説明

パター用グリップ

【課題】パターのシャフトに伝達される振動をプレーヤに効率よく伝達し、プレーヤがこの振動を直接的に感じ取ることによって、微妙なタッチでストロークを実現することが可能なパター用グリップを提供する。
【解決手段】パター用グリップG1は、パターのシャフトに取り付けられるグリップ本体1と、グリップ本体1の所定の位置に設けられる振動伝達体2、3、4とを備える。振動伝達体2、3、4は、グリップ本体1を厚さ方向に貫通しており、パターのシャフトの外表面に接触する内側部分と、グリップ本体1の外表面に露出する外側部分とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールを打つことによって、パターのシャフトに伝達される振動をプレーヤに効率良く伝達するパター用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パッティングのストロークを安定させる目的をもって、比較的直径が大きく比較的重量が重いグリップがパター用に開発され、商品化されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2005-246022号公報
特許文献1は、直径が5cm等の大型のパター用グリップを開示している。このようなグリップによれば、直径が比較的小さいグリップと比較して、グリップをより安定した状態で握ることができる。
【0004】
近年では、このような効果に加えて、パター用グリップを大型化することによって、グリップの重量が増加し、パッティングのストロークが安定するという効果が認められてきており、これらの効果に着目して、数多くの種類の大型のパター用グリップが製造され、販売されている。
【0005】
しかしながら、このような大型のパター用グリップを使用した場合、ゴルフボールを打つことによってパターのシャフトに伝達された振動が、この大型グリップによって大幅に吸収される傾向がある。このようにシャフトに伝達された振動がグリップによって吸収されると、プレーヤは、この振動を直接的に感じ取ることが困難になり、プレーヤ独自の微妙なタッチをもってストロークすることが困難になる。これらの理由により、一部のプレーヤには、このような大型のグリップは敬遠される場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、パターのシャフトに伝達される振動をプレーヤに効率よく伝達し、プレーヤがこの振動を直接的に感じ取ることによって、微妙なタッチでストロークを実現することが可能なパター用グリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係るパター用グリップは、パターのシャフトに取り付けられるグリップ本体と、前記グリップ本体の所定の位置に設けられる振動伝達体とを備えるパター用グリップであって、前記振動伝達体は、前記グリップ本体を厚さ方向に貫通しており、パターのシャフトの外表面に接触する内側部分と、前記グリップ本体の外表面に露出する外側部分とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパター用グリップによれば、グリップ本体に設けられた振動伝達体が、パターのシャフトの外表面に接触する内側部分と、パターグリップの外表面側に露出する外側部分とを有している。従って、プレーヤが、振動伝達体の外側部分に指が触れるようにしてグリップを握り、ストロークを行えば、パターのシャフトに伝達される振動が振動伝達体を介してプレーヤの指に伝達され、プレーヤがこの振動を直接感じ取ることによって、微妙なタッチでストロークを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパター用グリップを示す背面図である。
【図2】図1に示したパター用グリップの部分縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るパター用グリップを示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るパター用グリップを示す背面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るパター用グリップを示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るパター用グリップG1を、図1及び2を参照して説明する。
【0011】
本発明の第1実施形態に係るパター用グリップG1は、パターのシャフトSに取り付けられるグリップ本体1と、このグリップ本体1に設けられた振動伝達体2、3、4とから構成されている。
【0012】
グリップ本体1は、従来のグリップと同様に、パターのシャフトSの後端部分が挿入可能なように筒状に形成されている。このグリップ本体1は、プレーヤがこれを握った際に、滑り難く、柔軟な感触が得られるように、合成樹脂から形成されている。
【0013】
振動伝達体2、3、4は、各々、円筒形状に形成されており、グリップ本体1の下面側において、その長さ方向のほぼ中央の位置に、等間隔をあけて設けられている。振動伝達体2、3、4は、グリップ本体1を形成している合成樹脂とは異なる材料、例えば、ステンレス鋼等の金属から形成されている。ここで、ステンレス鋼は、合成樹脂よりも高い硬度を有しており、また、高い密度を有している。従って、前者は後者よりも振動伝達特性に優れた材料であると言える。
【0014】
振動伝達体2、3、4は、一端側に、内側部分2a、3a、4aをそれぞれ有しており、他端側に、外側部分2b、3b、4bをそれぞれ有している。振動伝達体2、3、4は、図2に示すように、グリップ本体1を厚さ方向に貫通しており、各々の内側部分2a、3a、4aはパターのシャフトSの外表面にそれぞれ接触しており、各々の外側部分2b、3b、4bは、グリップ本体1の外表面に露出して、円滑な面を形成している。振動伝達体2、3、4の各々の内側部分2a、3a、4aは、シャフトSの外表面に一致するように、凹面状に形成されることが望ましい。
【0015】
上述したように、振動伝達体2、3、4を備えたパター用グリップは、従来から公知のインサート成型法によって製造される。即ち、金型内の所定の位置に、予め振動伝達体2、3、4を配置し、この金型内に溶融樹脂を注入すればよい。
【0016】
次に、振動伝達体2、3、4が設けられる位置について以下に説明する。
【0017】
振動伝達体2、3、4は、パターのヘッドでゴルフボールを打った場合に生ずる反動を、シャフトSを介してプレーヤの手に伝達することが目的である。従って、振動伝達体2、3、4が設けられる位置は、プレーヤがグリップを素手で握った際に、人差指、中指及び薬指の各々の内側部分が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように設定することが望ましい。
【0018】
プロゴルファー等がパッティングを行う場合には、ゴルフグローブを外して微妙なタッチを重要視する傾向があるが、一般的なアベレージゴルファーにおいては、ゴルフグローブを装着したまま、パッティングを行う場合が多い。この傾向に鑑み、例えば、右手を左手よりも低い位置に構える、所謂、レギュラーグリップを行う右利きのゴルファーに関して言えば、右手の人差指、中指、薬指のそれぞれの内側が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように、振動伝達体2、3、4の位置をグリップ本体1の下面側において、その長さ方向のほぼ中央の位置に設定することが望ましい。
【0019】
また、右手を左手よりも高い位置に構える、所謂、クロスハンドグリップを行う右利きのゴルファーに関して言えば、右手の人差指、中指、薬指のそれぞれの内側が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように、振動伝達体2、3、4の位置をグリップ本体1の下面側において、その長さ方向の後方寄りの位置に設定することが望ましい。
【0020】
また、左手を右手よりも低い位置に構える、所謂、レギュラーグリップを行う左利きのゴルファーに関して言えば、左手の人差指、中指、薬指のそれぞれの内側が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように、振動伝達体2、3、4の位置をグリップ本体1の下面側において、その長さ方向のほぼ中央の位置に設定することが望ましい。
【0021】
また、左手を右手よりも高い位置に構える、所謂、クロスハンドグリップを行う左利きのゴルファーに関して言えば、右手の人差指、中指、薬指のそれぞれの内側が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように、振動伝達体2、3、4の位置をグリップ本体1の下面側において、その長さ方向の後方寄りの位置に設定することが望ましい。
【0022】
本発明に係る上述したパター用グリップによれば、プレーヤが、振動伝達体2、3、4の外側部分に指が触れるようにしてグリップを握り、ストロークを行うことにより、パターのヘッドでゴルフボールを打った場合に生ずる反動に起因して、同パターのシャフトに伝達される振動が振動伝達体を介してプレーヤの指に伝達され、プレーヤがこの振動を直接感じ取ることによって、微妙なタッチでストロークを実現することが可能になる。特に、グリップを大型のものとして製造した場合であっても、パターのシャフトに伝達される振動が振動伝達体を介してプレーヤの指に確実に伝達され、大型グリップそのものによる効果を発揮することができることは勿論、プレーヤが望んでいる微妙なタッチによるストロークが実現され、安定したパッティングを行うことができる。
【0023】
上述した本発明に係るパター用グリップにおいては、グリップ本体1を合成樹脂から形成するものとして説明したが、合成ゴムから形成することも可能である。
【0024】
また、振動伝達体2、3、4の材料として、ステンレス鋼等の金属が用いられるものとして説明したが、例えば、グリップ本体1を合成樹脂から形成し、振動伝達体2、3、4を、上記合成樹脂よりも高い硬度を有する合成樹脂から形成することも可能である。
【0025】
更に、グリップ本体1を所定の密度を有する合成樹脂から形成し、振動伝達体2、3、4を、上記合成樹脂よりも高い密度を有する合成樹脂から形成することも可能である。
【0026】
更に、グリップ本体1を所定の合成樹脂から形成し、振動伝達体の材料として、上記所定の合成樹脂と同一又は異なる合成樹脂であって、粉状又は粒状の金属を混入したものを用いることも可能である。粉状又は粒状の金属に代えて、粉状又は粒状の硬質合成樹脂を用いることも可能である。
【0027】
また、上述した実施形態においては、振動伝達体2、3、4は、グリップ本体1の下面側に設けられ、プレーヤがグリップを素手で握った際に、人差指、中指及び薬指の各々の内側部分が振動伝達体2、3、4に直接的に接触し得るように構成されるものとして説明したが、単一又は複数の振動伝達体をグリップ本体1の上面側に設け、プレーヤがグリップを素手で握った際に、親指の内側部分が振動伝達体に直接的に接触し得るように構成することも可能である。
【0028】
振動伝達体2、3、4は、背面図としての図1から明らかなように、円形の形状を有しているものとして説明したが、その形状は任意であり、例えば、楕円形状、三角形状、四角形状、又は、五画形以上の多角形状であってもよい。
【0029】
また、振動伝達体2、3、4は、各々、単一の部材から構成されるものとして説明したが、複数の部材、例えば、グリップ本体1の内側に配置される内側部材と、グリップ本体1の外側に配置される外側部材とから構成してもよい。この場合、内側部材と外側部材とは、接着等によって相互に固定するものでもよく、また、接着することなしに、相互に接触させて配置するものでもよい。
【0030】
尚、グリップG1をパターのシャフトSに取り付ける際、前者は両面接着テープ(図示せず)によって後者に取り付けられるが、できるだけ厚さが小さい両面接着テープを使用することが好ましい。このように薄い両面接着テープを用いれば、シャフトに伝達された振動が、この両面接着テープによって減衰されることは実質的になく、振動伝達体2、3、4の振動伝達機能を十分に発揮することができる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2を、図3を参照して説明する。
【0031】
本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2は、振動伝達体5の縦断面形状が異なっていることを除き、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一である。即ち、本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2の振動伝達体5は、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1の振動伝達体2、3、4と同様に、一端側に、内側部分5aを有しており、他端側に、外側部分5bを有しているが、内側部分5a側に内側フランジ5cを更に有しており、外側部分5b側に外側フランジ5dを有している。その結果として、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1の振動伝達体2、3、4の各々は、図2に示すように、縦断面において矩形状の断面形状を呈しているが、本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2の振動伝達体5は、縦断面においてH型の断面形状を呈している。
【0032】
上述した以外は、本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2は、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一であるため、その具体的な構造に関する説明を省略する。
【0033】
上述した本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2によれば、内側フランジ5c及び外側フランジ5dによって、内側部分5a及び外側部分5bの面積を増大させることができ、パターのヘッドでゴルフボールを打った場合に生ずる反動に起因して、同パターのシャフトに伝達される振動を振動伝達体5を介してプレーヤの指により効率的に伝達することができる。
【0034】
また、本発明の第2実施形態に係るパター用グリップG2の構造を採用した場合には、振動伝達体5が挿入可能な孔を有するグリップ本体1を形成し、別体として予め形成された振動伝達体5を上記孔に挿入することによって、パター用グリップG2を組み立てることが可能である。これにより、インサート成型法を用いることなく、グリップ本体1を形成することができ、インサート成型法に起因する問題点を解消することができる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係るパター用グリップG3を、図4を参照して説明する。
【0035】
本発明の第3実施形態に係るパター用グリップG3は、振動伝達体の数が異なっていることを除き、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一である。即ち、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1は、図1に示すように3個の振動伝達体2、3、4を有しているが、本発明の第3実施形態に係るパター用グリップG3に関しては、グリップ本体1の下面側において、その長さ方向の前方側の位置に、3個の振動伝達体6x、6y、6zが設けられ、その長さ方向の中央側の位置に、3個の振動伝達体7x、7y、7zが設けられ、その長さ方向の後方側の位置に、3個の振動伝達体8x、8y、8zが設けられている。
【0036】
上述した以外は、本発明の第3実施形態に係るパター用グリップG3は、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一であるため、その具体的な構造に関する説明を省略する。
【0037】
上述した本発明の第3実施形態に係るパター用グリップG3によれば、振動伝達体が、グリップ本体1の下面側において、その長さ方向の前方側、中央側及び後方側のそれぞれの領域において、複数個に分散した状態で存在しているため、プレーヤが握ったグリップの位置が、所定の位置から若干ずれた場合であっても、プレーヤの人差指を3個の振動伝達体6x、6y、6zのうちの少なくとも1つに接触させ、その中指を3個の振動伝達体7x、7y、7zのうちの少なくとも1つに接触させ、その薬指を3個の振動伝達体8x、8y、8zのうちの少なくとも1つに接触させて、パターのヘッドでゴルフボールを打った場合に生ずる反動に起因して、同パターのシャフトに伝達される振動を振動伝達体を介してプレーヤの指により効率的に伝達することができる。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係るパター用グリップG4を、図5を参照して説明する。
【0038】
本発明の第4実施形態に係るパター用グリップG4は、振動伝達体の形状が異なっていることを除き、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一である。即ち、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1は、図1に示すように3個の振動伝達体2、3、4を有しているが、本発明の第4実施形態に係るパター用グリップG4は、図5に示すように、単一の細長い振動伝達体9を有している。この振動伝達体9は、グリップ本体1の下面側において、その長さ方向のほぼ中央の位置に所定の長さに亘って形成されている。この所定の長さは、任意であるが、プレーヤの人差指、中指及び薬指の幅の合計量よりも若干大きいことが望ましい。
【0039】
上述した以外は、本発明の第4実施形態に係るパター用グリップG4は、本発明の上述した第1実施形態に係るパター用グリップG1と同一であるため、その具体的な構造に関する説明を省略する。
【0040】
上述した本発明の第4実施形態に係るパター用グリップG4によれば、振動伝達体9が、グリップ本体1の下面側において、その長さ方向のほぼ中央の位置に所定の長さに亘って形成されているため、プレーヤが握ったグリップの位置が、所定の位置から若干ずれた場合であっても、プレーヤの人差指、中指及び薬指の各々を、振動伝達体9に接触させて、パターのヘッドでゴルフボールを打った場合に生ずる反動に起因して、同パターのシャフトに伝達される振動を振動伝達体を介してプレーヤの指により効率的に伝達することができる。
【符号の説明】
【0041】
G1、G2、G3、G4 パター用グリップ
1 グリップ本体
2、3、4、5、6x〜6z、7x〜7z、8x〜8z 振動伝達体
2a、3a、4a、5a 内側部分
2b、3b、4b、5b 外側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターのシャフトに取り付けられるグリップ本体と、前記グリップ本体の所定の位置に設けられる振動伝達体とを備えるパター用グリップであって、
前記振動伝達体は、前記グリップ本体を厚さ方向に貫通しており、パターのシャフトの外表面に接触する内側部分と、前記グリップ本体の外表面に露出する外側部分とを有することを特徴とするパター用グリップ。
【請求項2】
前記振動伝達体は、前記グリップ本体を形成する材料と異なる材料から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のパター用グリップ。
【請求項3】
前記振動伝達体は、前記グリップ本体よりも高い硬度を有していることを特徴とする、請求項1に記載のパター用グリップ。
【請求項4】
前記振動伝達体は、前記グリップ本体よりも高い密度を有していることを特徴とする、請求項1に記載のパター用グリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66575(P2013−66575A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206790(P2011−206790)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(502288702)
【出願人】(597036617)
【Fターム(参考)】