説明

パネルワーク取出システム

【課題】特別な追加設備を追加することなく、ティーチングプログラムの変更といった簡単な方法によって、パネルワークの吸着不良を低減できるパネルワーク取出システムを提供すること。
【解決手段】パネルワーク取出システム1の制御装置は、アーム先端部21が移動し、複数の吸着部41A,41Bがパネルワーク8を吸着する吸着動作と、吸着動作を開始した後、所定時間内に吸着検出センサが吸着状態を検出したか否かを判定する判定動作と、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されたとき、アーム先端部21を移動させてパレット7からパネルワーク8を取り出す取出動作とを実行する。また、制御装置は、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されなかったときには、吸着動作を継続した状態で、特定吸着部41Aがパネルワーク8に近づく方向に移動するようアーム先端部21の姿勢を変更する補正動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットに載置されたパネルワークを、産業用ロボットによって取り出して搬送するパネルワーク取出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車におけるドア等のパネルワークは、製品を製造する過程において、パレットに複数並べて保管することが行われる。パレットは、パネルワークを安定して載置するために、パネルワークの下端部及び両側端部を支持するよう構成される。そして、パレットからパネルワークを取り出す際には、その取出を容易にするために、パネルワークの一方の側端部の上側部位を開放することが行われる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1の吸着ハンド及び吸着ハンドの姿勢追従方法においては、パレット上に縦姿勢で積載された複数枚の板状ワークから、ロボットが、吸着パッドにより1枚ずつ板状ワークを吸着して自動的に取り出すことが開示されている。そして、各吸着パッドを板状ワーク面に押し付け、各吸着パッドに設けたドグによってオンオフする第1のセンサーと第2のセンサーのオンオフ情報に基づき、すべての吸着パッドが、板状ワークを吸着可能な圧力に到達するまで、ロボットハンドの姿勢を設定角度ずつ繰り返し補正する。その後、すべての吸着パッドの圧力が、板状ワークを吸着可能な圧力に到達した時点で、板状ワークの移載を行うようにしている。これにより、板状ワークの接触キズの発生を防止して、板状ワークを短時間で移載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−262325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パレットによってパネルワークを支持する際に、パネルワークの一方の側端部の上側部位が開放されていると、この上側部位が振動して、位置ずれを生じやすくなる。そのため、ビジョンセンサ(カメラ)によってパネルワークの位置・姿勢を計測し、この計測データに応じてロボットの位置・姿勢を変更することが考えられる。また、パレットにクランプユニット等を追加し、パネルワークの一方の側端部の上側部位の位置ずれを矯正することも考えられる。
しかしながら、ビジョンセンサ、クランプユニット等を用いる場合には、追加設備が必要となり、設備を複雑化させてしまう。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、特別な追加設備を追加することなく、ティーチングプログラムの変更といった簡単な方法によって、パネルワークの吸着不良を低減させることができるパネルワーク取出システムを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パネルワークを載置するパレットと、
該パレットに載置された上記パネルワークを取り出して移動させる産業用ロボットと、
該産業用ロボットを動作させる制御装置と、
上記産業用ロボットのアーム先端部に配設され、上記パネルワークを吸着する複数の吸着部を有する吸着ヘッドと、
上記複数の吸着部に吸着力を発生させる吸着力発生装置と、
上記複数の吸着部が上記パネルワークを吸着したときに、吸着状態を検出する吸着検出センサと、を備えており、
上記パレットは、上記パネルワークの下端部を支持する下受部と、上記パネルワークの一側端部の上側部位を支持する側受部とを有しているとともに、上記パネルワークの他側端部の上側部位が自由状態になるよう構成されており、
上記複数の吸着部は、上記パネルワークの他側端部に近い側の上側部位を吸着する特定吸着部と、上記パネルワークの他の部位を吸着する複数の一般吸着部とによって構成されており、
上記制御装置は、上記アーム先端部が移動し、上記吸着力発生装置による吸着力を受けて上記複数の吸着部が上記パネルワークを吸着する吸着動作と、
該吸着動作を開始した後、所定時間内に上記吸着検出センサが上記吸着状態を検出したか否かを判定する判定動作と、
該判定動作において上記所定時間内に上記吸着状態が検出されたとき、上記アーム先端部を移動させて上記パレットから上記パネルワークを取り出す取出動作と、を実行する制御プログラムを有しており、
該制御プログラムは、上記判定動作において上記所定時間内に上記吸着状態が検出されなかったときには、上記吸着動作を継続した状態で、上記特定吸着部が上記パネルワークに近づく方向に移動するよう上記アーム先端部及び上記吸着ヘッドの姿勢を変更する補正動作を実行するよう構成されていることを特徴とするパネルワーク取出システムにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記パネルワーク取出システムは、パネルワークの他側端部の上側部位が自由状態になる構造のパレットに対し、産業用ロボット、制御装置、吸着ヘッド、吸着力発生装置及び吸着検出センサを用いて構成したものである。
吸着ヘッドにおける複数の吸着部は、パネルワークの他側端部に近い側の上側部位を吸着する特定吸着部と、パネルワークの他の部位を吸着する複数の一般吸着部とによって構成している。そして、産業用ロボットを動作させる制御装置の制御プログラムにおいて、最も位置ずれが生じやすい、パネルワークの他側端部における上側部位に最も近い特定吸着部の位置を変更するように、産業用ロボットのアーム先端部の姿勢を変更する。
【0009】
より具体的には、制御プログラムは、次の各動作を行うよう構成されている。
まず、吸着動作として、産業用ロボットのアーム先端部を移動させるとともに、吸着力発生装置による吸着力を発生させて、吸着ヘッドにおける複数の吸着部によってパネルワークの吸着を開始する。
次いで、判定動作として、吸着動作を開始した後、所定時間内に吸着検出センサが吸着状態を検出したか否かを判定する。そして、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されたときには、取出動作として、アーム先端部を移動させてパレットからパネルワークを取り出す。一方、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されなかったときには、補正動作として、吸着動作を継続した状態で、特定吸着部がパネルワークに近づく方向に移動するようアーム先端部の姿勢を変更する。
【0010】
パレットに保管されたパネルワークは、下端部と一側端部の上側部位とが支持されていることにより、下端部及び一側端部に位置ずれが生じにくい一方、他側端部の上側部位には位置ずれが生じやすい。
パネルワークにおける他側端部の上側部位が、アーム先端部によって移動した吸着ヘッドの特定吸着部に近づく方向に位置ずれしている場合には、判定動作において、所定時間内に吸着検出センサが吸着状態を検出すると考えられる。そして、所定時間内に吸着状態が検出された場合には、補正動作は行われない。
【0011】
これに対し、パネルワークにおける他側端部の上側部位が、アーム先端部によって移動した吸着ヘッドの特定吸着部から離れる方向に位置ずれしている場合には、判定動作において、所定時間内に吸着検出センサが吸着状態を検出しない可能性が高くなる。所定時間内に吸着状態が検出されなかった場合には、補正動作を行う。
この補正動作を行うことにより、パネルワークにおける他側端部の上側部位が、吸着ヘッドの特定吸着部から離れる方向に位置ずれしている場合でも、特定吸着部を含めた複数の吸着部の全体によって、パネルワークを吸着することができる。
【0012】
それ故、上記パネルワーク取出システムによれば、ビジョンセンサ、クランプ等の特別な追加設備を追加することなく、ティーチングプログラムの変更といった簡単な方法によって、パネルワークの吸着不良を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例にかかる、パネルワーク取出システムを側方から見た状態で示す側面図。
【図2】実施例にかかる、パネルワークを載置したパレットを示す斜視図。
【図3】実施例にかかる、パネルワークを載置したパレットと、パネルワークを吸着する吸着ヘッドとを示す正面図。
【図4】実施例にかかる、パネルワーク取出システムの装置の構成を模式的に示す説明図。
【図5】実施例にかかる、吸着ヘッドの周辺を側方から見た状態で示す側面図。
【図6】実施例にかかる、複数の吸着部、吸着力発生装置及び吸着検出センサによるエア回路を示す回路図。
【図7】実施例にかかる、ティーチングプログラムの流れを簡略的に示すフローチャート。
【図8】実施例にかかる、補正動作を行う前の吸着ヘッドにおける複数の吸着パッドを、吸着ヘッドの側方から見た状態で示す側面図。
【図9】実施例にかかる、補正動作を行った後の吸着ヘッドにおける複数の吸着パッドを、吸着ヘッドの側方から見た状態で示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述したパネルワーク取出システムにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記パネルワーク取出システムにおいては、上記吸着部は、弾性変形可能な吸着部材を有する吸着パッドであり、上記吸着検出センサは、上記複数の吸着パッドが上記パネルワークを吸着したときに真空度が高くなることを利用して、上記パネルワークの上記吸着状態を検出するよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、吸着パッド及び吸着検出センサを用いたパネルワーク取出システムの構造により、パネルワークの位置ずれに対して補正動作を行うことにより、パネルワークの吸着を一層安定して行うことができる。
【0015】
上記吸着部は、吸着パッド以外にも、磁気吸引力によって吸着を行う電磁マグネットとすることもできる。この場合、上記吸着検出センサは、パネルワークが吸着されたことを検出する接触型又は非接触型のセンサとすることができる。また、この場合、上記吸着力発生装置は、電磁マグネットに磁気吸引力を発生させるための通電装置とすることができる。
【0016】
また、上記パレットは、上記パネルワークを横に並ぶ状態で複数載置するよう構成されており、上記下受部は、上記パネルワークの下端部における2箇所を支持し、上記側受部は、上記パネルワークの一側端部の上側部位の1箇所と、場合に応じて上記パネルワークの他側端部の下側部位の1箇所とを支持するよう構成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、吸着動作、判定動作、取出動作、場合による補正動作を繰り返し行い、複数のパネルワークを1枚ずつ順次吸着して取り出すことができる。
【0017】
また、上記制御プログラムは、上記アーム先端部及び上記吸着ヘッドを移動させながら位置・姿勢の教示を行ったティーチングプログラムとしてもよい(請求項4)。
この場合には、制御装置におけるティーチングプログラムの一部を変更することにより、容易に補正動作を実現することができる。
【実施例】
【0018】
以下に、本例のパネルワーク取出システムの実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のパネルワーク取出システム1は、図1、図4に示すごとく、パネルワーク8を載置するパレット7と、パレット7に載置されたパネルワーク8を取り出して移動させる産業用ロボット2と、産業用ロボット2を動作させる制御装置3と、産業用ロボット2のアーム先端部21に配設され、パネルワーク8を吸着する複数の吸着部41A,41Bを有する吸着ヘッド4と、複数の吸着部41A,41Bに吸着力を発生させる吸着力発生装置5と、複数の吸着部41A,41Bがパネルワーク8を吸着したときに、吸着状態を検出する吸着検出センサ61とを備えている。
【0019】
図2、図3に示すごとく、パレット7は、パネルワーク8の下端部83を支持する下受部71と、パネルワーク8の一側端部81の上側部位811を支持する側受部72とを有しているとともに、パネルワーク8の他側端部82の上側部位821が自由状態になるよう構成されている。複数の吸着部41A,41Bは、パネルワーク8の他側端部82に近い側の上側部位821Aを吸着する特定吸着部41Aと、パネルワーク8の他の部位を吸着する複数の一般吸着部41Bとによって構成されている。
【0020】
図7に示すごとく、制御装置3は、アーム先端部21が移動し、吸着力発生装置5による吸着力を受けて複数の吸着部41A,41Bがパネルワーク8を吸着する吸着動作と(ステップS3,S4)、吸着動作を開始した後、所定時間内に吸着検出センサ61が吸着状態を検出したか否かを判定する判定動作と(S5)、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されたとき、アーム先端部21を移動させてパレット7からパネルワーク8を取り出す取出動作と(S9)、を実行する制御プログラムを有している。
制御プログラムは、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されなかったときには、吸着動作を継続した状態で、特定吸着部41Aがパネルワーク8に近づく方向に移動するようアーム先端部21の姿勢を変更する補正動作を実行するよう構成されている(S6,S7)。
【0021】
以下に、本例のパネルワーク取出システム1につき、図1〜図9を参照して詳説する。
本例のパネルワーク取出システム1は、パネルワーク8の他側端部82の上側部位821が自由状態になる構造のパレット7に対し、産業用ロボット2、制御装置3、吸着ヘッド4、吸着力発生装置5及び吸着検出センサ61を用いて構成したものである。
産業用ロボット2は、サーボモータによって動作する複数の関節部を有しており、各サーボモータを動作させることにより、アーム先端部21の位置・姿勢を3次元に変更できるよう構成されている。
【0022】
図4は、パネルワーク取出システム1の装置の構成を模式的に示す図である。
同図に示すごとく、産業用ロボット2の制御装置3は、作業者が、アーム先端部21を動作させて、アーム先端部21の位置・姿勢を教示するためのリモートコントローラ(ティーチングペンダント)31を有している。制御装置3は、リモートコントローラ31からの入力を受けて、アーム先端部21及び吸着ヘッド4の位置・姿勢の教示点及び移動経路を、ティーチングプログラム(制御プログラム)として記憶するよう構成されている。
制御装置3は、ティーチングプログラムによる指令によって吸着力発生装置5を動作させる出力信号を出力し、ティーチングプログラムの動作において、吸着検出センサ61からの入力信号を受け取るよう構成されている。
【0023】
図5は、吸着ヘッド4の周辺を側方から見た状態で示す図である。
同図に示すごとく、本例の吸着部41A,41Bは、弾性変形可能な吸着部材411を有する吸着パッド41A,41Bである。吸着部材411は、先端に開口吸引口を有し、丸いラッパ形状に形成されている。吸着パッド41A,41Bは、吸着部材411を、吸引口が形成された基部412に対して取り付けて形成されている。
本例の吸着ヘッド4は、複数の吸着パッド41A,41Bと、複数の吸着パッド41A,41Bを産業用ロボット2のアーム先端部21に取り付けるブラケット42とによって構成されている。図3に示すごとく、4つの吸着パッド41A,41Bは、ブラケット42において四方に並ぶ状態で配設されている。
【0024】
図6は、複数の吸着部41A,41B、吸着力発生装置5及び吸着検出センサ61によるエア回路50を示す。
同図に示すごとく、本例の吸着力発生装置5は、工場から供給される圧縮空気(空気圧)A1を用い、圧縮空気A1をノズルから噴出させる際に、ノズル付近に接続した真空配管から吸引を行うエジェクタポンプ51(コンバムの原理によるポンプ)を用いて構成されている。
制御装置3からの出力信号が可動バルブ52A(本例ではソレノイドバルブ)に送られ、可動バルブ52Aが動作した際に、圧縮空気A1が噴出されるとともに、この噴出に伴って吸着パッド41A,41Bから空気A2が吸引される。吸着パッド41A,41Bから吸引される空気A2は、圧縮空気A1とともに排気される。
【0025】
本例では、複数の吸着パッド41A,41Bから空気A2を吸引し、吸着動作を行うための2つの可動バルブ52Aと、複数の吸着パッド41A,41Bから空気を噴出し、開放動作を行うための2つの可動バルブ52Bとを用いて、吸着パッド41A,41Bのエア回路50を構成している。
本例では、特定吸着部41Aと複数の一般吸着部41Bとの各吸着パッド41A,41Bごとに、複数(4つ)の可動バルブ52A,52Bを用いたエア回路50を構成している。エア回路50の構成は、吸着パッド41A,41Bの仕様に応じて、適宜変更することができる。
【0026】
図3に示すごとく、本例の吸着パッド(吸着部)41A,41Bは、1つの特定吸着パッド(特定吸着部)41Aと、3つの一般吸着パッド(一般吸着部)41Bとによって構成されている。複数の吸着パッド41A,41Bの全体は、特定吸着パッド41Aが、パネルワーク8の他側端部82に近い側の上側部位821Aを吸着し、1つの一般吸着パッド41B1が、パネルワーク8の他側端部82に近い側の下側部位822Aを吸着し、他の1つの一般吸着パッド41B2が、パネルワーク8の一側端部81に近い側の上側部位811Aを吸着し、残りの1つの一般吸着パッド41B3が、パネルワーク8の一側端部81に近い側の下側部位812Aを吸着する。この複数の吸着パッド41A,41Bによるパネルワーク8の吸着位置は、リモートコントローラ31による産業用ロボット2の教示によって決定される。
【0027】
図6に示すごとく、本例の吸着検出センサ61は、複数の吸着パッド41A,41Bがパネルワーク8を吸着したときに真空度が高くなることを利用して、パネルワーク8の吸着状態を検出するよう構成されている。吸着検出センサ61は、可動バルブ52A,52Bと吸着パッド41A,41Bとの間の配管に接続されており、この配管における真空度(圧力)の変化を測定するよう構成されている。
また、図4に示すごとく、吸着ヘッド4には、吸着ヘッド4におけるパネルワーク8の有無を確認するワーク検知センサ62が設けられている。ワーク検知センサ62は、パネルワーク8の有無を制御装置3へ送信するよう構成されている。
【0028】
図2、図3に示すごとく、本例のパネルワーク8は、自動車のフロントドアのアウターパネルである。
本例のパレット7は、パネルワーク8を横に並ぶ状態で複数載置するよう構成されている。パネルワーク8としてのフロントドアのアウターパネルは、自動車を構成する際に前側に位置する前端部を下方に向けて、パレット7に載置される。パレット7は、四角形の下面部を構成する枠部の4つの角部から支柱73を設けて構成されている。
パレット7の下受部71は、フロントドアのアウターパネルの前端部における前後の2箇所を支持するよう構成されている。パレット7の側受部72は、アウターパネルの一側端部81の上側部位811の1箇所と、アウターパネルの他側端部82の下側部位822の1箇所とを支持するよう構成されている。
【0029】
図1、図2に示すごとく、2箇所の下受部71及び2箇所の側受部72は、複数のパネルワーク8を並べて載置するように、長尺形状に形成されている。下受部71及び側受部72には、パネルワーク8を支持するための支持凹部711,721が所定の間隔で複数形成されている。各パネルワーク8は、それらの板面方向を互いに平行にするようにして、下受部71及び側受部72に支持される。
パレット7は、支柱73同士の間において、パネルワーク8の板面が位置する奥行方向の両側が開口されている。
なお、図1、図2においては、両端にあるパネルワーク8以外のパネルワーク8を省略して示す。
【0030】
図2、図3に示すごとく、パレット7において、パネルワーク8の他側端部82の上側部位821に対向する位置には、可動式側受部72Aが設けられている。可動式側受部72Aは、パレット7に対して回動するよう構成されている。可動式側受部72Aは、産業用ロボット2によるパネルワーク8の取出を行う際には、パネルワーク8の他側端部82の上側部位821を自由状態にするために、パネルワーク8に接触しない位置に退避させておく。可動式側受部72Aは、パネルワーク8を載置したパレット7を搬送する際に、パネルワーク8を支持する位置に回動させておく。
【0031】
本例においては、産業用ロボット2を動作させる制御装置3の制御プログラムにおいて、最も位置ずれが生じやすい、パネルワーク8の他側端部82における上側部位821に最も近い特定吸着部41Aの位置を変更するように、産業用ロボット2のアーム先端部21の姿勢を変更する。
パネルワーク取出システム1を動作させるに際しては、作業者は、リモートコントローラ31を用い、産業用ロボット2の教示を行っておく。具体的には、アーム先端部21及び吸着ヘッド4を移動させ、パレット7に載置されたパネルワーク8を吸着する位置の教示を行う。また、この教示位置に対し、特定吸着部41Aがパネルワーク8に近づく方向に移動するよう、アーム先端部21の姿勢を変更する補正を行った位置についても教示を行う。アーム先端部21及び吸着ヘッド4を移動させた教示は、パレット7の複数の位置におけるパネルワーク8に対してもそれぞれ行う。そして、アーム先端部21及び吸着ヘッド4の移動経路を特定して、ティーチングプログラムを作成する。
【0032】
本例のティーチングプログラムは、図7のフローチャートに示すごとく、次の各動作を行う。
まず、吸着ヘッド4におけるワーク検知センサ62がパネルワーク8を検出していないかを確認し(同図のステップS1)、パネルワーク8がある場合には、パネルワーク取出システム1を異常停止する(S2)。
吸着ヘッド4にパネルワーク8がない場合には、移動動作として、産業用ロボット2のアーム先端部21及び吸着ヘッド4を、パレット7におけるパネルワーク8の位置まで移動させる(S3)。
次いで、吸着動作として、吸着力発生装置5による吸着力を発生させて、吸着ヘッド4における複数の吸着パッド41A,41Bによってパネルワーク8の吸着を開始する(S4)。
【0033】
次いで、判定動作として、吸着動作を開始した後、所定時間内に吸着検出センサ61が吸着状態を検出したか否かを判定する(S5)。そして、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されたときには、取出動作として、アーム先端部21を移動させてパレット7からパネルワーク8を取り出す(S9)。一方、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されなかったときには、補正動作として、吸着動作を継続した状態で、特定吸着部41Aがパネルワーク8に近づく方向に移動するようアーム先端部21の姿勢を変更する(S6)。
【0034】
次いで、再び、判定動作として、所定時間内に吸着検出センサ61が吸着状態を検出したか否かを判定する(S7)。そして、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されなかったときには、パネルワーク取出システム1を異常停止する(S8)。
一方、判定動作において所定時間内に吸着状態が検出されたときには、取出動作として、アーム先端部21を移動させてパレット7からパネルワーク8を取り出す(S9)。
その後、産業用ロボット2が所定の位置までパネルワーク8を搬送し(S10)、吸着力発生装置5の吸着動作を停止する(S11)。以降、パレット7に載置されたパネルワーク8の数の分だけ、ステップS1〜S11を繰り返す。
【0035】
次に、パネルワーク取出システム1による作用効果につき説明する。
パレット7に保管されたパネルワーク8は、下端部83と一側端部81の上側部位811とが支持されていることにより、下端部83及び一側端部81に位置ずれが生じにくい一方、他側端部82の上側部位821には位置ずれが生じやすい。
パネルワーク8における他側端部82の上側部位821が、アーム先端部21によって移動した吸着ヘッド4の特定吸着パッド41Aに近づく方向に位置ずれしている場合には、判定動作において、所定時間内に吸着検出センサ61が吸着状態を検出すると考えられる。そして、所定時間内に吸着状態が検出された場合には、補正動作は行われない。
【0036】
これに対し、パネルワーク8における他側端部82の上側部位821が、アーム先端部21によって移動した吸着ヘッド4の特定吸着パッド41Aから離れる方向に位置ずれしている場合には、判定動作において、所定時間内に吸着検出センサ61が吸着状態を検出しない可能性が高くなる。そして、所定時間内に吸着状態が検出されなかった場合には、補正動作を行う。
図8、図9には、吸着ヘッド4における複数の吸着パッド41A,41Bを、吸着ヘッド4の側方から見た状態で示す。各図は、特定吸着パッド41Aと、特定吸着パッド41Aの対角位置にある一般吸着パッド41Bとが上下位置に見える状態で図示する。
【0037】
図8は、パネルワーク8が特定吸着パッド41Aから離れ、3つの一般吸着パッド41Bがパネルワーク8によって押し込まれた(圧縮された)状態が形成された吸着ヘッド4の周辺を示す。各吸着パッド41A,41Bは、吸着部材411が弾性変形されることによって、容易に圧縮されるようになっている。図9は、補正動作として、特定吸着パッド41Aがパネルワーク8に近づく方向に移動するように、アーム先端部21及び吸着ヘッド4の姿勢を変更した状態を示す。このときには、特定吸着パッド41A及び複数の一般吸着パッド41Bのすべてが、パネルワーク8に吸着する。
【0038】
この補正動作を行うことにより、パネルワーク8における他側端部82の上側部位821が、吸着ヘッド4の特定吸着部41Aから離れる方向に位置ずれしている場合でも、特定吸着パッド41Aを含めた複数の吸着パッド41A,41Bの全体によって、パネルワーク8を吸着することができる。
それ故、上記パネルワーク取出システム1によれば、ビジョンセンサ、クランプ等の特別な追加設備を追加することなく、ティーチングプログラムの変更といった簡単な方法によって、パネルワーク8の吸着不良を低減させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 パネルワーク取出システム
2 産業用ロボット
21 アーム先端部
3 制御装置
31 リモートコントローラ
4 吸着ヘッド
41A 特定吸着部(特定吸着パッド)
41B 一般吸着部(一般吸着パッド)
5 吸着力発生装置
50 エア回路
61 吸着検出センサ
7 パレット
71 下受部
72 側受部
8 パネルワーク
81 一側端部
82 他側端部
83 下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルワークを載置するパレットと、
該パレットに載置された上記パネルワークを取り出して移動させる産業用ロボットと、
該産業用ロボットを動作させる制御装置と、
上記産業用ロボットのアーム先端部に配設され、上記パネルワークを吸着する複数の吸着部を有する吸着ヘッドと、
上記複数の吸着部に吸着力を発生させる吸着力発生装置と、
上記複数の吸着部が上記パネルワークを吸着したときに、吸着状態を検出する吸着検出センサと、を備えており、
上記パレットは、上記パネルワークの下端部を支持する下受部と、上記パネルワークの一側端部の上側部位を支持する側受部とを有しているとともに、上記パネルワークの他側端部の上側部位が自由状態になるよう構成されており、
上記複数の吸着部は、上記パネルワークの他側端部に近い側の上側部位を吸着する特定吸着部と、上記パネルワークの他の部位を吸着する複数の一般吸着部とによって構成されており、
上記制御装置は、上記アーム先端部が移動し、上記吸着力発生装置による吸着力を受けて上記複数の吸着部が上記パネルワークを吸着する吸着動作と、
該吸着動作を開始した後、所定時間内に上記吸着検出センサが上記吸着状態を検出したか否かを判定する判定動作と、
該判定動作において上記所定時間内に上記吸着状態が検出されたとき、上記アーム先端部を移動させて上記パレットから上記パネルワークを取り出す取出動作と、を実行する制御プログラムを有しており、
該制御プログラムは、上記判定動作において上記所定時間内に上記吸着状態が検出されなかったときには、上記吸着動作を継続した状態で、上記特定吸着部が上記パネルワークに近づく方向に移動するよう上記アーム先端部及び上記吸着ヘッドの姿勢を変更する補正動作を実行するよう構成されていることを特徴とするパネルワーク取出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパネルワーク取出システムにおいて、上記吸着部は、弾性変形可能な吸着部材を有する吸着パッドであり、
上記吸着検出センサは、上記複数の吸着パッドが上記パネルワークを吸着したときに真空度が高くなることを利用して、上記パネルワークの上記吸着状態を検出するよう構成されていることを特徴とするパネルワーク取出システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパネルワーク取出システムにおいて、上記パレットは、上記パネルワークを横に並ぶ状態で複数載置するよう構成されており、
上記下受部は、上記パネルワークの下端部における2箇所を支持し、上記側受部は、上記パネルワークの一側端部の上側部位の1箇所と、場合に応じて上記パネルワークの他側端部の下側部位の1箇所とを支持するよう構成されていることを特徴とするパネルワーク取出システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のパネルワーク取出システムにおいて、上記制御プログラムは、上記アーム先端部及び上記吸着ヘッドを移動させながら教示を行ったティーチングプログラムであることを特徴とするパネルワーク取出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59819(P2013−59819A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198646(P2011−198646)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】