説明

パレット交換動作検知装置

【課題】パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知して、機械の誤動作を回避する。
【解決手段】パレット交換動作検知装置は、パレットP1、P2を載置したアーム31、32を、段取位置S1または加工位置S2に位置させた状態で、一定ストロークで昇降させるとともに、昇降ストローク上限に位置させられたアーム31、32を、段取位置S1および加工位置S2に対して、交互に進退させうるように旋回させるパレット交換装置において、段取位置S1において昇降ストローク下限に位置させられたアーム31、32を検出する第1センサ71と、旋回ストローク中のアーム31、32を検出する第2センサ72と、加工S2位置において昇降ストローク下限に位置させられたアーム31、32を検出する第3センサ73と、第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73の検出信号に基づいて、パレット交換動作の正常・異常を判断する判断手段とよりなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、横形マシニングセンタのパレット交換装置、詳しくは、加工位置および段取位置間でパレットの交換動作を行うパレット交換装置において、パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知するパレット交換動作検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パレット交換装置としては、パレットを載置したパレット交換用アームと、アームを段取位置または加工位置に位置させた状態で、アームを一定ストロークで昇降させる昇降機構と、昇降ストローク上限に位置させられたアームを、段取位置および加工位置に対して、交互に進退させうるように一定ストロークで旋回させる旋回機構と、旋回機構および昇降機構をシーケンス制御して、アームを段取位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク下限からその上限まで移動させる上昇ストローク、アームを、段取位置から加工位置まで旋回させる旋回ストロークおよびアームを加工位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク上限からその下限まで下降させる下降ストロークを順次行わせる制御装置とを備えているものが知られている。
【0003】
上記パレット交換装置において、パレット交換動作の正常・異常の判断は、アームを旋回させるためのモータの回転角度を検出することによって行われていた。旋回機構にトラブル、例えば、モータの動力をアームに伝達するためのタイミングベルトが切れた場合、旋回ストロークが行われなくても、昇降ストロークは行われる。そうすると、加工位置に本来搬入されるべきワークとは別のワークが搬入され、搬入されたワークに対して本来行われるプログラムとは別のプログラム運転が開始される可能性がある。この場合、機械がワークに衝突して機械損傷の危険がある。
【0004】
また、他のパレット交換装置としては、パレットを載置したパレット交換用アームと、アームを段取位置または加工位置に位置させた状態で、アームを一定ストロークで昇降させる昇降機構と、昇降ストローク上限に位置させられたアームを、段取位置および加工位置に対して、交互に進退させうるように一定ストロークで旋回させる旋回機構と、段取位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第1センサと、段取位置において昇降ストローク上限に位置させられたアームを検出する第2センサと、加工位置において昇降ストローク上限に位置させられたアームを検出する第3センサと、加工位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第4センサと、第1〜第4センサの信号に基づいて、旋回機構および昇降機構を制御するものであって、アームを段取位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク下限からその上限まで上昇させる上昇ストローク、アームを、段取位置から加工位置まで旋回させる旋回ストロークおよびアームを加工位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク上限からその下限まで下降させる下降ストロークを順次行わせる制御装置とを備えており、旋回ストロークおよび昇降ストロークを、シーケンス制御するのではなく、第1〜第4センサの信号は、ストローク開始・終了のためのトリガーとして用いられているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この他のパレット交換装置では、4つの第1〜第4センサを必要とするため、これを装置するための構造および制御等が複雑となり、設備コストが高くつくという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−37479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知して、機械の誤動作を回避することができ、これを、必要最小限の数のセンサを用いることにより達成できるパレット交換動作検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるパレット交換動作検知装置は、パレットを載置したパレット交換用アームと、アームを段取位置または加工位置に位置させた状態で、アームを一定ストロークで昇降させる昇降機構と、昇降ストローク上限に位置させられたアームを、段取位置および加工位置に対して、交互に進退させうるように一定ストロークで旋回させる旋回機構と、旋回機構および昇降機構を制御して、アームを段取位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク下限からその上限まで上昇させる上昇ストローク、アームを、段取位置から加工位置まで旋回させる旋回ストロークおよびアームを加工位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク上限からその下限まで下降させる下降ストロークを順次行わせる制御装置とを備えているパレット交換装置において、段取位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第1センサと、旋回ストローク中のアームを検出する第2センサと、加工位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第3センサと、第1センサ、第2センサおよび第3センサの検出信号に基づいて、パレット交換動作の正常・異常を判断する判断手段とよりなるものである。
【0009】
この発明によるパレット交換動作検知装置では、パレットの位置を、段取位置における昇降ストローク下限から、加工位置における昇降ストローク下限まで、昇降ストロークの上限における段取位置から加工位置までのアーム旋回中を含めて、3つのセンサによって検出することができる。したがって、パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知して、機械の誤動作を回避することができる。しかも、必要なセンサーの数は3つでよいから、設備コストが安価である。
【0010】
さらに、アームは、段取位置および加工位置間をのびた垂直状旋回軸に固定されており、旋回軸に、これと同心状に水平円板状検出板が固定されており、検出板の外周面を第2センサが検出しうるように第2センサが固定状に配置されていると、アームの旋回にともなって回転させられる検出板の外周面をセンサで検出することによって、旋回中のアームの動作を1つのセンサで検出することができる。
【0011】
また、検出板に、第1ドッグおよび第2ドッグが検出板周方向に旋回ストロークに相当する間隔をおいて設けられており、第1ドッグを第1センサが、第2ドッグを第3センサがそれぞれ検出しうるように第1センサおよび第3センサがそれぞれ固定状に配置されていると、アームの旋回を、旋回の前後で、2つのセンサによって別々に検出できるから、アームの旋回ストロークを確実に検出することができる。
【0012】
また、検出板に2つのドッグが設けられることに代えて、検出板に、1つのドッグが設けられており、ドッグを第1センサおよび第3センサがそれぞれ検出しうるように第1センサおよび第3センサがそれぞれ固定状に配置されているようにすれば、検出板およびドッグをシンプルに構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知して、機械の誤動作を回避することができ、これを、必要最小限の数のセンサを用いることにより達成できるパレット交換動作検知装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明によるパレット交換動作検知装置を備えたパレット交換装置の斜視図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す同パレット交換動作検知装置の斜視図である。
【図3】同パレット交換動作検知装置のセンサ等の垂直方向配置態様を示す説明図である。
【図4】同パレット交換動作検知装置のセンサ等の水平方向配置態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、工作機械の内部スペースは、垂直板状隔壁11によって段取室12および加工室13に仕切られている。段取室12には段取位置S1が、加工室13には加工位置S2がそれぞれ設定されている。段取位置S1および加工位置S2は、平面より見て、隔壁11と直交させられた直線上にそれぞれ設定されている。
【0016】
段取位置S1および加工位置S2間を垂直筒状旋回軸21がのびている。旋回軸21は、角筒状カバー22で被覆されている。カバー22の上端には、旋回軸21の上端部を通した水平円環状板23が被覆されている。旋回軸21には、定位置に保持された丸棒状ガイドポスト24が通されている。ガイドポスト24の上端部は、旋回軸21の上端面より上方に突出させられている。
【0017】
旋回軸21は、旋回機構(図示略)によって、180度ずつ可逆的に旋回させられ、かつ、昇降機構(図示略)によって、一定ストロークで昇降させられる。旋回機構は、角度検出器付モータと、モータの動力を旋回軸21に伝達するタイミングベルトとを備えている。昇降機構は、旋回軸21にピストンロッドを連結した油圧シリンダを備えている。
【0018】
旋回軸21には、第1アーム31および第2アーム32が互いに反対向きに固定されている。図1において、第1アーム31が段取位置S1に、第2アーム32が加工位置S2にそれぞれ位置させられている。第1アーム31には第1パレットP1が、第2アーム32には第2パレットP2がそれぞれ載置されている。
【0019】
図2に、図1に示す旋回軸21の上端部およびその周辺部が詳細に示されている。旋回軸21の上端面には、これと同心状に水平円板状検出板41が固定されている。検出板41から上方に間隔をおいて、ガイドポスト24の上端部に水平円板状支持板42が固定されている。検出板41の下面外周縁部には垂下板状第1ドッグ51および第2ドッグ52が検出板41周方向に間隔をおいて固定されている。支持板42から、第1ブラケット61を介して第1センサ71が、第2ブラケット62を介して第2センサ72がそれぞれ吊下げられている。さらに、第1センサ71と並列状に第3センサ73が支持板42から吊下げられている。
【0020】
図3(a)では、旋回軸21は、昇降ストロークの下限に位置させられている。この状態で、第1ドッグ51および第2ドッグ52と、第1センサ71および第3センサ73とは、同一レベルに位置させられている。検出板41より第2センサ72は上方レベルに位置させられている。旋回軸21が昇降ストロークの上限に位置させられると、図3(b)に示すように、
第1センサ71および第3センサ73よりも、第1ドッグ51および第2ドッグ52は、上方レベルに位置させられ、第2センサ72および検出板41の外周面が同一レベルとなる。
【0021】
第1および第2ドッグ51、52およびに第1〜第3センサ71、72、73を平面から見た配置の態様が、図4(a)(b)に示されている。旋回軸21の軸線を通って、段取位置S1および加工位置S2を結ぶ直線を第1基準線L1とする。旋回軸21の軸線を通って、第1基準線L1と直交させられた直線を第2基準線L2とする。図4(a)は、図1および図2に示す配置態様に対応するものである。第1ドッグ51および第2ドッグ52は、第1基準線L1に関して線対称に配置されている。第1センサ71および第3センサ73は、第2基準線L2に関して線対称に配置されている。第2センサ72は、第2基準線L2上に配置されている。図4(a)では、第1センサ71に対し第1ドッグ51が相対させられている。図4(a)に示す状態から旋回軸21を反時計方向に180度旋回させると、図4(b)に示す通りである。第3センサ73に対し第2ドッグ52が相対させられている。図4(a)から図4(b)までを通じて、第2センサ72に対して検出板41の外周面は相対させられている。
【0022】
次に、パレット交換動作を説明する。パレット交換動作は、NC装置(図示略)によって旋回機構および昇降機構をシーケンス制御することによって、以下の第1〜第3ステップで、順次行われる。第1ステップで、第1アーム31を段取位置S1に、第2アーム32を加工位置S2にそれぞれ位置させた状態で、第1アーム31および第2アーム32を、昇降ストローク下限からその上限まで移動させる。第2ステップで、第1アーム31を段取位置S1から加工位置S2まで、第2アーム32を加工位置S2から段取位置S1までそれぞれ旋回させる。第3ステップで、第1アーム31を加工位置S2に、第2アーム32を段取位置S1に位置させた状態で、第1アーム31および第2アーム32を、昇降ストローク上限からその下限まで移動させる。以上のステップにより、段取位置S1では第1パレットP1が第2パレットP2に交換され、加工位置S2では第2パレットP2が第1パレットP1に交換される。上記第1〜第3ステップを逆シーケンスで、詳しく説明しない第4〜第6ステップを行うことにより、図1および図2に示す状態に復帰する。
【0023】
第1アーム31が段取位置S1に、第2アーム32が加工位置S2にそれぞれ位置させられて、旋回軸21が昇降ストロークの下限に位置させられていると、第1ドッグ51を第1センサ71が検出する。この状態から出発して、旋回軸21を昇降ストロークの下限から上限まで上昇させると、第1ドッグ51を第1センサ71が検出できなくなり、これに代わり、検出板41の外周面を第2センサ72が検出する。旋回軸21を昇降ストロークの上限に位置させた状態で、旋回軸21を反時計方向に180度旋回させると、第1アーム31が段取位置S1から加工位置S2に、第2アーム32が加工位置S2から段取位置S1にそれぞれ旋回させられる。旋回軸21の旋回中は、第2センサ72は、検出板41の外周面の検出を持続する。旋回軸21の旋回が終了すると、旋回軸21をその昇降ストロークの上限から下限まで下降させる。そうすると、第2センサ72が検出板41の外周面を検出できなくなり、今度は、第2ドッグ52を第3センサ73が検出する。
【0024】
第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73の検出信号は、NC装置に入力される。NC装置において、パレット交換動作の正常・異常が以下のように判断される。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73が順次ONを検出する場合、パレット交換動作は正常である。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73のいずれかがOFFを検出すると、パレット交換動作が異常であると判断され、アラームが表示され、機械が停止される。
【0025】
上記において、第1センサ71および第3センサ73を旋回軸21に対し180°反対側に配置するなどで、両センサ71、73がともに第1ドッグ51を検出可能として、ドッグを1つとするように構成することが可能となる。なお、センサ71、73の位置は180°反対側に限定されるものでは無く、ドッグを幅広にするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形し適宜最適な位置とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明によるパレット交換動作検知装置は、加工位置および段取位置間でパレットの交換動作を行うパレット交換装置において、パレット交換動作が正常に行われたか、否かを検知することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0027】
31、32 アーム
P1、P2 パレット
S1 段取位置
S2 加工位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを載置したパレット交換用アームと、
アームを段取位置または加工位置に位置させた状態で、アームを一定ストロークで昇降させる昇降機構と、
昇降ストローク上限に位置させられたアームを、段取位置および加工位置に対して、交互に進退させうるように一定ストロークで旋回させる旋回機構と、
旋回機構および昇降機構を制御して、アームを段取位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク下限からその上限まで上昇させる上昇ストローク、アームを、段取位置から加工位置まで旋回させる旋回ストロークおよびアームを加工位置に位置させた状態で、アームを、昇降ストローク上限からその下限まで下降させる下降ストロークを順次行わせる制御装置とを備えているパレット交換装置において、
段取位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第1センサと、
旋回ストローク中のアームを検出する第2センサと、
加工位置において昇降ストローク下限に位置させられたアームを検出する第3センサと、
第1センサ、第2センサおよび第3センサの検出信号に基づいて、パレット交換動作の正常・異常を判断する判断手段と、
よりなるパレット交換動作検知装置。
【請求項2】
アームは、段取位置および加工位置間をのびた垂直状旋回軸に固定されており、旋回軸に、これと同心状に水平円板状検出板が固定されており、検出板の外周面を第2センサが検出しうるように第2センサが固定状に配置されている請求項1のパレット交換動作検知装置。
【請求項3】
検出板に、第1ドッグおよび第2ドッグが検出板周方向に旋回ストロークに相当する間隔をおいて設けられており、第1ドッグを第1センサが、第2ドッグを第3センサがそれぞれ検出しうるように第1センサおよび第3センサがそれぞれ固定状に配置されている請求項2に記載のパレット交換動作検知装置。
【請求項4】
検出板に、1つのドッグが設けられており、ドッグを第1センサおよび第3センサがそれぞれ検出しうるように第1センサおよび第3センサがそれぞれ固定状に配置されている請求項2のパレット交換動作検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59832(P2013−59832A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200619(P2011−200619)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】