる前の信号(以下では「元信号」)を分離したいという要求がある。複合信号は、全ての元信号のパターンが既知である場合もあれば、パターンが未知である元信号を含む場合もある。ここで、パターンとは数学的には基底と呼ばれる概念を指す。例えば時系列信号の形状や周波数スペクトルの形状等に対応する。
【0006】
従来のパターン分離方法として、全ての元信号のパターンが既知である場合には、既知のパターンを基底とした線型回帰手法等により、パターン分離を行えることは広く知られている。
【0007】
未知のパターンを含む場合においては、過去のデータを用いた学習により未知パターンを推定することによって、パターン分離を行うことが考えられるが、過去においても直接的に測定されることがないような未知パターン(以下では「完全な未知パターン」)を含む場合には、パターン分離が実行できないという課題が生じる。
【0008】
例えば、電力会社が系統負荷から需要家における電力消費量と太陽光発電量とを分離する問題を考える。
【0009】
ここで、系統負荷は需要家における電力消費量と太陽光発電量等が合算された量であり、複合信号に相当する。また、需要家における電力消費量は、需要家における電力消費量を戸別に計測する仕組みが導入されない限り、電力会社にとっては直接的に測定されることがない量であり、完全な未知パターンに相当する。同様に、太陽光発電量も完全な未知パターンに相当する。
【0010】
このような問題においては、過去の特定時点における太陽光発電量の測定値を既知とする手法は、適用することができない。特に、太陽光発電が広く普及した状態においては、太陽光発電量が適切に分離されない限り、既存の電力需要の振る舞いに関する知見の妥当性を確認することもできないため、既存の電力需要の振る舞いに関する知見を用いた補正等も困難となる。
【0011】
このように、完全な未知パターンを含む場合においてパターン分離を行う際には、過去のデータを用いた学習等に依存しないパターン分離方法が必要である。
【0012】
特許文献1では、太陽光発電の晴天時の想定発電効率に基づいて太陽光発電量を求め、この太陽光発電量を系統負荷に一律加算することで電力消費量の擬制値を計算しているだけなので、完全な未知パターンを推定する精度が十分ではないという課題がある。また、汎用性がなく、複合信号が系統負荷以外の時系列信号や周波数スペクトルである場合には適用できないという課題もある。
【0013】
本発明は、例えば、完全な未知パターンを含む場合においても適用可能であり、完全な未知パターンを推定する精度が高く、かつ、汎用性の高いパターン分離の仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様に係るパターン分離装置は、
属性の値の変化に伴って値が変化する観測信号を、前記属性の値の変化に伴って値が変化する複数の元信号に分離するパターン分離装置であって、
前記属性の値ごとに、前記観測信号の値を記憶装置により記憶するデータ記憶部と、
前記複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号について、前記属性の値が所定の開始値から所定の終了値まで変化するときに元信号の値が変化するパターンを、元信号のパターンとして記憶装置により記憶するパターン記憶部と、
前記データ記憶部に記憶された前記観測信号の値のうち、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときの前記観測信号の一連の値を、前記観測信号のサンプルとして処理装置により抽出する抽出部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルとから、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときに前記特定の元信号の値が変化するパターンを、前記特定の元信号のパターンとして処理装置により推定するパターン推定部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルと、前記パターン推定部により推定された前記特定の元信号のパターンとに基づき、前記複数の元信号の値を算出することにより、前記観測信号を前記複数の元信号に分離するパターン分離部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一の態様では、パターン分離装置において、パターン推定部が、複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、観測信号(複合信号)のサンプルとから、特定の元信号のパターンを推定する。そして、パターン分離部が、複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、観測信号のサンプルと、特定の元信号のパターンとに基づき、複数の元信号の値を算出することにより、観測信号を複数の元信号に分離する。そのため、本発明の一の態様によれば、完全な未知パターンを含む場合においても適用可能であり、完全な未知パターンを推定する精度が高く、かつ、汎用性の高いパターン分離の仕組みを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係るパターン分離装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態1に係るパターン分離装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【図3】実施の形態1に係るパターン分離装置の動作を示すフローチャート。
【図4】実施の形態1に係る複合信号生成例を示す図。
【図5】実施の形態1に係るパターン推定例及びパターン分離例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るパターン分離装置100の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1において、パターン分離装置100は、パターン分離情報記憶部101(データ記憶部の一例)、パターン生成情報記憶部102(データ記憶部の一例)、パターン分離情報抽出条件設定部103(抽出部の一例)、パターン分離情報抽出部104、パターン生成部105、パターン記憶部106、パターン推定条件設定部107(設定部の一例)、パターン推定部108、パターン修正部109、及び、パターン分離部110を備える。
【0020】
また、図示していないが、パターン分離装置100は、処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置等のハードウェアを備える。ハードウェアはパターン分離装置100の各部によって利用される。例えば、処理装置は、パターン分離装置100の各部でデータや情報の演算、加工、読み取り、書き込み等を行うために利用される。記憶装置は、そのデータや情報を記憶するために利用される。また、入力装置は、そのデータや情報を入力するために、出力装置は、そのデータや情報を出力するために利用される。
【0021】
パターン分離情報記憶部101は、パターン分離の対象となる複合信号の測定値(観測値)、及び、日時や気温等、複合信号の生成に関連する情報(複合信号の属性)を記憶装置により記憶する。以下では、これらを合わせてパターン分離情報とする。即ち、パターン分離情報記憶部101は、パターン分離情報を記憶装置により記憶する。
【0022】
ここで、複合信号は、属性の値の変化に伴って値が変化する観測信号である。例えば、複合信号は、時間(属性の一例)の経過に伴って値が変化する観測対象(例えば、電力系統の負荷)を、単位時間(例えば、1時間)ごとに観測した時系列データである。あるいは、例えば、複合信号は、周波数(属性の一例)の変化に伴って値が変化する観測対象(例えば、電波の電力や電圧)を、周波数成分ごとに観測した周波数スペクトルである。
【0023】
複合信号は、複数の元信号を合成することによって得られるが、本実施の形態は、特に、これら複数の元信号のうち、少なくとも1つが観測できない場合に好適である。この観測できない元信号は、後述するパターン推定の対象(以下では「特定の元信号」ともいう)となる。観測できない元信号が2つ以上ある場合は、後述するパターン生成が最も難しいものをパターン推定の対象とすることが望ましい。
【0024】
複合信号に含まれる複数の元信号は、複合信号と同じ属性の値の変化に伴って値が変化する信号である。複合信号が前述したような時系列データの場合、元信号は、時間(属性の一例)の経過に伴って値が変化する分離対象(例えば、電力消費量、太陽光発電量)の時系列データである。複合信号が前述したような周波数スペクトルの場合、元信号は、周波数(属性の一例)の変化に伴って値が変化する分離対象(例えば、個別チャネルの電波の電力や電圧)の周波数スペクトルである。
【0025】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン分離情報記憶部101は、日時(属性の値の一例)ごとに、観測対象の観測値(複合信号の値の一例)を記憶装置により記憶する。
【0026】
パターン生成情報記憶部102は、直接的に測定が可能な元信号の測定値、又は、パターン生成に係る法則が既知である元信号のパターンを生成するために必要なパターン生成情報を記憶装置により記憶する。
【0027】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン生成情報記憶部102は、日時ごとに、例えば、気温や天候や日射量といった気象データ(他の属性の一例)の値を記憶装置により記憶する。
【0028】
パターン分離情報抽出条件設定部103は、未知パターンの推定に適したパターン推定用サンプルを抽出するためのサンプル抽出条件を処理装置により設定する。未知パターンの推定においては、未知パターンが類似すると想定される抽出条件にて抽出されたサンプルにより推定を行うことが望ましい。例えば、サンプルを切り出す開始時刻と終了時刻をサンプル間で同期させる、あるいは、気温や天候等の環境要因が類似したサンプルを抽出する等のサンプル抽出条件を設定することが望ましい。
【0029】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン分離情報抽出条件設定部103は、サンプルを抽出する単位期間(例えば、1日)の開始日時(所定の開始値の一例)及び終了日時(所定の終了値の一例)を設定して記憶装置に予め保存しておく。
【0030】
パターン分離情報抽出部104は、パターン分離情報抽出条件設定部103において設定されたサンプル抽出条件に従って、パターン分離情報記憶部101から、パターン分離情報を処理装置により抽出する。即ち、パターン分離情報抽出部104は、パターン推定に適したサンプルを処理装置により抽出する。
【0031】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン分離情報抽出部104は、パターン分離情報記憶部101に記憶された観測値のうち、日時がパターン分離情報抽出条件設定部103により設定された開始日時から終了日時まで変化するときの一連の観測値(例えば、1日分の時系列データ)を、複合信号のサンプルとして処理装置により抽出する。パターン分離情報抽出部104は、単位期間ごとに、複合信号のサンプルを抽出する。
【0032】
パターン生成部105は、複合信号を構成する複数の元信号(パターン推定の対象となる元信号を除く)のそれぞれについて、パターン生成情報記憶部102に記憶された、元信号の測定値、又は、元信号のパターン生成情報を基に、パターン分離情報抽出部104にて抽出されたパターン推定用サンプルに対応するパターンを処理装置により生成する。パターン生成は、例えば、既知の物理法則に基づくモデルや、相関が高いことが既知である測定値の参照等によって行う。ここで、パターン生成部105は、元信号の値を推定・予測する必要はなく、形状だけを生成できればよいことが、本実施の形態の特徴の1つである。
【0033】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン生成部105は、例えば、パターン生成情報記憶部102に記憶された気象データの値に基づき、1単位期間において気象データの値(例えば、日射量)が変化するパターンを、複数の元信号のうちパターン推定の対象となる特定の元信号(例えば、電力消費量)を除く1つの元信号(例えば、太陽光発電量)のパターンとして処理装置により生成してもよい。この場合、パターン分離情報抽出部104は、パターン分離情報記憶部101に記憶された気象データの値を参照して、気象データの値(例えば、日射量)が上記1つの元信号(例えば、太陽光発電量)のパターンと同じパターン(所定のパターンの一例)で変化した単位期間を処理装置により特定する。そして、パターン分離情報抽出部104は、特定した単位期間ごとに、複合信号のサンプルを抽出する。即ち、パターン分離情報抽出部104は、気象データの値が所定のパターンで変化した単位期間のみのサンプルを抽出する。
【0034】
パターン記憶部106は、パターン生成部105により生成されたパターンを記憶装置により記憶する。なお、パターン分離情報抽出部104にて抽出されたパターン推定用サンプルに対応するパターンが既知パターンの場合、そのパターンは、予めパターン記憶部106に記憶されているものとする。したがって、パターン生成部105は、既知パターンを持つ元信号についてはパターン生成を省略することができる。
【0035】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン記憶部106は、複数の元信号のうちパターン推定の対象となる特定の元信号を除く元信号について、日時がパターン分離情報抽出条件設定部103により設定された開始日時から終了日時まで変化するときに元信号の値が変化するパターンを、元信号のパターンとして記憶装置により記憶する。即ち、パターン記憶部106は、複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号について、1単位期間における元信号のパターンを記憶する。例えば、パターン記憶部106は、パターン生成部105により生成された1つの元信号(例えば、太陽光発電量)のパターンを記憶する。
【0036】
パターン推定条件設定部107は、未知パターンに関する既知の特徴や制約条件を処理装置により設定する。即ち、パターン推定条件設定部107は、パターン推定部108に対し、パターン推定の対象となる特定の元信号のパターンの制約条件を処理装置により設定する。未知パターンは、その形状や値は特定不可能であっても、物理的な制約等により特徴が明らかである場合がある。このため未知パターンの推定においては、これらの特徴を推定に反映できることが望ましい。例えば、パターンや元信号における値の上下限制約や単位時間当たりの変化量制約、係数の非負制約等が設定可能であることが望ましい。また、ある程度の概形が把握されている場合等には、想定されるパターンからの距離による制約等も設定可能であることが望ましい。
【0037】
パターン推定部108は、パターン分離情報抽出部104にて抽出されたパターン分離情報と、パターン生成部105にて生成されたパターンから、パターン推定条件設定部107にて設定された未知パターンの推定条件を考慮して、未知パターンを処理装置により推定する。後述するように、未知パターンの推定は不完全問題であるため、推定精度の期待値を高めるためには、推定時に不適切なサンプルを除去する(問題が不良とならないようにサンプルを自動的に取捨選択する)ことが望ましい。例えば、欠測値や外れ値を含むサンプルや、パターン推定問題においてランク不足や特異点が生じる可能性の高いサンプルは除去することが望ましい。
【0038】
複合信号が前述したような時系列データの場合、パターン推定部108は、パターン記憶部106に記憶された複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号(例えば、太陽光発電量)のパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号(例えば、電力系統の負荷)のサンプルとから、日時がパターン分離情報抽出条件設定部103により設定された開始日時から終了日時まで変化するときに特定の元信号の値(例えば、電力消費量)が変化するパターンを、特定の元信号のパターンとして処理装置により推定する。即ち、パターン推定部108は、1単位期間における特定の元信号のパターンを推定する。このとき、パターン記憶部106に記憶された元信号のパターンが、気象データの値(例えば、日射量)が所定のパターンで変化する1単位期間におけるパターンであれば、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルは、前述したように、気象データの値が上記所定のパターンで変化した単位期間のみのサンプルとなっているはずである。したがって、パターン推定部108により推定される特定の元信号のパターンは、気象データの値が上記所定のパターンで変化する1単位期間におけるパターンとなる。
【0039】
パターン修正部109は、パターン生成部105、及び、パターン推定部108にて生成されたパターンを、入力装置を介してユーザ操作により修正する。特に、未知パターンの推定にはある程度の任意性があるため、これをユーザ操作により補正できることが望ましい。例えば、分離対象の複合信号と、これをパターン分離して得られた元信号によって再構成された複合信号との残差を出力装置によりユーザに提示することで、ユーザが直接的にパターンを修正することを支援したり(対話的にパターンを修正する)、未知パターンと既知パターンの線型結合により、未知パターンとして想定される自由度の範囲内での修正を容易にしたりする(未知パターンの修正を、未知パターンと既知パターンの線型結合に限定する)ことが望ましい。また、未知パターンが、異なる複数のパターンの組み合わせである場合には、適切なパターンの推定が困難なため、推定されたパターン、又は、これを修正したパターンを既知パターンと看做してパターン記憶部106に記憶し、未知パターンの推定を再帰的に実行できることが望ましい。
【0040】
上記のように、パターン修正部109は、パターン記憶部106に記憶された複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、パターン推定部108により推定された特定の元信号のパターンとの少なくともいずれかを修正する入力を入力装置により受け付ける。
【0041】
パターン分離部110は、パターン分離情報抽出部104によって抽出された複合信号と、パターン修正部109によって修正された元信号のパターンとを基に、複合信号から元信号を分離する。本実施の形態においては、パターン推定部108により、完全な未知パターンに対してもパターン推定が行われるため、パターン分離部110としては、線型回帰手法等の既存のパターン分離手段を任意に選択可能である。
【0042】
上記のように、パターン分離部110は、パターン記憶部106に記憶された複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号のパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルと、パターン推定部108により推定された特定の元信号のパターンとに基づき、複数の元信号の値を処理装置により算出することによって、複合信号を複数の元信号に分離する。
【0043】
前述したように、推定されたパターンを既知パターンと看做して再帰的にパターン分離を行う場合、パターン記憶部106は、パターン推定部108により推定された特定の元信号Aのパターンを記憶する(ここでは、複合信号が、複数の元信号A〜Dを合成して得られるものとする)。パターン推定部108は、パターン記憶部106に記憶された複数の元信号A〜Dのうち特定の元信号Aを含み任意の元信号Dを除く元信号、即ち、元信号A〜Cのパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルとから、属性の値が所定の開始値から所定の終了値まで変化するときに元信号Dの値が変化するパターンを、元信号Dのパターンとして推定する。パターン分離部110は、パターン記憶部106に記憶された元信号A〜Cのパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルと、パターン推定部108により推定された元信号Dのパターンとに基づき、複数の元信号A〜Dの値を算出することにより、複合信号を複数の元信号A〜Dに分離する。
【0044】
図2は、パターン分離装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0045】
図2において、パターン分離装置100は、コンピュータであり、LCD901(Liquid・Crystal・Display)、キーボード902(K/B)、マウス903、FDD904(Flexible・Disk・Drive)、CDD905(Compact・Disc・Drive)、プリンタ906といったハードウェアデバイスを備えている。これらのハードウェアデバイスはケーブルや信号線で接続されている。LCD901の代わりに、CRT(Cathode・Ray・Tube)、あるいは、その他の表示装置が用いられてもよい。マウス903の代わりに、タッチパネル、タッチパッド、トラックボール、ペンタブレット、あるいは、その他のポインティングデバイスが用いられてもよい。
【0046】
パターン分離装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit)を備えている。CPU911は、処理装置の一例である。CPU911は、バス912を介してROM913(Read・Only・Memory)、RAM914(Random・Access・Memory)、通信ボード915、LCD901、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905、プリンタ906、HDD920(Hard・Disk・Drive)と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。HDD920の代わりに、フラッシュメモリ、光ディスク装置、メモリカードリーダライタ、あるいは、その他の記録媒体が用いられてもよい。
【0047】
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、HDD920は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置の一例である。通信ボード915、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905は、入力装置の一例である。また、通信ボード915、LCD901、プリンタ906は、出力装置の一例である。
【0048】
通信ボード915は、LAN(Local・Area・Network)等に接続されている。通信ボード915は、LANに限らず、IP−VPN(Internet・Protocol・Virtual・Private・Network)、広域LAN、ATM(Asynchronous・Transfer・Mode)ネットワークといったWAN(Wide・Area・Network)、あるいは、インターネットに接続されていても構わない。LAN、WAN、インターネットは、ネットワークの一例である。
【0049】
HDD920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。プログラム群923には、本実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが含まれている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。ファイル群924には、本実施の形態の説明において、「〜データ」、「〜情報」、「〜ID(識別子)」、「〜フラグ」、「〜結果」として説明するデータや情報や信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」の各項目として含まれている。「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」は、RAM914やHDD920等の記録媒体に記憶される。RAM914やHDD920等の記録媒体に記憶されたデータや情報や信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理(動作)に用いられる。抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理中、データや情報や信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0050】
本実施の形態の説明において用いるブロック図やフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示す。データや信号は、RAM914等のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク(FD)、CDD905のコンパクトディスク(CD)、HDD920の磁気ディスク、光ディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)、あるいは、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912、信号線、ケーブル、あるいは、その他の伝送媒体により伝送される。
【0051】
本実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜工程」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。即ち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアのみ、あるいは、素子、デバイス、基板、配線といったハードウェアのみで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、あるいは、ソフトウェアとハードウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されていても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。即ち、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0052】
図3は、パターン分離装置100の動作(本実施の形態に係るパターン分離方法、本実施の形態に係るプログラムの処理手順)を示すフローチャートである。
【0053】
ステップS101(パターン分離情報抽出処理)において、パターン分離情報抽出条件設定部103は、手動又は自動により、パターン分離情報の抽出条件を設定する。パターン分離情報抽出条件設定部103によりサンプル抽出条件が設定された後、パターン分離情報抽出部104は、サンプル抽出条件に適合するパターン分離情報を、パターン分離情報記憶部101から抽出する。
【0054】
ステップS102(パターン生成処理)において、パターン生成部105は、パターン生成情報記憶部102に記録されたパターン生成情報を用いて、ステップS101において抽出されたサンプルに対応するパターンを生成し、パターン記憶部106に記憶する。
【0055】
ステップS103(パターン推定処理)において、パターン推定条件設定部107は、手動又は自動により、未知パターンの推定条件を設定する。パターン推定条件設定部107により未知パターンの推定条件が設定された後、パターン推定部108は、パターン分離情報抽出部104によって抽出された複合信号と、パターン記憶部106に記憶されたパターンを入力として、未知パターンの推定条件を満たす最も適切な未知パターンを推定する。パターン推定処理の詳細については後述する。
【0056】
ステップS104(パターン分離処理)において、パターン分離部110は、パターン記憶部106に記憶されたパターン(ステップS102において生成されたパターン)と、ステップS103において推定された未知パターンを基に、複合信号から元信号を分離する。ユーザの判断により、分離されたパターンが適切と判定された場合には、パターン分離処理を終了する。分離されたパターンが不適切と判定された場合には、ステップS105に進み、パターンの修正を試みるか、又は、ステップS101に戻り、パターン分離情報抽出処理からやり直す。
【0057】
ステップS105(パターン修正処理)において、パターン修正部109は、ユーザ操作により、ステップS102において生成されたパターンと、ステップS103において推定された未知パターンを修正する。修正されたパターンにより、再度ステップS104のパターン分離処理を行い、修正結果を確認する。必要であれば、修正されたパターンをステップS103の入力として、パターン推定処理からやり直してもよい。
【0058】
以下では、パターン推定部108におけるパターン推定処理の具体例について説明する。
【0059】
下記の式(1)は、本実施の形態で想定される複合信号の生成式である。
【数1】

【0060】
複合信号yは、パターンpの線型結合とノイズ成分εからなる信号であると仮定する。このとき、各パターンpに対してwで重み付けを行った要素wpが元信号となる。また、複合信号yの式中の添え字のiは、上記のような複合信号が、パターン分離情報抽出部104により複数抽出されている場合の、i番目のサンプルであることを表している。なお、y、p、εはいずれもm次元のベクトルとなっており、wはスカラである。
【0061】
本実施の形態ではパターン推定問題を、上記のyにおいて、pを未知パターンと看做して、pを除くpとyとを既知(パターン生成部105により生成されたpも既知と看做す)として、pを推定する問題と定義する。なお、パターン分離問題は、pを含むpとyとを既知としてwを推定する問題と定義する。
【0062】
下記の式(2)は、未知パターン推定式の一例である。
【数2】

【0063】
前述した式(1)から直接未知パターンを求めるためには、未知パターンpと重み係数wi,0を同時に最適化する必要がある。これは多項式最適化問題となり、一般に計算量が多く、解の最適性が保証されないという問題がある。
【0064】
式(2)は、複合信号yをwi,0で除することにより、未知パターンpがw’の線型結合となることを表している。これにより、パターン推定問題は、下記の式(3)に示すような凸二次最適化問題(凸二次計画問題)となり、Newton法等の広く知られた手法により高速に大域的な最適解を得ることが可能となるという効果を得る。
【数3】

【0065】
ただし、式(2)から明らかなように、wi,0=0となるような複合信号が含まれる場合には、式(2)の関係が成り立たなくなるため、解が不安定となる場合がある。これに対しては、予めpを除いた既知パターンpのみを用いてパターン分離問題を解き、既知パターンpにより再構成した複合信号と元の複合信号との残差が小さい複合信号を除いた上でパターン推定問題を解くことで回避が可能である。また、wi,0が正の数に限られる場合等、期待値が0でない場合には、複合信号yの代わりに、複数のyの和を用いることが、wi,0が0となる確率を低下させることに有効である。
【0066】
上記のように、本実施の形態では、パターン推定部108が、パターン記憶部106に記憶された複数の元信号のうちパターン推定の対象となる特定の元信号を除く元信号のパターンと、パターン分離情報抽出部104により抽出された複合信号のサンプルとをパラメータとする式によって表される凸二次計画問題を処理装置により解くことによって、特定の元信号のパターンを推定する。
【0067】
図4は、複合信号生成例を示す図であり、式(1)の複合信号の生成式を模式的に表したものである。
【0068】
図4では、基本となるパターンと係数の積からなる元信号との和によって、複合信号が生成される様子を表している。
【0069】
図5は、パターン推定例及びパターン分離例を示す図であり、本実施の形態におけるパターン推定処理及びパターン分離処理を模式的に表したものである。
【0070】
図5では、パターン推定処理により、複合信号と既知パターン(前述したように、パターン生成処理で生成されたパターンを含む)から、未知パターンを推定することで、未知パターンに対応するパターンが明示的に与えられていない情況においても、パターン分離処理が実現される様子を表している。
【0071】
本実施の形態は、複合信号と既知パターン(元信号の測定値やパターン生成情報に基づいて生成されるパターンを含む)から未知パターンを推定することを特徴とし、これにより、完全な未知パターンを含む場合においても、パターン分離を可能とする効果を奏する。また、未知パターン推定式を線型化し、パターン推定問題を凸二次最適化問題として求解可能とすることを特徴とし、これにより、パターン推定問題を高速かつ大域的に解くことを可能とする効果を奏する。
【0072】
以上のように、本実施の形態によれば、パターン分離方法において、完全な未知パターンを含む場合においても、効率的にパターン分離を可能とする効果が得られる。
【0073】
実施の形態2.
以下、実施の形態1に係るパターン分離装置100を電力消費量と太陽光発電量の分離に用いる場合について説明する。
【0074】
近年、政府の支援による太陽光発電システムの普及が進められている。また、社会的にも環境への配慮等の要求が高まっており、今後も太陽光発電システムは確実に普及率を高めるものと考えられる。一方で、電力会社においては、電力を安定して配信するために、系統の制御や設備投資を行うための情報として、需要家における電力消費量を把握する必要がある。
【0075】
しかし、現在の系統システムにおいては、需要家の電力消費量と太陽光発電量を個別に取得する手段がなく、これらの合算値としての系統負荷のみが収集されている。一部の電力会社においては、スマートメータと呼ばれる機器により、戸別の電力需要を計測する試みが進められているが、現時点では電力消費量と太陽光発電量を個別に取得することは想定されていない。
【0076】
このため、近い将来において、電力会社では需要家の電力消費量ならびに太陽光発電量が正確に把握できなくなり、電力を安定して供給することが困難になることが想定される。
【0077】
本実施の形態に係るパターン分離装置100を用いることで、系統負荷から需要家の電力消費量と太陽光発電量を分離可能となる。
【0078】
以下では、パターン分離装置100を電力消費量と太陽光発電量の分離に用いる場合の詳細について説明する。
【0079】
本実施の形態において、分離の対象となる複合信号は、系統負荷である。即ち、複合信号は、電力系統の負荷を示す信号である。したがって、パターン分離情報記憶部101は、系統負荷を記憶する。具体的には、パターン分離情報記憶部101は、日時ごとに、電力系統の負荷の実測値を記憶する。
【0080】
また、系統負荷を構成する要素である、電力消費量と太陽光発電量について考えると、電力消費量は生活様式等によりパターンが年々変化することが考えられる。一方、太陽光発電量は地表に達する太陽光のエネルギーに比例的であろうことは物理的に明らかである。よって、ここでは、電力消費量をパターン推定の対象の元信号とし、太陽光発電量をパターン生成の対象の元信号とする。即ち、特定の元信号は、電力消費量を示す信号であり、複数の元信号のうち特定の元信号を除く1つの元信号は、太陽光発電量を示す信号である。
【0081】
パターン分離情報記憶部101は、系統負荷を構成する未知パターンである、電力消費量に関連する情報として、少なくとも日時、曜日、気温、天候を記憶する。
【0082】
また、パターン生成情報記憶部102は、太陽光発電量のパターンを生成するための情報として、少なくとも日時、日射量(又は天候)を記憶する。
【0083】
パターン分離情報抽出条件設定部103は、電力消費量が類似したサンプルを抽出するための条件として、少なくとも24時間を周期としたサンプルの抽出、及び、気温と曜日による絞り込みを行う。年度や天候は電力消費量のパターンに対して影響が少ないと思われるが、影響が少ないことを確認しながらパターン分離を実行できるよう、適宜絞り込みを行えることが好ましい。
【0084】
パターン生成部105は、日射量を直接太陽光発電量のパターンとするか、あるいは、需要家の分布や日射量計の設置場所を考慮した重み付け等により、太陽光発電量のパターンを生成する。あるいは、日時から物理的に算出される晴天時の日射量に天候から推定される減衰係数を乗じる等により、太陽光発電量のパターンを生成する。
【0085】
パターン推定条件設定部107は、電力消費量及び太陽光発電量の特徴として、少なくとも太陽光発電量のパターンは非負であること、電力消費量と太陽光発電量は電力の消費と発電の関係にあり、電力消費量の係数は常に正又は0であり、太陽光発電量の係数は常に負又は0であることを制約として設定することが好ましい。また、電力消費量の係数は、最大需要又は夜間の最低需要を基準として正規化を行えば、大きく変化していないと考えられるため、正規化を行った後、電力消費量の係数の分散を最小化するという制約を設定してもよい。さらに、太陽光発電量の係数は、最大発電量を1とすれば、0から1の間に収まると考えられるため、需要家の太陽光発電契約容量等により、太陽光発電量のパターンの振幅を補正した後、太陽光発電量の係数を0以上1以下とする制約を設定してもよい。
【0086】
パターン推定部108は、パターン分離情報抽出部104により抽出された系統負荷のサンプルと、パターン生成部105により生成された太陽光発電量のパターンから、パターン推定条件設定部107により設定された制約の範囲内で、電力消費量のパターンを推定する。
【0087】
パターン修正部109は、パターン生成部105により生成された太陽光発電量のパターンやパターン推定部108により推定された電力消費量のパターンを、必要に応じてユーザ操作により修正する。
【0088】
パターン分離部110は、パターン分離情報抽出部104により抽出された系統負荷のサンプルと、パターン生成部105により生成された(又はパターン修正部109により修正された)太陽光発電量のパターンと、パターン推定部108により推定された(又はパターン修正部109により修正された)電力消費量のパターンとを基に、系統負荷から需要家の電力消費量と太陽光発電量を分離する。
【0089】
以上のように、本実施の形態によれば、系統負荷から需要家の電力消費量と太陽光発電量が分離可能となる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
100 パターン分離装置、101 パターン分離情報記憶部、102 パターン生成情報記憶部、103 パターン分離情報抽出条件設定部、104 パターン分離情報抽出部、105 パターン生成部、106 パターン記憶部、107 パターン推定条件設定部、108 パターン推定部、109 パターン修正部、110 パターン分離部、901 LCD、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 HDD、921 オペレーティングシステム、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
属性の値の変化に伴って値が変化する観測信号を、前記属性の値の変化に伴って値が変化する複数の元信号に分離するパターン分離装置であって、
前記属性の値ごとに、前記観測信号の値を記憶装置により記憶するデータ記憶部と、
前記複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号について、前記属性の値が所定の開始値から所定の終了値まで変化するときに元信号の値が変化するパターンを、元信号のパターンとして記憶装置により記憶するパターン記憶部と、
前記データ記憶部に記憶された前記観測信号の値のうち、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときの前記観測信号の一連の値を、前記観測信号のサンプルとして処理装置により抽出する抽出部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルとから、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときに前記特定の元信号の値が変化するパターンを、前記特定の元信号のパターンとして処理装置により推定するパターン推定部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルと、前記パターン推定部により推定された前記特定の元信号のパターンとに基づき、前記複数の元信号の値を算出することにより、前記観測信号を前記複数の元信号に分離するパターン分離部と
を備えることを特徴とするパターン分離装置。
【請求項2】
前記属性は、日時であり、
前記所定の開始値は、単位期間の開始日時であり、
前記所定の終了値は、単位期間の終了日時であり、
前記パターン記憶部は、前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号について、1単位期間における元信号のパターンを記憶し、
前記抽出部は、単位期間ごとに、前記観測信号のサンプルを抽出し、
前記パターン推定部は、1単位期間における前記特定の元信号のパターンを推定することを特徴とする請求項1のパターン分離装置。
【請求項3】
前記データ記憶部は、さらに、日時ごとに、他の属性の値を記憶し、
前記パターン記憶部は、前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号について、前記他の属性の値が所定のパターンで変化する1単位期間における元信号のパターンを記憶し、
前記抽出部は、前記データ記憶部に記憶された前記他の属性の値を参照して、前記他の属性の値が前記所定のパターンで変化した単位期間を特定し、特定した単位期間ごとに、前記観測信号のサンプルを抽出し、
前記パターン推定部は、前記他の属性の値が前記所定のパターンで変化する1単位期間における前記特定の元信号のパターンを推定することを特徴とする請求項2のパターン分離装置。
【請求項4】
前記パターン分離装置は、さらに、
前記データ記憶部に記憶された前記他の属性の値に基づき、1単位期間において前記他の属性の値が変化するパターンを、前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く1つの元信号のパターンとして処理装置により生成するパターン生成部
を備え、
前記パターン記憶部は、前記パターン生成部により生成された前記1つの元信号のパターンを記憶することを特徴とする請求項3のパターン分離装置。
【請求項5】
前記他の属性は、気象データであることを特徴とする請求項3又は4のパターン分離装置。
【請求項6】
前記観測信号は、電力系統の負荷を示す信号であり、
前記特定の元信号は、電力消費量を示す信号であり、
前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く1つの元信号は、太陽光発電量を示す信号であり、
前記データ記憶部は、日時ごとに、電力系統の負荷の実測値を、前記観測信号の値として記憶することを特徴とする請求項2から5のいずれかのパターン分離装置。
【請求項7】
前記パターン推定部は、前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルとをパラメータとする式によって表される凸二次計画問題を解くことにより、前記特定の元信号のパターンを推定することを特徴とする請求項1から6のいずれかのパターン分離装置。
【請求項8】
前記パターン分離装置は、さらに、
前記パターン推定部に対し、前記特定の元信号のパターンの制約条件を処理装置により設定する設定部
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかのパターン分離装置。
【請求項9】
前記パターン分離装置は、さらに、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記パターン推定部により推定された前記特定の元信号のパターンとの少なくともいずれかを修正する入力を入力装置により受け付けるパターン修正部
を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかのパターン分離装置。
【請求項10】
前記パターン記憶部は、前記パターン推定部により推定された前記特定の元信号のパターンを記憶し、
前記パターン推定部は、前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を含み任意の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルとから、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときに前記任意の元信号の値が変化するパターンを、前記任意の元信号のパターンとして推定し、
前記パターン分離部は、前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を含み任意の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルと、前記パターン推定部により推定された前記任意の元信号のパターンとに基づき、前記複数の元信号の値を算出することにより、前記観測信号を前記複数の元信号に分離することを特徴とする請求項1から9のいずれかのパターン分離装置。
【請求項11】
属性の値の変化に伴って値が変化する観測信号を、前記属性の値の変化に伴って値が変化する複数の元信号に分離するパターン分離方法であって、
前記属性の値ごとに、前記観測信号の値を記憶装置により記憶するデータ記憶部と、前記複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号について、前記属性の値が所定の開始値から所定の終了値まで変化するときに元信号の値が変化するパターンを、元信号のパターンとして記憶装置により記憶するパターン記憶部とを備えるコンピュータが、前記データ記憶部に記憶された前記観測信号の値のうち、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときの前記観測信号の一連の値を、前記観測信号のサンプルとして処理装置により抽出し、
前記コンピュータが、前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記観測信号のサンプルとから、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときに前記特定の元信号の値が変化するパターンを、前記特定の元信号のパターンとして処理装置により推定し、
前記コンピュータが、前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記観測信号のサンプルと、前記特定の元信号のパターンとに基づき、前記複数の元信号の値を算出することにより、前記観測信号を前記複数の元信号に分離することを特徴とするパターン分離方法。
【請求項12】
属性の値の変化に伴って値が変化する観測信号を、前記属性の値の変化に伴って値が変化する複数の元信号に分離するためのプログラムであって、
前記属性の値ごとに、前記観測信号の値を記憶装置により記憶するデータ記憶部と、前記複数の元信号のうち特定の元信号を除く元信号について、前記属性の値が所定の開始値から所定の終了値まで変化するときに元信号の値が変化するパターンを、元信号のパターンとして記憶装置により記憶するパターン記憶部とを備えるコンピュータを、
前記データ記憶部に記憶された前記観測信号の値のうち、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときの前記観測信号の一連の値を、前記観測信号のサンプルとして処理装置により抽出する抽出部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルとから、前記属性の値が前記所定の開始値から前記所定の終了値まで変化するときに前記特定の元信号の値が変化するパターンを、前記特定の元信号のパターンとして処理装置により推定するパターン推定部と、
前記パターン記憶部に記憶された前記複数の元信号のうち前記特定の元信号を除く元信号のパターンと、前記抽出部により抽出された前記観測信号のサンプルと、前記パターン推定部により推定された前記特定の元信号のパターンとに基づき、前記複数の元信号の値を算出することにより、前記観測信号を前記複数の元信号に分離するパターン分離部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106502(P2013−106502A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251197(P2011−251197)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】