説明

パルプ洗浄剤及びパルプ製造方法

【課題】パルプ材料から有機物を取り除く機能に優れたパルプ洗浄剤を提供すること。
【解決手段】蒸解ゾーン211においてパルプ材料を蒸解する蒸解手順と、パルプを洗浄ゾーン212又はパルプ洗浄部30において洗浄する洗浄手順と、洗浄されたパルプを漂白部において漂白する漂白手順とを有し、洗浄ゾーン212又はパルプ洗浄部30に、一般式(I)で示されるカチオン系界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤を添加する添加手順を更に有する。


(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプを洗浄するパルプ洗浄剤及び洗浄されたパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプを製造する工程は、木材チップを蒸解してパルプを得る蒸解手順と、このパルプとリグニンを含む黒液とを分離し、分離されたパルプを洗浄する洗浄手順と、洗浄されたパルプを漂白する漂白手順と、を有する(例えば、特許文献1参照)。このようにして製造される漂白されたパルプは、製紙等に使用されることになる。
【0003】
パルプの洗浄系(酸素脱リグニン工程を含む)において、リグニン等の抽出成分を効率よくパルプから除去することは、プロセスの生産性向上に大きく寄与する。これまでは、主に洗浄機の改良によってパルプの洗浄効率の改善がなされてきたが、これには多くのコストがかかることから、設備改造を伴わない薬品による実用的な改善も試みられている。
【0004】
例えば、パルプの洗浄効率を高める薬品としては界面活性剤が挙げられるが、その中でも、非イオン系界面活性剤が広く適用されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭48−39763号公報
【特許文献2】特開2003−161491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から広く適用されている非イオン系界面活性剤の洗浄力は、満足のいくものではない。
【0006】
そこで、本発明は、従来の非イオン系界面活性剤に比して、パルプに付着しているリグニン分解物や樹脂等の有機物(汚れ成分)を取り除く機能に優れた界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤、及び該パルプ洗浄剤を用いたパルプ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ある特定の化合物群を含むカチオン系界面活性剤をパルプ洗浄剤に含有させることで、負に荷電している汚れ成分をパルプから取り除く洗浄剤の機能が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下のようなものを提供する。
【0008】
本発明のパルプ洗浄剤は、
一般式(I)で示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有することを特徴とする。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)
【0009】
本発明のパルプ洗浄剤では、アルキレンオキシドは、エチレンオキシドであることが好ましい。
【0010】
本発明のパルプ洗浄剤では、非イオン系界面活性剤を更に含有することが好ましい。
【0011】
本発明のパルプ製造方法は、蒸解部においてパルプ材料を蒸解してパルプを得る蒸解手順と、前記パルプをパルプ洗浄系において洗浄する洗浄手順と、洗浄されたパルプを漂白部において漂白する漂白手順とを有し、前記パルプ洗浄系に、
一般式(I)で示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤を添加する添加手順を更に有することを特徴とする。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)
【0012】
本発明のパルプ製造方法では、アルキレンオキシドはエチレンオキシドであることが好ましい。
【0013】
本発明のパルプ製造方法では、パルプ洗浄剤は非イオン系界面活性剤を更に含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルプ洗浄剤にカチオン系界面活性剤を含有させたので、かかるパルプの洗浄度が向上する。すなわち、これは一般的に負に荷電している水中及びパルプに付着した有機物(汚れ成分)はカチオン系界面活性剤に電気的に吸着するが、一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤は、構造中にポリアルキレンオキシド鎖を有するので、荷電が中和された後も親水性を保ち、凝集及び析出してパルプに再付着することなく洗浄液中に溶解した状態となるためと推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに特に限定されるものではない。
【0016】
[パルプ製造系・パルプ製造方法]
図1は、本発明に係る洗浄剤が適用されるパルプ製造系の一例を示すブロック図である。パルプ製造系10は、上流から順に、蒸解洗浄系20と、パルプ洗浄部30と、漂白部とを備える。
【0017】
蒸解洗浄系20は蒸解釜21を有し、この蒸解釜21においてパルプ材料を蒸解し、予備的に洗浄する。具体的には、蒸解釜21の蒸解ゾーン211において、パルプ材料である木材チップと、水酸化ナトリウム等を含有する溶液とを混合し加圧蒸煮することで、木材チップ中の非繊維成分を溶解し、蒸解釜21の洗浄ゾーン212において、予備的に洗浄する。洗浄ゾーン212を経て得られ、非繊維成分が溶解された黒液と、パルプとが混在するパルプスラリーは、図示しないブロータンクを経て、次のパルプ洗浄部30に移送される。本発明の蒸解部は蒸解ゾーン211で構成され、本発明のパルプ製造方法を構成する蒸解手順は、洗浄ゾーン212の上流までの作業を指す。
【0018】
パルプ洗浄部30は、パルプスラリーからパルプを分離し洗浄するものである。具体的には、蒸解釜21から移送されたパルプスラリーは、ディフュージョン洗浄装置31に導入され、向流洗浄を施された後、ノッタ32に移送される。蒸解液は、ノッタ32で残留する未蒸解物が除去された後、第1前置ドラム洗浄装置33、第2前置ドラム洗浄装置34にて置換洗浄される。これにより、リグニンを含む黒液が回収される。回収された黒液から水酸化ナトリウムを分離し再利用してもよい。
【0019】
続いて、黒液除去後のパルプは、スチームミキサ35で蒸気を供給されることで所定温度に加温された後、図示しない前置貯蔵槽に貯蔵される。そして、前置貯蔵槽に貯蔵されたパルプは、酸素を供給された後、酸素リアクタ36に導入され、この酸素リアクタ36にて更なる脱リグニン化が行われる。酸素リアクタ36から排出されたパルプはブロータンク37に移送され、第1後置ドラム洗浄装置38、第2後置ドラム洗浄装置39に導入される。これら第1後置ドラム洗浄装置38、第2後置ドラム洗浄装置39では、パルプが更に洗浄され、リグニン等が除去される。第2後置ドラム洗浄装置39からのパルプは、図示しない後置貯蔵槽に貯蔵された後、漂白部へと移送される。本発明のパルプ洗浄系は、洗浄ゾーン212及びパルプ洗浄部30で構成され、本発明のパルプ製造方法を構成する洗浄手順は、以上の洗浄ゾーン212から漂白部の上流までの作業を指す。
【0020】
続いて漂白部においてパルプが漂白されることで、製紙に好ましく使用される良質のパルプが製造される。漂白部及び使用される漂白剤は、従来周知のものであってよい。以上は、本発明のパルプ製造方法を構成する漂白手順の一例である。
【0021】
前述したように、酸素脱リグニン工程を含むパルプの洗浄系(洗浄ゾーン212及びパルプ洗浄部30)において、リグニン等の抽出成分を効率よくパルプから除去することは、プロセスの生産性向上に大きく寄与する。
【0022】
本発明のパルプ製造方法は、蒸解手順、洗浄手順、及び漂白手順に加え、洗浄ゾーン212及びパルプ洗浄部30に本発明のパルプ洗浄剤を添加する添加手順を更に有することで、プロセスの生産性向上を図る。本発明で使用されるパルプ洗浄剤については、以下に説明する。
【0023】
[パルプ洗浄剤]
本発明のパルプ洗浄剤は、
一般式(I)で示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する。
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)
【0024】
本発明のパルプ洗浄剤では、一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤の含有量は特に限定されない。例えば、パルプに付着しているリグニン分解物や樹脂等の有機物(汚れ成分)の除去に影響を与える程度の量であればよく、後述するアルキレンオキシドの種類、非イオン系界面活性剤の種類や量によっても変動する場合があり、また、パルプの種類、付着している有機物の程度、洗浄条件等に応じて適宜設定されてもよい。
【0025】
本発明のカチオン系界面活性剤が有するアルキル基は、炭素数1〜18である。また、本発明のカチオン系界面活性剤が有するアルキレンオキシドは、炭素数2〜4であり、具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられるが、親水性が高いという点において炭素数2のエチレンオキシドが好ましい。なお、炭素数3や4のアルキレンオキシドを使用する場合には、炭素数2のものと組み合わせる必要がある。
【0026】
本発明のカチオン系界面活性剤が有するアルキレンオキシドの平均付加モル数(m+n)は、15〜50である。15以上であるとカチオン荷電が中和された際の親水性が不足せず、カチオン系界面活性剤に吸着した汚れ成分が析出しないので好ましく、50以下であると、分子数が十分にあり、本発明の効果が得られると推測される点において好ましい。
【0027】
本発明のパルプ洗浄剤は、非イオン系界面活性剤を更に含有することが好ましい。非イオン系界面活性剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン多価アルコールエーテル等が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヤシアルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエーテル等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0028】
本発明のパルプ洗浄剤では、非イオン系界面活性剤の含有量は特に限定されない。例えば、パルプに付着している汚れ成分の除去に影響を与える程度の量であればよく、上述したカチオン系界面活性剤の種類や量によっても変動する場合があり、また、パルプの種類、付着している汚れ成分の程度、洗浄条件等に応じて適宜設定されてもよい。
【0029】
その他、本発明のパルプ洗浄剤では、必要に応じてビルダーを含有してもよい。ビルダーとは、界面活性剤の洗浄効果を上げる無機配合剤(洗浄助剤)であって、一般にビルダーと称されるものに限定されず、ビルダー機能を有する化合物であってもよい。例えば、金属を錯体化する作用を有するホスホン酸等のキレート性化合物やポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。
【0030】
本発明のパルプ製造方法では、パルプ洗浄剤は、洗浄ゾーン212及びパルプ洗浄部30の一箇所又は複数箇所に添加されてもよく、カチオン系界面活性剤及び非イオン系界面活性剤等の成分ごとに同一箇所又は別箇所に添加されてもよい。
【実施例】
【0031】
[洗浄剤の評価1]
<対照区>
洗浄装置38の出口のパルプシートA(A工場より採取)(パルプ濃度:約14質量%〜約30質量%)を10g採取した。これを0.002質量%のカルシウム水溶液(20mgのカルシウム(和光純薬社製)を1Lの蒸留水に溶解したもの:実際の洗浄水レベル)300mlに分散させ、60℃の水浴中で5分間攪拌した(以下、この溶液を溶液1とする)。次いで、溶液1を5分間静置後、その上澄みを一部採取し、0.45μmのフィルターで濾過した濾液をブランク1とした。一方、溶液1を60℃に保温した状態で更に15分間攪拌し、次いで、5分間静置後、その上澄みを一部採取し、0.45μmのフィルターで濾過した濾液をブランク2とした。そして、ブランク2のTOC(全有機体炭素)からブランク1のTOCを差し引いたものを対照区におけるTOC量の増加とし、そこから増加率を算出した。なお、TOCは、TOC計(全有機体炭素計:島津製作所社製)を用いて測定した。
【0032】
<実施例1>
上記方法により調製した溶液1に、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤が表1の規定濃度になるように調製した洗浄剤を添加し、対照区と同様の操作によりTOCを測定した。
【0033】
<比較例1及び2>
上記方法により調製した溶液1に、本発明の一般式Iで示される化合物群を含まないカチオン系界面活性剤が表1の規定濃度になるように調製した洗浄剤を添加し、対照区と同様の操作によりTOCを測定した。
【0034】
<比較例3及び4>
上記方法により調製した溶液1に、非イオン系界面活性剤が表1の規定濃度になるように調製した洗浄剤を添加し、対照区と同様の操作によりTOCを測定した。
【0035】
これらの結果を表1に示す。添加したパルプ洗浄剤の組成及び規定濃度は、表1に示した通りである。なお、TOCは比較のため、予め洗浄剤の値を測定した上で補正を行った。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤ポリオキシエチレンジメチルアンモニウムを含有する洗浄剤(実施例1)は、一般式Iで示される化合物群を含まないカチオン系界面活性剤(比較例1及び2)や非イオン系界面活性剤を含有する洗浄剤(比較例3及び4)と比較して、TOCの増加率が非常に高く、付着した有機物をパルプから取り除く洗浄力が極めて優れていることがわかった。
【0038】
[洗浄剤の評価2]
<実施例2〜6>
上記洗浄剤の評価1の方法により調製した溶液1に、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤が、或いは、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤及び/又はビルダーとが、表2の規定濃度になるように調製した洗浄剤を添加し、評価1の対照区と同様の操作によりTOCを測定した。パルプシートには、B(B工場より採取)を用いた。
【0039】
<比較例4〜7>
上記洗浄剤の評価1の方法により調製した溶液1に、本発明以外のカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤とビルダーとが表2の規定濃度となるように調製した洗浄剤を添加し、評価1の対照区と同様の操作によりTOCを測定した。パルプシートには、Bを用いた。
【0040】
これらの結果を表2に示す。添加したパルプ洗浄剤の組成及び規定濃度は、表2に示した通りである。なお、TOCは比較のため、予め洗浄剤の値を測定した上で補正を行った。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤ポリオキシエチレンジメチルアンモニウムを含有する洗浄剤(実施例2)は、更に非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンフェニルエーテルを含有することで、TOCが増加した(実施例3)。また、本発明の洗浄剤(実施例4)は、ビルダーであるポリアクリル酸を更に含有することで、TOCが増加した(実施例5)。よって、本発明の洗浄剤は、更に非イオン系界面活性剤やビルダーを含有することで、洗浄力が更に向上することがわかった。
本発明の洗浄剤(実施例4)は、本発明以外のカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤(比較例4)よりもTOC増加率が高かった。また、ビルダーを含有する本発明の洗浄剤(実施例5)も、ビルダーを含有する本発明以外のカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤(比較例5)よりもTOC増加率が高かった。このことから、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤は、他のカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤よりも洗浄力が優れることがわかった。
【0043】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤とビルダーとを含有する洗浄剤(実施例5)は、非イオン系界面活性剤とビルダーとを含有する洗浄剤(比較例6及び7)と比較して、TOC増加率が高かった。このことから、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤は、同濃度の非イオン系界面活性剤を含有する洗浄剤よりも洗浄力が優れるということがわかった。
【0044】
[洗浄剤の評価3]
<実施例7〜15>
上記洗浄剤の評価1の方法により調製した溶液1に、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤が、或いは、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤及び/又はビルダーとが、表3の規定濃度となるように調製した洗浄剤を添加し、評価1の対照区と同様の操作によりTOCを測定した。パルプシートには、C(C工場より採取)及びD(D工場より採取)を用いた。なお、洗浄剤における各成分の含有量は1質量%とした。
【0045】
<比較例8>
上記洗浄剤の評価1の方法により調製した溶液1に、本発明以外のカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤とビルダーとが、表3の規定濃度となるように調製した洗浄剤を添加し、評価1の対照区と同様の操作によりTOCを測定した。パルプシートには、C(C工場より採取)及びD(D工場より採取)を用いた。
【0046】
これらの結果を表3に示す。添加したパルプ洗浄剤の組成及び規定濃度は、表3に示した通りである。なお、TOCは比較のため、予め洗浄剤の値を測定した上で補正を行った。
【0047】
【表3】

【0048】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンジメチルアンモニウムを10mg/L含有する洗浄剤(実施例7)は、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤とをそれぞれ5mg/L含有する洗浄剤に比べて、TOCが高かった(実施例8)。
【0049】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤(実施例9)は、ビルダーであるホスホン酸やポリアクリル酸を更に含有することで、いずれもTOCが増加した(実施例10及び12)。本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤と非イオン系界面活性剤とを含有する洗浄剤(実施例15)についても、同様の結果を示した(実施例11及び14)。よって、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤は、更にビルダーを含有することで、洗浄力が更に向上することがわかった。
【0050】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤とビルダーとをそれぞれ10mg/L含有する洗浄剤(実施例10、12及び13)は、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤とイオン系界面活性剤とビルダーとをそれぞれ5mg/L、5mg/L、10mg/L含有する洗浄剤(実施例11及び14)と比較してTOC増加率が同等又はそれ以上であった。これは、洗浄剤に含有される界面活性剤の濃度が同じであれば、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤とイオン系界面活性剤とを含有するよりも、全て本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤である方が優れた洗浄力を発揮することを示唆しており、このことからも、本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤は、従来から使用されている非イオン系界面活性剤を含有する洗浄剤よりも洗浄力が優れるといえる。
【0051】
本発明の一般式Iで示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤と非イオン系界面活性剤とビルダーとを含有する洗浄剤(実施例11)は、本発明以外のカチオン系界面活性剤を含有する洗浄剤と非イオン系界面活性剤とビルダーとを含有する洗浄剤(比較例8)と比較してTOC増加率が高かった。このことからも、本発明の一般式Iで示される化合物群を含む界面活性剤を含有する界面活性剤は、従来から使用されている非イオン系界面活性剤を含有する洗浄剤よりも優れた洗浄力を有するといえる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る洗浄剤が適用されるパルプ製造系の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
10 パルプ製造系
20 蒸解洗浄系
211 蒸解ゾーン(蒸解部)
212 洗浄ゾーン(パルプ洗浄系)
30 パルプ洗浄部(パルプ洗浄系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)
【請求項2】
前記アルキレンオキシドは、エチレンオキシドである請求項1記載のパルプ洗浄剤。
【請求項3】
非イオン系界面活性剤を更に含有する請求項1又は2記載のパルプ洗浄剤。
【請求項4】
蒸解部においてパルプ材料を蒸解してパルプを得る蒸解手順と、前記パルプをパルプ洗浄系において洗浄する洗浄手順と、洗浄されたパルプを漂白部において漂白する漂白手順と、を有するパルプ製造方法であって、
前記パルプ洗浄系に、
一般式(I)で示される化合物群を含むカチオン系界面活性剤を含有するパルプ洗浄剤を添加する添加手順を更に有するパルプ製造方法。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であり、RはCH又はHであり、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、m及びnは前記アルキレンオキシドの付加モル数を示す1〜50の数であり、m+nは平均付加モル数を示す15〜50の整数である。)
【請求項5】
前記アルキレンオキシドは、エチレンオキシドである請求項4記載のパルプ製造方法。
【請求項6】
前記パルプ洗浄剤は、非イオン系界面活性剤を更に含有する請求項4又は5記載のパルプ製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−243026(P2009−243026A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94420(P2008−94420)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】