説明

パネル材の保持構造、コンクリート壁の補強方法

【課題】コンクリート壁にアンカーを介して支持部材を所定の位置に固定する際に、この支持部材を設ける位置に鉄筋などが干渉する場合であっても所定の位置に支持部材を固定できるようにする。
【解決手段】型枠構造20は、支持部材50の一端を鉄筋コンクリート壁1に固定し、他端に型枠パネル30を固定することで、型枠パネル30を鉄筋コンクリート壁1の表面と間隔をあけて保持する構造であって、端部の外周に螺条が形成されたあと施工アンカー70が鉄筋コンクリート壁1に表面から端部が突出するように打設され、支持部材50の一端には切欠きが形成されたベースプレート51が接続されており、あと施工アンカー70の端部が切欠き内に収容されるように支持部材50を配置し、あと施工アンカー70の突出する部分にナット71を締め付けることにより支持部材50の一端を鉄筋コンクリート壁1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁と間隔をあけて型枠パネルなどのパネル材を保持する構造及びこの構造を用いてコンクリート壁を補強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所における発電用機器の周囲には、四方を取り囲むように放射線を遮蔽するための鉄筋コンクリート造の遮蔽壁が設けられている。このような遮蔽壁を新たに構築したり、遮蔽壁に開口が設けられた場合にこの開口を閉鎖したりする方法として、壁体の表裏面に相当する位置に開口を塞ぐように鋼板パネルを設置し、内部にコンクリートを打設する方法が用いられる。このような鋼板パネルとしては例えば特許文献1及び2に記載されたものを用いることができる。
【0003】
また、本願出願人らは、設置作業に手間がかからない型枠構造として、図14に示すように、壁体の表裏面に相当する位置に面内の上下左右に並べて配置された型枠パネル330と、これら上下左右に隣接する型枠パネル30の角部に相当する位置に壁体の厚さ方向に延びるように配置された支持部材350とにより構成される型枠構造を提案している。
【0004】
各型枠パネル330は、その四隅には外周に螺条が形成されたスタッドボルト331が立設された正方形状の鋼板からなり、また、支持部材350は、棒状の鋼材352と、上下の縁の左右両側に切欠き部351Aが形成され、鋼材352の両端に接続された取付プレート351とからなる。型枠構造は、支持部材350を上下左右に隣接する4枚の型枠パネル330の角隅部の互いに突き合わされた位置に、取付プレート351の上下両辺が上下に向くように配置し、取付プレート351の切欠き部351Aに、上下左右に隣接する4枚の型枠パネル330の突き合わされた側の角隅部に設けられたスタッドボルト331を夫々収容し、スタッドボルト331に座金付ナット332を締め付けることで一体に構成されている(特願2008−202225)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−213077号公報
【特許文献2】特開平9−137592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような遮蔽壁に経年劣化が生じり、機器取替えに伴って放射線遮蔽能力を増強する必要が生じた場合などには、放射線遮蔽能力を補強するべく既存のコンクリート壁の増厚を行う。そこで、既存コンクリート壁の増厚にも、上記のような鋼板パネルを用いることが考えられるが、この際、支持部材の一端をコンクリート壁に固定する必要がある。支持部材の一端をコンクリート壁に固定する方法としては、既存のコンクリート壁に端部に螺条孔が形成されたアンカーボルトを打設し、また、アンカーボルトの端部の外周面に螺条を形成しておき、この螺条をアンカーボルトの螺条孔に螺合させることで、アンカーボルトに支持部材を固定する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、上記のように支持部材は鋼板パネルの角隅部の互いに突き合わされた位置に設けなければならないが、既存のコンクリート壁内の鉄筋がこの位置を通過している場合には、アンカーボルトを打設することができず、支持部材を固定することができない。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、コンクリート壁にアンカーを介して支持部材を所定の位置に固定する際に、この支持部材を設ける位置に鉄筋などが干渉する場合であっても所定の位置に支持部材を固定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパネル材の保持構造は、棒状の支持部材の一端をコンクリート壁に固定し、パネル材を前記支持部材の他端に固定することにより、前記パネル材を前記コンクリート壁の表面と間隔をあけて保持する構造であって、端部の外周に螺条が形成されたアンカーが前記コンクリート壁の表面から前記端部が突出するように前記コンクリート壁に打設され、前記支持部材の一端には切欠きが形成された板材が接続されており、前記板材の切欠き内に前記アンカーの端部が収容されるように前記支持部材を配置し、前記アンカーの突出する部分にナットを締め付けることにより前記支持部材の一端が前記コンクリート壁に固定されていることを特徴とする。
【0010】
上記のパネル材の保持構造において、前記パネル材は、当該パネル材と前記コンクリート壁の間にコンクリートを打設するための型枠パネルであってもよい。
また、前記支持部材はその長さを調整可能であってもよい。
【0011】
また、前記パネル材の角隅部には周囲に螺条が形成されたスタッドボルトが立設され、 前記支持部材の他端には切欠き部が形成された板材が接続されており、前記パネル材の前記スタッドボルトを前記板材の切欠き部に収容した状態で、前記スタッドボルトにナットを締め付けることにより、前記パネル材は前記支持部材の他端に固定されていてもよい。
【0012】
また、本発明のコンクリート壁の補強方法は、既存のコンクリート壁の補強方法であって、端部に螺条が形成れたアンカーを、前記コンクリート壁に前記端部が表面から突出するように打設するアンカー打設ステップと、一端に切欠きが形成された板材が接続された棒状の支持部材を、前記切欠きに前記アンカーの突出する部分が収容されるように配置し、前記アンカーにナットを締め付けることにより、前記支持部材の一端を前記コンクリート壁に固定する支持部材固定ステップと、前記支持部材の他端に型枠パネルを接続することにより、前記鉄筋コンクリート壁と間隔をあけて前記型枠パネルを保持する型枠パネル配置ステップと、前記コンクリート壁と前記型枠パネルとの間にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持部材の一端に接続された板材の切欠き内にアンカーを収容した状態でアンカーにナットを締め付けることにより支持部材をコンクリート壁に固定することとしたため、アンカーをずらして打設しても、支持部材を所定の位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】増厚工法による補強の対象となる鉄筋コンクリート壁を示す図である。
【図2】本実施形態の増厚工法に用いられる型枠構造を示す正面図である。
【図3】(A)は図2におけるA部の拡大図、(B)は鉛直断面図である。
【図4】本実施形態の型枠構造に用いられる型枠パネルを示す斜視図である。
【図5】型枠構造に用いられる支持部材を示す斜視図である。
【図6】(A)は、図3(A)におけるB部の拡大正面図であり、(B)は(A)におけるB−B断面図である。
【図7】開口パネルを示す斜視図である。
【図8】開口パネルの角隅部に相当する位置に設けられる支持部材を示す斜視図である。
【図9A】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9B】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9C】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9D】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9E】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9F】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9G】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図9H】鉄筋コンクリート壁を補強する方法を説明するための図(その1)である。
【図10】あと施工アンカーを打設すべき位置の墨出しをする方法を説明するための図である。
【図11】ベースプレートを取り付ける様子を示す図である。
【図12】コンクリートを打設する様子を示す図である。
【図13】正方形状の型枠パネルが複数枚連結された型枠パネルを示す斜視図である。
【図14】発明者らが提案する型枠構造を示す図であり、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の鉄筋コンクリート壁の増厚工法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、増厚工法による補強の対象となる鉄筋コンクリート壁1を示す図である。同図に示すように、鉄筋コンクリート壁1には、コンクリート4の内部に上下方向及び左右方向に延びるように鉄筋2,3が埋設されている。
【0016】
図2は、本実施形態の増厚工法に用いられる型枠構造20を示す正面図である。図3(A)は図2におけるA部の拡大図、(B)は鉛直断面図である。また、図4は、本実施形態の型枠構造20に用いられる型枠パネル30を示す斜視図であり、図5は、型枠構造20に用いられる支持部材50を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、本実施形態の型枠構造20は、鉄筋コンクリート壁1から所定の距離(増打ちされるコンクリートの厚さに相当)だけ離間した位置に壁面に平行に上下左右に並べて配置された型枠パネル30と、壁面に略垂直に立設され、その端部がこれら上下左右に隣接する型枠パネル30の角部に接続された支持部材50とにより構成される。
【0017】
また、上下左右方向に並んだ型枠パネル30において、所定の枚数ごと(図2に示す例では3枚ごと)に、型枠パネル30に代えて、外側に取り外し可能な開口パネル40(図中灰色に彩色して示す)が取り付けられている。
【0018】
図4に示すように、型枠パネル30は、正方形状の鋼板からなり、その四隅には外周に螺条が形成されたスタッドボルト31が立設されている。また、型枠パネル30の板厚は、後述するコンクリートの打設時の圧力により変形を生じないように決定されており、各辺の長さは、組立時の作業性を考慮して、1枚あたりの重量が20kg程度となるように(例えば一辺400mm程度に)決定されている。
【0019】
図5に示すように、支持部材50は棒状の鋼材52と、上下の縁の左右両側に切欠き部51Aが形成され、鋼材52の一端に接続された取付プレート53と、鋼材52の他端に接続されたベースプレート51とにより構成される。
【0020】
これら取付プレート53及びベースプレート51には、互いに逆向きの螺条が形成された螺条部(不図示)が接続されており、また、鋼材52はその両端部に取付プレート53及びベースプレート51の螺条部に対応した螺条が内部に形成された螺条孔を有する。そして、取付プレート53及びベースプレート51は、夫々の螺条部が、鋼材の両端の螺条孔に螺合することで、鋼材52に接続されている。かかる構成により、ベースプレート51に対する取付プレート53の角度を変更可能であるとともに、取付プレート53及びベースプレート51の姿勢を固定した状態で鋼材52を回転させることで、取付プレート53及びベースプレート51を離間又は近接させることができる(すわなち、支持部材50の全長を調整することができる)。
【0021】
ベースプレート51は、長方形状の鋼板からなり、一方の短辺中央に長方形状の切欠き部51Aが形成されている。支持部材50は、ベースプレート51の切欠き部51A内に鉄筋コンクリート壁1に打設されたあと施工アンカー70が収容されるように配置された状態で、あと施工アンカー70にナット71が締め付けられることで、鉄筋コンクリート壁1に固定される。
【0022】
取付プレート53に形成された切欠き部53Aの幅は、型枠パネル30に取り付けられたスタッドボルト31の径に比べて若干幅広く形成されている。図3に示すように、支持部材50は、上下左右に隣接する4枚の型枠パネル30の角隅部の互いに突き合わされた位置に、取付プレート53の上下両辺が水平となるように配置されている。
【0023】
上記のようにして、鉄筋コンクリート壁1の壁面にベースプレート51を固定し、さらに、取付プレート53の切欠き部53Aに、上下左右に隣接する4枚の型枠パネル30の突き合わされた側の角隅部に設けられたスタッドボルト31を夫々収容し、スタッドボルト31に座金付ナット57を締め付ける。これにより、上下左右に隣接する4枚の型枠パネル30が突き合わされた箇所において、これら型枠パネル30同士が互いに連結され、これら型枠パネル30が壁面から所定の間隔をあけて保持されることとなる。
【0024】
図6(A)は、図3(A)におけるB部(開口パネル40が取り付けられた部分)の拡大正面図であり、(B)は(A)におけるB−B断面図である。また、図7は、開口パネル40を示す斜視図であり、図8は、開口パネル40の角隅部に相当する位置に設けられる支持部材60を示す斜視図である。
【0025】
図7に示すように、開口パネル40は、正方形状の鋼板からなり、四隅に貫通孔40Aが設けられている。この開口パネル40に形成された貫通孔40Aは、後述する支持部材60の取付プレート63に設けられたスタッドボルト64の径に比べて若干大きな径に形成されている。
【0026】
また、図8に示すように、支持部材60A,60Bは棒状の鋼材62と、鋼材62の一端に接続されたベースプレート63と、鋼材62の他端に接続された取付プレート61とにより構成される。
【0027】
支持部材60Aの、開口パネル40の四隅に相当する部分に取り付けられるべき取付プレート63には、図中、上辺の左右両側及び下辺の左側の縁に切欠き部63Aが形成されており、下方右側近傍にはスタッドボルト64が取り付けられている。
【0028】
また、支持部材60Bの一方の取付プレート63には、図中、上辺の左右両側及び下辺の右側の縁に切欠き部63Aが形成されており、下方左側近傍にはスタッドボルト64が取り付けられている。
【0029】
図6に示すように、開口パネル40の四隅に相当する位置に取り付けられた支持部材60は、取付プレート61に取り付けられたスタッドボルト64が、開口パネル40側の四隅に相当する位置に外部側に向かって突出するように配置されている。なお、図6(A)における開口パネル40の左上及び右下には、図8に示す支持部材60Aが用いられており、開口パネル40の右上及び左下には、図8に示す支持部材60Bが用いられている。
【0030】
そして、開口パネル40の四隅に形成された貫通孔40Aに、夫々、支持部材60の取付プレート61のスタッドボルト64が挿通するように、開口パネル40を配置し、外部側からスタッドボルト64にナット67を締め付けることにより、開口パネル40が固定されている。
【0031】
以下、上記の型枠構造20を用いて、図1に示した鉄筋コンクリート造壁1を補強する方法を、図9A〜図9Hを参照しながら説明する。なお、図9A〜図9Hにおいて、(A)は正面図、(B)は壁厚方向の断面図である。
まず、鉄筋コンクリート壁1の鉄筋位置を鉄筋探査機(RCレーダー)により調査し、鉄筋コンクリート壁1の壁面に表示する。
【0032】
次に、あと施工アンカー70を打設するための墨出しを行う。あと施工アンカー70を打設すべき位置は、図10(A)に示すように、支持部材50の鋼材52が配置されるべき位置(以下、基準位置という)から所定の高さ(25mm)下方の位置に鉄筋2,3が埋設されていない場合には、この位置とする。また、この位置に鉄筋2,3が埋設されている場合には、あと施工アンカー70と鉄筋2,3が干渉するおそれがあるので、同図(B)に示すように、基準位置から斜め45°下方の位置又は同図(C)に示すように基準位置から側方に所定の距離(25mm)離れた位置とする。そして、図9Aに示すように、鉄筋コンクリート壁1の墨出しを行った位置に端部に螺条が形成されたあと施工アンカー70を端部が表面から突出するように打設する。
【0033】
次に、図9Bに示すように、縦筋100を配筋する。この際、縦筋100は補助材等を使用してあと施工アンカー70に支持させるとよい。
次に、図9Cに示すように、横筋110を下方から2段配筋する。
【0034】
次に、図9Dに示すように、最下段の型枠パネル30を左右方向に隙間無く配置する。この際、同図に示すように、予め、床面の型枠パネル30の角隅部が位置すべき箇所にあと施工アンカー80を打設しておき、このあと施工アンカー80に収容孔120Aが形成されたL型の鋼材からなる足元金物120を接続する。そして、この収容孔120Aに型枠パネル30のスタッドボルト31を収容させ、スタッドボルト31にナット32を締め付けることで最下段の型枠パネル30を固定する。また、最下段の型枠パネル30と床の間は適宜な部材により閉鎖しておく。なお、足元金具120を所定のレベルに設定するため、足元金具120と床面との間にレベル調整用の薄鋼板を適宜介在させてもよい。
【0035】
次に、図9Eに示すように、支持部材50の取付プレート53の切欠き部53Aに最下段の型枠パネル30の上部のスタッドボルト31を収容させるとともに、あと施工アンカー70がベースプレート51の切欠き部51Aに収容されるように支持部材50を配置し、あと施工アンカー70にナット71を締め付け、また、スタッドボルト31にナット57を締め付ける。
【0036】
この際、上記のように基準位置の下方にあと施工アンカー70を打設した場合には、図11(A)に示すように、ベースプレート51の長辺が鉛直方向になるように支持部材50を配置する。また、同図(B)に示すように、あと施工アンカー70を基準位置の斜め下方に打設した場合には、ベースプレート51の長辺が45°傾斜した状態に配置し、同図(C)に示すように、あと施工アンカー70を基準位置の側方に打設した場合には、ベースプレート51の長辺が水平になるように配置する。
【0037】
次に、鋼材52を回転させて、支持部材50に取り付けた各型枠パネル30が同一平面上に位置するように支持部材50の長さを調整する。これにより、鉄筋コンクリート壁1に凹凸があるような場合であっても、型枠パネル30の表面を平坦に調整することができる。
【0038】
次に、図9Fに示すように、横筋110を2段配筋する。
次に、図9Gに示すように、2段目の型枠パネル30を、下方の角隅部に設けられたスタッドボルト31が上記設置した支持部材50の取付プレート53の上方の縁に形成された切欠き部53Aに収容されるように配置する。そして、型枠パネル30の下方両側部のスタッドボルト31にナット57を締め付けて型枠パネル30を固定する。
【0039】
次に、図9Hに示すように、図9Eを参照して説明したのと同様に、ベースプレート51の切欠き部51Aにあと施工アンカー70が収容されるとともに、取付プレート53の下辺に形成された切欠き部53A内に型枠パネル30の上方のスタッドボルト31するように支持部材50を配置し、あと施工アンカー70にナット71を締め付け、また、スタッドボルト31にナット57を締め付ける。
次に、鋼材52を回転させて、支持部材50に取り付けた各型枠パネル30が同一平面上に位置するように支持部材50の長さを調整する。
【0040】
以上のように、横筋110を配筋する作業、支持部材50を取り付ける作業、及び支持部材50の長さを調整する作業を繰り返す。これにより、図2を参照して説明した型枠構造20を構築することができる。
【0041】
なお、上記のように、上下左右方向に並んだ型枠パネル30において、コンクリート打設時のコンクリートの投入や充填状況の目視確認、バイブレータ(振動装置)挿入のために、所定の枚数ごとに開口パネル40を取り付ける必要がある。かかる開口パネル40に相当する位置についての施工を行う場合には、以下のようにすればよい。
【0042】
まず、図9Eを参照して説明した支持部材50を配置する工程において、開口パネル40の取り付けられるべき位置の下方両側には、支持部材50に代えて図8を参照して説明した支持部材60を用い、スタッドボルト64が開口パネル40が嵌め込まれる側に位置するように支持部材60を配置する。
【0043】
次に、図9Gを参照して説明した工程では、水平方向に並ぶ同じ段の型枠パネル30を順次取り付けていく。この際、開口パネル40を取り付けてしまうと、次工程で支持部材60を固定する際にスタッドボルト64と開口パネル40が干渉してしまうため、開口パネル40に相当する部分には、開口パネル40を取り付けないでおく。
【0044】
次に、図9Hを参照して説明した工程では、開口パネル40の取り付けられるべき位置の上方両側の支持部材50に代えて支持部材60を用い、スタッドボルト64が開口パネル40の四隅に位置するように支持部材60を配置し、型枠パネル30のスタッドボルト31にナット32を締め付けることにより、支持部材60と型枠パネル30とを固定する。
【0045】
そして、上記配置された支持部材60のスタッドボルト64が、夫々貫通孔40Aを挿通するように外部側から開口パネル40を配置し、スタッドボルト64にナット67を締め付ける。この際、開口パネル40の貫通孔40Aは、スタッドボルト64の径に比べて若干大きな径であるため、開口パネル40を適宜移動して周囲の型枠パネル30に対して隙間なく配置することができる。
【0046】
次に、上記構築した型枠構造20と、鉄筋コンクリート壁1との間にコンクリートを打設する。コンクリートの打設作業は、開口パネル40を取り外し、この開口パネル40を取り外した箇所から行う。図12は、型枠構造20内にコンクリートを打設する様子を示す鉛直断面図である。同図に示すように、コンクリートを打設する際には、まず、最も低い位置に設けられた開口パネル40を取り外し、この箇所に上方から流し込まれたコンクリート81を型枠構造20の内部に流し込むように形成されたじょうご部材150を取り付ける。そして、このじょうご部材150を用いて型枠構造20と鉄筋コンクリート壁1との間にコンクリート81を流し込む。この際、じょうご部材150を取り付けた箇所の上方の開口パネル40を取り外し、開口パネル40を取り外した箇所から型枠構造20の内部に振動装置160を挿入して振動を加えるとよい。これにより、内部に流し込まれたコンクリート81を締め固めることができる。
【0047】
そして、型枠構造20内に打設されたコンクリート81の上面が、じょうご部材150が取り付けられた箇所の下端近傍まで到達したら、じょうご部材150を取り外し、開口パネル40を取り付ける。
【0048】
次に、上記の振動装置160を挿入していた開口パネル40を取り外した箇所にじょうご部材150を取り付け、この開口パネル40を取り外した箇所からコンクリート81を打設する。この際、上記の場合と同様に、さらに上方の開口パネル40が取り付けられるべき箇所から内部に振動装置160を挿入して振動を加える。
【0049】
上記説明した工程を上方に向かって繰り返すことにより、十分に締め固めを行いながら型枠構造20内にコンクリート81を打設していくことができる。なお、コンクリート81の打設作業は鉄筋コンクリート壁1の上下全長に亘って一括して行ってもよいし、複数回に分けておこなってもよい。
【0050】
コンクリート81の打設作業が完了したら、型枠パネル30の表面に所定の仕上塗料を塗布して仕上げを行う。この際、塗料を塗布するためには下地が乾燥している必要があるが、本実施形態では、型枠パネル30及び開口パネル40は不透水性の鋼板で構成されており、乾燥が不要となる。
以上の工程により、鉄筋コンクリート壁1の補強が完了する。
【0051】
本実施形態によれば、支持部材50のベースプレート51を取付プレート53に対して回動可能とし、このベースプレート51をあと施工アンカー70に固定することにより、支持部材50を鉄筋コンクリート壁1に固定することとしたため、あと施工アンカー70を基準位置の下方以外の箇所に打設した場合であっても、支持部材50の取付プレート53を所定の位置に配置することができる。このため、鉄筋コンクリート壁1の基準位置の下方に相当する位置に鉄筋2、3が埋設されている場合であっても、あと施工アンカー70を基準位置の側方や斜め下方などに打設して支持部材50を固定することができる。
【0052】
また、支持部材50を伸縮可能な構成としたため、鉄筋コンクリート壁1の表面に凹凸がある場合であっても、型枠パネル30の表面を平坦に形成することができる。
【0053】
また、型枠パネル30を、その四隅に設けられたスタッドボルト31が支持部材50の切欠き部53Aに収容するように建て込むことにより、型枠パネル30が所定の位置に建て込まれるため、容易に型枠パネル30の間に隙間が生じないように建て込むことができる。このため、技能を有していない作業員であっても型枠構造の設置作業を行うことができ、また、施工の手間を削減することができる。
【0054】
また、上記のように、支持部材50の取付プレート53に形成された切欠き部53A内に、スタッドボルト31を収容した状態でナット32をスタッドボルト31に締め付けることにより、型枠構造20を構築することができるため、型枠工などの技能工でなくても型枠構造20の設置作業を行うことができる。
【0055】
また、型枠構造20内にコンクリートを打設する際に、コンクリートに振動を加えることができるため、ジャンガなどの発生を防止することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、正方形状の型枠パネル30を用いる場合について説明したが、これに限らず、長方形状の型枠パネルを用いてもよい。また、図13に示すように、正方形状の型枠パネル30が複数枚(図では2枚)連結された型枠パネル130を用いてもよく、このような場合には、正方形状のパネル30と併用することができる。このような型枠パネル130を用いる場合には、型枠パネル130の上下の辺の中央に相当する位置にも、支持部材50を配置することとしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、型枠パネル30の四隅にスタッドボルト31を立設するとともに、取付プレート53に切欠き部53Aを形成しておき、スタッドボルト31を切欠き部53Aに収容した状態でスタッドボルト31にナット57を締め付けることで、型枠パネル30を支持部材50に固定することとしたが、型枠パネル30と支持部材50との固定方法はこれに限られず、いかなる方法により型枠パネルを支持部材に固定する場合であっても、支持部材を鉄筋コンクリート壁1の所定の箇所にあと施工アンカーを介して固定する場合であれば本発明を適用できる。
【0058】
また、本実施形態では、型枠パネルを支持部材により支持する場合について説明したが、これに限らず、鉄筋コンクリート壁の外装としてタイルや石、パネルを固定する際に、鉄筋コンクリート壁にあと施工アンカーを打設し、このあと施工アンカーに支持部材を固定し、この支持部材によりタイルや石、外装パネルなどのパネル材を支持する場合など、鉄筋コンクリート壁1の所定の箇所にあと施工アンカーを打設し、あと施工アンカーに支持部材を接続する場合であれば、本発明を適用できる。
【0059】
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート造の壁に増厚補強を行う際に本発明を適用した場合を説明したが、これに限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造、又は鉄骨コンクリート造の壁に増厚補強を行う際にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 鉄筋コンクリート壁 2,3 鉄筋
4 コンクリート
20 型枠構造 30 型枠パネル
31 スタッドボルト 32 ナット
40 開口パネル 50、60支持部材
51、61 ベースプレート 52、62 鋼材
53、63 取付プレート 57 ナット
64 スタッドボルト 70、80 あと施工アンカー
71 ナット 81 コンクリート
100 縦筋 110 横筋
120 足元金具 130 型枠パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の支持部材の一端をコンクリート壁に固定し、パネル材を前記支持部材の他端に固定することにより、前記パネル材を前記コンクリート壁の表面と間隔をあけて保持する構造であって、
端部の外周に螺条が形成されたアンカーが前記コンクリート壁の表面から前記端部が突出するように前記コンクリート壁に打設され、
前記支持部材の一端には切欠きが形成された板材が接続されており、
前記板材の切欠き内に前記アンカーの端部が収容されるように前記支持部材を配置し、前記アンカーの突出する部分にナットを締め付けることにより前記支持部材の一端が前記コンクリート壁に固定されていることを特徴とするパネル材の保持構造。
【請求項2】
請求項1記載のパネル材の保持構造であって、
前記パネル材は、当該パネル材と前記コンクリート壁の間にコンクリートを打設するための型枠パネルであることを特徴とするパネル材の保持構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパネル材の保持構造であって、
前記支持部材はその長さを調整可能であることを特徴とするパネル材の保持構造。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載のパネル材の保持構造であって、
前記パネル材の角隅部には周囲に螺条が形成されたスタッドボルトが立設され、
前記支持部材の他端には切欠き部が形成された板材が接続されており、
前記パネル材の前記スタッドボルトを前記板材の切欠き部に収容した状態で、前記スタッドボルトにナットを締め付けることにより、前記パネル材は前記支持部材の他端に固定されていることを特徴とするパネル材の保持構造。
【請求項5】
既存のコンクリート壁の補強方法であって、
端部に螺条が形成れたアンカーを、前記コンクリート壁に前記端部が表面から突出するように打設するアンカー打設ステップと、
一端に切欠きが形成された板材が接続された棒状の支持部材を、前記切欠きに前記アンカーの突出する部分が収容されるように配置し、前記アンカーにナットを締め付けることにより、前記支持部材の一端を前記コンクリート壁に固定する支持部材固定ステップと、
前記支持部材の他端に型枠パネルを接続することにより、前記鉄筋コンクリート壁と間隔をあけて前記型枠パネルを保持する型枠パネル配置ステップと、
前記コンクリート壁と前記型枠パネルとの間にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップと、を備えることを特徴とするコンクリート壁の補強方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【図3】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−153435(P2011−153435A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14558(P2010−14558)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(591151808)株式会社環境総合テクノス (23)