説明

パラボラアンテナ支持具

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明は放送衛星からの電波受信用のパラボラアンテナを支える為に用いられるアンテナ支持具に関するものである。
(従来の技術)
従来のパラボラアンテナ支持具にあっては、柱状のマスト等任意の固定物に連結するようにしてある基枠と、その基枠に対して左右への首振りと、仰角の調節を自在に装着した可動枠とから構成されている(例えば特開昭61-12101号公報、特開昭60-210793号公報等参照)。
(発明が解決しようとする問題点)
しかし上記支持具にあっては、パラボラアンテナの可動枠と、基体(基枠)との取付部の構造が特殊で専用的である為、市場の過半数を占める汎用のパラボラアンテナ、即ち、パラボラアンテナの背面にマスト装着のために添付板を備える型式のパラボラアンテナを装着することのできない問題点がある。
この発明は上記従来の問題点を除き、上記のパラボラアンテナの背面にマスト装着のために添付板を備える型式のパラボラアンテナを容易に装着できる取付部を有し、しかも容易に装着できるタイプのパラボラアンテナであっても、複数衛星から選択受信するに当り、パラボラアンテナの向きを変えたい場合は、単に「方位角の一方向のみ」の向きを変更することにより、速早く選択受信の目的が達成でき、選択時の空白受信を短くでき、その上、選択操作の為の電動機構も、「方位角の一方向操作」で極めて簡易化できる構成のパラボラアンテナ支持具を提供しようとするものである。
(問題点を解決する為の手段)
本願発明は、パラボラアンテナを支持する為の基体を備え、その基体に対しては、パラボラアンテナを方位角の変更回動を自在に装着するための取付部を備えているパラボラアンテナ支持具において、上記取付部の構成は、基体に対し、パラボラアンテナの背面にマスト装着のための添付板を備えているパラボラアンテナを取付けるに当り、そのパラボラアンテナの添付板を当て止めし得るに充分な長さと、比較的大きな外周面を有する当付面を外周に備える回転体を、その回転体の回転中心軸が垂直線に対して後傾斜する傾斜状態となるようにその内側を、上記基体に連結されている軸部材で回転自在に装着し、しかもモータによって上記後傾斜した回転中心軸を中心にして回動自在にしてあって、上記回転体をモータで回動することによって上記回転体の外周の当付け面に取付けられるパラボラアンテナを上記後傾斜した回転体の回転中心軸を中心にして回動させて、複数の衛星からの信号を、方位角の変更だけで選択受信できるようにしたものである。
(作用)
回転体に対し、上記パラボラアンテナの背面にマスト装着のために添付板を備える型式のパラボラアンテナを装着する場合は、パラボラアンテナ側の添付板を回転体の外周に当て付け、通常の付属の締具(U字ボルト等)で固着する。そうすると、複数の衛星信号を選択受信するとき、基体に対して後傾斜状に連設してある回転体をモータで回動させるだけで、その回転体に取付けたパラボラアンテナの方位角が変えられ、異なる衛星信号の受信を選択受信できる。
(実施例)
以下本願の実施例を示す図面について説明する。第1図R>図及び第2図において、1は周知のマストで、鉛直状態に設置されている。2はマスト1の上部に取付けたパラボラアンテナ支持具、3は支持具2に取付けた周知のパラボラアンテナを示す。上記パラボラアンテナ3において、4は反射鏡、5は補強用のリブ、6は支持腕、6aはステー、7はコンバータ、8は一次放射器を夫々示す。次に上記パラボラアンテナ支持具2につき更に詳細に説明する。11は基枠、12はマスト連結具で、筒状に構成され、マスト1の上部に連結されている。13は支持体で、その下部が枢着具14を用いて基枠11に対して傾動自在に枢着してある。15は支持体13の上部と基枠11とを結ぶ傾斜調節具を示す。16は支持体に対しパラボラアンテナを連結する為の連結具を示す。
次に上記支持体13を詳細に示す第3図及び第4図において、17は基体で、上部基体18と下部基体19とから成り、両者はカラー20aを介在させた状態で連結ボルト20によって一体化させてある。又上部基体18は、回転体24の内側にあって回転体24を支持できるように、即ち、固定の軸部材の役割を果す中空のケース体21と、そのケース体を塞ぐ蓋体22とから成り、両者は固定用ボルト23によって一体化させてある。24は基体17の外周側に配設した円筒状の回転体で、パラボラアンテナ3の背面にマスト装着のために備える添付板46を当て止めし得るに充分な軸心方向の長さと、比較的大きな円弧状の外周面を有する当付面を外周に備えている。またこの回転体24は円筒状である為、U字状ボルト47、押え片48を外周に配して市販されている汎用アンテナ3を固着できる。上記基体17に対しベアリング25,26を介して取付けてある。次に27は上記ケース体21の内部に備えられた駆動機構を示す。これにおいて、28はモータ、29はその回転軸、30は地板、31は減速用の歯車機構を示す。32はベアリング、33は出力軸を示す。次に上記出力軸33と回転体24とを結ぶ伝動部材において、34は出力軸33に取付けた出力歯車、35はカラー20aに対し回動自在に装着した伝達歯車(遊星歯車)、36は回転体24の内周面に備えさせた内歯歯車を夫々示す。
次に上記傾斜調節具15を示す第1図及び第2図において、40は調整杆で、外周に雄ねじが形成されたねじ杆をもって構成されており、その上部は第3図に示すように枢着具(例えばボルトとナット)41によって支持体13の上部基体18に連結してある。42は筒体で、同様の枢着具43を用いて基枠11に枢着してある。この筒体42の内部には上記調整杆40が上下動自在に挿通されている。44,44は調整杆40に螺合させた固定用のナットを示す。
次に上記連結具16を詳細に示す第1図及び第2図において、46は添付枠、47はU字形ボルト、48は押え片、49はU字形ボルト47に螺合させたナットで、これらはナット49を締付操作することにより添付枠46と押え片48との間に前記支持体13における回転体24を挟み付けてそれへの固定ができるようになっている。50は傾動枠で、添付枠46に対し枢着具51(例えばボルト及びナット)により傾動自在に枢着してあり、又固定具52(同じくボルト52a及びナット52b)をもって添付枠46に対する固定ができるようになっている。この傾動枠50には前記パラボラアンテナ3における反射鏡4のリブ5が止付具53でもって止付けてある。
上記構成のものにあっては、モータ28に通電することにより回転軸29が回転し、歯車機構31を介して出力軸33が回動する。その回動は歯車34,35,36を介して回転体24に伝えられ、回転体24が基体17に対して回動する。その結果パラボラアンテナ3の向きを第2図の矢印で示されるように広い角度範囲内において変向させることができる。
次に、上記構成のパラボラアンテナ支持具2を用いてパラボラアンテナ3を第1図及び第2図に示すように設置した場合、回転体24の軸線24aが垂直線に対して後傾斜状となるように傾けて、水平面55に対してなす角度αがその土地の緯度と一致するように、傾斜調節具15によって支持体13の傾きを調節する。その調節は、傾斜調節具15におけるナット44を緩め、調整杆40を筒体42に対し上下移動させることにより支持体13の傾斜角(その傾斜角は例えば回転体24の側面にレベラー等の傾斜測定具を当てて測れば良い。)を調整する。尚調整後はナット44を締付けて支持体13の傾斜角が狂わないようにすると良い。またマスト1に対し基枠11を水平面内で回転させて、上記軸線24aがその土地の子午面内に位置するようにする。尚この状態においては、軸線24aはほぼ北極星56の方向を向く。次に反射鏡4の開口面57を真南に向けた状態において、反射鏡4が固定されている傾動枠50を添付枠46に対して枢着具51を軸に傾動させて、反射鏡4の開口面57と水平面55のなす角βを予め判っている角度の合わせ、固定具52でもって固定する。この場合、反射鏡4の開口面57の傾きは補強リブ5に開口面57と平行な部分を設け、そこに前述のレベラーを当てて測定すれば良い。尚角度βは、前記角度αに、アンテナ自体のオフセット角と、αに対するオフセット角とを加えた角度である。このαに対するオフセット角とは、第5図に示されるように、地球G上におけるアンテナの設置場所Pにおいて、放送衛星の軌道が設置場所を含む子午線面と交わる交点Qの方向と、天の赤道方向Rとのなす角度θを言う。
上記のように設置した状態にあっては、支持体13における回転体24を右又は左に回転させることによって、パラボラアンテナ3の向きを赤道上にある複数の放送衛星(静止衛星)のうちの任意のものに対して合わせてそれからの放送を受信することができる。
次に上記パラボラアンテナの包装状態の一例を示す第6図6図について説明する。上記パラボラアンテナ3における支持腕6は段ボール箱等のケース61の底部に置かれ、その上にステー6aが置かれる。また前記支持具2における基枠11や支持体13、或いは連結具16等も上記ケース61の底部に置かれる。そしてそれらの上にパラボラアンテナの反射鏡4が被せられる。尚周知の如く各部材相互の間及びそれらとケースとの間には、各部材が移動せぬように詰物がなされる。
このように包装する場合、上記支持体3における駆動機構27は基体17におけるケース体21の内部に空間の利用効率良く納められて支持具2が嵩張るのを防いでいるので、上記包装状態の荷姿は非常にコンパクトになる。
(発明の効果)
以上のように本発明にあっては、パラボラアンテナの背面にマスト装着のために添付板を備える型式のパラボラアンテナを容易に装着できる取付部を有するものであるから、即ち、上記取付部の構成は、基体に対し、パラボラアンテナの背面にマスト装着のための添付板を備えているパラボラアンテナを取付けるに当り、そのパラボラアンテナの添付板を当て止めし得るに充分な長さと、比較的大きな外周面を有する当付面を外周に備える回転体を、その回転体の回転中心軸が垂直線に対して後傾斜する傾斜状態となるようにその内側を、上記基体に連結されている軸部材で回転自在に装着してあるから、市場の過半数を占める凡用のパラボラアンテナ、即ち、パラボラアンテナの背面にマスト装着のために添付板を備える型式のパラボラアンテナを装着することのできる効果があり、その上、取付が容易でも、基体に対し回転体を回転自在に取付け、その回転体をモータによって回動させるようにしてあるから、パラボラアンテナとは遠く離れた場所からでも、上記パラボラアンテナの方位角を任意に変えられる特長がある。
しかも本発明にあっては、上記回転体をモータで回動することによって上記回転体に取付けられるパラボラアンテナを上記後傾斜した回転中心軸を中心にして回動させて、複数の衛星からの信号を、方位角の変更だけで選択受信できるようにしてあるから、上記方位角の変更によって、パラボラアンテナの向きは複数の衛星から発信される複数種類の信号を選択受信できる位置に向きが変り、その変更後は夫々の位置において仰角の調節操作なしで、仰角が夫々適切に衛星信号に対応する特長がある。
従って、その調整作業は、「仰角と方位角の二つを調節する操作」に比較して「方位角のみの調節」は極めて簡易となり、短時間で行い得る効果がある。
しかも当然のことながら「仰角と方位角の二つを調節する操作機構」に比較して「方位角のみの調節機構」は簡易化でき、低コストで提供できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
図面は本願の実施例を示すもので、第1図はパラボラアンテナ設置状態の側面図、第2図はII矢視図、第3図は支持体の縦断面図、第4図はIV-IV線断面図、第5図はオフセット角の説明図、第6図はパラボラアンテナの包装状態を示す図。
2……パラボラアンテナ支持具、3……パラボラアンテナ、17……基体、24……回転体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】パラボラアンテナを支持する為の基体を備え、その基体に対しては、パラボラアンテナを方位角の変更回動を自在に装着するための取付部を備えているパラボラアンテナ支持具において、上記取付部の構成は、基体に対し、パラボラアンテナの背面にマスト装着のための添付板を備えているパラボラアンテナを取付けるに当り、そのパラボラアンテナの添付板を当て止めし得るに充分な長さと、比較的大きな外周面を有する当付面を外周に備える回転体を、その回転体の回転中心軸が垂直線に対して後傾斜する傾斜状態となるようにその内側を、上記基体に連結されている軸部材で回転自在に装着し、しかもモータによって上記後傾斜した回転中心軸を中心にして回動自在にしてあって、上記回転体をモータで回動することによって上記回転体の外周の当付け面に取付けられるパラボラアンテナを上記後傾斜した回転体の回転中心軸を中心にして回動させて、複数の衛星からの信号を、方位角の変更だけで選択受信できるようにしてあるパラボラアンテナ支持具。

【第1図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第2図】
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【第6図】
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【第3図】
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【特許番号】第2577893号
【登録日】平成8年(1996)11月7日
【発行日】平成9年(1997)2月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−226602
【出願日】昭和61年(1986)9月25日
【公開番号】特開昭63−80601
【公開日】昭和63年(1988)4月11日
【出願人】(999999999)マスプロ電工株式会社