説明

パネル装置

【課題】 小さい塊状に折畳まれた状態から、大きい面状に展開可能なパネル装置を提供する。
【解決手段】 複数のパネル体11を備え、各パネル体11は、複数のパネル片12を有する。各パネル体11同士および各パネル体11における各パネル片12同士が連結手段で連結されている。各パネル体11は、各パネル片12同士が互いに重なる格納状態(図1B(1))から、格納状態における各パネル片の重なり方向yに伸展して各パネル片12が面状に並ぶ中間状態(図1C(3))に1次展開可能である。各パネル体11は、中間状態から、中間状態における各パネル体11の重なり方向zに伸展して各パネル体11が面状に並ぶ展開状態(図1D(5)に2次展開可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塊状の格納状態から面状の展開状態に展開可能なパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境に負担をかけない発電システムとして、宇宙空間の静止軌道上に太陽電池パネルを設けて発電する宇宙太陽発電システムが考えられている。この宇宙太陽発電システムでは、十分な実用性を見出すために、一度に打上げられる太陽電池パネルは、たとえば100m四方の範囲に面状に展開しなければならない。この打上げ後とは逆に、打上げるときには、打上げ用のロケットに設けられるフェアリング内の収納スペースによる制約を受けるとともに、打上げに伴う振動からの保護を目的として、できるだけ小さい塊状に折畳まなければならない。このような太陽電池パネルは、実在せず、開発が望まれている。
【0003】
人工衛星には、太陽電池パネルが設けられており、人工衛星は、太陽電池パネルで発電される電力を用いて稼動している。この人工衛星に設けられる太陽電池パネルもまた、打上げ時には、小さく折畳まれ、打上げ後に広く展開されて用いられる。人工衛星に設けられる太陽電池パネルは、たとえば特許文献1〜9に開示されている。特許文献1〜9に開示される太陽電池パネルは、いずれも、複数枚のパネル体を有し、各パネル体をヒンジで連結して、折畳まれた状態で打上げられ、打上げ後に展開できるように構成されている。特許文献1〜9に開示される太陽電池パネルは、折畳まれた状態で、全てのパネル体がその厚み方向に重ねられる構成である。
【0004】
宇宙太陽発電システムで用いられる広範囲に展開しなければ成らない太陽電池パネルでは、人工衛星の太陽電池パネルに比べて、パネル体の数が多く、特許文献1〜9に開示されるように、全てのパネル体を重ねるように折畳む構成を採用すると、各パネルの重なり方向の寸法が大きくなりすぎて、ロケットに搭載することができなくなってしまう。このように従来の技術では、宇宙太陽発電システムで用いられる大型の太陽電池パネルを実現することができない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−302100号公報
【特許文献2】特開2000−280997号公報
【特許文献3】特開2006−188201号公報
【特許文献4】特開平7−223597号公報
【特許文献5】特開2000−59122号公報
【特許文献6】特開平11−91698号公報
【特許文献7】特開平7−187089号公報
【特許文献8】特開昭60−147150号公報
【特許文献9】特開2001−88799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、できるだけ小さい塊状に折畳まれた状態から、できるだけ大きい面状に展開可能なパネル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のパネル片をそれぞれ有する複数のパネル体であって、各パネル片が重なる格納状態から、格納状態における各パネル片の重なり方向に伸展して各パネル片が面状に並ぶ中間状態に1次展開可能である複数のパネル体と、
各パネル体が格納状態から中間状態に1次展開可能に、各パネル体の各パネル片を連結するとともに、各パネル体が中間状態で互いに重なり、かつ中間状態から、中間状態における各パネル体の重なり方向に伸展して各パネル体が面状に並ぶ展開状態に2次展開可能に、各パネル体を連結する連結手段とを備えることを特徴とするパネル装置である。
【0008】
また本発明は、前記連結手段は、各パネル体における1次展開が連動して同時進行するように、各パネル体同士および各パネル片同士を連結することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、1次展開中において、複数の菱形の筒体を束ねた蜂の巣状の形状となることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、中間状態から格納状態に向かう状態変化動作および展開状態から中間状態に向かう状態変化動作を阻止する逆戻り防止手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記逆戻り防止手段は、格納状態から中間状態に1次展開すると、隣接するパネル片同士を予め定める角度位置関係に保持するとともに、中間状態から展開状態に2次展開すると、隣接するパネル体同士を予め定める角度位置関係に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のパネル体を備え、各パネル体は、複数のパネル片をそれぞれ有しており、各パネル体同士が連結手段で連結されるとともに、各パネル体における各パネル片同士が連結手段で連結されている。各パネル体は、各パネル片同士が互いに重なる格納状態から、格納状態における各パネル片の重なり方向に伸展して各パネル片が面状に並ぶ中間状態に1次展開可能である。さらに各パネル体は、中間状態において、各パネル体同士が互いに重なる状態にあり、かつこの中間状態から、中間状態における各パネル体の重なり方向に伸展して各パネル体が面状に並ぶ展開状態に2次展開可能である。このように各パネル体が厚み方向に重ねられる状態に折畳むだけでなく、各パネル体自体が折畳まれる。これによって、できるだけ小さな塊状に折畳まれた状態から、できるだけ大きい面状に展開可能なパネル装置を実現することができる。
【0013】
また本発明によれば、各パネル体同士および各パネル片同士が連結手段によって連結されて、各パネル体における1次展開が連動して同時進行する。これによって各パネル体に1次展開の進捗差が生じることを防ぎ、円滑に1次展開させることができる。また各パネル体が同時に2次展開に移行することができ、円滑に2次展開させることができる。このようにして、2段階に展開する構成のパネル装置を、円滑に展開させることができる。
【0014】
また本発明によれば、格納状態から、複数の菱形の筒体を束ねた蜂の巣状の形状となって1次展開し、中間状態となる。このようにパネル装置は、各パネル片がリンクに相当するパンタグラフ状となる構成を有している。これによって各パネル片が連動して1次展開する構成を実現することができる。
【0015】
また本発明によれば、逆戻り防止手段が設けられ、中間状態から格納状態に向かう状態変化動作および展開状態から中間状態に向かう状態変化動作が阻止される。このように展開状態に向かう動作と逆向きの動作が阻止され、円滑に展開状態まで展開させることができる。
【0016】
また本発明によれば、格納状態から中間状態に1次展開すると、隣接するパネル片同士が予め定める角度位置関係に保持され、中間状態から展開状態に2次展開すると、隣接するパネル体同士が予め定める角度位置関係に保持される。このように逆戻り手段によって、各パネル片同士および各パネル体同士の角度位置関係が保持されるので、展開状態におけるパネル装置を、予め定める好適な形状に保持して用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態のパネル装置10を簡略化して示す斜視図である。図1B(1)は、格納状態を示し、図1B(2)は、1次展開中の状態を示し、図1C(3)は、中間状態を示し、図1C(4)は、2次展開中の状態を示し、図1D(5)は、展開状態を示す。パネル装置10は、図1B(1)に示す格納状態に折畳まれた状態で、ロケットに搭載されて宇宙空間に打上げられ、打上げ後に、図1D(5)に示す展開状態に展開されて利用される。
【0018】
図1B(1)には、パネル装置10の一部だけを示すが、パネル装置10は、格納状態では、各稜線が、直交する第1〜第3方向x〜zのいずれかと平行な直方体形状の塊状である。この格納状態におけるパネル装置10の寸法は、たとえば第1方向xの寸法Lx0が約5mであり、第2方向yの寸法Ly0が約5mであり、第3方向zの寸法Lz0が約10mである。
【0019】
図1C(4)には、パネル装置10の四隅みの角部だけを示すが、パネル装置10は、展開状態では、第2および第3方向y,zに平行な平面(以下「yz平面」という)と平行であり、各辺が、第2および第3方向y,zのいずれかと平行な長方形の面状である。この展開状態におけるパネル装置10の寸法は、たとえば第1方向xの寸法Lx1が0.02m(20mm)であり、第2方向yの寸法Ly1が約100mであり、第3方向zの寸法Lz0が約100mである。
【0020】
このパネル装置10の用途は、特に限定されるものではなく、アンテナなどとして利用されてもよいが、本実施の形態では、宇宙太陽発電システムで用いる太陽電池パネルとして実施される。宇宙発電システムの太陽電池パネルとして実施されるパネル装置10は、宇宙空間の静止軌道上で面状に展開され、太陽光を受光して発電し、マイクロ波で地上に送電する。
【0021】
パネル装置10は、複数、本実施の形態では20枚のパネル体11を備え、各パネル体11は、複数、本実施の形態では190枚のパネル片12をそれぞれ有する。したがってパネル装置10は、全体で3800枚のパネル片12を有している。各パネル片12は、短冊状に形成され、長手方向の寸法L12Lが約5mであり、幅方向の寸法L12Wが0.5m(500mm)であり、厚み方向寸法L12Tが0.02m(20mm)である。
【0022】
パネル装置10が格納状態にある場合、各パネル片12は、長手方向が第1方向xと平行になり、幅方向が第3方向zと平行になり、厚み方向が第2方向yと平行になる姿勢をとる。各パネル片12は、このような姿勢で、20枚のパネル片12が、幅方向の側部を突合せるようにして第3方向zに並べられるとともに、190枚のパネル片12が、厚み方向に重なるようにして第2方向yに重ねられている。
【0023】
格納状態において、第2方向yに重ねられている190枚のパネル片12を一群とし、この一群のパネル片12によって、1つのパネル体11が構成される。図1B(1)には、各パネル体11のうち13枚のパネル片12だけが示されている。図1B(2)〜図1C(3)には、図1B(1)に示される部分のうち、図1B(1)のセクションAに相当する11枚のパネル体11の部分だけが示されている。
【0024】
各パネル体11は、一群のパネル片12が互いに角変位可能に連結され、山折部と谷折部とが交互に配置されるいわば屏風のような蛇腹状に構成され、格納状態では、折畳まれた最も収縮した状態にある。各パネル体11は、格納状態から、この格納状態における各パネル片12の重なり方向である第2方向yに伸展して、各パネル片12が面状に並ぶ中間状態に1次展開可能である。以下、山折部および谷折部のいずれかを不特定に指す場合、屈曲部という。
【0025】
ここで、第3方向z一方、たとえば図1の上方に凸となる部分を山折部とし、第3方向z他方、たとえば図1の下方に凸となる部分を谷折部とする。第3方向zに互いに隣接するパネル体11同士は、第3方向z一方側のパネル体11の谷折部と、第3方向z他方側のパネル体11の山折部とが対向するように設けられる。このような各パネル体11が、格納状態から1次展開を開始して、第2方向yに伸展すると、図1B(2)に示すように、複数の菱形の筒体を束ねたようないわば蜂の巣状の状態となり、この蜂の巣状の状態を経て、やがて1次展開を完了して中間状態となる。
【0026】
パネル装置10が中間状態にある場合、各パネル片12は、長手方向が第1方向xと平行になり、幅方向が第2方向yと平行になり、厚み方向が第3方向zと平行になる姿勢をとる。各パネル片12は、このような姿勢で、1つのパネル体11を構成する一群の190枚のパネル片12が、幅方向の側部を突合せるようにして第2方向yに並べられるとともに、20枚のパネル片12が厚み方向に重なるようにして第3方向zに重ねられている。中間状態では、各パネル体11は、第1および第2方向x,yに平行な平面(以下「xy平面」という)と平行な面状であり、第3方向zに重なっている。
【0027】
各パネル体11は、たとえば中間状態のように面状となる状態で、パネル装置10が、山折部と谷折部とが交互に配置されるいわば屏風のような蛇腹状になるように、互いに連結され、中間状態では、折畳まれた最も収縮した状態にある。パネル装置10は、中間状態から、この中間状態における各パネル体11の重なり方向である第3方向zに伸展して、各パネル体11が面状に並ぶ展開状態に2次展開可能である。パネル装置10は、中間状態から2次展開を開始して、第3方向zに伸展すると、図1C(4)に示すように、開きかけの屏風のような状態となり、この状態を経て、やがて2次展開を完了して展開状態となる。
【0028】
パネル装置10が展開状態にある場合、各パネル片12は、長手方向が第3方向zと平行になり、幅方向が第2方向yと平行になり、厚み方向が第1方向xと平行になる姿勢をとる。各パネル片12は、このような姿勢で、1つのパネル体11を構成する一群の190枚のパネル片12が、幅方向の側部を突合せるようにして第2方向yに並べられるとともに、20枚のパネル片12が、長手方向の端部を突合せるようにして第3方向zに並べられている。
【0029】
このように各パネル体11は、各パネル片12が連結されて構成され、各パネル片12が重なる格納状態から、格納状態における各パネル片12の重なり方向に伸展して各パネル片12が面状に並ぶ中間状態に1次展開可能である。また各パネル体11は、中間状態で互いに重なっており、中間状態から、中間状態における各パネル体11の重なり方向に伸展して各パネル体11が面状に並ぶ展開状態に2次展開可能に、互いに連結されている。したがってパネル装置10は、図1B(1)に示すような、打上げ用のロケットに搭載可能な塊状の格納状態から、1次展開および2次展開して、図1D(5)に示すような、広範囲に広がる面状の展開状態まで展開可能である。
【0030】
図2は、パネル装置10の一部を拡大して示す斜視図である。図3は、パネル装置10の一部を拡大して示す正面図である。図4は、パネル装置10の一部を拡大して示す側面図である。図3は、第1方向xに平行な視線で見た状態を示し、図4は、第2方向yに平行な視線で見た状態を示す。図2A(1)、図3A(1)および図4A(1)は、格納状態を示し、図2A(2)、図3A(2)および図4A(2)は、1次展開中の状態を示し、図2B(3)、図3B(3)および図4B(3)は、中間状態を示し、図2C(4)、図3B(4)および図4(4)は、2次展開中の状態を示す。パネル装置10は、前述のように、格納状態から展開状態に展開可能に、各パネル体11同士および各パネル片12同士を連結するために、連結手段15を備えている。連結手段15は、大きく分けて、3種類の連結具16〜18を有している。
【0031】
連結手段15は、中間状態で第2方向yに隣接するパネル片12の突合される幅方向の側部90同士を、パネル片12の長手方向に平行な軸線まわりに角変位可能に連結することによって、連結部が屈曲部となって各パネル片12が重なるように折畳まれ、この折畳まれた状態から伸展可能な各パネル体11を実現することができる。また連結手段15は、展開状態で第3方向zに隣接するパネル片12の突合される長手方向の端部91同士を、パネル片12の幅方向に平行な軸線まわりに角変位可能に連結することによって、展開状態で第3方向zに隣接するパネル体11同士を連結し、連結部が屈曲部となって各パネル体11が重なるように折畳まれ、この折畳まれた状態から伸展可能なパネル装置10を実現することができる。本発明おいて、角変位は、360度未満の角変位だけでなく、360度以上の回転に相当する角変位を含む。
【0032】
図5は、図2A(2)のセクションBをさらに拡大して示す斜視図である。連結手段15における3種類の連結具16〜18のうちの1つめの連結具(以下「第1連結具」という)16は、パネル装置10の第3方向zの両端に配置される2つのパネル体11(以下、これら2つのパネル体のいずれかを不特定に指す場合、「端パネル体」という)におけるパネル片12同志の連結のために設けられる連結具である。第1連結具16は、各端パネル体11において、各端パネル11を除く残余のパネル体11と反対側に向けて凸となる屈曲部を形成するために、この屈曲部におけるパネル片12の長手方向の両端部91において、角部92同士を連結する。第1連結具16は、端パネル体11のパネル片12の角部92であって、図1B(2)および図2A(2)に示す1次展開中の状態において、同一端パネル体11のパネル片12の角部92にだけ突合される角部92同士を、連結する。
【0033】
第1連結具16は、一対のヒンジ片20,21が、ヒンジピン22によってヒンジピン22の軸線と一致するヒンジ軸線L16まわりに各変位可能に連結されている、1自由度のヒンジによって実現される。第1連結具16は、一方のヒンジ片20が、連結すべき2つのパネル片12のうち一方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結され、他方のヒンジ片21が、連結すべき2つのパネル片12のうち他方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結される。
【0034】
第1連結具16は、ヒンジ軸線L16がパネル片12の長手方向に平行になるように設けられ、パネル片12をヒンジ軸線L16まわりに角変位可能に連結する。第1連結具16によって連結される2つのパネル片12は、厚み方向に重なる状態と、幅方向の側面部90aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の長手方向に平行な角変位軸線となるヒンジ軸線L16まわりに角変位可能である。これら2枚のパネル片12は、格納状態では重なる状態にあり、1次展開で相対的に角変位し、中間状態で面状に並ぶ。
【0035】
図6は、図2A(2)のセクションCをさらに拡大して示す斜視図である。図7は、第2連結具17を示す斜視図である。図8は、第2連結具17を示す正面図である。図9は、第2連結具17を示す側面図である。図7は、図1、図2および図5と同一の方向から見て示す図であって、図7A(1)は、格納状態を示し、図7A(2)は、1次展開中の状態を示し、図7B(3)は、中間状態を示し、図7B(4)は、2次展開中の状態を示し、図7(5)は、展開状態を示す。図8は、各パネル片12の長手方向に平行となる第1方向xに平行な視線で見た状態を示す図であって、図8A(1)は、格納状態を示し、図8A(2)は、1次展開中の中期段階の状態を示し、図8B(3)は、1次展開中の終期段階の状態を示し、図8B(4)は、中間状態を示す。図9は、各パネル片12の幅方向に平行となる第2方向yに平行な視線で見た状態を示す図であって、図9A(1)は、中間状態を示し、図9A(2)は、2次展開中の中期段階の状態を示し、図9B(3)は、2次展開中の終期段階の状態を示し、図9B(4)は、展開状態を示す。
【0036】
連結手段15における3種類の連結具16〜18のうちの2つめの連結具(以下「第2連結具」という)17は、図1B(2)および図2A(2)の1次展開中の状態において、互いに突合される角部92であって、かつ図1D(5)に示す展開状態においても互いに突合される角部92同士を連結するために設けられる連結具である。第2連結具17は、常時、第2方向yおよび第3方向zに隣接している4枚のパネル片12の角部92を連結するための第2連結具(以下「4枚用第2連結具」という)17と、パネル装置10の第2方向yの両端に配置され、常時、第3方向zに隣接する2枚のパネル片12の角部92を連結するための2枚連結用の第2連結具(以下「2枚用第2連結具」という)17とを有する。
【0037】
図6〜図9には、4枚用第2連結具17を示している。4枚用第2連結具17は、第2方向yおよび第3方向zに隣接する4枚のパネル片12を連結するための連結具であり、2つの主連結器25と、2つの副連結器26とを有する。主連結器25は、一対のヒンジ片30,31と、L字状のヒンジピン32とを有する。ヒンジピン32は、一対の軸部33,34を有し、各軸部33,34の軸線L33,L34が90度の角度を成すように形成されている。一方のヒンジ片30が、一方の軸部33に、その軸線である一方軸部軸線L33まわりに角変位可能に設けられ、他方のヒンジ片31が、他方の軸部34に、その軸線である他方軸部軸線L34まわりに角変位可能に設けられる。このように主連結器25は、一対のヒンジ片30,31が、ヒンジピン32によってヒンジピン32の各軸部軸線L33,L34まわりに各変位可能に連結されている、2自由度のヒンジによって実現される。
【0038】
主連結器25は、格納状態および中間状態において第3方向zに隣接する2つのパネル片12を連結する連結器であり、一方のヒンジ片30が、連結すべき2つのパネル片12のうち一方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結され、他方のヒンジ片31が、連結すべき2つのパネル片12のうち他方のパネル片12の長手方向の端面部91aに連結される。主連結器25は、一方軸部軸線L33がパネル片12の長手方向に平行になるように設けられ、他方軸部軸線L34が他方のパネル片12の幅方向に平行になるように設けられ、パネル片12を各軸部軸線L33,L34まわりに角変位可能に連結する。主連結器25によって連結される2つのパネル片12は、厚み方向に重なる状態と、幅方向の側面部90aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の長手方向に平行な角変位軸線となる一方軸部軸線L33まわりに角変位可能であるとともに、厚み方向に重なる状態と、長手方向の端面部91aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の幅方向に平行な角変位軸線となる他方軸部軸線L34まわりに角変位可能である。
【0039】
副連結器26は、一対のヒンジ片36,37がヒンジピン38によってその軸線であるヒンジ軸線L26まわりに各変位可能に連結されている、1自由度のヒンジによって実現される。副連結器26は、格納状態および中間状態において第2方向yに隣接する2つのパネル片12を連結する連結器であり、一方のヒンジ片36が、連結すべき2つのパネル片12のうち一方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結され、他方のヒンジ片37が、連結すべき2つのパネル片12のうち他方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結される。副連結器26は、ヒンジ軸線L26がパネル片12の長手方向に平行になるように設けられ、パネル片12をヒンジ軸線L26まわりに角変位可能に連結する。副連結器26によって連結される2つのパネル片12は、厚み方向に重なる状態と、幅方向の側面部90aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の長手方向に平行な角変位軸線となるヒンジ軸線L26まわりに角変位可能である。
【0040】
これら2つの主連結器25および2つの副連結器26を有する4枚用第2連結具17によって連結される隣接する4枚のパネル片12は、図7A(1)および図8A(1)に示すように、格納状態では、幅方向の側面部90aを突合せるようにして面状に第3方向zに2枚並ぶとともに、厚み方向に重なるようにして第2方向yに2枚重なる状態にある。この格納状態から、1次展開において、各パネル片12は、主連結器25の一方軸部軸線L33および副連結器26のヒンジ軸線L26まわりに各変位して、図7A(2)ならびに図8A(2)および図8B(3)に示すように、第1方向xに平行な視線で見たとき、各パネル12が放射状に並びX字状となる状態を経て、図7B(3)および図8B(4)に示す中間状態まで角変位する。
【0041】
中間状態では、図7B(3)ならびに図8B(4)および図9A(1)に示すように、幅方向の側面部90aを突合せるようにして面状に第2方向yに2枚並ぶとともに、厚み方向に重なるようにして第3方向zに2枚重なる状態にある。この中間状態から、2次展開において、各パネル片12が、主連結器25の他方軸部軸線L34まわりに各変位して、図7B(4)ならびに図9A(2)および図9B(3)に示すように、第2方向yに平行な視線で見たとき、各パネル12がくの字状に屈曲する状態を経て、図7C(5)および図9B(4)に示す展開状態まで角変位する。
【0042】
第2連結具17のうち2枚用第2連結具17は、格納状態および中間状態において、第2方向yの端に配置され、第3方向zに隣接する2枚のパネル片12を連結するための連結具である。この2枚用第2連結具17は、前述の4枚用第2連結具17の4つの連結器25,26のうち、1つの主連結器25だけを備える構成である。
【0043】
図10は、図2A(2)のセクションDをさらに拡大して示す斜視図である。図11は、第3連結具18を示す斜視図である。図12は、第3連結具18を示す正面図である。図11は、図1、図2および図5と同一の方向から見て示す図であって、図12は、各パネル片12の長手方向に平行となる第1方向xに平行な視線で見た状態を示す図である。図11A(1)および図12A(1)は、格納状態を示し、図11A(2)および図12A(2)は、1次展開中の中期段階の状態を示し、図11B(3)および図12B(3)は、中間状態を示し、図11B(4)および図12B(4)は、2次展開中の初期段階の状態を示す。
【0044】
連結手段15における3種類の連結具16〜18のうちの3つめの連結具(以下「第3連結具」という)18は、図1B(2)および図2A(2)の1次展開中の状態において、互いに突合される角部92であって、かつ図1D(5)に示す展開状態においては、第3方向zに離れた位置に配置される角部92同士を連結するために設けられる連結具である。第3連結具18は、格納状態から中間状態までの間は、第2方向yおよび第3方向zに隣接し、2次展開中および展開状態では、第2方向yに隣接する2枚ずつの組になって第3方向zには離れる4枚のパネル片12の角部92を連結するための第3連結具(以下「4枚用第3連結具」という)18と、パネル装置10の第2方向yの両端に配置され、格納状態から中間状態までの間は、第3方向zに隣接し、2次展開中および展開状態では、第3方向zに離れる2枚のパネル片12の角部92を連結するための2枚連結用の第3連結具(以下「2枚用第3連結具」という)18とを有する。
【0045】
図10〜図12には、4枚用第3連結具18を示している。4枚用第3連結具18は、格納状態において、第2方向yおよび第3方向zに隣接する4枚のパネル片12を連結するための連結具であり、2つの主連結器35と、2つの副連結器36とを有する。主連結器35は、一対のヒンジ片40,41を有する。一方のヒンジ片40には、ヒンジ軸42が一体に形成され、他方のヒンジ片41には、ヒンジ軸42がその軸線であるヒンジ軸線L35まわりに角変位可能に嵌込む軸受部43が形成されている。軸受部43は、U字状に形成されており、ヒンジ軸42が配置されるヒンジ凹所44が一方向(以下「開放方向」という)Oに開放しており、ヒンジ軸42は、軸受部43に嵌込んだ状態から、ヒンジ軸線L35と交差する方向となるヒンジ凹所44の開放方向Oへ変位して、軸受部43から離脱可能である。このように主連結器35は、一対のヒンジ片40,41が、互いに着脱可能に、かつヒンジ軸線L35まわりに各変位可能に連結されている、ヒンジによって実現される。
【0046】
主連結器35は、格納状態および中間状態において第3方向zに隣接する2つのパネル片12を連結する連結器である。一方のヒンジ片40は、連結すべき2つのパネル片12のうち一方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結され、ヒンジ軸42が、パネル片12の長手方向の端面部91aから突出し、かつヒンジ軸線L35がパネル片12の長手方向と平行に配置されるように設けられる。他方のヒンジ片40は、連結すべき2つのパネル片12のうち他方のパネル片12の長手方向の端面部91aに連結され、軸受部43のヒンジ凹所44の開放方向Oが、パネル片12の厚み方向と平行になるように、設けられる。主連結器35は、パネル片12を、着脱可能にかつヒンジ軸線L35まわりに角変位可能に連結する。主連結器35によって連結される2つのパネル片12は、厚み方向に重なる状態と、幅方向の側面部90aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の長手方向に平行な角変位軸線となるヒンジ軸線L35まわりに角変位可能であるとともに、厚み方向に重なる状態において、着脱可能である。
【0047】
副連結器36は、一対のヒンジ片46,47がヒンジピン48によってその軸線であるヒンジ軸線L36まわりに各変位可能に連結されている、1自由度のヒンジによって実現される。副連結器36は、格納状態および中間状態において第2方向yに隣接する2つのパネル片12を連結する連結器であり、一方のヒンジ片46が、連結すべき2つのパネル片12のうち一方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結され、他方のヒンジ片46が、連結すべき2つのパネル片12のうち他方のパネル片12の幅方向の側面部90aに連結される。副連結器36は、ヒンジ軸線L36がパネル片12の長手方向に平行になるように設けられ、パネル片12をヒンジ軸線L36まわりに角変位可能に連結する。副連結器36によって連結される2つのパネル片12は、厚み方向に重なる状態と、幅方向の側面部90aを対向させて突合される状態で面状に並ぶ状態とにわたって、パネル片12の長手方向に平行な角変位軸線となるヒンジ軸線L36まわりに角変位可能である。
【0048】
これら2つの主連結器35および2つの副連結器36を有する4枚用第3連結具18によって連結される隣接する4枚のパネル片12は、図11A(1)および図12A(1)に示すように、格納状態では、幅方向の側面部90aを突合せるようにして面状に第3方向zに2枚並ぶとともに、厚み方向に重なるようにして第2方向yに2枚重なる状態にある。この格納状態から、1次展開において、各パネル片12は、主連結器35のヒンジ軸線L35および副連結器36のヒンジ軸線L36まわりに各変位して、図11A(2)および図12A(2)に示すように、第1方向xに平行な視線で見たとき、各パネル12が放射状に並びX字状となる状態を経て、図11B(3)および図12B(3)に示す中間状態まで角変位する。
【0049】
中間状態では、図11B(3)および図12B(3)に示すように、幅方向の側面部90aを突合せるようにして面状に第2方向yに2枚並ぶとともに、厚み方向に重なるようにして第3方向zに2枚重なる状態にある。また中間状態では、主連結器35の軸受部44のヒンジ凹所44の開放方向Oは、一方のヒンジ片40が連結される一方のパネル片12が、他方のヒンジ片41が連結される他方のパネル片12に対して離反する方向である。この中間状態から、2次展開において、図11B(4)および図12B(4)に示すように、主連結器35の各ヒンジ片40,41が互いに離脱し、第2方向yに隣接する2枚のパネル片12が組となって2組に分かれ、一方の組のパネル片12の角部92が、他方の組のパネル片12の角部92から遠ざかるように、各パネル片12におけるこの4枚用第3連結具18が設けられる側とは反対側の長手方向の端部91付近を中心にして、展開状態まで角変位する。
【0050】
第3連結具18のうち2枚用第3連結具18は、格納状態および中間状態において、第2方向yの端に配置され、第3方向zに隣接する2枚のパネル片12を連結するための連結具である。この2枚用第3連結具18は、前述の4枚用第3連結具18の4つの連結器35,36のうち、1つの主連結器35だけを備える構成である。
【0051】
パネル装置10では、前述のように、格納状態において、各パネル片12が、第2方向yに重なり、第3方向zに並んでいる。したがって各パネル片12が、第2方向yおよび第3方向zに並んだ状態にある。このような各パネル片12における角部92を、識別番号(M,N,Z,X)で識別する。Mは、各パネル片12に、第2方向yの並び順に従って、第2方向y一方(たとえば図1において左斜め下方)の端のパネル片12を1とし、第2方向y他方(たとえば図1においいて右斜め上方)に向かって1つずつ数値が大きくなるように、各パネル片12に割当てられる自然数の番号である。Nは、第3方向zの並び順に従って、第3方向z一方(たとえば図1において上方)の端のパネル片12を1とし、第3方向z他方(たとえば図1において下方)に向かって1つずつ数値が大きくなるように、各パネル片12に割当てられる自然数の番号である。またZは、格納状態において、第3方向z一方側の角部92を1とし、第3方向z他方側の角部92を2とする。またXは、格納状態において、第1方向x一方(たとえば図1の右斜め下方)側の角部92を1とし、第1方向x他方(左斜め上方)側の角部92を2とする。 ここで自然数は、正の整数、つまり1以上の整数である。Mの最大値をMmaxとし、Nの最大値をNmaxとする。したがってMは、1からMmaxまでの整数であり、Nは、1からNmaxまでの整数である。
【0052】
第1連結具16は、識別番号(α,1,1,1)の角部92と、識別番号(α+1,1,1,1)の角部92とを連結する。また第1連結部16は、識別番号(β,Nmax,2,1)の角部92と、識別番号(β+1,Nmax,2,1)の角部92とを連結する。ここでα=2γまたはα=2γ+1である。γは、0以上の整数である。Nmaxが奇数のとき、β=α−1であり、Nmaxが偶数のとき、β=αである。ただし、γに0以上の整数を代入したときに、少なくとも一方の角部の識別番号のMが0以下となってしまう場合と、少なくともいずれか一方の角部の識別番号のMがMmax+1以上となってしまう場合とは、第1連結具16は、設けられない。
【0053】
第2連結具17は、識別番号(δ,ε,2,1)の角部92と、識別番号(δ+1,ε,2,1)の角部92と、識別番号(δ,ε+1,1,1)の角部92と、識別番号(δ+1,ε+1,1,1)の角部92とを連結する。ここでδ=α−1であり、ε=2ζ−1である。ζは、0以上の整数である。ただし、γに0以上の整数を代入したときに、全ての角部の識別番号のMが0以下となってしまう場合と、全ての角部の識別番号のMがMmax+1以上となってしまう場合とは、第2連結具17は、設けられない。またζに0以上の整数を代入したときに、少なくとも2つの角部の識別番号のNが0以下となってしまう場合と、少なくとも2つの角部の識別番号のNがNmax+1以上となってしまう場合とは、第2連結具17は、設けられない。ζに0以上の整数を代入したときに、全ての角部の識別番号のNが1以上Nmax以下である場合において、γに0以上の整数を代入したときに、2つの角部の識別番号のMが0となりかつ2つの角部の識別番号のMが1となる場合と、2つの角部の識別番号のMがMmaxとなりかつ2つの角部の識別番号のMがMmax+1となる場合とは、2枚用第2連結具17が用いられ、全ての角部の識別番号のMが1以上Mmax以下である場合に、4枚用第2連結具17が設けられる。
【0054】
第3連結具18は、識別番号(α,η,2,1)の角部92と、識別番号(α+1,η,2,1)の角部92と、識別番号(α,η+1,1,1)の角部92と、識別番号(α+1,η+1,1,1)の角部92とを連結する。ここでη=ε−1である。ただし、γに0以上の整数を代入したときに、全ての角部の識別番号のMが0以下となってしまう場合と、全ての角部の識別番号のMがMmax+1以上となってしまう場合とは、第3連結具18は、設けられない。またζに0以上の整数を代入したときに、少なくとも2つの角部の識別番号のNが0以下となってしまう場合と、少なくとも2つの角部の識別番号のNがNmax+1以上となってしまう場合とは、第3連結具18は、設けられない。ζに0以上の整数を代入したときに、全ての角部の識別番号のNが1以上Nmax以下である場合において、γに0以上の整数を代入したときに、2つの角部の識別番号のMが0となりかつ2つの角部の識別番号のMが1となる場合と、2つの角部の識別番号のMがMmaxとなりかつ2つの角部の識別番号のMがMmax+1となる場合とは、2枚用第3連結具18が用いられ、全ての角部の識別番号のMが1以上Mmax以下である場合に、4枚用第2連結具18が設けられる。
【0055】
以上は、第1〜第3連結具16〜18の第1方向x一方側の配置であり、第1〜第3連結具16〜18の第1方向x他方側の配置を、以下に述べる。第1方向x他方側では、第1連結具16は、識別番号(α,1,1,2)の角部92と、識別番号(α+1,1,1,2)の角部92とを連結する。また第1連結具16は、識別番号(β,Nmax,2,2)の角部92と、識別番号(β+1,Nmax,2,2)の角部92とを連結する。第2連結具17は、識別番号(α,η,2,2)の角部92と、識別番号(α+1,η,2,2)の角部92と、識別番号(α,η+1,1,2)の角部92と、識別番号(α+1,η+1,1,2)の角部92とを連結する。第3連結具18は、識別番号(δ,ε,2,2)の角部92と、識別番号(δ+1,ε,2,2)の角部92と、識別番号(δ,ε+1,1,2)の角部92と、識別番号(δ+1,ε+1,1,2)の角部92とを連結する。
【0056】
このような第1〜第3連結具16〜18の第1方向x他方側における配置についても、第1方向x一方側における配置と同様に、MおよびNの値がただし書きの制約を受ける。第1方向x他方側の第1連結具16は、第1方向x一方側の第1連結具16で連結される角部の識別番号うちXだけが1から2に変わった識別番号の角部同士を連結する。したがって第1方向x他方側において第1連結具16は、第1方向x一方側において第1連結具16が設けられる位置と第1方向xの反対側となる位置に設けられる。
【0057】
第1方向x他方側の4枚用第2連結具17は、第1方向x一方側の4枚用第3連結具18で連結される角部の識別番号うちXだけが1から2に変わった識別番号の角部同士を連結する。したがって第1方向x他方側において4枚用第2連結具17は、第1方向x一方側において4枚用第3連結具18が設けられる位置と第1方向xの反対側となる位置に設けられる。また第1方向x他方側の2枚用第2連結具17は、第1方向x一方側の2枚用第3連結具18で連結される角部の識別番号うちXだけが1から2に変わった識別番号の角部同士を連結する。したがって第1方向x他方側において2枚用第2連結具17は、第1方向x一方側において2枚用第3連結具18が設けられる位置と第1方向xの反対側となる位置に設けられる。
【0058】
第1方向x他方側の4枚用第3連結具18は、第1方向x一方側の4枚用第2連結具17で連結される角部の識別番号うちXだけが1から2に変わった識別番号の角部同士を連結する。したがって第1方向x他方側において4枚用第3連結具18は、第1方向x一方側において4枚用第2連結具17が設けられる位置と第1方向xの反対側となる位置に設けられる。また第1方向x他方側の2枚用第3連結具18は、第1方向x一方側の2枚用第2連結具17で連結される角部の識別番号うちXだけが1から2に変わった識別番号の角部同士を連結する。したがって第1方向x他方側において2枚用第3連結具18は、第1方向x一方側において2枚用第2連結具17が設けられる位置と第1方向xの反対側となる位置に設けられる。
【0059】
このような第1〜第3連結具16〜18を有する連結手段15によって、各パネル体11を連結するとともに、各パネル体11における各パネル片12を連結することによって、格納状態から、前述のような1次展開および2次展開をして、展開状態まで展開可能な連結構造を実現することができる。また連結手段15が、第1〜第3連結具16〜18を有し、前述のような配置で各パネル片12が連結されるので、格納状態と中間状態との間においては、パネル装置10は、各パネル片がリンクに相当するパンタグラフ状となるように構成され、前述のように複数の菱形の筒体を束ねた蜂の巣状の形状となって1次展開する。パネル装置10を、パンタグラフ状に構成することによって、各パネル体11の1次展開を連動させ、1次展開を同時進行させることができる。
【0060】
図13は、ラッチ手段50を示す断面図である。図14は、図13(3)の下方から見て示す断面図である。図13(1)は、離間状態を示し、図13(2)は、ラッチ作動開始状態を示し、図13(3)は、ラッチ完了状態を示す。パネル装置10は、中間状態から格納状態に向かう状態変化動作および展開状態から中間状態に向かう状態変化動作を阻止する逆戻り防止手段であるラッチ手段50を備えている。本実施の形態では、複数のラッチ手段50が用いられている。
【0061】
ラッチ手段50は、中間状態において、互いに側面部90aを対向させて突合せ、第2方向yに並べられる2つのパネル片12を互いに係合させるために、その係合させるべき2つのパネル片12の突合せ部に、少なくとも1つずつそれぞれ設けられる。またラッチ手段50は、展開状態において、互いに端面部91aを対向させて突合せ、第3方向zに並べられる2つのパネル片12を互いに係合させるために、その係合させるべき2つのパネル片12の突合せ部に、少なくとも1つずつそれぞれ設けられる。
【0062】
ラッチ手段50は、ラッチ軸51と、ラッチ軸51に係合するラッチ片52とを有する。ラッチ片52は、基端部でラッチ軸線L50まわりに角変位可能に設けられ、遊端部に、角変位方向一方に開放するラッチ凹所55を有している。またラッチ片52は、ねじりコイルばねによって実現されるラッチばね56によって角変位方向一方に向かうばね力が与えられるとともに、規制片57によって、予め定める角度位置で、角変位方向一方に向かう角変位が規制される。ラッチ軸51は、互いに係合させるべき2つのパネル片12のうち一方に設けられ、ラッチ片52は、互いに係合させるべき2つのパネル片12のうち他方に設けられる。
【0063】
ラッチ手段50が、中間状態において、互いに側面部90aを対向させて突合せ、第2方向yに並べられる2つのパネル片12を互いに係合させるために設けられている場合、図5、図8および図12に示すように、ラッチ軸51は、一方のパネル片12の側面部90aに設けられ、ラッチ片52は、他方のパネル片12の側面部90aに、遊端部が側面部90aに対して遠ざかる方向へ突出するように設けられている。このようにラッチ手段50が設けられることによって、各パネル体11の1次展開が終期段階に近づくと、図13(1)に示すように、ラッチ片52がラッチ軸51に近づき、やがて図13(2)に示すようにラッチ片52の遊端部の端面59が、ラッチ軸51に当接する。ラッチ片52の端面59は、ラッチ片52の角変位方向一方に向かうにつれて、ラッチ軸線L50からの距離が小さくなる形状を有しており、1次展開がさらに進むと、ラッチ片52がラッチ軸51に押圧されてラッチばね56に抗して角変位方向他方へ各変位し、やがてラッチ片52の遊端部がラッチ軸51を乗越えると、ラッチ片52がラッチばね56によって角変位方向一方へ角変位し、ラッチ凹所55にラッチ軸51が嵌込み、ラッチ片52がラッチ軸51に係合される。この状態で、ラッチ軸51が設けられるパネル片12と、ラッチ片52が設けられるパネル片12とが係合される。これによって中間状態から格納状態に向かう状態変化動作が阻止される。
【0064】
またラッチ手段50が、展開状態において、互いに端面部91aを対向させて突合せ、第3方向zに並べられる2つのパネル片12を互いに係合させるために設けられている場合、図6、図7、および図9に示すように、ラッチ軸51は、一方のパネル片12の端面部91aに設けられ、ラッチ片52は、他方のパネル片12の端面部91aに、遊端部が端面部91aに対して遠ざかる方向へ突出するように設けられている。このようにラッチ手段50が設けられることによって、各パネル体11の2次展開が終期段階に近づくと、図13(1)に示すように、ラッチ片52がラッチ軸51に近づき、やがて図13(2)に示すようにラッチ片52の遊端部の端面59が、ラッチ軸51に当接する。ラッチ片52の端面59は、ラッチ片52の角変位方向一方に向かうにつれて、ラッチ軸線L50からの距離が小さくなる形状を有しており、2次展開がさらに進むと、ラッチ片52がラッチ軸51に押圧されてラッチばね56に抗して角変位方向他方へ各変位し、やがてラッチ片52の遊端部がラッチ軸51を乗越えると、ラッチ片52がラッチばね56によって角変位方向一方へ角変位し、ラッチ凹所55にラッチ軸51が嵌込み、ラッチ片52がラッチ軸51に係合される。この状態で、ラッチ軸51が設けられるパネル片12と、ラッチ片52が設けられるパネル片12とが係合される。これによって展開状態から中間状態に向かう状態変化動作が阻止される。
【0065】
またラッチ手段50は、ラッチ片52がラッチ軸51に係合された状態で、各パネル片12の角変位を阻止してその角度位置関係に保持する。つまりラッチ手段50は、格納状態から中間状態に1次展開すると、各パネル体11において、隣接するパネル片12同士を予め定める角度位置関係に保持するとともに、中間状態から展開状態に2次展開すると、隣接するパネル体11同士を予め定める角度位置関係に保持する。本実施の形態では、各パネル片12が面一に配置されてパネル体11が平面状となり、かつ各パネル体が面一に配置されるように、各パネル体11および各パネル片12の角度位置を保持している。したがってパネル装置10は、平面状となる。
【0066】
本発明の実施の他の形態として、角パネル体11および各パネル片12を他の角度位置関係に保持してもよい。たとえば隣接するパネル体11が180度より少し小さい角度を成すような角度位置に、各パネル体11を保持し、パネル装置10が曲面状となるように保持してもよい。パネル装置10を、展開状態で曲面状とすることによって、たとえば太陽光などを、反射、集光する反射体として用いることができる。
【0067】
またパネル装置10を構成する各パネル片12は、たとえばサンドイッチパネル構造の本体の少なくとも厚み方向一方側の表面に、太陽電池モジュールが貼着されて、構成される。本体は、たとえば炭素繊維強化合成樹脂(CFRP)または金属から成る2枚の面板間に、発泡合成樹脂から成る発泡コアまたは金属もしくは合成樹脂から成るハニカムコアが挟まれて構成されるサンドイッチ構造である。さらに各パネル片12のうち1つ以上の選択されるパネル片12に、厚み方向他方側の表面からマイクロ波を放射可能な回路を内蔵する。このような各パネル片12を、パネル装置10の展開状態で、厚み方向一方側の表面が、同一側に配置されるように設け、このパネル装置10を各パネル片12の厚み方向一方側の表面が地球から遠ざかる方向に向くように、静止軌道上に設ける。各パネル片12の太陽電池モジュールで発電された電力は、選択されるパネル片12に内蔵される回路によって、マイクロ波として地上に送電される。各パネル片12の厚み方向他方側の表面にも、マイクロ波の放射に影響を与えない位置に太陽電池モジュールを設けるようにしてもよい。
【0068】
またパネル装置10は、格納状態から1次展開および2次展開するための駆動力を与える駆動手段60を備えている。本実施の形態では、第1〜第3連結具16〜18に保持されるばね部材によって実現される。このばね部材は、たとえばねじりコイルばねである。駆動手段60は、ばね力を駆動力として、第1〜第3連結具16〜18を介してパネル12に与える。パネル装置10は、宇宙空間に打上げられた後、この駆動力で展開状態まで展開する。また本実施の他の形態として、駆動手段60が、小型のモータを用いて実現される構成であってもよい。また駆動手段60は、ばね部材とモータとを組合せて実現されてもよい。
【0069】
前述の各実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内で構成を変更することができる。たとえばパネル装置10は、宇宙太陽発電システムで用いられるパネル装置10以外であってもよく、太陽電池パネルでなくてもよい。また1つのパネル片12の形状、格納状態および展開状態におけるパネル装置10の寸法、パネル装置10を構成するためのパネル体11の数およびパネル片12の数などは、前述の具体例の形状、寸法および数に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】本発明の実施の一形態のパネル装置10を簡略化して示す斜視図である。
【図1B】本発明の実施の一形態のパネル装置10を簡略化して示す斜視図である。
【図1C】本発明の実施の一形態のパネル装置10を簡略化して示す斜視図である。
【図1D】本発明の実施の一形態のパネル装置10を簡略化して示す斜視図である。
【図2A】パネル装置10の一部を拡大して示す斜視図である。
【図2B】パネル装置10の一部を拡大して示す斜視図である。
【図2C】パネル装置10の一部を拡大して示す斜視図である。
【図3A】パネル装置10の一部を拡大して示す正面図である。
【図3B】パネル装置10の一部を拡大して示す正面図である。
【図4A】パネル装置10の一部を拡大して示す側面図である。
【図4B】パネル装置10の一部を拡大して示す側面図である。
【図5】図2A(2)のセクションBをさらに拡大して示す斜視図である。
【図6】図2A(2)のセクションCをさらに拡大して示す斜視図である。
【図7A】第2連結具17を示す斜視図である。
【図7B】第2連結具17を示す斜視図である。
【図7C】第2連結具17を示す斜視図である。
【図8A】第2連結具17を示す正面図である。
【図8B】第2連結具17を示す正面図である。
【図9A】第2連結具17を示す側面図である。
【図9B】第2連結具17を示す側面図である。
【図10】図2A(2)のセクションDをさらに拡大して示す斜視図である。
【図11A】第3連結具18を示す斜視図である。
【図11B】第3連結具18を示す斜視図である。
【図12A】第3連結具18を示す正面図である。
【図12B】第3連結具18を示す正面図である。
【図13】ラッチ手段50を示す断面図である。
【図14】図13(3)の下方から見て示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 パネル装置
11 パネル体
12 パネル片
15 連結手段
16 第1連結具
17 第2連結具
18 第3連結具
50 ラッチ手段
60 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル片をそれぞれ有する複数のパネル体であって、各パネル片が重なる格納状態から、格納状態における各パネル片の重なり方向に伸展して各パネル片が面状に並ぶ中間状態に1次展開可能である複数のパネル体と、
各パネル体が格納状態から中間状態に1次展開可能に、各パネル体の各パネル片を連結するとともに、各パネル体が中間状態で互いに重なり、かつ中間状態から、中間状態における各パネル体の重なり方向に伸展して各パネル体が面状に並ぶ展開状態に2次展開可能に、各パネル体を連結する連結手段とを備えることを特徴とするパネル装置。
【請求項2】
前記連結手段は、各パネル体における1次展開が連動して同時進行するように、各パネル体同士および各パネル片同士を連結することを特徴とする請求項1に記載のパネル装置。
【請求項3】
1次展開中において、複数の菱形の筒体を束ねた蜂の巣状の形状となることを特徴とする請求項2に記載のパネル装置。
【請求項4】
中間状態から格納状態に向かう状態変化動作および展開状態から中間状態に向かう状態変化動作を阻止する逆戻り防止手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のパネル装置。
【請求項5】
前記逆戻り防止手段は、格納状態から中間状態に1次展開すると、隣接するパネル片同士を予め定める角度位置関係に保持するとともに、中間状態から展開状態に2次展開すると、隣接するパネル体同士を予め定める角度位置関係に保持することを特徴とする請求項4に記載のパネル装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−247150(P2008−247150A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89880(P2007−89880)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)