説明

パターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板及びマイクロアレイ、該マイクロアレイ基板及びマイクロアレイを製造する方法

【課題】 パターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板及びマイクロアレイ、該マイクロアレイ基板及びマイクロアレイを製造する方法を提供する。
【解決手段】 基板と薄膜層物質は相異なる屈折率を有し、パターン化された薄膜層は、照射された励起光が基板から反射される第1反射光と薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が基板から反射される第1反射光と薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを含む基板上にパターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率が高いマイクロアレイ基板、マイクロアレイ、該マイクロアレイ基板またはマイクロアレイを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロアレイの光学的分析方法に使われる基板は、一般の基板の表面に何の処理もされていないか、または得られる信号の敏感度(signal−to−noise、以下S/N比率とする)を高めるために、格子を使用していた。例えば、特許文献1には、円形格子構造を使用することにより、励起光と放射光とを分離することによって信号の敏感度を高める方法を提供している。
【特許文献1】米国特許第6,483,096号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、かかる従来技術は、格子を形成させるところに多くの費用がかかり、測定される放射光は、ガイドされた放射光であり、その強度が相対的に低いという問題点があった。従って、信号の敏感度を高める要求は相変らず残っていた。 本発明の目的は、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率を向上させることができるマイクロアレイを製造するのに使われるマイクロアレイ基板を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率を向上させることができるマイクロアレイを提供することである。
【0005】
本発明のさらに他の目的は、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率を向上させることができるマイクロアレイを製造するのに使われるマイクロアレイ基板を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率を向上させることができるマイクロアレイを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明者らは、鋭意研究している中で、予測もしなかったことに、特定厚さの酸化膜は、光学的信号の強度を増幅させ、また他の特定厚さの酸化膜は、光学的信号の強度を減殺させる現象を発見し、マイクロアレイのスポット領域は補強干渉が起こる薄膜層パターンを有し、バックグラウンド領域は相殺干渉が起こる薄膜層パターンを有するようにすることにより、マイクロアレイから発生する光学的信号の感度を高められるということを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一様態は、基板上にパターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板であり、前記基板と前記薄膜層を構成する物質とは、相異なる屈折率を有し、前記パターン化された薄膜層は、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを含むマイクロアレイ基板を提供することを特徴とする。
【0009】
前記の他の課題を解決するために、本発明の一様態は、前記マイクロアレイ基板を含むマイクロアレイを提供することを特徴とする。
【0010】
前記のさらに他の課題を解決するために、本発明の一様態は、基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングして薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層をパターニングして照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程とを含む前記マイクロアレイ基板を製造する方法を提供することを特徴とする。
【0011】
前記のさらに他の課題を解決するために、本発明の一様態は、基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングし、薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層をパターニングし、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程と、前記スポット領域に生体分子を固定化する工程とを含む前記マイクロアレイを製造する方法を提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるマイクロアレイ基板によれば、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率が高いマイクロアレイを製造できる。
【0013】
本発明のマイクロアレイによれば、光学的検出過程においてバックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率が高い。
【0014】
本発明のマイクロアレイ基板によれば、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率が高いマイクロアレイを製造するのに使われるマイクロアレイ基板を製造できる。
【0015】
本発明のマイクロアレイを製造する方法によれば、光学的検出過程において、バックグラウンド信号に対するスポット領域信号の比率が高いマイクロアレイを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は基板上にパターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板であり、前記基板と前記薄膜層物質とは相異なる屈折率を有し、前記パターン化された薄膜層は、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを含むマイクロアレイ基板を提供する。
【0017】
本発明において、基板は、重合体、金属、セラミック、酸化物などを含んだ膜として使われうる任意の物質である。前記基板は、その表面にアレイが形成されるか、またはその表面によってアレイが支持される物質である。基板は、無機、有機、複合体または重合体でありうる。一般的に使われる基板には、ガラス、シリコンウェーハ、石英ガラス、金、銀、銅、白金、ポリスチレン、ポリ(メチルアクリレート)及びポリカーボネートから構成される群から選択されるものが含まれるが、それらの例に限定されるものではない。基板表面は、変形され、前記変形された表面とアレイ要素との間の吸着、化学反応または物理的な相互作用が起こり、それによってアレイ生成を支持したり、促進したり、触媒化することも可能である。
【0018】
また、本発明において、前記薄膜層は、特定の波長の光を透過させることができる物質ならば、特別に限定されるものではない。薄膜層物質の例には、二酸化ケイ素(SiO)、ガラス、セラミック、マイカ、Al、TiO、ITOなどの多様な金属酸化膜、ポリスチレン、ポリ(メチルアクリレート)及びポリカーボネートから構成される群から選択されるものが含まれるが、それらの例に限定されるものではない。
【0019】
本発明において、前記薄膜層は、パターン化され、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを有する。本発明で使われた「スポット領域」とは、一般の生体分子マイクロアレイで使われる意味であり、生体分子が固定化される特定の領域をいう。また、「バックグラウンド領域」とは、生体分子が固定化されていないか、または固定化されていても、標的分子と結合した後、検出過程で検出されない領域をいう。本発明は、前記スポット領域の厚さは、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さをいうものであり、かかる補強干渉によってスポット領域から発生する光信号は増幅される。従って、本発明において、「補強干渉を起こす厚さ」とは、特定の数値をいうものではなく、第1反射光と第2反射光とが補強されてその強度を強める厚さは、いかなるものでも含まれるものであり、一定の範囲の厚さを意味する。同様に、本発明において、「相殺干渉を起こす厚さ」とは、特定の数値をいうものではなく、第1反射光と第2反射光とが相殺されてその強度を弱める厚さは、いかなるものでも含まれるものであり、一定の範囲の厚さを意味する。薄膜層表面は、変形され、前記変形された表面とアレイ要素との間の吸着、化学反応または物理的相互作用が起こることが可能であり、それによってアレイ生成を支持したり、促進したり、触媒化することも可能である。
【0020】
本発明において、前記基板の屈折率は、前記薄膜層物質の屈折率より大きくて、補強干渉が起こる条件は、第1反射光と第2反射光の経路差2nsinθdが、下記数式1に従う場合である。
【0021】
【数1】

【0022】
式中、dは前記スポット領域の厚さ、nは屈折率、θは入射光の入射角、λは波長である。前記数式によれば、第1反射光と第2反射光の経路差が半波長の奇数倍であるときに補強干渉が起こる。波長λが532nmであり、屈折率n=1.462であり、入射角が90゜である場合、前記スポット領域の厚さd=91nm,273nmであるときに補強干渉が起こる。
【0023】
また、相殺干渉が起こる条件は、第1反射光と第2反射光の経路差2nsinθdが、下記数式2に従う場合である。
【0024】
【数2】

【0025】
波長λが532nmであり、屈折率n=1.462であり、入射角が90゜である場合、前記バックグラウンド領域の厚さd=0nm、182nmであるときに相殺干渉が起こる。
【0026】
本発明の特定の具現例で、前記基板は、シリコンまたはガラスであり、前記パターン化された薄膜層は、二酸化ケイ素(SiO)(屈折率=1.462)である。また、前記スポット領域の厚さは、望ましくは500Åないし1,500Åであり、前記バックグラウンド領域の厚さは、望ましくは0Åないし10Åまたは1,900Åないし2,100Åである。前記二酸化ケイ素膜をシリコンまたはガラス膜上に形成させる方法は、当業界に公知である。例えば、二酸化ケイ素膜は乾式酸化または湿式酸化によって、石英ガラス(SiO)をシリコン基板上に沈積させることによって形成可能である。その場合、望ましい励起光の波長は、532nmであり、標的物質またはプローブ物質はフルオレシン、Cy3またはCy5で標識されうる。
【0027】
図1は、本発明のマイクロアレイ基板またはマイクロアレイを図式的に表したものである。図1に表したように、本発明のマイクロアレイ基板またはマイクロアレイ10は、パターニングされてスポット領域30及びバックグラウンド領域20を有する。図2は、図1のマイクロアレイ基板またはマイクロアレイの平面図である。図1及び2では、パターニングされて突出される部分をスポット領域、底部分をバックグラウンド領域と表示したが、薄膜層と基板物質の屈折率によってパターニングされて突出される部分がバックグラウンド領域、かつ底部分がスポット領域になることもある。
【0028】
本発明はまた、前記のようなマイクロアレイ基板に生体分子またはその他の化学物質が固定化されているマイクアレイ基板を含むマイクロアレイを提供する。マイクロアレイ基板上に生体分子を固定化する過程は、当業界に公知である。固定化方法には、例えばフォトリソグラフィを利用する方法とスポッティングとを利用する方法が含まれる。フォトリソグラフィを利用する方法によれば、除去可能な基で保護された単量体が塗布された基板表面上の一定の領域をエネルギー源に露出させて保護基を除去し、除去可能な基で保護された単量体をカップリングさせる工程を反復することにより、ポリヌクレオチドのアレイを製造できる。この場合、ポリヌクレオチドマイクロアレイ上に固定化されるポリヌクレオチドは、単量体を一つずつ延長させる方式で合成される。また、スポッティング法による場合、マイクロアレイは、すでに合成されたポリヌクレオチドを一定の位置に固定化させることによって製造される。かかるポリヌクレオチドマイクロアレイの製造方法は、例えば米国特許第5,744,305号明細書、同第5,143,854号明細書及び同第5,424,186号明細書に開示されている。ポリヌクレオチドマイクロアレイ及びその製造方法についての前記文献は、援用によって本明細書にその全体として含まれうる。
【0029】
本発明のマイクロアレイの特定の例において、前記生体分子は、蛋白質、核酸、及び多糖類から構成される群から選択されうる。
【0030】
本発明はまた、(a)基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングして薄膜層を形成する工程と、(b)前記薄膜層をパターニングし、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程とを含む、前記の本発明のマイクロアレイ基板を製造する方法を提供する。
【0031】
本発明のマイクロアレイ基板の製造方法の(a)工程で、基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングして薄膜層を形成する。薄膜層をコーティングする方法は、当業界に公知である。例えば、スピンコーティング、気相または液相蒸着法などが使われうる。薄膜層に使われうる物質及び厚さは、前記の通りである。
【0032】
本発明のマイクロアレイ基板の製造方法の(b)工程で、得られる薄膜層をパターニングして照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する。薄膜層をパターニングする方法は、当業界に公知である任意の方法が使われうる。例えば、フォトリソグラフィ方法が使われうる。すなわち、フォトレジスト物質を前記薄膜層上にコーティングし、パターンが描かれたマスクを介して露光した後、シェーピング及びエッチングすることにより、スポット領域とバックグラウンド領域とにパターンが形成された薄膜層を得ることができる。このとき、エッチングによってエッチングされる深さは、スポット領域については、第1反射光と第2反射光とが補強干渉が起こすほどの深さほど、バックグラウンド領域については、第1反射光と第2反射光とが相殺干渉が起こすほどの深さだけエッチングする。かかる補強干渉または相殺干渉が起こる条件は、照射される特定の励起光の波長、及び基板の屈折率と薄膜層の屈折率との大小によって変わる。かかる補強干渉または相殺干渉が起こる厚さ条件は、前記数式1及び2のように計算可能である。
【0033】
本発明はまた、(a)基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングして薄膜層を形成する工程と、(b)前記薄膜層をパターニングし、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程と、(c)前記スポット領域に生体分子を固定化する工程を含む、前記本発明のマイクロアレイを製造する方法を提供する。
【0034】
本発明の方法の特定の例において、前記生体分子は、蛋白質、核酸、及び多糖類から構成される群から選択されうる。
【0035】
本発明のマイクロアレイを製造する方法において、薄膜層コーティング、パターニングする工程及び生体分子を固定化する工程についての説明は前記の通りである。
【0036】
以下本発明を、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1:基板上の薄膜層の厚さが光学信号に及ぼす影響
本実施例で、シリコン基板上に500Åないし2,000Å厚さのSiO層を形成し、フォトリソグラフィを利用してSiO層をパターニングしてカップリング剤を結合させた後、プローブポリヌクレオチドを固定化したマイクロアレイを製造した。次に、酸化膜厚さが検出される信号に及ぼす影響を確認するために、製造されたそれぞれのマイクロアレイに対して標識された標的核酸を混成化反応させた後で励起光を加え、それから発生する放射光を測定した。
【0038】
1.基板上に酸化膜の形成
基板は、シリコン材質を使用した。ファーニスSVF−200機器(セルトロン社)を利用し、熱酸化方式で基板に多様な厚さの酸化膜を形成した。酸化膜の厚さは、500Å〜2,000Åとした。
【0039】
酸化膜の厚さは、NANOSPEC Model AFT 200(NANOMETTICS社)を利用して測定した。ナノスペック(NANOPSPEC)装備は、シリコンウェーハに光が入ったときに、一部の光は、ウェーハ酸化膜で反射され、一部は、通過してシリコンで反射される原理を利用したものである。このとき、酸化膜で反射された光と、シリコンで反射された光との位相差を利用して酸化膜の厚さを測定する。ナノスペック装備のサンプルステージ上に、シリコンウェーハを置いて測定すれば厚さが測定される。ウェーハで、5、6ポイントを測定して平均値を確認した後でコーティングに利用した。あらゆる実験は、ほとんどのホコリ粒子が十分に除去されたクリーンルーム−クラス1000でなされた。
【0040】
2.基板上の酸化膜パターンの形成
シリコンウェーハ上のSiO酸化膜をフォトリソグラフィを利用してパターニングした。まず、ヘキサメチルジシラン(HMDS)を利用してシリコンウェーハ表面を前処理した。前処理の目的は、その後にコーティングする感光剤(フォトレジスト)との接着力を向上させ、パターンの解像度を高めるためである。HMDSコーティングは、スピンコータモデルCEE 70(CEE社)を利用し、スピンコーティング法を利用した。スピンコーティングは、初期コーティング500rpm/5sec、主コーティング4,000rpm/40secの工程で行われた。次に、一般的な半導体工程に利用されるポジレジスト、AZ 1512またはAZ GXR 601をスピンコータモデルCEE 70(CEE社)を利用し、前記HMDS上にスピンコーティングした。スピンコーティングは、初期コーティング500rpm/5sec、主コーティング4,000rpm/40secの工程で行われた。スピンコーティングが終われば、直ちに110℃のホットプレートに2分間ソフトベーキングを実施し、感光剤とシリコンウェーハ表面との接着力を強めた。
【0041】
次に、前記コーティングされた感光剤上に光に対して透明な領域と不透明な領域とで、スポット領域とバックグラウンド領域とが描かれたフォトマスク(PKL社に注文製作)を整列させた後、EV 620装備(Vision社)を利用して露光した。露光量は、13mJの光量で4.5秒間進めた。露光が完了した後、MIF 300Kを現像液として使用して現像し、感光剤パターンを形成した。
【0042】
次に、前記感光剤パターンにフッ酸溶液またはBOE(Buffered Oxide Etcher、6:1または5:1)をエッチング溶液として使用し、1〜3分間エッチングした。その結果、シリコン酸化膜(SiO)に対し、1,000Å〜2,000Åほどの厚さを選択的に除去した。最後に、アセトン/イソプロピルアルコール(IPA)または過酸化水素及び硫酸(1:3)からなるピラニア溶液を感光剤除去液として使用して感光剤を除去した。
【0043】
3.蛍光染料物質のコーティング、酸化膜厚による相殺干渉及び補強干渉現象の確認
まず、表面処理前に基板を用意周到に洗浄した。洗浄は、過酸化水素及び硫酸(1:3)からなるピラニア溶液を使用して有機汚染物を除去した。最後に多量の水で洗った後、乾燥した。前記基板の洗浄過程は、半導体工程で利用するウェットステーションを利用し、ピラニア溶液について硫酸槽を利用し水で洗い落とす過程は、QDR(Quad Data Rate)という工程を利用した。それぞれの基板は、テフロン(ポリ四フッ化エチレン)材質のシリコンウェーハキャリアに固定されて工程を経た。洗浄が終わった基板は、スピンドライを介して乾燥した。
【0044】
洗浄の直後、エタノール中の20%(体積/体積)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GAPS)溶液をスピンコータモデルCEE 70(CEE社)を利用し、前記シリコン酸化膜パターンを有する基板上にスピンコーティングした。スピンコーティングは、初期コーティング500rpm/10sec、主コーティング2,000rpm/10secの工程で行った。スピンコーティングが終われば、基板をテフロンウェーハキャリアに固定し、13分間培養した後、120℃で40分間硬化させた。硬化された基板は、水に10分間浸漬させた後で15分間超音波洗浄した後、再び水に10分間浸漬させた後でスピン乾燥した。乾燥が完了した基板は、実験のために正方形か長方形に切って利用した。あらゆる実験は、ほとんどのホコリ粒子が十分に除去されたクリーンルーム−クラス1000でなされた。
【0045】
前記シラン化基板上にフルオレシン(0.05g/10ml)を浸漬コーティングした。まず、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液にフルオレシンを溶かし、浸漬溶液(フルオレシン0.05g/10ml)を製造した。浸漬溶液と基板とを反応容器に入れ、40℃で120分間反応させた。反応の完了後、浸漬溶液から基板を取り出し、DMFで10分間3回洗浄し、またメタノールで10分間3回洗浄した。次に、基板を乾燥した後、基板に反応したフルオレシンの量をGene Pix 4000Bスキャナ(Axon社)を利用して定量した。
【0046】
その結果を図3、図4、図5及び図6に表した。図3は、酸化膜の厚さが500Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。図3の結果は、補強干渉が要求される酸化膜厚を500Å(スポット領域)、相殺干渉が要求される酸化膜厚を0〜10Å(自然酸化膜の厚さ)(バックグラウンド領域)にパターンを形成した後、GAPSをコーティングし、さらにフルオレシンでコーティングした後、532nmの光を照射し、570nmで蛍光強度を測定して得た。蛍光強度は、スキャナの光増幅器(PMT:Photo Multiplier Tube)を300〜700で調節して感度を高めて行って測定した。各図面上の数値は、光増幅器感度を表す。図3で観察されたスポット領域とバックグラウンド領域の蛍光強度及びそれから計算されたバックグラウンド領域の蛍光強度に対するスポット領域の蛍光強度の比率、すなわちノイズに対する信号((S/N)比率)を表1に表した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に表したように、S/N比率は、光増幅器感度が300ないし700に上昇するにつれ、1.4ないし149であり、良好な値を示した。一般的なマイクロアレイの場合、PMT感度が500のときS/N比率が10以上であれば正常な信号とみなすことを勘案すれば、前記結果は優秀な結果であるといえる。
【0049】
図4は、酸化膜の厚さが1,000Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。図4の結果は、補強干渉が要求される酸化膜厚を1,000Å(スポット領域)、相殺干渉が要求される酸化膜厚を0〜10Å(バックグラウンド領域)に酸化膜パターンを形成した後でGAPSをコーティングし、さらにフルオレシンでコーティングした後、532nmの光を照射して570nmで蛍光強度を測定して得た。図4で観察されたスポット領域とバックグラウンド領域の蛍光強度及びそれから計算されたバックグラウンド領域の蛍光強度に対するスポット領域の蛍光強度の比率、すなわちS/N比率を表2に表した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に表したように、S/N比率は、光増幅器感度が300ないし700に向上するにつれ、4ないし589であり、良好な値を示した。
【0052】
図5は、酸化膜の厚さが1,500Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。図5の結果は、補強干渉が要求される酸化膜厚さを1,500Å(スポット領域)、相殺干渉が要求される酸化膜厚さを0〜10Å(バックグラウンド領域)に酸化膜パターンを形成した後でGAPSをコーティングし、さらにフルオレシンでコーティングした後で532nmの光を照射し、570nmで蛍光強度を測定して得た。図5で観察されたスポット領域とバックグラウンド領域の蛍光強度及びそれから計算されたバックグラウンド領域の蛍光強度に対するスポット領域の蛍光強度の比率、すなわちS/N比率を表3に表した。
【0053】
【表3】

【0054】
表3に表したように、S/N比率は、光増幅器感度が300ないし700に向上するにつれ、1.7ないし216であり、良好な値を示した。
【0055】
図6は、酸化膜の厚さが2,000Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。図6の結果は、補強干渉が要求される酸化膜厚さを1,000Å(スポット領域)、相殺干渉が要求される酸化膜厚さを2,000Å(バックグラウンド領域)に酸化膜パターンを形成した後でGAPSをコーティングし、さらにフルオレシンでコーティングした後で532nmの光を照射し、570nmで蛍光強度を測定して得た。図6で観察されたスポット領域とバックグラウンド領域の蛍光強度及びそれから計算されたバックグラウンド領域の蛍光強度に対するスポット領域の蛍光強度の比率、すなわちS/N比率を表4に表した。
【0056】
【表4】

【0057】
表4に表したように、S/N比率は、光増幅器感度が300ないし700に向上するにつれ、2.8ないし60であった。
【0058】
以上のような結果から、S/N比率の改善は、表2で最も明確であり、それは、1,000Åの酸化膜を補強干渉に利用し、0〜10Åの酸化膜を相殺干渉に利用することが最も効率的であることを表す。
【0059】
実施例2:ポリヌクレオチドマイクロアレイの製造及び酸化膜の厚さが蛍光強度に及ぼす影響
本実施例では、実施例1で製作された厚さが1,000Åであるパターン化された酸化膜のスポット領域にプローブポリヌクレオチドを固定化し、標識された標的核酸を混成化した後で蛍光強度を測定し、酸化膜の厚さがマイクロアレイの蛍光強度に及ぼす影響を調べた。
【0060】
まず、実施例1に表したように、スポット領域の厚さが1,000Åであり、バックグラウンド領域の厚さが0ないし10Åであるパターン化された酸化膜を得て、ここにプローブポリヌクレオチドを固定化した。プローブポリヌクレオチドの固定化は、前記基板にポリヌクレオチドをスポッティング工程によって固定化してなされた。プローブポリヌクレオチドを100mM NaHCO(pH=9.0)溶液に添加して撹拌し、37℃で1時間放置した後、これをスポッティング溶液に使用した。前記スポッティング溶液を、基板上にスポッティングした後、温度が70℃、相対湿度が40%のウェットチャンバで1時間放置した。次に、バックグラウンドノイズの制御に必要な工程、すなわち標的核酸をガラス表面に付着させないように、スポッティングされていない位置の基板表面のアミン基が負電荷を帯びるように反応を行って乾燥器に保管した。前記製作された基板、すなわちDNAチップにCy−3で標識された標的ポリヌクレオチドを混成化反応させた後、532nmで蛍光を測定した。
【0061】
その結果を図7に表した。図7は、酸化膜の厚さが1,000Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。図7の結果は、補強干渉が要求される酸化膜厚を1,000Å(スポット領域)、相殺干渉が要求される酸化膜厚を0〜10Å(バックグラウンド領域)に酸化膜パターンを形成した後でGAPSをコーティングし、さらにプローブポリヌクレオチド(序列番号1)をスポッティングして固定化した後、Cy−3で標識された標的ポリヌクレオチド(序列番号2)を混成化反応させた後、532nmで蛍光を測定したものである。図7に表したように、厚さが1,000Åのパターン化された酸化膜を有するマイクロアレイもやはり1,000Åのパターン化された酸化膜を有する基板と同様に、S/N比率が良好である蛍光強度信号を得ることができた。
【0062】
以上、本発明を典型的な実施例を挙げて詳細に説明したが、特許請求の範囲に示す本発明の技術的思想から逸脱することなしに、形式や詳細において、当業者によって様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のパターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板及びマイクロアレイ、前記マイクロアレイ基板及びマイクロアレイを製造する方法は、マイクロアレイの光学的分析に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のマイクロアレイ基板またはマイクロアレイを、図式的に表した図面である。
【図2】図1のマイクロアレイ基板またはマイクロアレイの平面図である。
【図3】酸化膜の厚さが500Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。
【図4】酸化膜の厚さが1,000Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。
【図5】酸化膜の厚さが1,500Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。
【図6】酸化膜の厚さが2,000Åであるとき、酸化膜パターンが蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。
【図7】酸化膜の厚さが1,000Åであるとき、酸化膜パターンがマイクロアレイの蛍光強度に及ぼす影響を表す図面である。
【符号の説明】
【0065】
10 マイクロアレイ基板、
20 バックグラウンド領域、
30 スポット領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターン化された薄膜層を有するマイクロアレイ基板であって、
前記基板と前記薄膜層を構成する物質とは相異なる屈折率を有し、前記パターン化された薄膜層は、
照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、
照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを備えるマイクロアレイ基板。
【請求項2】
前記基板は、ガラス、シリコンウェーハ、石英ガラス、金、銀、銅、白金、ポリスチレン、ポリ(メチルアクリレート)及びポリカーボネートから構成される群から選択される請求項1に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項3】
前記薄膜層は、二酸化ケイ素(SiO)、ガラス、フッ化リチウム(LiF)、シリコンウェーハ、石英ガラス、セラミック、マイカ、Al、TiO、ITO、ポリスチレン、ポリ(メチルアクリレート)及びポリカーボネートから構成される群から選択される請求項1に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項4】
前記基板の屈折率が前記薄膜層物質の屈折率より大きい場合、前記スポット領域の厚さは、d=(2m+1)λ/4nsinθを満足し、前記バックグラウンド領域の厚さは、d=2mλ/4nsinθを満足し、前記式でmは0以上の整数であり、dは厚さ、nは屈折率、θは入射光の入射角、λは波長を表す請求項1に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項5】
前記基板は、シリコンまたはガラスであり、前記パターン化された薄膜層は、二酸化ケイ素である請求項1に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項6】
前記スポット領域の厚さは,500Åないし1,500Åである請求項5に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項7】
前記バックグラウンド領域の厚さは、0Åないし10Åまたは1,900Åないし2,000Åである請求項5に記載のマイクロアレイ基板。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載のマイクロアレイ基板を含むマイクロアレイ。
【請求項9】
蛋白質、核酸、及び多糖類から構成される群から選択される生体分子をスポット領域に固定化させる請求項8に記載のマイクロアレイ。
【請求項10】
基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングし、薄膜層を形成する工程と、
前記薄膜層をパターニングし、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程とを含む、請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載のマイクロアレイ基板の製造方法。
【請求項11】
基板上に前記基板と異なる屈折率を有する薄膜層物質をコーティングし、薄膜層を形成する工程と、
前記薄膜層をパターニングし、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが補強干渉を起こす厚さを有するスポット領域と、照射された励起光が前記基板から反射される第1反射光と前記薄膜層から反射される第2反射光とが相殺干渉を起こす厚さを有するバックグラウンド領域とを形成する工程と、
前記スポット領域に生体分子を固定化する工程とを含む、請求項8に記載のマイクロアレイの製造方法。
【請求項12】
前記生体分子は、蛋白質、核酸、及び多糖類から構成される群から選択される請求項11に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−3354(P2006−3354A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173026(P2005−173026)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】