説明

パネル部材

【課題】簡易な構造でありながらも施工時における作業性を向上させ得るパネル部材を提供する。
【解決手段】パネル部材1は、パネル体10の背面側及び取付レール20の手前側のうちの一方21に、スライド孔部24とこのスライド孔部よりも大径状とされた大径孔部23とを前記パネル体の幅方向に沿わせるようにして一連に有した係合孔部22を設けており、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方11に、前記係合孔部のスライド孔部にスライド挿入される基部14と前記係合孔部の大径孔部に挿通可能でかつ前記スライド孔部よりも大径状の抜止部13とを有した係合突起部12を前記パネル体の厚さ方向に沿わせるようにして設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居等の建物に施工されるパネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取付下地となる胴縁や桟、野縁さらには既設の天井や壁等に、パネル体を取り付ける施工態様としては、釘やねじ等の止具を用いて固定したり、接着剤を用いて固定したりする施工態様とされていた。止具を用いた施工態様では、止具が表面側に露出するため、見栄えが悪くなり、その隠蔽処理等が必要となる問題があった。また、接着剤を用いた施工態様では、接着剤が硬化するまでに時間を要し、また、接着剤によってパネル体が汚れる可能性があるという問題があった。
下記特許文献1では、壁体に固定した胴縁に対して取付具を用いてパネルを取り付ける構造とされたパネル取付構造が提案されている。このパネル取付構造では、胴縁の装着面に装着孔を形成する一方、パネルの端部に延びるように形成された固定面に、上記胴縁の装着孔にほぼ合致する固定孔を設けた構造とされている。また、このパネル取付構造では、これら胴縁の装着孔及びパネルの固定孔を合致させ、断面略L字状とされた取付具の頭部を各孔に嵌挿、回転して弾力下で固定する構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−111952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたパネル取付構造では、胴縁の装着孔及びパネルの固定孔を合致させた状態で取付具の頭部を各孔に嵌挿、回転させる必要があり、施工作業が面倒であるという問題があった。また、パネルの一端部に延出させるようにして固定面を設ける必要があるとともに、この固定面を覆うためにパネルの他端部に凹みを設ける必要があるため、パネル全体としての構造が複雑化するという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながらも施工時における作業性を向上させ得るパネル部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るパネル部材は、パネル体と、このパネル体が取り付けられるとともに、該パネル体の幅方向に沿わせるようにして取付下地に固定される取付レールとを備え、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの一方には、スライド孔部とこのスライド孔部よりも大径状とされた大径孔部とを前記パネル体の幅方向に沿わせるようにして一連に有した係合孔部が設けられており、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方には、前記係合孔部のスライド孔部にスライド挿入される基部と前記係合孔部の大径孔部に挿通可能でかつ前記スライド孔部よりも大径状の抜止部とを有した係合突起部が前記パネル体の厚さ方向に沿わせるようにして設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方に、前記係合突起部の基部を前記パネル体の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドする突起ガイド部を設けるようにしてもよい。
また、本発明においては、前記突起ガイド部を、前記係合突起部の基部が挿通されるとともに、該基部よりも大径状とされた孔部を有したプレート状とし、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方に設けられた凹部に嵌め込まれる構造としてもよい。
また、本発明においては、前記係合孔部のスライド孔部を、前記パネル体の幅方向に沿わせるようにして、前記大径孔部の両側に設けるようにしてもよい。
また、本発明においては、前記係合孔部を、前記取付下地に固定される固定片部から立ち上がるように形成されて前記パネル体の背面が当接する前記取付レールの手前側となる当接片部に設け、前記係合突起部を、前記パネル体の背面側に設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパネル部材は、上述のような構成としたことで、簡易な構造でありながらも施工時における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係るパネル部材を模式的に示し、その取付構造の一例を模式的に示す一部破断概略背面側斜視図である。
【図2】(a)は、図1(a)におけるX1部に対応させた一部破断概略拡大背面図、(b)は、(a)におけるY1−Y1線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(c)は、図1(b)におけるX2部に対応させた一部破断概略拡大背面図、(d)は、(c)におけるY2−Y2線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図3】(a)は、同パネル部材が備えるパネル体の一部破断概略拡大背面側斜視図、(b)は、(a)に対応させた一部分解図、(c)は、図2(b)におけるZ−Z線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図4】(a)、(b)は、いずれも同パネル部材の施工手順の一例を模式的に示す一部破断概略斜視図である。
【図5】同施工手順を模式的に示す一部破断概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、本実施形態に係るパネル部材の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係るパネル部材1は、図4及び図5に示すように、略矩形平板状のパネル体10と、このパネル体10が取り付けられるとともに、パネル体10の幅方向に沿わせるようにして取付下地2に固定される取付レール20とを備えている。
図例では、取付下地としての壁下地2に取付レール20を固定し、この取付レール20に対して、パネル体10を壁パネルとして取り付けた例を示している。
【0011】
取付レール20は、図4及び図5に示すように、パネル体10の幅方向に沿って長尺に形成されており、本実施形態では、複数枚のパネル体10の取り付けが可能なように、パネル体10の幅寸法よりも十分に長い寸法とされている。また、図例では、二本の取付レール20,20を、壁下地2と天井面(または天井下地)4との入隅部、及び壁下地2と床面(または床下地)5との入隅部のそれぞれに沿って配設した例を示している。
この取付レール20の長さ寸法は、パネル体10の複数枚分の幅寸法に応じた寸法としてもよく、適宜の規格化等された長さ寸法とし、施工現場等において適宜の長さに切断されるものとしてもよい。このように複数枚のパネル体10の取り付けが可能な長さ寸法とすることで、パネル体10毎に取付レール20を設ける場合と比べて、部品点数を少なくでき、施工時における作業性を向上させることができる。なお、取付レール20の長さ寸法を、一枚分のパネル体10の幅寸法に応じた寸法としてもよい。
【0012】
この取付レール20は、図1及び図2に示すように、壁下地2に固定される固定片部26と、この固定片部26から立上片部25を介して立ち上がるように設けられた当接片部21とを備えている。図例の取付レール20は、上下一対の固定片部26,26と、これら上下の固定片部26,26のそれぞれに連設された上下一対の立上片部25,25と、これら上下の立上片部25,25を接続するように固定片部26,26と略平行に設けられた当接片部21とを備えている。図例では、取付レール20は、これら各片部21,25,26によって、図2(b)に示すように、長手方向に直交する断面形状が略ハット型形状とされている。また、本実施形態では、取付レール20は、長手方向に沿う中心線を対称軸として略線対称状の形状とされている。
【0013】
また、この取付レール20の手前側となる当接片部21には、長手方向に沿って間隔を空けて複数の係合孔部22・・・が設けられている(図4及び図5も参照)。
これら係合孔部22は、後記するパネル体10の背面11に設けられた係合突起部12のパネル体10の幅方向に沿う位置に対応させて、当接片部21の長手方向に沿って間隔を空けて設けられている。
また、この係合孔部22は、図2に示すように、パネル体10の上端面と取付レール20の上端面(固定片部26の上縁端面)とが略同一平面上に位置した状態で、パネル体10の係合突起部12と略同高さ位置となるように取付レール20に設けられている。なお、下側の取付レール20の係合孔部22及びパネル体10の係合突起部12についての図示は省略しているが、上記同様である。つまり、パネル体10の下端面と取付レール20の下端面(固定片部26の下縁端面)とが略同一平面上に位置した状態で、パネル体10の係合突起部12と略同高さ位置となるように係合孔部22が取付レール20に設けられている。
【0014】
また、この係合孔部22は、図1及び図2に示すように、スライド孔部24と、このスライド孔部24よりも大径状とされた大径孔部23とをパネル体10の幅方向に沿わせるようにして一連に有している。つまり、この係合孔部22は、取付レール20の当接片部21の長手方向に沿って一連に形成されたスライド孔部24と大径孔部23とを備えている。
また、図例では、平面視(背面視)して略矩形状のスライド孔部24と略丸孔状の大径孔部23とを取付レール20の当接片部21の長手方向に沿って連通させるように一連に形成した係合孔部22を例示している。
この係合孔部22の大径孔部23の径は、当接片部21の短手方向に沿うスライド孔部24の寸法(スライド孔部24の幅寸法)よりも大きい寸法とされている。
また、本実施形態では、係合孔部22のスライド孔部24を、取付レール20の当接片部21の長手方向に沿って大径孔部23の両側のそれぞれに設けている。つまり、大径孔部23を挟んで両側にスライド孔部24,24を設けている。
【0015】
なお、取付レール20は、金属系材料や硬質の合成樹脂系材料等から上記形状に形成されたものとしてもよい。
また、取付レール20の固定片部26の前面に、止具の止着箇所の目印としての細凹溝を長手方向に沿って形成したり、固定片部26に、長手方向に沿って間隔を空けて複数の止具孔を形成したりしておくようにしてもよい。
さらに、取付レール20は、図例のような断面略ハット型形状とされたものに限られず、例えば、上下のうちの一方のみの固定片部26と上下一対の立上片部25,25と当接片部21とからなる断面略柄杓型形状のような形状とされたものとしてもよい。または、上下のうちの一方のみの固定片部26とこれに連設された一方のみの立上片部25と当接片部21とからなる断面略Z字型形状のような形状とされたものとしてもよい。
【0016】
パネル体10は、図4及び図5に示すように、本実施形態では、上下方向に長尺に形成されており、床面5から天井面4に略至るような長さ寸法(高さ寸法)とされている。
このパネル体10としては、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料から形成されたものとしてもよい。また、これら種々の木質系材料を積層した複合材料から形成されたものとしてもよい。または、石膏ボード等の無機質系材料から形成されたものとしてもよい。さらには、解繊したケナフ長繊維にバインダーとして合成樹脂系接着剤等を加えてボード化したケナフボードからなるものとしてもよい。
【0017】
また、パネル体10としては、上記のような種々の材料から平板状に形成されたものに限られない。例えば、縦枠や横枠等により枠組みした枠部材の間に、厚さ方向に開口する多数の中空筒状セルの集合体からなるハニカムコアなどのコア材を配設し、その表裏を面材によって覆ったいわゆるフラッシュ構造のパネル体10としてもよい。
さらに、断熱機能や、吸音機能、防音機能、調湿機能等を有した各種の機能性材料から製されたものや、各種の機能性材料を内蔵した断熱パネル、吸音パネル、防音パネル、調湿パネルなどの機能パネル体10としてもよい。
さらには、面状の輻射ヒーターを内蔵した暖房機能付きの機能パネル体10としてもよく、その他、種々の機能、例えば、送風機能や空気浄化機能、照明機能、音響機能等を備えた機能パネル体10としてもよい。この場合は、種々の機能に応じて、適宜の電気機器(例えば、送風機や静電霧化装置、LED(発光ダイオード)などの照明器具、スピーカーや加振器などの音響機器など)をパネル体10に設けるようにすればよい。
また、上記のような種々のパネル体の表面に表面化粧板や化粧樹脂シート(フィルム)、化粧紙等を積層したり、塗装等を施したりした化粧パネル体としてもよい。
【0018】
また、パネル体10の背面11には、図1及び図2に示すように、上記した取付レール20の係合孔部22に係合する係合突起部12が設けられている。図1及び図2では、下側の図示を省略しているが、パネル体10の背面11の上端部及び下端部のそれぞれにおいて、複数(図例では、2つ)の係合突起部12,12を幅方向に間隔を空けて設けている(図4(b)及び図5参照)。図例では、パネル体10の背面11の四隅近傍に係合突起部12をそれぞれに設けた例を示している。
【0019】
この係合突起部12は、取付レール20の係合孔部22のスライド孔部24にスライド挿入される基部14と、係合孔部22の大径孔部23に挿通可能でかつスライド孔部24よりも大径状の抜止部13とをパネル体10の厚さ方向に沿って有している。
基部14は、図2(b)及び図3に示すように、パネル体10の背面11からパネル体10の厚さ方向に沿って突出するように設けられた略円柱形状とされており、その径が、係合孔部22のスライド孔部24の上記幅寸法よりも僅かに小さい寸法とされている。また、この基部14のパネル体10の背面11から抜止部13までの突出寸法は、取付レール20の当接片部21の厚さ寸法よりも僅かに大きい寸法とされている。
抜止部13は、基部14の突出方向先端に設けられており、図例では、基部14と略同心状の円板状とされている。この抜止部13の径は、図2(a)、(b)に示すように、係合孔部22の大径孔部23に挿通可能なように大径孔部23の径よりも僅かに小さい寸法とされている。また、この抜止部13の径は、図2(c)、(d)に示すように、係合孔部22のスライド孔部24に係止可能なように、スライド孔部24の上記幅寸法よりも大きい寸法とされている。
【0020】
また、本実施形態では、係合突起部12の基部14は、パネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なように突起ガイド部によってガイドされる構造とされている。
本実施形態では、図2(b)及び図3に示すように、係合突起部12の基部14が挿通されるとともに、この基部14よりも大径状とされたガイド孔部17を有したプレート状の突起ガイドプレート16によって突起ガイド部を構成している。この突起ガイドプレート16のガイド孔部17内において係合突起部12の基部14がパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能とされている。
【0021】
この突起ガイドプレート16は、図3に示すように、基部14の径よりも大径とされた丸孔状のガイド孔部17を略中心に有した円板形状とされている。また、この突起ガイドプレート16は、図2(b)及び図3(a)、(b)に示すように、パネル体10の背面11に設けられたプレート凹部11aに嵌め込まれる構造とされている。このプレート凹部11aは、当該プレート凹部11aに突起ガイドプレート16が嵌め込まれた状態で、パネル体10の背面11と突起ガイドプレート16とが略面一状となるように形成されている。
なお、係合突起部12の基部14のパネル体10の面方向に沿う少許の移動は、パネル体10を後記するように取り付ける際に種々の要因により生じることが考えられる誤差や不陸等を吸収し得る程度のものとすればよい。例えば、係合突起部12の基部14が、パネル体10に対して面方向に沿って数mm〜20mm程度の移動が可能とされたものとしてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、係合突起部12に、突起ガイドプレート16に係止保持される引掛片部としての鍔部15を設けている。この鍔部15は、図2(b)及び図3(c)に示すように、本実施形態では、基部14に付設されるようにして設けられており、基部14及び突起ガイドプレート16のガイド孔部17よりも大径の円板状とされている。図例では、この鍔部15は、基部14の突出方向先端側に設けられた抜止部13と略同径とされた円板状とされている。つまり、係合突起部12は、基部14の突出方向両側に、円板状の抜止部13と鍔部15とを有した構造とされている。
また、パネル体10の背面11には、図2(b)及び図3(b)に示すように、鍔部15を受け入れるとともに、係合突起部12のパネル体10の面方向に沿う移動に伴う鍔部15の移動を許容する鍔部収容凹部11bが形成されている。この鍔部収容凹部11bは、パネル体10の背面11に形成されたプレート凹部11aから更に段落ち状にパネル体10の背面11に形成されている。
【0023】
なお、鍔部15は、突起ガイドプレート16のガイド孔部17から抜け出ないような形状であればよく、図例のような円板状に限られず、複数本の引掛片部を基部14の径方向に突出させたような形状とされたものとしてもよい。
また、この係合突起部12と突起ガイドプレート16とは、係合突起部12の基部14を突起ガイドプレート16のガイド孔部17に挿通させた後に、抜止部13または鍔部15を基部14の一端に接着や溶着、嵌合等によって固着させて組み付けるようにしてもよい。
また、突起ガイドプレート16に係止保持された係合突起部12のパネル体10への固定は、突起ガイドプレート16をプレート凹部11a等にねじ等の止具や接着剤によって固着させることで固定するようにしてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係るパネル部材1を用いたパネル取付構造の施工手順の一例について説明する。
まず、図4(a)に示すように、取付対象の壁下地2と天井面4との入隅部及び壁下地2と床面5との入隅部に沿って取付レール20,20をそれぞれ固定する。この際、上側の取付レール20は、上記上端面を天井面4に当接乃至は近接させて沿わせるようにして位置決めし、固定するようにしてもよい(図2参照)。また、下側の取付レール20も同様、上記下端面を床面5に当接乃至は近接させて沿わせるようにして位置決めし、固定するようにしてもよい。また、図例では、取付対象の壁下地2に隣接する隣接壁3(壁下地または壁面)に、各取付レール20,20の長手方向一端面を当接乃至は近接させて配設した態様としている(図2(a)、(c)参照)。
この取付レール20の固定は、取付レール20の固定片部26に、ねじ等の止具を捩じ込み、または止具孔等が設けられている場合には該止具孔に挿通して壁下地2に固定する態様としてもよい。
【0025】
次いで、図4(b)に示すように、隣接壁3側のパネル体10を上下の取付レール20,20に取り付ける。この際、まず、図1(a)、図2(a)、(b)に示すように、パネル体10の背面11に設けられた係合突起部12の抜止部13及び基部14を取付レール20の係合孔部22の大径孔部23に挿入する。次いで、パネル体10を幅方向(図1における右側)に沿って移動させる。このパネル体10の幅方向への移動を伴い、図1(b)、図2(c)、(d)に示すように、パネル体10の係合突起部12の基部14が取付レール20の係合孔部22のスライド孔部24側に移動し、係合突起部12の抜止部13がスライド孔部24に抜止保持される。これにより、パネル体10が取付レール20に対して取り付けられる。
【0026】
以下、同様にして、図5に示すように、複数枚のパネル体10を上下の取付レール20,20に取り付けるようにしてもよい。
なお、隣接壁3側とは異なる側の壁出隅部や壁入隅部においては、パネル体10の幅寸法を適宜のものとし、適宜の見切り部材等によって納めるようにしてもよい。
また、このようにパネル体10を取付施工した後、パネル体10の手前面(室内側の面)に、適宜、表面化粧板や化粧樹脂シート(フィルム)、化粧紙等を貼着したり、塗装等を施したりするようにしてもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るパネル部材1によれば、簡易な構造でありながらも施工時における作業性を向上させることができる。
つまり、取付レール20を取付下地2に固定し、この取付レール20に対してパネル体10を幅方向にスライドさせることで、容易に取り付けることができる。従って、釘やねじ等の止具、接着剤等を用いる必要がなく、また、両者を位置合わせしながら別部品を挿入するような必要もないので、施工時における作業性を向上させることができる。また、パネル体10を幅方向に沿ってスライドさせることで取り付けができるので、例えば、長手方向に沿ってスライドさせる構造とされたものと比べて、スライドさせ易く、作業性を向上させることができる。
また、パネル体10の背面11側に、係合突起部12を設ける構造としているので、パネル体10自体を比較的に簡易な構造とでき、例えば、本実施形態のように、四周端部に実部等を設けずにフラットな端面形状とすることもできる。
さらに、施工後にパネル体10を交換等のために取り外す必要が生じた場合には、パネル体10を逆方向へスライドさせ、係合突起部12と係合孔部22との係合状態を解除させることで、パネル体10に損傷を与えることなく比較的に容易に取り外すことができる。
【0028】
また、本実施形態では、パネル体10の背面11に、係合突起部12の基部14を当該パネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドする突起ガイド部(突起ガイドプレート)16を設けている。従って、取付下地2の不陸や取付下地2に直交する面(本実施形態では、天井面4や床面5、隣接壁3等)の不陸、隣接するパネル体10の取付誤差、取付レール20の取付誤差等を吸収することができる。この結果、このような不陸や誤差等があった場合にもパネル体10を容易に施工できる。また、微調整が可能となるので、隣接するパネル体10,10同士の間や取付下地2に直交する上記面との間に隙間等が形成され難く、見栄え良くパネル体10を取り付けることができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、突起ガイド部16を、係合突起部12の基部14が挿通されるとともに、基部14よりも大径状とされた孔部17を有したプレート状の突起ガイドプレート16としている。また、この突起ガイドプレート16を、パネル体10の背面11に設けられたプレート凹部11aに嵌め込む構造としている。従って、突起ガイド部をパネル体10の背面11から突出させることなく設けることができる。これにより、例えば、背面11から突出するように設ける態様と比べて、パネル体10と取付レール20との間の空間を小さくすることができる。
【0030】
さらにまた、本実施形態では、係合孔部22のスライド孔部24を、パネル体10の幅方向に沿わせるようにして、つまり、取付レール20の長手方向に沿って大径孔部23の両側に設けている。従って、取付レール20に対してパネル体10を取り付ける際に、パネル体10を幅方向のいずれかに移動させることで取り付けることができる。この結果、取付レール20の長手方向のいずれ側を取付始端側としても取付下地2に固定できるため、大径孔部の一方側にのみスライド孔部を設けた態様とされたものと比べて、取付レール20を取付下地2に固定する際における取り扱い性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、係合孔部22を、取付下地2に固定される取付レール20の当接片部21に設け、係合突起部12を、パネル体10の背面11に設けている。従って、パネル体10に係合孔部22を設ける態様としたものと比べて、係合孔部を容易に形成できる。また、係合突起部12を取付レール20に設ける態様としたものと比べて、パネル体10を取付レール20に取り付ける際における作業性を向上させることができる。つまり、手前側から取付レール20に設けられた係合孔部22の大径孔部23の位置が確認し易くなるので、パネル体10の背面11側の係合突起部12を大径孔部23に挿入させ易く、作業性を向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、上述のように、取付レール20の短手端面とパネル体10の長手端面(上下端面)とが略同一平面上に位置した状態で、パネル体10の係合突起部12と略同高さ位置となるように係合孔部22を取付レール20に設けている。従って、取付レール20を上記のように各入隅部に沿わせるようにして固定することで、係合孔部22の高さ位置の位置決めがなされる。これにより、施工時における作業性をより向上させることができる。
これに加え、本実施形態では、取付レール20を、長手方向に沿う中心線を対称軸として略線対称状の形状としている。従って、係合孔部22のスライド孔部24を大径孔部23の両側に設けていることと相俟って、取付レール20を取付下地2に固定する際における取り扱い性をより向上させることができる。つまり、取付レール20をいずれの入隅部(図例では、上下の入隅部)側に配設し、長手方向のいずれ側を取付始端側としても取付下地2に容易に位置決めして固定でき、施工時における作業性をより向上させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、パネル体10の背面11の長手方向両端部(上端部及び下端部)のそれぞれに2つの係合突起部12を設けた例を示しているが、1つ、または3つ以上の係合突起部12を、上端部及び下端部のそれぞれに設けるようにしてもよい。この場合は、取付レール20にも係合突起部12に対応させた係合孔部22を設けるようにすればよい。
また、本実施形態では、パネル体10の背面11の長手方向両端部のそれぞれに係合突起部12を設けた例を示しているが、背面11における長手方向の中間部位にも係合突起部12を設けるようにしてもよい。この場合は、その長手方向位置(高さ位置)に対応する位置に、取付レール20を配設するようにすればよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、床面5から天井面4までの高さ寸法に応じた長さ寸法とされたパネル体10を例示しているが、これよりも短い寸法とされたものとし、複数枚を上下に並設する態様としてもよい。
さらにまた、取付レール20が固定される壁下地2としては、胴縁や桟部材、間柱、通し柱、下地パネル等としてもよい。また、パネル体10を壁パネルとして、壁下地2に取付レール20を介して取り付ける施工態様に限られず、パネル体10を天井パネルとして、野縁や下地パネル等の天井下地に取付レール20を介して取り付けるようにしてもよい。または、このような木造の下地を取付下地とする態様に限られず、鉄筋コンクリート造等の建築物において、直壁や直天井仕上げ等とされている場合には、その仕上げ面を取付下地としてもよい。この場合は、取付レール20を固定する際に、適宜、コンクリート用のアンカーボルト(プラグ)等の止具を採用するようにしてもよい。
さらには、既設の天井材や壁材等を取付下地として、後施工的に本実施形態に係るパネル部材1を施工する態様としてもよい。
【0035】
さらに、本実施形態では、係合孔部22のスライド孔部24を大径孔部23の両側に設けた例を示しているが、大径孔部23の一方側にのみスライド孔部24を設けたいわゆるダルマ孔形状の係合孔部としてもよい。
また、本実施形態では、係合突起部12の基部14をパネル体10の面方向に沿って少許の移動を可能とする突起ガイド部として、パネル体10のプレート凹部11aに嵌め込まれる突起ガイドプレート16を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、パネル体10の背面11に付設するように設けられた突起ガイド部としてもよい。また、突起ガイド部としては、係合突起部12の基部14をパネル体10の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドする構造とされたものであればどのようなものでもよい。さらには、このような突起ガイド部を設けずに、係合突起部12をパネル体10の背面11に固定的に設ける態様としてもよい。このような態様によっても、従来のものと比べて施工時における作業性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、係合孔部22の大径孔部23を略丸孔状とし、係合突起部12の抜止部13を円板状とした例を示しているが、このような形状に限られない。係合突起部12の抜止部13が係合孔部22の大径孔部23にパネル体10の厚さ方向に沿って挿通可能で、係合孔部22のスライド孔部24に係止保持される形状であれば、これらをどのような形状としてもよい。例えば、これらを略多角形状とされたものとしたり、その他の異形状とされたものとしたりしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、係合突起部12をパネル体10の背面11側に設け、係合孔部22を取付レール20の手前側となる当接片部21に設けた例を示しているが、これらを逆側にそれぞれ設けるようにしてもよい。つまり、パネル体10の背面11側に、スライド孔部と大径孔部とをパネル体の幅方向に沿わせるようにして一連に有した係合孔部を設け、取付レール20の手前側に、基部と抜止部とを有した係合突起部をパネル体の厚さ方向に沿わせるようにして設ける態様としてもよい。この場合は、例えば、パネル体10の背面に凹部を設け、係合孔部を形成したプレートを嵌め込むような態様とし、取付レール20の当接片部21に上記同様の係合突起部を設ける態様としてもよい。このような態様によっても、上記と概ね同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0038】
1 パネル部材
2 壁下地(取付下地)
10 パネル体
11 パネル体の背面
11a プレート凹部(凹部)
12 係合突起部
13 抜止部
14 基部
16 突起ガイドプレート(突起ガイド部)
17 ガイド孔部(孔部)
20 取付レール
21 当接片部(取付レールの手前側)
22 係合孔部
23 大径孔部
24 スライド孔部
26 固定片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル体と、このパネル体が取り付けられるとともに、該パネル体の幅方向に沿わせるようにして取付下地に固定される取付レールとを備え、
前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの一方には、スライド孔部とこのスライド孔部よりも大径状とされた大径孔部とを前記パネル体の幅方向に沿わせるようにして一連に有した係合孔部が設けられており、
前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方には、前記係合孔部のスライド孔部にスライド挿入される基部と前記係合孔部の大径孔部に挿通可能でかつ前記スライド孔部よりも大径状の抜止部とを有した係合突起部が前記パネル体の厚さ方向に沿わせるようにして設けられていることを特徴とするパネル部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方には、前記係合突起部の基部を前記パネル体の面方向に沿って少許の移動が可能なようにガイドする突起ガイド部が設けられていることを特徴とするパネル部材。
【請求項3】
請求項2において、
前記突起ガイド部は、前記係合突起部の基部が挿通されるとともに、該基部よりも大径状とされた孔部を有したプレート状とされ、前記パネル体の背面側及び前記取付レールの手前側のうちの他方に設けられた凹部に嵌め込まれる構造とされていることを特徴とするパネル部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記係合孔部のスライド孔部は、前記パネル体の幅方向に沿わせるようにして、前記大径孔部の両側に設けられていることを特徴とするパネル部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記係合孔部は、前記取付下地に固定される固定片部から立ち上がるように形成されて前記パネル体の背面が当接する前記取付レールの手前側となる当接片部に設けられており、
前記係合突起部は、前記パネル体の背面側に設けられていることを特徴とするパネル部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−172296(P2012−172296A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31891(P2011−31891)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)