説明

パチンコ遊技機の遊技盤

【課題】必要な強度を有しつつ製造コストを抑制することができるパチンコ遊技機の遊技盤を提供する。
【解決手段】表面αに複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るパチンコ遊技機の遊技盤において、厚み方向に複数の層を有した樹脂製板状部材1から成るものとされ、当該樹脂製板状部材1は、その表面α及び裏面βをそれぞれ含む表面層2及び裏面層3と、当該表面層2と裏面層3との間の中間層4とから成るものとされた遊技盤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るパチンコ遊技機の遊技盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機は、近時においては、板状の木材を加工した遊技盤に代えて、所定の樹脂材を成形して成る遊技盤が提供されるに至っている。かかる遊技盤は、所定の強度を有することから比較的大きな肉厚寸法の板状部材を用いる必要が生じるが、このような板状部材を射出成形等で成形する場合、冷却及び固化まで長時間が必要とされてしまうとともに、ひけ等の発生により平坦な表面を維持するのが困難になってしまう。故に、従来より、所定強度を有したブロック状の樹脂製板材に対してNC加工機等にて切削加工を行い、所望形状の遊技盤を得ることが行われている。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のパチンコ遊技機の遊技盤においては、所定強度を有したブロック状の樹脂製板材に対してNC加工機等にて切削加工を施すことにより得られたいたので、製造コストが嵩んでしまうとともに切削屑が大量に生じてしまうという問題があった。即ち、近時においては、液晶表示器などが設置される役物等が大型化されてきており、従来のものに比べ、遊技盤における切削加工すべき部位が大きくなりつつあるため、加工に時間が掛かって製造コストが嵩んでしまうのに加え、大量に生じた切削屑を廃棄するコストも必要とされるのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、必要な強度を有しつつ製造コストを抑制することができるパチンコ遊技機の遊技盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、表面に複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るパチンコ遊技機の遊技盤において、厚み方向に複数の層を有した樹脂製板状部材から成ることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパチンコ遊技機の遊技盤において、前記樹脂製板状部材は、互いに物性が異なる樹脂材の層を有したことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のパチンコ遊技機の遊技盤において、前記樹脂製板状部材は、意匠的加工が施された意匠面又は機能的加工が施された機能部位が成形されて成ることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のパチンコ遊技機の遊技盤において、前記樹脂製板状部材は、その表面及び裏面をそれぞれ含む表面層及び裏面層と、当該表面層と裏面層との間の中間層とから成り、当該表面層及び裏面層と前記中間層とで互いに硬度を異ならせたことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のパチンコ遊技機の遊技盤において、前記表面層よりも前記中間層の方が軟質な樹脂材から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、厚み方向に複数の層を有した樹脂製板状部材から成るので、必要な強度を有しつつ製造コストを抑制することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、樹脂製板状部材は、互いに物性が異なる樹脂材の層を有したので、その物性に応じた任意特性を有した遊技盤を提供することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、樹脂製板状部材は、意匠的加工が施された意匠面又は機能的加工が施された機能部位が成形されて成るので、必要な意匠面及び機能部位を有した遊技盤を得ることができるとともにその製造コストを抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、樹脂製板状部材は、その表面及び裏面をそれぞれ含む表面層及び裏面層と、当該表面層と裏面層との間の中間層とから成り、当該表面層及び裏面層と中間層とで互いに硬度を異ならせたので、その硬度に応じた任意特性を有した3層構造の遊技盤を提供することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、表面層よりも中間層の方が軟質な樹脂材から成るので、遊技盤の表面に突出形成される釘を安定且つ確実に固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤を示す平面図及び正面図
【図2】同パチンコ遊技機の遊技盤を示す断面図
【図3】同パチンコ遊技機の遊技盤であって表面層に意匠面を施したものを示す断面図
【図4】同パチンコ遊技機の遊技盤であって中間層に意匠面を施したものを示す断面図
【図5】同パチンコ遊技機の遊技盤であって裏面層に機能部位(ボス部)を施したものを示す断面図
【図6】同パチンコ遊技機の遊技盤であって裏面層に機能部位(リブ)を施したものを示す断面図
【図7】同パチンコ遊技機の遊技盤であって裏面層に機能部位(フック)を施したものを示す断面図
【図8】本発明の他の実施形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤は、表面に複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るもので、図1、2に示すように、厚み方向(図2中上下方向)に複数の層(本実施形態においては、表面層2、裏面層3及び中間層4の3つの層)を有した樹脂製板状部材1から成るものである。
【0017】
樹脂製板状部材1は、透明又は半透明なアクリル樹脂を成形して成るもので、役物が設置される任意形状の設置孔1aと、本遊技盤を遊技機に取り付けるためのボルト等が挿通される取付孔1bと、遊技機側の所定部品との干渉を避けるための形状から成る切欠き1cと、釘K(図2参照)を打って固定させるための釘孔1dとを有している。尚、かかる樹脂製板状部材1の厚みは、全体として所定の強度が得られるよう設定されている。
【0018】
ここで、本実施形態に係る樹脂製板状部材1は、その表面α及び裏面βをそれぞれ含む表面層2及び裏面層3と、当該表面層2と裏面層3との間の中間層4とから成り、当該表面層2及び裏面層3と中間層4とで互いに硬度(硬さ)を異ならせたものとされている。例えば、表面層2よりも中間層4の方が軟質な樹脂材から成るものとすることができ、その場合、遊技盤の表面(即ち、樹脂製板状部材1の表面α)に突出形成される釘Kを安定且つ確実に固定させることができる。
【0019】
反対に、表面層2よりも中間層4の方が硬質(即ち、中間層4よりも表面層2の方が軟質)な樹脂材から成る樹脂製板状部材1とすることができる。また、互いに硬度を異ならせたものに限らず、互いに物性(硬度以外の物性であって粘性や耐摩耗性等)が異なる樹脂材の層を有した樹脂製板状部材1とすることができる。その場合、それぞれの層における樹脂材の種類を異ならせるものとすることができ、或いは同種の樹脂に所定の添加剤等を添加することにより物性を異ならせたものとすることもできる。
【0020】
更に、樹脂製板状部材1は、意匠的加工が施された意匠面が成形されて成るものであってもよく、例えば図3に示すように、表面に凹凸加工を施して外部の光を乱反射させることにより意匠性を付与させた意匠面を有した表面層2’としてもよい。また、図4に示すように、凹凸加工を施して外部の光を乱反射させることにより意匠性を付与させた意匠面を有した中間層4’とすることもできる。この場合、表面層2の表面αを平坦としつつ意匠面を具備させることができる。尚、裏面層3に対して意匠面を形成するようにしてもよい。
【0021】
ここで、本発明における意匠面とは、凹凸加工(エンボス加工やブラスト加工等を含む)に限定されず、視覚的効果を期待できる他の形態のもの(樹脂製板状部材1を構成する何れかの層に成形された視覚的演出効果が期待できるもの)であってもよく、例えば所定の色彩や模様を帯びたもの(中間層4に着色させたり或いは表面層2とは異なる材質のものを用いたりしたもの)或いは所定のキャラクタを模した形状が施されたもの等であってもよい。これにより、所望部位に対して或いは盤面全域に亘って意匠面を一体的に形成させた遊技盤を提供することができる。
【0022】
更に、樹脂製板状部材1は、機能的加工が施された機能部位が成形されて成るものであってもよく、例えば図5に示すように、裏面に例えば遊技盤(樹脂製板状部材1)をパチンコ遊技機に取り付けるためのネジ孔が形成されるボス部5が一体成形された裏面層3’を具備したもの、図6に示すように、遊技盤(樹脂製板状部材1)に取り付けられる部品(例えば、役物内の構成要素を動作させるためのアクチュエータ等)を位置決めするためのリブ6が一体成形された裏面層3’を具備したもの、或いは図7に示すように、遊技盤(樹脂製板状部材1)に取り付けられる部品から延びたハーネス等を把持して押さえるフック7が一体成形された裏面層3’を具備したものとしてもよい。
【0023】
ここで、本発明における機能部位とは、上記ボス部5、リブ6及びフック7が相当するものであるが、これらのものに限定されず、所定の機能を果たす他の形態のもの(樹脂製板状部材1を構成する表面層2又は中間層4に形成してもよい)であってもよく、例えば遊技盤(樹脂製板状部材1)に取り付けられる部品を挟持して固定させるためのクランプ等であってもよい。これにより、所望部位に機能性を有した機能部位を一体的に形成させた遊技盤を提供することができる。
【0024】
本実施形態によれば、厚み方向に複数の層(3層)を有した樹脂製板状部材1から成るので、必要な強度を有しつつ製造コストを抑制することができる。樹脂製板状部材1を構成する複数の層は、それぞれ別個に成形したものを接着剤等で貼着させるもの、或いはインサート成形にて得られるもの等、何れの製造方法を採用してもよい。また、樹脂製板状部材1は、互いに物性が異なる樹脂材の層を有したものとすることができるので、その物性に応じた任意特性を有した遊技盤を提供することができる。
【0025】
更に、本実施形態においては、樹脂製板状部材1は、その表面及び裏面を含む表面層2及び裏面層3と、当該表面層2と裏面層3との間の中間層4とから成り、当該表面層2及び裏面層3と中間層4とで互いに硬度を異ならせたので、その硬度に応じた任意特性を有した3層構造の遊技盤を提供することができる。特に、本実施形態においては、表面層2よりも中間層4の方が軟質な樹脂材から成るので、遊技盤の表面に突出形成される釘Kを安定且つ確実に固定させることができる。
【0026】
また更に、本実施形態によれば、樹脂製板状部材1は、意匠的加工が施された意匠面又は機能的加工が施された機能部位が成形されて成るので、必要な意匠面及び機能部位を有した遊技盤を得ることができるとともにその製造コストを抑制することができる。尚、意匠面及び機能部位は、樹脂製板状部材1を構成する何れの層に形成してもよいが、例えば中間層4や裏面層3に意匠面を施した場合、その意匠面を視認させるべく、それより上面の層は透明或いは半透明とする必要がある。
【0027】
以上、本実施形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば図8に示すように厚み方向に2つの層を有した樹脂製板状部材1’としてもよく、更には、厚み方向に4層以上有した樹脂製板状部材としてもよい。また、樹脂製板状部材を構成する樹脂材は、アクリル樹脂が好ましいが、所望機能及び意匠を有した他の樹脂材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
表面に複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るパチンコ遊技機の遊技盤において、厚み方向に複数の層を有した樹脂製板状部材から成るものであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 樹脂製板状部材
2 表面層
3 裏面層
4 中間層
5 ボス部(機能部位)
6 リブ(機能部位)
7 フック(機能部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の釘及び種々役物が形成されて遊技球が弾き出されるとともに、所定の樹脂材を成形して成るパチンコ遊技機の遊技盤において、厚み方向に複数の層を有した樹脂製板状部材から成ることを特徴とするパチンコ遊技機の遊技盤。
【請求項2】
前記樹脂製板状部材は、互いに物性が異なる樹脂材の層を有したことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の遊技盤。
【請求項3】
前記樹脂製板状部材は、意匠的加工が施された意匠面又は機能的加工が施された機能部位が成形されて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパチンコ遊技機の遊技盤。
【請求項4】
前記樹脂製板状部材は、その表面及び裏面をそれぞれ含む表面層及び裏面層と、当該表面層と裏面層との間の中間層とから成り、当該表面層及び裏面層と前記中間層とで互いに硬度を異ならせたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のパチンコ遊技機の遊技盤。
【請求項5】
前記表面層よりも前記中間層の方が軟質な樹脂材から成ることを特徴とする請求項4記載のパチンコ遊技機の遊技盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62270(P2011−62270A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213965(P2009−213965)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000108926)ダイコー化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】