説明

パルプモールド成形体の製造方法および該製造方法に用いられる金型

【課題】パルプスラリーから剛性、耐水性に優れ、漏れ防止可能な天然材料からなる環境保全対応型のパルプモールド成形体の自動化製造方法およびこれに用いられる金型および金型の組合せを提供する。
【解決手段】パルプスラリーの抄造工程、しぼり工程、乾燥・整形工程、重合硬化工程において、それぞれ特定の金型1、2、3、4、5を用いることによるパルプモールド成形体の自動化製造方法および該製造方法の各工程に適用可能な各金型およびかかる金型の組合せからなる金型セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド成形体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、パルプスラリー原料からパルプ製食品容器(例えば、納豆容器、インスタントラーメン容器、生麺容器等)、包装用箱(ケーキ箱、証券箱、乾麺箱等)、医療用容器等(検査用尿カップ、検査血液搬送箱等)、食品等保存用容器および販売用容器等に使用されるパルプモールド成形容器の製造方法およびその製造方法に用いられる金型(本明細書および特許請求の範囲において、材質の種類を問わず成形用型を意味するものとする。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品、生鮮野菜等の販売、保存等には、ポリウレタン等の合成樹脂系の容器をはじめ各種の成形容器が用いられている。
しかしながら、これらの合成樹脂系容器は、含有される成分により環境保全への対応の必要性から、使用が制限される状況にあり、天然材料へ置き換えざるを得ない状況にあることから、パルプセルローズを利用した抄造成形容器が注目されてきている。
【0003】
パルプ原料液を用いて立体形状に成形したパルプ成形製品を製造するためのパルプセルローズ成形方法としては、従来、パルプスラリーを所定の容器形状に成形した抄造型上で吸引濾過し、抄き取った後、脱水して所定形状の含水抄造成形体を抄造型から外して乾燥炉中で乾燥する方法が採用されている。さらに、乾燥中で生じる成形体の形状の歪みの修正、寸法安定性の確保、および表面の平滑化等のために乾燥後のパルプ成形中間体を、互いに係合しあう雄型および雌型金型で形成される形状修整型プレスで加熱加圧する工程が設けられている。
しかし、これらの成形用金型は、自動化運転に適合させるには未だ改善すべき点が多く残されており、生産効率上、十分ではなかった。
【0004】
また、前記の如き各工程を経て製造されたパルプ成形体を食品容器等として使用する場合、液漏れが生じ、液状物の容器としては使用することができないことからパルプモールド成形体の漏水に対しては、
(1)成形体原料に漏水防止剤を混入して成形する方法、
(2)成形品表面に耐水剤を塗布する方法、
(3)成形体にポリエチレン等の被膜をラフィネートする方法
等の対策がとられてきた。
【0005】
例えば、特許文献1(特公昭58−28400号公報)によれば、パルプスラリーにロジンサイズ剤および定着剤として硫酸バンドを添加して耐水性に優れた紙コップ状容器、特に、深しぼり部を有する紙容器の製造法が開示されている。また、特許文献2(特開平7−186308号公報)にはパルプにステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムおよびステアリン酸セルロース等の脂肪酸塩等の防水剤を混合して防水度を改善した無公害食器製品が開示されている。同様に特許文献3(特開平11−348957号公報)には葦パルプまたはその他の天然パルプを原料とし、これにロジン等の防水剤および防油剤を加えて熱圧成形を行なう食品盛りつけ用紙製容器の製造方法が記載されている。
このように、パルプ液を原料として製造される紙製容器については防水剤、塗布剤等の配合が欠かせないものとなっていた。
【0006】
また、従来の製造方法により得られるパルプ成形製品は、剛性に欠けており、耐水性は4〜5時間しかなく、また吸湿性は30%以上であると共に、別々に成形するため1製品の製作に約10分以上の時間を要するばかりでなく、成形加工に要する人件費も多く必要とされるため、製品の価格および生産数に限度があった。
【0007】
さらに、従来のパルプモールド成形体の製造用金型についても、例えば特許文献4にはポリスチレン製の抄造型が提案されているが、抄造用の単独工程のためのものであり、本発明の目的とするパルプモールド成形体のしぼり工程以下重合硬化工程までの各工程に使用することができず、自動化製造方法に適用可能な形態のものは提案されていなかった。
【特許文献1】特公昭58−28400号公報
【特許文献2】特開平7−186308号公報
【特許文献3】特開平11−348957号公報
【特許文献4】特開平8−226099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題の第一は、剛性が大きく、かつ耐水性に優れ、漏水防止が可能であり、すべて天然材料からなる無公害型のパルプモールド成形体を短時間で製造可能な自動化製造方法を提供することにあり、本発明の課題の第二は、かかる自動化製造方法の各工程において用いられる金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、前記の如き従来のパルプモールド成形体の製造に関する技術開発状況に鑑み、先に、抄造工程、脱水・乾燥工程、形状熱固定工程および重合硬化工程からなるパルプセルローズ重合成形方法を提案した(特開2005−2528号)。かかるパルプセルローズ重合成形方法においては、重合硬化工程を設けることにより、パルプモールド成形体の表面を角質化させ漏水防止が可能であることを開示したが、さらに各工程において特定の金型を連続的に用いることによりパルプモールド成形体を2分以下という極めて短縮された時間で成形することができると共に、成形体の剛性がさらに改良され、耐水性が200時間以上、吸水性8%以下という究極の性能を有するパルプモールド成形体が得られることを見出し、これらの知見に基いて、本発明の完成に到達した。
【0010】
かくして、本発明によれば、
1)パルプスラリーを多数の孔部を有する漉金型の表面に吸引付着させ、該
漉金型の形状に対応する形状のパルプモールド成形中間体を該漉金型上に形
成させる抄造工程と、
2)前記抄造工程にて得られたパルプモールド成形中間体を、前記漉金型上に吸
引保持したまま、前記漉金型の形状と互いに係合し合う形状のしぼり金型に
よりプレスし、残余の水分をしぼり取るしぼり工程と、
3)前記しぼり工程にて得られた前記パルプモールド成形中間体をしぼり金型上
に載置したままで、前記漉金型の形状と同一形状の乾燥金型を前記しぼり金
型に近接させ、該しぼり金型との間に、間隔を設けて面接させ、前記しぼり
金型孔部と該乾燥金型孔部とから熱風、温風を噴射することにより乾燥した
後、プレスし整形する乾燥・整形工程と、
4)前記乾燥・整形工程にて得られたパルプモールド成形中間体を重合キャビ
ティ金型に移載し、該重合キャビティ金型上で加熱し、重合コア金型により
プレスし、パルプ成分を硬化させる重合硬化工程
とからなる各工程を含むパルプモールド成形体の製造方法において、
前記抄造工程で用いられる前記漉金型が、パルプモールド成形体に対してコア金型であって、
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部と、
d)前記平面部と前記製品部を被覆した漉網とからなり、
e)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部の全面積に対し10%〜50%であり、
f)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部の全面積に対し40%〜50%である
ことを特徴とするパルプモールド成形体の製造方法
が提供される。
【0011】
本発明は、前記の如く、各工程からなるパルプモールド成形体の製造方法を提供するものであるが、さらに好ましい実施の態様として次の1)〜9)に掲げるものを包含する。
1)前記パルプスラリーが、葦パルプと木パルプの各スラリーの混合体であるパルプモールド成形体の製造方法。
2)前記乾燥・整形工程の条件が、温度100℃〜150℃および圧力0.05MPa〜0.2MPaを含む条件であるパルプモールド成形体の製造方法。
3)前記重合硬化工程の条件が、温度180℃〜220℃および圧力0.5MPa〜0.7MPaを含む条件であるパルプモールド成形体の製造方法。
4)前記重合硬化工程に供するパルプモールド乾燥成形体の含湿度が70%〜90%であるパルプモールド成形体の製造方法。
5)前記パルプモールド成形体が、容器であるパルプモールド成形体の製造方法。
6)前記重合硬化工程の加熱プレスに要する時間が、前記パルプモールド成形体の主成分であるセルロース繊維の硬化が生じるまでの時間であるパルプモールド成形体の製造方法。
7)前記乾燥・整形工程により得られるパルプモールド成形中間体の水分量が60%〜80%であるパルプモールド成形体の製造方法。
8)前記重合硬化後のパルプモールド成形体の比重が0.68g/cm3以上であるパルプモールド成形体の製造方法。
9)前記重合硬化後のパルプモールド成形体の含湿度が8%以下であるパルプモールド成形体の製造方法。
【0012】
さらに、本発明によれば、
前記パルプモールド成形体の製造方法の各工程において用いられる金型に関し、次の(1)〜(5)に記載の各金型が提供される。;
(1)a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部と、
d)前記平面部と製品部を被覆した漉網とからなり、
e)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部の全面積に対し10%〜50%であり、
f)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部の全面積に対し40%〜50%であることを特徴とするパルプモールド成形用漉金型。
(2)a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた凹形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部の全面積に対し10%〜50%であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部の全面積に対し40%〜50%であることを特徴とするパルプモールド成形用しぼり金型。
(3)a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凹形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し10%〜20%であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し20%〜25%であることを特徴とするパルプモールド成形用乾燥金型。
(4)a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し15%以下であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し15%以下であり、
f)前記製品部に設けた突出しピンとからなることを特徴とするパルプモールド成形用重合コア金型。
(5)a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凹形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し10%以下であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し10%以下であることを特徴とするパルプモールド成形用重合キャビティ金型。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に係るパルプモールド成形体の製造工程の概要を示すフローチャートを図1〜3に示す。
【0014】
図1は、パルプモード成形工程を示すフローチャートであり、図2は製品仕上加工および梱包工程を示すフローチャートである。また、図3は、図1のパルプスラリーの抄造工程に供給するパルプスラリーの調製工程を示すものである。
【0015】
図1によれば、パルプスラリー抄造工程Aにより、漉金型を用いたパルプスラリー液の吸引により得られた抄造中間成形体をしぼり工程Bに供した後、熱風噴射による乾燥工程Cを経て、加熱プレスによる整形工程Dに供し成形体の形態を安定化させる。整形工程に引きつづき、さらに、高温下でプレスする重合硬化工程Eおよび成形体取出し工程Fからなるパルプモールド成形体の製造工程が示されている。なお、乾燥工程Cと整形工程Dは同一金型上で行なわれるため、乾燥・整形工程として併合してもよい。
【0016】
図3によれば、パルプ破砕工程Aでは木材、葦、ワラ等の導管にて構成された植物の繊維部分漿板をクラッシャーで適度な大きさに破砕するパルプ・水混合工程Bにて前工程で破砕した漿板に多割合の水を投入し、パルパーにて混合し、パルプに水を含浸させると共にパルプ塊を破壊し、パルプ・水混合液を調製する。離解工程Cにてパルプ・水混合液に残存する塊を解し、均一なパルプ・水混合液とする。パルプ混合率としては、0.5%以上、特に0.8%以上とすることが好ましいが任意に選択することができる。
【0017】
本発明に係るパルプモールド成形体の製造方法によれば、抄造工程を除き、前記の各工程において、それぞれキャビティ型/コア型の雌雄二つの係合可能な形態の特定の金型が用いられる。
【0018】
前記抄造工程Aでは、漉金型が用いられ、パルプスラリーの吸引付着が行なわれる。前記しぼり工程Bにおいては、パルプスラリーの吸引付着後の前記漉金型と係合可能な形態のしぼり金型とで圧縮し脱水処理が行なわれる。
【0019】
前記乾燥工程Cおよび前記整形工程Dにおいては、前記しぼり金型と係合可能な乾燥金型が用いられる。前記乾燥工程および整形工程では、各金型の孔部が熱風の噴射孔として利用される。さらに、重合硬化工程においては加熱圧縮によるパルプ成分の硬化に有用な重合キャビティ金型と重合コア金型の組合せが用いられる。
【0020】
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)抄造工程
本発明に係るパルプセルローズ重合成形方法における抄造工程は、パルプスラリー液に多数の吸引用孔部を設けた漉金型を没入し、吸引することにより、該パルプスラリー中の繊維を漉き、漉金型の表面に該漉金型の形状に沿って付着させ、パルプモールド成形中間体を形成させる工程である。漉金型は、通常、上方向に凸型の形態のもの、または下方向に凸型の形態のいずれものが用いられるが、所望のパルプモールド成形体の目的と製造プロセスおよび成形装置により任意に選択することができる。特に、下方向に凸型の漉金型が操作および装置設計上から簡便である。
【0021】
抄造工程で用いられる抄造原料のパルプスラリーは、葦パルプのスラリーまたは葦パルプと木パルプの各スラリーの混合体が好適である。葦パルプは、イネ科の多年草の葦を加工して得られるものである。葦は、中国の河、湖畔に天然に大量に繁殖しているものであるが、葦パルプを得るには、例えば、先ず、葦を洗浄し汚れを取り除き、適当な大きさに切断した後、200℃程度の高圧スチームで2〜3時間煮る。その後、粉砕すると共に水に分散させることにより葦から抽出されるセルロース繊維からなる葦パルプを含有する原液スラリーを調製することができる。原液スラリーとしては、パルプを0.8〜1.2%含有するものが好ましい。このようにして得られた葦パルプ原液スラリーを濾過等により不純物を除去すれば、本発明に係るパルプセルローズ重合成形方法において用いられるパルプスラリーとして好適である。
【0022】
また、葦パルプと木パルプの混合割合を変えることにより、トレー等のパルプモールド成形体の剛性、吸湿性およびその他の物性値を制御することができる。例えば、葦パルプ(A)と木パルプ(B)の混合割合を(A):(B)=1:0〜1:0.5好ましくは1:0.1〜1:0.3の範囲に設定すると、特に、剛性の優れた成形体を得ることができる。木パルプとしては広葉樹パルプが好適である。
一般に、パルプは、従来採用されている方法を利用して製造されたものであればよく、製造方法として、例えば、クラフトパルプ法、機械的パルプ法等を挙げることができる。
【0023】
前記クラフトパルプ法は、広葉樹チップ、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウムおよび水を蒸解釜に装入し、150℃〜200℃で1時間〜2時間加熱することによりパルプを得ている。化学パルプの蒸解では細胞間質のリグニンが溶出して木繊維が離解するが、クラフト法では水酸化ナトリウム+硫化ナトリウムを蒸解薬品として用いられている。
クラフトパルプ法はほとんどの種類の木材、林料植物等を原料にすることができる。
本発明に係るパルプセルローズ重合成形工程において用いられる広葉樹等の木パルプはかかる製造方法により得られたものでよい。
【0024】
(2)しぼり工程
しぼり工程は、前置工程である抄造工程にて得られた含水パルプモールド成形中間体中の水分を搾取するための処理である。抄造工程で得られた含水パルプモールド成形中間体は、製品乾燥時(比重0.52〜0.56g/cm-3)の4〜5倍の水分を含有しているので前記漉金型にしぼり金型を圧接して含水分を200%(重量比)程度まで脱水する。漉金型としぼり金型との圧接の条件は前記含水量が200%程度になるように適宜選択すればよいが、1〜1.5kg/cm2でプレスすることが好ましい。
脱水後、漉金型の孔部から空気を噴出させ、しぼり金型の孔部から吸引し、パルプモールド中間成形体は漉金型より離型され、しぼり金型に載置される。
【0025】
(3)乾燥・整形工程
乾燥工程は、前記しぼり工程にて得られた含水量が低減されたパルプモールド成形中間体を乾燥金型と前記しぼり金型との間に載置し、両金型の間に少なくとも5mm程度の間隔を設け、前記パルプモールド中間成形体を中間にして100℃〜120℃に加温した乾燥金型より熱風を、しぼり金型より常温風をそれぞれの孔部より噴射し短時間で前記成形体を乾燥し、含湿度が70%〜90%に乾燥された含湿成形体を作製した後、乾燥金型としぼり金型により成形体を再度プレスして整形を行なう。乾燥・整形工程を経た成形中間体は、吸引により乾燥金型に載置される。
【0026】
(4)重合硬化工程
重合硬化工程は、前置工程である乾燥・整形工程にて得られたパルプモールド成形中間体(含湿度70%〜90%)をさらに苛酷条件下における加熱圧縮処理に供し、パルプモールド成形体表面のセルローズ繊維を角質化し、硬化させる工程である。
【0027】
前記乾燥・整形工程にて得られたパルプモールド成形中間体を重合キャビティ金型に移載し、重合コア型にて180〜220℃、好ましくは200℃〜210℃面圧5kg/cm2〜6kg/cm2でプレスし、パルプ中に含有するセルロース成分が表面より角質化し硬化するまで保持する。通常45秒から60秒で完了できる。これにより、パルプモールド成形体の剛性を増加させ、また、吸湿性を低下させ、さらに耐水性を増加させることができる。
さらに重合時間を延長することにより、セルロース角質層がさらに厚くなり、成形体全体が硬質化し、これに比例して剛性、耐水性、耐吸湿性を改良することができる。
パルプモールド成形体が得られた後、図2に示すように、成形体の外周縁等のトリミングおよび検査の後仕上工程に供される。
【0028】
次に、本発明に係る各金型を用いる前記の各工程からなるパルプモールド成形体の自動化製造方法について例示する。
図4によれば、漉金型1がパルプスラリーの貯液槽内aに没入し、吸引することにより、該漉金型1のコア部表面にパルプモールド成形中間体を付着させることが示されている(抄造工程A)。
【0029】
パルプモールド成形中間体を付着させた漉金型を上部に引き上げ、しぼり金型2が漉金型1の下に右側から移行し、しぼり金型2上にパルプモールド成形中間体を付着させた漉金型1をプレスし、脱水する(しぼり工程)。
脱水後、漉金型1を引き上げ、パルプモールド成形中間体を載置したしぼり金型2を右側の乾燥金型3の下方に移行し、上部より乾燥金型3を降下させ、しぼり金型2との間に間隙Sを設け、熱風等の噴射させることによりパルプモールド成形中間体を乾燥する。間隙Sを設けることにより成形体中から追い出された水分が滞留することなく、効率よく外部への離散をさせることができ成形時間の短縮につながる(乾燥工程)。
乾燥後、しぼり金型2上のパルプモールド成形中間体を乾燥金型3でプレスし整形する(整形工程)。
乾燥整形後、パルプモールド成形中間体は重合キャビティ金型4に移載され、重合コア金型5で加熱条件下でプレスすることにより表層が重合角質化されたパルプモールド成形体が得られる(重合工程)。
かくして、パルプモールド成形体は、取出装置bにより取り出される(取出し工程)。
【0030】
前記の如き製造工程を経て、図5−1および図5−2に例示されるパルプモールド成形品(食品容器)を製造することができる。図5の成形品は蓋を同時に製造した事例である。
【0031】
次に、本発明に係る下記I〜Vの金型について具体的に説明する。
I. 漉金型
本発明に係る漉金型は、取付部口と、平面部1aと、製品部1bと、該平面部1aおよび該製品部1bに被覆された漉網15とから構成される。
かかる漉金型1の材質は、特に限定されるものではないが、金属が好ましく、特にアルミニウム合金がさらに好ましい。また、漉金型は、通常、鋳造または切削加工により製作される。
【0032】
本発明に係る漉金型の形態としては、凸型、すなわち、コア金型が好適である。つまり使用に際し、下方向が凸型、所謂コア型のものであり、凸部の表面にパルプを付着させるように構成したものが一連のパルプモールド成形工程にとって好ましい。平面部1aおよび製品部1bには多数の孔部が設けられる。かかる孔部は脱水・吸引・吐出に用いられる貫通孔であり、円形状のものについては直径3mm〜5mmが好適である。
【0033】
孔部は平面部および製品部においてそれぞれ規則的に配置されているかまたは不規則にランダムに設けられていてもよいが、表面に付着するパルプの厚さを均一に制御するには孔部を製品形状に適した間隔に設置することが好ましい。
【0034】
また、孔部の平面形状は円形状、矩形状、三角形状のほか、三ツ葉状、四ツ葉状等の異形状のものをいずれも任意に選択することができるが、製作上および成形体の厚さの制御上円形上のものが好ましい。
【0035】
前記平面部1aに設けられた孔部の合計面積は、平面部全面積に対し、10%〜50%であり、好ましくは20%〜30%である。
かかる面積比率が10%に満たないと、パルプモールド成形体の厚さが不均一となり、一方、50%を超えると漉金型の強度を低減するなどの難点が生ずるおそれがある。
【0036】
また、製品部1bにおける孔部は、その合計面積が製品部全面積に対して40%以上、好ましくは、40%〜50%である。
かかる面積比率が40%に満たないと成形体の厚さを調節することが不可能となり、また部分的に薄くなるなどの弊害が生ずるおそれがある。
【0037】
前記漉網15は、SUSまたはナイロン系の網を用いることができ、前記平面部1aおよび製品部1bの表面に沿って取り付けえられる。
また、漉網はメッシュ20〜30のものが好適である。網止枠は、SUS板で製作することが可能である。
【0038】
漉金型の背面に吸引・吐出空気用プール18を設ける。漉網は形状加工金型にてプレス加工の上漉金型の表面に設置し、止枠にて固定の上、網部をさらにビスまたはワイヤーにて十分金型面に沿うように固定する。
【0039】
パルプスラリー液の吸引時に吸引ポンプにて持ち去れない水分の逆流を防止するため吸引・吐出プールの底面は傾斜させると共に、周辺に一時留置するための溝を設けることが好ましい。
【0040】
以下、図面に従って、本発明に係る漉金型について説明する。
図6Aは、漉金型1の平面図、図6Bは正面図、図6CはA−A'の断面部である。漉金型1は、取付部12と、平面部1aと、該平面部の中央部に下方に断面形状が凸形状の製品部1bと、さらに、平面部と製品部を被覆する漉網15とからなる。
【0041】
平面部の周囲に取付部12が設けられており、網押え枠、金型取付ボルト、枠取付ビス18で固定される。平面部1aには複数の孔部13が貫通孔として穿孔されており、また、製品部1bにも同様に孔部14が設けられている。孔部の直径は、5mm以下、好ましくは3mm〜5mmのものであり、平面部の孔数は、平面部の孔部の合計面積が平面部全面積の10%〜50%になるように制御される。製品部の孔数は孔部の合計面積が製品部の全面積に対し40%〜50%に制御されたものである。図面に示す平面部の孔部は25%であり、製品部の孔部は50%である。孔部はおおよそ均等間隔に配置することが均一成形体を得る点で好ましい。孔部は、吸引・脱水孔として機能する。
【0042】
図6Aでは、4個の製品部が示されているが、これは4個の容器を同時に製造する一事例を示すものであり、特に限定されるものでなく、1個の製品部でもよく、装置に応じて任意に選択することができる。他の金型についても4個の事例が示されているが任意に選択することができる。しかし、5種類の金型については同一の個数の配置が必要である。
図6Bは、漉金型の正面図であり、漉金型1、下方の凸形状の製品部1b、漉網15、網押え枠が示される。
図6Cは、平面図で示す漉金型1のA−A'の断面図である。取付部12、孔部13、14、漉網15、吸水逃がし溝17、空気用プール18が示されている。吸水逃し溝17は、吸引残余水を一方向に集める傾斜面に結合し、その上部に空気用プール18を設けてある。
【0043】
II.しぼり金型
しぼり金型は、コア型の漉金型に対応してキャビティ金型であって、凹型が用いられる。材質としては、特に限定されるものではないが、金属が好ましく、アルミニウム合金等を挙げることができ、鋳造または切削加工により製作することができる。
【0044】
しぼり金型は、取付部と、平面部と、製品部とから構成される。平面部および製品部には、それぞれ孔部を有し、孔部は貫通孔であり、脱水・吸引・吐出孔として機能する。孔部の形状は、前記の漉金型を同様に平面が円形状のほか、短形状三角形等いずれの形状でも任意に選択することができる。円形状のものが好ましく、円の大きさとしては直径2mm〜3mmの範囲で選択されるが、特に限定されるものではない。
前記平面部に設けられた孔部の合計面積は、平面部全面積の10%〜20%が好ましい。
前記孔部の面積比率が10%に満たないとプレス時の排水が残留し、所定の乾燥ができないという難点が生じ、一方、20%を超えると脱水用孔に微細パルプ粉が混入し孔づまりを起こすなどの難点が生じるおそれがある。
【0045】
また、前記製品部の孔部の合計面積は、製品部全面積の15%〜30%、好ましくは、20%〜25%である。孔部の面積比率が15%に達しないと、設定時間内脱水ができないという弊害が生じ、一方、30%を超えると金型の強度を低下させプレスの際の加圧に耐えず金型寿命が短縮する弊害が生じるおそれがある。
【0046】
しぼり金型を図7A〜Cに示す。図7Aの平面図に示すようにしぼり金型2は、上方キャビティ型であり、取付部22と、平面部2aと、製品部2bと該平面部と製品部に貫通孔として設けられた孔部23からなる。孔部は吸脱水孔、乾燥空気の噴射孔として機能する。製品部の孔部は底面および側面にも設けられる。
図7Bは正面図であり、図7Cが7AのA−A'断面図である。孔部23、密閉シール26、空気用プール27が示される。しぼり金型には図7Cに示すように背面に脱水・吸引・吐出用プール27が設けられる。前記孔部は金型表面から貫通しプールに向け削孔されて形成される。
【0047】
III.乾燥金型
乾燥金型は、コア金型・凸型が好ましく、取付部と、平面部と、製品部とから構成されそれぞれ複数の孔部を有するものである。材質は、特に限定されるものではないが、特に、アルミニウム合金が好ましく、乾燥金型の鋳造または切削加工により製作される。
【0048】
平面部および製品部にはそれぞれ孔部が設けられており、孔部数は、平面部の孔部の合計面積が平面部全面積の5%〜20%、好ましくは、10%〜15%に該当するように定められる。また、製品部の孔部の合計面積は、製品部全面積の10%〜25%、好ましくは15%〜20%である。
かかる孔部は、乾燥用熱風の噴射および蒸気の排出および成形体の吸着用通気孔として作用する、直径1.5mm〜2mmの貫通孔である。
前記平面部の孔部の面積比率が5%に達しないと噴射流速が早すぎるという難点が生じ、一方、20%を超えると供給熱風量が過度に増加するなどの弊害が生ずるおそれがある。
【0049】
また、前記製品部の孔部の面積比率が10%に達しないと乾燥時間が遅延するなどの難点が生じ、一方、25%を超えると風量供給過多となり部分的に炭化の弊害が生じるおそれがある。金型背面には孔部に通じる溝部を設ける。
【0050】
乾燥金型を図8A〜Cに示す。乾燥金型は上方向に向かってコア型のものが用いられる。図8Aが平面図であり、図中、取付部32、平面部3a、製品部3b、孔部33が示されている。前記孔部は乾燥・整形工程において熱風噴射孔および吸引孔として機能する。
【0051】
IV.重合キャビティ金型
重合キャビティ金型は、凹型であり、取付部と、平面部と、該平面部の中央に設けた断面凹形状の製品部とから構成される。材質は、特に限定するものではないが、金属、特にアルミニウム含金が好ましい。前記平面部は複数の孔部を有し、平面部の孔部の合計面積は、平面部全面積に対し10%以下である。また、製品部の孔部の合計面積は、製品部全面積の10%以下である。これらの孔部は直径1mm〜1.5mmの離型および吸着用の空気噴射孔として機能するものであり、通気孔数は、前記孔部の面積比率に適合するように決定することができる。
【0052】
重合キャビティ金型を図9A〜Cに示す。図9Aが平面図である。42が取付部であり、平面部4aおよび製品部4bには孔部43が設けられており、孔部は離型のための空気噴射孔として機能する。図9Bは、正面図であり、図9Cは図9AのA−A'断面図である。46は吸引・噴出空気用プールであり、43は離型のための空気噴射孔であり、45は密閉オイルシートである。
【0053】
V. 重合コア金型
重合コア金型は、前記の重合キャビティ金型と係合可能な凸型の形態を有し、パルプモールド成形体の重合硬化に用いられる。重合コア金型は取付部と、平面部と、製品部と、突出しピンとから構成され、平面部に孔部が設けられる。孔部は、離型および吸着用の空気噴射孔として作用する。孔部の平面形状は、特に限定されず短形状、三角形状その他任意に選択することができるが、円形状が特に好ましい。
【0054】
また、孔部の直径としても特に限定されるものではないが1〜1.5mm程度のものが好ましい。平面部に設けられた孔部の合計面積は、平面部全面積に対し10%以下が好ましく、この条件を満たすように孔数が決定される。製品部の孔部の合計面積は製品部全面積に対して10%以下であることが好ましい。また、重合コア金型は、高温条件下において使用されるため、ヒーター設置孔(図示なし。)が設けられる。
【0055】
重合コア金型材質は、特に限定されるものではなく、重合キャビティ金型と同様に高熱条件下で使用されるため金属が好ましく、特にアルミニウム合金が熱伝導性がよく、軽量であり、操作上から要求される。
【0056】
図10A〜Cは重合コア金型を示す。図10Aが平面図であり、平面部5a、製品部5b、突出しピン51が示される。図10Bは正面図であり、図10Cが図10AのA−A'の断面図である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るパルプ成形工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る製品仕上加工及梱包工程を示すフローチャートである。
【図3】パルプスクリーン調製工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る自動化製造工程を例示する説明図である。
【図5−1】本発明に係るパルプモールド成形品の事例を示す説明図である。
【図5−2】本発明に係るパルプモールド成形品の事例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る漉金型の具体例を例示する説明図である。
【図7】本発明に係るしぼり・金型の具体例を例示する説明図である。
【図8】本発明に係る乾燥金型の具体例を例示する説明図である。
【図9】本発明に係る重合キャビティ金型の具体例を例示する説明図である。
【図10】本発明に係る重合コアー金型の具体例を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0058】
図1
A パルプスラリー抄造工程
B しぼり工程
C 乾燥工程
D 整形工程
E 重合硬化工程
F パルプモールド成形品取出し工程
図2
A トリミング工程
B 検査工程
C 仕上げ・梱包工程
図3
A パルプ破砕工程
B パルプ・小混合工程
C 離解工程
D パルプスラリー
図4
1 漉金型
2 しぼり金型
3 乾燥金型
4 重合キャビティ金型
5 重合コア金型
a 貯液槽
b 取出装置
S 間隙
(1) 漉(吸引)
(2) しぼり(加圧)
(3) 乾燥(熱風・吸引)
(4) 留保乾燥(加湿)
(5) 成形体移載
(6) 重合硬化
(7) 成形体離型
(8) 成形体取出し
図5
I 容器
1 蓋
2 充填部
図6
1 漉金型
1a 平面部
1b 製品部
12 取付部
13 平面部吸引孔
14 製品部吸引孔
15 漉網
16 密閉シール
17 吸水逃し溝
18 吸水噴射プール
図7
2 しぼり金型
2a 平面部
2b 製品部
22 取付部
23 吸脱水孔乾燥エア噴射孔
24 しぼりギャビティ
25 漉網枠逃げ
26 密閉シール
27 吸引吐出エアプール
図8
3 乾燥コアー金型
3a 平面部
3b 製品部
32 取付部
33 熱風噴射孔吸引着孔
図9
4 重合キャビティ金型
4a 平面部
4b 製品部
42 取付部
43 離型エア噴射孔
44 重合キャビティ
45 密閉オイルシール
46 吸引噴射エアプール
図10
5 重合コア金型
5a 平面部
5b 製品部
51 突出しピン
52 取付部
53 空気吹出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部と、
d)前記平面部と製品部を被覆した漉網とからなり、
e)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部の全面積に対し10%〜50%であり、
f)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部の全面積に対し40%〜50%である
ことを特徴とするパルプモールド成形用漉金型。
【請求項2】
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凹形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部の全面積に対し10%〜20%であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部の全面積に対し20%〜
50%であることを特徴とするパルプモールド成形用しぼり金型。
【請求項3】
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し10%〜20%であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し20%〜25%であることを特徴とするパルプモールド成形用乾燥金型。
【請求項4】
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凹形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し10%以下であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し10%以下であることを特徴とするパルプモールド成形用重合キャビティ金型。
【請求項5】
a)取付部と、
b)複数の孔部を有する平面部と、
c)該平面部の中央部に設けた断面凸形状であって、複数の孔部を有する製品部とからなり、
d)前記平面部の前記孔部の合計面積が、前記平面部全面積に対し15%以下であり、
e)前記製品部の前記孔部の合計面積が、前記製品部全面積に対し15%以下であり、
f)前記製品部に設けた突出しピンとからなることを特徴とするパルプモールド成形用重合コア金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246869(P2011−246869A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158227(P2011−158227)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2005−317799(P2005−317799)の分割
【原出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(308036077)
【Fターム(参考)】