説明

パルス計測方法およびその装置

【課題】パルス信号の長さに依存することなく、MCUコアの消費電力を大幅に削減することを可能とする低消費電力パルス計測方法及びその装置の提供。
【解決手段】信号状態検出回路と、タイマ回路と、パルスカウントプログラムが記憶された記憶装置と、休止モード及び動作モードを有する中央処理装置と、を備えるマイクロコントローラ装置を用い、信号状態検出回路がパルスの立上りを検出すると起動モードに移行させる第1ステップと、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し設定をした後、休止モードに移行する第2ステップと、信号状態検出回路がパルスの立下りを検出すると起動モードに移行させる第3ステップと、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し設定をした後、休止モードに移行する第4ステップと、第1〜第4ステップを繰り返し実行する第5ステップと、を有するパルス計測方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス計測方法およびその装置に関し、より具体的には、例えば、パルス計測のために電池駆動されるMCU(マイクロコントローラユニット)の消費電力を低減する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から入力されるパルス信号を例えばA/D変換などの処理でデジタル信号に変換し、そのパルス数をカウントし、得られた計数値を判読可能な10進数表記の数字で表示するカウンタ装置が広く使用されている。近年は、マイコンの性能が向上し、入力パルス信号が高速であったとしても、マイコンのソフトウェア処理で構成されるカウンタによって、そのパルス信号をカウントすることが可能になっている。
【0003】
しかし、電池駆動のカウンタ装置の場合、クロック信号が高速なマイコンを採用すると消費電力が高く、比較的短い周期で電池交換を行うことが必要となる。そのため、待機中の消費電力を抑制するため、動作モード変更条件を検出する機能以外の電源を遮断して、省エネモードに移行することが広く行われている。具体的には、消費電力を低減させるためにCPUへのクロック供給または電源供給を停止するスリープモードに移行させ、スリープモードに移行したCPUを、外部からの割り込み信号が入力された時、或いはスリープ時間が経過した時に、通常動作モードに復帰するように構成することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
最新のMCU(マイクロコントローラユニット)には、MCUコアを休止状態にして外部からの信号入力をモニタし、入力信号に変化があった場合に数μ秒以内にMCUコアを起動させる信号状態検出回路や、予め設定した時間経過後に休止中のMCUコアを起動させるタイマ回路を備えるものがある(例えば、Silicon Laboratory社のC8051F930)。これらの回路は極低消費電力(例えば、数十nW)であるため、MCUの消費電力を大幅に低減することが可能である。
【0005】
特許文献2では、測定精度を上げる必要がない時期には、できるだけデータ演算手段の動作回数を減らし、測定精度を上げる必要がある時期だけデータ演算手段の動作回数を増やすようにサンプリング周期を変更することにより、計測精度を大幅に低下させることなく、消費電力を少なくして電池の寿命を延ばすことができる雨量計測装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−280783号公報
【特許文献2】特開2008−216214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パルス信号をソフトウェアによりカウントする構成においては、パルス信号の長さ(パルス幅)に比例して、1パルス入力当たりのCPU(MCUコア)の動作時間が長くなり消費電力が増大するという問題がある。
また、パルス信号の長さが可変である計測条件下においては、電池寿命の予測が困難であるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、パルス信号の長さに依存することなく、1パルス入力当たりのMCUコアの動作時間を必要最小限とすることで消費電力を大幅に削減することを可能とする、低消費電力パルス計測方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、外部入力パルスの立上りエッジおよび立下りエッジを検出する信号状態検出回路と、設定されたタイマ条件に従い中央処理装置に起動信号を送信するタイマ回路と、外部入力パルスをカウントするカウントプログラムが記憶された記憶装置と、休止モードおよび動作モードを有する中央処理装置と、を備えるマイクロコントローラ装置を用いたパルス計測方法において、信号状態検出回路が、外部入力パルスの立上りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる第1ステップと、中央処理装置が、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立下り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行する第2ステップと、信号状態検出回路が、外部入力パルスの立下りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる第3ステップと、中央処理装置が、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立上り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行する第4ステップと、第1〜第4ステップを繰り返し実行する第5ステップと、を有することを特徴とするパルス計測方法である。
第2の発明は、第1の発明において、第2ステップにおいて、さらに、中央処理装置が、タイマ回路に、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置を起動モードに移行させる設定をした後、休止モードに移行すること、および、第4ステップにおいて、さらに、中央処理装置が、タイマ回路に、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置を起動モードに移行させる設定をした後、休止モードに移行することを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、中央処理装置が、初期入力パルス群に基づき立上り時および立下り時チャタリングガードタイムを演算し、記憶装置に記憶するステップを有することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、外部入力パルスの立上りエッジおよび立下りエッジを検出する信号状態検出回路と、設定されたタイマ条件に従い中央処理装置に起動信号を送信するタイマ回路と、カウントプログラムが記憶された記憶装置と、休止モードおよび動作モードを有する中央処理装置と、を備えるマイクロコントローラ装置であって、信号状態検出回路が、外部入力パルスの立上りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる手段を有し、カウントプログラムが、中央処理装置に、タイマ回路に立上り時チャタリングガードタイムを設定させる手段、中央処理装置に、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立下り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をさせた後、休止モードに移行させる手段、中央処理装置に、タイマ回路に立下り時チャタリングガードタイムを設定させる手段、中央処理装置に、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立上り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をさせた後、休止モードに移行させる手段、中央処理装置に、外部入力パルスをカウントさせるカウント手段を有することを特徴とするマイクロコントローラ装置である。
第5の発明は、第4の発明において、カウントプログラムが、中央処理装置に、タイマ回路に対し、立上り時チャタリングガードタイムの経過後に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行させる手段、および、中央処理装置に、タイマ回路に対し、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行させる手段を有することを特徴とする。
第6の発明は、第4または5の発明において、カウントプログラムが、中央処理装置に、初期入力パルス群に基づき立上り時および立下り時チャタリングガードタイムを演算させ、記憶装置に記憶させる手段を有することを特徴とする。
第7の発明は、第4ないし6のいずれかの発明において、電池により駆動されることを特徴とする。
第8の発明は、第4ないし7のいずれかの発明に係るマイクロコントローラ装置を備える雨量計である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パルス信号の長さに依存することなく、1パルス入力当たりのMCUコアの動作時間を必要最小限とすることで消費電力を大幅に削減することが可能となる。
また、パルス信号の長さが可変である計測条件下においても、電池寿命の予測が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一形態に係る低電力MCUの構成図である。
【図2】機械式接点により生成されるパルス時間と開始・終了チャタリング時間の関係を示す図である。
【図3】比較例に係るMCUコア動作時間を示す図である。
【図4】本発明の第1態様に係るMCUコア動作時間を示す図である。
【図5】本発明の第2態様に係るMCUコア動作時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、比較的低速(例えば数KHz以下)のパルス信号をソフトウェアによりカウントする技術に関する。本発明は、専用のカウンタ回路を必要とせず、また、パルス信号が入力されない場合には中央処理装置(CPU)が動作しないため、例えば、パルス信号の出力頻度が低い降雨計等のパルス計量に有効である。
以下では、本発明の実施形態を、転倒舛式降雨計からのパルス信号をカウントするMCU(マイクロコントローラユニット)の例により説明する。まず、本発明の前提となる技術である比較例について説明し、続いて本発明の技術を説明する。
【0014】
[比較例のパルス計量方式]
転倒舛式降雨計は降雨量に比例して機械式接点を開閉する構造となっており、外部から電圧を印加することによって、その接点の開閉をパルス信号として検出するようになっている。降雨計を設置する場所では一般に安定した電力の確保が難しい場合が多く、電池電源で長期間動作可能な極低消費電力のパルスカウント装置が必要とされている。
【0015】
最新のMCUであるSilicon Laboratory社のC8051F930においては、MCUコアの休止状態(スリープモード)を外部からの信号入力を、MCUコアの外部に設けられた極低消費電力の信号状態検出回路で行うことが可能である。この信号状態検出回路を用いて、ソフトウェアによるパルス信号のカウント時以外はMCUコアをスリープモードに移行させることで、消費電力を低減させることが考えられる。ここで信号源が機械式接点である場合、その信号のオン・オフ状態が切り替わるタイミングで、チャタリングと呼ばれる、切り替わりの開始から一定時間、信号状態がオン・オフを繰り返す現象が発生することが知られている。このチャタリングの発生時間中は信号状態の検出が不可能であるため、数ミリ秒〜数十ミリ秒のチャタリングガードタイムを設定し、誤検出を防ぐ必要がある。比較例のパルス計量方式は、次の(i)〜(iv)の手順で外部入力パルス信号をカウントする。
【0016】
(i)信号状態検出回路が入力パルス信号の立上りを検知し、MCUコアを起動する。
(ii)MCUコアは、ソフトウェアによりパルスカウント変数を+1する。
(iii)MCUコアは、予め設定されたチャタリングガードタイムの経過後、ソフトウェアにより入力パルスの立下りを検出するまで、信号状態検出回路からパルス信号状態を繰り返し読み出す。
(iv)MCUコアは、入力パルスの立下り検出後、予め設定されたチャタリングガードタイムの経過後、休止状態になる。
【0017】
前記(i)〜(iv)の手順において、パルス時間が100ミリ秒であり、チャタリングガードタイムが1ミリ秒であると仮定すると、MCUコア動作時間は102ミリ秒となる(図2、図3参照)。すなわち、外部パルス信号の入力が行われる度に、MCUコアは102ミリ秒間作動する。このように、比較例においては、MCUコア動作時間は、パルス信号の長さにほぼ比例して増加することとなるが、この方式ではパルス信号の継続時間が長い場合には電池寿命も短命となるという問題がある。また、比較例ではパルス信号の継続時間とほぼ比例して消費電力が増大するため、パルス信号の継続時間が一定でない条件下での電池寿命の予測が困難であるという問題もある。
また、ここではチャタリングガードタイムを1ミリ秒に設定したが、機械式接点のチャタリング時間は、製品種別により区々で、老朽化によっても変化するため、チャタリングガードタイムを余裕をもって長めに設定しなくてはならず、このこともMCUの消費電力増大の原因となっている。
【0018】
[本発明のパルス計量方式(第1態様)]
第1態様に係るMCU1は、MCUコア2の外部に設けられた信号状態検出回路3と、チャタリングガードタイムを管理するタイマ回路4と、制御・通信I/O、内蔵メモリ等の要素からなるオンチップデバイス5と、市販の乾電池からなる電源6とを備えている。MCUコア2は、信号状体検出回路3の検出条件bを設定および信号状態cの読み取りを行い、信号状体検出回路3は、所定の条件でMCUコア2に起動信号aを送信する。
【0019】
第1態様の本発明においては、まず、チャタリングに影響されないためのチャタリングガードタイムを設定する。すなわち、MCUコア2は、システム起動後、最初に入力される初期パルス群(例えば、1〜数十パルスを設定する)について、パルス信号開始時のチャタリング時間(SCT)ならびにパルス信号終了時のチャタリング時間(ECT)の最大値を計測し、各最大値+αの時間を立上り時および立下り時のチャタリングガードタイムとして設定する。
【0020】
保護時間の設定後は、次の(1)〜(6)の手順で外部入力パルス信号をカウントする(図4参照)。
(1)MCUコア2の休止モード中、信号状態検出回路3が入力パルス信号の立上りを検出する。
(2)信号状態検出回路3が入力パルス信号の立上りを検出すると起動信号aをMCUコア2に送信し、MCUコア2を動作モードとする。
(3)MCUコア2は、立上り時チャタリングガードタイム(SCT+α)が終了するまで、ソフトウェアにより信号状態検出回路3からパルス信号状態cを繰り返し読み出し、所定の条件を満たす場合にはソフトウェアによりパルスカウント変数を+1する。MCUコア2は、パルス信号の立下りを検出するように設定する検出条件b2を信号状態検出回路3に送信し、休止モードに移行する。
(4)MCUコア2の休止モード中、信号状態検出回路3が入力パルス信号の立下りを検出する。
(5)信号状態検出回路3が入力パルス信号の立下りを検出すると起動信号aをMCUコア2に送信し、MCUコア2を動作モードとする。
(6)MCUコア2は、立下り時チャタリングガードタイム(ECT+α)が終了するまで、ソフトウェアにより信号状態検出回路3からパルス信号状態cを繰り返し読み出し、所定の条件を満たす場合には入力パルスが終了したと判定し、パルス信号の立上りを検出するように設定する検出条件b1を信号状態検出回路3に送信し、休止モードに移行する。以下、(1)〜(6)の手順を繰り返す。
【0021】
以上に説明した第1態様の技術によれば、MCUコア2の動作時間を立上り時および立下り時のチャタリングガードタイム(例えば2ミリ秒+2α)に短縮することができるので、パルスカウント動作の消費電力を比較例と比べ大幅に低減することが可能である。なお、チャタリングの時間は老朽化によっても変化するため、所定の周期でチャタリングガードタイムを再設定することが好ましい。
【0022】
[本発明のパルス計量方式(第2態様)]
第2態様に係るMCU1は、第1態様の構成と同じ構成であるが、タイマ回路4が、MCUコア2に設定されたタイマ条件e に従い、MCUコア2に起動信号dを送信する点で第1態様と相違する。
第2態様の本発明においては、まず、チャタリングの影響を排除するチャタリングガードタイムの初期設定を行う。すなわち、MCUコア2は、システム起動後、最初に入力される初期パルス群(例えば、1〜数十パルスを設定する)について、パルス信号開始時のチャタリング時間(SCT)ならびにパルス信号終了時のチャタリング時間(ECT)の最大値を計測し、各最大値+αの時間を立上り時および立下り時のチャタリングガードタイムとして設定する。
【0023】
チャタリングガードタイムの設定後は、次の(1)〜(7)の手順で外部入力パルス信号をカウントする(図5参照)。
(1)MCUコア2の休止モード中、信号状態検出回路3が入力パルス信号の立上りを検出する。
(2)信号状態検出回路3が入力パルス信号の立上りを検出するとパルス検出フラグをON状態とし、起動信号aをMCUコア2に送信し、MCUコア2を動作モードとする。MCUコア2は、信号状態検出回路3の信号状態cを読み取り、パルス検出フラグがON状態である場合にはソフトウェアによりパルスカウント変数を+1し、パルス検出フラグをOFF状態とする。
(3)MCUコア2は、パルス信号の変化を検出しないように設定する検出条件b3を信号状態検出回路3に送信すると共に、立上り時チャタリングガードタイム(SCT+α)を設定するタイマ条件e1をタイマ回路4に送信し、休止モードに移行する。
(4)立上り時チャタリングガードタイム(SCT+α)の経過後、タイマ回路4は起動信号dをMCUコア2に送信し、MCUコア2を動作モードとする。MCUコア2は、パルス信号の立下りを検出するように設定する検出条件b2を信号状態検出回路3に送信し、休止モードに移行する。
(5)MCUコア2の休止モード中、信号状態検出回路3が入力パルス信号の立下りを検出する。
(6)信号状態検出回路3は、入力パルス信号の立下りを検知すると起動信号aをMCUコア2に送信し、MCUコア2を動作モードとする。MCUコア2は、パルス信号の変化を検出しないように設定する検出条件b3を信号状態検出回路3に送信すると共に、立下り時チャタリングガードタイム(ECT+α)を設定するタイマ条件e2をタイマ回路4に送信し、休止モードに移行する。
(7)立下り時チャタリングガードタイム(ECT+α)の経過後、タイマ回路4は起動信号dをMCUコア2に送信し、MCUコア2を起動モードとする。MCUコア2は、パルス信号の立上りを検出するように設定する検出条件b1を信号状態検出回路3に送信し、休止モードに移行する。以下、(1)〜(7)の手順を繰り返す。
【0024】
以上に説明した(1)〜(7)の手順は、適宜変更して実行することができ、例えばソフトウェアによるパルスカウント変数の更新を、(2)〜(4)、(6)、(7)のいずれかのタイミングに行ってもよい。また、ノイズによる誤検出を防ぐために、(2)(4)の両時点でパルス信号が確認できる場合にのみパルスカウント変数の更新を行うようにしてもよい。
【0025】
以上に説明した第2態様の技術によれば、1パルス当たりのMCUコア2の動作時間を数十マイクロ秒程度に短縮することができるので、パルス信号の平均継続時間が100ミリ秒の場合、パルスカウント動作の消費電力を第1態様と比べ1/1000程度に低減することが可能である。
【0026】
また、第2態様ではパルス信号の継続時間が変化する条件下でも、MCUの消費電力は一定となり電池寿命の予測が非常に容易となる。さらには、チャタリング時間の長短および経年変化にかかわらずMCUの消費電力を一定とすることができ、特にチャタリング時間が長い条件下における消費電力の低減効果は大きい。
なお、水銀リレー、電子リレー等では、SCTならびにECTがゼロである場合もあるが、この場合は、タイマ回路4によるMCUコア2の起動処理を省略するようにしてもよい。
【0027】
[本発明の応用例]
本発明は、MCUをマルチタスク動作させる場合にも適用でき、その場合は、MCUコアを休止させる代わりに、他のタスクに処理能力を譲ることにより、MCUコアの使用効率を向上させることができる。
また、本発明に係るパルスカウント装置は、電池電源で長期間動作可能であるため、ZigBee(登録商標)などのアドホック無線ネットワーク技術を組み合わせることで、例えば、電池交換無しに長期連続稼動が可能である、計測点が数百点を越える多点計測センサシステムを構築することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
機械式接点はその動作に電力を消費しないという特長を備えているため、マイクロスイッチ、リードスイッチ、振動スイッチ等、多くのスイッチ部品に含まれており、様々なセンサや装置中で使用されている。一方、機械式接点にはオン・オフ動作が遅く、接点状態の変化時にチャタリングが発生するという短所がある。
近年では、多くの、機械式接点を含むスイッチ部品から出力されるパルス信号のカウントは、システム中で多目的に利用されるMCUにソフトウェアにより搭載された機能を使用して行うことが多い。その場合、機械式接点の短所を起因として比較例に示すような複雑で時間の掛かるソフトウェアによる信号処理が必要でMCUの演算負荷が大きくなり、延いては、消費電力が大きくなるという問題があり、特に電池での長時間動作が必要とされる用途では、この信号処理部の低消費電力化が大きな課題となっていた。
本発明によれば、機械式接点によるパルスをMCUで直接計測するという従来のシステム構成を大きく変えることなく、パルス計測に必要な消費電力を大きく低減することが可能とる。また、本発明の具現化に必要なMCUに内蔵された極低消費電力の信号状態検出回路、ならびに、極低消費電力のタイマ回路は、汎用的な機能として、特定のメーカーに依らず多くのMCUに標準搭載されるようになってきており、本発明の産業上の利用価値は非常に大きいと言える。
【符号の説明】
【0029】
1 MCU(マイクロコントローラユニット)
2 MCUコア(マイクロプロセッサ)
3 信号状態検出回路
4 タイマ回路
5 オンチップデバイス
6 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部入力パルスの立上りエッジおよび立下りエッジを検出する信号状態検出回路と、設定されたタイマ条件に従い中央処理装置に起動信号を送信するタイマ回路と、外部入力パルスをカウントするカウントプログラムが記憶された記憶装置と、休止モードおよび動作モードを有する中央処理装置と、を備えるマイクロコントローラ装置を用いたパルス計測方法において、
信号状態検出回路が、外部入力パルスの立上りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる第1ステップと、
中央処理装置が、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立下り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行する第2ステップと、
信号状態検出回路が、外部入力パルスの立下りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる第3ステップと、
中央処理装置が、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立上り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行する第4ステップと、
第1〜第4ステップを繰り返し実行する第5ステップと、を有することを特徴とするパルス計測方法。
【請求項2】
第2ステップにおいて、さらに、中央処理装置が、タイマ回路に、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置を起動モードに移行させる設定をした後、休止モードに移行すること、および、
第4ステップにおいて、さらに、中央処理装置が、タイマ回路に、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置を起動モードに移行させる設定をした後、休止モードに移行することを特徴とする請求項1のパルス計測方法。
【請求項3】
中央処理装置が、初期入力パルス群に基づき立上り時および立下り時チャタリングガードタイムを演算し、記憶装置に記憶するステップを有することを特徴とする請求項1または2のパルス計測方法。
【請求項4】
外部入力パルスの立上りエッジおよび立下りエッジを検出する信号状態検出回路と、設定されたタイマ条件に従い中央処理装置に起動信号を送信するタイマ回路と、カウントプログラムが記憶された記憶装置と、休止モードおよび動作モードを有する中央処理装置と、を備えるマイクロコントローラ装置であって、
信号状態検出回路が、外部入力パルスの立上りを検出すると中央処理装置を起動モードに移行させる手段を有し、
カウントプログラムが、
中央処理装置に、タイマ回路に立上り時チャタリングガードタイムを設定させる手段、
中央処理装置に、立上り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立下り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をさせた後、休止モードに移行させる手段、
中央処理装置に、タイマ回路に立下り時チャタリングガードタイムを設定させる手段、
中央処理装置に、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、信号状態検出回路に対し、パルス信号の立上り検出時に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をさせた後、休止モードに移行させる手段、
中央処理装置に、外部入力パルスをカウントさせるカウント手段を有することを特徴とするマイクロコントローラ装置。
【請求項5】
カウントプログラムが、
中央処理装置に、タイマ回路に対し、立上り時チャタリングガードタイムの経過後に中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行させる手段、および、
中央処理装置に、タイマ回路に対し、立下り時チャタリングガードタイムの経過後、中央処理装置に起動信号を送信させる設定をした後、休止モードに移行させる手段を有することを特徴とする請求項4のマイクロコントローラ装置。
【請求項6】
カウントプログラムが、
中央処理装置に、初期入力パルス群に基づき立上り時および立下り時チャタリングガードタイムを演算させ、記憶装置に記憶させる手段を有することを特徴とする請求項4または5のマイクロコントローラ装置。
【請求項7】
電池により駆動される請求項4ないし6のいずれかのマイクロコントローラ装置。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかのマイクロコントローラ装置を備える雨量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221136(P2012−221136A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85044(P2011−85044)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】