説明

パターン読取装置

【目的】搬送路を搬送される読取対象物の読取画像に、規制手段の読取画像がノイズとして入り込むのを防止する。
【目的】搬送路部材10上を矢印方向に搬送される読取対象物0に対して、照明手段16による照明と、撮像手段14による撮像が行われる読取領域において、規制手段12A,12Bによる規制幅を、読取領域の上手側より広く、且つ、記撮像手段14による撮像幅Xよりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はパターン読取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】各種カードや硬貨等の識別・判定を目的として、これらカード等を読取対象物として、その外形を含むパターンを自動的に読み取ることが行なわれている。このようなパターン読取を行なう装置として、従来、図6(a)(b)に示す如きものが意図されている。図6(a)はパターン読取装置を平面図的に示したものであり、図(b)は同図(a)のB−B断面図を示している。
【0003】これらの図において、符号10は搬送路部材を示している。硬貨等の読取対象物0は、この搬送路部材10上を定方向(矢印方向)へ搬送される。搬送路部材10の搬送路両側には規制手段12C,12Dが形成されている。規制手段12C,12Dは、図6(b)に規制手段12Cにより例示するように、搬送路表面に対して段差を持って凸状に縁設されている。読取対象物0は矢印方向へ搬送される際、搬送路表面において搬送方向に直交する方向には規制手段12C,12Dにより規制されるので、搬送路からの逸脱が防止される。
【0004】搬送路部材10の一部は、ガラス板等により透明部10Aとして形成されている。この透明部10Aの裏面側には1次元の撮像素子14が、その受光面を透明部裏面に密着させ、受光エレメントの配列方向が、規制手段12C,12Dによる規制幅方向に平行になるようにして配備され、この撮像素子14の両側には照明手段としてLED16が図6(b)の図面に直交する方向へ配列されている。
【0005】読取時には、照明手段を発光させて読取対象物0を矢印方向へ搬送する。読取対象物0は、照明手段により斜めに照明されつつ撮像素子14の受光部を横切り、撮像素子14により画素毎に信号化されて読み取られる。
【0006】このようなパターン読取装置に関して、従来、以下の如き問題があった。即ち、図6(a)において符号Xは、撮像素子14における受光エレメントの配列幅を示し、この幅Xは撮像素子14における撮像幅を与える。問題は、この撮像幅Xが規制手段12C,12Dによる規制幅よりも大きいことに起因して生じる。
【0007】規制手段12C,12Dによる規制幅は、撮像素子14の撮像幅より小さいため、読取対象物0の読取時には、読取対象物0の外形形状とともに規制手段12C,12Dのエッジの部分(搬送路部材表面から凸状に立ち上がる部分)も読み取られる。図6(c)は、読取対象物0を読み取って得られた読取画像を説明図的に示している。x方向は規制幅方向に対応し、y方向は搬送方向に対応する。符号01で示す部分は読取対象物の読取画像であり、その両側の符号12で示す部分が規制手段12C,12Dに対応する読取画像である。
【0008】このようにして得られる読取画像に基づき、種々の画像処理、例えば読取対象物0のx,y方向の外径の測定や中心座標の決定等が行なわれ、さらにこのように決定された外径や中心座標に応じて、読取対象物表面のパターンの切り出し等が行なわれる。
【0009】これら画像処理のうちで最も基本的な「x方向の外径測定」を説明すると、この測定は、例えば図6R>6(c)に示す読取画像に対して符号WDで示すようなウインドウを設定し、このウインドウWD内において、x方向につき画素幅でy方向の画素濃度の和を演算して「ヒストグラム」を形成する。このヒストグラムは例えば図6(d)に示すようになる。x方向の両端の部分に表れた「鋭い山状の部分」は読取画像の規制手段部分によるものである。
【0010】読取対象物0のx方向の外径は、このようにして得られたヒストグラムに於て例えばしきい値S1とヒストグラムとの交点のx座標の差として演算される。このとき、規制手段の読取画像と読取対象物の読取画像とが分離していれば問題はないが、図6(c)の例のように、規制手段の読取画像と読取対象物の読取画像とが接続していると、読取対象物のx方向の外径を規制手段の読取画像から分離するにはしきい値S2が必要であり、このようなしきい値S2を用いるとx方向の外径にΔの誤差が生じる。この誤差はy方向の外径や、中心座標等に影響して切り出す画像にも悪影響を与え、正しい画像の切り出しが出来なくなる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上述の如き事情に鑑みてなされたものであって、読取画像の画像処理に際して、規制手段によるノイズの影響を受けることのない新規なパターン読取装置の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明のパターン読取装置は「読取対象物の、外形を含むパターンを読み取る装置」であって、搬送路部材と、搬送手段と、規制手段と、照明手段と、撮像手段とを有する。
【0013】「搬送路部材」は、読取対象物を案内する。「搬送手段」は、読取対象物を搬送路部材の表面に沿って定方向へ搬送する。「規制手段」は、搬送路部材の搬送路両側に沿って、搬送路表面に対して段差を持って凸状に縁設され、搬送される読取対象物が搬送路から逸脱するのを防止する。
【0014】「照明手段」は、搬送路部材表面上を搬送される読取対象物を照明する。「撮像手段」は、照明手段により照明された読取対象物を撮像する。
【0015】読取対象物の照明と撮像とは「読取領域」において行なわれるが、規制手段による規制幅は、読取領域において「読取領域の上手側(読取対象物が読取領域に向かって搬送されてくる側)の規制幅」より広く、且つ、「撮像手段による規制幅方向の撮像幅」よりも大きく設定される。
【0016】換言すれば、規制手段による規制幅は、読取対象物の搬送路にそって当初は読取対象物を搬送するのに必要な範囲でなるべく狭く設定して、搬送部材表面における、読取対象物の搬送直交方向への「ぶれ」を可及的に小さくされる(これは従来から慣用されている)が、この発明では、読取領域における、規制手段の規制幅が規制幅方向における撮像幅より大きく拡大されるのである。規制手段による規制幅を大きく設定する場合、読取領域で規制手段を除去してもよい。
【0017】搬送路部材を搬送される読取対象物の照明と撮像とは、搬送路部材の表面側において行っても良いが、搬送路部材の裏面側で行っても良い。裏面側で照明と撮像を行う場合には、「搬送路部材の、少なくとも読取領域部分を透明とし、読取対象物の照明と撮像とを、搬送路部材の上記透明部分を介して行なう」ようにする(請求項2)。
【0018】搬送手段としては、「搬送路表面側に設けられたベルト搬送手段」を用いてもよいし(請求項3)、「読取対象物の搬送方向に向かって搬送路部材表面を水平方向に対して傾けること」をもって搬送手段としてもよい(請求項4)。後者の場合には、読取対象物は重力の作用により搬送される。
【0019】撮像手段としては1次元もしくは2次元の撮像素子を用いることができるが、請求項2の装置のように、撮像手段を搬送路部材の裏面側に設ける場合、「読取領域において搬送路部材の裏面に密接もしくは極く近接して」設けてもよいし(請求項5)、撮像手段を「1次元もしくは2次元の撮像素子と、読取対象物の像を撮像素子の受光面上に結像させるレンズとを有する」ように構成することもできる(請求項6)。この請求項6の場合、撮像手段は例えばCCDカメラとすることができる。
【0020】
【作用】上記のように、この発明では、読取領域における規制手段による規制幅が、撮像手段による、規制幅方向の撮像幅より大きいので、読取画像には規制手段の像が無い。
【0021】
【実施例】図1は、この発明を図6(a)(b)に示した従来例に適用した1実施例を示している。煩雑を避けるために、混同の虞れがないと思われるものに就いては図6におけると同一の符号を用いる。
【0022】図6の従来装置との差異は、読取対象物0(矢印方向へ搬送される)に対する照明と撮像とが行われる読取領域において、規制手段12A,12Bによる規制幅が、撮像素子14の撮像幅Xより大きく設定されている点である。従って、読取対象物0の読み取りを行うと読取画像は図1(c)に示すように、読取対象物0の画像IOのみとなり、外径測定や中心座標決定、パターン切り出し等を正確に行うことができる。
【0023】図1(a)において、長さYは、透明部分10Aの読取対象物搬送方向の長さである。この長さは、原理的には読取対象物の照明と撮像に必要な最小限の大きさであれば良い。しかし一般に、搬送路部材10の透明部10Aと不透明部との接続部分には微小な段差が生じやすく、搬送される読取対象物がこの微少な段差にひっかかると、搬送速度に変動を生じて読取に影響がでやすいので、上記長さYは、搬送方向における読取対象物の長さ以上に設定するのが良い。
【0024】図2に示す変形実施例のように、規制手段12a,12bによる規制幅を読取領域の下手側で再び狭めるようにしても良い。
【0025】図3は、図1の実施例における搬送手段の1例を示している。この実施例では搬送部材10は略水平に配備され、読取対象物0はベルト搬送手段により搬送される。ベルト搬送手段は、プーリー11,13と、これらに巻きかけられ搬送路表面にベルト面を近接させたベルト15と、プーリー13を介してベルト15を矢印方向へ回転させるモーター17により構成されている。搬送路に送り込まれた読取対象物0は、ベルト15の表面を圧接され、ベルト15の回転に伴い搬送路表面を搬送されて読み取られ、読取後はストッカー20に回収される。
【0026】図4は、図1の実施例において「搬送路部材10を水平方向に対して傾けた」例である。読取対象物0は、搬送路に送り込まれると重力の作用により搬送路表面を滑落しつつ搬送され、読み取られるとストッカー20に回収される。この例の場合、撮像手段と図示されない照明手段とを搬送路部材の表面側に配備することもできる。
【0027】図5の実施例は請求項6の装置の実施例で、規制手段12A,12B(規制手段12Aは図示されていない)により搬送方向を規制されつつ、搬送路部材10上を搬送される読取対象物0は、照明手段16により搬送路部材裏面側から斜めに照明され、照明部からの反射光はレンズLにより2次元の撮像素子30の受光面に結像される。レンズLと撮像素子30とは撮像手段を構成する。
【0028】撮像素子30は、結像した読取対象物像を取り込んで画素ごとの信号として出力する。この出力は画像処理装置40のA/D変換回路32でデジタル信号に変換されてメモリ34に記憶され、このメモリの記憶内容に基づき、外径測定・中心座標決定・パターン切り出し等の画像処理が演算部36で行われる。読取対象物0の搬送は、図3のようなベルト搬送手段により行ってもよいし、図4のように搬送路部材を傾けることにより重力により行っても良い。
【0029】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば新規なパターン読取装置を提供できる。この装置では上述のように、規制手段のエッジ部が読み取られないため、読取対象物のみを良好に読み取ることができ、読取画像に基づき、良好な画像処理を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の1実施例を説明するための図である。
【図2】図1の実施例の変形実施例を説明するための図である。
【図3】読取対象物の搬送の1例を示す図である。
【図4】読取対象物の搬送の別例を説明するための図である。
【図5】別実施例を説明するための図である。
【図6】従来技術とその問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
0 読取対象物
10 搬送路部材
12A,12B 規制手段
14 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】読取対象物の、外形を含むパターンを読み取る装置であって、読取対象物を案内する搬送路部材と、読取対象物を上記搬送路部材の表面に沿って定方向へ搬送する搬送手段と、上記搬送路部材の搬送路両側に沿って、上記搬送路表面に対して段差を持って凸状に縁設され、搬送される読取対象物が搬送路から逸脱するのを防止する規制手段と、上記搬送路部材表面上を搬送される読取対象物を照明する照明手段と、上記照明手段により照明された読取対象物を撮像する撮像手段とを有し、読取対象物の照明と撮像とが行なわれる読取領域において、上記規制手段による規制幅を、上記読取領域の上手側より広く、且つ、上記撮像手段による上記規制幅方向の撮像幅よりも大きく設定したことを特徴とするパターン読取装置。
【請求項2】請求項1において、搬送路部材の、少なくとも読取領域部分が透明であり、読取対象物の照明と撮像とが、搬送路部材の裏面側において、搬送路部材を介して行なわれることを特徴とする、パターン読取装置。
【請求項3】請求項1または2において、搬送手段が、搬送路表面側に設けられたベルト搬送手段であることを特徴とする、パターン読取装置。
【請求項4】請求項1または2において、搬送手段が、読取対象物の搬送方向に向かって搬送路部材表面を水平方向に対して傾けることであることを特徴とする、パターン読取装置。
【請求項5】請求項2または3または4において、撮像手段が1次元もしくは2次元の撮像素子であって、読取領域において搬送路部材の裏面に密接もしくは極く近接して設けられることを特徴とする、パターン読取装置。
【請求項6】請求項1または2または3または4において、撮像手段が、1次元もしくは2次元の撮像素子と、読取対象物の像を上記撮像素子の受光面上に結像させるレンズとを有することを特徴とする、パターン読取装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−143826
【公開日】平成5年(1993)6月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−307480
【出願日】平成3年(1991)11月22日
【出願人】(000002233)株式会社三協精機製作所 (1,337)
【出願人】(000001432)グローリー工業株式会社 (1,344)