説明

パネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法

【課題】各種建物に用いられるパネルの積載、運搬及び建て込み時の効率化を図ったパネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法を提供する。
【解決手段】パネル積載ラック100は、底面を構成する基台部材10と、基台部材10の両端にそれぞれ交差して配設される架設部材20と、架設部材20の上方に延設される複数の支柱部材30,40と、支柱部材30,40間を連結すると共に支柱部材30,40と着脱可能に配設されるつなぎ部材50と、上方に吊り上げられるための外力が加えられる吊り上げ支援部材60と、を備えている。支柱部材30,40には、少なくとも略水平な第1の辺と、第1の辺の上方に延設され、第1の辺と鋭角を成す第2の辺と、を有する切り欠き部が上下方向に複数連続して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法に係り、特に、各種建物に用いられるパネルの積載、運搬及び建て込み時の効率化を図ったパネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業化された各種建物に用いられる外壁用等の各種パネルは、工場で予め生産されてトラックにより建築現場に運搬される。そして、建築現場まで運搬されたパネルが順次建て込まれることにより、建築作業が進められる。
【0003】
従来から、各種パネルの運搬時には、パネルを積載、運搬するためのラックが用いられ、パネル面が垂直に向くように立てた状態でパネルが積載、運搬されることが一般的であった(特許文献1)。このように、パネルを立てた状態で積載、運搬すると、建築現場において建て込み作業を行う際、必要なパネルを選択して取り出すことが可能となるため、建て込み作業の効率が良い。
【0004】
しかし、パネルを立てた状態で運搬する場合、パネルを積載するトラックの高さ制限があることから、高さの大きいパネルを運搬する際は、パネルを立てた状態で運搬することが難しかった。したがって、特に高さの大きいパネルを運搬する必要があるときは、パネル面が水平になるように(すなわち、平積み状態で)載置し、各パネル間に緩衝材となるリン木を配設してパネルを積み重ねた状態でトラックに積載して固定し、運搬する方法が用いられていた。
【0005】
パネルが平積み状態で積載された場合、建築現場における建て込み時、パネルは上方に載置されたものから順に建て込まれる。そして、特に外壁パネル等のように、比較的大きく、且つパネル面を立てた状態で建て込まれるパネルは、パネルの上端2点を玉掛けして吊り上げられた後、作業者が下端を手で押さえて支点として吊り上げられることにより、立て起こしが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−132449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の壁パネル運搬用ラックは、パネル面が垂直な状態でパネルを積載、運搬するものである。しかしながら、上記のように、パネルの高さが積荷高さとなるため、積載されるトラックの大きさが制限されるという問題点があった。さらに、パネルを建てた状態で保持するためにはラックが大型化し、輸送コストが嵩むという不都合があった。
【0008】
また、パネルを生産する工場において、パネル面が垂直な状態とした後にラックに対して吊り込む必要があるが、パネルが工場の製造ラインから取り出される際、パネル面は水平となった状態で取り出されるのが一般的である。したがって、ラックにパネルを積載するためにはパネルを立て起こす必要があり、パネルをラックに積載する作業が煩雑であり、効率が良くないという不都合があった。
【0009】
一方、パネルを平積みして運搬する場合は、建築現場において、上方に積載されたパネルから建て込み作業を行わなければならず、施工計画を設計する際の自由度が低く、作業効率の改善が難しかった。さらに、パネルを平積みして積載、運搬した場合、緩衝材を各パネル間に挟み込んでも、運搬時にパネルが位置ずれし、表面が擦り傷等によって損傷することがあるという問題点があった。また、各パネルの位置ずれ防止のために各パネルを押圧して荷締めすると、パネルに外力が加わり、面材割れやパネルの変形及び損傷が生じるという問題点があった。さらにまた、緩衝材を挟み込むと、緩衝材の体積が大きく、その結果、積載時の体積が大きくなり、運搬効率が低下するという不都合があった。
【0010】
また、平積みされた状態から2点吊りによってパネルの吊り上げを行うと、吊り上げが行なわれている上側のパネルの下端部と、その下段に積載されている下側のパネルとが接触し、上側のパネルの下端部及び下側のパネルの塗装面等が損傷するおそれがあった。
【0011】
本発明は、上記不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、各種建物に用いられるパネルの積載、運搬及び建て込み時の効率化を図ったパネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、パネルの積載、運搬時において、パネルの変形及び損傷を防止することが可能な積載運搬用ラック及びパネルの収納取出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、本発明のパネル積載ラックによれば、建物を構成するパネルの収容空間の底面を構成する基台部材と、該基台部材の両端にそれぞれ交差して配設される長尺の架設部材と、該架設部材の長手方向に所定間隔をおいて配設されると共に上方に延設される複数の支柱部材と、該支柱部材のうち隣り合って配設された支柱部材間を連結すると共に前記支柱部材と着脱可能に配設されるつなぎ部材と、上方に吊り上げられるための外力が加えられる吊り上げ支援部材と、を備えたパネル積載ラックであって、前記支柱部材には、少なくとも略水平な第1の辺と、該第1の辺の上方に延設されると共に前記第1の辺と鋭角を成す第2の辺と、を有する切り欠き部が上下方向に複数連続して形成されてなること、により解決される。
【0013】
以上のように、本発明のパネル積載ラックでは、ラックを構成する支柱部材に、切り欠き部が設けられている。そして、この切り欠き部は、略水平となるように形成された第1の辺と、第1の辺と鋭角を成すように上方に延設される第2の辺とによって切除された構成である。
したがって、パネルの側面に突出した棒状部材を備えておくことによって、この棒状部材を切り欠き部に懸着するだけで、パネル積載ラックに対し、パネルの面が水平な状態で容易にパネルを積載することができる。このように、パネルの面が水平な状態でパネルを積層することが可能であるため、パネルの面を垂直な状態で積載した場合のように、トラック等に積載するときの高さ制限を受けることがない。
また、支柱部材において、複数の切り欠き部が連続して設けられているため、パネル自体の厚さや、パネルの外面に予め取り付けられた外装付属部材の突出量に応じて、パネルを掛着する位置を適宜選択することができ、厚さの異なるパネルをパネル積載ラックに積載することができる。したがって、パネルの外形に関係なく、一つのラックに多様なパネルを積載することができるため、運搬効率が向上する。
さらに、パネルを掛着するために適当な位置の切り欠き部を適宜選択することにより、複数のパネルを高さ方向に所定距離離間させた状態で、パネル積載ラックに積載することができる。すなわち、ラックに積載されたパネル同士の接触を回避することができるため、例えば、ラックの輸送時における振動や衝撃によるパネル同士の接触により、パネルの塗装面等が損傷する等の不都合を回避することができる。また、パネルが、その上方に積載される他のパネルからの荷重を受けないため、パネルの変形や損傷を防止することができる。
また、本発明のパネル積載ラックでは、ラックが上方に吊り上げられるための外力が加えられる吊り上げ支援部材を備えている。したがって、パネルの面が水平な状態(すなわち、平積みの状態)でパネルを建築現場まで運搬した後、ラックを上方に吊り上げることにより、ラックを90度回転させ、立て起こすことができる。その結果、積載されたパネルはその面が垂直方向になるように載置される。
本発明のパネル積載ラックは、支柱部に上記構成の切り欠き部が設けられているため、ラックを立て起こした際にもパネルが脱落することなく保持され、且つ、パネルの取出し時はパネルを上方に吊り上げるだけで、容易にパネルの取出しを行うことができる。また、パネルを上方に吊り上げて取り出すことが可能となるため、建築現場におけるパネルの取出しが容易となり、建築作業の進行状況に対応させて、適宜必要なパネルを取出すことができる。パネルを平積みして運搬する場合は、パネルの積層順に建築作業を進める必要があったが、上記構成のラックを用いるとパネルの取出し順を任意とすることが可能となるため、作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0014】
このとき、前記切り欠き部は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に、下方に凹設された凹欠部をさらに備えてなると好適である。
このように、切り欠き部において下方に凹設された凹欠部を備えていると、パネルの側面に突設された棒状部材が凹欠部に嵌合しやすい。したがって、切り欠き部において第1の辺と第2の辺との間に凹欠部が形成されていることにより、パネル積載ラックにおいてパネルが強固に保持される。したがって、パネルを積載し、さらに90度回転させて立て起こす際もパネルが強固に保持されているため、パネルの脱落を防止し、建築作業を効率よく行うことが可能となる。また、パネルの脱落による損傷を防ぐことができる。
【0015】
また、前記架設部材の一端側には、該架設部材を介して対向する一組の側壁と、該一組の側壁の下方を連結する底面部と、を備えた回転支援部材が配設されてなると好ましい。
このように、パネルの積載時に支柱部材よりも下方に配設される架設部材の一端には、回転支援部材が備えられている。回転支援部材は、パネル積載ラックが建築現場に運搬され、その後、90度回転させて立て起こされる時、地面に接地することによってその回転する動きを支援するものである。したがって、パネル積載ラックの立て起こし作業を円滑に行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0016】
さらに、前記架設部材と、前記つなぎ部材とに架設された補強部材をさらに備えてなると好適である。
このように、架設部材とつなぎ部材とに架設された補強部材を備えることにより、パネル積載ラック全体の剛性を高めることができる。したがって、パネルが積載された状態で略90度立て起こす作業を行う際、パネルの荷重によるパネル積載ラックの変形・損傷を防止することができると共に、スムーズに立て起こし作業を行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0017】
また、前記課題は、本発明のパネルの収納取出し方法によれば、請求項1乃至4のいずれか一項のパネル積載ラックを用いたパネルの収納取出し方法であって、少なくとも前記基台部材と、前記架設部材と、前記支柱部材とを組み立てる前記パネル積載ラック組み立て工程と、前記パネル積載ラックに前記パネルの面が略水平となるように積載するパネル積載工程と、前記パネルが積載され、建築現場に運搬された後に前記パネル積載ラックに懸吊手段を設置する懸吊手段設置工程と、前記懸吊手段によって前記パネル積載ラックを略90度回転させ、前記パネルの面が略垂直となるように立て起こすラック立て起こし工程と、前記パネルを垂直方向に吊り上げて前記パネル積載ラックから取出すパネル取出し工程と、を順に備えること、により解決される。
【0018】
以上のように、本発明のパネルの収納取出し方法によれば、パネルの積載時はパネル面が略水平となるため、パネルを積載しやすい。また、パネル積載ラックの所定高さ以上にパネルが積載されることがないため、運搬時、トラック等の運搬車両が大型化することがなく、使用可能な運搬車両が限定されることがない。
さらに、パネル積載ラックを略垂直に立て起こす工程を備えており、さらにその状態を保持したままパネルを上方に吊り上げて取り出すことができるため、パネルの取出し作業を効率よく行うことができる。
上述のように、パネル面を水平にして積載した場合には、積載されたパネルを上方から順に取り出さねばならず、建築現場における建て込み作業は、パネルが積載された順に依存することが多かったが、パネル面を略垂直に維持した状態で、パネル積載ラックから任意のパネルを上方に吊り上げて取り出すことが可能である。したがって、建て込み作業の作業順において任意に必要なパネルを取り出すことが可能となるため、建て込み作業の効率を飛躍的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るパネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法によれば、各種建物に用いられるパネルを平積みすることによって積載、運搬に係る作業を効率化することができ、さらにパネルの取出し作業を効率化することができるため、建て込み時の作業もまた飛躍的に効率化することができる。
また、本発明に係るパネル積載ラック及びパネルの収納取出し方法によれば、パネルの積載、運搬時において、パネル同士を離間して積層、運搬し、さらにパネルの取出し時はパネルの面を垂直にしてから吊り上げて取り出すことが可能であるため、パネルの変形及び損傷を防止することが可能となる。
さらに、パネル積載時と取出し時のパネルの面方向が異なるにも関わらず、パネルの積載、取出しを容易に行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネル積載ラックを説明する斜視図である。
【図2】パネル積載ラックの正面図である。
【図3】図1のA−A線に相当する断面図である。
【図4】(a)支柱部材の要部拡大説明図である。(b)図4(a)のB−B線に相当する断面図である。
【図5】(a)支柱部材の要部拡大説明図である。(b)図5(a)のC−C線に相当する断面図である。
【図6】基台部材の斜視図である。
【図7】基台部材と支柱部材と架設部材の取り付け状態を説明する説明図である。
【図8】架設部材に取り付けられた回転支援部材を説明する説明図である。
【図9】パネル積載ラックにパネルを積載した状態を説明する説明図である。
【図10】パネルとパネル固定部材との分解説明図である。
【図11】パネル固定部材を装着した状態を示す説明図である。
【図12】(a)パネル積載ラックにパネルを積載する時の動きを説明する説明図である。(b)パネル積載ラックにパネルを積載した状態の説明図である。(c)パネル積載ラックの運搬時の状態の説明図である。
【図13】パネル積載ラックを回転させる時の動きを説明する説明図である。
【図14】パネル積載ラックの回転後の状態を説明する説明図である。
【図15】本発明の一実施形態に係るパネル積載ラックを用いたパネルの収納、取出し方法を示す工程図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るパネル積載ラックを説明する説明図である。
【図17】基台部材と中間架設部材との取り付け状態を説明する説明図である。
【図18】(a)中間架設部材に中間受け部材を取り付けるときの動きを説明する説明図である。(b)中間架設部材に中間受け部材を装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態について、図1乃至図14を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0022】
図は、本発明の実施形態を示すものであり、図1乃至図14は、本発明の一実施形態に係るパネル積載ラックに係り、図1はパネル積載ラックを説明する斜視図、図2はパネル積載ラックの正面図、図3は図1のA−A線に相当する断面図、図4(a)は支柱部材の要部拡大説明図、図4(b)は図4(a)のB−B線に相当する断面図、図5(a)は支柱部材の要部拡大説明図、図5(b)は図5(a)のC−C線に相当する断面図、図6は基台部材の斜視図、図7は基台部材と支柱部材と架設部材の取り付け状態を説明する説明図、図8は架設部材に取り付けられた回転支援部材を説明する説明図、図9はパネル積載ラックにパネルを積載した状態を説明する説明図、図10はパネルとパネル固定部材との分解説明図、図11はパネル固定部材を装着した状態を示す説明図、図12(a)はパネル積載ラックにパネルを積載する時の動きを説明する説明図、図12(b)はパネル積載ラックにパネルを積載した状態の説明図、図12(c)はパネル積載ラックの運搬時の状態の説明図、図13はパネル積載ラックを回転させる時の動きを説明する説明図、図14はパネル積載ラックの回転後の状態を説明する説明図であり、図15はパネル積載ラックを用いたパネルの収納取出し方法を示す工程図であり、図16乃至図18は本発明の他の実施形態のパネル積載ラックに係り、図16はパネル積載ラックを説明する説明図、図17は基台部材と中間架設部材との取り付け状態を説明する説明図、図18(a)は中間架設部材に中間受け部材を取り付けるときの動きを説明する説明図、図18(b)は中間架設部材に中間受け部材を装着した状態を示す説明図である。
【0023】
なお、以下の説明における「前後方向」とはパネル積載ラック100が組み立てられた状態における基台部材10の長手方向に沿う方向を指すものであり、「左右方向」とはパネル積載ラック100が組み立てられた状態における架設部材20の長手方向に沿う方向を指すものであり、「上下方向」とは、パネル積載ラック100が組み立てられた状態における支柱部材30,40の長手方向に沿う方向を指すものである。
【0024】
(パネル積載ラック100の構成)
図1乃至図11を参照して、本発明のパネル積載ラック100について説明する。
本発明のパネル積載ラック100は、建物を構成するパネル200(主として外壁パネル)を容易に積載、運搬するために用いられる。
【0025】
本実施形態に係るパネル積載ラック100は、パネル200の収容空間Sの底面を構成する基台部材10と、この基台部材10の上方に配設され、基台部材10の両端に対して略垂直となるようにそれぞれ交差して配設される長尺の架設部材20と、架設部材20の長手方向に所定間隔をおいて配設されると共に上方に延設される複数(本実施形態では少なくとも4本)の支柱部材30,40と、この支柱部材30,40に懸架するように配設されると共に支柱部材30,40とは着脱可能に取り付けられたつなぎ部材50と、基台部材10、架設部材20、支柱部材30,40及びつなぎ部材50のいずれかに取り付けられた、上方に吊り上げられるための外力が加えられる複数の吊り上げ支援部材60と、を備えている。
【0026】
本実施形態における基台部材10の本体部11、架設部材20の本体部21及びつなぎ部材50の本体部51は、それぞれ角パイプ状の長尺部材により形成されている。
しかし、基台部材10、架設部材20及びつなぎ部材50は、図1で示すように、各部材に対して嵌合により着脱可能で、吊り上げ支援部材60を取付けることが可能であれば、パイプ状の長尺部材に限られることがなく、板体等で形成することも可能である。
【0027】
(基台部材10)
基台部材10は、パネル積載ラック100の土台となるもので、本実施形態では、地面上に三本の長尺部材を用いて、左右方向に所定の間隔をあけ、その長手方向が前後方向となる向きで配置されている。なお、本実施形態では、軽量化のために、基台部材10として、三本の長尺部材を用いているが、所定幅の板体や、全面を板体としたものであってもよい。そして、基台部材10には、長尺部材からなる本体部11と、本体部11の両端に配設され、上方が開口するように所定距離離間し、対向して配設された一組の板片13a,13bとが備えられている。板片13a,13bは、後述する架設部材20の本体部21の前後方向の幅よりも若干大きな幅で離間して配設されている。
【0028】
また、基台部材10には、長手方向の中間に、上方に突出した係合突起12が形成されている。この係合突起12は、上方に向かって逆U字型に形成されており、隣り合って配設される基台部材10にもまた形成されている。隣り合って形成された係合突起12は、前後方向において同じ位置に形成され、中間架設部材80と係合することによって、中間架設部材80が架設される。本実施形態では、一本の基台部材10に対して一つの係合突起12が形成されているが、複数形成されていてもよい。なお、中間架設部材80の構成・作用は後述する。
【0029】
(架設部材20)
架設部材20は、複数配設された基台部材10に架設されるもので、本実施形態では、三本の基台部材10の前後方向の両端をそれぞれ連結するように配設されている。図3に示すように、基台部材10の本体部11の両端には、それぞれ一組の板片13a,13bが取り付けられており、この板片13a,13bの間に架設部材20(図1参照)の本体部21と、後述する支柱部材30の第1の係合部32が重ねられて嵌入される。そして、これらの部材にはそれぞれ対応する位置に係合孔が設けられており、最も外側に配設された板片13aから収容空間S側に配設された板片13bまでを貫通するように配設された締結手段であるボルト14aと、ナット14bによって締結固定される。このように、基台部材10と、架設部材20と、支柱部材30とが一箇所で連結された構成とすると、作業効率が向上するため好ましい。
【0030】
なお、板片13a,13b、架設部材20、係合部32が強固に固定される構成であれば、その締結手段はこれに限定されるものではない。また、板片13aは本体部11の端部を一部長く形成し、上方に折曲した構成であり、板片13bは本体部11の上表面に断面L字型の板材を固着した構成であるが、上記のように、架設部材20及び支柱部材30を強固に固定することができれば、この構成に限定されるものではない。例えば、U字形状の板材が架設部材20の上表面に固定された構成としても良い。
なお、支柱部材40に関し、基台部材10,架設部材20,つなぎ部材50との接合関係は同じであるため、図3には便宜上、共通する部分の符号も合わせて括弧内に記載している。
【0031】
そして、架設部材20において、長尺部材からなる本体部21には、一方の末端に、回転支援部材22が取り付けられている。なお、回転支援部材22の構成・作用は後述する。
【0032】
(支柱部材30,40)
支柱部材30,40は、本実施形態では四本(支柱部材30と支柱部材40がそれぞれ対向する位置に二本ずつ)設けられており、前記したように、基台部材10の前後方向の両端に固定されている。支柱部材30,40には、長尺部材からなる本体部31,41と、本体部31,41の下端及び上端に、それぞれ架設部材20等と係合して固定される第1の係合部32,42と、後述するつなぎ部材50と係合して固定される第2の係合部33,43が備えられている。第1の係合部32,42及び第2の係合部33,43は、本体部31,41に対して溶接等の手法により固着接合されている。
【0033】
第1の係合部32,42は、下方に向かって開口した断面コ字形状に形成されており、架設部材20の本体部21と係合するように、本体部21の長手方向に沿って延設されている。
また、架設部材の20の本体部21の短手方向の幅よりも若干大きい間隔で離間して配設され、第1の係合部32,42を構成する側壁32a,32b,42a,42bには、上記のように、ボルト14a、ナット14bが挿入可能な係合孔が設けられている。
【0034】
第1の係合部32,42は、側壁32a,32b又は側壁42a,42bによって架設部材20の本体部21を挟み込む構成であるため、支柱部材30,40を取り付ける際、支柱部材30,40が傾倒することなく、安定して架設部材20上に載置することができるため、パネル積載ラック100の組み立て時に作業しやすい。
【0035】
そして、第1の係合部32,42の天面部32c,42c(側壁32a,32b又は側壁42a,42bをそれぞれ連結し、架設部材20の上方に配設される部分)に溶接等の手法により固着された本体部31,41は、基台部材10の上方へ延出するように設けられている。このパネル積載ラック100を構成する支柱部材30,40は、パネル積載ラック100をトラック等の運搬車両の荷台に積み込んだときに、その高さ寸法が運搬車両の輸送高さ制限を越えることがない程度の長さに設定されている。
【0036】
そして、支柱部材30,40の本体部31,41は、図4(b),図5(b)に示すように、板状の部材を断面鉤状となるように折曲されて形成されている。そして、パネル積載ラック100の左右方向に沿って設曲された支持面31a,41aには、本体部31,41の長手方向(すなわち、上下方向)に沿って、複数の切り欠き部31b,41bが連続して設けられている。なお、複数の切り欠き部31b,41bが形成可能な支持面31a,41aを備えていれば、本体部31,41は、必ずしも断面鉤状である必要はなく、断面コ字型、断面L形等、他の形状としても良い。
【0037】
切り欠き部31b,41bは、略水平となるように形成された第1の辺31c,41cと、第1の辺31c,41cの上方に延設されて鋭角を形成する第2の辺31d,41dによって形成される。なお、図5(a)には、第1の辺41cが上方に滑らかに膨出し手形成された例を示しているが、少なくともその接線が略水平となる辺であればよい。この時、第1の辺31c,41cと第2の辺31d,41dが形成する角度θ(図5の切り欠き部41bにおいては第1の辺41cの水平な接線と第2の辺41dとが成す角度)としては、略45度程度とすると、パネル200を積載しやすくなるため好ましい。パネル200を積載する構成に関しては後述する。
【0038】
そして、第1の辺31c,41cと第2の辺31d,41dとの間には、少なくともその一部が第1の辺31c,41cよりも下方に凹設された円弧状の凹欠部31e,41eが形成されている。なお、図4(a)は、凹欠部31eが長穴形状に形成されているが、凹欠部31e,41eの少なくとも一部が第1の辺31c,41cよりも下方に形成されていればよい。
【0039】
凹欠部31e,41eが設けられていることにより、後述するパネル固定部材210を構成する棒状の部材(軸部211a)が凹欠部31e,41eに嵌合しやすくなるため、パネル200を支柱部材30,40に保持させる際に保持させやすい。また、支柱部材30,40に固定されたパネル200を取り外すとき、パネル200をわずかに移動させ、凹欠部31e,41eに嵌合した軸部211aの位置をずらすだけで容易にパネル200を取り外すことができる。したがって、パネル200の積載、取出しを容易に行うことができる。
【0040】
切り欠き部31b,41bは、複数の支柱部材30,40のすべてに設けられるが、その開口部は、支柱部材30,40において左右何れか一方側に向けて形成される。つまり、パネル積載ラック100を90度回転させて立て起こす際に上方となる側に開口部が備えられる形状となっている。この構成とすることにより、パネル積載ラック100が立て起こされた状態となっても、パネル200が脱落することなく、好適に保持される。
【0041】
切り欠き部31b,41bは、支持面31a,41aに対してレーザー加工等の技術を施すことにより形成される。なお、本実施形態では、支柱部材30,40に設けられる切り欠き部31b,41bが若干異なる形状である例を示しているが、支柱部材30,40において同形状の切り欠き部が備えられていても良い。
【0042】
支柱部材30,40の支持面31a,41aには、複数の切り欠き部31b,41bがそれぞれ連続して形成されているが、本実施形態では、隣り合う切り欠き部31b,41bを構成する第1の辺31c,41cは、それぞれ8cm程度の間隔で設けられている。そして、切り欠き部31b,41bの開口部から凹欠部31e,41eまでの距離は3〜6cm程度となるように設けられている。
なお、上記寸法は一例を示すものであり、必ずしも上記値に限定されるものではない。
【0043】
上記構成の切り欠き部31b,41bは、パネル積載ラック100の左右方向において、その開口する向きを左、又は右の何れか一方向に向けて形成されている。そして、切り欠き部31b,41bの開口部が向く方向において、基台部材10、架設部材20、支柱部材30,40及びつなぎ部材50のいずれかの部材の長手方向の端部に吊り上げ支援部材60が取り付けられる。なお、吊り上げ支援部材60の構成・作用は後述する。
【0044】
また、本体部31,41の下方端部において、それぞれ第1の係合部32,42の天面部32c,42cと本体部31,41とに架設される板片からなる第1の補強部34,44が備えられていても良い。このとき、第1の補強部34,44は、パネル積載ラック100の左右方向において、切り欠き部31b,41bが形成されていない方の側に溶接等の手法により固着接合される。本実施形態では、本体部31,41の支持面31a,41aに対して略垂直に折曲された面に接合されている。なお、第1の補強部34,44は、本体部31,41等と同様、十分な剛性を備えた金属製の板材によって構成されていると好ましい。
【0045】
上記構成の切り欠き部31b,41bは、後述するパネル固定部材210と係合することにより、パネル200をパネル積載ラック100に積載することができる。なお、パネル固定部材210の構成・作用は後述する。
【0046】
そして、本体部31,41の上方側の末端には、第2の係合部33,43が形成されている。第2の係合部33,43は、上方に向かって開口した断面コ字形状に形成されており、つなぎ部材50の本体部51と係合するように、本体部51の長手方向に沿って延設されている。
【0047】
第2の係合部33,43は、つなぎ部材50の本体部51の短手方向の幅よりも若干大きい間隔で離間して、本体部51を挟み込むように配設された、側壁33a,33b,43a,43bをそれぞれ備えている。そして、側壁33a,33bと側壁43a,43bは、それぞれ底面部33c,43cによって連結されている。そして、側壁33a,33b,43a,43bにはボルト51a、ナット51bが挿通されるための係合孔が設けられている。
【0048】
側壁33a,33bと側壁43a,43bの間につなぎ部材50の本体部51が嵌入される。そして、これらの部材にはそれぞれ対応する位置に係合孔が設けられており、外側に配設された側壁33a,43aから収容空間S側に配設された側壁33b,43bまでを貫通するように配設された締結手段であるボルト51aと、ナット51bによって締結固定される。
【0049】
第2の係合部33,43は、側壁33a,33b又は側壁43a,43bによってつなぎ部材50の本体部51を挟み込む構成であるため、支柱部材30,40につなぎ部材50を取り付ける際、つなぎ部材50が落下することなく、安定して支柱部材30,40上に載置することができるため、パネル積載ラック100の組み立て時に作業しやすい。
【0050】
また、本体部31,41の上方端部において、それぞれ第2の係合部33,43の底面部33c,43cと本体部31,41とに架設される第2の補強部35,45が備えられていても良い。このとき、第2の補強部35,45は、上記の第1の補強部34,44と同様、パネル積載ラック100の左右方向において、切り欠き部31b,41bが形成されていない方の側に溶接等の手法により固着接合される。本実施形態では、本体部31,41の支持面31a,41aに対して略垂直に折曲された面に接合されている。なお、第2の補強部35,45は、本体部31,41等と同様、十分な剛性を備えた金属製の板材によって構成されていると好ましい。
【0051】
このように、上記第1の補強部34,44及び第2の補強部35,45を備えているため、支柱部材30,40にパネル200の荷重が加わった場合であっても、支柱部材30,40の変形を防止することができ、好適である。
【0052】
さらに、支柱部材30,40には、架設部材20、つなぎ部材50がそれぞれ下方及び上方に架設されているため、パネル積載ラック100としての強度が向上する。
【0053】
(吊り上げ支援部材60)
本発明のパネル積載ラック100は、パネル200の面が横向きになるように積載した後、建築現場では、90度回転させて立て起こした状態で使用される。したがって、パネル積載ラック100を立て起こすために、ワイヤーロープ、鎖等の懸吊手段300(図13参照)等を係止するための吊り上げ支援部材60を備えている。また、この吊り上げ支援部材60は、パネル積載ラック100をトラック等に積み込む際や、建築現場においてトラック等から荷下ろしする際に、パネル積載ラック100を運搬するための各種ワイヤー、鎖等が取り付けられる。
【0054】
吊り上げ支援部材60は、架設部材20、支柱部材30,40、つなぎ部材50のいずれかに備えられており、少なくともパネル積載ラック100の前後方向に離間して2点以上備えられる。本実施形態では、支柱部材40に取り付けた形態を例示している。なお、パネル積載ラック100を立て起こす動作を安定させるため、吊り上げ支援部材60は4点以上設けられていると好適である。
【0055】
吊り上げ支援部材60は、架設部材20及びつなぎ部材50において、パネル積載ラック100を立て起こす際、上方に位置する側の端部に設けられると好ましい。また、パネル積載ラック100を立て起こした際、最も上方に横架された支柱部材40に取り付けられていても良い。本実施形態では、支柱部材40と架設部材20、支柱部材40とつなぎ部材50にそれぞれ跨るようにして吊り上げ支援部材60がボルト−ナットによって接合されている。なお、吊り上げ支援部材60の取り付けはボルト−ナット等の締結手段に限定されるものではなく、架設部材20、支柱部材30,40、つなぎ部材50に予め一体に設けられた構成としても良い。
【0056】
吊り上げ支援部材60は、架設部材20、支柱部材30,40、つなぎ部材50と別体である場合、これらの部材に接合される板状のベース部61と、ベース部61に接合されたリング62とを備えている。このリング62に対して懸吊手段300を係止し、懸吊手段300をクレーン等で引き上げることにより、パネル積載ラック100が持ち上げられ、立て起こされる。また、吊り上げ支援部材60は、架設部材20、支柱部材30,40、つなぎ部材50の何れかの部材と一体である場合は、ベース部61は必要なく、これら部材に直接リング62が備えられていればよい。
【0057】
また、つなぎ部材50において、パネル積載ラック100が立て起こされた状態のとき下方となる位置に、第2の吊り上げ支援部材が、さらに備えられていると好適である。第2の吊り上げ支援部材は、リング状の部材等によって形成され、図13の支点Xの位置に、設けられていると好ましい。
【0058】
第2の吊り上げ支援部材を備えていると、パネル積載ラック100の立て起こしを行う際、回転運動を安定して行うことが可能となるため、積載されたパネル200の損傷を防ぐ効果が高い。また、パネル積載ラック100をトラック等に積み込み、又はトラック等から荷下ろしする際、各種ワイヤーを第2の吊り上げ支援部材にも固定することができ、安定して積み込み作業や荷下ろし作業ができるため、好ましい。
【0059】
(補強部材70)
パネル積載ラック100には、架設部材20と、つなぎ部材50とに架設され、支柱部材30,40と略平行に配設される長尺の補強部材70が備えられていても良い。このとき、補強部材70は、支柱部材30,40の切り欠き部31b,41bが開口している側とは反対側に設けられる。補強部材70には、長尺部材からなる本体部71と、架設部材20に係止される第1の係合部72と、つなぎ部材50に係止される第2の係合部73を備えており、第1の係合部72及び第2の係合部73の構成は、支柱部材30,40の第1の係合部32,42及び第2の係合部33,43の構成とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
また、本体部71の下方端部において第1の係合部72と本体部71とに架設される第1の補強部74と、本体部71の上方端部において第2の係合部73と本体部71とに架設される第2の補強部75とが備えられていても良い。
【0060】
パネル積載ラック100は、後述するように、パネル200を積載した後、90度回転させて立て起こすように使用されるため、大きな外力が加わる。したがって、支柱部材30,40の他に、架設部材20及びつなぎ部材50の間に架設される補強部材70が設けられていると、パネル積載ラック100の使用時、変形を防止することができるため好ましい。
【0061】
(ブレース90)
さらに、支柱部材30,40の第1の係合部32,42と、第2の係合部33,43には、ブレース90が交差して架設されていても良い。ブレース90を取り付けることにより、パネル積載ラック100の使用時、変形を防ぐことができる。ブレース90は、パネル積載ラック100の収容空間Sと反対側の面、すなわち外側の面に取り付けられる。
【0062】
ブレース90には、係止部91が備えられており、係止部91は、上記ボルト14a,51aとナット14b,51bによって係止される構成とすると、作業箇所が集約されるため好ましいが、例えば、架設部材20やつなぎ部材50に係止部91を取り付ける機構を設けることにより、係止部91が係止されていても良い。
【0063】
(回転支援部材22)
さらに、架設部材20において、パネル積載ラック100が立て起こされた状態のとき下方となる側の端部に、回転支援部材22が備えられていてもよい。回転支援部材22は、断面略コ字形状であり、架設部材20の本体部21を挟むように略台形の側壁22a,22が一組設けられており、これらの側壁22a,22bの下方において側壁22a,22bを連結する底面部22cが下方に設けられている。
【0064】
そして、側壁22a,22bは架設部材20の本体部21に対して回動可能となるように、締結手段22dによって軸支されている。回転支援部材22は、パネル200をパネル積載ラック100に横向きに積載する場合と、パネル積載ラック100を立て起こし、パネル200を縦向きにした場合と、において、底面部22cを下方に向け、締結手段22dを軸として、本体部21に対して回動する。
【0065】
図13はパネル積載ラック100が地面GLから離れた構成を示しているが、回転支援部材22を接地させた場合の回転支援部材22の構成・作用について、以下、説明する。
パネル積載ラック100が立て起こされる前後において、回転支援部材22は、地面GLに対して底面部22cが接地した状態であり、その状態で架設部材20の本体部21が回動する構成としても良い。そして、パネル積載ラック100が立て起こされた状態では、底面部22cよりも架設部材20の本体部21の末端が上方に位置することにより、架設部材20は略90度に保持される。このようにして、回転支援部材22は、パネル積載ラック100の立て起こし作業の前後で地面GLに接地された場合、回転支援部材22が基点となり、パネル積載ラック100が90度回転する動きを補助する。
【0066】
(パネル固定部材210)
次に、パネル200をパネル積載ラック100に積載するために設けられるパネル固定部材210について、図9乃至図11を参照して説明する。パネル200の側面200aには、パネル固定部材210を取り付けるための孔200bが形成されており、この孔200bを介してパネル固定部材210が取り付けられる。なお、この孔200bは、建築現場における建て込み時、ボルト等の部材が挿入される穴としての機能も備えており、パネル固定部材210を取り付けるために特別に設ける必要がない。したがって、パネル固定部材210の設置時においても作業効率の向上を図ることができる。
【0067】
パネル固定部材210は、金属等の部材からなり、上記パネル積載ラック100の支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41bに掛着される掛着部211と、掛着部211と螺合する略円柱形状の本体部212と、パネル200の側面200aを介して本体部212に螺着されるナット213とを備えている。
【0068】
パネル固定部材210を構成する掛着部211と、本体部212と、ナット213とは同一線上を軸として互いに螺着し、パネル200の側面200aに取り付けられる。
掛着部211は、本体部212と螺合するための軸部211aと、軸部211aを中心として同心円状に形成されたプレート部211bとを備えている。軸部211aは、パネル200をパネル積載ラック100に積載するとき、支柱部材30,40に形成された切り欠き部31b,41bの凹欠部31e,41eに嵌合可能な太さに形成されている。そして、軸部211aの長さは、少なくとも切り欠き部31b,41bが設けられる支持面31a,41aの厚さよりも長くなるように形成されている。なお、図10では支柱部材40を例として示したが、支柱部材30に対しても同様の構成でパネル固定部材210が固定される。
【0069】
また、プレート部211bは、図11に示すように、テーパー加工されており、支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41bに掛着しやすいように形成されている。そして、プレート部211bにおいて、軸部211aが突出した面と反対側の面には、軸部211aを本体部212に螺合させるときに保持しやすいように、六角の突起部211cが突出している。
【0070】
本体部212は、略円柱状の胴部212aと、胴部212aからパネル200側、すなわち掛着部211側が螺合される側とは反対側に向かって延設された軸部212bとを備えている。略円柱状に形成された胴部212aの底面(パネル200の側面200aに対して平行な面)には、それぞれ掛着部211の軸部211aを螺合するための溝と、ナット213と螺合するための軸部212bが設けられている。また、胴部212aは、その高さ(底面から底面の間の長さ)がパネル200の側面200aと支柱部材30,40の支持面31a,41aとの間の幅とほぼ等しくなるように形成されている。
【0071】
そして、パネル200の積載時、掛着部211を本体部212に対して締め込むことにより、胴部212aと掛着部211との間に支持面31a,41aが狭持され、パネル積載ラック100にパネル200が強固に保持される。その結果、パネル200がその積載、運搬時に位置ずれすることなく、パネル200の表面の損傷を防止することができる。なお、上記構成のパネル固定部材210は、パネル200をパネル積載ラック100に積載する前に、パネル200を製造する工場において予めパネル200に対して取り付けられていると好ましい。
【0072】
パネル固定部材210がその側面200aに設置されたパネル200は、パネル積載ラック100に設けられた切り欠き部31b,41bに掛着される。
本実施形態では、パネル200に対してパネル固定部材210が備えられた構成を例示したが、必ずしも、パネル固定部材210を備えていなくても良い。パネル200は、側面200aから側方に突出した棒状部材(例えば、ボルト等)が備えられていれば、パネル積載ラック100の支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41bに対して棒状部材を掛着し、パネル200を積載することができる。より詳細には、切り欠き部31b,41bにおいて円弧状に形成された凹欠部31e,41eに嵌合可能な太さの棒状部材を備えていれば、パネル200をパネル積載ラック100に積載することができる。
そして、側面200aに上記構成の棒状部材を備えたパネル200であれば、パネル200の厚さ、形状は一種類に限定されるものではない。
【0073】
図9に示すように、本発明のパネル積載ラック200は、支柱部材30,40において複数の切り欠き部31b,41bが連続して等間隔に設けられている。
したがって、複数のパネル200を一つのパネル積載ラック100に積載することが可能となるだけでなく、パネル200が厚いものであったり、薄いものであったりする場合、パネル固定部材210を掛着する位置を適宜選択することによって、様々な厚さのパネル200を積載することも可能となる。このように、本発明のパネル積載ラック100は汎用性が高いので、パネル200の種類や大きさに応じてパネル積載ラック100を取り替える必要が無く、その結果、運搬効率、作業効率が向上する。
【0074】
そして、上記棒状部材は、パネル固定部材210の掛着部211を構成する軸部211aに相当するものである。図11に示すように、パネル200の側面200aに設置されたパネル固定部材210は、掛着部211を外側に向けて支柱部材30,40の切り欠き部31b,41bに支持される。パネル固定部材210の掛着部211と、本体部212との間に螺合して架設された軸部211aが切り欠き部31b,41bの凹欠部31e,41eに係合した状態で、支持面31a,41aが掛着部211のプレート部211bと本体部212の胴部212aとの間に狭持される構成である。なお、図11においては切り欠き部31bにパネル固定部材210を掛着した構成を示すが、切り欠き部41bに対しても同様の構成であるため、その符号を省略する。
【0075】
したがって、支柱部材30,40に係合する棒状部材は、ボルト等を用いてもよいが、上記のパネル固定部材210を使用すると、より強固に支柱部材30,40に対して係止することができるため、好ましい。
【0076】
(パネル200の収納方法)
次に、パネル積載ラック100を用いたパネル200の収納方法について、図12乃至図15を参照して説明する。
【0077】
パネル20の収納方法は、まず、つなぎ部材50を除くパネル積載ラック200を組み立てるパネル積載ラック組み立て工程S1が行われる。
【0078】
パネル積載ラック組み立て工程は、まず、パネル積載ラック200は、基台部材10を所定距離離間させて複数本を互いに略平行となるように並べる工程(基台部材配置工程)が行われる。このとき、後で載置される支柱部材30,40を配設する幅と等間隔となるように基台部材10が並べられる。
【0079】
その後、架設部材20を基台部材10の長手方向の両端に配置する工程(架設部材設置工程)が行われる。そして、支柱部材30,40の長手方向端部(より詳細には、第1の係合部32,42,72)を基台部材10と架設部材20との交差する部分に重ね合わせ、互いに係止する工程(支柱部材設置工程)が行われる。したがって、パネル積載ラック100は、つなぎ部材50が備えられていない状態で、パネル200が積載される。なお、支柱部材設置工程において、補強部材70もまた同時に設置しても良い。
【0080】
一方、パネル200が工場で生産される過程において、その側面200aにパネル固定部材210が取り付けられる工程(パネル固定部材設置工程)が行われると好ましい。より詳細には、パネル200の内側に備えられたナット213に対して、予め掛着部211が取り付けられている本体部212を螺合させる。なお、掛着部211は、本体部212をパネル200に対して取り付けた後、本体部212に対して設置しても良い(図10、図11参照)。この工程においては、一つの側面200aに対して、二箇所以上のパネル固定部材210を、複数の支柱部材30,40に対応する位置に設置すると、パネル200が複数点で保持されるため、安定して保持することができる。
【0081】
そして、上記パネル積載ラック組み立て工程S1が行われた後、次にパネル積載工程S2が行われる。パネル積載工程S2とは、具体的には、以下の工程を備えている。
上述のように、工場でパネル200に対してパネル固定部材210が取り付けられていない場合、上記パネル固定部材設置工程が行われる。そして、パネル200の側面200aに、さらにリング等のパネル懸吊部材220を取り付ける工程(パネル懸吊部材設置工程)が行われる。パネル懸吊部材220は、ワイヤーを係止できる構成であればどんな構成であっても良く、公知の手法が用いられる。なお、パネル固定部材設置工程とパネル懸吊部材設置工程との順が逆であっても良く、さらに、パネル固定部材設置工程とパネル懸吊部材設置工程は、工場におけるパネル200の製造工程中に行われても良い。
そしてその後、このパネル懸吊部材220にワイヤーを係止する工程(ワイヤー係止工程)が行われ、その後、ワイヤーを引き上げることにより、パネル200が横向きの状態で上方に保持される工程(パネル保持工程)が行われる。
【0082】
そして、上記のパネル積載ラック100の一部を組み立てる工程(パネル積載ラック組み立て工程S1)を経た後、パネル積載ラック100が組み立てられている位置までパネル200が運搬され、パネル積載ラック100の上方に吊り上げられた状態となるまで運搬される工程(パネル運搬工程)が行われる。その後、パネル200は、少なくとも支柱部材30,40の間であって、切り欠き部31b,41bが開口している側からパネル固定部材210が入り込む位置において、支柱部材30,40の長手方向に沿って下方に吊り下げられる。その後、パネル200に取り付けられたパネル固定部材210を支柱部材30,40側に近づけるようにして(図12(a)参照)、パネル固定部材210を支柱部材30,40の切り欠き部31b,41bに掛着させる工程(パネル掛着工程)が行われる(図12(b)参照)。このとき、パネル200はその面が略水平な状態(横向きの状態)でパネル積載ラック100に対して積載される。なお、この時、パネル200を横向きとし、パネル200の面が略水平となるように吊り上げた状態で行うとパネル200が積載しやすく好ましい。
【0083】
パネル200に取り付けられたパネル固定部材210を支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41bに掛着する工程(パネル掛着工程)が行われた後、パネル固定部材210の掛着部211(より詳細には、突起部211c)をインパクトレンチ等を用いて締め付ける工程(パネル固定工程)が行われることにより、パネル200が、支柱部材30,40に対して強固に保持される。
【0084】
その後、パネル固定部材設置工程からパネル固定工程を繰り返すことにより、複数のパネル200をパネル積載ラック100に順次積載する。
所定数のパネル200を積載した後、支柱部材30,40及び補強部材70の上端(より詳細には、第2の係合部33,43)につなぎ部材50を架設し、ボルト51a、ナット51bによって固定される工程(つなぎ部材設置工程)が行われる(図12(c)参照)。
【0085】
つなぎ部材設置工程が行われた後、ブレース90を取り付ける工程(ブレース設置工程)が行われても良い。ブレース90を取り付けると、パネル積載ラック100の剛性が向上するため好ましい。
以上の工程を経ることにより、パネル200は、パネル積載ラック100に積載される。
【0086】
そして、パネル積載工程S2を経ることによってパネル200が積載されたパネル積載ラック100は、トラック等の運搬車両の荷台に、クレーンやフォークリフト等を用いて積み込まれる。
パネル積載工程S2において、パネル積載ラック100を積み込む作業を行う前に、パネル積載ラック100に対して、各種ワイヤーを係止するための吊り上げ支援部材60を取り付ける工程(吊り上げ支援手段設置工程)が行われる。なお、吊り上げ支援手段設置工程は必ずしもブレース設置工程の後に行われる必要はなく、パネル積載ラック100をトラック等に積み込む前であればどの段階において行われても良い。
【0087】
その後、パネル積載ラック100は、パネル200が平積みされた状態を保持した状態(すなわち、図12(c)の状態)でトラック等に運び込まれ、パネル積載ラック100の運搬が行われる。
【0088】
(パネル200の取出し方法)
次に、パネル積載ラック100が建築現場まで運搬された後、パネル積載ラック100からパネル200を取り出す方法について説明する。
【0089】
まず、建築現場においてパネル積載ラック100は、上記のように、パネル200が平積みされた状態でトラックから地面に荷下ろしされる。
そして、吊り上げ支援部材60に備えられたリング62に対して、クレーン等から吊り下げられたワイヤーや鎖からなる懸吊手段300をフック等によって係止する工程(懸吊手段設置工程S3)が行われる。このとき、架設部材20及びつなぎ部材50の長手方向の一方の端部(パネル積載ラック100を立て起こした際に上方になる端部)に備えられた吊り上げ支援部材60だけでなく、さらに図13に示した支点Xの位置に懸吊手段300を係止しても良い。支点Xには、上述した第2の吊り上げ支援部材が設置されていても良いし、また、つなぎ部材50と補強部材70とが交差する位置に環状に形成した懸吊手段300を引っかけて係止する構成としても良い。
【0090】
そして、懸吊手段設置工程S3の後、吊り上げ支援部材60に係止された懸吊手段300を上方に引き上げ、パネル積載ラック100を傾け、略90度立て起こす工程(ラック立て起こし工程S4)が行われる(図13、図14参照)。このラック立て起こし工程S4が行われることにより、パネル200の面は略垂直となる。
このとき、支点Xを同時に上方に吊り上げながらパネル積載ラック100の立て起こしを行うと、安定してパネル積載ラック100を回転させることができるため好ましい。また、立て起こす際のパネル200にかかる衝撃を緩和させることができ、パネル200の損傷を防止することができる。
【0091】
なお、図13では、パネル積載ラック100が、地面GLから完全に浮いた状態を図示しているが、回転支援部材22を地面GLに接地させた状態でパネル積載ラック100を立て起こしても良い。
【0092】
そして、ラック立て起こし工程S4において立て起こされたパネル積載ラック100から、立て起こし作業に使われた懸吊手段300を取り外す工程(懸吊手段取り外し工程)が行われてもよい。なお、このときパネル積載ラック100を地面GLに対して固定する作業を行っても良い。
【0093】
ラック立て起こし工程S4の後、パネル積載ラック100に積載されたパネル200にワイヤー等の吊り上げ手段を係止し、パネル200が垂直方向(上方)に吊り上げられる工程(パネル取出し工程S5)が行われる。このとき、上記パネル懸吊部材設置工程においてパネル200に取り付けたパネル懸吊部材220を取り外さずにパネル200に取り付けた状態としておくと、ワイヤー等の吊り上げ手段をパネル200に取り付ける作業が簡素化されるため、より効率良く作業を行うことができる。また、パネル積載ラック100に対し、パネル固定部材210を用いてパネル200が係止されている場合は、パネル固定部材210の軸部211aを回転させ、掛着部211のプレート部211bと本体部212の胴部212aの間隔を大きくする作業がパネル取出し工程S5の前に行われるとよい。
【0094】
また、パネル取出し工程S5では、パネル積載ラック100に積載されたパネル200が立てられた状態で並べられるため、建築作業の進行状況に応じて、必要なパネル200を上方に吊り上げることにより適宜取り出すことができる。
【0095】
本発明のパネル積載ラック100は、支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41bに対してパネル固定部材210の掛着部211が固定されるため、パネル200を横方向から縦方向に立て起こす過程においてもパネル200が強固に保持される。パネル積載ラック100にパネル200を積載し、パネル積載ラック100の立て起こしを行い、パネル200が吊り上げられて取り出されるまでの間、パネル固定部材210が支柱部材30,40に設けられた切り欠き部31b,41b(より詳細には、凹欠部31e,41e)において強固に保持される。
【0096】
そして、パネル積載ラック100を上記構成とすることにより、パネル積載ラック100の運搬時、及び建築現場での作業時において、パネル200は容易に収納、取出しを行うことができ、さらにパネル200を取り出す順番が制限されることがない。したがって、建築現場での作業を効率化することができる。
【0097】
(他の実施形態)
次に、本発明のパネル積載ラック100において、幅が異なるパネル200’を積載する場合について、図1、図16〜図18を参照して説明する。パネル積載ラック100に積載されるパネル200は2P(1枚で2モジュール用)が一般的であるが、1Pのパネル200’も中間架設部材80を取り付けることによってパネル積載ラック100に積載可能である。
【0098】
中間架設部材80は、少なくとも二つの基台部材10に架設される部材であり、基台部材の中間に設けられた係合突起12に接合されている。
中間架設部材80は、上方に開口した断面略コ字状の金属等によって形成された長尺部材からなる本体部81と、係合突起12に係合する係合部82と、本体部81から上方に延設され、後述する中間支持部材84を支持するための支持部83と、を備えている。
【0099】
本体部81は、互いに離間して対向した側壁81a,81bと、側壁81a,81bとを連結する底面部81cとを備えている。そして、底面部81cの下表面には基台部材10の係合突起12に対して嵌合可能な形状の板材からなる係合部82が備えられており、係合突起12に対してボルト−ナット等の締結手段を用いて結合されている。中間架設部材80は、本体部81の長手方向の両端に係合部82を備えており、この係合部82が、互いに離間して配設された基台部材10の係合突起12に係止されることにより、中間架設部材80が架設される。
【0100】
本体部81を構成する側壁81a,81bには、上方が開口した切り欠き部81dが設けられている。切り欠き部81dの形状は、上記支柱部材30,40に形成された切り欠き部31b,41bを、開口部を上方に向けるように90度回転させた形状であるため、詳細な説明を省略する。なお、切り欠き部81dを構成する第1の辺81eは、パネル積載ラック100を90度回転させて立て起こした際に、第2の辺81fの下方に位置し、略水平となるように形成されている。そして、第1の辺81eと第2の辺81fとの間には、下方に凹設された凹欠部81gが形成されている。
【0101】
そして、中間架設部材80に設けられた切り欠き部81dに対し、パネル200’の側面に取り付けられたボルトが係止される。このように、上記構成の中間架設部材80を備えたパネル積載ラック100は、幅が1Pであるパネル200’であっても、幅が2Pであるパネル200と同時に積載可能である。
【0102】
そして、本体部81を構成する底面部81cの上表面には、金属からなる板状の支持部83が、その面が側壁81a,81bと平行で、且つ略垂直に立ち上がるように、溶接等の手法により固着されている。また、支持部83には、上下方向において同一線上となる位置にボルト83a、ナット83bが取り付けられている。また、ボルト83a、ナット83bの代替としてビス等も用いられる。
【0103】
支持部83は、中間支持部材84を支持するために備えられ、中間支持部材84は、二段目以降に積載される(上方に積載される)1Pのパネル200’を保持するためのものである。
中間支持部材84は、中間架設部材80のさらに情報にパネル200’を積層するために設けられる。中間支持部材84は、上方が開口した断面略コ字状の中間支持台84aと、中間支持台84aの下方に配設され、支持部83に係止される支持台受け部84fとを備えている。中間支持台84aは、互いに対向して離間した一組の側壁84b,84cと、側壁84b,84cとを連結する底面部84dとを備えている。底面部84dは、中間架設部材80の本体部81を構成する底面部81cと平行に配設されており、底面部84dの下表面に支持台受け部84fが接合されている。
【0104】
中間支持台84aの側壁84b,84cには、中間架設部材80にもうけられた切り欠き部81dと同じ形状の切り欠き部84eが、開口部を上方に向けて形成されている。二段目以降の上方に積載される1Pのパネル200’は、その側面に取り付けられたボルトを切り欠き部84eに対して係止することによって固定される。
【0105】
支持台受け部84fは、中間支持台84aを下方から支持すると共に、中間架設部材80に設けられた支持部83に係止される。支持台受け部84fは、金属製の板状の部材であり、同じく板材からなる支持部83の一方の表面に沿うようにして配設される。
【0106】
支持台受け部84fは、中間架設部材80に設けられた支持部83の二箇所に取り付けられたボルト83aにそれぞれ係合する第1の切り欠き部84g、第2の切り欠き部84hを備えている。第1の切り欠き部84gは、二箇所に取り付けられたもののうち、上方に設けられたボルト83aに係合するものであり、パネル積載ラック100を90度回転して立て起こした際、第1の切り欠き部84gの開口部はボルト83aに対して下方に位置するように形成されている。
【0107】
第1の切り欠き部84gもまた上記支柱部材30,40に形成された切り欠き部31b,41bと同様に、ボルト83aに対して係合したときに略水平となる第1の辺84iと、第1の辺84iと鋭角を成す第2の辺84jと、第1の辺84iと第2の辺84jとの間に形成される凹欠部84kとを備えている。凹欠部84kにボルト83aが嵌合することによって、中間支持部材84は中間架設部材80に備えられた支持部83に対し強固に取り付けられる。したがって、支持台受け部84fの上方に備えられた中間支持台84aに対し、パネル200’の荷重が加わった場合であっても、その荷重を受け止めることが可能である。
【0108】
そして、支持台受け部84fは、第1の切り欠き部84gの下方に第2の切り欠き部84hが形成されている。第2の切り欠き部84hは、中間架設部材80に設けられた支持部83の二箇所に取り付けられたボルト83aのうち、下方に取り付けられたボルト83aと係合する。切り欠き部84hは、略水平な第1の辺84lと、第1の辺84lの下方に延設されると共に、第1の辺84lとの成す角度が略90度に形成された第2の辺84mと、第1の辺84lと第2の辺84mとの間において上方に凹設された凹欠部84nとを備えている。
【0109】
中間支持部材84は、中間架設部材80の支持部83に対して着脱可能に保持されている。中間支持部材84を支持部83に対して取り付ける際は、まず、凹欠部84nにボルト83aが嵌合することによって、中間支持部材84は中間架設部材80に備えられた支持部83に対し掛着する。そして、支持部83に対して中間支持部材84が掛着された状態(図18(a)参照)から、中間支持部材84を略90度回転させ、立て起こした状態とする。このとき、上述した第1の切り欠き部84gは、もう一方のボルト83aと係合し、立て起こされた状態が維持される(図18(b)参照)。すなわち、中間支持台84aの底面部84dは、中間架設部材80の底面部81cと略平行な状態で保持される。
【0110】
また、中間支持部材84を支持部83から取り外す際は、パネル200’の側面に設置されたボルトが切り欠き部84eに係合していない状態で、上記の取り付け動作とは反対の方向に中間支持部材84を回転させ、第1の切り欠き部84gからボルト83aを脱離させればよい。
【0111】
パネル積載ラック100を立て起こした状態としても、第1の切り欠き部84gはボルト83aによって支持される構成となるため、中間架設部材80と中間支持部材84の相対位置は変化することなく、強固にパネル200’を保持することができる。
【0112】
そして、幅が1Pのパネル200’を積載した上方には、2Pのパネル200を積載することができる。このように、本発明のパネル積載ラック100は、その幅が1P,2Pのように異なるものであっても、中間架設部材80、中間支持部材84を備えることにより、同一のパネル積載ラック100に積載することができる。また、1Pパネル200’の積載時であっても、2Pのパネル200のみを積載した場合と同様にパネル積載ラック100に対する積載が容易であり、また、立て起こし作業も同様に行われるため、汎用性の高い技術を提供することができる。
【0113】
本実施形態では、パネル積載ラック100に積載されるパネル200として、外壁パネルの例を挙げて説明したが、パネル200の種類(形状、厚み等)はこれに限定されるものではない。パネル200として、屋根パネル等、建物に用いられるありとあらゆるパネル部材をパネル積載ラック100に積載することができる。また、パネル固定部材210が取り付けられるパネル200であれば、パネル固定部材210を支柱部材30,40に掛着するだけでパネル積載ラック100に積載することができるため、一つのパネル積載ラック100に対して複数種類のパネル200を積載することも可能である。
【0114】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良されうると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例にすぎず、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0115】
100 パネル積載ラック
10 基台部材
11 本体部
12 係合突起
13a,13b 板片
14a ボルト(締結手段)
14b ナット(締結手段)
20 架設部材
21 本体部
22 回転支援部材
22a,22b 側壁(一組の側壁)
22c 底面部
22d 締結手段
30,40 支柱部材
31,41 本体部
31a,41a 支持面
31b,41b 切り欠き部
31c,41c 第1の辺
31d,41d 第2の辺
31e,41e 凹欠部
32,42 第1の係合部
32a,32b,42a,42b 側壁
32c,42c 天面部
33,43 第2の係合部
33a,33b,43a,43b 側壁
33c,43c 底面部
34,44 第1の補強部
35,45 第2の補強部
50 つなぎ部材
51 本体部
51a ボルト(締結手段)
51b ナット(締結手段)
60 吊り上げ支援部材
61 ベース部
62 リング
70 補強部材
71 本体部
72 第1の係合部
73 第2の係合部
74 第1の補強部
75 第2の補強部
80 中間架設部材
81 本体部
81a,81b 側壁
81c 底面部
81d 切り欠き部
81e 第1の辺
81f 第2の辺
81g 凹欠部
82 係合部
83 支持部
83a ボルト
83b ナット
84 中間支持部材
84a 中間支持台
84b,84c 側壁
84d 底面部
84e 切り欠き部
84f 支持台受け部
84g 第1の切り欠き部
84h 第2の切り欠き部
84i 第1の辺
84j 第2の辺
84k 凹欠部
84l 第1の辺
84m 第2の辺
84n 凹欠部
90 ブレース
91 係止部
200,200’ パネル
200a 側面
200b 孔
210 パネル固定部材
211 掛着部
211a 軸部
211b プレート部
211c 突起部
212 本体部
212a 胴部
212b 軸部
213 ナット
220 パネル懸吊部材
300 懸吊手段
S 収容空間
X 支点
GL 地面
S1 パネル積載ラック組み立て工程
S2 パネル積載工程
S3 懸吊手段設置工程
S4 ラック立て起こし工程
S5 パネル取出し工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成するパネルの収容空間の底面を構成する基台部材と、
該基台部材の両端にそれぞれ交差して配設される長尺の架設部材と、
該架設部材の長手方向に所定間隔をおいて配設されると共に上方に延設される複数の支柱部材と、
該支柱部材のうち隣り合って配設された支柱部材間を連結すると共に前記支柱部材と着脱可能に配設されるつなぎ部材と、
上方に吊り上げられるための外力が加えられる吊り上げ支援部材と、を備えたパネル積載ラックであって、
前記支柱部材には、少なくとも略水平な第1の辺と、該第1の辺の上方に延設されると共に前記第1の辺と鋭角を成す第2の辺と、を有する切り欠き部が上下方向に複数連続して形成されてなることを特徴とするパネル積載ラック。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記第1の辺と前記第2の辺との間に、下方に凹設された凹欠部をさらに備えてなることを特徴とする請求項1に記載のパネル積載ラック。
【請求項3】
前記架設部材の一端側には、該架設部材を介して対向する一組の側壁と、該一組の側壁の下方を連結する底面部と、を備えた回転支援部材が配設されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル積載ラック。
【請求項4】
前記架設部材と、前記つなぎ部材とに架設された補強部材をさらに備えてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパネル積載ラック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項のパネル積載ラックを用いたパネルの収納取出し方法であって、
少なくとも前記基台部材と、前記架設部材と、前記支柱部材とを組み立てる前記パネル積載ラック組み立て工程と、
前記パネル積載ラックに前記パネルの面が略水平となるように積載するパネル積載工程と、
前記パネルが積載され、建築現場に運搬された後に前記パネル積載ラックに懸吊手段を設置する懸吊手段設置工程と、
前記懸吊手段によって前記パネル積載ラックを略90度回転させ、前記パネルの面が略垂直となるように立て起こすラック立て起こし工程と、
前記パネルを垂直方向に吊り上げて前記パネル積載ラックから取出すパネル取出し工程と、を順に備えることを特徴とするパネルの収納取出し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−71953(P2012−71953A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218814(P2010−218814)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】