説明

パッド付き止血帯

【課題】 熟練しなくても簡単に傷口を圧迫でき、しかも、適用した後に不必要なかさばりの生じないパッド付き止血帯を提供する。
【解決手段】 このパッド付き止血帯は、織物帯1と、織物帯1の一方端部の内面に貼合されたパッド4と、織物帯1の一方端部の外面に貼合された第一係止片2とからなる。織物帯1は、長手方向に走行する弾性糸で織成されてなり、長手方向に強力な伸縮性を持つ。パッド4は、傷口に当てられるものであり、織物帯1の長手方向に伸縮性を有する伸縮ネットよりなるシートと、コットンウェブとが交絡一体化されてなる不織布を具備している。第一係止片2は、その非貼合面に係止部材が設けられており、織物帯1の内面に係止しうるものである。また、織物帯1の他方端部の外面に、他方端縁を超えて貼合された第二係止片3を具備していてもよい。他方端縁を超えた第二係止片3の内面には、織物帯1の外面に係止しうる係止部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失血を防止するための止血帯に関し、傷口からの血液を吸収しうるパッドを付けた止血帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、傷口を覆うと共に血管を圧迫して失血を防止するために三角巾等が用いられている。しかしながら、三角巾等は、傷口や傷の状態によって、巻き方や結び方に技術を要し、熟練者しか使用できないという憾みがあった。
【0003】
このため、傷口に巻回しただけで止血しうる、図1に示したようなパッド付き止血帯が提案されている(特許文献1)。このパッド付き止血帯は、帯104の一方端部の内面にパッド102が貼合されており、一方端部の外面に特定形状の圧迫部材106が設けられており、圧迫部材106に帯を通すことによって、傷口を圧迫し止血するものである。
【0004】
【特許文献1】特表2000−507835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているパッド付き止血帯は、特定形状の圧迫部材106を用いて圧迫するものであるため、圧迫部材106への帯の通し方を熟練しなければ使用しにくいということがあった。また、特定形状の圧迫部材106を用いているため、止血帯を傷口に適用した後にかさばるということもあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、圧迫部材の如き特定形状のものを採用せず、熟練しなくても簡単に傷口を圧迫でき、しかも、適用した後に不必要なかさばりの生じないパッド付き止血帯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、傷口に巻回する帯及び傷口に当てるパッドの両者に伸縮性を与え,この伸縮性によって傷口を圧迫しうるように工夫したものである。すなわち、本発明は、長手方向に走行する弾性糸で織成された織物帯と、前記織物帯の一方端部の内面に貼合され、傷口に当てられるパッドと、前記織物帯の前記一方端部の外面に貼合され、前記織物帯内面に係止しうる係止部材を非貼合面に備えた第一係止片とからなり、前記パッドは、前記織物帯の長手方向に伸縮性を有する伸縮ネットよりなるシートと、コットンウェブとが交絡一体化されてなる不織布を具備することを特徴とするパッド付き止血帯に関するものである。
【0008】
まず、本発明で用いる織物帯1について説明する。織物帯1は、傷口上に巻回されるものであり、平織組織や綾織組織等の任意の織組織で織成されてなる。そして、織物帯1は、その長手方向に走行する弾性糸を用いて織成されている。弾性糸を用いることによって、織物帯1は長手方向に良好な伸縮性を有するのである。弾性糸としては、一般的にゴム糸が用いられるが、好ましくはポリウレタンモノフィラメント糸が用いられ、より好ましくはポリウレタンモノフィラメント糸の外周面がポリエステルマルチフィラメント糸等で被覆された被覆糸が用いられる。被覆するポリエステルマルチフィラメント糸等は、ポリウレタンモノフィラメント糸の伸縮性に良好に追随するように、嵩高加工糸であるのが好ましい。なお、被覆糸を用いる理由は、織成の際に筬等の織機に弾性糸が引っ掛からないようにするためであり、織成をスムースに行うためである。
【0009】
織物帯1の長手方向を経方向とした場合、弾性糸が経糸になる。織物帯1の幅方向は伸縮性を必要としないため、一般的に非弾性糸が緯糸として用いられる。本発明に用いる織物帯1は、以下のようにして織成されているのが最も好ましい。すなわち、経糸として、弾性糸と、弾性糸間に非弾性の嵩高加工糸とが用いられているのが好ましい。嵩高加工糸は弾性糸のような強力な伸縮性はないが、弾性糸の伸縮性に追随する程度の伸縮性がある。したがって、織成中は弾性糸と嵩高加工糸は同等に伸びた状態となっているが、織成後に弾性糸が縮むと、嵩高加工糸も縮むことになるが、この際に嵩高加工糸は膨らんだ状態となって縮むことになる。したがって、弾性糸の縮み性によって、嵩高加工糸が織物帯1の外面及び/又は内面に露出することになる。嵩高加工糸の露出は、織物帯1に貼合された第一係止片2及び第二係止片3を、織物帯1の内面又は外面に係止しやすくなるという利点がある。また、織物帯1として、その外面及び/又は内面にパイルを設けたパイル織物を用いるのも、第一係止片2及び第二係止片3を係止しやすくなるので好ましい。
【0010】
織物帯1の一方端部の内面には、パッド4(図面中の濃墨部)が貼合されている。パッド4の貼合は、任意の手段で行えるが、一般的にはパッド4の外周を織物帯1に間欠的に縫製するのが好ましい。特に、織物帯1の長手方向への縫製は間欠的に行って、長手方向に対する伸縮性を阻害しないようにするのが好ましい。このパッド4は傷口に当てられるものであり、血液の吸収性に優れたものである。本発明の一つの特徴は、パッド4も織物帯1と同等の伸縮性を持つことである。このため、パッド4は、少なくとも織物帯1の長手方向に伸縮性を有する伸縮ネットよりなるシートと、コットンウェブとが交絡一体化されてなる不織布を採用している。すなわち、伸縮ネットによって織物帯1と同等の伸縮性を与えることができ、コットンウェブによって血液の吸収性を与えることができるのである。パッド4は、この不織布が1枚であっても差し支えないが、一般的に2〜10枚程度が積層された積層物を採用するのが好ましい。パッド4の伸縮性を強力にすると共に、血液の吸収性を向上させるためである。伸縮ネットよりなるシートとコットンウェブとを交絡一体化させた不織布を得る方法としては、シートの両面又は片面にコットン繊維集合体を積層した後に、高圧水流をコットン繊維集合体に向けて噴射することにより、コットン繊維同士を交絡させると共に、伸縮ネットの目を通してコットン繊維を伸縮ネットと交絡させる方法を採用するのが好ましい。
【0011】
また、伸縮ネットよりなるシートとしては、伸縮ネットに長繊維ウェブが貼合されてなるシートを用いることも好ましい。この長繊維ウェブは、延伸熱可塑性長繊維が幅方向に実質的に一方向に配列されてなるものである。かかるシートを用いる理由は、不織布を製造しやすくするためであり、特願2010−203820号の明細書に詳述されている。具体的に説明すれば、以下のとおりである。伸縮ネットよりなるシートとコットン繊維集合体を積層して、高圧水流を施すとき、搬送方向に伸縮ネットが伸びると均一な不織布が得られにくくなる。伸縮ネットとして、搬送方向及び搬送方向に対して直交する方向の両方に伸縮性を有するものを採用した場合は、当然に搬送方向に伸縮ネットが伸びるが、搬送方向に伸縮性がなく、搬送方向に対して直交する方向にのみ伸縮性を有するものを採用した場合であっても、搬送方向に均一な外力が負荷されない場合、伸縮ネットが搬送方向に部分的に伸びて歪むことになる。したがって、搬送方向に伸縮ネットが伸びないように、搬送方向に配列されている延伸熱可塑性長繊維よりなる長繊維ウェブを伸縮ネットに貼合したシートに、コットン繊維集合体を積層して高圧水流を施して不織布を得るのである。なお、このようにして得られた不織布は、製造時の搬送方向が幅方向となり、搬送方向と直交する方向が長手方向となって、織物帯1の内面に貼合される。
【0012】
パッド4が貼合された織物帯1の箇所の反対面(すなわち外面)には、第一係止片2が貼合されている。第一係止片2は、織物帯1及びパッド4の伸縮性を阻害しないように、なるべく小さな片を用いるのが好ましい。第一係止片2の貼合も任意の手段で行えるが、一般的には第一係止片2を織物帯1に縫製するのが好ましい。第一係止片2の非貼合面には、係止部材(図中の薄墨部)が設けられている。係止部材は、織物帯1の内面に係止しうるものであれば任意であるが、強力な係止を必要とすることが多いので、一般的に面ファスナーの鉤部材を用いるのが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、織物帯1の他方端部(パッド4が貼合されている一方端部の反対側の端部)に、第二係止片3が貼合されていてもよい。たとえば、他方端部の内面に第二係止片3を貼合し、非貼合面に係止部材が設けられていてもよい。好ましくは、第二係止片3は、図面に示したような態様で貼合されているのがよい。すなわち、織物帯1の他方端部の外面に、他方端縁を超えて第二係止片3を貼合し、他方端縁を超えた第二係止片3の内面に、織物帯1の外面に係止しうる係止部材が設けるのが好ましい。第二係止片3に設けられる係止部材も、一般的に面ファスナーの鉤部材を用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るパッド付き止血帯は、パッド4を腕や足等の傷口に当てて、織物帯1及びパッド4を長手方向に引っ張って伸ばしながら、腕や足等に巻回して、第一係止片2が貼合されている位置に織物帯1の内面が到達したときに、織物帯1の内面を第一係止片2に係止する。織物帯1は引っ張られながら巻回されているので、第一係止片2が織物帯1の内面と係止した時点で、織物帯1及びパッド4が縮み傷口が圧迫される。これにより、止血効果が奏せられるのである。
【0015】
織物帯1及びパッド4が良好な伸縮性を有しているので、第一係止片2を織物帯1の内面と係止するだけで十分な圧迫が可能であるが、さらに圧迫が必要なときは、織物帯1をさらに何回も引っ張りながら巻回し、第二係止片3を織物帯1の外面に係止する。これにより、さらに強力が圧迫が可能となり、止血効果が向上する。
【0016】
本発明において、織物帯1として、長手方向に走行する弾性糸間に非弾性の嵩高加工糸が存在し、弾性糸の縮み性により嵩高加工糸が織物帯の内面及び/又は外面に露出しているものを使用すると、第一係止片2又は第二係止片3の係止部材が露出している嵩高加工糸と係止しやすくなり、強力な係止が可能となる。したがって、強力な圧迫を実現しやすくなり、止血効果をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のパッド付き止血帯を表した斜視図である。
【図2】本発明の一例に係るパッド付き止血帯の表面図(外面側)である。
【図3】図2に示したパッド付き止血帯の裏面図(内面側)である。
【符号の説明】
【0018】
1 織物帯
2 第一係止片
3 第二係止片
4 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に走行する弾性糸で織成された織物帯と、
前記織物帯の一方端部の内面に貼合され、傷口に当てられるパッドと、
前記織物帯の前記一方端部の外面に貼合され、前記織物帯内面に係止しうる係止部材を非貼合面に備えた第一係止片とからなり、
前記パッドは、前記織物帯の長手方向に伸縮性を有する伸縮ネットよりなるシートと、コットンウェブとが交絡一体化されてなる不織布を具備することを特徴とするパッド付き止血帯。
【請求項2】
織物帯の他方端部の外面に、該他方端縁を超えて貼合された第二係止片を具備し、該他方端縁を超えた該第二係止片の内面には、該織物帯外面に係止しうる係止部材が設けられている請求項1記載のパッド付き止血帯。
【請求項3】
伸縮ネットに長繊維ウェブが貼合されており、該長繊維ウェブは延伸熱可塑性長繊維が幅方向に実質的に配列されているシートを用いる請求項1記載のパッド付き止血帯。
【請求項4】
パッドとして、不織布の積層物を用いる請求項1又は3記載のパッド付き止血帯。
【請求項5】
シートとコットンウェブとは、水流交絡法により交絡一体化されている請求項1又は3記載のパッド付き止血帯。
【請求項6】
長手方向に走行する弾性糸間に、該長手方向に走行する非弾性の嵩高加工糸が存在し、該弾性糸の縮み性により該嵩高加工糸が織物帯の内面及び/又は外面に露出している請求項1記載のパッド付き止血帯。
【請求項7】
弾性糸がポリウレタンモノフィラメント糸である請求項6記載のパッド付き止血帯。
【請求項8】
弾性糸として、ポリウレタンモノフィラメント糸を嵩高加工糸で被覆した被覆糸である請求項7記載のパッド付き止血帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85580(P2013−85580A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226139(P2011−226139)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】