説明

パターン化構造の特性をモニタリングする際に使用される方法及びシステム

異なる周期パターンを備えた複数のサイトを備えた構造を有する物体の特性を特性評価するのに用いられる方法及びシステムを提供する。本方法は、幾何学的パラメータ及び物質パラメータの少なくとも一つが共通である対応する複数のサイトの幾何学的及び物質パラメータによって定義される異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを提供する段階と、物体の少なくとも二つの異なる積層体に対して光学測定を実施して各測定された積層体に対する幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す光学測定データを生成する段階と、光学測定データを処理する段階とを備え、該処理する段階が、複数の測定された積層に対する光学測定データを理論モデルで同時にフィッティングし、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にする段階を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に半導体産業の分野におけるものであり、パターン化物体(半導体ウェーハ)を検査するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業においては、半導体装置の特性を特性評価することが昔から必要とされている。当該産業における装置の寸法が減少するにつれて、そのような装置(特に半導体基板上の薄膜積層体を備えた装置)の特性を測定するために、より感度の高い計測ツール及び分析方法が必要とされている。
【0003】
このような測定に用いられる光学計測ツールは典型的に、偏光解析及び反射測定に基づいたツールである。反射測定に基づいたツールは典型的に、サンプルに対する反射/透過放射の強度変化を測定する。偏光解析に基づいたツールは典型的に、サンプルと相互作用した後の放射の偏光状態の変化を測定する。
【0004】
測定された光学データ(検出された放射(反射及び/又は透過)を示す)を分析して、サンプル中に含まれる物質の光学定数、並びに、層のパラメータ(厚さ等)及びパターンの幾何学的パラメータ(臨界寸法(CD,critical dimension)、ライン間隔、ライン幅、壁の深さ、壁のプロファイル等)に関する情報を導出することができる。
【0005】
この種の測定法の例が非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されている。
【0006】
また、全多層構造からの選択的な物質の除去に基づいた方法も知られており、本出願人による特許文献5及び特許文献6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0167651号明細書
【特許文献2】米国特許第7259850号明細書
【特許文献3】米国特許第5999267号明細書
【特許文献4】米国特許第6091485号明細書
【特許文献5】米国特許第7289234号明細書
【特許文献6】米国特許第7019850号明細書
【特許文献7】米国特許第6657736号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0042017号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.M.Leng外、“Simultaneous Measurement of Six Layers in a Silicon on Insulator Film Stack Using Spectrophotometry and Beam Profile Reflectometry”、J.Appl.Physics、1997年4月15日、第81巻、第8号、p.3570−3578
【非特許文献2】M.G.Moharam、T.K.Gaylord、J.Opt.Soc.Am、1981年、第71巻、p.811−818
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
薄膜の特性(特に光学的物質特性(例えば、複素屈折率の実部及び虚部であるn、k等))を特定評価する必要性が、多様な応用において求められる。このようなものとしては、電子装置において必要とされる性能に適したパターン化構造(ウェーハ等)の適切なデザインの可能性、構造形成中のそのような特性の制御、光学的物質特性に敏感な他の光学測定(例えば散乱測定)に必須のデータ生成が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
しかしながら、単一の一様な膜の特性評価はどちらかというと単純なものである一方、複数の異なる物質を含む構造/積層体の物質特性を高精度で特性評価することははるかに複雑である。一般的に、このような特性の十分に正確な測定結果を得ることは、各物質層に対するスペクトル範囲にわたる高度なスペクトル精度を要する。薄層積層体の単一測定の利用は、単一の未知層の測定された特性を示すのに必要な精度のスペクトル測定を提供し得るが、測定された光学データは一般的に、全積層体を備える各物質の物質特性を所望の信頼レベルで正確に決定するには不十分である。複数の物質を備える複数の積層体層のスペクトル応答は高度に結合していて、例えば、BARC(底面反射防止コート,bottom antireflective coat)及びフォトレジスト層の両方を用いる場合が挙げられる。
【0011】
十分信頼できる物質特性を得るために当該産業において現在用いられている一般的な方法は、“追加積層”法を用いて複数のウェーハに対して測定すること及び物質特性の解析的なモデル化から構成されている。物質特性に対して解析モデルを用いることによって、異なる波長間の相関が得られ、各物質を特徴付ける独立変数の数を減らし、これらのパラメータ間の相関を顕著に減らすことができる。“追加積層”法は典型的に、第一のウェーハが基板及び第一の物質製の第一の膜のみを含み、第二のウェーハが基板及びそれぞれ第一及び第二の物質製の第一及び第二の膜の両方を含むといったように形成された複数のショートループブランケットウェーハを用いる。ブランケットウェーハの総数は、その特性が測定及び分析される未知の物質の数に依存する。第一の物質は典型的に、第一のウェーハの測定のみに基づいて分析される。そして、その結果を用いて、第二のウェーハ(このウェーハからは第二の物質の物質特性のみが得られる)に対する未知のパラメータの数を減らすといったように続けられる。この方法は、誤差が次のウェーハに引き継がれるので、不正確なものとなることが多い。
【0012】
複雑な構造を検証するのに“追加積層”法を用いることは、以下の更なる制限も示す。多くの場合、物質特性の一部は、ウェーハ製造プロセスの後続段階中に変化する。結果として、ウェーハ上に堆積した物質(ブランケットウェーハを用いる一般的な場合)の特性の特性評価(測定による)は必ずしも、ウェーハの最終的な構造(この最終的な構造には、構造に対する多様なパターン化段階の影響が存在している)中に明らかとなる物質特性の正確な記述とはならない。典型的には、物質特性に対するこのような後続段階(例えば、後続層の堆積、パターン化等)の影響は、追加積層法を用いる際に測定されないし考慮もされない。解析モデル化及び追加積層に基づいた方法は、複雑な構造の物質特性を得ることを可能にし得るが、このような方法は、多数の特別にデザインされたウェーハの使用、長期にわたる測定/分析プロセスを必要とし、時間がかかり、熟練の専門家を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、本発明の第一の広義の側面によると、異なる周期パターンを備えた複数のサイトを備えた多層構造を有する物体の特性を特性評価するための方法が提供される。本方法は、
対応するサイト(そのサイトは幾何学的パラメータ及ぶ物質組成パラメータの少なくとも一つが共通である)の幾何学的及び物質パラメータによって定義される異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを提供する段階と、
物体の少なくとも二つの異なる積層体に対して光学測定を行い、各測定された積層体に対して幾何学的パラメータ及び物質パラメータを示す光学測定データを生成する段階と、
光学測定データを処理する段階とを備える。該処理段階は、複数の測定された積層体に対する光学測定データを理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にする段階を備える。
【0014】
“異なる積層体の測定”とは、異なるサイト(位置)における測定の場合、及び/又は、同一のサイトではあるが、異なるプロセス段階におけるものであって、同一の位置の異なる積層体によって特徴付けられる測定の場合を指称するものであることに留意されたい。しかしながら、簡単のため、以下の説明において、このような選択肢の両方を、“サイト”、“試験サイト”又は“エリア”と称することにするが、これらの表現が一般的に“異なる積層体”を意味するものであることは理解されたい。
【0015】
測定において用いられる少なくとも二つの異なる積層体又はサイトは、一つのパターン化サイト及び一つのパターン化されていないサイト(所謂“固体サイト”);二つの異なるパターン化サイト;又は、二つの異なるパターン化されていない(固体)サイトを含み得る。本発明の方法は、プロセスの異なる段階において行われる測定を用いて物体製造プロセスのモニタリング/制御のために使用可能である。従って、本方法における最小の測定の組は、二つのプロセス段階において測定されそれぞれ二つの異なるパターンを有する単一のパターン化サイトである。
【0016】
測定下の積層体/サイトの光学特性は、光ビームとの相互作用に対する個々のサイトの光学応答によって記述され、回折、干渉等の影響を含み得る。パターン化サイトに関しては、回折の影響が支配的なものである。簡単のため、以下の説明においては、“光学特性”、“光ビームとの相互作用”との一般的な表現は、回折に関連するものとする。
【0017】
本発明の他の広義の側面によると、複数の異なる周期パターンを備えた多層構造を有する物体の特性を特性評価するのに用いられる測定システムが提供される。本システムは、
光学測定を行い、物体の測定されるエリアに対する幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す光学測定データを生成するように構成された光学測定ユニットと、
その測定ユニットに接続可能な制御ユニットとを備える。該制御ユニットは、
対応するサイト(該サイトは幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータの少なくとも一つが共通である)の幾何学的及び物質組成パラメータによって定義される多層構造の異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを備えた参照データを記憶するためのメモリ設備と、
光学測定データの処理及び分析用に構成され動作可能なプロセッサ設備とを備える。該処理及び分析は、複数の測定された積層体に対する前記光学測定データを理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にすることを含む。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、複数の異なる周期パターンを備えた多層構造を有する物体の特性を特性評価するのに用いられるシステムが提供される。本システムは、物体の測定されるエリアの幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す光学測定データを受信するように構成された制御ユニットを備える。該制御ユニットは、対応するサイト(該サイトは少なくとも一つの幾何学的パラメータ及び/又は少なくとも一つの物質パラメータが共通である)の幾何学的及び物質組成パラメータによって定義される多層構造の異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを備えた参照データを記憶するためのメモリ設備と、光学測定データの処理及び分析用に構成され動作可能なプロセッサ設備とを備える。該処理及び分析は、複数の測定されたパターンに対する光学測定データを理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にすることを含む。
【0019】
本発明は、一般的なパラメータ特性評価、特に多層物質積層体のウェーハの光学的物質特性の特性評価用の方法を開示する。本願で説明される方法は、複数の物質層を備え、複数の異なる積層体(サイト)(例えばウェーハのパターン化エリア)を有する単一のウェーハの光学測定を利用する。
【0020】
本発明は更に、測定及び分析される各構造に対して定義される物理理論モデルを利用する。そのモデルを用いて、光学測定の結果に関連するグローバルパラメータを正確に測定する。これは一般的に、サイトの光学測定の実際の結果を、サイトのモデルによって与えられるような多様なサイトの測定結果の予測と相関させて、予測結果が測定結果にフィットするようにモデルパラメータを最適化するように構成された逆回帰フィッティング法を用いることによって達成される。この手順は、高信頼レベルでパラメータの正確な値を得るための測定パラメータの最適化を提供する。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、ほとんど又は全て同じ物質を用いて形成された複数の異なる積層体が利用される。このような積層体は典型的には、異なる試験サイトに位置していて、パターン化されていないサイト/エリアである所謂“固体サイト”と、異なるピッチ、特徴部の形状及び/又はデューティサイクルを備えた周期パターン(2次元又は3次元)を含む異なるパターン化サイトエリアとを含み得る。試験サイトは、測定目的で特別に形成され得て、又は、代わりに若しくは追加として、試験サイトとして使用可能なウェーハの製品領域内の既存のサイトであり得る。
【0022】
本発明は、試験サイトの共通(グローバル)パラメータを特性評価するために最適化アルゴリズム(逆回帰フィッティングアルゴリズム等)を利用する。サイトの特性の物理的理論モデルは、各試験サイトによって予想される測定の光学応答を予測するように導入及び利用される。これらの物理モデルは典型的には、固体サイトの光学応答を特性評価するためのフレネル方程式、Moharam及びGaylordによって初めに開発され非特許文献2に開示されているRCWA(rigorous coupled−wave analysis,厳密結合波分析)や、特許文献7に開示されているような格子構造から回折を計算するための他の方法等の物理理論に基づいている。モデルは、サイトのパラメータ、ライン幅や層の厚さ、層の物質パラメータに対してモデルをフィッティングすることを可能にするために、パラメータ化される。
【0023】
一般的に、少なくとも二つのサイトに共通のグローバルパラメータが測定されるが、サイト内で必ずしも同一ではない局所パラメータを導入して、測定されたグローバルパラメータ間の相関を崩すことができ、対象のグローバルパラメータの正確な決定が可能になる。
【0024】
測定結果にフィッティングされる正確な理論パラメータを得ることは単純なものではなく、特に、必要とされるパラメータ間の相関の程度が高い場合、対象のパラメータの感度が他のパラメータの感度レベルよりも顕著に低い場合にそうなる。こうした場合、当該分野の一般的な既知の方法では、これらのパラメータの影響を区別することに失敗し、典型的には、これらのパラメータの信頼レベルは低いものとなる。
【0025】
しかしながら、本発明の発明者は、複数の試験サイトに形成された複数の構造(複数のパラメータが一部の構造に対して共通であり(つまり、グローバルパラメータ)、他のパラメータ(局所)がこれらの構造を互いに区別する)を利用することが、より高い感度の値を提供し、対象のグローバルパラメータの相関を減少させ得ることを発見した。この概念は、より高い信頼レベルで共通パラメータの値を分析及び測定し、サイトの特性評価モデルの予測に対して測定された光学応答のより高いフィッティング値(典型的にはメリット関数によって測定される)を提供するのに有用である。
【0026】
このため、共通のグローバルパラメータはサイトを特徴付ける何らかのパラメータを備え得て、それらのパラメータが検査される試験サイトの少なくとも一部に対して共通である限りにおいて、物質特性を特徴付けるパラメータ、層の厚さ及び幾何学的パラメータ(例えば、CD、デューティサイクル等)が挙げられることは留意されたい。
【0027】
本発明は更に、単一のウェーハの特性の特性評価のための最適化方法を提供する。本方法は、上述のように複数の試験サイトを利用することによってグローバルパラメータを分析及び測定することを活かして、測定結果に対して試験サイトの物理モデルの正確なフィッティングを可能にする複数の試験サイト測定の最適化のためのシステマティックな方法を提供し、それらのパラメータの測定に対してより高い信頼レベルを提供する。
【0028】
前述のように、本方法によりあらゆるグローバルパラメータを分析することができるが、本方法は、サンプルを備えた物質の光学的物質特性の測定に特に適している。典型的には、固体ウェーハ構造を測定する際、物質の光学特性に対する測定の感度は、層の厚さ等の他のパラメータに対する感度よりも適度に低いものであり得る。更に、一部の物質に対しては、光学特性は高度に相関している(BARC及びフォトレジスト物質の場合等)。このため、それらの特性の正確な測定は既存の方法では困難である。
【0029】
一般的に、複数の異なる物質を備える多層物質積層体構造の物質特性を特性評価することには、いくつかの困難が伴う。典型的には、このような物質の積層体の単一の測定によって得られるデータ量は、その積層体を備える全物質の光学特性を特性評価するには不十分である。例えば、M種の物質を備える物質積層体の複素屈折率(n+ik)をスペクトル範囲にわたるN個の波長の必要とされるスペクトル解像度でスペクトル測定することは、N個(n又はkのみを測定する場合)又は2N個(n及びkの両方を測定する場合)のデータ点を提供する。全ての異なる物質の複素屈折率(n+ik)の特性評価には一般的に、2×M×N子の独立データ点が必要とされるので、単一の測定は、特性の正確な決定には不十分なデータを提供する。本発明は、複数のサイト(パラメータが共通である)の複数の測定を利用してパラメータを求めることによってこの問題を解決し、更に、測定結果を介してパラメータを区別及び特性評価するように構成された最適化アルゴリズムを提供する。前述のように、物質特性を特性評価するための本方法は、ウェーハ製造の最終段階において明らかになるように、特性を決定することを可能にする。本方法は、上述の追加積層及びモデルに基づいた分析の標準的な方法の多数の制限を解消する。
【0030】
構造(試験サイト)は、他のサイトのものとは異なる少なくともいくつかの区別される局所パラメータ(例えば、異なる幾何学的パラメータ)を有するので、それらのサイトの測定及び予測の物理モデルは、異なるスペクトルを提供し、パターン化されていないエリアには含まれない追加情報が得られる。同一の物質が全構造中に存在しているので、単一の最適化問題中に全ての異なるサイトから得られた情報を組み合わせて、異なるサイトに対する物質特性を同時に求めることが有効である。
【0031】
本発明の更なる側面では、プロセスの複数の段階(例えば、エッチング、堆積、研磨の前後)において行われた測定を組み合わせて、より多様な構造が許容され、より多くの情報を集めることができる。プロセスの複数の段階において同一のサイトを測定することによって、複数のスペクトルが得られ、所望のグローバルパラメータを導出するのに必要とされる情報量を達成するのに必要とされる、異なる測定サイトの数も減少する。従って、本発明の他の側面は、プロセスの複数の段階にわたって単一のウェーハの単一のサイトを測定することによって、グローバルパラメータの導出を可能にする複数の測定データを提供することである。
【0032】
本発明の更なる側面は、幾分異なる構造を示すウェーハ上の異なる位置から得られた異なる測定の利用であり、例えば、多くのプロセス(CMP、CVD)において一般的なセンターからエッジの変化によるものである。
【0033】
本発明の更なる側面は、プロセスのうち一つにおいて行われた故意の変更を用いて、最適化に利用できる情報量を増やすことである。例えば、ウェーハの製造に用いられる段階の一つであるフォトリソグラフィプロセスによって許容される自由度が使用され得る。異なる露光及び/又は焦点条件を用いてウェーハ上の異なる領域を露光することによって、同一のウェーハの異なるエリアに異なる格子構造を形成することが可能であり、単一のウェーハから集められる情報量が、領域ごとに単一のサイトで十分となる程度にまで、顕著に増大する。
【0034】
本発明の更なる側面は、標準的なプロセスフローの介在を必要とする特別ウェーハの使用とは対照的に、標準的な製品ウェーハを用いた製造プロセス中に物質特性が周期的にモニタリングされるプロセス制御方法を提供することである。標準的なプロセスウェーハの複数のサイトを測定し、その結果を本発明による分析方法に投入することによって、プロセス中の多様な層の物質特性を連続的にモニタリングすることができる。次に、測定された物質特性を用いて、例えば、定期メンテナンス等の後に堆積チャンバ等のプロセスツールの質を保証するため、そのようなプロセスツールの通常動作中における変化を通知することができる。単一の測定サイトの標準的なフィッティングプロセスよりも、複数のサイトの同時フィッティングは時間がかかるので、その複数のサイトの分析用のデータを、同一の処理ユニット上で、別個の並列プロセスで走らせたり、別個の(遠隔)処理ユニット上での処理用に送信したりすることによって、測定システムが、標準的な単一サイトの測定用の同一の測定システムの連続使用を遅延させることなく、周期的な物質特性評価分析を提供することができる。
【0035】
本方法は、上述のように、標準的な方法を制限する問題に対するいくつかの解決策を提供する。全ての構造が最後の層に対して定義されるので、“追加積層”を形成するためのショートループウェーハを製造する必要がなく、コストを節約し、解決への時間を短縮する。更に、全ての構造が全積層体から形成されるので、堆積後の物質変化の全ての側面が自動的に考慮される。更に、唯一の要求が、正確な試験サイト(又は内部の製品サイト)がマスク上に存在していることであるので、本方法は、初期処方設定中に行われるのと全く同様に、連続製造中に物質特性を徹底的に追求することを可能にし、標準的な追加積層法では不可能であったより良いプロセス制御を可能にする。利用可能な情報量を更に増強するため、複数の測定方法を用いて異なるサイトを測定することが可能であり、例えば、複数の入射角で偏光スペクトル又は偏光解析パラメータを測定する。
【0036】
本方法の使用が、多様な照射条件における複雑な構造からの回折をモデル化する性能に依存するものであることは明らかである。しかしながら、この性能は基本的に、散乱測定によって必要とされるモデル化性能に等しく、広く知られている。違いは、幾何学的パラメータと共に物質特性を特性評価するようにこのモデル化が行われるのに対して、以前の研究では、物質特性は既知であると仮定して、その目的が幾何学的パラメータを最適化する点である。解の質は、例えばフィッティング関数のローカルな最小値による誤った解に達することなく、情報の大半を正確に組み合わせる性能に大いに依存する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の方法を実施するのに適したシステムの一例の概略図である。
【図2】同一の物質積層体をほぼ又は全て共有する単一の物体の複数のエリア/サイトを示す概略図である:図2Aは、パターン化されていない(固体)エリアを示す;図2B〜2Dは多様なピッチ及びデューティサイクルを備えた複数のパターン化サイトを示し、パターン化は、例えばリソグラフィの露光後測定において典型的な、上部層に対してのものである;図2E〜2Fは、プロセスの異なる段階(例えばエッチング後)において測定され得る多様なピッチ及びデューティサイクルを備えた二つのパターン化サイトを示す。
【図3】試験エリアを予備デザインするオプションの段階を例示するフロー図である。
【図4】本発明のパラメータ最適化法の一例を例示するフロー図である。
【図5A】CD=45nmで1:1のデューティサイクル(ライン対スペースが等しい)を備えたパターン化エリアの典型的な感度分析表を示す。
【図5B】CD=45nmでライン対スペースが1:5のデューティサイクルを備えたパターン化エリアの典型的な感度分析表を示す。
【図5C】図5A及び5Bの検査下の典型的な構造を示す。
【図6A】パラメータ間の高相関を例示する固体(パターン化されていない)エリアのパラメータ相関マトリクスを例示する。
【図6B】特性評価パラメータ間の低相関を例示するパターン化(格子)エリアのパラメータ相関マトリクスを例示する。
【図7A】リソグラフィにおける三つの典型的なサイト、即ち、シリコン基板上のBarc層上の固体フォトレジスト層、シリコン基板上の固体Barc層、シリコン基板上のBarc層上のフォトレジスト格子に対する、モデル最適化法の二つの連続的な段階中のスペクトルフィッティングを例示する。
【図7B】リソグラフィにおける三つの典型的なサイト、即ち、シリコン基板上のBarc層上の固体フォトレジスト層、シリコン基板上の固体Barc層、シリコン基板上のBarc層上のフォトレジスト格子に対する、モデル最適化手順の二つの連続的な段階中のスペクトルフィッティングを例示する。
【図8】本発明の一例による、二つの並列プロセス制御方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を理解し、実際にどのように実施されるのかを理解するために、添付図面を参照して、非限定的な例による実施形態を以下説明する。
【0039】
図1を参照すると、ウェーハWの特性をモニタリング(測定/検査)するための本発明の方法を実施するために用いられるのに適した測定システム(一般的に参照符号10で指称する)の一例が概略的に示されている。ウェーハはパターン化構造を含む物体を構成する。この物体は少なくとも二つの異なる積層体を有し(例えば、異なるサイトに)、そのうち少なくとも一つは周期パターンを有する。よって、この物体は多重パターンサイト/エリア(一般的に積層体)を有し得て、また、一つ以上のパターン化されていないサイト/エリア(積層体)を有し得る。
【0040】
システム10は、典型的には一つ以上のコンピュータを含むコンピュータシステムである制御ユニット12を備え、各コンピュータは、特に、メモリ設備12A、プロセッサ設備12B、データ表示設備(例えばモニタ)12Cを含む。制御ユニットは、光学的に測定されたデータMD(例えば、光学測定ユニット14からの)を受信及び処理するように構成され、作動可能である。測定されたデータは、測定下の物体の一つ以上の測定されたサイト/エリアの幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す。このため、制御ユニットは、予め提供された予測の理論モデルを利用する。このモデルは、測定下のものと同様の物体に対するパターン化されていない及びパターン化されたエリアの少なくとも一部の回折特性を示すように構成される。回折特性は、測定されるエリアの幾何学的及び物質に関連する光学パラメータによって定められる。このモデルは、測定されるエリアが、共通の幾何学的パラメータ及び/又は物質に関連する光学パラメータを有するものと仮定する。
【0041】
理論モデルは、例えば、制御ユニットのメモリ設備(例えば、互いに接続可能な複数のコンピュータのメモリ(データベース)間に分布している)に、又は、通信ネットワークを介して制御ユニットがアクセス可能な別個のデータベースに、予め適切に選択され記憶されている。また、測定されたデータはオフライン(つまり、測定後のセッション)又はオンライン(実時間)で処理可能である点には留意されたい。制御ユニット12は、有線又は無線信号伝送を介して測定ユニット14に接続可能である。
【0042】
光学測定ユニット14は、本発明のシステムの構成部品であってもなくてもよい。しかしながら、本発明のシステム(制御ユニット12)は、所定のタイプの光学測定によって得られる測定データを分析できるように構成される。つまり、理論モデルは、物体(測定下のものと同様のもの)の回折及び/又は干渉特性を記述するように選択され、所定の方法に従って測定される。光学測定ユニットは、スペクトル偏光解析法又はスペクトル反射測定法を実施するように構成され得て、好ましくは、ゼロ次の回折検出モードにおいて作動可能である。一部の実施形態において、光学測定ユニットが、異なる種類の複数の測定ツールを含み得て、又は、他の一部の実施形態において、光学ユニットが、同一の測定ツールを利用するが異なる複数の測定モードで作動可能であり、物体の同一又は異なるサイトに対する異なる測定を実施するという点には留意されたい。
【0043】
制御ユニット12(そのプロセッサ設備12B)は、光学測定データを処理するように予めプログラムされている。この処理は、複数の測定エリアに対する光学測定データを理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを得ることを含む。これによって、単一の物体/構造内の多層構造の特性を特性評価することが可能になる。これは、所謂“単一ウェーハパラメータ最適化”(SWPO,Single Wafer Parameters Optimization)法である。このような方法は、例えば、特定の物質/層の特定の特性(典型的には光学特性)を最適化するための並列回帰フィッティングアルゴリズムを利用する。
【0044】
SPWO法を用いて、パターン化構造を有する物体(例えば、ウェーハ)、つまり、パターン化エリアを有して一つ以上のパターン化されていないエリア(固体積層体エリア)も有し得る構造の特性を特性評価することができるが、このような“エリア”は、物体の同一又は異なる位置に関連する積層体を構成するという点には留意されたい。この方法は、複数のエリア又はサイト(試験サイトとして機能し、物体の製品範囲の外側の物体の試験領域内に位置する又は製品領域内に位置する)からの測定データを処理及び分析することを利用する。エリアは、その幾何学的及び物質組成パラメータによって記述可能である。複数のエリアは典型的に、一部の幾何学的及び/又は物質特性が互いに異なるものである(つまり、局所的な特性/パラメータ)一方、一部の特性は、複数のエリアのうち少なくとも一部に対して共通である(つまり、共通/グローバルな特性/パラメータ)。
【0045】
理論(物理)モデルを用いて、複数の異なるエリアのうち少なくとも一部の干渉/回折特性を示す予測を提供する。より具体的には、そのモデルは、異なるエリア、つまり幾何学的パラメータ及び/又は物質組成パラメータの異なるエリアに対応する複数のサブモデルを有する。上述のように、このような回折特性は一般的に、エリア特性(例えば、そのエリアを特徴付ける幾何学的及び/又は物質パラメータ)に依存する。選択されたエリアに光学測定を実施して、各エリアに対する回折特性を示す測定データを提供する。
【0046】
その後、複数のサブモデル及び対応する測定データ部分に対して同時にフィッティングを適用し、例えば、逆回帰フィッティング法が挙げられる。後述するように、これは典型的に、適切なフィッティングレベルが測定エリアに対して同時に得られるまで、理論サブモデルのパラメータを反復的に変更することによって達成される。
【0047】
サブモデル及び個々の測定データに対して適切なフィッティングレベルが達成されると(例えば、総メリット関数の所定の値によって定められる)、測定エリアの共通パラメータの値が導出されて、更に、物体の特性を特性評価するのに用いることができる。
【0048】
本発明の方法によって、単一の物体からの測定によって物体の特性を特性評価することが可能になり、つまり、異なる複数の同様の物体から測定されたデータを比較する必要が無くなる。しかしながら、本発明は、単一物体測定に限定されるものではなく、処理される測定データが、二つ以上の物体(ウェーハ)に位置する測定エリアから集められたものである場合もある。本発明の一部の実施形態において、複数の測定エリアのうち少なくとも一部に共通の共通パラメータを最適化することが可能である。
【0049】
本発明での使用に適した理論モデルは例えば、ウェーハの各サイトのスペクトル応答の記述(物質の光学パラメータ及び幾何学的又は構造パラメータ(例えば、特定の物質の複素屈折率や、波長、層組成及び厚さに対するその依存性の関数表示によって表される)等の複数のパラメータの関数としての記述)を含む。一般的に、このタイプの理論モデルは測定結果を常に正確に記述/予測するものではない。この原因は、公称状態及び相互作用を変化させ得るプロセス変化等の影響や、層間の他の干渉の影響が典型的には、ウェーハの理論モデル内に完全には含まれていないからである。
【0050】
このため、複数のブランケットウェーハ(一般的には同様のものではない)の多重測定(例えば追加積層法)を用いて、特定のパラメータの別個独立の測定を提供することによる(例えば、第一の層を含むウェーハを測定し、第一及び第二の層を含むウェーハを測定するといったようなことによる)測定の最適化を行うことが可能であり、測定結果により良くフィッティングされた最適化モデルが提供される。しかしながら、SPWOは、単一のウェーハの(又は、一般的に同一の物質及び構造特性を有する複数のウェーハの)複数の試験サイト/エリアの測定を利用することが好ましい。一般的に、各エリアは異なる幾何学的特性を有して形成されていて、例えば、このようなエリアは、異なるCD(例えばライン幅)、デューティサイクル又は周期を備えた複数の格子を備え得る(図2A〜2Fを参照して後ほど例示する)。SPWOは、各エリアの幾何学的パラメータを用いて、予想される測定結果のモデル化された予測(例えば、局所的なサブモデル)を提供する。
【0051】
一部の場合、試験サイト/エリア及びその幾何学的パラメータは、測定結果に対するウェーハの物質の光学特性及び幾何学的特性の影響を特性評価する理論モデルの、対象となる特定のパラメータの導出及び最適化を可能にするように特別にデザインされる。この最適化プロセスは、測定結果から直接集められたデータ又は理論モデルの更なる分析から間接的に集められたデータを用いて行うことができる。他の一部の場合、測定は、所望のウェーハ上に既に形成されている複数のサイト(所望のパラメータ/特性の分析に適していると分かっているもの)に対して行われる。
【0052】
従って、同一ウェーハの複数の試験サイト(例えばパターン化エリア)を測定することによって得られた複数の測定結果を互いに用いて、理論モデルの共通(“グローバル”)パラメータ(特定の層/物質の複素屈折率等)を分析及び最適化することができる。
【0053】
一のウェーハ上に形成された複数の異なるパターン化サイトは通常、特定の幾何学的パラメータ(例えば、デューティサイクル、CD、周期等)及び特定の物質光学パラメータ(例えば、屈折率、吸光係数等)が異なるものである。一方、同一ウェーハ上に形成された複数のパターン化サイトは、少なくとも一つのグローバル構造パラメータ(例えば、下層の厚さ)を共有するか、物質の共通光学定数を有する。これらのグローバルパラメータは、同一ウェーハに対して測定された全てのサイトにおいて本質的には同じものであり、異なる試験サイトの測定された特性(反射率など)を理論的にモデル化するために用いられる。
【0054】
以下は、本発明のSWPO法の一例である。
【0055】
任意で、複数のエリアの幾何学的パラメータのデザイン/分析及び最適化を行う。この手順は、測定に用いられるウェーハ上のエリア/サイトの適切な選択を目的としている。この段階は、試験サイトを形成するために用いられるマスクをデザインするために行われ得る。代わりに、この段階は、マスク/ウェーハ上に既に存在している複数の候補となる測定サイトの中から一部のサイトを選択することを目的とし得る。どちらの場合においても、試験サイトのデザイン又は選択の最適化が、理論計算に基づいて実際の測定の前に行われ(つまりオフラインで行われ)、実際のウェーハは必要とされない。この段階をマスクデザインの前に行う場合、理論計算は、サイトを識別しデザインルール及びOPC(Optical Proximity Correction,光近接効果補正)ルールへの適合性を検証するDBM(Design Based Manufacturing,デザインベース製造)法に結び付けることが可能である。この段階は、以下において図3を参照して具体的に説明する。
【0056】
従って、上述の手順の後、又はこれを行わなかった場合にも、複数のパターン化されたサイト、また任意でパターン化されていない(固体)サイトを含むサイトの組み合わせを含む一つ以上のウェーハが提供(形成)される。十分な種類のサイトが同一物体上に存在している場合(半導体ウェーハには一般的な場合)、単一ウェーハの使用で、本発明の目的には十分である。
【0057】
光学計測ツールを用いて、ウェーハ上の一部のサイトに対して、光学測定が行われる。ツールの種類は、測定サイト内のウェーハの多様な特性を測定するためにケースバイケースで選択可能であり、例えば、反射スペクトルを多様な偏光状態において得ることができ、又は、偏光解析パラメータ測定を、単一の若しくは複数の入射角において行うことができる。測定は、プロセスの複数の段階においても行われ得る。
【0058】
このようにして得られた測定データは、少なくとも一部の物質の物質特性の最適化のために処理される。測定データの処理は、後述するように、物理モデル及び最適化アルゴリズムに基づいている。
【0059】
本発明のSWPOは、周期格子を備え、また固体(パターン化されていない)積層体も備え得る二つ以上の試験サイトに対して使用され得て、試験サイトが少なくとも一つの共通パラメータを有するようになる。このような試験サイトを測定して回折特性を得ることができ、同時最適化を用いることができる。ここで、“同時最適化”との表現は、測定サイトの全て(又は所望の数)に対して理論サブモデル及び測定データのフィッティング(所望の程度のフィッティング)を得る手順のことを称する。このようなフィッティングは、メリット関数の和として計算されるメリットフィギュア等の総フィッティング基準によって実現され得る。典型的に、複数の周期パターンが並列解釈(同時測定)において用いられる。
【0060】
図2Aから2Fを参照すると、同一ウェーハの複数のサイト(6サイト)が概略的に示されている。一般的に、サイトは異なる積層体を構成し、具体的には、一つ以上の幾何学的パラメータ(パターンパラメータ及び/又は層の厚さ)及び/又は物質に関連する光学パラメータの異なる積層体を構成し、このような異なる積層体は、物体の異なる場所に関連しているか、物体の同一の場所の異なる処理段階に起因し得る。このウェーハは、パターン化されていないサイト(図2A)、ピッチやデューティサイクル値等の多様な幾何学的パラメータを有する複数のパターン化サイト(図2B〜2F)を含む。図2B〜2Dのサイトでは、最上部層のみがパターン化されていて、物質2の層の上面において物質1の間隔の空いた領域の形状となっている。これらのサイトは、例えば、リソグラフィにおける露光後測定用に用いられ得る。図2B〜2Dのサイトは、パターンパラメータが互いに異なるものであり、共通の物質組成パラメータを有する。図2E〜2Fのサイトでは、物質1が除去されていて、二つの上部層(物質2及び物質3の層)が、異なるようにパターン化されている。よって、図2E〜2Fのサイトもパターンパラメータが互いに異なるものであり、共通の物質組成パラメータを有する。これらのサイトは、例えばエッチング後に測定される。他の選択肢では、パターンは、パターン化後に堆積させた追加層の下に埋もれている。
【0061】
好ましくは、測定は、単一のウェーハの互いに近接するサイトに対して行われる。このような場合、測定された試験サイトに共通のグローバルパラメータが同様の値(例えば、下方の層の共通の厚さや、共通の積層体物質パラメータ)を有するとする仮定は非常に有効である。この方法は、既存のウェーハに既に形成された適切なサイトを用いることによって、特別にデザインされたウェーハや特別に処理されたショートループウェーハを必要とせずに、行うことができる。
【0062】
異なる条件がウェーハの異なる位置に存在している場合、異なる位置(例えば試験サイト)の測定が、追加情報を提供し得る。例えば、焦点露光マトリクスを用いる場合、追加測定情報(並列に処理される)が、異なる焦点及び露光条件と関連する。更に他の選択肢は、同一の測定ツールの異なる作動モード(異なるNA(numerical aperture,開口数)条件等)での使用である。
【0063】
図3を参照すると、試験サイトの予備デザインというオプションの段階が例示されている。本発明の特定の実施形態によると、ウェーハ上の異なるサイトが、上述の測定及び最適化段階用の試験サイトとして機能するようにデザイン又は選択される。これは、メインの最適化段階用の予備段階である。この予備段階は、マスクデザインを介して、ウェーハ上のパターン化構造(周期構造)及び場合により固体構造の複数の単純な試験サイトを形成する性能(段階1.6)を活用する。この段階では、試験サイトの所望の幾何学的特性が、その幾何学的特性の変化に含まれるパラメータ(つまり、測定又は最適化されるもの)の感度に応じて、また、含まれるパラメータの測定に対する多様な幾何学的特性の効果間の相関の程度に応じて、注意深く分析及び選択される。試験サイト間の変化は、含まれるパラメータの独立的な(又は緩く相関した)指標を提供することによって、試験サイトの測定結果を介したパラメータの評価及び最適化を可能にすることが望ましい。
【0064】
よって、この段階は、含まれるパラメータの感度に重点を置いた、注意深いマスクデザイン又はマスク上に存在しているサイトの注意深い選択によって、測定される試験サイトの制御を可能にする。
【0065】
含まれる物質及びそれらの特性(例えば、光学的特性、反射率/透過率)と、異なる試験サイトに対して変化する複数の自由度(例えば、周期、デューティサイクル(ライン対スペース比)等)を典型的には備えた周期/パターン化試験サイト(格子等)の任意デザインとを含む適切な理論モデル(グローバル)モデルが提供される(段階1.1)。ブランケットウェーハを特徴付けるグローバル理論モデルの一例は、ウェーハの予想される複素屈折率(n(w)+ik(w))及びウェーハを特徴付ける複数のパラメータに対するその屈折率依存性(積層体の物質組成、層の厚さ等)を決定する一組の方程式を含み得る。取り扱っている特定の最適化問題において必要とされる様々な特性の分析のために、多様なモデルが形成されることは理解されたい。複数の試験サイトがデザインされるか又は既存のマスクから選択される(段階1.2)。そのデザインには、各試験サイトに対して、段階1.1で得られたグローバルモデルに基づいて、サイトを特徴付ける幾何学的特性の仕様、サイトモデル(つまり、各サイトに対応する局所的モデルやサブモデル)の生成が含まれる。その試験サイトのデザインの主な目標は、そのサイトの測定が、最適化パラメータに対する個々のモデルの適切な感度、及び、モデルに含まれる他のパラメータに対する当該パラメータの最小の相関を提供することである。よって、サブモデル(サイトモデル)は、サイトの予想される測定結果の予測を提供する。サブモデルは典型的に、各サイトの幾何学的パラメータを加えた、上述のグローバルモデルに基づく。
【0066】
次に、サイトのデザインを検証する(段階1.3)。これは、理論モデルに基づいた感度及び相関分析を含む。前述のようにまた後述するように、この段階において、試験サイトは、対象となる特定のパラメータの変化に対する感度が分析される。このため、感度は、試験下にあるパラメータの変化(パラメータ範囲の一部の変化)に起因する測定データに予測される効果間の比(たとえば、スペクトル透過率/反射率の変化)として定義される。この感度測定では、測定データに影響を与え得るノイズの影響が考慮され、感度分析を、ノイズによる測定量の典型的な偏差に対して相対的に評価することができる。試験サイトのうち少なくとも一つが、対象となるパラメータの変化に対する適切な感度を示すことが求められる。また、この段階で行われる相関分析は、対象となる特定の変数/パラメータの変化に対する異なる複数の試験サイトの感度(上述のように定義される)間の相関の程度を測定する。これは、選択された試験サイトに対するパラメータの“直交性”を確実なものにし、選択された試験サイトの測定結果に基づいた対象となる各パラメータの推論を可能にし、各パラメータの導出における最終的な精度及び安定性を確実なものにするために行われる。この相関分析については、以下でより具体的に述べる。
【0067】
各パラメータの感度及び相関の値は、所望の最終的な精度の閾値に対して試験される(段階1.4)。不十分な精度の値が得られると、試験サイトのデザインに対する補正を提供する段階1.5から、プロセスが再び開始される。
【0068】
評価段階1.3は、感度パラメータが、個別的な最適化を妨害し得るクロストークの影響を受けないことを確実にする。このような分析によって、所定の構造を用いた最良の解決策をデザインすることが可能とされる。このような初期分析を用いることは、マスク構造がデザインされない又はできない場合においても重要となり得る。この場合、フィッティングを開始する前の高度の信頼性が必要とされ、パラメータの最適化における誤差のレベルの理解が重要である。
【0069】
試験サイトの適切なデザインが得られ、段階1.4において得られた誤差の値が所定の閾値又は他の最小値未満であると、試験サイト及び対応する局所的な(サイト)モデル又はサブモデルの組が得られる(段階1.6)。
【0070】
図5A〜5Cを参照すると、感度分析の一例が示されている。図5Cは、典型的なフォトレジスト格子、例えば、シリコン基板上のBARC(底面反射防止コート)の上面上のフォトレジストラインを示す。図5A及び5Bは、異なる幾何学的特性で形成された、フォトレジスト格子(図5C)を備えた二つの試験サイトの感度分析を表す表を示す。図5Aは、45nmのライン幅(つまりCD)及び1.1のデューティサイクル(つまり、ライン対スペース比)を備えた第一の試験サイトの感度分析を示し、図5Bは、同一のライン幅を備えるがデューティサイクルが1:5である第二の試験サイトの感度分析を示す。これらの図面に示される表において、試験サイトを特徴付ける複数の物質特性(パラメータ)及び幾何学的パラメータが、感度の小さくなる順で配列されている。見て取れるように、一部の物質パラメータは、幾何学的パラメータと同レベルに敏感である。
【0071】
しかしながら、感度の値は、デューティサイクルや周期等の幾何学的(格子)パラメータに依存する。この依存性は、異なるデューティサイクルに対して計算されている図5A及び5Bの表の比較に例示される。表から見て取れるように、この例では、各パラメータに割り当てられた感度の値及び異なるパラメータの感度の順序の両方が、デューティサイクルに依存している。また、これは、最適化プロセスにおいて用いられる各パラメータが、ノイズレベル及び変化したパラメータに対して十分な感度を有する第一の指標を提供する。
【0072】
典型的な相関分析が図6A及び6Bに例示されていて、二層(両図においてL1及びL2で示される)の積層体を備えたウェーハの二つの場合が示され、また、パラメータ間の相関/結合を示す対応する変化及び相関の表(例えば共分散マトリクスを用いた)、及び、含まれるパラメータの測定の予測された変化が示されている(シグマ標準偏差の単位で)。図6Aのウェーハは固体の二層積層体を備え、図6Bのウェーハは、単純な同一ライン間隔の格子を備える。
【0073】
図6Aでは、二つの構造パラメータ(第一及び第二の層の厚さ(L1.厚さ、L2.厚さと示される))が固体ウェーハ積層体を特徴付ける。パラメータ変化に対する測定の感度を特徴付ける相関分析の表(図6Aに示される、共分散マトリクスからの典型的な分析)は、パラメータ間の相関が強いこと(一に非常に近く、0.9995)を示し、よって、何らかの特定のパラメータをこの構造の測定結果から正確に予測することができないという結果を示している。示されているように、所定の信頼レベルに対して、層L1及びL2の厚さに対する測定誤差(シグマ値)はそれぞれ9.75、9.64であり、パラメータ間の強い相関に起因して比較的高い。
【0074】
図6Bは、パラメータの高い相関によって課せられる制限を克服する本発明により用いられる方法を示す。周期、デューティサイクル等の構造特性を、変更された/追加された幾何学的特徴に起因するパラメータ間の相関の減少によって、パラメータ間の区別を可能にするレベルへと変化させる。図6Bに示されるように、上部層(L1)上でパターン化された格子構造が提供され、格子構造に対応する追加パラメータ(L1.CDで示されるライン幅、L1.Aで示される壁角度)が追加されている(図6AのパラメータL1.厚さは図6BではL1.H(ライン高さ)に置換されている)。図6Bの相関表から明らかなように、図6Aの場合に高かった層の厚さ間の感度の相関(0.9995)は、図6Bの場合には顕著に減少して、(0.0198)という値になっており、この構造の測定結果を介したパラメータの予測が可能になる。図6Aと6Bのデータを比較すると、より低い程度の相関が、層の厚さに対する測定誤差を減少させることが明らかである。
【0075】
このような相関分析の基本概念は既知の分散共分散法であり得るが、他の相関用数学的手段でもあり得ることには留意されたい。
【0076】
このように、図6A及び6Bは、適切にデザインされた格子構造を用いることで二つの厚さパラメータの測定における区別が可能になることの単純で典型的な例を示す。こうしなければ、その区別は固体積層体のパラメータ間の相関によって分離できない。
【0077】
マスク上にデザインされた試験サイトの実現(代わりに、マスク又はウェーハ上に既に存在しているサイトの選択)及びウェーハの製造後に、反射率測定が行われる。これらのサイトの測定を介して集められた情報は、以下で議論する図4に示されるプロセスフローに従って処理される。このような情報は、例えば、異なるサイトでの、又は、異なる測定パラメータ(照射若しくは測定角度等)での、反射率のスペクトル応答値を有し得る。
【0078】
図4は、フロー図として、本発明の一部の実施形態による最適化段階プロセスを示す。この段階の動作は、ウェーハ上に存在している既存のサイトを利用及び測定することに基づいている。上述のように、予備試験サイトのデザイン/分析段階を利用して、必要とされるパラメータ分離を可能にする測定の組を得るために、ウェーハ/マスク上の利用できる構造、又はカスタマイズされたサイトのデザインのどちらかを選択することができる。
【0079】
最初に、段階(2.1)では、ウェーハ(典型的には必要とされる試験サイトの形成されたウェーハ)及び選択された試験サイトの位置が提供される。ウェーハの理論モデル及び試験サイトに対応する一組のサブモデル(局所的)が得られる。基本的に、これらのモデルは、オプションの予備デザイン段階(図3を参照して上述している)からのインプットとして与えられるか、この段階において生成されるものである。
【0080】
段階(2.2)では、試験サイトの光学特性を特性評価する一組の測定(典型的には反射率及び透過率測定)を行い、測定結果を有する情報を得る。
【0081】
評価(段階2.3)を行い、理論モデルの仮定が、測定結果に一致するものであること、モデルによって予測された結果及び測定の間に一定の類似性が存在することを保証する。理論モデルの予測と測定との間の差が大き過ぎると、サイトの局所パラメータを調整及び最適化する(段階2.4、2.5)。理論モデル(及びサブモデル)の予測が測定結果に良く一致した後に、パラメータ評価(段階2.3)を行うことができる。一般的に、これらの段階は任意のものであり、サブモデルがウェーハ及びその上に位置する試験サイトを正確に記述していることを検証することを目的とする。これは、デザインからのグローバル及び局所パラメータの偏差(製造中に生じ得る)を分析し、それに従って理論モデルを変更することによって、達成され得る。このため、“グローバル/共通パラメータ”との用語は、ウェーハの試験サイトのうち少なくとも一部に共通の構造及び物質パラメータ(例えば層の幅の差)を指称する。“局所パラメータ”との用語は、測定された複数の試験サイトにおいて異なる幾何学的パラメータを指称する。
【0082】
フロー図の段階2.4〜2.7は、局所パラメータ(共通ではない)の調整及び最適化を目的としたオプションの予備最適化プロセスを表し、また、各サブモデル及び対応する試験サイトのグローバルパラメータも任意で対象となる。ライブラリサーチやインジェクション等の反転法(本出願人による特許文献7、特許文献8に記載されているような)は、本願において使用される選択肢である。
【0083】
従って、パラメータ検証プロセスは二段階で実施される。即ち、幾何学的変化及び物質特性の変化である。幾何学的検証(段階2.4)では、サイトの適切な幾何学的記述のために注意深い分析が行われる。単純な方法は、台形の利用であり、含まれる格子形状をより適切にカバーするために、台形の数を増やす。“プロセス指向法”を用いることが好ましく、幾何学的パラメータに対するプロセスの影響の基本的な知識及び記述が、構造を定義するために必要なパラメータ数及び自由度をより効率的なものにする。
【0084】
物質特性の変化は物質の物理的モデル化から成り(段階2.5)、エネルギーギャップや状態密度等の固体物理の物質の知識によって最適な数学的モデル化を実施する。
【0085】
段階2.4及び2.5の処理中に、これらの段階で検証されるように、ウェーハ及び試験サイトの実際のパラメータをより正確に反映するように、理論モデル及びサブモデルを変更する。好ましくは、パラメータは、各サブモデルにおいて、他のサイトのフィッティングレベルを損なわずに(つまり、これらのサイトに共通のグローバルパラメータを変化させずに)、対応する試験サイトの測定に対する各サブモデルのより良いレベルのフィッティングを提供するように変更される。各試験サイトの適切な記述用のモデルを作成した後に、モデルに基づいた計算スペクトルに対する測定スペクトルの最良のフィッティングが得られる(段階2.6)。この場合、フィッティングの特定の通過/失敗レベルが、メリット関数条件に対して定義される(段階2.7)。これも、十分な自由度が実現されていることを検証する。単一構造の検証を通過した後に、グローバルパラメータの最適化の開始点として想定される最善のものを提示するために、各構造に対して、多重パラメータグローバルフィッティングサーチを任意で実施する(段階2.6)。これによって、曖昧性が最小化される。これを複数のサイト/積層体に対して実施して、全サイト間の結果の共通性を用いることによって、正確なグローバル最小値及び最良の開始点が見つかる。
【0086】
任意で、対応するサブモデルに対する各サイトのフィッティングの測定(例えば、メリット関数)を、所定の閾値に対して試験する(段階2.7)。フィッティングレベルが不十分であり、グローバルフィッティングに失敗すると、所望のフィッティングレベルが得られるまで、プロセスを再び段階2.3から開始する。
【0087】
適切なフィッティングレベルが達成されると、最適な開始点モデル(グローバル及びサイトに関連したサブモデル)が、測定結果に対してよく一致する予測で得られる。これによって、モデルが、フィッティング関数のローカルな最小値におちいらないこと、及び、後続の最適化プロセスがより良い精度を提供することが保証される。
【0088】
次段階では、最適化プロセスが開始点モデルを利用して、回帰フィッティングモデルを用いて測定結果にモデルをフィッティングさせることによってグローバルモデルを更に最適化する。この最適化/フィッティング法(回帰フィッティング)は、測定された特性の感度に応じて、また、他のパラメータの変化に対するパラメータに関連する特性の影響の独立性に応じて計算された順で一組のパラメータをフィッティングすることによって行われる。これによって、モデル内で最適化される最初のパラメータが、フィッティング関数に対する最高の寄与を提供し、他のパラメータの構造の最適化によってあまり影響を受けなくなることが保証される。
【0089】
次に、図3に例示した予備デザイン段階の段階1.3で説明したのと同様に、新しい開始点モデルに基づいて、感度及び相関分析が行われる(段階2.8)。
【0090】
後続段階において、回帰が行われ、モデル化された結果と実験的に得られた結果との間の差を最小化するために、パラメータに反復的に摂動が与えられて、モデルが繰り返して評価される。回帰アルゴリズムを効率的に行うために、感度及び相関分析には、段階2.9で、異なるパラメータの評価された寄与のランク付けが続く。そのランク付けは、パラメータの重要性を示す。より高いランクのパラメータは、回帰の最初の段階において含まれる一方、他のものが後続段階で含まれることによって、フィッティングに対する影響が高いが、モデルの他のパラメータの後続の変化に対して感度(相関)の低いパラメータを最初に最適化することが可能になる。
【0091】
パラメータのランク付け及び回帰の順序は、モデルパラメータ及びパラメータ相関表における十分に狭い信頼区間を保証するように選択され、理論データ(モデルから計算される)と測定データとの間のマッチングを評価することができる(段階2.10)。一部の場合、他の測定データを用いて、より高い信頼レベルを保証することができる。例えば、回帰フィッティング法からの多様な波長の測定データの組み込み及び/又は除外等である。次に、多数のパラメータが、最適化に逐次的に組み込まれるが(段階2.12、2.13)、これは、手動又は自動アルゴリズムによって行われる。追加パラメータを含めるための段階の決定は、達成されたフィッティング対計算された感度のレベルに基づく。
【0092】
このため、達成されたフィッティングのレベルが、例えば、総メリット関数によって測定される。この実施形態では、測定データ及びモデル予測間の二乗の差の和が各試験サイトに対して計算されて、各サイトに対するフィッティング値(例えば、メリットフィギュア)が提供される。サイトのフィッティングの和は、総メリット関数として計算される。フィッティングレベルが或る停止基準に達すると(段階2.12)、モデル及び関連するパラメータが、測定データを正確に反映しているものとされる。このような停止基準の一つは、フィッティングレベル(例えば、試験サイトのメリット関数の総和)が或る所定のレベルに到達することである。他の基準は、フィッティングレベルの減少が十分に小さくなると達成される。
【0093】
他の適応可能な選択肢が、より良い計算時間効率のためにフィッティングプロセス中に実施可能であり、照射条件を表す、波長の数を変更すること、徐々に数の増加する回折モードを利用すること、角度密度を増大することが含まれる(段階2.13)。
【0094】
相関分析(段階2.14)を用いて、どのサイトが開始点として好ましいのか、どれが、各パラメータに対して達成される信頼レベルを改善するように相互相関を最小化するのかを識別する。この分析は、追加パラメータが加えられるたびに、最適化プロセスに追加積層体/サイトを含ませる前に、その開始時に実施される。最適化の進行により、感度の低いパラメータが次々に含まれて、より良いフィッティングが達成される。
【0095】
或る時点において、中間段階が、過度のパラメータ変化及び高レベルのメリット関数収束に基づいて、開始点から増大する偏差を示していると、積層体の幾何学構造及び物質組成が再モデル化されて、プロセスが再開始され得る。
【0096】
このアルゴリズムの最適化段階(2.11)は、“逆回帰”法や、最小二乗法の最小値を反復的にサーチする等の他の同様の方法を利用し、例えば、シンプレックスアルゴリズムやLevenberg‐Marquardtアルゴリズムが挙げられる。計算時間が制限とならず、その方法ではローカルな最小値を乗り越えることができない場合には、グローバルサーチアルゴリズムを適用することができる(例えば、焼きなまし法や分岐限定法)。
【0097】
図4を参照して上述した方法を、散乱測定モデル化の全自動化に対する基準として利用することができることは留意されたい。その基本概念は、異なるサイトのマスクデータに対するリンクを有し、評価段階2.4及び2.5に対していくつかの単純なデフォルトを仮定することである。よって、以下の自己相関ループが可能となる:開始点増強ループ(段階2.3、2.6、2.7、2.4/2.5)及びグローバルパラメータに対する改善ループ(段階2.11、2.12、2.13)。このように、既存のマスク情報及び基本的なモデル化の仮定を、初めに局所的なサイトに対して洗練化して、次にグローバル(それらのサイトに共通)パラメータに対して洗練化する。この場合の手動での関与は最小化可能であり、全自動で初期仮定を補正することができる。
【0098】
本方法を、複数の異なる格子がウェーハ上に存在している散乱測定オーバーレイターゲットに適用可能であり、段階2.1の開始点に対して役立ち得る。これはターゲットのデザインに関係し、更に、ターゲットの共通の横方向シフトに結合した高精度の物質モデルが、インラインモニタリング中のオーバーレイのシフトの同時分析を可能にする。これは、(CD散乱測定と比較して)散乱測定オーバーレイターゲットにおける異なる周期の自然の結果によるものである。この場合、ターゲットは、最適化に用いることができる多様な構造であることは明らかである。散乱測定オーバーレイターゲットを用いた他の作動モードは、オーバーレイの測定を可能にするようなターゲットにおける、多様な故意のシフトを用いることである。この場合、各差はデザインにおけるものであり、異なる構造として本方法によって使用可能な追加的で付随的な情報を提供する。
【0099】
図7A及び7Bを参照すると、シフト段階の三つの典型的なサイトに対する典型的なスペクトルフィッティングが示され、リソグラフィが例示される。両図において、同一の数を用いてサイトを識別する。第一のサイト71は、シリコン基板上のBarc層上の固体フォトレジスト層であり、第二のサイト72は、シリコン基板上の固体Barc層であり、第三のサイト73は、シリコン基板上のBarc層上のフォトレジスト格子である。図7Aは、最適化プロセス中の典型的な状況を示す。最適化のパラメータが、それらの感度の値に応じて選択される(スクリーンの領域75)。測定データ曲線対理論予測曲線に対するダイアグラム76が、分析された各サイトに対して示されていて、フィッティング値(つまり各サイトのメリット関数)が示されている。総メリット関数、つまり、図7Aのサイトのメリット関数の和(図示せず)は略11.19E−05である。
【0100】
図7Bは、最適化プロセスが完了した後のパラメータのスペクトルフィッティング状態を示す。総メリット関数74は3.83E−05に減少している。
【0101】
本発明の方法は、連続製造において実施される測定に対してSPWO法を適用することによって、物質パラメータ及び他の共通パラメータを自動的に洗練化するためにも用いることができ、プロセス制御の改善を可能にする。図8は、プロセス制御の実施として想定可能なもののフロー図を例示する。この実施において、二つのプロセスサイクルA及びBが、製造段階中に同時に実施される。両サイクルは、標準的な製造ウェーハに対して行われた測定を利用する。サイクルAは、標準的な高速プロセス制御サイクルであり、予め定められた既存の散乱測定モデル(段階120)を用いて、理論的な散乱測定データを得て、そのデータを、測定の解釈用に用いる(段階130)。このため、測定データが提供される(例えば、製造プロセス中に)(段階140):このデータは典型的に単一のサイト(または少数の組のサイト)からのものである。この手順(サイクルA)を、幾何学的パラメータ(例えばCD)のプロセス制御用に使用することができる。第二のより長いプロセス制御サイクルBは、同一の標準的な製造ウェーハからのインプットデータとして複数の試験サイトに対して行われた測定を利用する(段階160)。測定に必要とされるサイトの数は、典型的にはサイクルAで用いられるサイトの数よりも多い。次に、物質パラメータ及び/又は幾何学的パラメータ等のグローバル(共通)パラメータの最適化用の上述のSPWO法に従って、それらの測定を解釈する(段階150)。サイクルA及びBの処理手順は、同一又は異なるプロセッサ設備の異なるソフトウェアモジュールによって実施され得て、サイクルBが分離されたより長い制御ループ手順となる。散乱測定モデルを洗練化して、サイクルBの結果を連続的に供給して、グローバルパラメータ(例えば物質特性)における変化を徹底的に追及する。代わりに、それらの結果を用いて、プロセスの問題を通知することができる。ライブラリがサイクルAの解釈に用いられる場合、サイクルBのグローバルパラメータの顕著な偏差の検出は、ライブラリの再構築を自動的に起動させ得る。他の選択肢では、同一サイトを用いてサイクルAからデータを集めて、時間又はウェーハに対する座標の関数として一部のパラメータにおける変化に起因する典型的なデータの自然変動を利用するために、サイクルBが実施される。SWPO法を実施するための更なる選択肢は、異なる幾何学的パラメータを備えた複数の試験サイトを測定する代わりに、ウェーハに対する可変プロセス条件(例えば、焦点露光マトリクス)を用いて測定データの必要とされる変動を生じさせることである。
【0102】
本発明のSPWO法は、High‐K金属ゲート(HKMG,High‐K metal gate)等の特定の場合に使用可能である。この場合、ポリ層の下に存在している物質の分析は、高精度には特性評価することができない。特性評価の難しさの理由は、ポリシリコン層がUVにおいて不透明だからである。従来の追加積層における分析は、ポリシリコンの結晶性及び熱的条件がポリの下の金属及びポリ結晶成長に影響を与えることによっても、制限されている。熱サイクル及びアモルファス化を含む最終的なプロセス段階は一般的に、リソグラフィ段階の後で行われるので、光学的特性評価は、ブランケットや固体に対して可能なものではない。更に、ポリシリコンの不透明性が、追加積層の選択肢を用いたUV領域における物質の特性評価を妨げる。
【符号の説明】
【0103】
10 測定システム
12 制御ユニット
12A メモリ設備
12B プロセッサ設備
12C データ表示設備
14 光学測定ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周期パターンを有する複数のサイトを備えた多層構造を有する物体の特性を特性評価するための方法であって、
幾何学的パラメータ及び物質パラメータの少なくとも一つが共通である対応するサイトの幾何学的及び物質パラメータによって定義される異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを提供する段階と、
前記物体の少なくとも二つの異なる積層体に対して光学測定を実施して、各測定された積層体に対する幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す光学測定データを生成する段階と、
前記光学測定データを処理する段階とを備え、該処理する段階が、複数の測定された積層体に対する前記光学測定データを前記理論モデルに同時にフィッティングし、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にする段階を備える、方法。
【請求項2】
前記少なくとも二つの異なる積層体が、前記物体の異なる位置にそれぞれ関連している積層体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも二つの異なる積層体が、前記物体の同一の位置に関連していて前記物体に適用される異なるプロセス段階に対応している積層体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも二つの異なる積層体が少なくとも一つのパターン化サイトを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記幾何学的パラメータが層の厚さのパラメータを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記幾何学的パラメータがパターンのパラメータを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記パターンのパラメータが、ピッチ、臨界寸法、特徴部の形状、特徴部の高さ、デューティサイクルのうち少なくとも一つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記特徴部の形状が、壁角度、壁の形状、パターンの特徴部の丸みのうち少なくとも一つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光学測定が、スペクトル反射測定及び/又は偏光解析に基づいた測定を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記異なる積層体が、前記物体の製品領域内に位置している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記異なる積層体が、前記物体の製品領域の外側の試験領域内に位置している、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記異なる積層体が、一つ以上の異なるパターンのパラメータを備えた周期パターンを含む、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学測定が、前記物体の製造プロセスの複数の段階において実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光学測定を実施するために前記少なくとも二つの積層体を選択する段階を備えた請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記理論モデルを最適化するのに用いるために、前記物体の一つ以上のパラメータを選択する段階を備えた請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記選択する段階が、各選択されたパラメータの変化に対する前記理論モデルの感度を分析する段階と、該選択されたパラメータ間の相関を分析する段階とを備えた、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
測定用の積層体及び/又はパラメータの選択が、前記積層体を形成するためのマスクをデザインする前に行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
測定用の積層体及び/又はパラメータの選択が、マスク上に存在している既存のサイトに対して行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
前記相関が所定の条件を満たさないことを識別する際に、前記積層体のうち一つの幾何学的パラメータを少なくとも一つ変更し、測定されるパラメータ間の区別を可能にする段階を備えた請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記相関を分析する段階が共分散分析法を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記理論モデルを提供する段階が、前記光学測定によって得られる測定データに適合可能な適切な理論モデルを選択する段階を備える、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記理論モデルを提供する段階が、台形を用いてパターンをモデル化する段階を備える、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記光学測定データを同時にフィッティングすることが、多重パラメータフィッティング法である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記処理する段階が、対応する理論モデルによって、複数の測定された積層体から分離された少なくとも一つの積層体に対して光学測定データをフィッティングして、前記分離された少なくとも一つの積層体の少なくとも一つのパラメータを導出して、該分離された積層体の少なくとも一つのパラメータを用いて同時にフィッティングすることを実施する段階を備えた、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記理論モデルを最適化する段階を備え、該最適化する段階が、前記理論モデルと前記光学測定データとの間のフィッティングの程度に対する共通パラメータの寄与の評価に従って、共通パラメータをランク付けする段階を備えた、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記寄与の評価が、共通パラメータ間の相関及び/又はパラメータの変化に対するモデルの感度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記理論モデルが、製造される物体のデザインに対応して選択される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記理論モデルが、所望の特性を備えた前記物体を製造するために選択される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記理論モデルが、前記異なる積層体の回折特性に対応するサブモデルを備える、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
複数の異なる周期パターンを備えた構造を有する物体の特性を特性評価するのに用いられる測定システムであって、
光学測定を行い、前記物体の測定されるエリアに対する幾何学的パラメータ及び物質パラメータを示す光学測定データを生成するように構成された光学測定ユニットと、
前記測定ユニットに接続可能な制御ユニットとを備え、該制御ユニットが、
幾何学的パラメータ及び物質パラメータの少なくとも一つが共通である対応するサイトの幾何学的及び物質パラメータによって定義される多層構造の異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを備えた参照データを記憶するためのメモリ設備と、
前記光学測定データを処理及び分析するように構成され動作可能なプロセッサ設備とを備え、該処理及び分析することが、複数の測定された積層体に対する前記光学測定データを前記理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の構造の特性を特性評価することを可能にする、システム。
【請求項31】
複数の異なる周期パターンを備えた構造を有する物体の特性を特性評価するのに用いられるシステムであって、
前記物体の測定されるエリアの幾何学的パラメータ及び物質組成パラメータを示す光学測定データを受信するように構成された制御ユニットを備え、該制御ユニットが、少なくとも一つの幾何学的パラメータ及び/又は少なくとも一つの物質パラメータが共通である対応するサイトの幾何学的及び物質パラメータによって定義される多層構造の異なる積層体の光学特性を示す予測の理論モデルを備えた参照データを記憶するためのメモリ設備と、前記光学測定データを処理及び分析するように構成され動作可能なプロセッサ設備とを備え、該処理及び分析することが、複数の測定されたパターンに対する前記光学測定データを前記理論モデルに同時にフィッティングして、少なくとも一つの共通パラメータを導出することによって、単一の物体内の多層構造の特性を特性評価することを可能にする、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−533376(P2010−533376A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515659(P2010−515659)
【出願日】平成20年7月13日(2008.7.13)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000966
【国際公開番号】WO2009/007981
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509335926)ノヴァ・メジャーリング・インストゥルメンツ・リミテッド (2)