説明

パラタングステン酸アンモニウム水和物を製造する方法及びパラタングステン酸アンモニウム十水和物

タングステン装入有機相を水性アンモニア溶液で再抽出することにより、パラタングステン酸アンモニウム水和物を連続的に製造するための方法。該方法は、適した工程パラメータを選択することにより、再抽出により粗結晶パラタングステン酸アンモニウム水和物を直接製造することが可能である。該方法は、高い純度及び高い収率で結晶化させる。さらに該製造方法は、簡単かつエネルギー効率のよい方法で実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のパラタングステン酸アンモニウム水和物を製造する新規方法及び選択された結晶構造を有するパラタングステン酸アンモニウム十水和物に関する。
【0002】
パラタングステン酸アンモニウム水和物(以下、APWと呼称する)は、タングステン金属、タングステン含有触媒又はタングステンベース硬質材料、たとえば炭化タングステンを製造するための公知の中間生成物である。
【0003】
高純度APWの製造は、原則として、沈降工程及び液−液抽出による後続の精製工程を含むタングステン含有濃縮物又はタングステン金属屑の酸−又はアルカリ消化又は溶融を介して実施する。精製された溶液は、一般には蒸発によって濃縮され、その際、最終的にはARWを結晶化する。
【0004】
M. Haehnertによる"Kristailographische Untersuchung der Ammoniumparawolframate (Zeitschrift fuer Kristallographie,第120巻、第216-228頁(1964))"の開示において、APW×10HOは、WO及びNH溶液から製造されたタングステン酸アンモニウム溶液のゆっくりとした蒸発の際に生じることが記載されている。該結晶は、針状形態を示す。生成物のかさ密度は0.7g/cmである。これは、工業的方法ではなく、予備的な実験室の方法である。
【0005】
APW×10HOを製造するための他の方法は、文献"Characterisation of various commercial forms of ammonium paratungstate powder, Journal of Material Science Nr. 10 (1975)、第571〜577頁"に記載されている。
【0006】
変法において、タングステン酸及び過剰量のNH溶液から製造されたタングステン酸アンモニウム溶液を凍結乾燥させる。生じる生成物は、脆く劣悪に作製される結晶形態を示し、かつ、かさ密度は1.03g/cmである。第2の変法では、前記のように製造されたタングステン酸アンモニウム溶液は、室温でHCl溶液を用いてゆっくりと中和される。生じた針状結晶は16〜70μmの長さ及び2〜14μmの幅を有し、かつ、1.46g/cmのかさ密度を有する。双方の方法において、少ないかさ密度及び必要な生成物純度を有するAPW×10HOは、精製したタングステン酸の使用下でのみ達成することができる。さらに凍結乾燥を実施する場合あるいは他方で精製したHCl溶液を使用する場合には、極めて高いプロセスコストが生じる。HClを使用する場合には、該生成物は、この方法の結果として塩化物不純物を有する。
【0007】
専門書"Metallurgie der seltenen Metalle, Seligman, Krejn und Samsonov (1978)、Verlag Metallurgia (UDSSR)、第62-63頁"には、以下のようなAPW×10HOを製造するための工業的方法が記載されている。灰重石濃縮物を、HCl溶液を用いて90〜100℃の温度で消化し、その結果、タングステン酸を生じる。引き続いて該タングステン酸をNH溶液で溶解し、かつ該溶液を冷却する。生じるタングステン酸アンモニウム溶液は攪拌下で、HCl溶液を用いてゆっくりとpH7.3〜7.4に中和する。24時間に亘る静置時間の後にAPW×10 HO−生成物を分離する。針状結晶は15〜25μmの長さ及び1〜3μmの幅を有し、かつ、0.98g/cmのかさ密度を有する。これに関して結晶化収率は85〜90%である。この生成物は、なおも著量の不純物を含有している。この方法の他の欠点は、精製HCl溶液の高い使用量及び後処理されるべき多量のW含有NHCl溶液(母液)である。
【0008】
図1では、この方法により製造された生成物の走査電子顕微鏡写真(REM)を表す。
【0009】
高純度のタングステン酸を製造するために、精製タングステン酸アンモニウム溶液を使用することが公知である。この溶液は、通常は工業的に、W濃縮物の苛性ソーダ又は炭酸ナトリウム消化及び引き続いてのMg−、Al−塩及び硫化水素ナトリウムの添加下でのP−、As−、Si及びMo−不純物の沈澱後に、アミン含有有機相の使用下での液−液抽出を実施することによって製造される。NH溶液を用いての液−液再抽出を実施する際のAPW×10HOのパラサイト(Parasitaere)発生は、US-A-4,450,144及びUS-A-4,092,400に挙げられている。
【0010】
しかしながらこの方法の目的は、蒸発晶析によりAPW×4HOに変換される精製タングステン酸アンモニウム溶液を製造することである。再抽出の際のAPW×10HOの形成は、前記方法の際に、相分離、APW×4HO生成物の純度及び結晶化収率の劣化を招く。したがって前記特許文献では、再抽出の際のAPW×10HO結晶の形成を減少又は回避できる可能性を記載している。
【0011】
タングステン化合物の後続の液−液抽出及び引き続いてのNH溶液での再抽出を含むW−含有濃縮物の消化を介してのAPWの製造方法は、DEAS-1,150,962に記載されている。さらにここでは、タングステンを、タングステン含有消化溶液から分離するために、有機性アミン相(第3級アルキルアミン)を使用する。この方法によれば、付属の例からもわかるように、23〜27g/lのタングステン装入有機アミン相を用いて、沈降装置中で長い塔状の形で装入し、かつ5〜29%濃度のNH溶液を滴加することによって再抽出する。再抽出は、実施態様に依存して出発溶液のNH:W−モル比が3.6:1〜50.1:1であり、かつ、有機相(OP)と水性NH溶液との比が2.1:1〜5.5:1で実施する。引き続いて生じるAPW生成物を濾過し、かつ乾燥させる。この方法による再抽出の実施は、微結晶の針状APW×10HO生成物を導き、この場合、この生成物は、表面に付着しているOP及び1.0g/cmを下回る狭いかさ密度を有する。図2では、この方法により製造された生成物の走査電子顕微鏡写真(REM)を表す。生成物の化学分析は、5000〜10000ppmの炭素不純物の高い割合を示す。この理由から、この材料はさらなる加工工程のために適切ではない。さらに、再抽出の際の相分離は、前記文献(Auslegeschrift)で記載したように、長時間に亘る放置後にのみ生じる。これは生成物の微結晶の特徴に起因する。再晶出の際に使用されたNH:Wモル比により生じた母液の高いW含量に基づいて、この方法における結晶化収率はせいぜい65%(前記刊行物、試験4)である。そのため劣悪な生成物の質、劣悪な相分離並びに低い結晶化収率が導かれ、この方法は今日まで使用されなかった。
【0012】
この理由から、すでに挙げられたUS-A-4,450,144及びUS-A-4,092,400に記載されたように、アミン含有有機相からのタングステン抽出のさらなる開発は、APW沈澱の回避を含む液−液再抽出及び引き続いての精製タングステン酸アンモニウム抽出溶液の蒸発を介してのAPW−製造の方向ですすめられた。
【0013】
技術水準に基づいて本発明の課題は、より高い結晶化収率で高純度の粗粒パラタングステン酸アンモニウム水和物を連続的方法で製造することを可能にする、比較的廉価かつ簡単な方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の課題は、再抽出により生成物を直接結晶化することにより、粗粒パラタングステン酸アンモニウム水和物を製造するための方法を提供することから成る。
【0015】
さらに本発明の他の課題は、選択された結晶構造及びより高いかさ密度を有する高純度のパラタングステン酸アンモニウム十水和物を提供することから成る。
【0016】
本明細書中の意味においてパラタングステン酸アンモニウム水和物とは、四水和物、すなわち(NH)10[H1242]×4(HO)及び十水和物、すなわち(NH)10[H1242]×10(HO)であると理解される。この水和物の形成は、再抽出温度に依存して生じる。
【0017】
技術水準において、従来、粗結晶APWを直接再抽出により結晶化できる方法は記載されていなかった。前記公知方法では、高いNH:W比を有する再抽出溶液が生じ、この場合、この溶液はエネルギー消費的方法で濃縮され、かつ過剰量のアンモニア溢流から放出しなければならないか、あるいは、必要なpH値を調節するための他の手段、たとえば無機酸を用いての酸性化によるもの、が要求される。他の方法において、さらにAPWは直接再抽出により結晶化するが、しかしながら該生成物は極めて微細な結晶であり、かつ有機不純物を取り除くのは困難であるか、あるいは、低い純度のみを示す。さらに、この方法の際に生じる結晶化収率は極めて低い。
【0018】
驚くべきことに、粗結晶の高純度のAPWが、直接再抽出により、極めて高い結晶化収率で得ることが可能であると見出した。
【0019】
本発明による方法は、中間工程の省略及びこれに関連するエネルギー及び装置の省略に加えてさらなる利点を示す。これは簡単に実施され、かつ使用されたアンモニア量が、公知方法よりも顕著に少ないことである。
【0020】
本発明は、ミキサーセトラー装置中で、タングステン装入有機相(OP)をアンモニア含有水性溶液(AP)で直接再抽出することにより、APWを連続的に製造する方法に関し、この場合、この方法は、NH:Wモル比を0.83〜1.30、好ましくは0.85〜0.95、出発材料の再抽出をOP:AP供給体積比5〜25、好ましくは10〜15で実施することを特徴とする。
【0021】
好ましい実施態様において、ミキサー中での再抽出は、APW固体濃度が、ミキサー中の水性相に対して100〜1200g/l、好ましくは500〜800g/lに調整されるように実施する。
【0022】
ミキサー中での攪拌速度は、有機相とアンモニア含有水性相との分散が均一でない程度に調整する。
【0023】
OP及びAP供給は、一般にはミキサーの下半分、好ましくは攪拌領域中で実施され、かつ生じた3相混合物は、上部領域から、好ましくは自由な溢流を介して及び下部領域から、好ましくは攪拌領域から取り出されて、ミキサー中の定常状態の(stationaeeres)OP:AP相比を1:5〜1:70に調整する。
【0024】
相分離は、好ましくは、攪拌装置を備えた後続の沈降タンク装置中で、ゆっくりとした攪拌下で実施し、その際、攪拌装置の回転数は、沈降の際にAPWと一緒に連行されたOPをAPW相から分離する程度に調整する。ミキサーからの相混合物は、好ましくは沈降タンクのOP:AP相境界領域中に導入する。
【0025】
相分離後に生じた水性相(母液)の量は、好ましくはミキサー中に返送することで、ミキサー中のAPW固体濃度を100〜1200g/l、好ましくは500〜800g/lに調整する。
【0026】
再抽出のための出発材料溶液の供給速度は、好ましくは、ミキサー中のOPの滞留時間が少なくとも1分であり、かつAP−滞留時間が3時間を上回って設定されるように選択され、その際、OP滞留時間とは、ミキサー中のOP相の体積(l)とOPの供給速度(l/時間)との比の60倍であると理解され、かつ、AP滞留時間とは、ミキサー中のAP相の体積(l)とAPの供給速度(l/時間)との比であると理解される。
【0027】
本発明による方法の好ましい実施態様の着想は、タングステン装入有機相を用いての再抽出の際に、ミキサーの高さの上方に有機相と水性相との間の不均一な分散を設定し、出発材料の選択された供給比並びに抽出装置中に装入された材料流中のアンモニアとタングステンとの選択されたモル比を調整し、かつ抽出装置中で水性相及び有機相の選択された滞留時間を確立することから成る。
【0028】
驚くべきことに、低いNH:W−モル比での再抽出の実施、不均一な相分散の際のミキサー中の定常状態の相混合物中の水性相の高い割合並びに高いAPW固体量が、高純度の粗粒APW−生成物を導くことが明らかになった。
【0029】
さらに驚くべきことに、相混合物の組み合わされた取り出しを、ミキサーの上部3分の1及び攪拌領域から双方の排出流の適切な選択された質量比でおこない、かつ攪拌回転数との組合せによって、ミキサー中で必要とされる定常状態の相比は、OP/AP出発溶液の供給比とは無関係に調整することができる。
【0030】
本発明による方法の実施は、好ましくはミキサー装置中、該装置は調整可能な攪拌装置及び組み合わされた生成物取り出しを備えており、その際、生成物取り出しは上部領域、好ましくは自由な溢流を介して及び下部領域、好ましくは攪拌領域からのものである、並びに沈降タンク装置中、該装置は、ゆっくり動く低速攪拌装置(Kraelwerk)を備えている、で実施する。
【0031】
本発明による方法を実施するための好ましい変法は、図3中に表す。
【0032】
請求項1中に記載された本発明による方法の手段はすべて、意図する目的達成のために本質的であり、かつ、従属請求項中に記載された本発明による方法の手段は、意図する目的を達成するために特に有益であることが明らかになった。
【0033】
したがって、0.83を下回るNH:W−モル比は、さらに再抽出収率および相分離を劣悪にするばかりでなく、OPと接触する装置部分での堆積物形成を招く。1.30を上回るNH:Wモル比は、結晶化収率の減少及び生成物純度の劣化を招く。
【0034】
ミキサー中の1:5を上回るOP:APの定常状態の比は、極めて高い炭素不純物量を含む微結晶の針状生成物の形成及び相分離の劣悪を招く。これに反して、ミキサー中の1:70を下回るOP:APの定常状態の比は、再抽出収率の減少及びOPと接触した装置部分における堆積物形成を招く。
【0035】
出発材料のOP/AP−相供給比<5:1の調整は、準安定性の水性相の形成を招き、この場合、これは、装置−/管の壁でのAPWの結晶化を招く。これに対して25:1を上回る相比は、生成物中の不純物含量の顕著な増加を招く。
【0036】
ミキサー中の均一な相分離の場合には、出発材料の相供給比とは無関係のミキサー中の定常状態の相比調整は不可能である。
【0037】
生じるAPWの種類は、再抽出温度に依存する。60℃までの温度の場合には十水和物を生じ、他方、60℃を上回る温度の場合には四水和物を生じる。十水和物を製造するための好ましい温度は45〜55℃であり、かつ、四水和物を製造するための好ましい温度は80〜98℃である。
【0038】
本発明による方法の好ましい変法において、相分離後に沈降タンク中で生じる水性相(母液)の量をミキサー中に返送することで、ミキサー中のAPW−固体濃度を100〜1200g/l、好ましくは500〜800g/lに調整する。
【0039】
100g/lを下回る容器中の定常状態の固体含量は、装置−/管壁での堆積物形成を招く。これに対して1200g/lを上回る容器中の定常状態の固体含量は、生成物中の炭素不純物の増加、相分離の劣悪を招き、かつ、微結晶の最終生成物を生じる。
【0040】
本発明による方法の同様に好ましい変法において、ミキサーの攪拌領域中へ出発溶液及びアンモニア含有水性溶液を供給する。攪拌領域中への出発溶液及びアンモニア含有水性溶液の供給は、再抽出収率の改善及び装置−/管壁における堆積物の減少を導く。
【0041】
本発明による方法の他の好ましい変法において、出発溶液の再抽出への供給速度を、ミキサー中のOP滞留時間を少なくとも1分及びAP滞留時間を3時間を上回って設定される程度に選択し、その際、OP滞留時間は、ミキサー中のOP相の体積(l)とOPの供給速度(1/時間)との比の60倍であり、かつ、AP滞留時間は、ミキサー中のAP相の体積(l)とAPの供給速度(l/時間)との比であると理解される。
【0042】
1分を下回るミキサー中のOP滞留時間は、再抽出収率の減少及びOPと接触する装置部分における堆積物形成を招く。10分を上回る容器中のOP滞留時間は、空時収量の劣悪により有利ではない。
【0043】
3時間を下回るミキサー中のAP滞留時間は、微結晶生成物、結晶化収率の減少及び装置−/管壁における堆積物形成を招く。これに対して、10時間を上回るミキサー中のAP滞留時間は、比較可能な生成物の性質および結晶化収率で空時収量を減少させる。
【0044】
ミキサーから沈殿タンク中への相混合物の導入は、好ましくは、OP/AP相領域付近で実施されることで、APW−沈降の際のOPの連行を顕著に減少させる。さらに相分離をゆっくりとした攪拌下で実施することで、生成物により連行されたOP量を分離する。
【0045】
さらに、ゆっくりとした攪拌下での相混合物の分離は、分離時間の顕著な減少及びこれに伴う沈降タンク中での空時収量の増大を招く。
【0046】
有機相は、たとえば7質量%のジイソトリデシルアミン、10〜15質量%のイソデカノール及び78〜83質量%の脂肪族炭化水素混合物(たとえば、ソルベントナフサK60)から成り、かつ、当業者に公知の方法で、40〜80g/lのタングステン、好ましくは60〜70g/lのタングステンを装入する。第2級アミンに加えて、さらに第3級アミンまたは四級化アンモニウム塩及びイソデカノールの代わりに他の改質化剤並びに他の炭化水素混合物をさらに他の組成物比で使用することもできる。
【0047】
さらに本発明は、新規のパラタングステン酸アンモニウム十水和物に関し、この場合、この水和物は少なくとも75%が、少なくとも200μmの長さを有する結晶から構成され、該結晶は4.5:1を下回る長さと幅との比を有する。このような生成物は、前記方法によって製造することができる。公知生成物とは対照的に、この生成物は極めて粗粒で、より少ない不純物量を有し、かつより簡単に加工することができる。
【0048】
本発明によるパラタングステン酸アンモニウム十水和物は、好ましくは少なくとも1.7g/cm、好ましくは1.8〜2.2g/cmのかさ密度を示す。このようなかさ密度は、これらの生成物では従来獲得することができなかった。
【0049】
このかさ密度は、ASTM B329にしたがって測定される。
【0050】
好ましくは、200〜1000μm、特に好ましくは300〜400μmの長さのパラタングステン酸アンモニウム十水和物を有する。
【0051】
同様に好ましくは、300〜400μmの長さ及び3.0:1〜3.5:1の長さと幅との比を有する。
【0052】
このパラタングステン酸アンモニウム十水和物は、特に高純度の生成物として好ましく、たとえば、該生成物は、生成物の全量に対して少なくとも99.99%の純度によって特徴付けられる。
【0053】
本発明を、図4および以下の実施例中で記載する。これら実施例および図面における限定は、これを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】"Metallurgie der seltenen Metaile, Seligman, Krejn und Samsonov (1978), Verlag Metallurgie (UDSSR)、第62-63頁"にしたがって製造された微結晶パラタングステン酸アンモニウム十水和物を示す図
【図2】DE-AS1 ,150, 962にしたがって製造された微結晶のパラタングステン酸アンモニウム十水和物を示す図
【図3】APWを製造するための本発明による方法の実施形態を示す図
【図4】本発明による方法にしたがって製造されたAPW十水和物を示す走査電子顕微鏡写真(REM)
【図5a】本発明による方法にしたがって製造されたAPW十水和物を示すX線回折図(RBA)
【図5b】本発明による方法にしたがって製造されたAPW十水和物を示すX線回折図(RBA)
【図5c】本発明による方法にしたがって製造されたAPW十水和物を示すX線回折図(RBA)
【0055】
実施例:
W−濃縮物は苛性ソーダで消化し、かつ生じた溶液を、Mg、Al塩及び硫化水素ナトリウムの添加により、不純物、たとえばP、As、Si、V及びMoについて予備精製した。なおも含まれるアニオン及びカチオン不純物のさらなる精製工程として、有機相(7〜10%のジイソトリデシルアミン、10%のイソデカノール、残りソルベントナフサ)の使用下で、液−液抽出をおこなった。タングステンが装入されたOPは、NH−溶液を用いて再抽出した。これに関して使用された装置は、図3に表す。
【0056】
攪拌装置(2)、じゃま板(3)を備えた攪拌容器(1)(さらにミキサーともいう)(容量:250l、直径:600mm、傾斜翼攪拌装置:6翼、直径:300mm、4個のじゃま板)の攪拌領域に、導管A、B及びCを介して連続的に400l/hのW装入OP及び調整された量のNH−溶液を計量供給した。導管Bを介して水を導入した。OPのW−濃度及びNH溶液のNH濃度を、インラインで自動的に測定した。NH−溶液の計量供給は、0.90に設定されたNH:W−モル比により自動的に調整した。OP/(NH溶液+水)−供給比は15:1に調整し、かつNH−供給導管(A)中への水流(B)により同様に自動的に調整した。
【0057】
OPの体積流(平均W装入量:62.0g/l)を一定に調整した。NH−溶液の体積流は、OPの体積流に依存して、瞬時に測定されたW−及びNH−濃度及び設定されたNH:W−モル比に調整した。HO−体積流は、NH−溶液の体積流及び出発材料の計量供給比に依存して調整した。ミキサー(1)中の温度は50℃に調整し、かつ出発材料溶液の温度により調整した。
【0058】
ミキサー(1)中で生じた3相混合物の沈降タンク(6)への移送は、容器の攪拌領域から、排出(5)及び導管Dを介して、並びに、容器の自由な溢流(4)及び導管Eを介して実施した。
【0059】
ミキサー(1)中の定常状態のOP/AP比 1/8及び水性相(NH−溶液+母液+水)に対する定常状態の固体濃度 750g/lを、攪拌回転数(210upm)、下部ミキサー領域からの相混合物排出(50l/h)及びミキサー(1)への沈降タンク(6)からの水性相(母液)の返送(20l/h)により調整した。ミキサー(1)中のAPの滞留時間は、ミキサー中の定常状態のAP量に対して4.8時間であり、かつミキサー中の定常状態のOP量に対するOPの滞留時間は4.2分であった。相混合物は低速攪拌装置(7)を備えた沈降タンク(6)(容量:600l、直径:750mm(形状:半分から先が円錐状の形をしたもの;壁周囲を走行するアンカーを備えた低速攪拌装置(傾斜した形をしたもの)中で分離した。低速攪拌装置の回転数は15upmに調整した。取り除かれたOPは、沈降タンクの溢流により導管Fを介して分離され、水で洗浄し、かつ液−液抽出の装入工程に返送した。1314g/lのAPW−固体含量を有する生成物懸濁液を、沈降タンク(6)の下部範囲から導管Gを介して、濾過前の緩衝容器としての、攪拌装置(9)及びじゃま板(10)を備えた中間容器(8)中に移送し、さらに水性APW−懸濁液を導管Hを介してフィルター(11)中に移送し、かつAPW×10HOを少量の水で洗浄し、これによって母液を排除した。この生成物をヌッチェから取り出し、引き続いて50℃で乾燥させ、かつ特性決定をおこなった。
【0060】
35g/lのW及び7.0g/lのNHを含有する母液は、フィルター(11)から導管Jを介して導出し、かつNHの分離後に、W−濃縮物の消化溶液に供給した。結晶化収率はOPのW含量に対して96.2%であった。
【0061】
この実施例にしたがって得られたAPW×10HOは、99.99%を上回る極めて高い純度を示す。この生成物の異なる日別のバッチの分析は、以下の表に示す。図4では、実施例中で製造された生成物のREM−写真を表す。
【0062】
【表1】

【符号の説明】
【0063】
1 容器、 2 攪拌装置、 3 じゃま板、 4 溢流、 5 排出、 6 沈降タンク、 7 低速攪拌装置、 8 中間容器、 9 攪拌装置、 10 じゃま板、 11 フィルター、 A 導管、 B 導管、 C 導管、 D 導管、 E 導管、 F 導管、 G 導管、 H 導管、 I 導管、 J 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサーセトラー装置中で、直接、タングステン装入有機相をアンモニア含有水性溶液で再抽出することによりパラタングステン酸アンモニウム水和物を連続的に製造する方法において、該再抽出を、NH:W−モル比 0.83〜1.30及びタングステン装入有機相とアンモニア含有水性溶液との供給体積比 5〜25で実施することを特徴とする、ミキサーセトラー装置中で、直接タングステン装入有機相をアンモニア含有水性溶液で再抽出することによりパラタングステン酸アンモニウム水和物を連続的に製造する方法。
【請求項2】
再抽出を、NH:W−モル比 0.85〜0.95及びタングステン装入有機相とアンモニア含有水性溶液との供給体積比 10〜15で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ミキサー中での再抽出を、パラタングステン酸アンモニウム水和物の固体濃度が、ミキサー中のアンモニア含有水性相に対して100〜1200g/l、好ましくは500〜800g/lに設定されるように実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ミキサー中での攪拌速度を、ミキサー中で有機相とアンモニア含有水性相との不均一な分散が達成されるように調整する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
タングステン装入有機相及びアンモニア含有水性溶液をミキサーの下半分に、好ましくは攪拌領域に計量供給し、かつ、生じた3相混合物をミキサーの上部領域、好ましくは自由な溢流により及び下部領域、好ましくは攪拌領域から組み合わせて取り出すことで、ミキサー中でのタングステン装入有機相とアンモニア含有水性溶液との定常状態の比を1:5から1:70の間に調整する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
攪拌装置を備えた沈降タンク中で、攪拌下で相混合物を分離し、かつ攪拌装置の回転数を、パラタングステン酸アンモニウム水和物の沈降の際に一緒に連行された有機相が分離するよう調整し、その際、ミキサーからの相混合物を、好ましくは沈降タンクの有機相と水性相との間の相境界領域中に導入する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
相分離後に生じた母液の量をミキサー中に供給することで、ミキサー中のパラタングステン酸アンモニウム水和物の固体濃度を100〜1200g/l、好ましくは500〜800g/lに調整する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
タングステン装入有機相及びアンモニア含有水性溶液の再抽出のための供給速度を、ミキサー中の有機相の滞留時間が少なくとも1分であり、かつ、ミキサー中のアンモニア含有水性相の滞在時間が3時間を上回って調整されるよう選択し、その際、有機相の滞留時間は、ミキサー中の有機相の体積(l)とタングステン装入有機相の供給速度(l/時間)との比の60倍であり、かつアンモニア含有水性相の滞留時間は、ミキサー中のアンモニア含有水性相の体積(l)とアンモニア含有水性溶液の供給速度(l/時間)との比である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも75%が少なくとも200μmの長さを有する結晶から成り、この場合、該結晶の長さと幅との比が4.5:1を下回る、パラタングステン酸アンモニウム十水和物。
【請求項10】
少なくとも1.7g/cm、好ましくは1.8〜2.2g/cmのかさ密度を有する、請求項9に記載のパラタングステン酸アンモニウム十水和物。
【請求項11】
結晶の少なくとも75%が200〜1000μmの長さ、好ましくは300〜400μmの長さを有する、請求項9に記載のパラタングステン酸アンモニウム十水和物。
【請求項12】
結晶の少なくとも75%が300〜400μmの長さ及び3.0:1〜3.5:1の長さと幅との比を示す、請求項9に記載のパラタングステン酸アンモニウム十水和物。
【請求項13】
生成物の全量に対して少なくとも99.99%の純度を示す、請求項9から12までのいずれか1項に記載のパラタングステン酸アンモニウム十水和物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2010−517902(P2010−517902A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547657(P2009−547657)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050995
【国際公開番号】WO2008/092837
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】