説明

パルステスト装置

【課題】他のパルステストに干渉しても、チャンネル異常を誤検出させないパルステスト装置を提供する。
【解決手段】あるチャンネルで診断パルスを連続的に出力し、他のチャンネルで測定することにより、チャンネル間短絡を診断するパルステスト装置であって、連続する診断パルス周期が異なるように診断パルスを生成するパルステスト制御部を備えたパルステスト装置。例えば、パルステスト制御部は、第1のパルス周期と、第1のパルス周期よりも長い第2のパルス周期とが交互になるように診断パルスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断パルスを用いてチャンネル異常を診断するパルステスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等において用いられるデジタル入出力モジュールは、フィールド機器との間でチャンネル毎にデジタル信号を入出力したり、フィールド機器と電源との間の接続、切断をチャンネル毎に制御する装置である。デジタル入出力モジュールに関して、特許文献1には、チャンネル固着異常やチャンネル間短絡等を検出するためのパルステスト機能を備えたデジタル入出力モジュールが記載されている。
【0003】
図4は、パルステスト機能を備えた従来のデジタル入出力モジュールの構成例を示すブロック図である。本図においてデジタル入出力モジュール300は、フィールド機器400と外部電源500との間の接続、接続をチャンネル毎に制御する。デジタル入出力モジュール300は、チャンネル間短絡等のチャンネル異常診断に関するブロックとして、パルステスト制御部310、スイッチ320、測定部330、診断部340を備えている。
【0004】
チャンネル異常の診断を行なう場合、パルステスト制御部310が、チャンネル毎にスイッチ320のオンオフを制御して、一定間隔で診断パルスをフィールド機器400に出力する。そして、チャンネル毎に設けられた測定部330でスイッチ320における電圧および電流を測定し、診断部340が測定結果に基づいてチャンネル異常を診断する。
【0005】
例えば、図5に示すように、チャンネル1(Ch1)において一定の周期Tcの診断パルスを出力し、チャンネル2(Ch2)では診断パルスを出力していない状態で、Ch2においてCh1のパルスに対応したタイミングでHighレベルが複数回連続して測定されると、診断部340は、Ch1とCh2との間でチャンネル間短絡が発生していると診断し、アラーム等を発報する。
【0006】
ところが、デジタル入出力モジュール300が複数混在し、フィールド機器400と接続する多数のケーブルが結束等されているような現実のプラントでは、近接するケーブル同士の線間容量等の影響により、あるデジタル入出力モジュールのパルステストが、他のデジタル入出力モジュールのパルステストに干渉し、診断結果に影響を与える場合がある。
【0007】
例えば、図6に示すように、デジタル入出力モジュールAのパルステストとデジタル入出力モジュールBのパルステストとを同時に行なっている場合に、非同期で動作している両モジュールの診断パルスが偶然重なることがある。このときに、デジタル入出力モジュールBのCh1の診断パルスがデジタル入出力モジュールAのCh2に干渉して、デジタル入出力モジュールAの診断部340が、チャンネル間短絡が生じていないのにもかかわらず、Ch1とCh2とのチャンネル間短絡を誤検出してしまうおそれがある。
【0008】
このようなチャンネル間短絡の誤検出を防ぐため、特許文献2では、チャンネル間短絡等のチャンネル異常を検出すると、診断パルスの周期を変更することが提案されている。例えば、図7に示すように、デジタル入出力モジュールAが時刻t1においてチャンネル異常を検出すると、次回の診断パルスの周期を例えば、TcからTc+θに変更する。これにより、デジタル入出力モジュールBのCh1からの干渉が生じても、生じるタイミングがデジタル入出力モジュールAの診断パルスのタイミングと異なるため、チャンネル異常は検出されない。一般に、診断部340は、チャンネル異常状態が複数パルス連続した場合に、チャンネル異常と判定するため、チャンネル異常の誤検出を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−209618号公報
【特許文献2】特開2010−277220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載された、チャンネル異常を検出すると診断パルスの周期を変更するデジタル入出力モジュールをプラントに新規導入することにより、新たに導入されたデジタル入出力モジュールにおいてチャンネル異常誤検出は防ぐことができる。
【0011】
しかしながら、従前のデジタル入出力モジュールで誤検出が発生することは防止できない。すなわち、新たに導入されたデジタル入出力モジュールが従前のデジタル入出力モジュールに対して干渉元となっている場合には、従前のデジタル入出力モジュールで誤検出が発生してしまうことになる。
【0012】
一般に、プラントには多数のデジタル入出力モジュールが存在しており、既存のデジタル入出力モジュールをすべて特許文献2に記載されたデジタル入出力モジュールに交換することは現実的ではない。
【0013】
そこで、本発明は、他のパルステストに干渉しても、チャンネル異常を誤検出させないパルステスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明のパルステスト装置は、あるチャンネルで診断パルスを連続的に出力し、他のチャンネルで測定することにより、チャンネル間短絡を診断するパルステスト装置であって、連続する診断パルス周期が異なるように診断パルスを生成するパルステスト制御部を備えることを特徴とする。
【0015】
例えば、前記パルステスト制御部は、第1のパルス周期と、第1のパルス周期よりも長い第2のパルス周期とが交互になるように診断パルスを生成することができる。
【0016】
また、前記パルステスト制御部は、チャンネル間短絡を検出した場合に、次回のパルス周期をさらに変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、他のパルステストに干渉しても、チャンネル異常を誤検出させないパルステスト装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のパルステスト装置の実施形態であるデジタル入出力モジュールの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の診断パルスについて説明する図である。
【図3】本実施形態のチャンネル間短絡の誤検出防止について説明する図である。
【図4】パルステスト機能を備えた従来のデジタル入出力モジュールの構成例を示すブロック図である。
【図5】パルステストによるチャンネル間短絡診断を説明する図である。
【図6】チャンネル間短絡の誤検出について説明する図である。
【図7】チャンネル間短絡の誤検出防止について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のパルステスト装置の実施形態であるデジタル入出力モジュールの構成例を示すブロック図である。本図においてデジタル入出力モジュール100は、フィールド機器400と外部電源500との間の接続、接続をチャンネル毎に制御する装置である。ただし、フィールド機器400との間でチャンネル毎にデジタル信号を入出力する装置としてもよい。
【0020】
デジタル入出力モジュール100は、チャンネル間短絡等のチャンネル異常診断に関するブロックとして、パルステスト制御部110、スイッチ120、測定部130、診断部140を備えている。なお、チャンネル異常診断に関する機能以外のブロックについては、従来のデジタル入出力モジュールと同様とすることができるため、図示ならびに詳細な説明を省略する。
【0021】
チャンネル異常の診断を行なう場合、パルステスト制御部110が、チャンネル毎にスイッチ120のオンオフを制御して診断パルスをフィールド機器400に出力する。そして、チャンネル毎に設けられた測定部130でスイッチ120における電圧および電流を測定し、診断部140が測定結果に基づいてチャンネル異常を診断する。
【0022】
本実施形態では、パルステスト制御部110は、少なくとも2種類のパルス周期で診断パルスを生成し、同じパルス周期が連続しないようにする。ここでは、Tc+αとTc−αの2種類とし、図2に示すように、パルス周期を交互に切り替えるものとする。複数種のパルス周期は、例えば、複数のタイマを備え、診断パルス毎にタイマを切り替えることにより実現することができる。もちろん他の方法で複数種のパルス周期を切り替えるようにしてもよい。
【0023】
このように、2種類のパルス周期を交互に切り替えることにより、デジタル入出力モジュール100は、パルス周期変更による誤検出防止機能を備えていない従来のデジタル入出力モジュール300のパルステストに干渉したとしても、従来のデジタル入出力モジュール300がチャンネル短絡を誤検出してしまうのを防ぐことができる。
【0024】
例えば、図3において、モジュールBを本実施形態のデジタル入出力モジュール100とし、モジュールAをパルス周期変更による誤検出防止機能を備えていない従来のデジタル入出力モジュール300とした場合に、モジュールBのCh1の診断パルスがモジュールAのCh2に干渉しているとする。
【0025】
この状況で、時刻t1に、モジュールAとモジュールBの診断パルスのタイミングが一致したとしても、モジュールBの次の診断パルスはTc+α後であるため、Tc後のモジュールAの診断パルスのタイミングとずれる。したがって、チャンネル異常検知が連続せず、モジュールAは、チャンネル間短絡と診断することはない。
【0026】
なお、デジタル入出力モジュール100自身が他のモジュールから干渉を受けた場合にチャンネル間短絡の誤検出を防ぐために、デジタル入出力モジュール100は、チャンネル間短絡等のチャンネル異常を検出すると、次回の診断パルスの周期を変更する機能を備えていることが望ましい。これにより、チャンネル間短絡を誤検出することも誤検出させることも防止できる。
【0027】
本実施形態のように、診断パルスの周期をTc+αとTc−αの2種類とし、交互に切り替えることにより、診断パルスの平均周期はTcとなる。このため、デジタル入出力モジュール100で実際にチャンネル間短絡が生じている場合の検出期間は、平均すると従来のデジタル入出力モジュール300と同等とすることができる。
【0028】
例えば、連続する3つのパルスで異常が検出されると、チャンネル間短絡が発生していると診断し、アラームを発報する場合に、従来のデジタル入出力モジュール300では、3×Tcの時間でチャンネル間短絡を検出することができる。これに対し、本実施形態のデジタル入出力モジュール100も平均3×Tcの時間でチャンネル間短絡を検出できることになる。
【0029】
なお、本実施形態では、診断パルスの周期をTc+αとTc−αの2種類としたが、診断パルスの周期は3種類以上であってもよい。この場合、実際にチャンネル間短絡が生じている場合の検出期間を従来と同様にするため、診断パルスの周期の平均値がTcとなるようにそれぞれの周期および切り替え順序を定めることが望ましい。
【0030】
また、デジタル入出力モジュール100毎に、診断パルスの周期を異ならせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
100…デジタル入出力モジュール
110…パルステスト制御部
120…スイッチ
130…測定部
140…診断部
300…デジタル入出力モジュール
310…パルステスト制御部
320…スイッチ
330…測定部
340…診断部
400…フィールド機器
500…外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あるチャンネルで診断パルスを連続的に出力し、他のチャンネルで測定することにより、チャンネル間短絡を診断するパルステスト装置であって、
連続する診断パルス周期が異なるように診断パルスを生成するパルステスト制御部を備えることを特徴とするパルステスト装置。
【請求項2】
前記パルステスト制御部は、第1のパルス周期と、第1のパルス周期よりも長い第2のパルス周期とが交互になるように診断パルスを生成することを特徴とする請求項1に記載のパルステスト装置。
【請求項3】
前記パルステスト制御部は、チャンネル間短絡を検出した場合に、次回のパルス周期をさらに変更することを特徴とする請求項1または2に記載のパルステスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3835(P2013−3835A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134173(P2011−134173)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】