説明

パッド及びカップ付き女性用衣類

【課題】バストボリュームが少ないバストでも、ワイヤの不快感なくバスト間に谷間を形成すると共にバストの内側上部の盛り上がりを実現する。
【解決手段】パッド1は、造形部5と薄肉部6とを備えている。造形部5は、パッドの前中心側からパッドの55〜75%の面積を有して形成され、脇側部分よりも厚く且つ弾力性を有し、バストトップを上下方向に跨ぐ。薄肉部6は、パッドの脇側からパッドの25〜45%の面積を有して形成され、薄く且つ硬い。従って、本発明のパッド1をバストボリュームの少ないバストに着用すると、多いが移動し難い脇側下部にあるバストボリュームをカップの前中心側に押し上げ且つ寄せつつ、この寄せられたバストボリュームを少ないが移動し易いバスト下部のバストボリュームと共にカップ上部に強く押し上げて上胸に集めると同時に、バストの脇側部分を肌側に好適に押さえつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ付き女性用衣類のカップに装着されるパッド、詳しくは、バストボリュームの少ないバストの造形性に優れるパッドと、そのパッドを装着したブラジャー等のカップ付き女性用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラジャー等のカップ付き女性用衣類においては、ボリュームアップ等の目的でパッドがカップに装着される場合が多く、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。このパッドは、熱プレス成形によって形成された溝が、乳房カップのトップ部の近傍を除いて、その周辺部近傍から、乳房カップのくりのほぼ下辺近傍からほぼ脇近傍の範囲のくりに向かってほぼくりまで、熱プレス成形によって形成され、そして、これらの複数の溝が乳房カップのトップ部の周辺部近傍から放射状に設けられている。これにより、このパッドでは、乳房の下垂と脇流れを補整し、乳房の形を美しく造形することが図られている。
【特許文献1】特許第2865600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、バストサイズがAカップであるようなバストボリュームの少ないバストは、バストボリュームの大部分が脇側下部に形成されるという特徴を有する。また、一般的なパッドやカップ付き女性用衣類は、例えばCカップのような平均的なバストサイズを対象にして開発され、サイズ展開される場合が多い。従って、上記従来技術によるバスト造形は、必ずしもバストボリュームの少ないバストの特徴に適したものとはならず、バストボリュームが少ない女性が要求するバスト造形、すなわちバスト間に谷間が出来ていること、及びバストの内側上部が盛り上がっていること、を満たすまでには至らない場合があった。その結果、バストを美しく且つ大きく整えるため、厚手のパッド入りカップ付き女性用衣類を着用したり、補整用のバストパッドをカップに詰めたり等する場合があった。
【0004】
また、バストボリュームの少ないバストは、カップ付き女性用衣類を装着したときに、カップの下縁に設けられたカップワイヤが肌側に倒れ易い。よって、着用中の不快感が大きく、着用後にカップワイヤの跡が肌に残ってしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、バストボリュームが少ないバストでも、ワイヤの不快感なくバスト間に谷間を形成すると共にバストの内側上部の盛り上がりを実現することができるパッド及びカップ付き女性用衣類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るパッドは、カップ付き女性用衣類のカップに装着されるパッドであって、パッドの脇側からパッドの25〜45%の面積を有して形成され、薄く且つ硬い薄肉部と、パッドの前中心側からパッドの55〜75%の面積を有して形成され、脇側部分よりも厚く且つ弾力性を有し、バストトップを上下方向に跨ぐ造形部と、を備え、薄肉部及び造形部の肌側は、段差を有して連結されていることを特徴とする。
【0007】
この本発明に係るパッドでは、薄くて硬く、張りのある薄肉部がパッドの脇側からパッドの25〜45%の面積を有して形成されているため、このパッドがカップに装着されたカップ付き女性用衣類を着用(以下、単に「着用」という。)したとき、バスト脇側が肌側に押さえつけられ、脇側下部にあるバストボリュームがカップの前中心側に押し上げられ且つ寄せられる。このとき、脇側部分よりも厚く且つ弾力性を有し、バストトップを上下方向に跨ぐ造形部がパッドの前中心側からパッドの55〜75%の面積を有して形成されているため、この押し上げられ且つ寄せられたバストボリュームがカップ上部に押し上げられる。
【0008】
さらに、着用時には、上述のように脇側部分に薄く且つ硬い薄肉部が形成されているため、当該薄肉部の薄くて硬く張りがある構造によりバストの脇側部分が肌側に押さえつけられ、よって、カップ内側上部に移動したバストボリュームは、内側寄りに固定される。その結果、着用時において、バストの内側上部が盛り上がり、左右両バスト間に谷間をつくることになる。
【0009】
このとき、薄肉部及び造形部の肌側は、段差を有して連結されている、すなわち造形部が厚くて薄肉部が薄いことにより、造形部と薄肉部とが高低差を有して連結している。従って、着用時に、この段差を基軸として薄肉部が肌側に折れ曲がり易くなり、且つ、この段差部分に空間が形成され当該空間にバスト脇側を収納することができる。よって、バスト脇側は、カップの前中心側に寄せられつつ肌側に押さえつけられるのに加え、すっきりしたシャープなバランスよいシルエットになり、バスト脇側が好適に押さえつけられることになる。
【0010】
ここで、前述のように、バストボリュームの少ないバストは、バストボリュームの大部分が脇側下部に形成されるという特徴を有し、具体的には、バストボリュームの少ないバストでは、バスト脇側のバストボリュームは、多いが移動し難い一方、バスト下部のバストボリュームは、少ないが移動し易いという特徴を有する。そこで、本発明によれば、着用時において、多いが移動し難い脇側下部にあるバストボリュームをカップの前中心側に押し上げ且つ寄せつつ、この寄せられたバストボリュームを少ないが移動し易いバスト下部のバストボリュームと共にカップ上部に押し上げて上胸に集めると同時に、バストの脇側部分を肌側に好適に押さえつけることができる。その結果、たとえバストボリュームが少ないバストであっても、バランスよいシルエットを有してバストの内側上部にバストボリュームによる盛り上がりをつくることができ、左右両バスト間に谷間を形成することが可能となる。
【0011】
さらに、バストボリュームが少ないバストでは、カップワイヤは、着用者の肌側に倒れ易い。しかしながら、本発明のパッドをカップワイヤを有するカップに装着すると、カップワイヤが設けられているカップの外縁のうち少なくとも前中心側には、厚く且つ弾力性を有する造形部が配設されるため、カップワイヤの倒れが軽減され、ワイヤの不快感を抑制させることができる。さらに、カップワイヤの前中心側の端部及び脇側の端部が着用者に与える圧力を低減させることも可能となる。これらの結果、着用時において、ワイヤが気にならず、自然な着け心地を得ることができる。
【0012】
また、造形部において、下部からバストトップ近傍に至る部分の肌側は、上部よりも厚く形成されていることが好ましい。この場合、着用したときに、カップの肌側におけるバストの内側下部からバストトップに至る部分が一層厚くて弾力性を有することになり、よって、バストの内側下部からバストトップ直近までを強く押し上げることができ、バストボリュームをカップ上部に一層強く押し上げることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るカップ付き女性用衣類は、請求項1又は2記載のパッドをカップに装着してなるカップ付き女性用衣類であって、パッドの前中心側は、当該前中心に向かって嘴状に尖っており、パッドの下縁は、カップの下縁に沿うように凸状に湾曲し、パッドの上縁は、カップの上縁に沿うように形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような上記パッドをカップに装着してなるカップ付き女性用衣類を装着すると、たとえバストボリュームが少ないバストでも、バスト間に谷間を形成し、バストの内側上部にバストボリュームによる盛り上がりを形成するという上記と同様な効果を奏する。さらに、本発明のパッドがカップに装着されているため、着用時において、バストボリュームが少ないバストの場合に問題視されていたカップワイヤの倒れを軽減させ、ワイヤの不快感を抑制させて、ワイヤが気にならない自然な着け心地を得るという上記と同様な効果も奏する。
【0015】
このとき、パッドがカップに着脱自在に取り付けられていることが好ましい。この場合、パッド及びカップ付き女性用衣類の汎用性を高めることができる。
【0016】
また、パッドがカップに一体的に形成されていることが好ましい。このようにパッドとカップとが一体的に形成されているため、カップ及びパッドを安定させることができ、これらが互いに触れ合っていわゆるパッドがガサ付くことを抑制することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バストボリュームが少ないバストでも、ワイヤの不快感なくバスト間に谷間を形成すると共にバストの内側上部の盛り上がりを実現することができるパッド及びカップ付き女性用衣類を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。ちなみに、「上」、「下」等の方向を示す語は、着用時若しくは装着時での状態を基準とし、便宜的な語である。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係るパッドについて、図1〜図4に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るパッドの肌側を示す正面図であり、図2は図1のパッドの表側を示す背面図であり、図3は図1中のパッドの縦端面図であり、図4は図1中のパッドの横端面図である。各図において、本発明に係るパッド1は、カップ付き女性用衣類のカップに装着され、バストの略全域を覆うもので、バストボリュームの少ないバストの造形性に優れるものである。なお、図1においては紙面右側を装着時の脇側及び紙面上側を装着時の上側とし、図2においては紙面右側を装着時の前中心側及び紙面上側を装着時の上側とし、図3においては紙面右側を装着時の肌側及び紙面上側を装着時の上側とし、図4においては紙面右側を装着時の前中心側及び紙面上側を装着時の表側とする。
【0020】
図1及び図2に示すように、パッド1は、ブラジャー等のカップ付き女性用衣類のカップに沿ったお椀の形状を呈している。パッド1は、肌側から見て、その上縁及び下縁が曲線状に形成されている。具体的には、上縁は、前中心側から中央を通り脇側にかけて上向きに凸状の曲線状に形成され、下縁は、前中心側から中央を通り脇側にかけて下向きに凸状の曲線状に形成されている。換言すると、パッドの上縁はカップの上縁に沿うように滑らかに延び、下縁はカップの下縁に沿うように凸状に湾曲している。そして、パッドの前中心側は当該前中心に向かって嘴状に尖っている一方、パッドの脇側はその縁がカップ付き女性用衣類のバック部上縁から続くカップの上縁に沿うように、脇側上部が欠けたような形状となっている。
【0021】
図3及び図4に示すように、このパッド1は、例えば厚さ1mmのウレタン系の発泡性硬化樹脂からなる表側層2と、この表側層2の肌側に形成された例えば合成繊維製不織布からなる肌側層3とを積層してなる積層構造となっている。このウレタン系の発泡性硬化樹脂は、硬くて張りがある素材であり、合成繊維製不織布は、弾力性及び緩衝性が高い素材である。そして、これらを覆うように、表裏に例えばハーフトリコット等の肌触り感がよい薄手の素材からなる生地(不図示)が縫着される。このパッド1は、造形部5と薄肉部6とを備えている。
【0022】
図1及び図2に戻り、造形部5は、パッド1の前中心部分から中央部分にかけた部分に形成され、具体的には、パッド1の前中心側からパッド1の55〜75%の面積を有して形成されている。ここでの造形部5は、好ましいとして、パッド1の2/3%の面積を有している。この造形部5は、その上縁及び下縁がパッド1の外縁に沿った曲線状を呈し、脇側の端部5aがパッド1の上縁から下縁に至るまで略上下に延びる直線状を呈し、すなわち、造形部5は、着用時にバストトップを上下方向に跨ぐことになる。
【0023】
造形部5は、図3及び図4に示すように、表側層2の前中心部分から中央部分にかけた部分の肌側に肌側層3を積層することにより形成されている。肌側層3は、上縁及び下縁がパッド1の外縁に沿った曲線状と呈し、脇側の端部がパッド1の上縁から下縁に至るまで略上下に延びる直線状を呈している。すなわち、この積層された肌側層3が造形部5の肌側に相当し、よって、造形部5の肌側は、弾力性及び緩衝性が高いものになっている。
【0024】
図1及び図2に示すように、薄肉部6は、パッド1の脇部分に形成され、具体的には、パッド1の脇側からパッド1の25〜45%の面積を有して形成されている。ここでの薄肉部6は、好ましいとして、パッド1の1/3%の面積を有している。さらに、薄肉部6は、パッド1における造形部5の脇側の端部5aに連結し、この端部5aから脇側に形成されている。図3に示すように、この薄肉部6は、表側層2のうち肌側層3が積層されていない部分であり、よって、薄肉部6は、薄くて硬く、張りがあるものになっている。また、図4に示すように、薄肉部6が造形部5よりも薄いことにより、造形部5と薄肉部6との間の肌側には、高低差すなわち直線状に脇側の端部5aに沿って延在する段差7が形成されている。
【0025】
このパッド1にあっては、図1に示すように、造形部5において、下部からバストトップ近傍に至る部分Aの肌側が、上部よりも厚く形成されている。換言すると、部分Aの肌側には、図3及び図4に示すように、例えば最大厚さ18mmの厚い肌側層3が形成されている。従って、造形部5における当該部分Aの肌側は、造形部5の他の部分よりも厚く且つ弾力性及び緩衝性を有するものになる。この最大厚さの肌側層3が形成されている造形部5の肌側は、前中心側から見て、下端から中央を通り中央上側にかけて中央下側寄り位置を頂部とする肌側に突出する凸形状となり、中央上側から上端にかけてなだらかに表側に窪むような凹形状となっている一方、上側から見て、前中心から脇側に至るまで略平らになっている。
【0026】
図5及び図6に示すように、このパッド1が装着されたカップ付き女性用衣類を着用した場合、脇側部分に薄くて硬く張りのある薄肉部6が、バスト30脇側を肌側に押さえつけ、脇側下部にあるバストボリュームをカップの前中心側に押し上げ且つ寄せ集める。そして、造形部5が、バストトップ31を上下方向に跨いでバスト30をその下部からバストトップを超えてカップ上方へ押し上げる。さらに、造形部5において、下部からバストトップ近傍に至る部分の肌側は、上部よりも厚く形成されていることより、バストの内側下部からバストトップ直近までをカップ上方へ強く押し上げる。
【0027】
加えて、脇部分には、上述のように薄くて硬く且つ張りがある薄肉部6が形成されているため、着用時にバスト30の脇側部分を肌側に押さえつけ、カップ内側上部に移動したバストボリュームを脇側に逃がさずに内側寄りに固定する。このとき、造形部5と薄肉部6とが連結された間には段差7が形成されているため、着用時に、段差7を基軸として薄肉部6が肌側に折れ曲がり易くなり、且つ、この段差7により空間が形成され当該空間にバスト脇側を収納することができる。よって、バスト脇側は、前中心側に寄せ集められつつ肌側に押さえつけられるのに加え、すっきりしたシャープなバランスよいシルエットになり、バスト脇側が好適に押さえつけられることになる。
【0028】
ここで、例えば、バストサイズがAカップのようなバストボリュームの少ないバストでは、バストの脇側はバストボリュームが多いが移動し難く、バストの下部はバストボリュームが少ないが移動し易いという特徴を有する。従って、本発明のパッド1をバストボリュームの少ないバストに着用すると、多いが移動し難い脇側下部にあるバストボリュームをカップの前中心側に押し上げ且つ寄せつつ、この寄せられたバストボリュームを少ないが移動し易いバスト下部のバストボリュームと共にカップ上部に強く押し上げて上胸に集めると同時に、バストの脇側部分を肌側に好適に押さえつけることができる。
【0029】
その結果、バランスよいシルエットを有してバストの内側上部にバストボリュームによる盛り上がりをつくることができ、バストボリュームが少ない女性にとって、今まで成し得難かった左右両バスト間の谷間を形成することが可能となり、例えば補整用のバストパッドをカップに詰める等せずに、バストのボリュームアップ感を自分のバストにより感じることができる。
【0030】
さらに、薄肉部6により、脇部分にあたかも壁を形成してバストが押さえられるようになるため、バストの脇側がすっきりしたキレのあるシャープで平らなシルエットになり、よりバランスの良いバスト造形ができる。
【0031】
また、バストボリュームが少ないバストの場合では、カップワイヤが肌側に倒れ易い。そこで、本発明のパッド1を例えばブラジャーのカップの肌側に装着することにより、カップワイヤが設けられているカップの外縁のうち少なくとも前中心側には、厚く且つ弾力性を有する造形部5が配設されることになり、よって、この問題視されていたカップワイヤの倒れを軽減することができる。よって、カップワイヤの前中心側の端部及び脇側の端部が着用者の肌に与える圧力を低くすることができ、ひいては、着用時において、ワイヤが気にならない程の自然な着け心地を得ることが可能となる。
【0032】
以上のように本発明によれば、例えばAカップのようなバストボリュームの少ないバストであっても、ワイヤの不快感がなく、自分のバストの豊かさを感じながら、バストをバランスよく且つ大きく見せることが可能となる。
【0033】
なお、薄肉部6は、パッド1の脇側からパッド1の25〜45%の面積を有して形成され、造形部5は、パッド1の前中心側からパッド1の55〜75%の面積を有して形成されている。ここで、例えば、薄肉部6の面積がパッド1の面積の25%以下であると、脇側下部にあるバストボリュームをカップの前中心側に押し上げ且つ寄せる作用やバストの脇側部分を肌側に押さえる作用が不十分になる場合があり、一方、例えば、造形部5の面積がパッド1の面積の55%以下であると、バストボリュームをカップ上部に強く押し上げる作用が不十分になる場合がある。
【0034】
ちなみに、このパッド1は、従来のカップ付き女性用衣類のうちパッドを取り付けることができるものであれば、如何なるものでも取り付け可能である。この場合でも、上記の効果と同様な効果を奏する。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態に係るカップ付き女性用衣類であるブラジャーについて、図7に基づいて説明する。図7は本発明の第1実施形態に係るブラジャーを示す図である。同図において、本発明に係るブラジャー10は、3/4カップタイプであり、上述したパッド1がカップに着脱自在に取り付けられているものである。
【0036】
図7に示すように、ブラジャー10は、左右一対のカップ11と、左右一対のバック布12と、左右一対の肩ストラップ13と、土台部14とを含んで構成されている。土台部14は左右両カップ11の下縁に縫着され、脇側端部がバック布12に縫着されている。バック布12は伸縮性の高い素材からなり、図示しないホックにより着脱自在に連結される。肩ストラップ13はカップ11の脇側上端部及びバック布12に縫着され、バック布12とカップ11の間に掛け渡される。
【0037】
カップ11の肌側には、パッド1を装着するためのポケット15が設けられている。具体的には、トリコット等の肌触り感がよい薄手の生地をカップ11の肌側に縫着して形成される。そして、このポケット15にパッド1が肌側から挿入される、すなわちパッド1が着脱自在に取り付けられる。
【0038】
また、カップ11の下縁には、円弧状のカップワイヤ11aが設けられている。このカップワイヤ11aの前中心C側の端部は、従来のカップワイヤに比して低くなっている。換言すると、カップワイヤ11aの前中心C側の端部からカップワイヤ11aの下端までの上下方向の長さが従来よりも小さく、例えば35mmとなっている。
【0039】
このブラジャー10を着用した場合、上記パッド1がカップ11に装着されているため、上述したバストボリュームが少ないバストでもバスト間に谷間を形成すると共に、バストの内側上部にバストボリュームによる盛り上がりを形成するという上記と同様な効果を奏する。さらに、パッド1が着脱自在に取り付けられていることより、汎用性が高められている。
【0040】
また、カップワイヤ11aの前中心C側の端部が低いため、着用者は、形成された谷間を実感し易く、自分のバストの豊かさを一層強く感じることができる。さらに、この場合、カップワイヤ11aの前中心C側が着用者の肌に強く接触することを抑制でき、着け心地を楽にして自然なフィット感を得ることが可能となる。
【0041】
また、バストボリュームが少ないバストの場合、カップワイヤ11aが肌側に倒れ易く、よって着用時の不快感や着用後のカップワイヤ11aの跡が問題になる。しかしながら、本発明ではパッド1が設けられているため、カップワイヤ11aの倒れを軽減させ、カップワイヤ11aの前中心C側の端部及び脇側の端部が着用者に与える圧力を低くすることができる。従って、バストボリュームが少ないバストであっても、着用感を損なわずに自然な着け心地となり、自分のバストの豊かさを感じつつバストを大きく且つバランスよく見せることが可能となる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態に係るカップ付き女性用衣類であるブラジャーについて、図8に基づいて説明する。図8は本発明の第2実施形態に係るブラジャーを示す図である。この第2実施形態に係るブラジャー20が第1実施形態のブラジャー10と主に違う点は、その肌側のポケット15に着脱自在にパッド1が取り付けられたカップ11に代えて、パッド1がその肌側に一体的に形成されているカップ21を用いた点である。
【0043】
図8に示すように、ブラジャー20は、左右一対のカップ21と、左右一対のバック布12と、左右一対の肩ストラップ13と、土台部14とを含んで構成されている。土台部14は左右両カップ21の下縁に縫着され、脇側端部がバック布12に縫着されている。バック布12は伸縮性の高い素材からなり、図示しないホックにより着脱自在に連結される。肩ストラップ13はカップ21の脇側上端部及びバック布12に縫着され、バック布12とカップ21の間に掛け渡される。そして、上述したように、パッド1がカップ21の肌側に縫着、縫合、貼着又は接着することにより一体的に形成されている。
【0044】
このようなブラジャー20を着用した場合であっても、上記パッド1がカップ21に装着されているため、上述した効果と同様な効果、すなわち、バストボリュームが少ないバストでも、ワイヤの不快感なくバスト間に谷間を形成すると共にバストの内側上部の盛り上がりを実現するという効果を奏する。また、カップ21は、パッド1とカップ21とが一体的に形成されているパッデド型のため、パッド1及びカップ21を安定させることができ、これらが互いに触れ合っていわゆるパッド1がガサ付くことを抑制することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の第3実施形態に係るカップ付き女性用衣類であるブラジャーについて、図9に基づいて説明する。図9は本発明の第3実施形態に係るブラジャーを示す図である。この第3実施形態に係るブラジャー40が第2実施形態のブラジャー20と主に違う点は、肩ストラップ13を備えていない点、すなわちブラジャー40がストラップレスブラジャーである点である。
【0046】
図9に示すように、ブラジャー40は、左右一対のカップ41と、左右一対のバック布42と、土台部44とを含んで構成されている。土台部44は左右両カップ41の下縁に縫着され、脇側端部がバック布42に縫着されている。バック布42は伸縮性の高い素材からなり、図示しないホックにより着脱自在に連結される。カップ41は、その上縁がバック布42の上縁に連続して滑らかな曲線を呈している。そして、パッド1がカップ41の肌側に縫着、縫合、貼着又は接着することにより一体的に形成されている。
【0047】
このようなブラジャー40を着用した場合であっても、上記パッド1が装着されているため、上述した効果と同様な効果、すなわち、バストボリュームが少ないバストでも、ワイヤの不快感なくバスト間に谷間を形成すると共にバストの内側上部の盛り上がりを実現するという効果を奏する。また、ブラジャー40はストラップレスブラジャーであるため、衿や肩の大きく開いたアウターウェアを着用する場合や肩が凝るので肩ひもを取り外したい場合に有効であると共に、バストを下で支え、バストボリュームを上方に移動し易くできる。
【0048】
なお、本実施形態は、パッド1をカップの肌側に一体的に形成しているが、パッド1をカップ41の肌側に着脱自在に取り付けてもよい。また、本実施形態は、はじめから肩ストラップがないブラジャーであるが、肩ストラップが取り外し可能なブラジャーであっても勿論よい。
【0049】
以上、説明したブラジャー10と、説明したパッド1を取り付けた従来型Bカップブラジャーと、従来型Aカップブラジャーとを6人の被験者(モニター)にそれぞれ着用してもらい、「バストボリューム感」「谷間感」の項目について評価の高いブラジャーを選択してもらって着用感を比較し、三次元測定により「内側上部のバストボリューム」「谷間の深さ」を測定した。なお、被験者のバストサイズはAカップとした。
【0050】
その結果、「バストボリューム感」の項目については、ブラジャー10が6名、パッド1を取り付けた従来型Bカップブラジャーが0名、従来型Aカップブラジャーが0名であり、「バストボリューム感」の項目については、ブラジャー10が4名、パッド1を取り付けた従来型Bカップブラジャーが2名、従来型Aカップブラジャーが0名であった。また、「内側上部のバストボリューム」の測定については、従来型Aカップブラジャーを基準とすると、ブラジャー10が約30%増加、パッド1を取り付けた従来型Bカップブラジャーが約12%増加であり、「谷間の深さ」の測定については、従来型Aカップブラジャーを基準とすると、ブラジャー10が約20%増加、パッド1を取り付けた従来型Bカップブラジャーが約16%増加であった。従って、バストボリュームが少ないバストでもバスト間に谷間を形成すると共に、バストの内側上部にバストボリュームによる盛り上がりを形成するという上記効果を確認することができた。
【0051】
また、パッド1を装着した場合のブラジャー10と、パッドを装着しない場合のブラジャーとをダミー人形に着用させ、カップワイヤ11aが着用者に与える圧力を計測した。その結果、パッド1を装着した場合の着用者に与える圧力は、パッド1を装着しない場合を基準として比べて、カップワイヤ11aの前中心側の端部が約45%低下し、カップワイヤ11aの脇側の端部が約56%低下した。従って、本発明のパッド1によってカップワイヤ11aの倒れを軽減させるという上記効果を確認することができた。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、表側層2は、ウレタン系の発泡性硬化樹脂からなるが、例えばポリウレタンフォームを用いてもよく、硬くて張りがある素材であればよい。また、肌側層3は、合成繊維製不織布からなるが、不織布としては例えばポリエステル系でもポリエチレン系でもよく、弾力性及び緩衝性が高い素材であればよい。
【0054】
また、ブラジャー10,20,40は、3/4カップタイプであるが、フルカップタイプであってもよい。さらに、パッド1、ブラジャー10,20,40は、バストボリュームの少ないバストの造形性に特に優れたものであるが、これらは種々のバストサイズに十分適用でき、上記効果と同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、本発明のパッドは、ブラジャーの他に、ブラスリップ、ブラキャミソール、ボディスーツ等のファンデーション衣類の他、水着やレオタード等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るパッドの肌側を示す正面図である。
【図2】図1のパッドの表側を示す背面図である。
【図3】(a)は図1のIIIa−IIIa線に沿った縦端面図であり、(b)は図1のIIIb−IIIb線に沿った縦端面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った横端面図である。
【図5】図1中のパッドが装着されたブラジャーを着用したときの斜視図である。
【図6】図1中のパッドが装着されたブラジャーを着用したときの端面図である。
【図7】(a)は本発明の第1実施形態に係るブラジャーの肌側を示す正面図であり、(b)は本発明の第1実施形態に係るブラジャーの表側を示す背面図である。
【図8】(a)は本発明の第2実施形態に係るブラジャーの肌側を示す正面図であり、(b)は本発明の第2実施形態に係るブラジャーの表側を示す背面図である。
【図9】(a)は本発明の第3実施形態に係るブラジャーの肌側を示す正面図であり、(b)は本発明の第3実施形態に係るブラジャーの表側を示す背面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…パッド、10,20,40…ブラジャー(カップ付き女性用衣類)、5…造形部、6…薄肉部、7…段差、11,21,41…カップ、30…バスト、31…バストトップ、A…部分、C…前中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ付き女性用衣類のカップに装着されるパッドであって、
パッドの脇側からパッドの25〜45%の面積を有して形成され、薄く且つ硬い薄肉部と、
パッドの前中心側からパッドの55〜75%の面積を有して形成され、脇側部分よりも厚く且つ弾力性を有し、バストトップを上下方向に跨ぐ造形部と、を備え、
前記薄肉部及び前記造形部の肌側は、段差を有して連結されていることを特徴とするパッド。
【請求項2】
前記造形部において、下部からバストトップ近傍に至る部分の肌側は、上部よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1記載のパッド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパッドを前記カップに装着してなるカップ付き女性用衣類であって、
前記パッドの前中心側は、当該前中心に向かって嘴状に尖っており、
前記パッドの下縁は、前記カップの下縁に沿うように凸状に湾曲し、
前記パッドの上縁は、前記カップの上縁に沿うように形成されていることを特徴とするカップ付き女性用衣類。
【請求項4】
前記パッドは、前記カップに着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載のカップ付き女性用衣類。
【請求項5】
前記パッドは、前記カップに一体的に形成されていることを特徴とする請求項3記載のカップ付き女性用衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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