説明

パラジウム触媒カップリング反応、続く還元的アミノ化によるN−メチルアダマンチル誘導体の製造方法

本発明は、2−クロロ−5−(3−アミノ)−N−(メチルアダマンチル)−ベンズアミド誘導体の製造方法に関する。反応の第一工程は要素含有化合物とアリルアルコールの間の、塩基としての3級アミンとのパラジウム触媒カップリング反応を含む。第二工程は、形成されたアルデヒドの還元的アミノ化、続く形成されたアミノの薬学的に許容される塩への変換を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学的活性化合物および薬理学的活性化合物の製造において使用する中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
P2X受容体のアンタゴニストは、炎症、免疫および心血管疾患の処置における使用において興味深い。国際特許出願WO01/44170は、一連のP2X受容体アンタゴニストおよびその製造方法を記載する。WO01/44170に記載されている方法の一つは、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドを、中間化合物として用い、それ自体、パラジウム触媒ヘック反応において、炭酸水素ナトリウム塩基存在下、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールの反応を介して製造される。
【0003】
ヘック反応は、アリルアルコールのアリールハライドでのパラジウム触媒アリール化である。ヘック反応は、しばしば100℃またはそれ以上の高温を必要とし、それは熱に不安定な基質または生成物の分解を引き起こし得るか、またはアルデヒド生成物の塩基触媒アルドール縮合反応のような副反応を誘発し得る(Heck, J. Org. Chem. p265, Vol.41, No. 2, 1976; Chalk, J. Org. Chem. p273, Vol.41, No. 2, 1976)。この問題を克服するため、炭酸水素ナトリウムのような無機塩基の使用を含む穏やかな反応条件が開発されており、無機塩基の使用は、現在感受性基質とのヘック反応のための一般法である。(Advanced Organic Chemistry, Carey and Sunberg, Third Edition, Part B, p 418-419; and Jeffery, J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1984, p1287)。穏やかな反応条件はまたパラジウム触媒と3級ホスフィン−リガンド、例えばPd[P(t−Bu)]の使用によってもまた達成される。しかしながら、これらの錯体触媒はしばしば高価であり、製造が困難でありおよび/または空気感受性であり、大規模商業的合成における使用を好ましくないものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドを製造するための改善方法およびある種のP2X受容体アンタゴニストの製造方法におけるその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の一局面は、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの製造方法を提供し、その方法は、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールを、パラジウム(II)触媒および塩基存在下で反応させることを含み、その塩基は式NR(式中、R、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である)のものである。
【0006】
さらなる局面において、本発明は、式(I)
【化1】

〔式中、Rは、所望によりヒドロキシルおよびアミノから独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよいC1−6アルキル基である。〕
の化合物、または薬学的に許容されるその塩の製造方法を提供し;該方法は:
(a)2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールを、パラジウム(II)触媒および式NR(式中、R、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である)の塩基の存在下反応させて、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドを形成し;
(b)そのようにして形成した2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドと、式HNRのアミンを反応させ、還元剤を導入して、式(I)の化合物を得て;所望により
(c)式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を形成する
ことを含む。
【0007】
本明細書において、下記の通り、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドは化合物(A)と呼ぶことがあり、一方2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドは、化合物(B)と呼ぶことがある:
【化2】

【0008】
式(I)の化合物において、Rは、所望によりヒドロキシルおよびアミノから独立して選択される少なくとも1個(例えば1個または2個)の置換基で置換されていてよいC1−6アルキル基である。本発明の一態様において、Rは、所望により1個または2個のヒドロキシル基で置換されていてよいC1−4アルキル基である。この態様に従うR基の例は、CHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHCHCHCHOH、CHC(CH)OH、CHCH(OH)CH、CH(CH)CHOH、C(CH)(CHOH)およびC(CH)CHOHを含む。
【0009】
本発明において、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(A)を、式NR(式中、R、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル(alkly)基である)を使用した反応において、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(B)に変換する。
【0010】
、RおよびRに関して、C1−6アルキル基の例は、直鎖状アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)および分枝アルキル基(例えばイソプロピル、tert−ブチル)を含み;C3−6シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0011】
本発明の一態様において、式NRの塩基中、Rは分枝C3−4アルキル基またはC3−6シクロアルキル基であり、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である。この態様において、Rに関して、分枝C3−4アルキル基の例は、イソプロピルおよびtert−ブチルを含み、C3−6シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。RまたはRに関して、C1−6アルキル基の例は、直鎖状アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、分枝アルキル基(例えばイソプロピル、tert−ブチル)およびC3−6シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル)を含む。
【0012】
本発明で使用し得る式NRの塩基の例は、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンおよびN,N−ジエチルシクロヘキシルアミンを含む。本発明の一態様において、式NRの塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0013】
化合物(A)から(B)への変換に使用し得るパラジウム(II)触媒の例は、酢酸パラジウム(II)および塩化パラジウム(II)を含む。本発明の一態様において、パラジウム(II)触媒は酢酸パラジウム(II)である。
【0014】
本発明の一態様において、パラジウム(II)触媒を、直接反応混合物に包含させ、インサイチュで産生したパラジウム(II)触媒ではない。本発明の他の態様において、パラジウム(II)触媒は3級ホスフィン−リガンドを含まない。
【0015】
本発明の有益な局面は、無機塩基を使用した同等な方法よりも、本発明の塩基を使用して実施したとき、反応速度が顕著に速いことである。その結果、本発明の方法の使用により、反応を無機塩基で行ったときに必要であるよりも、少ない量のパラジウム(II)触媒しか一定の反応速度を達成するために必要としない。従って、本発明の一態様において、存在するパラジウム(II)触媒の量は、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(A)の量に対して1mol%未満である。パラジウム触媒が酢酸パラジウム(II)であるとき、パラジウム触媒の量は、Aに対して0.5mol%未満であり得る。
【0016】
本発明に従う化合物(A)から化合物(B)への変換は、任意の適当な溶媒中で行い得る。適当な溶媒の例は、トルエン、およびテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルのようなエーテルおよびこれらの混合物のような炭化水素溶媒を含む。使用し得る他の溶媒は、酢酸イソプロピル、4−メチル−2−ペンタノン、tert−ブチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、ジエトキシメタン、アセトニトリルおよびそれらの混合物を含む。本発明の一態様において、溶媒はトルエン、テトラヒドロフランまたは2−メチルテトラヒドロフランである。他の態様において、溶媒はトルエンである。
【0017】
本発明において、化合物(A)から化合物(B)への変換は、任意の適当な温度で行ってよいが、簡便には100℃より低い温度で行う。例えば、本発明の一態様において、本反応を20〜95℃の温度で行う。本発明の他の態様において、本反応を50〜90℃の温度で行う。さらに別の態様において、本反応を70〜85℃の温度で行う。
【0018】
本発明の一態様において、化合物(A)から(B)への変換は、相間移動触媒の使用により促進し得る。使用し得る相間移動触媒の例は、テトラブチルアンモニウムクロライド(BuNCl)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(BuNBr)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(BuNI)、テトラブチルアンモニウムスルフェート[(BuN)SO]およびテトラブチルアンモニウム水素スルフェート(BuNHSO)を含む。本発明の一態様において、(A)から(B)への変換は、テトラブチルアンモニウムクロライド(BuNCl)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(BuNBr)またはテトラブチルアンモニウムアイオダイド(BuNI)から選択される相間移動触媒の使用により促進される。本発明の他の態様において、相間移動触媒はテトラブチルアンモニウムクロライド(BuNCl)である。存在するとき、相間移動触媒対化合物(A)のモル比は、簡便には5:1〜1:5の範囲であり得る。おおよそ化学量論量の相間移動触媒および化合物(A)を使用して、よい結果が達成され得る。
【0019】
化合物(B)当分野で既知の標準技術を使用して単離してよく、続いて式(I)の化合物に変換するか、またはインサイチュで使用して式(I)の化合物を製造する。
【0020】
化合物(B)は、アルドール型反応においてそれ自体とおよび反応混合物中の他のアルデヒド副生成物と反応し得る。これらのアルドール反応の生成物は、(B)の製造における不純物の一般的源である。アルドール不純物の最も一般的なものは、N−(1−アダマンチルメチル)−5−[4−(3−{[(1−アダマンチルメチル)アミノ]カルボニル}−4−クロロベンジル)−3−ヒドロキシ−5−オキソペンチル]−2−クロロベンズアミド[生成物(B)の塩基触媒アルドール反応により形成]、および3,3'−[(2Z)−2−ホルミルペント−2−エン−1,5−ジイル]ビス[N−(1−アダマンチルメチル)−6−クロロベンズアミド][前記アルドール生成物の脱水により形成]である。他の微量なアルドール不純物は、分枝アルデヒドN−(1−アダマンチルメチル)−2−クロロ−5−(1−メチル−2−オキソエチル)ベンズアミドの形成および反応混合物中の他のアルデヒドとの続く反応に由来する。本発明の方法を用いることにより、他の方法に比較してアルドール不純物の量を減らすことができる。
【0021】
式(I)の化合物は、本発明に従い形成した化合物(B)と式HNRのアミンを反応させ、そして還元剤を導入することにより製造し得る。本発明のこの局面において、還元剤を、簡便には式HNRのアミンが化合物(B)と反応した後に導入するが、しかしながら、ある態様において、それを式HNRのアミンの添加前に、連続的にまたは直後に導入してもよい。
【0022】
本発明において、化合物(B)と式HNRのアミンは、任意の適当な溶媒中で行い得る。適当な溶媒の例は、トルエン、およびイソプロパノールまたはそれらの混合物を含む。
【0023】
化合物(B)と式HNRのアミンの反応は、任意の適当な温度で行い得る。例えば、本発明の一態様において、本反応を0〜100℃の温度で行う。本発明の他の態様において、本反応を20〜70℃の温度で行う。
【0024】
本発明に従い使用し得る還元剤の例は、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド[NaBH(OAc)]、水素化ホウ素ナトリウム/酢酸[NaBH/AcOH]、および水素である。水素が還元剤であるとき、それは通常適当な触媒(例えばパラジウム、白金、イリジウムまたはニッケル触媒)存在下で使用する。本発明の一態様において、還元剤は、炭素支持体上の白金[Pt/C]存在下の水素である。水素およびPt/Cは、簡便には化合物(B)が式(I)のアミンと反応した後に導入してよく、本還元を、20〜80℃の範囲の温度で、および1〜5BarG(200〜500kPaG)の水素圧で行い得る。
【0025】
式(I)の化合物を単離してよく、または当分野で既知の標準的技術を使用して所望により薬学的に許容されるその塩に変換してよい。薬学的に許容される塩の例は、塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、4−メトキシ安息香酸塩、2−または4−ヒドロキシ安息香酸塩、4−クロロ安息香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩、グルコン酸塩、トリカルバリル酸塩、ヒドロキシナフタレン−カルボン酸塩またはオレイン酸塩のような薬学的に許容される無機および有機酸に由来する酸付加塩を含む。
【0026】
本発明の方法において、出発物質または中間化合物におけるヒドロキシル、またはアミノ基のようなある種の官能基を保護基により保護する必要があるかもしれないことは当業者により認識されよう。それ故、本方法は、任意の段階での、1種以上の保護基の導入および/または除去を含み得る。官能基の保護および脱保護は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’, 2nd edition, T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience (1991) and ‘Protecting Groups’, P.J. Kocienski, Georg Thieme Verlag (1994)に記載されている。本発明のある態様において、方法を最適化するために、さらなる精製工程および/またはさらなる反応要素を用い得ることも当業者にはさらに認識されよう。
【0027】
2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(A)は、既知の化学により、例えば2−クロロ−5−ヨード安息香酸および1−アダマンタンメチルアミンから、WO01/44170に記載のものに従うまたは準じた化学により製造し得る。
【0028】
本発明において、特に良好な結果は、化合物(A)に存在する残存1−アダマンタンメチルアミンの量が最小に維持されているときに達成し得る。それ故、本発明の一態様において、化合物(A)に存在する1−アダマンタンメチルアミンの量は、1%wt未満である。他の態様において、化合物(A)に存在する1−アダマンタンメチルアミンの量は0.1%wt未満である。
【0029】
本発明を、ここで、以下の説明的実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0030】
2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(化合物A)の製造
5−ヨード−2−クロロ安息香酸(40.00g、141.6mmol)、続いてBuNCl(0.40g、0.01当量、1.42mmol)およびトルエン(80ml、2vol)を不活性雰囲気(N)下に500ml反応容器に入れた。懸濁液を70−75℃に温め、次いで塩化チオニル(12.40ml、1.2当量、169.94mmol)を30−60分間にわたり滴下した。得られた懸濁液を70−75℃で約3時間加熱する。反応をHPLC(サンプルのMeOHクエンチ)でモニターし、完了すると、現在5−ヨード−2−クロロベンゾイルクロライドの透明溶液である反応混合物を20−25℃に冷却した。
【0031】
1−アダマンタンメチルアミン.HCl(28.56g、1.0当量、141.62mmol)、トルエン(40ml、1.0vol)および5M 水性NaOH(84.96ml、3.0当量、424.82mmol)を第二の容器(1000ml)に入れ、不活性雰囲気(N)下75−80℃に加熱した。5−ヨード−2−クロロベンゾイルクロライドの溶液を温度を75−80℃に維持しながら滴下した。残渣をトルエン(10ml、0.25vol)で洗浄した。反応をHPLCでモニターし、完了したら水(40ml、1vol)を添加し、水性相を分離した。2回目の水(40ml、1vol)を添加し、混合物を60−65℃に冷却し、次いでn−ヘプタン(240ml、6vol)を添加した。得られた懸濁液を60−65℃で撹拌し、次いで20−25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、ケーキを水(80ml×2、2vol×2)、続いてn−ヘプタン(80ml、2vol)で洗浄した。得られた白色ないし灰白色固体を、オーブンで、40−45℃で真空下乾燥させた。2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(化合物A)の収量は58.42gであった。残った残留アミン出発物質の量は0.026%w/wであった(ガスクロマトグラフィーで測定)。
【0032】
2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(化合物B)の製造
2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド(化合物A)とアリルアルコールのパラジウム(II)触媒存在下の反応を、表1に記載の種々の塩基を使用して行った。一般的反応条件は以下の通りであった:2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド、BuNCl(1.05当量)、Pd(OAc)、トルエンおよび塩基、続いてアリルアルコール(1.25当量)を不活性雰囲気(NまたはAr)下フラスコに入れた。反応を80−85℃に加熱した。反応を、1時間後および一晩反応後サンプリングし、HPLCを使用して2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの消費、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの形成および不純物の形成をモニタリングした。当量で記載している試薬の量は、化合物(A)に対するmol当量である。
【0033】
HPLC条件は以下の通りであった:カラム:Genesis C18、10cm×3mm、3μm。移動相A:0.1%TFA水溶液。移動相B:90%MeCN中0.1%TFA水溶液。流速:0.6ml/分。オーブン温度:45℃。波長:225nm、4nmバンド幅;参照波長 380nm、100nmバンド幅。注入量:2.5μl。ラン時間:21分。平衡化時間:5分 勾配:時間(分)/%B;0分/10.0;1分/10.0;11分/90.0;21分/90.0。移動相A:0.1%TFA水溶液(1リットル中に希釈された1mlのTFA);必要により脱気。移動相B:1mlのTFA、100mlの精製水および900mlのHPLCグレードアセトニトリルの混合物;必要により脱気。サンプル調製:各サンプルは、1mlのメタノールで希釈した数滴の反応混合物から成る。結果を表1に示す。
【0034】
表1から、反応を3級アミン塩基で行ったとき(本発明に従う)、生成物(B)への高い変換が、NaHCO(0.2mol%から2mol%)での反応に必要であるより10倍低い量のパラジウム触媒を使用して得られたことを見ることができる。さらに、本発明に従い行ったとき、反応混合物は、反応を2級アミン塩基CyNH(その使用は大量のアルドール不純物形成をもたらした)で行ったときよりも、一晩反応後に安定であった。
【0035】
【表1】

*: 完全な反応:HPLCで出発物質検出されず
Cy: Cyはシクロヘキシル
【0036】
表1において‘%B’は、HPLCで測定した全生成物および全反応不純物のパーセンテージとしての2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミド生成物の量を示す。‘%Imp’は、全生成物および全反応不純物のパーセンテージとしてのアルドール不純物を意味し、主アルドール不純物はN−(1−アダマンチルメチル)−5−[4−(3−{[(1−アダマンチルメチル)アミノ]カルボニル}−4−クロロベンジル)−3−ヒドロキシ−5−オキソペンチル]−2−クロロベンズアミドおよび3,3'−[(2Z)−2−ホルミルペント−2−エン−1,5−ジイル]ビス[N−(1−アダマンチルメチル)−6−クロロベンズアミド]である。他の(非アルドール)不純物の検出された量は、主に分枝アルデヒドN−(1−アダマンチルメチル)−2−クロロ−5−(1−メチル−2−オキソエチル)ベンズアミドであるが、種々の反応条件下で顕著に変わらなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの製造方法であって、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールを、パラジウム(II)触媒および塩基で反応させることを含み、その塩基が式NR(式中、R、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である)のものである、方法。
【請求項2】
塩基が、Rが分枝C3−4アルキル基またはC3−6シクロアルキル基であり、そしてRおよびRが各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である、式NRのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式NRの塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンまたはN,N−ジエチルシクロヘキシルアミンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パラジウム(II)触媒が酢酸パラジウム(II)である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
存在するパラジウム(II)触媒の量が、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの量に対して1mol%未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールの反応を100℃より低い温度で行う、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
式(I)
【化1】

〔式中、Rは、所望によりヒドロキシルおよびアミノから独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよいC1−6アルキル基である。〕
の化合物、または薬学的に許容されるその塩の製造方法であって:
(a)2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールを、パラジウム(II)触媒および式NR(式中、R、RおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である)の塩基の存在下反応させて、2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドを形成し;
(b)そのようにして形成した2−クロロ−5−(3−オキソプロピル)−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドと、式HNRのアミンを反応させ、還元剤を導入して、式(I)の化合物を得て;所望により
(c)式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を形成する
ことを含む、方法。
【請求項8】
が、所望により1個または2個のヒドロキシル基で置換されていてよいC1−4アルキル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHCHCHCHOH、CHC(CH)OH、CHCH(OH)CH、CH(CH)CHOH、C(CH)(CHOH)またはC(CH)CHOHである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塩基が式NR(式中、Rは分枝C3−4アルキル基またはC3−6シクロアルキル基であり、そしてRおよびRは、各々独立してC1−6アルキル基またはC3−6シクロアルキル基である)のものである、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
式NRの塩基がN,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンまたはN,N−ジエチルシクロヘキシルアミンから選択される、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
パラジウム(II)触媒が酢酸パラジウム(II)である、請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
存在するパラジウム(II)触媒の量が、2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドの量に対して1mol%未満である、請求項7〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
2−クロロ−5−ヨード−N−(トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イルメチル)−ベンズアミドとアリルアルコールを100℃より低い温度で行う、請求項7〜13のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−502697(P2010−502697A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527319(P2009−527319)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000770
【国際公開番号】WO2008/030160
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】